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特許7077426診断装置及びこれを備えた設備並びに診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】診断装置及びこれを備えた設備並びに診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220523BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220523BHJP
   B21B 33/00 20060101ALI20220523BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20220523BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 A
B21B33/00
B21C51/00 Q
B21B38/00 D
B21B38/00 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020568907
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2019002883
(87)【国際公開番号】W WO2020157818
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 優太
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-288547(JP,A)
【文献】特開平11-083618(JP,A)
【文献】特開平04-283645(JP,A)
【文献】特開2005-337846(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146733(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/096640(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082976(US,A1)
【文献】特開2004-206583(JP,A)
【文献】特開平11-118592(JP,A)
【文献】特開2005-215833(JP,A)
【文献】特開平08-114580(JP,A)
【文献】特開2014-137323(JP,A)
【文献】特開2002-139377(JP,A)
【文献】特開2004-177359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
B21B 38/00-38/12
B21C 51/00
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置を診断するための診断装置であって、
それぞれ異なる位置に設けられ、前記機械装置から発生する音をそれぞれ検知するための複数の音響センサと、
前記駆動部の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において前記複数の音響センサの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを取得するように構成された音データ取得部と、
前記複数の回転数条件ごとに取得した前記複数の音データをそれぞれ周波数解析するように構成された周波数解析部と、
前記周波数解析部による周波数解析結果に基づいて、前記複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件及び前記ピーク周波数を特定するピーク周波数特定部と、
前記1以上の回転数条件の各々について、前記複数の音響センサのうち、前記ピーク周波数に対応する前記音データの振幅が最も大きい一の音響センサの前記機械装置に対する設置位置に基づいて、前記機械装置のうち、前記ピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得る音源情報取得部と、
を備える診断装置。
【請求項2】
前記複数の音データの前記周波数解析結果について、前記回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去するように構成された第1除去部をさらに備え、
前記音源情報取得部は、前記第1除去部により除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得るように構成された
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記複数の音データの前記周波数解析結果について、前記駆動部の回転数に周波数が比例する成分を除去するように構成された第2除去部をさらに備え、
前記音源情報取得部は、前記第2除去部により除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得るように構成された
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記ピーク周波数特定部によって特定された前記回転数条件に対応する前記ピーク周波数と、前記音源情報取得部によって特定された前記音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶するための記憶部をさらに備える
請求項1乃至3の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項5】
前記駆動部の回転数が規定値での運転中に、診断用音響センサで検知された音に基づき取得された診断用音データを周波数解析するように構成された周波数解析部と、
前記周波数解析部による前記診断用音データについての周波数解析結果における、前記ピーク周波数の成分の振幅に基づいて、前記音の発生源の異常判定を行うように構成された診断部と、を備える
請求項1乃至4の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項6】
前記診断部は、前記診断用音データについての前記周波数解析結果において、前記ピーク周波数の成分の振幅が閾値以上であるとき、前記音の発生源に異常が生じたと判定するように構成された
請求項5に記載の診断装置。
【請求項7】
前記機械装置は、
前記駆動部としてのモータと、
前記モータによって回転駆動される前記被駆動部としてのギア又はスピンドルと、
前記ギア又は前記スピンドルにより駆動される圧延ロールと、
を含む圧延装置である
請求項1乃至6の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項8】
前記複数の音響センサは、前記モータに対応して設けられる第1音響センサと、前記ギア又は前記スピンドルに対応して設けられる第2音響センサと、を含む
請求項7に記載の診断装置。
【請求項9】
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置と、
前記機械装置を診断するように構成された請求項1乃至8の何れか一項に記載の診断装置と、
を備える設備。
【請求項10】
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置を診断するための診断方法であって、
それぞれ異なる位置に設置された複数の音響センサにより前記機械装置から発生する音をそれぞれ検知する音検知ステップと、
前記駆動部の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において前記複数の音響センサの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを取得する音データ取得ステップと、
前記複数の回転数条件ごとに取得した前記複数の音データをそれぞれ周波数解析するステップと、
前記周波数解析の結果に基づいて、前記複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件及び前記ピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、
前記1以上の回転数条件の各々について、前記複数の音響センサのうち、前記ピーク周波数に対応する前記音データの振幅が最も大きい一の音響センサの前記機械装置に対する設置位置に基づいて、前記機械装置のうち、前記ピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得る音源情報取得ステップと、
を備える診断方法。
【請求項11】
前記複数の音データの前記周波数解析の結果について、前記回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去する第1除去ステップをさらに備え、
前記音源情報取得ステップでは、前記第1除去ステップで除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得る
請求項10に記載の診断方法。
【請求項12】
前記複数の音データの前記周波数解析の結果について、前記駆動部の回転数に周波数が比例する成分を除去する第2除去ステップをさらに備え、
前記音源情報取得ステップでは、前記第2除去ステップにより除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得る
請求項10又は11に記載の診断方法。
【請求項13】
前記ピーク周波数特定ステップで特定された前記回転数条件に対応する前記ピーク周波数と、前記音源情報取得ステップで取得された前記音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶部に記憶させるステップをさらに備える
請求項10乃至12の何れか一項に記載の診断方法。
【請求項14】
前記駆動部の回転数が規定値での運転中に、診断用音響センサで前記機械装置からの音を検知し、該音を含む診断用音データを取得するステップと、
前記診断用音データについて周波数解析するステップと、
前記診断用音データについての周波数解析結果における、前記ピーク周波数の成分の振幅に基づいて、前記音の発生源の異常判定を行う診断ステップをさらに備える
請求項10乃至13の何れか一項に記載の診断方法。
【請求項15】
前記診断ステップでは、前記診断用音データについての前記周波数解析結果において、前記ピーク周波数の成分の振幅が閾値以上であるとき、前記音の発生源に異常が生じたと判定する
請求項14に記載の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置を診断するための診断装置及びこれを備えた設備並びに診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の駆動部によって回転駆動される被駆動部を有する機械装置を診断するために、音響センサを用いることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、モータによって駆動される圧延ロールを含む圧延機において、ロールの振動により鋼板に縞模様が生じる現象(所謂チャタリング)を検出するための装置が記載されている。この装置は、圧延ロールの近傍に設置されたマイクロホン(音響センサ)を含み、該マイクロホンにより圧延機からの音の音響波形を検出するようになっている。そして、このように検出した音響波形に基づいて、予め取得した圧延ロールの固有振動数の音を監視することで、上述のチャタリングを検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-158044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のチャタリングのように、発生頻度が比較的高い現象については、その現象が生じる機械装置(圧延機等)のために作製した試験装置を用いることにより、あるいは、実機において実際に生じた現象を解析することにより、当該機械装置の固有振動数を特定することが可能である。
しかしながら、機械装置において問題となり得るが発生頻度が低い事象(例えば、駆動部や被駆動部の損傷)に関しては、対象部位等の固有振動数を調査するために試験装置を作製するのは、コスト等の面で難しい場合があり、また、事象の発生頻度が少ないため、実機に基づく解析により固有振動数を特定することは通常は難しい。そこで、簡素な構成で機械装置の固有振動数を特定することが望まれる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、簡素な構成で機械装置の固有振動数を特定可能な診断装置及びこれを備えた設備並びに診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る診断装置は、
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置を診断するための診断装置であって、
それぞれ異なる位置に設けられ、前記機械装置から発生する音をそれぞれ検知するための複数の音響センサと、
前記駆動部の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において前記複数の音響センサの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを取得するように構成された音データ取得部と、
前記複数の回転数条件ごとに取得した前記複数の音データをそれぞれ周波数解析するように構成された周波数解析部と、
前記周波数解析部による周波数解析結果に基づいて、前記複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件及び前記ピーク周波数を特定するピーク周波数特定部と、
前記1以上の回転数条件の各々について、前記複数の音響センサのうち、前記ピーク周波数に対応する前記音データの振幅が最も大きい一の音響センサの前記機械装置に対する設置位置に基づいて、前記機械装置のうち、前記ピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得る音源情報取得部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、簡素な構成で、機械装置の固有振動数を特定可能な診断装置及びこれを備えた設備並びに診断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る圧延設備(設備)を示す概略構成図である。
図2】一実施形態に係る診断装置の概略構成図である。
図3】一実施形態に係る診断方法の概要を示すフローチャートである。
図4】特定のモータ回転数条件下で複数の音響センサを用いて取得した音データの周波数解析結果の一例を示す図である。
図5】特定のモータ回転数条件下で複数の音響センサを用いて取得した音データの周波数解析結果の一例を示す図である。
図6】特定のモータ回転数条件下で複数の音響センサを用いて取得した音データの周波数解析結果の一例を示す図である。
図7】一実施形態に係る記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
図8】一実施形態に係る診断方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
まず、図1を参照して、幾つかの実施形態に係る診断装置を含む設備の一例である圧延設備について説明する。図1は、一実施形態に係る圧延設備(設備)を示す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、圧延設備(設備)は、圧延装置1と、該圧延装置1を診断するための診断装置30と、を備えている。
【0013】
圧延装置1は、モータ2(駆動部)と、モータ2によって回転駆動される圧延ロール8(被駆動部)と、モータ2の動力を圧延ロール8に伝達するための動力伝達部3と、を含む。
【0014】
圧延ロール8は、金属帯板9を圧延するように構成されており、金属帯板9を上下から挟み込んで金属帯板9に荷重を加えるための一対のワークロール12A,12Bと、一対のワークロール12A,12Bをそれぞれ挟んで金属帯板9とは、それぞれ反対側に設けられる一対の中間ロール14A,14B及び一対のバックアップロール16A,16Bと、を含む。中間ロール14A,14Bは、それぞれ、ワークロール12A,12Bと、バックアップロール16A,16Bとの間に設けられる。
【0015】
動力伝達部3は、モータ2によって回転駆動されるギア4(被駆動部)及びスピンドル6(被駆動部)を含む。すなわち、ギア4はモータ2に接続されており、スピンドル6は、ギア4を介してモータ2に接続されている。また、圧延ロール8は、ギア4及びスピンドル6を介して、モータ2に接続されている。したがって、モータ2によってギア4及びスピンドル6が回転駆動されると、該ギア4及びスピンドル6によって圧延ロール8が駆動されるようになっている。すなわち、モータ2の回転運動がギア4、スピンドル6及び圧延ロール8に伝達され、ギア4、スピンドル6及び圧延ロール8は、それぞれ、モータ2の出力(回転数)に応じた回転数にて回転するようになっている。
【0016】
次に、図1及び図2を参照して、一実施形態に係る診断装置30の構成について説明する。図2は、一実施形態に係る診断装置30の概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、一実施形態に係る診断装置30は、圧延装置1から発生する音をそれぞれ検知するための複数の音響センサ32,34A,34Bと、複数の音響センサ32,34A,34Bにより検知された音データを処理するための処理部36と、処理部36での処理結果等を記憶するための記憶部37と、処理部36での処理結果を表示するための表示部38と、を含んでいる。
【0018】
複数の音響センサ32,34A,34Bは、それぞれ異なる位置に設けられている。
図示する実施形態では、複数の音響センサは、モータ2に対応して設けられる第1音響センサ32と、ギア4に対応して設けられる第2音響センサ34Aと、スピンドル6に対応して設けられる第2音響センサ34Bと、を含む。すなわち、第1音響センサ32は、モータ2の近傍に設けられ、第2音響センサ34Aはギア4の近傍に設けられ、第2音響センサ34Bはスピンドル6の近傍に設けられている。なお、以下の説明において、第1音響センサ32及び第2音響センサ34A,34Bを、音響センサ32,34A,34B等と総称することがある。
幾つかの実施形態では、音響センサ32,34A,34Bは、集音マイクロホンを含んでいてもよい。
【0019】
処理部36は、CPU、メモリ(RAM)、補助記憶部及びインターフェース等を含んでいてもよい。処理部36は、インターフェースを介して、音響センサ32,34A,34Bで検出した音を示す音データを受け取るようになっていてもよい。CPUは、このようにして受け取った音データを処理するように構成される。また、CPUは、メモリに展開されるプログラムを処理するように構成される。
【0020】
処理部36での処理内容は、CPUにより実行されるプログラムとして実装され、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムはメモリに展開される。CPUは、メモリからプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0021】
記憶部37は、処理部36を構成する装置(計算機等)の外部に設けられた外部記憶部を含んでいてもよい。あるいは、記憶部37は、処理部36を構成する装置の内部に設けられた記憶部であってもよく、例えば、上述のメモリや補助記憶部であってもよい。
【0022】
図2に示すように、処理部36は、音響センサ32,34A,34Bからの音を含む音データを取得するための音データ取得部40と、音データの周波数解析をするための周波数解析部42と、周波数解析結果から、複数の音データに共通するピーク周波数を特定するためのピーク周波数特定部48と、特定されたピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を取得するための音源情報取得部50と、を含む。また、処理部36は、音データの周波数解析結果から、特定しようとする圧延装置1(機械装置)の固有振動数に関連しない周波数成分を除去するための第1除去部44及び第2除去部46を含む。また、処理部36は、ピーク周波数特定部48及び音源情報取得部50により特定された固有振動数(ピーク周波数)及び当該固有振動数の音の発生源に関する情報に基づいて、圧延装置1の診断をするための診断部54を含む。
【0023】
音データ取得部40は、モータ2(駆動部)の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において複数の音響センサ32,34A,34Bの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを取得するように構成される。
【0024】
周波数解析部42は、音データ取得部40により複数の回転数条件ごとに取得した複数の音データをそれぞれ周波数解析するように構成される。一実施形態では、周波数解析部42は、上述の周波数解析を行うことにより、複数の音データの各々について、周波数と振幅との相関関係を示す周波数スペクトルを得るように構成されている。
【0025】
ピーク周波数特定部48は、周波数解析部42による周波数解析結果に基づいて、複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件を特定するように構成される。
【0026】
音源情報取得部50は、ピーク周波数特定部48によって特定された上述の1以上の回転数条件の各々について、複数の音響センサ32,34A,34Bのうち、上述の共通するピーク周波数に対応する音データの振幅が最も大きい一の音響センサ(音響センサ32,34A,34Bの何れか)を特定する。そして、特定された音響センサの圧延装置1に対する設置位置に基づいて、圧延装置1のうち、上述の共通するピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得るように構成されている。
【0027】
ここで、音の発生源に関する情報とは、圧延装置1において、その音が発生する位置又は部位を示す情報であり、すなわち、複数の音響センサのうちの何れに近い位置又は部位であるかを示す情報である。例えば、上述の共通するピーク周波数における振幅が、音響センサ32,34A,34Bで取得した音データのうち、音響センサ32で取得した音データにおいて最も大きい場合、当該共通するピーク周波数は、圧延装置1のうち、音響センサ34A,34Bよりも音響センサ32の近くに位置する部位の固有振動数であると推定することができる。モータ2、ギア4、スピンドル6のうち音響センサ32に最も近い機械装置がモータ2であることを音源情報取得部50に入力しておけば、ギア4やスピンドル6ではなく、モータ2の固有振動数であると推定することができる。あるいは、その固有振動数を有する具体的な部位を特定できなくとも、その固有振動数を有する部位の凡その位置)を把握することができる。処理部36(音源情報取得部50)は、どの機械装置又は圧延装置1における位置がどの音響センサに最も近いかという情報を、音データを取得する前後の過程で得るように構成されていてもよいし、予め情報が格納されていてもよい。
【0028】
ピーク周波数特定部48によって特定された回転数条件に対応する上述の共通するピーク周波数、及び、音源情報取得部50によって特定された上述の音の発生源に関する情報は、記憶部37に記憶されるようになっている。記憶部37は、上述の共通するピーク周波数と、上述の音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶するように構成されている。
【0029】
第1除去部44は、周波数解析部42による複数の音データの周波数解析結果について、モータ2(駆動部)の回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去するように構成される。音源情報取得部50は、第1除去部44により上述の周波数成分が除去された場合、このように除去される周波数成分を圧延装置1の固有振動数ではないとみなし、当該周波数成分を上述のピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得るように構成される。
【0030】
異なる回転数条件の下で取得された複数の音データにおいて、同一の周波数に振幅のピークが現れる場合、その周波数は、モータ2(駆動部)の回転数に依らずに生じる背景音に由来するものであると推定される。そこで、上述のように、複数の音データの周波数解析結果について、回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去し、音の発生源に関する情報を得る際に、複数の音データの周波数解析結果における共通のピーク周波数から背景音に関連する上述の周波数成分を除外することにより、複数の音データの周波数解析結果に基づいて、圧延装置1の固有振動数を精度良好に特定することができる。
【0031】
例えば、ある回転数条件で、上述の共通するピーク周波数が複数存在し、そのうち1つの共通のピーク周波数が第1除去部44により除去される周波数成分であれば、別の共通するピーク周波数に基づいて、当該「別の」ピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得るようになっている。
【0032】
第2除去部46は、周波数解析部42による複数の音データの周波数解析結果について、モータ2(駆動部)の回転数に周波数が比例する成分を除去するように構成される。音源情報取得部50は、第2除去部46により上述の周波数成分が除去された場合、このように除去される周波数成分を圧延装置1の固有振動数ではないとみなし、当該周波数成分を上述のピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得るように構成される。
【0033】
異なる回転数条件の下で取得された複数の音データにおいて、モータ2(駆動部)の回転数に比例する周波数成分のピークが現れる場合、その周波数は、モータ2の回転運動の大きさに起因する音であり、圧延装置1の固有振動数とは関連しないものであると推定される。そこで、上述のように、複数の音データの周波数解析結果について、モータ2の回転数に周波数が比例する成分を除去し、音の発生源に関する情報を得る際に、複数の音データの周波数解析結果における共通のピーク周波数から、圧延装置1の固有振動数に関連しない上述の周波数成分を除外することにより、複数の音データの周波数解析結果に基づいて、圧延装置1の固有振動数を精度良好に特定することができる。
【0034】
診断部54は、周波数解析部42による診断用音データについての周波数解析結果における、上述のピーク周波数の成分(すなわち、特定された音の発生源の固有振動数に相当する周波数成分)の振幅に基づいて、前記音の発生源の異常判定を行うように構成される。
【0035】
診断用音データは、圧延装置1の近傍に診断用音響センサ35により取得される。なお、診断用音響センサ35としては、固有振動数や該固有振動数の音の発生源を特定するための音を検知するために(すなわち、ピーク周波数特定部48や音源情報取得部50で処理される音データを取得するために)用いた音響センサ32,34A,34Bの何れかを用いてもよいし、これらの音響センサ32,34A,34Bとは別の音響センサを用いてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、診断用音響センサ35で検知された音は、上述の音データ取得部40により、診断用音データとして取得され、周波数解析部42により、この診断用音データについて周波数解析が行われる。そして、上述の診断部54は、この周波数解析結果を用いて、上述のように音の発生源の異常判定を行うようになっている。
【0037】
幾つかの実施形態では、診断部54は、上述の診断用音データについての周波数解析結果において、ピーク周波数特定部48及び音源情報取得部50で特定された音の発生源に対応するピーク周波数の成分(すなわち、当該ピーク周波数に対応する固有振動数の周波数成分)の振幅が閾値以上であるとき、前記音の発生源に異常が生じたと判定するように構成される。
【0038】
以下、幾つかの実施形態に係る診断方法について説明する。
まず、一実施形態に係る診断方法において、上述の診断装置30(図2参照)により圧延装置1の固有振動数を特定する方法について説明する。
【0039】
図3は、一実施形態に係る診断方法の概要を示すフローチャートである。
図4図6は、それぞれ、特定のモータ回転数条件下(図4ではn[rpm]、図5では2n[rpm]、図6では4n[rpm])で、音響センサ32,34A,34Bを用いて取得した音データの周波数解析結果(周波数スペクトル)の一例を示す図である。図4図6では、音響センサ32,34A,34BをそれぞれマイクA,マイクB、マイクCとして表示している。また、図4図6のグラフの縦軸において、各音響センサ(マイク)で取得された音データに関する周波数f[Hz]における成分の振幅(強度)を、I(f,マイクを示す記号)と表示している。例えば、音響センサ32(マイクA)で取得した音データの、周波数f1における振幅は、I(f1、A)である。なお、実際の音データを周波数解析すると、図4図6に示す周波成分以外にも、広い周波数帯に亘って多数のピークが現れるのが通常であるが、図4図6では、図をわかりやすくするため、特にピーク値の大きい周波数成分のみを示している。
図7は、記憶部37に記憶される音の発生源とこれに対応するピーク周波数(固有振動数)とが関連付けられた情報の一例を示す図である。
【0040】
なお、以下の説明では、複数の回転数条件を、モータ2の回転数がn,2n,4nの3条件とし、複数の音響センサとして3つの音響センサ32,34A,34B(マイクA~C)を用いているが、複数の回転数条件や、音響センサの個数は、これに限定されず、任意の複数(2以上)の回転数条件及び複数(2以上)の音響センサを用いて、本発明の実施形態に係る診断方法を実施することができる。
【0041】
図3に示すように、一実施形態に係る圧延装置1の診断方法では、まず、それぞれ異なる位置に設置された複数の音響センサ32,34A,34B(すなわち、マイクA~C)を用いて、圧延装置1から発生する音をそれぞれ検知する(音検知ステップ;ステップS102)。
【0042】
そして、音データ取得部40(図2参照)により、モータ2(駆動部)の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において音響センサ32,34A,34Bの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを、処理部36の音データ取得部40にて取得する(音データ取得ステップ;ステップS104)。ここでは、モータ2の回転数が、それぞれn、2n(nの2倍)、及び4n(nの4倍)である3種類の回転数条件の各々において、各音響センサを用いて音データを取得する。つまり、3種類の回転数条件の各々につき、3つの音響センサ32,34A,34Bで音データを取得するため、9種の音データが取得される。
【0043】
次に、周波数解析部42により、上述の複数の回転数条件(モータ回転数がn、2n、4nの3条件)ごとに取得した複数の音データについて、それぞれ周波数解析を行う(周波数解析ステップ;ステップ106)。この周波数解析の結果得られる周波数スペクトルが図4(回転数条件:n[rpm]の場合)、図5(回転数条件:2n[rpm]の場合)、及び図6(回転数条件:4n[rpm]の場合)に示されている。
【0044】
次に、ピーク周波数特定部48により、上述の周波数解析の結果に基づいて、複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件及び当該ピーク周波数を特定する(ピーク周波数特定ステップ;ステップS108)。具体的には、以下に述べるように、上述の回転数条件及び共通するピーク周波数を特定する。
【0045】
図4に示す各音響センサ(マイクA~C)に係る音データの周波数スペクトルでは、fa,f1及びfbの3つの周波数において、音響センサ32,34A,34B(マイクA~C)の各々に係る音データにピークが現れている。よって、モータ2の回転数がn[rpm]であるとの回転数条件のもとでは、これらの音データに共通するピーク周波数は、fa,f1及びfbである、と特定される。
【0046】
図5に示す各音響センサ(マイクA~C)に係る音データの周波数スペクトルでは、fa,f2及び2fb(fbの2倍)の3つの周波数において、音響センサ32,34A,34B(マイクA~C)の各々に係る音データにピークが現れている。よって、モータ2の回転数が2n[rpm]であるとの回転数条件のもとでは、これらの音データに共通するピーク周波数は、fa,f2及び2fbである、と特定される。
【0047】
図6に示す各音響センサ(マイクA~C)に係る音データの周波数スペクトルでは、fa,f3及び4fb(fbの4倍)の3つの周波数において、音響センサ32,34A,34B(マイクA~C)の各々に係る音データにピークが現れている。よって、モータ2の回転数が4n[rpm]であるとの回転数条件のもとでは、これらの音データに共通するピーク周波数は、fa,f3及び4fbである、と特定される。
【0048】
次に、第1除去部44により、複数の回転数条件(モータ回転数がn、2n、4nの3条件)の下で、複数の音響センサ(マイクA~C)で取得された複数の音データ(9種の音データ)の周波数解析の結果(図4図6に示す周波数スペクトル)について、回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去する(第1除去ステップ;ステップS110)。
【0049】
図4図6に示す9つの周波数スペクトルでは、これらの周波数スペクトルの全てにおいて、周波数faのピークが存在する。したがって、周波数faの成分は、モータ2(駆動部)の回転数条件によらず共通して存在する成分である。すなわち、第1除去部44は、各周波数スペクトルについて、周波数faの成分を有するピークを除去する。なお、図4図6において、除去される周波数faの成分を有するピークは、破線で示されている。
【0050】
次に、第2除去部46により、複数の回転数条件(モータ回転数がn、2n、4nの3条件)の下で、複数の音響センサ(マイクA~C)で取得された複数の音データ(9種の音データ)の周波数解析の結果(図4図6に示す周波数スペクトル)について、モータ2(駆動部)の回転数に周波数が比例する成分を除去する(第2除去ステップ;ステップS112)。
【0051】
ここで、図4に示す周波数スペクトル、すなわち、モータ2の回転数がn[rpm]の条件で取得された3つの周波数スペクトルには、周波数fbのピークが共通して存在する。また、図5に示す周波数スペクトル、すなわち、モータ2の回転数が2n[rpm]の条件で取得された3つの周波数スペクトルには、周波数2fbのピークが共通して存在する。また、図6に示す周波数スペクトル、すなわち、モータ2の回転数が4n[rpm]の条件で取得された3つの周波数スペクトルには、周波数4fbのピークが共通して存在する。
したがって、これらの周波数fb、2fb、4fbの成分は、モータ2の回転数に周波数が比例する成分である。すなわち、第2除去部46は、各周波数スペクトルについて、周波数fb、2fb、4fbの成分を有するピークを除去する。なお、図4図6において、除去される周波数fb、2fb、4fbの成分を有するピークは、破線で示されている。
【0052】
次に、音源情報取得部50により、1以上の回転数条件の各々について、複数の音響センサ(マイクA~C)のうち、ピーク周波数特定ステップ(S112)で特定された共通のピーク周波数に対応する音データの振幅が最も大きい一の音響センサの圧延装置1に対する設置位置に基づいて、圧延装置1のうち、当該共通のピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得る(音源情報取得ステップ;ステップS114)。
【0053】
音源情報取得ステップ(S114)では、上述の第1除去ステップ(S110)で除去される周波数成分を前述の共通のピーク周波数から除外して、音の発生源に関する情報を得るようにしてもよい。
また、音源情報取得ステップ(S114)では、上述の第2除去ステップ(S112)により除去される周波数成分を前述の共通のピーク周波数から除外して、音の発生源に関する情報を得るようにしてもよい。
【0054】
より具体的には、図4に示される3つの周波数スペクトル(モータ2の回転数がnである回転数条件で、3つの音響センサ(マイクA~C)取得された音データの周波数スペクトル)では、既に述べたように、これらの音データに共通するピーク周波数fa,f1及びfbが特定されている。また、第1除去ステップS110では、周波数faの成分を有するピークが除去されるとともに、第2除去ステップS112では、周波数fbの成分を有するピークが除去されている。
【0055】
そこで、音源情報取得部50は、これらの3つの周波数スペクトルについて、ピーク周波数特定ステップで特定されたピーク周波数fa,f1及びfbから、周波数faの成分及び周波数fbの成分を除外したもの、すなわち、ピーク周波数f1の成分について、このピーク周波数に対応する音データの振幅が最も大きい一の音響センサ(マイクA~C)を特定する。
【0056】
図4に示すように、各音響センサ(マイクA~C)に対応する周波数スペクトルにおけるピーク周波数f1での振幅は、それぞれ、I(f1,A)、I(f1,B)、I(f1,C)であり、これらの大小関係は、I(f1,C)≒I(f1,A)<I(f1,B)である。よって、ピーク周波数f1での振幅が最も大きい音データを取得した音響センサは、音響センサ34A(マイクB)であると特定できる。
【0057】
そして、このように特定された音響センサ34A(マイクB)はギア4に対応して設けられており、圧延装置1において、他の音響センサ(音響センサ32、34B)に比べてギア4に近い位置に設けられているから、ピーク周波数f1に対応する固有振動数(f1)の音の発生源は、圧延装置1のうちギア4である、との情報が得られる。
【0058】
また、図5に示される3つの周波数スペクトル(モータ2の回転数が2nである回転数条件で、3つの音響センサ(マイクA~C)取得された音データの周波数スペクトル)では、既に述べたように、これらの音データに共通するピーク周波数fa,f2及び2fbが特定されている。また、第1除去ステップS110では、周波数faの成分を有するピークが除去されるとともに、第2除去ステップS112では、周波数2fbの成分を有するピークが除去されている。
【0059】
そして、音源情報取得部50では、これらの3つの周波数スペクトルについて、ピーク周波数特定ステップで特定されたピーク周波数fa,f2及び2fbから、周波数faの成分及び周波数2fbの成分を除外したもの、すなわち、ピーク周波数f2の成分について、このピーク周波数に対応する音データの振幅が最も大きい一の音響センサ(マイクA~C)を特定する。
【0060】
図5に示すように、各音響センサ(マイクA~C)に対応する周波数スペクトルにおけるピーク周波数f2での振幅は、それぞれ、I(f2,A)、I(f2,B)、I(f2,C)であり、これらの大小関係は、I(f2,A)<I(f2,B)<I(f2,C)である。よって、ピーク周波数f2での振幅が最も大きい音データを取得した音響センサは、音響センサ34B(マイクC)であると特定できる。
【0061】
そして、このように特定された音響センサ34B(マイクC)はスピンドル6に対応して設けられており、圧延装置1において、他の音響センサ(音響センサ32、34A)に比べてスピンドル6に近い位置に設けられているから、ピーク周波数f2に対応する固有振動数(f2)の音の発生源は、圧延装置1のうちスピンドル6である、との情報が得られる。
【0062】
また、図6に示される3つの周波数スペクトル(モータ2の回転数が4nである回転数条件で、3つの音響センサ(マイクA~C)取得された音データの周波数スペクトル)では、既に述べたように、これらの音データに共通するピーク周波数fa,f3及び4fbが特定されている。また、第1除去ステップS110では、周波数faの成分を有するピークが除去されるとともに、第2除去ステップS112では、周波数4fbの成分を有するピークが除去されている。
【0063】
そして、音源情報取得部50では、これらの3つの周波数スペクトルについて、ピーク周波数特定ステップで特定されたピーク周波数fa,f3及び4fbから、周波数faの成分及び周波数4fbの成分を除外したもの、すなわち、ピーク周波数f3の成分について、このピーク周波数に対応する音データの振幅が最も大きい一の音響センサ(マイクA~C)を特定する。
【0064】
図6に示すように、各音響センサ(マイクA~C)に対応する周波数スペクトルにおけるピーク周波数f3での振幅は、それぞれ、I(f3,A)、I(f3,B)、I(f3,C)であり、これらの大小関係は、I(f3,C)<I(f3,B)<I(f3,A)である。よって、ピーク周波数f3での振幅が最も大きい音データを取得した音響センサは、音響センサ32(マイクA)であると特定できる。
【0065】
そして、このように特定された音響センサ32(マイクA)はモータ2に対応して設けられており、圧延装置1において、他の音響センサ(音響センサ34A、34B)に比べてモータ2に近い位置に設けられているから、ピーク周波数f3に対応する固有振動数(f3)の音の発生源は、圧延装置1のうちモータ2である、との情報が得られる。
【0066】
次に、ピーク周波数特定ステップ(ステップS108)で特定されたモータ2の回転数条件(モータ回転数:n,2n,4n)に対応する共通のピーク周波数(f1,f2,f3)と、音源情報取得ステップ(ステップS114)で取得された音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を、記憶部37に記憶させる(ステップS116)。
【0067】
ここで、図7は、記憶部37に記憶される情報の一例を示す図である。
上述したように、ピーク周波数特定ステップ(ステップS108)及び音源情報取得ステップ(ステップS114)により、モータ2の回転数条件(モータ回転数:n,2n,4n)に対応する共通のピーク周波数(f1,f2,f3)と、該共通のピーク周波数(f1,f2,f3)に対応する固有振動数(f1,f2,f3)の音の発生源(ギア4、スピンドル6、モータ2)との対応関係が特定される。よって、図7に示すように、記憶部37には、上述のピーク周波数(即ち固有振動数)と、該固有振動数の音の発生源に関する情報(圧延装置1における部位)が記憶される。
【0068】
このように、記憶部37に記憶されたピーク周波数(固有振動数)と音の発生源とが関連付けられた情報は、後述するように、圧延装置1の診断時に用いることができる。
【0069】
以上説明した診断装置及び診断方法によれば、異なる位置に設けられた複数の音響センサ32,34A,34Bにより、複数の回転数条件(モータ回転数:n,2n,4n)の各々で取得された複数音データの各々について周波数解析を行うことで、各音データについて、振幅が極大となるピーク周波数を把握することができる。そして、各音データの周波数解析結果に基づいて、複数の音データに共通するピーク周波数が存在する回転数条件を特定するとともに、当該ピーク周波数を特定することができる。ここで、ある回転数条件において、複数の音響センサ32,34A,34Bで取得された複数の音データに存在する共通のピーク周波数は、圧延装置1(機械装置)の固有振動数と一致する可能性があるため、圧延装置1の固有振動数を特定することができる。
また、上述のように特定された回転数条件において、各音響センサ32,34A,34Bで取得した音データのうち、上述のように特定されたピーク周波数(すなわち、圧延装置1の固有振動数に一致する可能性がある周波数)での音の振幅が最も大きい一の音響センサは、複数の音響センサ32,34A,34Bのうち、圧延装置1における上述のピーク周波数の音の発生源に最も近い位置に設置されたものであると推定することができる。よって、上述の一の音響センサの設置位置に基づいて、圧延装置1の固有振動数に対応する音の発生源に関する情報(例えば、音の発生源の圧延装置1における位置や部位等)を取得することができる。
よって、上述の診断装置及び診断方法によれば、複数の音響センサ32,34A,34Bを含む簡素な構成で、圧延装置1の固有振動数を特定することができるとともに、該圧延装置において該固有振動数を有する位置又は部位を示す情報を取得することができる。
【0070】
次に、上述のようにして特定した固有振動数に基づき圧延装置1を診断する方法について説明する。ここでは、診断対象がギア4である場合について説明する。
【0071】
図8は、一実施形態に係る診断方法の概要を示すフローチャートである。
図8に示すように、一実施形態に係る診断方法では、まず、モータ2(駆動部)の回転数が規定値Nでの運転中に、診断用音響センサ35で圧延装置1からの音を検知し、音データ取得部40により該音を含む診断用音データを取得する(ステップS202)。次に、取得した診断用音データについて、周波数解析部42により周波数解析を行って周波数スペクトルを取得する(ステップS204)。
【0072】
そして、診断用音データについての周波数解析結果(周波数スペクトル)における、診断対象部位(例えばギア4)のピーク周波数(固有振動数)の成分の振幅に基づいて、音の発生源(即ち診断対象部位)の異常判定を行う(ステップS206~S208)。ここで、診断対象部位のピーク周波数(固有振動数)は、上述のピーク周波数特定ステップ(ステップS108)及び音源情報取得ステップ(ステップS114)で特定されたものである。
【0073】
より具体的には、ステップS206では、診断用音データの周波数解析結果における、診断対象であるギア4についての上述のピーク周波数(固有振動数)f1での振幅を取得する。なお、診断対象部位(ギア4)に対応するピーク周波数(固有振動数)の情報は、記憶部37から取得するようにしてもよい。そして、このように取得した振幅Iと、閾値Ithとを比較する。この閾値は、モータ2の回転数の規定値Nに対応した適切な値が設定される。
【0074】
そして、振幅Iが閾値Ith未満である場合には(ステップS206のNO)、ギア4に異常があるとは判断されずに診断方法のフローを終了する。一方、振幅Iが閾値Ith以上である場合には(ステップS206のYES)、ギア4に異常又は異常の予兆があると判定する。この場合、ギア4の異常又は異常の予兆が検知されたことを表示部38に表示したり、あるいは、スピーカ等により警報を鳴動させるようになっていてもよい。
【0075】
振幅Iの閾値Ithは、モータ2(駆動部)の回転数に応じて異なる値を設定してもよい。モータ2の回転数により、当該ピーク周波数成分での音の振幅は異なるため、このように、モータ2(駆動部)の回転数に応じた適切な閾値を設定することで、診断対象部位の異常判定をより適切に行うことができる。
【0076】
以下、幾つかの実施形態に係る診断装置及び診断方法について概要を記載する。
【0077】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る診断装置は、
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置を診断するための診断装置であって、
それぞれ異なる位置に設けられ、前記機械装置から発生する音をそれぞれ検知するための複数の音響センサと、
前記駆動部の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において前記複数の音響センサの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを取得するように構成された音データ取得部と、
前記複数の回転数条件ごとに取得した前記複数の音データをそれぞれ周波数解析するように構成された周波数解析部と、
前記周波数解析部による周波数解析結果に基づいて、前記複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件及び前記ピーク周波数を特定するピーク周波数特定部と、
前記1以上の回転数条件の各々について、前記複数の音響センサのうち、前記ピーク周波数に対応する前記音データの振幅が最も大きい一の音響センサの前記機械装置に対する設置位置に基づいて、前記機械装置のうち、前記ピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得る音源情報取得部と、
を備える。
【0078】
上記(1)の構成では、異なる位置に設けられた複数の音響センサにより、複数の回転数条件の各々で取得された複数音データの各々について周波数解析を行うことで、各音データについて、振幅が極大となるピーク周波数を把握することができる。そして、各音データの周波数解析結果に基づいて、複数の音データに共通するピーク周波数が存在する回転数条件を特定するとともに、当該ピーク周波数を特定することができる。ここで、ある回転数条件において、複数の音響センサで取得された複数の音データに存在する共通のピーク周波数は、機械装置の固有振動数と一致する可能性があるため、機械装置の固有振動数を特定することができる。
また、上述のように特定された回転数条件において、各音響センサで取得した音データのうち、上述のように特定されたピーク周波数(すなわち、機械装置の固有振動数に一致する可能性がある周波数)での音の振幅が最も大きい一の音響センサは、複数の音響センサのうち、機械装置における上述のピーク周波数の音の発生源に最も近い位置に設置されたものであると推定することができる。よって、上述の一の音響センサの設置位置に基づいて、機械装置の固有振動数に対応する音の発生源に関する情報(例えば、音の発生源の機械装置における位置や部位等)を取得することができる。
よって、上記(1)の構成によれば、複数の音響センサを含む簡素な構成で、機械装置の固有振動数を特定することができるとともに、該機械装置において該固有振動数を有する位置又は部位を示す情報を取得することができる。
【0079】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記診断装置は、
前記複数の音データの前記周波数解析結果について、前記回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去するように構成された第1除去部をさらに備え、
前記音源情報取得部は、前記第1除去部により除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得るように構成される。
【0080】
異なる回転数条件の下で取得された複数の音データにおいて、同一の周波数に振幅のピークが現れる場合、その周波数は、駆動部の回転数に依らずに生じる背景音に由来するものであると推定することができる。この点、上記(2)の構成によれば、複数の回転数条件下で複数の音響センサで取得した複数の音データの周波数解析結果について、回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去し、音の発生源に関する情報を得る際に、複数の音データの周波数解析結果における共通のピーク周波数から、背景音に関連する上述の周波数成分を除外する。よって、複数の音データの周波数解析結果に基づいて、機械装置の固有振動数を精度良好に特定することができる。
【0081】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記診断装置は、
前記複数の音データの前記周波数解析結果について、前記駆動部の回転数に周波数が比例する成分を除去するように構成された第2除去部をさらに備え、
前記音源情報取得部は、前記第2除去部により除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得るように構成される。
【0082】
異なる回転数条件の下で取得された複数の音データにおいて、駆動部の回転数に比例する周波数成分のピークが現れる場合、その周波数は、駆動部の運動の大きさに起因する音であり、機械装置の固有振動数とは関連しないものであると推定することができる。この点、上記(3)の構成によれば、複数の回転数条件下で複数の音響センサで取得した複数の音データの周波数解析結果について、駆動部の回転数に周波数が比例する成分を除去し、音の発生源に関する情報を得る際に、複数の音データの周波数解析結果における共通のピーク周波数から、機械装置の固有振動数に関連しない上述の周波数成分を除外する。よって、複数の音データの周波数解析結果に基づいて、機械装置の固有振動数を精度良好に特定することができる。
【0083】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記診断装置は、
前記ピーク周波数特定部によって特定された前記回転数条件に対応する前記ピーク周波数と、前記音源情報取得部によって特定された前記音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶するための記憶部をさらに備える。
【0084】
上記(4)の構成によれば、上述のように特定された回転数条件に対応するピーク周波数(すなわち、機械装置の固有振動数である可能性がある周波数)と、上述のように特定された音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶できるので、記憶された情報に基づき機械装置の診断することが可能となり、機械装置の診断が容易となる。
【0085】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記診断装置は、
前記駆動部の回転数が規定値での運転中に、診断用音響センサで検知された音に基づき取得された診断用音データを周波数解析するように構成された周波数解析部と、
前記周波数解析部による前記診断用音データについての周波数解析結果における、前記ピーク周波数の成分の振幅に基づいて、前記音の発生源の異常判定を行うように構成された診断部と、を備える。
【0086】
機械装置の固有振動数の音の振幅は、駆動部の回転数に応じて変化する。この点、上記(5)の構成によれば、駆動部が特定の回転数(規定値)で運転されているときに診断用音データを取得するようにしたので、該診断用音データの周波数解析結果における上述のピーク周波数(上記(1)の構成で特定されるピーク周波数)の成分の振幅に基づいて、当該ピーク周波数の音の発生源の異常判定を適切に行うことができる。
【0087】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記診断部は、前記診断用音データについての前記周波数解析結果において、前記ピーク周波数の成分の振幅が閾値以上であるとき、前記音の発生源に異常が生じたと判定するように構成される。
【0088】
上記(6)の構成によれば、上述の診断用音データの周波数解析結果における上述のピーク周波数の成分の振幅と、閾値との比較により、当該ピーク周波数の音の発生源の異常判定を適切に行うことができる。なお、上述の閾値は、例えば、上述の(1)の構成により特定されたピーク周波数(機械装置の固有振動数)について、駆動部の回転数を規定値に設定して予め取得した振幅に基づいて決定することができる。
【0089】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記機械装置は、
前記駆動部としてのモータと、
前記モータによって回転駆動される前記被駆動部としてのギア又はスピンドルと、
前記ギア又は前記スピンドルにより駆動される圧延ロールと、
を含む圧延装置である。
【0090】
上記(7)の構成によれば、駆動部としてのモータと、被駆動部としてのギア又はスピンドルと、該ギア又はスピンドルにより駆動される圧延ロールと、を含む圧延装置の固有振動数を特定することができるとともに、該圧延装置において該固有振動数を有する位置又は部位を示す情報を取得することができる。
【0091】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記複数の音響センサは、前記モータに対応して設けられる第1音響センサと、前記ギア又は前記スピンドルに対応して設けられる第2音響センサと、を含む。
【0092】
上記(8)の構成によれば、モータに対応して設けられる第1音響センサと、ギア又はスピンドルに対応して設けられる第2音響センサとを用いて音データを取得するようにしたので、圧延装置におけるモータ、及び、ギア又はスピンドルについて、固有振動数を特定することができる。
【0093】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る設備は、
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置と、
前記機械装置を診断するように構成された上記(1)乃至(8)の何れか一項に記載の診断装置と、
を備える。
【0094】
上記(9)の構成では、異なる位置に設けられた複数の音響センサにより、複数の回転数条件の各々で取得された複数音データの各々について周波数解析を行うことで、各音データについて、振幅が極大となるピーク周波数を把握することができる。そして、各音データの周波数解析結果に基づいて、複数の音データに共通するピーク周波数が存在する回転数条件を特定するとともに、当該ピーク周波数を特定することができる。ここで、ある回転数条件において、複数の音響センサで取得された複数の音データに存在する共通のピーク周波数は、機械装置の固有振動数と一致する可能性があるため、機械装置の固有振動数を特定することができる。
また、上述のように特定された回転数条件において、各音響センサで取得した音データのうち、上述のように特定されたピーク周波数(すなわち、機械装置の固有振動数に一致する可能性がある周波数)での音の振幅が最も大きい一の音響センサは、複数の音響センサのうち、機械装置における上述のピーク周波数の音の発生源に最も近い位置に設置されたものであると推定することができる。よって、上述の一の音響センサの設置位置に基づいて、機械装置の固有振動数に対応する音の発生源に関する情報(例えば、音の発生源の機械装置における位置や部位等)を取得することができる。
よって、上記(9)の構成によれば、複数の音響センサを含む簡素な構成で、機械装置の固有振動数を特定することができるとともに、該機械装置において該固有振動数を有する位置又は部位を示す情報を取得することができる。
【0095】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る診断方法は、
駆動部と、前記駆動部によって回転駆動される被駆動部と、を含む機械装置を診断するための診断方法であって、
それぞれ異なる位置に設置された複数の音響センサにより前記機械装置から発生する音をそれぞれ検知する音検知ステップと、
前記駆動部の回転数が異なる複数の回転数条件の各々において前記複数の音響センサの各々で検知された音をそれぞれ含む複数の音データを取得する音データ取得ステップと、
前記複数の回転数条件ごとに取得した前記複数の音データをそれぞれ周波数解析するステップと、
前記周波数解析の結果に基づいて、前記複数の音データに共通するピーク周波数が存在する1以上の回転数条件及び前記ピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、
前記1以上の回転数条件の各々について、前記複数の音響センサのうち、前記ピーク周波数に対応する前記音データの振幅が最も大きい一の音響センサの前記機械装置に対する設置位置に基づいて、前記機械装置のうち、前記ピーク周波数に対応する固有振動数の音の発生源に関する情報を得る音源情報取得ステップと、
を備える。
【0096】
上記(10)の方法では、異なる位置に設けられた複数の音響センサにより、複数の回転数条件の各々で取得された複数音データの各々について周波数解析を行うことで、各音データについて、振幅が極大となるピーク周波数を把握することができる。そして、各音データの周波数解析結果に基づいて、複数の音データに共通するピーク周波数が存在する回転数条件を特定するとともに、当該ピーク周波数を特定することができる。ここで、ある回転数条件において、複数の音響センサで取得された複数の音データに存在する共通のピーク周波数は、機械装置の固有振動数と一致する可能性があるため、機械装置の固有振動数を特定することができる。
また、上述のように特定された回転数条件において、各音響センサで取得した音データのうち、上述のように特定されたピーク周波数(すなわち、機械装置の固有振動数に一致する可能性がある周波数)での音の振幅が最も大きい一の音響センサは、複数の音響センサのうち、機械装置における上述のピーク周波数の音の発生源に最も近い位置に設置されたものであると推定することができる。よって、上述の一の音響センサの設置位置に基づいて、機械装置の固有振動数に対応する音の発生源に関する情報(例えば、音の発生源の機械装置における位置や部位等)を取得することができる。
よって、上記(10)の方法によれば、複数の音響センサを含む簡素な構成で、機械装置の固有振動数を特定することができるとともに、該機械装置において該固有振動数を有する位置又は部位を示す情報を取得することができる。
【0097】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法は、
前記複数の音データの前記周波数解析の結果について、前記回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去する第1除去ステップをさらに備え、
前記音源情報取得ステップでは、前記第1除去ステップで除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得る。
【0098】
上記(11)の方法によれば、複数の回転数条件下で複数の音響センサで取得した複数の音データの周波数解析結果について、回転数条件に依らず周波数が共通の成分を除去し、音の発生源に関する情報を得る際に、複数の音データの周波数解析結果における共通のピーク周波数から、背景音に関連する上述の周波数成分を除外する。よって、複数の音データの周波数解析結果に基づいて、機械装置の固有振動数を精度良好に特定することができる。
【0099】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)又は(11)の方法は、
前記複数の音データの前記周波数解析の結果について、前記駆動部の回転数に周波数が比例する成分を除去する第2除去ステップをさらに備え、
前記音源情報取得ステップでは、前記第2除去ステップにより除去される周波数成分を前記ピーク周波数から除外して、前記音の発生源に関する情報を得る。
【0100】
上記(12)の方法によれば、複数の回転数条件下で複数の音響センサで取得した複数の音データの周波数解析結果について、駆動部の回転数に周波数が比例する成分を除去し、音の発生源に関する情報を得る際に、複数の音データの周波数解析結果における共通のピーク周波数から、機械装置の固有振動数に関連しない上述の周波数成分を除外する。よって、複数の音データの周波数解析結果に基づいて、機械装置の固有振動数を精度良好に特定することができる。
【0101】
(13)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(12)の何れか方法は、
前記ピーク周波数特定ステップで特定された前記回転数条件に対応する前記ピーク周波数と、前記音源情報取得ステップで取得された前記音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶部に記憶させるステップをさらに備える。
【0102】
上記(13)の方法によれば、上述のように特定された回転数条件に対応するピーク周波数(すなわち、機械装置の固有振動数である可能性がある周波数)と、上述のように特定された音の発生源に関する情報と、が関連付けられた情報を記憶できるので、記憶された情報に基づき機械装置の診断することが可能となり、機械装置の診断が容易となる。
【0103】
(14)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(13)の何れかの方法は、
前記駆動部の回転数が規定値での運転中に、診断用音響センサで前記機械装置からの音を検知し、該音を含む診断用音データを取得するステップと、
前記診断用音データについて周波数解析するステップと、
前記診断用音データについての周波数解析結果における、前記ピーク周波数の成分の振幅に基づいて、前記音の発生源の異常判定を行う診断ステップをさらに備える。
【0104】
上記(14)の方法によれば、駆動部が特定の回転数(規定値)で運転されているときに診断用音データを取得するようにしたので、該診断用音データの周波数解析結果における上述のピーク周波数(上記(10)の方法で特定されるピーク周波数)の成分の振幅に基づいて、当該ピーク周波数の音の発生源の異常判定を適切に行うことができる。なお、駆動部の回転数は圧延状況に応じて異なる値を設定してもよいので、特定されるピーク周波数の成分の振幅もそれぞれの回転数に応じて変化する。
【0105】
(15)幾つかの実施形態では、上記(14)の方法において、
前記診断ステップでは、前記診断用音データについての前記周波数解析結果において、前記ピーク周波数の成分の振幅が閾値以上であるとき、前記音の発生源に異常が生じたと判定する。
【0106】
上記(15)の方法によれば、上述の診断用音データの周波数解析結果における上述のピーク周波数の成分の振幅と、閾値との比較により、当該ピーク周波数の音の発生源の異常判定を適切に行うことができる。なお、上述の閾値は、例えば、上述の(9)の方法により特定されたピーク周波数(機械装置の固有振動数)について、駆動部の回転数を規定値に設定して予め取得した振幅に基づいて決定することができる。
【0107】
(16)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(15)の何れかの方法において、
前記機械装置は、
前記駆動部としてのモータと、
前記モータによって回転駆動される前記被駆動部としてのギア又はスピンドルと、
前記ギア又は前記スピンドルにより駆動される圧延ロールと、
を含む圧延装置である。
【0108】
上記(16)の方法によれば、駆動部としてのモータと、被駆動部としてのギア又はスピンドルと、該ギア又はスピンドルにより駆動される圧延ロールと、を含む圧延装置の固有振動数を特定することができるとともに、該圧延装置において該固有振動数を有する位置又は部位を示す情報を取得することができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0110】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0111】
1 圧延装置
2 モータ
3 動力伝達部
4 ギア
6 スピンドル
8 圧延ロール
9 金属帯板
12A,12B ワークロール
14A,14B 中間ロール
16A,16B バックアップロール
30 診断装置
32 第1音響センサ
34A,34B 第2音響センサ
35 診断用音響センサ
36 処理部
37 記憶部
38 表示部
40 音データ取得部
42 周波数解析部
44 第1除去部
46 第2除去部
48 ピーク周波数特定部
50 音源情報取得部
54 診断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8