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特許7077525波長可変光源、及びこれを用いた光トランシーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】波長可変光源、及びこれを用いた光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20220524BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20220524BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20220524BHJP
   H01S 5/14 20060101ALI20220524BHJP
   H04B 10/572 20130101ALI20220524BHJP
【FI】
H01S5/0687
G02B6/12 301
H01S5/026 618
H01S5/14
H04B10/572
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016256774
(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2018110158
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100192636
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159191(JP,A)
【文献】特開2015-068854(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010528(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194349(WO,A1)
【文献】特開2016-072464(JP,A)
【文献】特開2015-060961(JP,A)
【文献】特開2015-002210(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118836(WO,A1)
【文献】特開2013-089961(JP,A)
【文献】特表2011-513711(JP,A)
【文献】特開2011-003591(JP,A)
【文献】特開2007-121232(JP,A)
【文献】特開2005-274507(JP,A)
【文献】特開2000-323784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064542(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01850170(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0021308(US,A1)
【文献】特開2017-216384(JP,A)
【文献】Seok-Hwan Jeong, et al.,“Novel Optical 90° Hybrid Consisting of a Paired Interference Based 2×4 MMI Coupler, a Phase Shifter and a 2×2 MMI Coupler”,Journal of Lightwave Technology,2010年02月17日,Vol.28,No.9,p.1323-1331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
G01J 1/00 - 11/00
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/42 - 6/43
G02F 1/00 - 1/125
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光が入力される波長モニタと、
前記波長モニタの出力値に基づいて前記光源を制御する制御部と、
を有し、
前記波長モニタは、互いに90°位相の異なる4つの出力をもち波長に対して周期的に変化する透過スペクトルをもつ波長フィルタと、前記波長フィルタの前記4つの出力のうちの3つの出力に接続される3つの受光素子を有し、
前記制御部は、前記3つの受光素子で得られた3つの受光量のうちの2つの受光量の和を分母、1つの受光量を分子とする受光比を計算し、前記受光比の計算値が前記波長フィルタの前記透過スペクトルで決まる指定波長での目標比率に近づくように前記光源に入力される電流値を制御し、
前記制御部は、前記指定波長において前記波長フィルタの前記透過スペクトルの傾きが最も大きい1種類の受光比を選択して前記目標比率を決定する、
ことを特徴とする波長可変光源。
【請求項2】
前記3つの受光素子の出力に基づいてあらかじめ計算された、波長に対して周期的に変化する少なくとも3種類の受光比を前記波長フィルタの特性情報として記憶するメモリ、をさらに有し、
前記制御部は、前記波長フィルタの前記特性情報から、前記指定波長において前記透過スペクトルの傾きが最も大きい1種類の受光比を選択して前記目標比率を決定することを特徴とする請求項1に記載の波長可変光源。
【請求項3】
前記メモリは、前記波長フィルタの前記特性情報を、前記3種類の受光比の各々について前記波長に対して周期的に変化する前記透過スペクトルとして記憶することを特徴とする請求項2に記載の波長可変光源。
【請求項4】
前記メモリは、前記波長フィルタの前記特性情報を、波長ごとに選択すべき受光比の種類と目標比率とを対応づけたテーブルとして記憶することを特徴とする請求項2に記載の波長可変光源。
【請求項5】
前記波長フィルタは、入力光を2つの光に分岐して分岐された光を長さの異なる2つの導波路に出力する分岐部と、前記2つの導波路を伝搬した光を干渉させて前記互いに90°位相の異なる4つの光を出力する光ミキサとを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の波長可変光源。
【請求項6】
前記光源は外部共振器型の光源であり、
前記制御部は、前記受光比の計算値が前記指定波長での前記目標比率に近づくように共振器に入力される電流値を制御することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の波長可変光源。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の波長可変光源を用いた光送信器と、
光受信器と、
を有する光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信で用いられる波長可変光源とこれを用いた光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の光通信を実現するため、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)の技術が採用されつつある。WDMでは、異なる波長の光を発振する波長可変光源(TLS:Tunable Light Source)が用いられる。波長可変光源には、波長制御のための波長モニタが設けられている。波長モニタは、一般的に、周期的な透過スペクトルをもつ波長フィルタとフォトダイオード(PD)で実現される。このような波長フィルタとして遅延干渉計が用いられている(たとえば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
図1は、従来の波長可変光源の構成を示す。半導体光増幅器(SOA1)から出力された光を共振器フィルタに通すことで、特定波長の光が選択的に増幅される。増幅された光の一部をタップ1で取り出し、タップ2で2つに分岐する。分岐された光の一方は波長フィルタに入力され、他方は半導体光増幅器(SOA2)で増幅されて出力光となる。出力光の一部は、パワーモニタ用のフォトダイオードPDmで受光される。波長フィルタは3dBカプラと、長さの異なる2本の導波路と、90°ハイブリッド(光ミキサ)を有し、90°ハイブリッドから出力される位相が90°ずれた2つの光をPD1、PD2で受光する。
【0004】
波長モニタのPD1とPD2で検出される電流をそれぞれP1、P2とし、パワーモニタ用のフォトダイオードPDmで検出される電流をPmonとすると、電流比P1/PmonとP2/Pmonのスペクトル(波長フィルタの透過スペクトル)は図2のようになる。各波長グリッドに波長を精度良く合わせるためには、フィルタのスロープが大きいほうが微分利得が大きく感度がよい。グリッドごとに、P1とP2のうちスロープの大きいほうを選択して、PD1とPD2の電流が狙いの値になるように波長を制御する。
【0005】
図1の構成では、パワーモニタ用のPDmの受光強度が半導体光増幅器SOA2の状態に依存することにより、波長モニタで十分な精度を得ることができない。そこで、図3のように、波長モニタへの入力光の一部をタップ3で取り出し、追加の波長モニタ用のフォトダイオードPDmWで受光し、受光した光を参照光とする構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2015/0085292号明細書
【文献】国際公開第2016/010528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3の構成ではタップ3が新たに必要となり、PD1とPD2での受光量が減る。波長モニタ用の受光量を確保するためにタップ2の分岐比率を調整すると、SOA2側での出力光の強度が小さくなってしまう。また、タップ3の分岐比は波長に依存するため、パワーモニタ用のフォトダイオードPDmWで必要な受光量を得るために、タップ3からPDnW側への分岐割合が最小となる波長を基準にしてタップ比を設計する。タップ3からPDnWへの分岐割合が最大となる波長では、そのぶんPD1とPD2での受光量が減るので、タップ2から波長フィルタへの分岐比を上げなければならない。その結果、損失が増大して出力光のパワーが減少する。また、タップ3の分岐比が波長に依存すると、制御波長ずれの問題も生じ波長フィルタが安定しない。
【0008】
本発明は、低損失かつ安定した動作の波長モニタを有する波長可変光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様では、波長可変光源は、
光源と、
前記光源からの光が入力される波長モニタと、
前記波長モニタの出力値に基づいて前記光源を制御する制御部と、
を有し、
前記波長モニタは、周期的な透過スペクトルをもつ波長フィルタと、前記波長フィルタの出力に接続される3つの受光素子を有し、
前記制御部は、前記3つの受光素子で得られた3つの受光量のうちの2つの受光量を用いて規格化された受光比を計算し、前記受光比の計算値が指定波長での目標比率に近づくように前記光源に入力される電流値を制御する。
【発明の効果】
【0010】
低損失で安定した動作の波長モニタを有する波長可変光源が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】温度依存性を低減した従来の波長モニタの概略図である。
図2】PD電流の出力パワーモニタ用のPDm電流に対する比率のスペクトルを示す図である。
図3】従来の波長モニタの別の構成を示す図である。
図4】実施形態の波長モニタを用いた波長可変光源の概略図である。
図5】3つのPD出力電流から計算される波長フィルタの透過スペクトルを示す図である。
図6】光源制御部の機能ブロック図である。
図7】波長ごとに用いる比の種類と目標の比率値を対応づけたテーブルの例を示す。
図8】光源制御部で行われる波長制御のフローチャートである。
図9】波長可変光源10を用いた光トランシーバの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4は、実施形態の波長可変光源10の概略構成図である。波長可変光源10は、光源20と、波長モニタ15と、光源制御部510を有する。波長モニタ15は、波長フィルタ150と3つの受光素子31(PD1)、32(PD2)、33(PD3)を有する。
【0013】
光源20は、半導体光増幅器11(SOA1)と共振器フィルタ14と、これらの間に延びる光導波路131を含む。半導体光増幅器11の光導波路131への接続面と反対側の端面に高反射膜111が形成されており、共振器フィルタ14の光導波路131と反対側の端部にミラーまたは反射器141が形成されている。共振器フィルタ14は外部共振器として機能し、高反射膜111と反射器141の間を往復して増幅された特定波長の光が、タップ1で光導波路132に結合する。共振器フィルタ14は、たとえば1つまたは複数のリング型導波路を配置したリングフィルタであり、リングの周長、屈折率等で共振周波数が決まる。
【0014】
光導波路132を伝搬する光の一部は、タップ2で光導波路133に分岐され、半導体光増幅器12(SOA2)で増幅される。増幅された光の一部はビームスプリッタ17で分岐されてパワーモニタ21(PDm)で検出され、光源制御部510によりSOA2のフィードバック制御に用いられる(図面の簡略化のため結線は省略されている)。ビームスプリッタ17を透過した光は波長可変光源10の出力光となる。
【0015】
タップ2で光導波路132をそのまま伝搬する光は、波長フィルタ150への入力光となる。波長フィルタ150は、入力光を2つに分岐する分岐部151と、分岐部151から延びる長さの異なる光導波路152及び153と、光導波路152及び153を伝搬した光を干渉させて位相が互いに90°異なる光を出力する光ミキサ154を有する。分岐部151は、たとえば3dBカプラであり、等分された光が入力光から3dB減衰して出力される。光ミキサ154は、4つの出力導波路を有する90°ハイブリッドであり、4つの出力導波路のうちの任意の3つの導波路が、受光素子31(PD1)、32(PD2)、33(PD3)に接続される。
【0016】
この構成では、波長フィルタ150の前段にタップまたは分岐部を設けなくてもよいので、波長フィルタ150に入力される光の損失を抑制することができる。また、共振器フィルタ14、光導波路131、132、133、波長フィルタ150がSOIなどの基板13上にモノリシックに形成されており、タップ数を増やさずに、コンパクトな構成となっている。
【0017】
光ミキサ154からの3つの出力光は、それぞれ受光素子31(PD1)、32(PD2)、33(PD3)で受光される。受光素子31、32、33で検出された電流値は、光源制御部510に入力されて波長制御に用いられる。なお、光電流を電圧に変換するトランスインピーダンスアンプ(TIA)等の回路は、直接発明と関係がないので省略する。
【0018】
実施形態では、検出された3つの受光量のうちの2つの受光量の和を分母として規格化する。すなわち、受光素子31、32、33で検出された電流をそれぞれP1、P2、P3とすると、任意の2つの和を分母、一つを分子とする比率を3つ以上計算し、所望の波長で傾きが最も大きくなる比率を選択する。たとえば、P1/(P1+P2)、P2/(P1+P3)、P3/(P2+P1)など、任意の2つの受光量の和を分母として、検出された電流値を規格化する。
【0019】
従来の構成では、波長フィルタを通過しない(すなわち周期的に変化しない)モニタ光で規格化していたが、実施形態では、波長フィルタ150を通過した周期的に変化する受光量を分母として規格化する。そのため、一つの受光素子(PD)だけの受光量で規格化すると、波長によっては分母がゼロになる場合もあり得る。これを避けるために、分母には2つの受光素子PDでの受光量の和を用いる。
【0020】
また、従来のように2種類の比率だけでは、両方ともに極小値または極大値となる波長が存在しえる。極大値または極小値の近傍では傾きがゼロに近づき、波長に対する強度変化が得られなくなる(不感帯となる)。このような波長では波長制御の精度が悪くなる。そこで、3以上の電流比を算出し、スペクトルの傾きが最も大きい(波長に対する強度変化が最も大きい)比を選択して波長制御の精度を確保する。
【0021】
この構成により、波長フィルタ150への入力(すなわちタップ2の出力)が変動しても、受光素子31(PD1)、32(PD2)、33(PD3)の受光電流から計算される比率は変動しないので、安定した波長モニタが実現できる。また、タップ2で分岐された光をすべて用いてモニタできるので、波長モニタにおける光損失を防止できる。
【0022】
図5は、受光素子31、32、33での受光量の比率を用いた波長フィルタ150の透過スペクトルを示す。ここでは、P1/(P1+P3)、P2/(P2+P3)、P1/(P1+P2)という3種類の比率を用いている。図5のグリッドは、50GHzの固定グリッドである。どの波長においても、3種類の比率のうち必ず1つ以上のスペクトルで傾きが十分に大きくなる。3つの中で最も傾きの大きい比率を用いて、ターゲットの波長になるように波長を調整する。
【0023】
たとえば、波長1549.314nmでは、P1/(P1+P3)のスペクトルの傾きが最も大きいので、受光素子31(PD1)と受光素子33(PD3)で検出される電流値がこの波長での目標比率0.25に近づくように共振器フィルタ14の共振波長を制御する。
【0024】
波長1549.714nmでは、P1/(P1+P2)のスペクトルの傾きが最も大きいので、受光素子31(PD1)と受光素子32(PD2)で検出される電流値がこの波長での目標比率0.35になるように共振器フィルタ14の共振波長を制御する。
【0025】
受光素子31、32、33からの電流値に基づく比率は、光源制御部510によって算出される。光源制御部510は、あらかじめ(出荷前に)測定された3種類の透過スペクトル情報をメモリ51に保持している。運用時に波長が指定されると、メモリ51を参照して、指定波長で最も傾きが大きくなる比の種類を特定する。その後、受光素子31、32、33でモニタされる受光量から電流比率あるいはパワー比率を計算し、計算値が指定された波長での目標比率に近づくように共振器フィルタ14の共振波長を制御する。共振波長の制御は、たとえば共振器フィルタ14の近傍に設けられたヒータに印加される電流値を制御して共振器フィルタ14の屈折率を変えることで、目標の共振波長に制御する。
【0026】
図6は、光源制御部510の機能ブロック図である。この例では、光源制御部510は記憶部520とともに、一つのチップ、たとえばマイクロプロセッサ500に配置されている。光源制御部510は、モニタ情報取得部511と、比率計算部512と、比較部513と、波長制御部514と、指定波長入力部515を有する。
【0027】
光源制御部510は、指定波長入力部515に波長可変光源10で用いられる波長が入力されると、記憶部520のスペクトル情報521を参照して、指定波長でスペクトルの傾きが最も大きくなる比の種類と、その波長での目標比率値を決定する。
【0028】
モニタ情報取得部511は、モニタ用の受光素子31、32、33から受光量または電流値を取得する。比率計算部512は、取得された電流値を用いて、決定された比(たとえばP1/(P1+P3))を計算する。比は、3つの受光量のうちの2つの受光量の和を分母とし、1つの受光量を分子とする比である。比較部513は、比率の計算値と目標値を比較し、比較結果を波長制御部514に出力する。波長制御部514は、比較結果に応じて、光源20の波長を制御する。一例として、光源20の共振器フィルタ14のヒータに印加する電流量を制御して、共振波長を制御する。
【0029】
光源制御部510の機能は、マイクロプロセッサ500の演算処理回路で実現される。記憶部520の機能はメモリ51で実現される。記憶部520は、波長フィルタ150の透過特性(スペクトル)情報として、たとえば図5のスペクトル情報521を保持していてもよいし、図7に示すテーブル522を保持していてもよい。また、メモリ51は、かならずしもマイクロプロセッサ500の内部に配置されている必要はなく、マイクロプロセッサ500の外部に配置されていてもよい。
【0030】
図7は、記憶部520に保持され得るテーブル522の一例を示す。テーブル522は波長ごとに、用いられる比の種類を表わす比IDと、その波長でその比を用いたときの目標比率値Rtを関連付けて記述する。比IDは、あらかじめ設定された3種類以上の比の各々を識別する情報である。たとえば、図5で3つのスペクトルのそれぞれに与えられた識別情報(A、B、C)のうち、波長ごとに傾きが最も大きくなる比IDが対応づけられている。光源制御部510は、波長が指定されたならば、図5の透過スペクトル情報を参照して用いる比の種類と目標比率を決定してもよいし、図7のテーブル522から用いる比の種類と目標比率を決定してもよい。
【0031】
図8は、光源制御部510で実行される波長制御のフローチャートである。指定波長が入力されると(S11)、指定された波長を実現するための電流を共振器フィルタ14に入力する(S12)。スペクトル情報521を参照して、指定された波長において測定に用いる受光素子(PD)と目標比率(Rt)を選択する(S13)。
【0032】
たとえば、波長1549.314nmが指定されると、図5を参照して、スペクトルの傾きが最も大きい比であるP1/(P1+P3)が選択され、受光素子31(PD1)と33(PD3)が選択される。また、その比を用いたときの目標比率Rtが特定される。この例では、Rt=0.25である。
【0033】
受光素子31の受光量(P1)と受光素子33の受光量(P3)が取得される(S14)。取得された受光量から、P1/(P1+P3)が計算され、この比の計算値が目標値Rtに一致するか否かが判断される(S15)。
【0034】
計算値が許容誤差の範囲内で目標値Rtと一致すれば(S15でYES)、その波長にロックされる(S17)。この場合、ステップS12で共振器フィルタ14に印加された電流値が維持される。比の計算値が目標値Rtと異なる場合は(S15でNO)、共振器フィルタ14に入力する電流を調整して(S16)、目標の波長が得られるまでステップS14~S16を繰り返す。電流調整の方向は、比率の計算値と目標値との差分の符号(プラスまたはマイナス)によって決めることができる。電流調整のステップサイズは適切に設定することができる。
【0035】
この制御方法により、低損失かつ安定した波長モニタに基づく高精度の波長制御が実現する。
【0036】
図9は、波長可変光源10(図では「TLS」と表記)を用いた光トランシーバ1の概略図である。光トランシーバ1は、光送信器2と、光受信器6と、光源制御部510と、DSP50を有する。この例では、DSP50は、光送信器2と光受信器6に共通に用いられている。
【0037】
光送信器2は、波長可変光源10と、変調器3と、変調器ドライバ4を有する。波長可変光源10は、光源制御部510の制御により、用いられる波長に応じて共振器フィルタ14の共振周波数が調整されている。波長可変光源10から出力される所定波長の光は、変調器3に入力される。変調器3には、データ信号に基づいて変調器ドライバ4で生成された駆動信号が入力され、波長可変光源10から出力された光が変調される。変調を受けた指定波長の光は光信号として出力される。
【0038】
光源制御部510は、プログラマブルロジックデバイスとして光送信器2の内部に設けられてもよいし、波長可変光源10と同一基板上に搭載されてもよい。
【0039】
DSP50は、光送信器2の変調器ドライバ4に入力されるデータ信号を生成する。また、光受信器6から出力される電流信号をデジタル信号に変換して、データ信号を復調する。
【0040】
実施形態の構成により、波長可変光源において、低損失で安定した波長モニタが実現する。上述した実施形態は一例であり、種々の変形が可能である。3つの受光素子(PD)の受光電流を用いた比率は上述した例に限定されず、波長フィルタ150の透過スペクトルが取得できる限り、任意の組み合わせが可能である。たとえばP1/(P2+P3)、P2/(P1+P3)、P3/(P1+P2)といった比を用いることもできる。
【0041】
光源20は外部共振器型に限定されず、回折格子で波長を選択するモノリシック型の光源であってもよい。波長フィルタ150の遅延導波路(光導波路153)は、U字形に限定されずW字形に湾曲していてもよい。90°ハイブリッドとしては、適切な多モード干渉導波路(MMI)または複数の多モード干渉導波路の組み合わせで実現することができる。図4の例では、共振器フィルタ14、光導波路131、132、133、波長フィルタ150がSOI基板上にモノリシックに形成されているが、InP等の化合物半導体基板上にモノリシックに形成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 光トランシーバ
10 波長可変光源
13 基板
14 共振器フィルタ
15 波長モニタ
20 光源
50 DSP
51 メモリ
131、132、133、152、153 光導波路
150 波長フィルタ
500 マイクロプロセッサ
510 光源制御部
511 モニタ情報取得部
512 比率計算部
513 比較部
514 波長制御部
515 指定波長入力部
520 記憶部
521 スペクトル情報
522 テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9