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特許7077406水性塗料用表面調整剤、水性塗料組成物、塗膜及び複層塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】水性塗料用表面調整剤、水性塗料組成物、塗膜及び複層塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220523BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220523BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20220523BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220523BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220523BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/47
C09D5/00 D
C09D7/65
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020529067
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2019026839
(87)【国際公開番号】W WO2020009228
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2018129496
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000225854
【氏名又は名称】楠本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】大岩 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 洸平
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D201
C09D5
C09D7
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和二重結合を有する二塩基酸エステル(A) 10質量%以上99質量%以下と、
一般式(1):
-(C2mO)-R ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基を表し、Rは、水素原子、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、アリル基又は炭素数1~22のアルキル基を表し、mは2~4であり、nは2~100である。)
で表されるエーテル基を含有する重合性不飽和モノマー(B) 1質量%以上90質量%以下と、
を構成モノマーとして含む共重合体を含有しており、
前記二塩基酸エステル(A)が、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、シトラコン酸ジエステル、メサコン酸モノエステル及びメサコン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであり、
前記共重合体の重量平均分子量が1000以上100000以下である、水性塗料用表面調整剤。
【請求項2】
前記共重合体が、前記二塩基酸エステル(A)と、前記重合性不飽和モノマー(B)と、前記二塩基酸エステル(A)と前記重合性不飽和モノマー(B)との合計100質量部に対して400質量部以下の共重合性不飽和モノマー(C)とを構成モノマーとして含む共重合体であり、
前記共重合性不飽和モノマー(C)が、前記二塩基酸エステル(A)及び前記重合性不飽和モノマー(B)と異種のモノマーである、請求項1に記載の水性塗料用表面調整剤。
【請求項3】
前記共重合性不飽和モノマー(C)が、(メタ)アクリル酸アルキル、水酸基を有する重合性不飽和モノマー、アミド基を有する重合性不飽和モノマー、グリコール基を有する重合性不飽和モノマー、グリシジル基を有する重合性不飽和モノマー、カルボキシル基を有する重合性不飽和モノマー、多官能性不飽和モノマー及びメタクリロイルオキシ基を有する反応性シリコーンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである、請求項2に記載の水性塗料用表面調整剤。
【請求項4】
前記一般式(1)で、Rが、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基である、請求項1~のいずれか一項に記載の水性塗料用表面調整剤。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の水性塗料用表面調整剤を全樹脂固形分100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下含有する、水性塗料組成物。
【請求項6】
請求項に記載の水性塗料組成物を硬化した、塗膜。
【請求項7】
請求項に記載の塗膜と、前記塗膜の表面の全部又は一部に積層された上塗り塗膜とを含む、複層塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料用表面調整剤、水性塗料組成物、塗膜及び複層塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車材料、高級家具、家電等の様々な被塗物には、防蝕性能だけではなく、美観に優れた高度な仕上がり外観、すなわち、ハジキ、クレーター、フィッシュアイ、曇り等が無く、平滑な外観を持つ塗膜が形成されることが要求される。そのため、上記のような被塗物の塗装ラインにおいて、エアースプレー、ロールコーター等を用いた塗装処理が行われている。これらの塗装処理では、コンプレッサー、ロールコーター等に使用している潤滑油又は塗料自身のミスト等の汚染物質が、被塗物の表面に付着する場合がある。これらの汚染物質は、ビヒクルよりも表面張力が低いため、これらの汚染物質の被塗物の表面への付着を原因として塗料のハジキが発生することが問題となっていた。さらに、自動車材料の塗装ラインのように、数回に渡って被塗物を塗装及び研磨する塗装ラインにおいては、サンドペーパーの研磨かす、作業者の手の指紋等の異種ダストにより被塗物が汚染されたことを原因としてハジキが発生することが問題となる場合があった。
【0003】
また、近年、省資源化、環境保全などの目的で、上記塗装処理用の塗料として、溶剤系の塗料に代えて水性塗料が使用されるようになってきている。水性塗料には、溶媒である水の物性に起因した以下のような問題があった。例えば、水性塗料が被塗物に塗装される際、水の表面張力が高いため、水性塗料と被塗物との濡れ性が不足し、ハジキが発生するという問題があった。また、水性塗料の表面張力が不均一であることにより、被塗物に塗装された水性塗料が乾燥及び硬化した塗膜の表面に、凹みが生じる問題もあった。
【0004】
以上の問題を解消するため、従来から、水性塗料用の添加剤として、レベリング剤、濡れ剤、スリップ剤、ハジキ防止剤などの表面調整剤が用いられている。
【0005】
このような表面調整剤として、例えば、特許文献1には、シリコーン系表面調整剤を含有する水性塗料における上塗り塗料の付着性を改善するため、特定のエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、特定のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体を含有する濡れ性向上剤を水性塗料用の表面調整剤として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-105786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らが検討したところによると、上記特許文献1に記載された水性塗料用の濡れ性向上剤では、自動車材料、高級家具、家電等の極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途においては、十分なハジキ防止性(ハジキやクレーターの発生を防ぐ性能)が得られないという問題があった。また、上塗り性(水性塗料を乾燥及び硬化した塗膜と上塗り塗膜との層間付着性)に悪影響を及ぼしたり、上塗り塗膜の肌を荒らす、さらには濡れ性向上剤自体が塗料成分と分離するなどの悪影響を及ぼしたりするおそれがある。
【0008】
このように、従来は、自動車材料、高級家具、家電等の極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途においては、ハジキ防止性と上塗り性とを高い水準で兼ね備える水性塗料用の表面調整剤は提供されておらず、このような表面調整剤が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途に用いた場合であっても、ハジキ防止性と上塗り性とを兼ね備える水性塗料用の表面調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す共重合体(P)を水性塗料用表面調整剤に含有させることにより、極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途に用いた場合であっても、ハジキ防止性と上塗り性とを高い水準で兼ね備える水性塗料用の表面調整剤を提供できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。共重合体(P)は、少なくとも、重合性不飽和二重結合を有する二塩基酸エステル(A)と、特定の重合性不飽和二重結合を有するエーテル基含有重合性不飽和モノマー(B)とを特定比率で混合した混合モノマーを重合させることにより得られる。また、共重合体(P)は、特定範囲の重量平均分子量を有する。
【0011】
すなわち、本発明は、共重合体(P)として、
重合性不飽和二重結合を有する二塩基酸エステル(A) 10質量%以上99質量%以下と、
一般式(1):
-(C2mO)-R ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基を表し、Rは、水素原子、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、アリル基又は炭素数1~22のアルキル基を表し、mは2~4であり、nは2~100である。)
で表されるエーテル基を含有する重合性不飽和モノマー(B) 1質量%以上90質量%以下と、
を構成モノマーとして含む共重合体(P1)を含有しており、
前記共重合体(P)の重量平均分子量が1000以上100000以下である、水性塗料用表面調整剤である。
【0012】
本発明の一態様において、前記共重合体(P)が、前記二塩基酸エステル(A)と、前記重合性不飽和モノマー(B)と、前記二塩基酸エステル(A)と前記重合性不飽和モノマー(B)との合計100質量部に対して400質量部以下の共重合性不飽和モノマー(C)とを構成モノマーとして含む共重合体(P2)であり、かつ、前記共重合性不飽和モノマー(C)が、前記二塩基酸エステル(A)及び前記重合性不飽和モノマー(B)と異種のモノマーであってもよい。
【0013】
本発明において、前記二塩基酸エステル(A)が、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、シトラコン酸ジエステル、メサコン酸モノエステル及びメサコン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーである。
【0014】
本発明の他の態様において、前記一般式(1)で、Rが、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基であることが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様において、前記共重合性不飽和モノマー(C)が、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有する重合性不飽和モノマー、アミド基を有する重合性不飽和モノマー、グリコール基を有する重合性不飽和モノマー、グリシジル基を有する重合性不飽和モノマー、カルボキシル基を有する重合性不飽和モノマー、多官能性不飽和モノマー及びメタクリロイルオキシ基を有する反応性シリコーンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上述した水性塗料用表面調整剤を全樹脂固形分100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下含有する、水性塗料組成物である。
【0017】
また、本発明は、上述した水性塗料組成物を硬化した、塗膜である。
【0018】
また、本発明は、上述した塗膜と、当該塗膜の表面の全部又は一部に積層された上塗り塗膜とを含む、複層塗膜である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表面調整剤が上述した特定の重合体を含有することにより、極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途に用いた場合であっても、ハジキ防止性と上塗り性とを兼ね備える水性塗料用の表面調整剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の少なくともいずれか一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種のエステルを意味し、「(ジ)モノ」は、「ジ」又は「モノ」を意味する。
【0021】
[水性塗料用表面調整剤]
本発明に係る水性塗料用表面調整剤は、二塩基酸エステル(A)と、重合性不飽和モノマー(B)との共重合体(P1)を含有する。二塩基酸エステル(A)は、重合性不飽和二重結合を有する。また、重合性不飽和モノマー(B)は、以下の一般式(1)で表されるエーテル基を含有するモノマーである。
-(C2mO)-R ・・・(1)
【0022】
上記一般式(1)において、Rは、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基を表し、Rは、水素原子、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、アリル基又は炭素数1~22のアルキル基を表し、mは2~4であり、nは2~100である。
【0023】
共重合体(P1)の分子骨格は、例えば、二塩基酸エステル(A)に由来する疎水性幹ポリマーと重合性不飽和モノマー(B)に由来する親水性枝ポリマー(この親水性枝ポリマーは、エーテル基を含有する。)とで構成されるグラフト共重合体である。ただし、共重合体(P1)の骨格は、グラフト共重合体に制限されず、二塩基酸エステル(A)と重合性不飽和モノマー(B)とがランダムに共重合したランダム共重合体、又は、二塩基酸エステル(A)と重合性不飽和モノマー(B)とのブロック共重合体であってもよい。
【0024】
また、本発明に係る水性塗料用表面調整剤中に含まれる共重合体としては、二塩基酸エステル(A)と、重合性不飽和モノマー(B)と、後述する共重合性不飽和モノマー(C)との共重合体(P2)であってもよい。共重合体(P2)の分子骨格は、特に制限されず、グラフト共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0025】
ここで、表面調整剤が優れたハジキ防止性を有するためには、表面調整剤に含有される重合体の分子量が比較的小さい(例えば、重量平均分子量が100000以下、好ましくは35000以下、より好ましくは10000以下である)ことが好ましい。重合体の分子量が比較的小さいことで、表面調整剤が塗膜表面に配向しやすくなるため、ハジキや凹みの発生を防止できる。また、塗膜表面に配向した表面調整剤は、重合体の分子量が比較的小さいことで、上塗り時に上塗り塗料への再溶解性が向上する。その結果、良好な層間付着性を有する塗膜が得られる。このように、ハジキ防止性及び上塗り性に優れた表面調整剤を得るためには、分子量の比較的小さな重合体を合成することが好ましい。本発明の表面調整剤に含まれる重合体は、構成モノマーとして二塩基酸エステル(A)を有する。一般に、二塩基酸エステルは、通常のラジカル重合では反応しにくいため、重合体の分子量が大きくなりにくい。そのため、二塩基酸エステル(A)を構成モノマーのひとつとして用いることで、分子量の比較的小さな重合体を合成することが可能になる。一方で、二塩基酸エステル単独で重合度を高くすることは困難である。この理由は、二塩基酸エステルにおけるエステル結合部が立体障害となり、ラジカル重合において連鎖反応を阻害するためである。重合体の分子量が小さすぎる(例えば、重量平均分子量が1000未満である)と、後述するように、塗装時に表面調整剤が塗料表面に配向する能力が十分ではないため、十分なハジキ防止性を得ることができなくなってしまう。そこで、本発明では、二塩基酸エステル(A)を、特定の重合性不飽和モノマー(B)と特定のモノマー比率で共重合させることで、優れたハジキ防止性と上塗り性を兼ね備える表面調整剤を得るために好適な分子量範囲となる重合体を合成している。
【0026】
また、二塩基酸エステル(A)には、各モノマー単位中にエステル結合部が最大2箇所存在する。このエステル結合部における炭化水素鎖が表面調整効果(特に、ハジキ防止効果)を発揮する。そのため、二塩基酸エステル(A)を構成モノマーとして用いた重合体を含有する本発明の表面調整剤は、表面調整効果に非常に優れたものとなる。
【0027】
(二塩基酸エステル(A))
共重合体(P1)及び共重合体(P2)のモノマーに用いられる二塩基酸エステル(A)としては、重合性不飽和結合を有する二塩基酸エステルであれば特に制限されないが、例えば、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、シトラコン酸ジエステル、メサコン酸モノエステル及びメサコン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
【0028】
より具体的には、二塩基酸エステル(A)としては、例えば、マレイン酸ジ(モノ)メチルエステル、マレイン酸ジ(モノ)エチルエステル、マレイン酸ジ(モノ)ノルマルプロピルエステル、マレイン酸ジ(モノ)イソプロピルエステル、マレイン酸ジ(モノ)ノルマルブチルエステル、マレイン酸ジ(モノ)イソブチルエステル、マレイン酸ジ(モノ)ノルマルオクチルエステル、マレイン酸ジ(モノ)2-エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジ(モノ)イソノニルエステル、マレイン酸ジ(モノ)ラウリルエステル、マレイン酸ジ(モノ)ステアリルエステル、マレイン酸ジ(モノ)ベンジルエステル、フマル酸ジ(モノ)メチルエステル、フマル酸ジ(モノ)エチルエステル、フマル酸ジ(モノ)ノルマルプロピルエステル、フマル酸ジ(モノ)イソプロピルエステル、フマル酸ジ(モノ)ノルマルブチルエステル、フマル酸ジ(モノ)イソブチルエステル、フマル酸ジ(モノ)ノルマルオクチルエステル、フマル酸ジ(モノ)2-エチルヘキシルエステル、フマル酸ジ(モノ)イソノニルエステル、フマル酸ジ(モノ)ラウリルエステル、フマル酸ジ(モノ)ステアリルエステル、フマル酸ジ(モノ)ベンジルエステル、イタコン酸ジ(モノ)メチルエステル、イタコン酸ジ(モノ)エチルエステル、イタコン酸ジ(モノ)ノルマルプロピルエステル、イタコン酸ジ(モノ)イソプロピルエステル、イタコン酸ジ(モノ)ノルマルブチルエステル、イタコン酸ジ(モノ)イソブチルエステル、イタコン酸ジ(モノ)ノルマルオクチルエステル、イタコン酸ジ(モノ)2-エチルヘキシルエステル、イタコン酸ジ(モノ)イソノニルエステル、イタコン酸ジ(モノ)ラウリルエステル、イタコン酸ジ(モノ)ステアリルエステル、イタコン酸ジ(モノ)ベンジルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)メチルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)エチルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)ノルマルプロピルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)イソプロピルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)ノルマルブチルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)イソブチルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)ノルマルオクチルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)2-エチルヘキシルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)イソノニルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)ラウリルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)ステアリルエステル、シトラコン酸ジ(モノ)ベンジルエステル、メサコン酸ジ(モノ)メチルエステル、メサコン酸ジ(モノ)エチルエステル、メサコン酸ジ(モノ)ノルマルプロピルエステル、メサコン酸ジ(モノ)イソプロピルエステル、メサコン酸ジ(モノ)ノルマルブチルエステル、メサコン酸ジ(モノ)イソブチルエステル、メサコン酸ジ(モノ)ノルマルオクチルエステル、メサコン酸ジ(モノ)2-エチルヘキシルエステル、メサコン酸ジ(モノ)イソノニルエステル、メサコン酸ジ(モノ)ラウリルエステル、メサコン酸ジ(モノ)ステアリルエステル、メサコン酸ジ(モノ)ベンジルエステル等が挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上述したモノマーのうち、塗料成分(ビヒクル)の表面張力をハジキの原因となる汚染物質よりも低下させる効果(表面張力の低下効果)を高めるためには、二塩基酸エステル(A)は、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル及びフマル酸モノエステルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーが好ましく、マレイン酸ジエステルとフマル酸ジエステルの少なくともいずれか一方であることがより好ましい。
【0030】
二塩基酸エステル(A)は、二塩基酸エステル(A)と重合性不飽和モノマー(B)とのモノマー混合物の合計量を100質量%とした場合に、10質量%以上99質量%以下の割合で用いられる。二塩基酸エステル(A)が10質量%未満の場合には、共重合体(P1)及び共重合体(P2)において、エステル結合に由来する疎水性基(非極性基)が不足するため、表面張力の低下効果が低く、十分なハジキ防止性が得られない。一方、二塩基酸エステル(A)が99質量%を超える場合には、共重合体(P1)及び共重合体(P2)において、エステル結合に由来する疎水性基(非極性基)が過剰になるため、水性塗料組成物への分散性が低下し、塗膜の外観に悪影響を及ぼす結果、上塗り性が悪化する。ハジキ防止性の改善効果を高めるためには、二塩基酸エステル(A)が20質量%以上の割合で用いられることが好ましい。また、上塗り性の改善効果を高めるためには、二塩基酸エステル(A)が80質量%以下の割合で用いられることが好ましく、60質量%以下の割合で用いられることがより好ましい。
【0031】
(重合性不飽和モノマー(B))
共重合体(P1)及び共重合体(P2)のモノマーに用いられる重合性不飽和モノマー(B)としては、上述した一般式(1)で表されるエーテル基を含有するモノマーであれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-プロピレン)グリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレン-プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレン-テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリ(エチレン-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、べへニロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシレートポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等のアリルエーテル類;ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類などが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上述したモノマーのうち、ハジキ防止性を高めるためには、一般式(1)におけるRが、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基であることが好ましい。
【0033】
また、重合性不飽和モノマー(B)中のエーテル鎖長(すなわち、一般式(1)におけるn)は、2~100である。nが2未満又は100超であると、本発明の表面調整剤を含有する水性塗料組成物が硬化した塗膜の外観が悪化する。塗膜の外観を向上させるには、一般式(1)におけるnが4~50であることが好ましい。
【0034】
重合性不飽和モノマー(B)は、二塩基酸エステル(A)と重合性不飽和モノマー(B)とのモノマー混合物の合計量を100質量%とした場合に、1質量%以上90質量%以下の割合で用いられる。重合性不飽和モノマー(B)が1質量%未満の場合には、共重合体(P1)及び共重合体(P2)において、エーテル結合に由来する親水性基(極性基)が不足するため、水性塗料組成物への分散性が低下し、塗膜の外観への悪影響を及ぼす結果、上塗り性が悪化する。一方、重合性不飽和モノマー(B)が90質量%を超える場合には、共重合体(P1)及び共重合体(P2)において、エーテル結合に由来する親水性基(極性基)が過剰になるため、表面張力の低下効果が低く、十分なハジキ防止性が得られない。ハジキ防止性の改善効果を高めるためには、重合性不飽和モノマー(B)が50質量%以下の割合で用いられることが好ましく、30質量%以下の割合で用いられることがより好ましい。また、上塗り性の改善効果を高めるためには、重合性不飽和モノマー(B)が2質量%以上の割合で用いられることが好ましく、5質量%以上の割合で用いられることがより好ましい。
【0035】
(共重合性不飽和モノマー(C))
上述した二塩基酸エステル(A)及び重合性不飽和モノマー(B)に加え、共重合性不飽和モノマー(C)を共重合させることにより、水性塗料組成物中での表面調整剤の分散性及び安定性を向上させ、かつ、表面調整剤に塗料樹脂成分との反応性を付与することができる。
【0036】
共重合体(P2)のモノマーに用いられる共重合性不飽和モノマー(C)としては、上述した二塩基酸エステル(A)及び重合性不飽和モノマー(B)と異種のモノマーであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル、水酸基を有する重合性不飽和モノマー、アミド基を有する重合性不飽和モノマー、グリコール基を有する重合性不飽和モノマー、グリシジル基を有する重合性不飽和モノマー、カルボキシル基を有する重合性不飽和モノマー、多官能性不飽和モノマー及びメタクリロイルオキシ基を有する反応性シリコーンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
【0037】
より具体的には、共重合性不飽和モノマー(C)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ノルマルプロピルエステル、(メタ)アクリル酸イソプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチルエステル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソノニルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボニルエステルなどのようなアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレートなどのような(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物である水酸基含有の(メタ)アクリレート類;フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール(メタ)アクリレート類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドブチルエーテル、N-メチロールメタクリルアミドブチルエーテル、N-エチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-シクロプロピルアクリルアミド、N-シクロプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチル,N-エチルアクリルアミド、N-メチル,N-エチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N-メチロールメタクリルアミドメチルエーテル、N-メチロールアクリルアミドエチルエーテル、N-メチロールメタクリルアミドエチルエーテル、N-メチロールアクリルアミドプロピルエーテル、N-メチロールメタクリルアミドプロピルエーテル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリンなどのようなアクリルアミド又はメタクリルアミド類;N-ビニル-2-ピロリドンのような親水性ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー類;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有重合性不飽和モノマー類;メタクリロイルオキシ基を有する反応性シリコーン(例えば、JNC株式会社製のサイラプレーンFM-0711、FM-0721及びFM-0725;東亞合成会社製のAK-5及びAK-30;信越シリコーン株式会社製のX22-164A、X22-164B及びX22-164Cとして入手可能);ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性不飽和モノマー類などが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0038】
共重合性不飽和モノマー(C)は、二塩基酸エステル(A)と重合性不飽和モノマー(B)との合計100質量部に対して0質量部超400質量部以下の割合で用いられることが好ましく、200質量部以下の割合で用いられることがより好ましく、100質量部以下の割合で用いられることがさらに好ましい。共重合性不飽和モノマー(C)を400質量部以下とすることにより、水性塗料組成物中での表面調整剤の分散性及び安定性の向上、表面調整剤への塗料樹脂成分との反応性付与などの効果を高めることができる。なお、共重合性不飽和モノマー(C)の添加効果(上記の分散性及び安定性の向上、反応性付与などの効果)を高めるためには、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0039】
(共重合体の平均分子量)
共重合体(P1)及び共重合体(P2)の重量平均分子量は、それぞれ、1000以上100000以下である。共重合体(P1)及び共重合体(P2)の重量平均分子量が1000未満の場合、水性塗料に配合した共重合体(P1)及び共重合体(P2)が、塗装時に塗料表面に配向する能力が十分ではないため、十分なハジキ防止性を得ることができない。一方、共重合体(P1)及び共重合体(P2)の重量平均分子量が100000を超える場合は、共重合体(P1)及び共重合体(P2)の上塗り塗料への再溶解性が低下し、上塗り性が悪化する。ハジキ防止性を高めるためには、共重合体(P1)及び共重合体(P2)の重量平均分子量は、それぞれ、3000以上であることが好ましい。また、上塗り性をさらに高めるためには、共重合体(P1)及び共重合体(P2)の重量平均分子量は、それぞれ、35000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。
【0040】
ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。後述する実施例においては、ゲルパーミエーションクロマトグラムの測定機器として「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製、商品名)を用い、カラムとして、「TSKgel GMHxL」を2本、「TSKgel G-2500HxL」を1本、「TSKgel G-2000HxL」を1本(いずれも東ソー株式会社製、商品名)の計4本を用い、移動相をテトラヒドロフランとし、測定温度を40℃とし、流速を1cc/分とし、検出器を示差屈折計(RI)とする、という条件で、重量平均分子量を測定した。
【0041】
(共重合体の合成方法)
本発明の表面調整剤に含有される共重合体(P)、すなわち、上述した共重合体(P1)及び共重合体(P2)を合成する方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などがある。また、重合開始剤としては、一般に用いられるアゾ重合開始剤、過酸化物などが用いられる。共重合体の合成方法により、表面調整剤の機能及び性能に影響があるわけではないため、共重合体の合成方法は、特に制限されない。
【0042】
(表面調整剤の共重合体以外の成分)
本発明の表面調整剤は、共重合体(P)の水性塗料への分散を容易にするため、必要に応じて水、又は有機溶剤を含有してもよい。表面調整剤に用いられる有機溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、又はケトン、エステル、アルコール、エーテル等を挙げることができるが、一般の水系コーティング材で用いられている有機溶剤が好ましい。そのような有機溶剤の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルへキシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルへキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、本発明の表面調整剤は、その特性や本発明の目的が損なわれない範囲で、他の物質、例えば、界面活性剤、増膜助剤、ドライヤー、汚染防止剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、防腐防カビ剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、難燃剤、接着向上剤、着色剤、帯電防止剤、剥離剤、カップリング剤、消臭剤、香料及び染料などの他の添加剤を含有することができる。
【0044】
(表面調整剤の用途)
本発明の水性塗料用表面調整剤が適する用途は、自動車材料用塗料、高級家具用塗料、家電用塗料等の極めて高度な外観及び上塗り性が要求される水性塗料である。このような水性塗料としては、例えば、自動車用水性ベース塗料、自動車用水性中塗り塗料、自動車用水性プライマー塗料、高級家具用水性塗料等があり、これらの水性塗料に本発明の表面調整剤を添加することにより、水性塗料に、十分なハジキ防止性を付与するとともに、良好な上塗り性も付与することができる。
【0045】
[水性塗料組成物]
本発明の水性塗料組成物は、上述した水性塗料用表面調整剤を含有する。本発明の水性塗料用表面調整剤の含有量は、水性塗料中の塗料成分である樹脂の種類、顔料の配合組成などにより異なるが、通常は、水性塗料中の全樹脂固形分100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下である。なお、本発明の表面調整剤の含有量は、水性塗料中の全樹脂固形分を100質量%とした場合の表面調整剤中の固形分割合(質量%)である。表面調整剤の含有量が0.1質量%未満であると、水性塗料組成物に十分なハジキ防止性が付与されない。一方、表面調整剤の含有量が10質量%超であると、水性塗料組成物の上塗り性を阻害する。ハジキ防止性をさらに高めるためには、水性塗料組成物中の表面調整剤の含有量が、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、上塗り性をさらに高めるためには、水性塗料組成物中の表面調整剤の含有量が、5質量%以下であることが好ましい。
【0046】
(塗料成分)
本発明の水性塗料組成物に含有されている塗料成分としては、特に制限されないが、例えば、塗膜形成用の樹脂、当該樹脂の硬化剤、顔料及び染料、希釈溶媒、界面活性剤、並びに改質剤等が挙げられる。また、必要に応じて、硬化触媒、増感剤、消泡剤、粘性調整剤、分散剤、レベリング剤、難燃剤、接着向上剤、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、剥離剤、及びカップリング剤等の各種添加剤が塗料成分として含有されていてもよい。
【0047】
水性塗料組成物に含有される樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂及びアミノ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、例えば、加熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型、酸化硬化型、光カチオン硬化型、過酸化物硬化型、及び酸/エポキシ硬化型のように、触媒存在下又は非存在下で化学反応を伴って硬化するものであってもよく、あるいは、ガラス転移点が高い樹脂で、化学反応を伴わず、希釈溶媒が揮発するだけで被膜となるものであってもよい。また、硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物及びエポキシ化合物などが挙げられる。
【0048】
顔料及び染料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、オーカー、チタンイエロー、ジンクロメート、弁柄、アルミノケイ酸塩、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントロキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料及びイソインドリノン系顔料等の着色顔料;アルミニウムフレーク、銅フレーク、雲母状酸化鉄、雲母、及び雲母に金属酸化物を被覆した鱗片状粉末等のメタリック顔料;及び、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、タルク、有機繊維、ガラス粉等の体質顔料などが挙げられる。
【0049】
本発明の水性塗料組成物には、その特性や本発明の目的が損なわれない範囲で、他の物質、例えば界面活性剤、増膜助剤、ドライヤー、汚染防止剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、防腐防カビ剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、難燃剤、接着向上剤、着色剤、帯電防止剤、剥離剤、カップリング剤、消臭剤、香料及び染料などの他の添加剤を含有することができる。
【0050】
(水性塗料組成物の製造方法)
上述した本発明の水性塗料組成物は、例えば、ビヒクル及び顔料等の配合物をニーダー又はロールなどを用いて混練し、サンドグラインドミル又はディスパー等を用いて水に溶解又は分散させる方法により製造される。
【0051】
本発明の水性塗料用表面調整剤は、水性塗料組成物に任意のタイミングで添加することができ、例えば、塗膜形成用の樹脂の合成時、ビヒクル及び顔料等を混練する過程、又は、水性塗料組成物の製造の最終段階、等のタイミングで添加することができる。
【0052】
(水性塗料組成物の用途)
本発明の水性塗料組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、自動車材料用の塗装、高級家具の塗装、家電の塗装等の極めて高度な外観及び上塗り性が要求される塗装用途に好適である。
【0053】
[塗膜]
本発明の塗膜は、上述した本発明の水性塗料組成物を硬化させたものである。本発明の表面調整剤を含有する水性塗料組成物はハジキ防止性に優れるため、極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途に水性塗料組成物を用いた場合であっても、得られる塗膜にハジキやクレーターが発生することを防止できる。
【0054】
(塗膜の形成方法)
本発明の塗膜は、被塗物としての基材に本発明の水性塗料組成物を塗装した後に、乾燥及び硬化させる方法により形成される。被塗物としては、特に制限されないが、例えば、金属、プラスチック、木材、ゴム、ガラス、石材、セメント、モルタル剤、紙、不織布、布及びセラミックスなどでできた基材が挙げられる。水性塗料組成物の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、スプレーコート、ロールコート、刷毛塗り塗装、カーテンコート、バーコート、ドクターブレード、スリットコート、ディップコート、フローコートなどが挙げられる。水性塗料組成物の硬化方法としては、特に制限されず、例えば、常温硬化、加熱硬化、紫外線硬化などが挙げられるが、特に加熱硬化が好適である。
【0055】
[複層塗膜]
本発明の複層塗膜は、上述した塗膜と、当該塗膜の表面の全部又は一部に積層された上塗り塗膜とを含む。本発明の表面調整剤を含有する水性塗料組成物は上塗り性に優れるため、極めて高度な外観及び上塗り性が要求される用途に水性塗料組成物を用いた場合であっても、水性塗料組成物により得られる塗膜と上塗り塗膜との層間付着性に優れる。
【0056】
(複層塗膜の形成方法)
本発明の複層塗膜は、例えば、本発明の表面調整剤が添加された下塗り水性塗料を硬化させて得られた塗膜の表面の全部又は一部を上塗り塗料により塗装することにより形成される。あるいは、本発明の表面調整剤が添加された下塗り水性塗料を硬化させることなく、上塗り塗料をウェットオンウェット塗装してもよい。その際、好ましくは、本発明の表面調整剤が添加された下塗り水性塗料を塗装後、必要に応じて自然乾燥又は予熱乾燥を施すことで、下塗り水性塗料を硬化させることなく、不要な溶媒(水や有機溶剤などの揮発分)を除去した後、上塗り塗料を塗装する。下塗り水性塗料の乾燥方法としては、特に、予熱乾燥が好適である。
【0057】
また、上塗り塗料の塗装方法及び硬化方法は、特に制限されず、本発明の水性塗料組成物の塗装方法及び硬化方法と同様の方法を用いることができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で当業者が想到し得る他の形態又は各種の変更例についても本発明の技術的範囲に属するものと理解される。
【0059】
例えば、上述した実施形態と別の観点によれば、本発明は、重合性不飽和二重結合を有する二塩基酸エステル(A) 10質量%以上99質量%以下と、一般式(1):
-(C2mO)-R ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基を表し、Rは、水素原子、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、アリル基又は炭素数1~22のアルキル基を表し、mは2~4であり、nは2~100である。)
で表されるエーテル基を含有する重合性不飽和モノマー(B) 1質量%以上90質量%以下と、を構成モノマーとして含み、重量平均分子量が1000以上100000以下である共重合体の、水性塗料用表面調整剤としての使用であってもよい。
【0060】
前記共重合体の前記水性塗料用表面調整剤としての使用において、前記共重合体が、前記二塩基酸エステル(A)と、前記重合性不飽和モノマー(B)と、前記二塩基酸エステル(A)と前記重合性不飽和モノマー(B)との合計100質量部に対して400質量部以下の共重合性不飽和モノマー(C)とを構成モノマーとして含む共重合体であり、前記共重合性不飽和モノマー(C)が、前記二塩基酸エステル(A)及び前記重合性不飽和モノマー(B)と異種のモノマーであってもよい。
【0061】
前記共重合体の前記水性塗料用表面調整剤としての使用において、前記二塩基酸エステル(A)が、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、シトラコン酸モノエステル、シトラコン酸ジエステル、メサコン酸モノエステル及びメサコン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであってもよい。
【0062】
前記共重合体の前記水性塗料用表面調整剤としての使用において、前記一般式(1)で、Rが、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又はアリル基であってもよい。
【0063】
前記共重合体の前記水性塗料用表面調整剤としての使用において、前記共重合性不飽和モノマー(C)が、(メタ)アクリル酸アルキル、水酸基を有する重合性不飽和モノマー、アミド基を有する重合性不飽和モノマー、グリコール基を有する重合性不飽和モノマー、グリシジル基を有する重合性不飽和モノマー、カルボキシル基を有する重合性不飽和モノマー、多官能性不飽和モノマー及びメタクリロイルオキシ基を有する反応性シリコーンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーであってもよい。
【0064】
また、本発明は、前記重合体の、水性塗料用表面調整剤を全樹脂固形分100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下含有する水性塗料組成物への使用であってもよい。
【0065】
また、本発明は、前記重合体の、上述した水性塗料組成物を硬化した塗膜への使用であってもよい。
【0066】
また、本発明は、前記重合体の、上述した塗膜と当該塗膜の表面の全部又は一部に積層された上塗り塗膜とを含む複層塗膜への使用であってもよい。
【実施例
【0067】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。また、実施例中の「%」及び「部」は特に断らない限り、「質量%」及び「質量部」を示す。
【0068】
[表面調整剤の準備]
まず、以下の製造例1~31及び比較製造例1~4のようにして表面調整剤[1]~[31]及び比較添加剤[H1]~[H4]を得た。
【0069】
(製造例1)
撹拌装置、還流冷却器、滴下ポンプ、温度計及び窒素導入管を備えた500mlの反応容器に、溶剤(a-1)としてエチレングリコールモノブチルエーテル100部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら反応容器の内温を120℃まで昇温した。滴下溶液(b-1)として、フマル酸ジイソブチル120部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)15部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)15部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を調製した。次に、反応容器の内温を120℃に維持しながら、上記溶剤(a-1)に上記滴下溶液(b-1)を60分間かけて均一に滴下した。滴下終了後、反応温度を120℃とした状態で60分間維持した後、反応温度を100℃に調整した。反応容器の内温が100℃になった時点でターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 3部を加え、反応温度を100℃とした状態で120分間維持し、重合反応を行った。重合反応終了後、溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルを用いて固形分を40%に調整し、表面調整剤[1]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は2000であった。重量平均分子量は、上述したように、GPCで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出された値である(表面調整剤[2]~[31]及び比較添加剤[H1]~[H3]についても同様である)。
【0070】
(製造例2)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-2)としてイタコン酸ジブチル90部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-90G:新中村化学工業株式会社 製)60部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[2]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は4200であった。
【0071】
(製造例3)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-3)としてフマル酸ジブチル45部、フマル酸ジ2-エチルヘキシル45部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-40G:新中村化学工業株式会社 製)30部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)30部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[3]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は35000であった。
【0072】
(製造例4)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-4)としてフマル酸ジブチル45部、フマル酸ジ2-エチルヘキシル45部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-40G:新中村化学工業株式会社 製)60部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[4]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は4200であった。
【0073】
(製造例5)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-5)としてマレイン酸モノ2-エチルヘキシル30部、フマル酸ジイソブチル117部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)3部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[5]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は1200であった。
【0074】
(製造例6)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-6)としてマレイン酸モノ2-エチルヘキシル15部、フマル酸ジ2-エチルヘキシル105部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名 ブレンマーPDP-400N:日油株式会社 製)30部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[6]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は4800であった。
【0075】
(製造例7)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-7)としてイタコン酸ジブチル120部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名 ブレンマーPDP-400N:日油株式会社 製)30部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 18部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[7]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は8000であった。
【0076】
(製造例8)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-8)としてフマル酸ジエチル105部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-40G:新中村化学工業株式会社 製)45部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[8]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は3200であった。
【0077】
(製造例9)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-9)としてフマル酸ジイソブチル97.5部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)52.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 27部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[9]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は7400であった。
【0078】
(製造例10)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート150部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-10)としてフマル酸ジブチル22.5部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名 ブレンマーPDP-400N:日油株式会社 製)127.5部及び2,2-ジ(ターシャリー-アミルパーオキシ)ブタン 55%溶液 85部を混合した混合溶液を用い、反応温度を140℃に設定した以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[10]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は8800であった。
【0079】
(製造例11)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-11)としてフマル酸ジイソブチル120部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)30部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 4部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[11]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は11000であった。
【0080】
(製造例12)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-12)としてフマル酸ジイソブチル120部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)30部及びターシャリー-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト40%溶液 3部を混合した混合溶液を用い、反応温度を100℃に設定した以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[12]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は66000であった。
【0081】
(製造例13)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-13)としてフマル酸ジ2-エチルヘキシル30部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 NKエステルAM-230G:新中村化学工業株式会社 製)30部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名 ブレンマーPDP-400N:日油株式会社 製)90部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 60部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[13]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は23000であった。
【0082】
(製造例14)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート175部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-14)としてフマル酸ジブチル45部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)30部、メタクリル酸2-エチルヘキシル75部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 25.5部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[14]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は10000であった。
【0083】
(製造例15)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-15)としてイタコン酸ジブチル60部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)40部、アクリル酸エチル50部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 30部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[15]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は6500であった。
【0084】
(製造例16)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-16)としてフマル酸ジエチル97部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)3部、アクリル酸エチル50部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 4部を混合した混合溶液を用い、反応温度を110℃に設定した以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[16]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は8000であった。
【0085】
(製造例17)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-17)としてフマル酸ジエチル76.3部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)50.8部、アクリル酸エチル22.9部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 6部を混合した混合溶液を用い、反応温度を110℃に設定した以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[17]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は7200であった。
【0086】
(製造例18)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-18)としてマレイン酸ジメチル27部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)52.5部、アクリル酸エチル70.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 47部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[18]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は8700であった。
【0087】
(製造例19)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート150部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-19)としてフマル酸ジブチル45部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)30部、メタクリル酸2-エチルヘキシル75部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 30部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[19]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は28000であった。
【0088】
(製造例20)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート150部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-20)としてフマル酸ジエチル45部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名 ブレンマーPDP-400N:日油株式会社 製)45部、メタクリル酸エチル60部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 20部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[20]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は62000であった。
【0089】
(製造例21)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-21)としてマレイン酸ジブチル78部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-90G:新中村化学工業株式会社 製)45部、アクリル酸2-エチルヘキシル27部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[21]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は11000であった。
【0090】
(製造例22)
製造例1の溶剤(a-1)としてエチレングリコールモノブチルエーテル100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-22)としてフマル酸ジブチル114部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)7.5部、アクリル酸エチル28.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[22]を得た。合成した共重合物の重量平均分子量は1900であった。
【0091】
(製造例23)
滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-23)としてマレイン酸ジ2-エチルヘキシル78部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)45部、アクリル酸イソブチル15部、2-メタクリル酸エチル12部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[23]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は4400であった。
【0092】
(製造例24)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-24)としてイタコン酸ジブチル52.5部、イタコン酸ジ2-エチルヘキシル30部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)45部、メタクリル酸ブチル22.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[24]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は2900であった。
【0093】
(製造例25)
滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-25)としてイタコン酸ジブチル78部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 NKエステルAM-230G:新中村化学工業株式会社 製)30部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(商品名 ユニオックス PKA-5003:日油株式会社 製)15部、メタクリル酸ブチル27部、エチレングリコールモノブチルエーテル47部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[25]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は3400であった。
【0094】
(製造例26)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート150部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-26)としてフマル酸ジエチル15部、フマル酸ジ2-エチルヘキシル15部、イタコン酸ジ2-エチルヘキシル45部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)15部、アクリル酸エチル30部、アクリル酸ブチル30部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 30部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[26]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は3700であった。
【0095】
(製造例27)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート120部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-27)としてフマル酸ジブチル45部、フマル酸モノブチル15部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)4.5部、アクリル酸ブチル70.5部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル7.5部、アクリル酸7.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[27]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は4800であった。
【0096】
(製造例28)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート150部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-28)としてフマル酸ジ2-エチルヘキシル15部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)15部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名 ブレンマーPDP-400N:日油株式会社 製)7.5部、アクリル酸エチル60部、アクリル酸2-エチルヘキシル52.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 27部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[28]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は7000であった。
【0097】
(製造例29)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート120部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-29)としてフマル酸ジブチル45部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)6部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)7.5部、アクリル酸エチル91.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 15部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[29]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は8300であった。
【0099】
(製造例31)
製造例1の溶剤(a-1)の代わりに溶剤(a-2)としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート150部を用い、滴下溶液(b-1)の代わりに滴下溶液(b-31)としてフマル酸ジブチル45部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名 ミラマーM280:MIWON 製)30部、メタクリル酸2-エチルヘキシル75部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 15部を混合した混合溶液を用いた以外は、製造例1と同様の手法により表面調整剤[31]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は59000であった。
【0100】
(比較製造例1)
撹拌装置、還流冷却器、滴下ポンプ、温度計及び窒素導入管を備えた500mlの反応容器に、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート120部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら反応容器の内温を120℃まで昇温した。滴下溶液として、フマル酸ジブチル7.5部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名 ブレンマーAME-400:日油株式会社 製)142.5部及びターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 9部を混合した混合溶液を調製した。次に、反応容器の内温を120℃に維持しながら、上記溶剤に上記滴下溶液を60分間かけて均一に滴下した。滴下終了後、反応温度を120℃とした状態で60分間維持した後、反応温度を100℃に調整した。反応容器の内温が100℃になった時点でターシャリー-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト50%溶液 3部を加え、反応温度を100℃とした状態で120分間維持し、重合反応を行った。重合反応終了後、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを用いて固形分を40%に調整し、比較添加剤[H1]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は5500であった。
【0101】
(比較製造例2)
撹拌装置、還流冷却器、滴下ポンプ、温度計及び窒素導入管を備えた500mlの反応容器に、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート160部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら反応容器の内温を100℃まで昇温した。滴下溶液として、メタクリル酸ドデシル198部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-90G:新中村化学工業株式会社 製)85部及びターシャリー-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト40%溶液 5.1部を混合した混合溶液を調製した。次に、反応容器の内温を100℃に維持しながら、上記溶剤に上記滴下溶液を90分間かけて均一に滴下した。滴下終了後、反応温度を100℃とした状態で60分間維持した。その後、ターシャリー-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト40%溶液 1.8部を加え、反応温度を100℃とした状態で90分間維持し、重合反応を行った。重合反応終了後、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを用いて固形分を40%に調整し、比較添加剤[H2]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は75000であった。
【0102】
(比較製造例3)
撹拌装置、還流冷却器、滴下ポンプ、温度計及び窒素導入管を備えた500mlの反応容器に、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート170部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら反応容器の内温を90℃まで昇温した。滴下溶液として、メタクリル酸ドデシル280部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名 NKエステルM-90G:新中村化学工業株式会社 製)120部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート43部及びジイソノナノイルパーオキサイド25%溶液 8部を混合した混合溶液を調製した。次に、反応容器の内温を90℃に維持しながら、上記溶剤に上記滴下溶液を90分間かけて均一に滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃とした状態で60分間維持した。その後、ジイソノナノイルパーオキサイド25%溶液 2.4部を加え、反応温度90℃とした状態で90分間維持し、重合反応を行った。重合反応終了後、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを用いて固形分を40%に調整し、比較添加剤[H3]を得た。合成した共重合体の重量平均分子量は170000であった。
【0103】
(比較製造例4)
比較添加剤[H4]として、変性シリコーン(商品名 ディスパロンLS-430 楠本化成株式会社 製)を用いた。
【0104】
製造例1~29、31及び比較製造例1~3で合成した共重合物のモノマー比率(質量%)及び重量平均分子量(Mw)、並びに比較製造例4で用いた表面調整剤を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
[表2]
【0107】
[塗料作成例]
上記製造例1~29、31及び比較製造例1~4で得られた表面調整剤及び比較添加剤をそれぞれ含有させる水性塗料として、性能評価用塗料(I)を作製した。また、性能評価用塗料(I)の層間付着性を評価する際に用いる上塗り塗料として、層間付着性評価用塗料(II)を作製した。以下、各塗料の作製法を詳述する。
【0108】
(実施例1~33、35、比較例1~4:性能評価用塗料(I)の作製)
表2に記載の各原料を順次加え、ラボディスパーを用いて混合することにより性能評価用塗料(I)を作製した。この性能評価用塗料(I)に、製造例1~29、31で得られた表面調整剤[1]~[29]、[31]及び比較製造例1~4で得られた比較添加剤[H1]~[H4]を表4に示した添加量(水性塗料中の樹脂固形分を100質量%とした場合の表面調整剤中の固形分の割合[質量%])で添加し、ラボディスパーにて分散することにより、実施例1~33、35及び比較例1~4の水性塗料組成物を得た。
【0109】
【表3】
【0110】
(層間付着性評価用塗料(II)の作成)
表3に記載の配合Aの組成物にガラスビーズを加えサンドミルを用いて分散した。分散後、配合Aの組成物に配合Bの組成物を順次加え、ラボディスパーを用いて混合することにより、水性白塗料組成物を得た。この水性白塗料組成物を層間付着性評価用塗料(II)として用いた。
【0111】
【表4】
【0112】
[水性塗料の評価]
上述したようにして得られた実施例1~33、35及び比較例1~4の水性塗料組成物をそれぞれ基材に塗装し、塗装された水性塗料組成物を乾燥及び硬化させることにより、実施例1~33、35及び比較例1~4の塗膜を形成した。このようにして得られた塗膜について、以下のようにして、ハジキ防止性及び塗膜外観を評価した。また、実施例1~33、35及び比較例1~4の塗膜に、さらに上塗り塗料として上記層間付着性評価用塗料(II)を塗装後に乾燥及び硬化させることにより、実施例1~33、35及び比較例1~4の複層塗膜を得た。これらの複層塗膜について、層間付着性を評価した。
【0113】
(ハジキ防止性の評価方法)
ブリキ板に、ハジキ汚染物質として、A:ハンドクリーム、B:真空ポンプ油、C:可塑剤(フタル酸ジイソノニル)、D:皮脂の4種類を付着させた。次いで、ハジキ汚染物質を付着させたブリキ板(基材)に、実施例1~33、35及び比較例1~4の水性塗料組成物を、乾燥膜厚が40μmとなるように塗装した。水性塗料組成物の塗装には、ワイヤーコーターを用いた。塗装された水性塗料組成物を室温で5分間静置し、80℃にて7分間プレヒートした後、140℃にて30分間焼き付けることでハジキ防止性評価用の実施例1~33、35及び比較例1~4の塗膜を作製した。
【0114】
ハジキ防止性は、ハジキ汚染物質によるハジキの発生状況を目視で観察し、次のように評価した。
◎:ハジキが見られず、ハジキ汚染物質塗布部の塗膜平滑性も悪化していない。
○:ハジキは見られないが、ハジキ汚染物質塗布部の塗膜平滑性が悪化している。
△:ハジキ汚染物質塗布部の一部にハジキが見られる。
×:ハジキ汚染物質塗布部の全体にハジキが見られる。
【0115】
(塗膜外観の評価方法)
カチオン電着板(基材)に、実施例1~33、35及び比較例1~4の水性塗料組成物を、乾燥膜厚が40μmとなるように塗装した。水性塗料組成物の塗装には、ワイヤーコーターを用いた。塗装された水性塗料組成物を室温で5分間静置し、80℃にて7分間プレヒートした後、140℃にて30分間焼き付けることで外観評価用の実施例1~33、35及び比較例1~4の塗膜を作製した。塗膜外観は、塗膜の表面の外観、平滑性、凹みを目視により観察し、次のように評価した。
◎:平滑性の悪化及び凹みが見られない。
○:塗膜の一部に平滑性の悪化又は凹みが見られる。
△:塗膜の一部に平滑性の悪化及び凹みが見られる。
×:塗膜の全体に平滑性の悪化及び凹みが見られる。
【0116】
(層間付着性の評価方法)
カチオン電着板(基材)に、1層目として実施例1~33、35及び比較例1~4の水性塗料組成物を、乾燥膜厚が40μmとなるように塗装した。塗装された各水性塗料組成物を室温で5分間静置し、80℃にて7分間プレヒートした後、140℃にて30分間焼き付けることで、実施例1~33、35及び比較例1~4の塗膜を形成した。これらの塗膜上に2層目として層間付着性評価用塗料(II)を、乾燥膜厚が30μmとなるように塗装した。水性塗料組成物及び層間付着性評価用塗料(II)の塗装には、ワイヤーコーターを用いた。塗装された塗料(II)を室温で5分間静置し、80℃にて7分間プレヒートした後、130℃にて30分間焼き付けることで、実施例1~33、35及び比較例1~4の複層塗膜を形成した。これらの複層塗膜に、JIS K5600-5-6に記載された付着性(クロスカット法)に従い、20mm×20mm角内に等幅の2mm間隔の直角格子パターンを切り込むことで碁盤目を100個作った。その後、碁盤目上に透明感圧付着テープを貼付して引き剥がした。1層目と2層目の層間で剥離が全く見られないものを100とし、残存した格子角部分を数え、その数により層間付着性を評価した。
【0117】
(評価結果)
上述したようにして評価したハジキ防止性、塗膜外観及び層間付着性の評価結果を表4に示した。
【0118】
[表5]
【0119】
表4に示すように、実施例1~33、35の水性塗料組成物を用いて得られた塗膜及び複層塗膜は、ハジキ防止性、塗膜外観及び層間付着性のいずれも良好であった。したがって、実施例1~33、35の水性塗料組成物は、ハジキ防止性と上塗り性を兼ね備えているといえる。一方、二塩基酸エステル(A)のモノマー比率が本発明の範囲外である比較例1の水性塗料組成物を用いて得られた塗膜は、ハジキ防止性に劣っていた。また、二塩基酸エステル(A)を構成モノマーとして含まず、その代わりにメタクリル酸エステルを構成モノマーとして含む比較例2及び3の水性塗料組成物を用いて得られた塗膜及び複層塗膜は、塗膜外観及び層間付着性に劣っており、かつ、ハジキ防止性も実施例1~33、35と同等以下であった。さらに、添加剤としてシリコーン系表面調整剤を含有する比較例4の水性塗料組成物を用いて得られた塗膜及び複層塗膜は、極めて高度な上塗り性(層間付着性)が要求される用途に用いた場合には、実施例1~33、35よりも層間付着性が非常に劣っていた。