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特許7077421イソブチレン系ポリマーを官能化するための無溶媒プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】イソブチレン系ポリマーを官能化するための無溶媒プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20220523BHJP
   C08F 8/34 20060101ALI20220523BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20220523BHJP
   C08F 10/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F8/34
C08F8/32
C08F10/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020554202
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019024914
(87)【国際公開番号】W WO2019195111
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/651,964
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18172743.9
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】グェン ポール ティー ク
(72)【発明者】
【氏名】フリース デヴィッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファム トュ エヌ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユアン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ブローク エドワード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス アンソニー ジェイ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-503202(JP,A)
【文献】米国特許第03645935(US,A)
【文献】特開2000-026542(JP,A)
【文献】特開平10-251221(JP,A)
【文献】特表2011-503322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチレン系ポリマーの後重合変性方法であって、下記ステップ:
(a)求核置換反応においてポリマーを少なくとも1種の求核試薬と反応させること;及び
(b)官能化ポリマーを回収すること
を含み、
前記反応は実質的に溶媒がなく、求核置換反応の反応時間が10分~15分である、
前記方法。
【請求項2】
前記求核試薬が、チオアセタート、フェノキシド、アルコキシド、カルボキシラート、チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、チオ尿素、チオカルバマート、ジチオカルバマート、キサンタート、チオシアナート、及びその組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記求核置換反応が、相間移動触媒の存在下で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記相間移動触媒が、臭化テトラブチルアンモニウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記相間移動触媒が、アンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩、ホスホニウム塩、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート溶液、及びその組み合わせから成る群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記官能化ポリマーがチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記官能化ポリマーがメルカプトベンゾチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記官能化ポリマーがチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記官能化ポリマーがメルカプトベンゾチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
イソブチレン系ポリマーの後重合変性方法であって、下記ステップ:
(a)ポリマーを第1の求核試薬と反応させて第1の官能化ポリマーを形成すること;
(b)前記第1の官能化ポリマーを第2の求核試薬と反応させること;及び
(c)二官能化ポリマーを回収すること
を含み、
前記反応は実質的に溶媒がなく、前記第1の求核試薬がアミンである、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、参照によってそれらの内容全体をここに援用する2018年4月3日に提出されたUSSN 62/651,964及び2018年5月16日に提出されたEP出願第18172743.9号に対する優先権及びそれらの利益を主張する。
発明の分野
本開示は、一般的に官能化オレフィンの調製に関し、より詳細にはイソブチレン系ポリマーを官能化するための無溶媒プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリオレフィンに官能基をグラフトすると、耐衝撃性及び熱安定性等の特定の望ましい物理的性質をポリマー樹脂に与えることができる。後重合反応として、グラフト化方法論は、官能性を受けやすい活性サイトを導入するためにポリオレフィンの高分子主鎖を化学的に変性させることができる。高分子にグラフトされる側基又は側鎖の数は、活性サイトの数によって制御される。
ポリオレフィンの主鎖上の1つ以上の部分又はペンダント基の形態で制御された量の特有の官能性を導入すると、ポリオレフィンの有用性を高めることができる。例えば、特定のタイプ及び量の官能性は、官能化オレフィンを他の材料用のコーティング若しくは塗料として使用できるようにし、及び/又は他の材料と積層させるか若しくは他の材料中で分散させて、望ましい組み合わせの特性を有する複合材料をもたらすことができる。
【0003】
官能化オレフィンは、アニオン及びカチオングラフト化技術と共に原子移動ラジカル重合反応を介して合成可能である。また、溶液中で、求核置換処理によって官能化ポリマーを生成することができる。例えば、カナダ特許第2009681A1号(この特許では溶媒の存在下で反応を行なった)を参照されたい。さらに、無溶媒条件下で、不可逆的イオノマー合成を介して、臭素化ポリ(イソブチレン共イソプレン)ゴム(「BIIR」)のイオノマー誘導体が、PPh3、イミダゾール及び2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールのアルキル化を経て調製された(Parent, S. et al., Auto-Catalytic Chemistry for the Solvent-free Synthesis of Isobutylene-rich Ionomers, Green Chem. 2011, 13, 2818)。
従って、定量的収率で官能化イソブチレン系ポリマーを合成するための無溶媒後重合プロセスに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本明細書ではポリマーの後重合変性方法を提供する。本方法は、溶媒なし(本明細書では「実質的に溶媒なし」とも称する)で行なわれる求核置換反応においてポリマーを少なくとも1種の求核試薬と反応させて官能化ポリマーを生成するステップを含む。本明細書で使用する「実質的に溶媒なし」という用語は、ポリマー及び少なくとも1種の求核試薬の総質量に基づいて、0.1wt%未満の溶媒を意味する。
求核試薬は、チオアセタート、フェノキシド、アルコキシド、カルボキシラート、チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、チオ尿素、チオカルバマート、ジチオカルバマート、キサンタート、チオシアナートから成る群より選択可能である。求核置換反応は相間移動触媒の存在下で行なうことができる。ある態様では、相間移動触媒は、式R4N+Br-の化合物である。2ステップの現場プロセスを経て求核置換反応を行なうこともでき、最初にポリマー-アミンイオノマー(ポリマー-NR3+Br-)が形成され、これが次にその後の第2の求核試薬による求核置換を触媒して二官能ポリマーを形成する。本方法は、官能化ポリマーを約23℃~約25℃まで冷却するステップを含むこともある。
【0005】
ある態様では、相間移動触媒をアンモニウム塩、ヘテロ環式アンモニウム塩、ホスホニウム塩、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート溶液から成る群より選択することができる。ある態様では、相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウム又は臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)である。ある態様では、官能化ポリマーは、チオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)及びポリ(イソブチレン共イソプレン)である。ある態様では、官能化ポリマーは、メルカプトチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)及びポリ(イソブチレン共イソプレン)である。ある態様では、ポリマーは、臭素化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)又はBISMSM及び臭素化ポリ(イソブチレン共イソプレン)又はブロモブチルである。ある態様では、融解塩は、チオ酢酸カリウム及び/又はメルカプトチアゾールナトリウムであり得る。
ある態様では、BIMSM及びハロブチルゴムをチオアルキラート及びメルカプトチアゾールと混合して官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)及び官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)を生成する。
ある態様では、ポリマーは、ハロゲン化イソオレフィンポリマー及び/又はハロブチルゴムである。
ある態様では、求核置換反応の温度は、約70℃~160℃及び約120℃~150℃である。
ある態様では、求核置換の反応時間は、約10~30分である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】BIMSM出発材料並びに実施例1に記載のTBABがないリアクティブ混合及び実施例3に記載の0.1モル当量のTBABがあるリアクティブ混合を経て得られたチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)生成物の1H NMRスペクトルである。
図2】反応時間の関数として反応変換を示す1H NMRスペクトルである。
図3】ブロモブチル出発材料並びに実施例8のTBABがないリアクティブ混合及び実施例9に記載の0.1モル当量のTBABがあるリアクティブ混合を経て得られたチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)生成物の1H NMRスペクトルである。
図4】BIMSM出発材料並びに実施例10に記載の0.1モル当量のTBABがあるリアクティブ混合を経て得られたメルカプトチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)生成物の1H NMRスペクトルである。
図5】ブロモブチル出発材料並びに実施例11に記載の0.1モル当量のTBABがあるリアクティブ混合を経て得られたメルカプトチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)生成物の1H NMRスペクトルである。
図6】実施例12に記載のリアクティブ混合を経て得られたチオアセタート/アミン官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)生成物の1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好ましい実施形態の説明
本明細書では、請求項に係る発明を理解するために採用される典型的な実施形態及び定義を含め、種々の特定の実施形態、型及び例を記載する。下記詳細な説明は、特定の好ましい実施形態を与えるが、これらの実施形態は単に例示であり、本発明は他の方法で実施できることを当業者なら理解するであろう。侵害を判定するために、本発明の範囲は、添付の請求項のいずれか1つ以上に、列挙されるものと同等であるそれらの等価物、及び要素又は制限を含めて関係することになる。「発明」へのいずれの言及も、請求項によって規定される本発明の1つ以上を指すこともあるが、必ずしも全てではない。
本願の詳細な説明及び特許請求の範囲内の全ての数値は、実験の誤差及び変動を考慮して、表示値に「約(about)」又は「約(approximately)」を付して修飾してある。
【0008】
本開示の目的では、下記定義を適用する。
用語「アルキル」は、例えば、メチル基(CH3)、又はエチル基(CH3CH2)のような式から1個以上の水素を落とすことによってアルカンから導くことができるパラフィン系炭化水素基を指す。
本明細書で使用する場合、用語「α-オレフィン」は、その構造((R1R2)-C=CH2)中に末端炭素-炭素二重結合を有するオレフィンを指し、R1及びR2は、独立に水素又は任意のヒドロカルビル基であり得る。ある態様では、R1が水素であり、R2がアルキル基である。「直鎖α-オレフィン」は、このパラグラフで定義したα-オレフィンであって、R1が水素であり、R2が水素又は直鎖アルキル基であるものである。
本明細書で使用する場合、用語「ブロモブチル」又は「ブロモブチルポリマー」は、タイヤ及び種々の医療用途を含めた様々な民生用途に用いられるブチルゴムのファミリーである、ExxonMobil Chemical製の臭素化イソブチレン-イソプレン又は臭素化イソブチレン-イソプレンゴム(「BIIR」)を指す。
BIIR 2222としても知られるブロモブチル2222は、比重0.93;ムーニー粘度目標値32、最小値28、及び最大値36;臭素組成目標値1.03%、最小値0.93%、及び最大値1.13%;並びにカルシウム組成目標値0.15%、最小値0.12%、及び最大値0.18%を有する、イソブチレンとイソプレンとの臭素化コポリマーである。
【0009】
用語「イソオレフィン」は、C4-C7化合物を指し、これには、限定するものではないが、イソブチレン、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、及び4-メチル-1-ペンテンが含まれる。マルチオレフィンは、C4-C14共役ジエン、例えばイソプレン、ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ミルセン、6,6-ジメチル-フルベン、シクロペンタジエン、ヘキサジエン及びピペリレンである。典型的ポリマーは、92~99.5wt%のイソブチレンを0.5~8wt%のイソプレンと反応させるか、又は95~99.5wt%のイソブチレンを0.5~5.0wt%のイソプレンと反応させることによって得ることができる。
用語「オレフィン」は、炭素と水素を含み、その構造中に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する炭化水素鎖を有し、この炭素-炭素二重結合は芳香環の一部を構成しない、直鎖、分岐、又は環状化合物を指す。用語「オレフィン」は、それが単一の異性体を意味するように特定されているか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、オレフィンの全ての構造異性体型を包含するよう意図される。
本明細書で使用する場合、「ポリマー」は、2種以上の同一又は異なる「mer」単位を有する。「ホモポリマー」は、同一であるmer単位を有するポリマーである。「コポリマー」は、互いに異なる2種以上のmer単位を有するポリマーである。コポリマーは、複数タイプのモノマーを有するポリマーを意味し、これにはインターポリマー、ターポリマー、又は高次ポリマーが含まれる。「ターポリマー」は、互いに異なる3種のmer単位を有するポリマーである。mer単位に関して「異なる」とは、mer単位が、少なくとも1個の原子によって互いに異なるか又は異性体的に異なることを意味する。本明細書では用語ポリオレフィンとポリマーを互換的に使用することがある。
【0010】
さらに詳細には、用語「コポリマー」は、C4-C7イソオレフィン由来単位とアルキルスチレンとのランダムポリマーを指す。例えば、コポリマーは、少なくとも85質量%のイソオレフィン、約8~約12質量%のアルキルスチレン、及び約1.1~約1.5wt%のハロゲンを含有し得る。例えば、コポリマーは、C4-C7α-オレフィンと、約8~約12質量%でメチルスチレン、及び1.1~1.5wt%の臭素又は塩素を含有するメチルスチレンとのランダムエラストマーコポリマーであり得る。或いは、イソブチレンとパラ-メチルスチレン(「PMS」)とのランダムコポリマーは、約4~約10モル%のパラ-メチルスチレン(このベンジル環に存在する25モル%までのメチル置換基は、臭素又は塩素原子、例えば臭素原子(パラ-(ブロモメチルスチレン)の場合)を含有する)、並びにその酸又はエステル官能化型を含有し得る。
さらに、コポリマーは、ポリマー主鎖に環ハロゲン又はハロゲンを実質的に含まないことがある。ある態様では、ランダムポリマーは、C4-C7イソオレフィン由来単位(又はイソモノオレフィン)、パラ-メチルスチレン由来単位及びパラ-(ハロメチルスチレン)由来単位のコポリマーであり、パラ-(ハロメチルスチレン)単位は、ポリマー中に、パラ-メチルスチレンの総数に基づいて約10~約22モル%存在し、かつパラ-メチルスチレン由来単位は、ポリマーの総質量に基づいて8~12wt%又は9~10.5wt%存在する。また、例えば、パラ-(ハロメチルスチレン)は、パラ-(ブロモメチルスチレン)であり得る。
【0011】
本明細書で使用する場合、コモノマーは直鎖又は分岐状であり得る。直鎖コモノマーとしては、限定するものではないが、エチレン又はC4-C8α-オレフィン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンが挙げられる。分岐コモノマーとしては、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、及び3,5,5-トリメチル-1-ヘキセンが挙げられる。コモノマーにはスチレンが含まれる。
本明細書で使用する場合、EXXPRO(商標)は、イソブチレンとイソプレンの触媒重合によって生成され、タイヤ及び医療用管栓を含めた種々の民生用途に有用なExxonMobil製の臭素化イソブチレンパラメチルスチレン(BIMSM)ゴム又はイソブチレン共パラ-メチルスチレン系エラストマーを指す。
用語「ゴム」には、星状分岐臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)等のイソブチレン系ポリマー、ハロゲン化ポリ(イソブチレン共p-メチルスチレン)、イソブチレン由来単位と、p-メチルスチレン由来単位と、p-ブロモメチルスチレン由来単位とのターポリマー(BrIBMS)、ハロゲン化イソプレン、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、イソブチレン/イソプレン/パラ-アルキルスチレンポリクロロプレンのハロゲン化ターポリマー、及び米国特許第5,162,445号、第4,074,035号、及び第4,395,506号に記載のハロメチル化芳香族インターポリマー、並びに上記のいずれかの混合物の少なくとも1種又は数種を有する組成物が含まれるが、これに限定されない。用語ゴムは、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星状分岐ポリイソブチレンゴムを意味し、これらを含むが、これらに限定されず、ハロゲン化ゴムは、米国特許第4,703,091号及び第4,632,963号にも記載されている。
【0012】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン化ブチルゴム」は、ブチルゴムと、いわゆる「星状分岐」ブチルゴムとを両方指す。ハロゲン化ゴムは、C4(「C4」と記述されることもある)-C7(「C7」と記述されることもある)イソオレフィン及びマルチオレフィンのハロゲン化コポリマーを指す。ハロゲン化ゴム成分は、ポリジエン又はブロックコポリマーと、C4-C7イソオレフィン及び共役、又は「星状分岐」ブチルポリマーのコポリマーとのブレンドであり得る。ハロゲン化ブチルポリマーは、C4-C7イソオレフィン由来単位、マルチオレフィン由来単位、及びハロゲン化マルチオレフィン由来単位を含むハロゲン化エラストマーと記載することができ、「ハロゲン化ブチルゴム」と、いわゆる「ハロゲン化星状分岐」ブチルゴムの両方を包含する。
本明細書で使用する場合、ゴムはハロゲン化ゴム又はハロゲン化ブチルゴム、例えば臭素化ブチルゴム又は塩素化ブチルゴムであり得る。ハロゲン化ブチルゴムの一般的性質及び処理についてはTHE VANDERBILT RUBBER HANDBOOK 105-122 (R. F. Ohm ed., R.T. Vanderbilt Co., Inc. 1990)、及びRUBBER TECHNOLOGY 311-321 (1995)に記載されている。ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、及び星状分岐ブチルゴムは、E. Kresge及びH. C. Wangによって、8 KIRK-OTHMER ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY 934-955 (John Wiley & Sons, Inc. 4th ed. 1993)に記載されている。
【0013】
ハロゲン化ブチルゴムは、ブチルゴムのハロゲン化から生成され得る。ハロゲン化は、いずれの手段で行なってもよく、本明細書では本発明はハロゲン化プロセスによって限定されない。ブチルポリマー等のポリマーをハロゲン化する方法は、米国特許第2,631,984号、第3,099,644号、第4,554,326号、第4,681,921号、第4,650,831号、第4,384,072号、第4,513,116号及び第5,681,901号に開示されている。ハロゲンは、例えば、RUBBER TECHNOLOGYの298~299ページ(1995)で論じられているいわゆるII及びIII構造中にあり得る。ブチルゴムは、ヘキサン希釈剤中、40~60℃で、ハロゲン化剤として臭素(Br2)又は塩素(Cl2)を用いてハロゲン化することができる。ハロゲン化ブチルゴムは、20~70、又は25~55のムーニー粘度(ML 1+8、125℃)を有する。ハロゲン含量は、ハロゲン化ブチルゴムの質量に基づいて0.1~10wt%又は0.5~5wt%である。ハロゲン化ブチルゴムのハロゲンwt%は1~2.2wt%である。
【0014】
星状分岐ハロゲン化ブチルゴム(「SBHR」)は、ハロゲン化されているか又はされていないブチルゴムと、ハロゲン化されているか又はされていないポリジエン又はブロックコポリマーとの組成物である。このハロゲン化プロセスは、米国特許第4,074,035号、第5,071,913号、第5,286,804号、第5,182,333号及び第6,228,978号に詳述されている。第2のポリマーは、SBHRの形成方法によって限定されない。ポリジエン/ブロックコポリマー、若しくは分岐剤(以降、「ポリジエン」)は、典型的にカチオン反応性であり、ブチル若しくはハロゲン化ブチルゴムの重合中に存在するか、又はブチル若しくはハロゲン化ブチルゴムとブレンドされてSBHRを形成することができる。分岐剤又はポリジエンは、いずれの適切な分岐剤であってもよく、本発明は、SBHRを作るために用いるポリジエンのタイプに限定されない。
【0015】
SBHRは、典型的にブチル又はハロゲン化ブチルゴムと、スチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンジエンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレン及びスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含む群から選択されるポリジエン及び部分的ハロゲン化ポリジエンのコポリマーとの組成物である。これらのポリジエンは、モノマーのwt%に基づいて、0.3wt%超、又は0.3~3wt%又は0.4~2.7wt%存在する。
市販のSBHRは、27~37のムーニー粘度(ML 1+8、125℃、修正ASTM 1646)及びSBHRに対して2.2~2.6wt%の臭素含量を有するブロモブチル6222 (ExxonMobil Chemical Company)である。さらに、ブロモブチル6222の硬化特性は以下のとおりである:MHは24~38dNmであり、MLは6~16dNm(修正ASTM D2084)である。
例となるハロゲン化ブチルゴムはブロモブチル2222(ExxonMobil Chemical Company)である。そのムーニー粘度は27~37(ML 1+8、125℃、修正ASTM 1646)であり、臭素含量は、ブロモブチル2222に対して1.8~2.2wt%である。さらに、ブロモブチル2222の硬化特性は以下のとおりである:MHは28~40dNmであり、MLは7~18dNmである(修正ASTM D2084)。第2のポリマーとして用いる別の商業的に入手可能なハロゲン化ブチルゴムは、ブロモブチル2255(ExxonMobil Chemical Company)である。そのムーニー粘度は41~51(ML 1+8、125℃、修正ASTM 1646)であり、臭素含量は1.8~2.2wt%である。さらに、ブロモブチル2255の硬化特性は以下のとおりである:MHは34~48dNmであり、MLは11~21dNmである(修正ASTM D2084)。
【0016】
ある態様では、ハロゲン化ブチルゴム製造に利用するオレフィン重合供給原料には、ブチル型ゴムポリマーの調製で従来使用されているオレフィン化合物が含まれる。ブチルポリマーは、コモノマー混合物を反応させることによって調製され、この混合物は、少なくとも1種の(1)C4-C7イソオレフィンモノマー成分、例えばイソブチレンと、(2)マルチオレフィン、又は共役ジエンモノマー成分を有する。イソオレフィンは、全コモノマー混合物の質量に基づいて70~99.5wt%、又は85~99.5wt%の範囲内である。共役ジエン成分は、コモノマー混合物中に30~0.5wt%又は15~0.5wt%存在する。コモノマー混合物の8~0.5wt%は共役ジエンである。
本明細書に記載のイソブチレン系ポリマーは、コモノマー(イソプレン以外)と重合したイソブチレン等のコポリマー、例えばイソブチレン共パラ-メチルスチレンコポリマー(イソブチレン共パラ-メチルスチレンエラストマーとも呼ばれる)及びそのハロゲン化型であり得る。イソブチレン系ポリマーのさらなる例としては、イソブチレン-イソプレンエラストマー、例えばブチル(「IIR」)、ハロゲン化エラストマー、例えばブロモブチル(「BIIR」)、クロロブチル(「CIIR」)、星状分岐ブロモブチル(「SBB」)、及び星状分岐クロロブチル(「SBC」)及び臭素化イソブチレンパラ-メチルスチレン(「BIMSM」)が挙げられる。イソブチレン共パラ-メチルスチレンエラストマー及び臭素化イソブチレンパラ-メチルスチレン(「BIMSM」)は、現在、商品名EXXPRO(商標)で販売されている。
【0017】
本明細書で提供する場合、官能化ポリオレフィンは、1種以上の極性及び非極性官能基、すなわち、分子の特徴的化学反応の原因となる、分子内の原子又は結合の特有の基又は部分を有する官能化ポリマー(官能化オレフィンと呼ぶこともある)である。官能基は、ポリマー主鎖のサイズに関係なく同一又は類似の化学反応を受けることができ、化学反応及びポリマーの挙動の体系的予測並びに化学合成のデザインを可能にする。官能化されると、官能基の原子は、典型的に二重結合によって互いにポリマーに連結される。官能基の反応性は、近くの他の官能基によって変化することがある。
ランダム官能化ポリオレフィンは、ポリオレフィン主鎖に異なるタイプ、配置及び量の官能性を有する。官能化ポリオレフィンの分類には、ランダム官能化ポリオレフィン及びグラフトポリオレフィンがある。後官能化技術を利用して、既存ポリマー主鎖上に官能性(部分又は化学基)が付着される。
【0018】
ポリオレフィン主鎖の後官能化のために、求核置換を経て主鎖上に官能性を付着させることができる。以下に例示するように、求核置換は、典型的にTHF、トルエン又はキシレン等の溶媒の存在下で行なわれる。
【化1】
【0019】
ポリオレフィン鎖に付着されると、さらなる官能化プロセスが促進されることがある。
本方法は、ポリマーを、溶媒なしで行なわれる求核置換反応において、チオアセタート、フェノキシド、アルコキシド、カルボキシラート、チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、チオ尿素、チオカルバマート、ジチオカルバマート、キサンタート、チオシアナートから成る群より選択される少なくとも1種の求核試薬と反応させて官能化ポリマーを生成するステップを含む、ポリマーの後重合変性に関する。本方法論の混合ステップは、チオ酢酸カリウム及びメルカプトチアゾールカリウム等の金属塩の存在下で行なうことができる。本方法論の混合ステップは、アンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩、ホスホニウム塩、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート、及び/又はDL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート溶液等の相間移動触媒の存在下で行なうことができる。
【0020】
さらに詳細には、アンモニウム塩として、限定するものではないが、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルジメチルデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチルオクチルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム無水物、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム二水和物、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、ヨウ化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、ジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム、三臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、臭化(2-ブロモエチル)トリメチルアンモニウム等が挙げられる。www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemistry-products.htmlを参照されたい。
【0021】
変性可能なポリマーとしては、限定するものではないが、ハロゲン化イソオレフィンポリマー、ハロブチルゴム、星状分岐ブロモブチル、臭素化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)(「BIMSM」)、及び臭素化イソブチレン-イソプレン-パラ-メチルスチレンターポリマーが挙げられる。
下記実施例2~7に記載のように、我々は、相間移動触媒、臭化テトラブチルアンモニウムの存在によって促進されるポリマーのリアクティブ混合を経るクリーンな無溶媒方法を実証した。この方法論では、BIMSMへのチオアセタートのグラフト化を以下のように行なう。
【化2】
【0022】
実施例9及び図3に記載のように、我々は、相間移動触媒、臭化テトラブチルアンモニウムの存在によって促進されるブロモブチルポリマーのリアクティブ混合を経るクリーンな無溶媒方法を実証した。この方法論では、ブロモブチルへのチオアセタートのグラフト化を以下のように行なう。
【化3】
【0023】
実施例10及び図4に記載のように、我々は、相間移動触媒、臭化テトラブチルアンモニウムの存在によって促進されるBIMSMポリマーのリアクティブ混合を経るクリーンな無溶媒方法を実証した。この方法論では、BIMSMへのメルカプトベンゾチアゾールのグラフト化を以下のように行なう。
【化4】
【0024】
実施例11及び図5に記載のように、我々は、相間移動触媒、臭化テトラブチルアンモニウムの存在によって促進されるブロモブチルポリマーのリアクティブ混合を経るクリーンな無溶媒方法を実証した。この方法論では、ブロモブチルへのメルカプトベンゾチアゾールのグラフト化を以下のように行なう。
【化5】
【0025】
実施例12及び図6に記載のように、我々は、求核試薬としても相間移動触媒としても作用するアミンイオノマーの存在によって促進されるBIMSMポリマーのリアクティブ混合を経るクリーンな無溶媒方法を実証した。この方法論では、BIMSMへの最初のアミンのグラフト化後のチオアセタートのグラフト化を以下のように行なう。
【化6】
【実施例
【0026】
実施例1
臭化テトラブチルアンモニウムがないリアクティブ混合プロセスによるチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)の調製
この実施例では、ブラベンダーインテリトルク(Intelli-torque)内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いて実験を行なった。ミキサー温度を70℃~120℃に設定した。60gのBIMSM(EXXPRO-NPX1602、ExxonMobil Chemicalからの実験生成物)をミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かした。1.78gのチオ酢酸カリウムをミキサーに添加した。混合速度を60rpmに設定して15分間混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバー(Carver)プレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって約23℃~約25℃まで冷却した。下表1に記載のように、TBABがない、実施例1の最終生成物は、図1に示す1H-NMR分析により示されるように約24%変換された。
【0027】
実施例2~7
触媒量の臭化テトラブチルアンモニウムがあるリアクティブ混合プロセスによるチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)の調製
ブラベンダーインテリトルク内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いてリアクティブ混合の各実施例を行なった。ミキサー温度を70℃~120℃に設定した。60gのBIMSM(EXXPRO-NPX1602、ExxonMobil Chemicalからの実験生成物)及びBr含量が異なる一連のBIMSMをミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かし、0.45g(PMS-Brに対して0.11モル当量)の臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)及び1.78gのチオ酢酸カリウムを一緒にミキサーに添加した。混合速度を60rpmに設定して15分間混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバープレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって約23℃~約25℃まで冷却した。同手順を用いるその後のリアクティブ混合実験においてBr含量が異なるBIMSMのいくつかのサンプルを出発材料として使用した。下表1に示すように、最終生成物は、図1に示す1H-NMR分析により>91%の変換を伴う定量的収率で得られた。
【0028】
表1
種々のチオアセタート官能性ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)生成物
【0029】
実施例8
臭化テトラブチルアンモニウムがないリアクティブ混合プロセスによるチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)の調製
この実施例では、ブラベンダーインテリトルク内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いて実験を行なった。ミキサー温度を120℃~150℃に設定した。60gのブロモブチル2222をミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かした。1.78g(アリル-Brに対して約1.26モル当量)をミキサーに添加した。混合速度を60rpmに設定して15分間混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバープレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって約23℃~約25℃まで冷却した。最終生成物は、図3に示す1H-NMR分析により示されるように約25%変換された。
【0030】
実施例9
触媒量の臭化テトラブチルアンモニウムがあるリアクティブ混合プロセスによるチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)の調製
ブラベンダーインテリトルク内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いてリアクティブ混合実験を行なった。ミキサー温度を120℃~150℃に設定した。60gのブロモブチル2222をミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かし、0.45g(PMS-Brに対して約0.11モル当量)の臭化テトラブチルアンモニウム(「TBAB」)及び1.69~1.78g(アリル-Brに対して1.20~1.26モル当量)のチオ酢酸カリウムをミキサーに添加した。ミキサー速度を60rpmに設定して15分間混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバープレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって約23℃~約25℃まで冷却した。最終生成物は、図3に示す1H-NMR分析により>88%の変換を伴う定量的収率で得られた。
【0031】
実施例10
触媒量の臭化テトラブチルアンモニウムがあるリアクティブ混合プロセスによるメルカプトベンゾチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)の調製
ブラベンダーインテリトルク内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いてリアクティブ混合実験を行なった。ミキサー温度を70℃~120℃に設定した。60gのBIMSM (EXXPRO-NPX1602、ExxonMobil Chemicalからの実験生成物)をミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かし、0.45g(PMS-Brに対して0.11モル当量)の臭化テトラブチルアンモニウム(「TBAB」)及び3.09g(PMS-Brに対して1.25モル当量)のメルカプトベンゾチアゾールナトリウムをミキサーに添加した。混合速度を60rpmに設定して15分間混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバープレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって約23℃~約25℃まで冷却した。最終生成物は、図4に示す1H-NMRにより>92%の変換を伴う定量的収率で得られた。
【0032】
実施例11
触媒量の臭化テトラブチルアンモニウムがあるリアクティブ混合プロセスによるメルカプトベンゾチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)の調製
ブラベンダーインテリトルク内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いて混合実験を行なった。ミキサー温度を70℃~120℃に設定した。60gのブロモブチル2222をミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かし、0.45g(PMS-Brに対して約0.11モル当量)の臭化テトラブチルアンモニウム(「TBAB」)及び2.948g(PMS-Brに対して1.20モル当量)のメルカプトベンゾチアゾールナトリウムをミキサーに添加した。混合速度を60rpmに設定して15分間混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバープレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって約23℃~約25℃まで冷却した。最終生成物は、図5に示す1H-NMR分析により>94%の変換を伴う定量的収率で得られた。
【0033】
実施例12
リアクティブ混合プロセスによるチオアセタート/アミン官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)の調製
ブラベンダーインテリトルク内部ミキサーで6型ローラーブレードを用いて全てのリアクティブ混合実験を行なった。ミキサー温度を70~120℃に設定した。60gのBIMSM (EXXPRO-NPX1602、ExxonMobil Chemicalからの実験生成物)をミキサーに加えて30秒間25rpmで溶かし、0.5g又は0.12モル当量のArmeen DMSVDをゆっくりミキサーに添加した。添加が完了したら、化合物を約 分間60rpmsで混合した。次に1.63gのチオ酢酸カリウムを加えてさらに6分間60rpmsで混合した。最終混合物をミキサーから取り出し、カーバープレスで2枚のテフロン(登録商標)シート間で押圧することによって室温まで冷却した。最終生成物は、図6に示す1H-NMRにより>95%の変換を伴う定量的収率で得られた。
【0034】
別段の定めがない限り、「本質的に~から成る」及び「本質的に~から成ること」という表現は、本明細書で具体的に言及されているかどうかに関わりなく、他のステップ、要素、又は材料が本発明の基本的かつ新規の特性に影響を及ぼさない限り、該ステップ、要素、又は材料の存在を排除せず、さらに、これらの表現は、使用要素及び材料と通常関連する不純物及び変動を排除しない。
簡潔にするため、本明細書では特定範囲のみを明示的に開示している。しかしながら、明示的に詳述されていない範囲を詳述するためにいずれの下限からの範囲をいずれの上限と組み合わせてもよいのみならず、明示的に詳述されていない範囲を詳述するためにいずれの下限からの範囲をいずれの他の下限と組み合わせてもよく、同様に、明示的に詳述されていない範囲を詳述するためにいずれの上限からの範囲をいずれの他の上限と組み合わせてもよい。さらに、ある範囲内には、明示的に詳述されていなくてもその終点間のあらゆる点又は個々の値が含まれる。従って、あらゆる点又は個々の値は、明示的に詳述されていない範囲を詳述するために、いずれの他の点若しくは個々の値又はいずれの他の下限若しくは上限とも組み合わせられるそれ自体の下限又は上限となり得る。
【0035】
全ての優先権書類は、援用が許される全ての司法権のため及び該開示が本発明の説明と一致する程度まで、参照によって本明細書に完全に援用される。さらに、試験手順、公表文献、特許、雑誌論文等を含め、本明細書で引用した全ての書類及び参考文献は、援用が許される全ての司法権のため及び該開示が本発明の説明と一致する程度まで、参照によって本明細書に完全に援用される。
本教示はいくつかの態様及び実施例に関して述べたが、本開示の利益を有する当業者なら、本明細書に開示した発明の範囲及び精神から逸脱しない他の態様を考案できることを理解するであろう。
(付記)
(付記1)
ポリマーの後重合変性方法であって、下記ステップ:
(a)求核置換反応においてポリマーを少なくとも1種の求核試薬と反応させること;及び
(b)官能化ポリマーを回収すること
を含み、
前記反応は実質的に溶媒がない、
前記方法。
(付記2)
前記求核試薬が、チオアセタート、フェノキシド、アルコキシド、カルボキシラート、チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、チオ尿素、チオカルバマート、ジチオカルバマート、キサンタート、チオシアナート、及びその組み合わせから成る群より選択される、付記1に記載の方法。
(付記3)
金属塩又は有機カチオン塩を前記ポリマーと混合するステップをさらに含む、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記求核置換反応が、相間移動触媒の存在下で行なわれる、付記1~3のいずれか1項に記載の方法。
(付記5)
前記求核置換反応が、相間移動触媒が存在せずに行なわれる、付記1~3のいずれか1項に記載の方法。
(付記6)
前記相間移動触媒が、式R4N+Br-の化合物である、付記4又は5に記載の方法。
(付記7)
前記官能化ポリマーを約22℃~約25℃の温度まで冷却するステップをさらに含む、付記1~6のいずれか1項に記載の方法。
(付記8)
前記相間移動触媒が、アンモニウム塩、複素環式アンモニウム塩、ホスホニウム塩、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート、DL-α-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシナート溶液、及びその組み合わせから成る群より選択される、付記4又は5に記載の方法。
(付記9)
前記相間移動触媒がハロゲン化テトラブチルアンモニウムであり;
前記ハロゲン化テトラブチルアンモニウムのハロゲン化物が、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物から成る群より選択される、付記4又は5に記載の方法。
(付記10)
前記ポリマーがハロゲン化イソオレフィンである、付記1~9のいずれか1項に記載の方法。
(付記11)
前記ポリマーが臭素化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)である、付記10に記載の方法。
(付記12)
前記ポリマーが臭素化ポリ(イソブチレン共イソプレン)である、付記10に記載の方法。
(付記13)
前記官能化ポリマーがチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)である、付記1~12のいずれか1項に記載の方法。
(付記14)
前記官能化ポリマーがメルカプトベンゾチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)である、付記1~12のいずれか1項に記載の方法。
(付記15)
前記官能化ポリマーがチオアセタート官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)である、付記1~12のいずれか1項に記載の方法。
(付記16)
前記官能化ポリマーがメルカプトベンゾチアゾール官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)である、付記1~12のいずれか1項に記載の方法。
(付記17)
前記金属塩がチオ酢酸カリウムである、付記3~16のいずれか1項に記載の方法。
(付記18)
前記金属塩がメルカプトベンゾチアゾールナトリウムである、付記3~16のいずれか1項に記載の方法。
(付記19)
前記官能化ポリマーをチオアルキラート試薬及びメルカプトベンゾチアゾール試薬と混合して、官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)及び官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)を作製する、付記1~18のいずれか1項に記載の方法。
(付記20)
前記ポリマーがハロブチルゴムである、付記1~19のいずれか1項に記載の方法。
(付記21)
前記求核置換反応の温度が約70℃~約160℃である、付記1~20のいずれか1項に記載の方法。
(付記22)
前記求核置換反応の温度が約120℃~約150℃である、付記1~20のいずれか1項に記載の方法。
(付記23)
前記求核置換反応の反応時間が約10分~約30分である、付記1~22のいずれか1項に記載の方法。
(付記24)
付記1~23のいずれか1項に記載の方法によって生成された非イオン性官能化ポリ(イソブチレン共パラ-メチルスチレン)。
(付記25)
付記1~23のいずれか1項に記載の方法によって生成された非イオン性官能化ポリ(イソブチレン共イソプレン)。
(付記26)
付記1~25のいずれか1項に記載の方法によって生成された官能化ポリマーを含む物品。
(付記27)
ポリマーの後重合変性方法であって、下記ステップ:
(a)ポリマーを第1の求核試薬と反応させて第1の官能化ポリマーを形成すること;
(b)前記第1の官能化ポリマーを第2の求核試薬と反応させること;及び
(c)二官能化ポリマーを回収すること
を含む、
前記方法。
(付記28)
前記第1の求核試薬がアミンである、付記27に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6