(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】薬セットおよびその配送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 61/00 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
B65G61/00 522
(21)【出願番号】P 2017107613
(22)【出願日】2017-05-31
【審査請求日】2020-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】甲〆 勲
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0283036(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0186770(US,A1)
【文献】特開2004-103001(JP,A)
【文献】特開2014-083057(JP,A)
【文献】特表2007-534379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方薬を収容する複数の小セットと、
前記複数の小セットを収容する外箱と、
薬剤師またはこれに準ずる者に用いられる確認手段とを備え、
前記小セットはトレイおよび前記複数の容器を含み、
前記トレイは前記複数の容器を支持できるように構成され、
前記容器は服用条件に応じて分類された処方薬を収容するように構成され、
前記外箱は収容部および外箱蓋を含み、
前記収容部は前記小セットを出し入れできるように設けられる開口部を含み、
前記外箱蓋は前記開口部を開閉するように構成され、
前記確認手段は前記外箱に取り付けられるICタグ、または、前記外箱の開封を物理的に妨げ、第3者により開封された場合にその痕跡を事後的に確認できる手段を含む
薬セット。
【請求項2】
前記複数の容器は1人の服用者が服用する処方薬を収容するように構成される
請求項1に記載の薬セット。
【請求項3】
前記容器は1回の服用分の処方薬を収容するように構成される
請求項1または2に記載の薬セット。
【請求項4】
前記確認手段は前記ICタグおよびベルトを含み、
前記ベルトは前記外箱の周囲に取り付けられる
請求項1~3のいずれか一項に記載の薬セット。
【請求項5】
前記外箱は服用者の居所において前記小セットを収容する棚として用いることができるように構成され
、前記外箱内の収容空間を複数の領域に区画する区画部を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の薬セット。
【請求項6】
処方薬を収容する複数の小セットと、
前記複数の小セットを収容する外箱と、
薬剤師またはこれに準ずる者に用いられる確認手段とを備え、
前記小セットはトレイおよび前記複数の容器を含み、
前記トレイは前記複数の容器を支持できるように構成され、
前記容器は服用条件に応じて分類された処方薬を収容するように構成され、
前記外箱は収容部および外箱蓋を含み、
前記収容部は前記小セットを出し入れできるように設けられる開口部を含み、
前記外箱蓋は前記開口部を開閉するように構成され、
前記確認手段は前記外箱に取り付けられるICタグ、または、前記外箱の開封を物理的に妨げ、第3者により開封された場合にその痕跡を事後的に確認できる手段を含む、薬セットを製造する製造工程と、
前記薬セットを前記配送先に配送する配送工程と、
前記配送先において薬剤師またはこれに準ずる者がリーダ装置を用いて前記ICタグの情報を読み取る、または、前記確認手段の様子から前記外箱の開封の有無を確認する確認工程とを含む
薬セットの配送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬セットおよびその配送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関で診察を受けた受診者が、処方箋に従って薬剤師により調剤された処方薬を服用することがある。多くの場合、薬剤師により調剤された処方薬は薬局において薬剤師から服用者に直接渡される。ただし、服用者が在宅医療を受けている等の理由により、薬剤師等が服用者の居所まで処方薬を配送し、服用者またはその代理人に処方薬を渡すケースもある。非特許文献1は処方薬を薬局から服用者の居所に配送するサービスの一例を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】http://www.argus01.com/cont12/main.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在では在宅医療を推進する施策が取られているため、服用者の居所において処方薬が服用者等に渡されるケースが今後増加することが予測される。薬剤師が薬局から服用者の居所まで処方薬を配送する場合、在宅医療を受ける服用者が増加するほど薬剤師にかかる時間的および肉体的等の負荷が増加する。薬剤師に対して社会的に期待される任務を薬剤師が全うできる環境を整備するという点から、薬剤師の本来の業務に付随する処方薬の配送業務に薬剤師がかかわる時間が短縮されることが望ましい。そのための1つの手段として、処方薬の配送に関する委託を薬剤師から受けた受託者が薬局から服用者の居所まで処方薬を含む荷物を配送し、その荷物を服用者等に引き渡す方法が考えられる。このような処方薬の流通形態によれば、服用者等が処方薬に関する知識を有さない受託者から処方薬を受け取ることになるため、服用者がその処方薬を服用する場合に十分な安心感を持つことができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に関する薬セットは服用条件に応じて分類された処方薬を個別に収容する複数の容器と、配送先に配送された前記容器の内容が薬局において製造された前記容器の内容と同じであることを確認するために薬剤師またはこれに準ずる者が用いる確認手段とを備える。
この薬セットに関する代表的な流通形態によれば、次のように服用者またはその代理人(以下「服用者等」)に処方薬が引き渡される。薬剤師は調剤した処方薬を含む容器と確認手段とを備える薬セットを製造し、この薬セットを含む荷物を受託者に引き渡す。受託者は荷物を服用者の居所まで配送する。薬剤師またはこれに準ずる者(以下「薬剤師等」)は服用者の居所において受託者から荷物を受け取り、確認手段を用いて薬セット内の処方薬が薬局で調剤した処方薬と同じか否かを確認する。確認手段による確認方法は多種多様であり、処方薬の内容を直接的に確認する方法、および、処方薬の内容を間接的に確認する方法のいずれも含む。配送された薬セット内の処方薬が配送前の薬セット内の処方薬と同じであることが確認できた場合、薬剤師等は薬セットを服用者等に渡す。服用者は薬剤師等から渡された薬セットを保管し、服用時期が到来したときに薬セットから処方薬を取り出し、処方薬を服用する。受託者から荷物が引き渡された段階で薬剤師等により処方薬の内容が確認されるため、服用者等は薬局において薬剤師から処方薬を直接受け取る場合と類似した環境で薬セットを薬剤師から受け取ることができる。このため、服用者は十分な安心感をもって処方薬を服用できる。
【0006】
(2)好ましい例では(1)に記載の薬セットにおいて、前記確認手段は光学的方法または電磁気的方法を用いて前記容器の内容を確認可能な手段である。
このため、容器の内容を効率的に確認できる。
【0007】
(3)好ましい例では(2)に記載の薬セットにおいて、前記確認手段はICタグを含む。
このため、処方薬および服用者等に関する多数の情報を登録できる。
【0008】
(4)好ましい例では(1)~(3)のいずれか一項に記載の薬セットにおいて、前記複数の容器が載せられるトレイをさらに備え、前記トレイに載せられた前記複数の容器は1人の服用者が服用する処方薬を収容している。
このため、処方薬を容易に管理できる。
【0009】
(5)好ましい例では(4)に記載の薬セットにおいて、前記複数の容器のそれぞれは1回の服用分の処方薬を収容している。
このため、処方薬をより容易に管理できる。
【0010】
(6)本発明に関する薬セットの配送方法は服用条件に応じて分類された処方薬を個別に収容する複数の容器と、配送先に配送された前記容器の内容が薬局において製造された前記容器の内容と同じであることを確認するために薬剤師またはこれに準ずる者が用いる確認手段とを備える薬セットを製造する製造工程と、前記薬セットを前記配送先に配送する配送工程と、前記配送先に配送された前記薬セットの前記容器の内容が前記製造工程において製造された前記容器の内容と同じであることを前記薬剤師またはこれに準ずる者が前記確認手段を用いて確認する確認工程とを含む。
受託者により配送された薬セットが服用者等に引き渡される前に薬剤師等により容器の内容が確認されるため、服用者等は薬局において薬剤師から処方薬を直接受け取る場合と類似した環境で薬セットを薬剤師から受け取ることができる。このため、服用者は十分な安心感をもって処方薬を服用できる。
【0011】
(7)好ましい例では(6)に記載の薬セットの配送方法において、前記製造工程ではICタグを含む前記確認手段が前記複数の容器を収容する外箱に取り付けられ、前記確認工程ではリーダ装置で前記ICタグの情報が読み取られることにより前記容器の内容が間接的に確認される。
このため、確認工程の作業効率が高められる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に関する薬セットおよびその配送方法によれば、服用者が十分な安心感をもって処方薬を服用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1の外箱の開口部が開放された状態を示す斜視図。
【
図7】薬セットの製造および配送の手順の一例を示すフローチャート。
【
図10】小セットの製造に関する第3工程を示す図。
【
図12】確認手段に処方薬情報を登録する作業を示す図。
【
図13】薬セットが配送ケースに収容された状態を示す図。
【
図14】確認手段を用いて処方薬情報を確認する作業を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1に示される薬セット1は1人または複数人の服用者が服用する処方薬を配送するために用いられる。処方薬を調剤した薬剤師から薬セット1の配送の委託を受けた者(以下「受託者」)は、薬局から服用者の居所まで薬セット1を含む荷物を配送する。服用者の居所は多種多様である。その一例は服用者が入居する老人福祉施設、服用者の自宅、および、服用者が入院する病院である。薬剤師またはこれに準ずる者(以下「薬剤師等」)は服用者の居所に配送された薬セット1を受託者から受け取り、薬セット1の内容を確認した後に薬セット1を服用者またはその代理人(以下「服用者等」)に渡す。薬剤師等は服用者が服用する処方薬に関する知識を有する者である。薬剤師に準ずる者の一例は医師、看護師、および、介護福祉士である。薬剤師等は服用者の居所において服用者等に薬セット1を引き渡す場合、必要に応じてその場で処方薬の処方の仕方を服用者等に説明する。
【0015】
薬セット1は1または複数の小セット10、外箱40、および、確認手段130を備えている。小セット10は服用条件に応じて分類された複数の処方薬を収容している。外箱40は複数の小セット10を収容している。外箱40は配送のための梱包箱としての用途だけではなく、服用者の居所において小セット10を収容する棚として用いることもできる。確認手段130は外箱40に取り付けられている。薬剤師等は服用者の居所に薬セット1が配送された場合に薬剤師等が小セット10の内容を確認するために用いられる。
【0016】
図2に示されるように、薬セット1は小セット10を外箱40に出し入れできるように構成されている。このため、服用者は居所における小セット10の取り扱い方法を選択できる。第1例では、服用者は小セット10を外箱40から取り出した状態で部屋等に保管する。第2例では、服用者は処方薬の服用時以外は小セット10を外箱40内に収容し、処方薬の服用時に小セット10を外箱40から取り出す。
【0017】
外箱40は小セット10の形状に合わせて構成された専用のケースである。外箱40を構成する材料は任意に選択できる。好ましい例では、薬セット1の配送時に外部から力が加えられた場合でも小セット10の変形および破損等が生じないように小セット10を適切に保護できる材料が用いられる。その一例は、合成樹脂、段ボール、および、金属である。より好ましい例では、薬セット1を取り扱う薬剤師等および受託者の負荷が軽減されるように軽量な材料が用いられる。
【0018】
外箱40は収容部50および外箱蓋70に区分される。収容部50は小セット10を収容できるように構成された箱である。収容部50内には小セット10が収容される空間(以下「収容空間50A」)が形成されている。収容部50の側部には収容部50に対して小セット10を出し入れできるように開口部80が設けられている。外箱蓋70は開口部80を開閉する。開口部80が外箱蓋70に閉じられることにより、薬セット1の配送時等において小セット10の全体が保護される。収容部50は四角形状の筒61、および、筒61の一方の開口を閉じる背壁62に区分される。筒61は天壁61A、底壁61B、および、一対の側壁61C、61Dに区分される。開口部80は筒61の他方の開口である。
【0019】
外箱蓋70は収容部50と接続されている。このため、薬セットの配送のための準備時において外箱蓋により開口部を閉じる作業が確実に実施される。外箱蓋70は収容部50の底壁61Bと接続されている。このため、外箱蓋70が収容部50の開口部80を開放した状態において、外箱蓋70が開口部80を閉じる方向に移動しにくく、小セット10の取り扱いに関する作業性がより向上する。外箱40は上記構成以外の種々の構成を取り得る。第1例では、外箱40は収容部50と外箱蓋70とを分離できるように構成される。第2例では、外箱40は筒61と背壁62とを分離できるように構成される。第3例では、外箱40は筒61を構成する各壁61A~61Dのうちの1枚または複数枚を互いに分離できるように構成される。第4例では、外箱40は外箱蓋70、筒61の各壁61A~61D、および、背壁62を全て分離できるように構成される。この場合、分離された外箱蓋70、各壁61A~61D、および、背壁62を重ね合わせることができるため、外箱40を収容するためのスペースを削減できる。第5例では、外箱40は1枚の板となるように折り畳むことができるように構成される。この場合にも外箱40を収容するためのスペースを削減できる。
【0020】
外箱40は区画部90をさらに備えている。区画部90は収容空間50Aを複数の領域51に区画する。各領域51には規定数の小セット10を収容できる。規定数は外箱40の高さ方向において隣り合う区画部90の間隔に応じて決められる。外箱40内に収容できる小セット10の最大数は、領域51の総数と1つの領域51の規定数との乗算により得られる値である。
図3等に示される例では、外箱40内が桟の組により10の領域51に区画されている。各領域51の規定数は1である。このため、外箱40内に収容できる小セット10の最大数は10である。
【0021】
区画部90の具体的な構成は任意に選択できる。
図2および
図3に示されるように、区画部90の一例は第1側壁61Cの内面に設けられた複数の桟91、および、第2側壁61Dの内面に設けられた複数の桟92である。各桟91、92は各側壁61C、61Dに固定されている。同じ高さに設けられた一対の桟91、92は1つの組を構成している。桟の組は小セット10を水平に支持できるように構成されている。区画部90の別の一例は第1側壁61Cと第2側壁61Dとの間に設けられる1または複数の棚である。
【0022】
図4に示されるように、小セット10はトレイ100、複数の容器20、および、複数の容器蓋30を備えている。トレイ100は複数の容器20を支持できるように構成されている。容器20は服用条件に従って分類された処方薬200(
図6参照)を収容する。服用条件の一例は1日における服用時期、および、服用日数である。好ましい例では、1回の服用分の処方薬200が1つの容器20の薬収容部21に収容される。容器20は樹脂製のカップであり、薬収容部21およびフランジ22に区分される。薬収容部21は処方薬を収容する空間21Bを形成し、空間21Bに対して処方薬を出し入れするための開口部21Aを有する。フランジ22は薬収容部21の開口部21Aの周囲に設けられている。1つの小セット10に複数の容器20が含まれる場合、各容器20の関係は任意に選択できる。第1例では、各容器20は分離した状態でトレイ100に支持される。第2例では、各容器20が繋がり1つの集合体を構成した状態でトレイ100に支持される。好ましい例では、各容器20を分離できるようにその集合体に分離のためのガイドが形成される。ガイドの例は切り込みおよびミシン目である。
図4等では第1例の容器20を示している。
【0023】
小セット10は外箱40の幅方向および奥行き方向において外箱40にフィットするように構成されている。このため、薬セット1の配送時において外箱40内での小セット10の移動がより確実に抑えられ、小セット10が変形および破損するおそれが一層低減される。外箱40と小セット10とをフィットさせるための具体的な構成は任意に選択できる。一例では、トレイ100の短辺および長辺の寸法が次のように設定されることにより、外箱40と小セット10とがフィットする。平面視におけるトレイ100の形状は四角形であり、収容部50の天壁61Aおよび底壁61Bと相似している。トレイ100の長辺の長さは一方の側壁61Cの内面と他方の側壁61Dの内面との距離よりも若干短い。トレイ100の短辺の長さは外箱蓋70の内面と背壁62の内面との距離よりも若干短い。このため、外箱40に小セット10が収容された状態において、外箱40の内面とトレイ100の外周との間には微小な隙間が形成される。外箱40の幅方向および奥行き方向においてトレイ100が外箱40に対して移動できる範囲は、上記の微小な隙間に制限される。このような外箱40とトレイ100との関係が外箱40とトレイ100とがフィットした状態の一例である。また、小セット10が外箱40内から引き出される場合、および、小セット10が外箱40内に収容される場合にトレイ100の縁と各側壁61C、61Dとが接触しないため、小セット10にかかる抵抗が小さく、小セット10を容易に出し入れできる。
【0024】
トレイ100には容器20を挿入するための複数の穴100Aが形成されている。容器20の薬収容部21はトレイ100の穴100Aに挿入される。薬収容部21が穴100Aに挿入され、フランジ22がトレイ100の穴100Aの周囲に引っ掛かることにより、容器20がトレイ100に支持される。一例では、1つのトレイ100には1人の服用者が一定期間に服用する処方薬を収容した複数の容器20が載せられる。この場合、トレイ100の短辺方向における穴100Aの縦の列100Xは、1日の服用回数であるN1回に対応した個数の穴100Aにより構成される。また、一定期間であるN2日に対応した数の列100Xがトレイ100の長辺方向に並べて形成される。
【0025】
容器蓋30は容器20の開口部21A(
図6参照)を閉じるようにフランジ22に取り付けられている。容器蓋30の構成は任意に選択できる。第1例では、1枚のシート内に複数の容器蓋30が設けられる。シートには各容器蓋30を分離するためのガイドが形成される。ガイドの一例はミシン目である。第2例では、複数の容器蓋30は個別に形成され、それぞれ対応する容器20に取り付けられる。
【0026】
図6等では第1例の容器蓋30を示している。小セット10に設けられたシート30X(
図5参照)は複数の容器蓋30を含む。シート30Xの形状およびサイズは任意に選択できる。一例では、シート30XはA4サイズの用紙である。このため、一般的な構成のプリンタを用いて容器蓋30に各種の情報を印刷できる。シート30X内に形成される容器蓋30の形状は任意に選択できる。容器蓋30の形状の例は楕円または多角形である。
図6等では容器蓋30の形状が六角形の場合を例示している。シート30Xには容器蓋30を象るようにミシン目30Bが形成されている。このため、シート30Xに含まれる複数の容器蓋30のそれぞれをシート30Xから個別に切り取ることができる。
【0027】
図5および
図6に示されるように、容器蓋30の表面30Aには薬収容部21に収容された処方薬に関する情報(以下「処方薬情報」)を表示する表示部31が設けられている。このため、薬剤師等および服用者等は処方薬情報を容易に把握できる。処方薬情報は1種類または複数種類の情報を含む。処方薬情報の一例は、服用者の氏名、処方薬を服用する日付、処方薬の服用時期、および、処方薬の薬品名である。好ましい例では、表示部31は服用者の個人情報保護のための構成をさらに含む。第1例では、処方薬情報が1次元コードまたは2次元コードにより表示される。第2例では、処方薬情報が直接的に視認できないように個人情報保護シールが表示部31に貼り付けられる。
図5に示される例では、表示部31は時期表示部31Aおよび書誌情報表示部31Bを含む。時期表示部31Aは薬収容部21に収容される処方薬200(
図6参照)の服用時期を文字により表示している。書誌情報表示部31Bは処方薬の服用者の氏名、および、処方薬を服用する日付を1次元コードにより表示している。なお、
図1、
図2、および、
図4では表示部31の図示を省略している。
【0028】
図3に示されるように、薬セット1はスライド構造110をさらに備えている。スライド構造110は小セット10を外箱40に対して外箱40の奥行き方向に沿ってスライドさせるための構造である。一例では、スライド構造110は各桟91、92、および、トレイ100により構成されている。作業者はスライド構造110を利用して次のように小セット10を外箱40に出し入れできる。小セット10を外箱40内に入れる場合、開口部80が開放された状態において小セット10のトレイ100の端部を各桟91、92に載せ、小セット10が外箱40内に収容されるように各桟91、92に沿ってトレイ100をスライドさせる。小セット10を外箱40から取り出す場合、小セット10が外箱40外に移動するように各桟91、92に沿ってトレイ100をスライドさせる。このように、作業者がスライド構造110を利用して小セット10を出し入れできるため、小セット10の取り扱いに関する作業性が向上する。
【0029】
図1を参照して、確認手段130について説明する。確認手段130は服用者の居所に配送された薬セット1の小セット10の内容と配送される前の薬セット1の小セット10の内容とが同じであることを薬剤師等が確認するために用いられる。確認手段130の構成は任意に選択できる。第1例では、確認手段130は光学的方法を用いて容器20の中身を確認可能な手段である。第2例では、確認手段130は電磁気的方法を用いて薬セット1の中身を確認可能な手段である。第3例では、確認手段130は外箱40の開封を物理的に妨げ、第3者により開封された場合にその痕跡を事後的に確認できる手段である。その一例はバンドおよびチェーンである。
【0030】
図1等に示される確認手段130は第2例の一例であり、ベルト131およびICタグ132を含む。ベルト131は外箱40の天壁61A、背壁62、筒61の底壁61B、および、外箱蓋70を横断するように外箱40に取り付けられる。ICタグ132は外箱40の任意の位置に取り付けられる。ICタグ132は多種多様な情報を記憶している。好ましい例では、ICタグ132が記憶している情報は処方薬情報を含む。ICタグ132への情報の登録は薬剤師が所有する専用のライタ装置140(
図12参照)により実行される。
【0031】
図7を参照して、薬セット1の製造および配送に関する一連の作業の流れについて説明する。この作業は大きくは製造工程、配送工程、および、確認工程に区分される。製造工程はステップS1~S5の工程を含む。配送工程はステップS6の工程を含む。確認工程はステップS7~S9の工程を含む。
【0032】
ステップS1では、薬剤師は薬局において小セット10を製造する。ステップS2では、薬剤師は小セット10を外箱40内に収容する。ステップS3では、薬剤師は規定数の小セット10が収容された外箱40の外箱蓋70を閉じ、確認手段130を外箱40に取り付けることにより薬セット1を製造する。ステップS4では、薬剤師はライタ装置140(
図14参照)を用いてICタグ132に処方薬情報を登録する。ステップS5では、薬剤師または受託者は複数の外箱40を配送ケース400内に収容する。ステップS6では、受託者は1または複数の配送ケース400を薬局から服用者の居所に配送する。ステップS7では、薬剤師等は服用者の居所において受託者から配送ケース400を受け取る。ステップS8では、薬剤師等は確認手段130を用いて薬セット1の中身が薬局で製造した薬セット1の中身と同じか否かを確認する。ステップS9では、薬剤師は薬セット1の中身が同じであることが確認できた場合、その薬セット1を服用者等に引き渡す。
【0033】
各ステップの詳細について説明する。ステップS1では、第1工程~第3工程が実施される。
図8に示されるように第1工程では、薬剤師は複数の容器20を作業台300にセットし、処方箋に基づいて処方薬200を各容器20の薬収容部21に収容する。
図9に示されるように第2工程では、薬剤師は各容器20に1枚のシート30Xを貼り付けることにより、シート30Xと複数の容器20とにより構成される1組のセットを製造する。
図10に示されるように第3工程では、薬剤師は第2工程で製造したセットをトレイ100に配置する。各容器蓋30が個別に形成される例では、
図11に示されるように各容器20に個別に容器蓋30が取り付けられ、それぞれトレイ100に配置される。
【0034】
図13に示されるように、ステップS5では、薬剤師または受託者は、複数の薬セット1を配送ケース400に収納する。服用者毎に複数の薬セット1が用意される場合、その複数の薬セット1が1つの配送ケース400に収納されることにより、配送ケース400と服用者とを紐付けできるため、配送ケース400を容易に管理できる。
【0035】
図14に示されるように、ステップS8では、薬剤師等はリーダ装置150を用いてICタグ132に記録されている処方薬情報を読み取り、薬セット1内の小セット10の内容が薬局で製造した薬セット1内の小セット10の内容と同じか否かを確認する。一例では、薬剤師等はリーダ装置150により読み取られた処方薬情報と照合するための情報が記録された照合手段を予め用意し、処方薬情報を照合手段の情報と対比することにより、配送された薬セット1の中身が配送される前の薬セット1の中身と同じか否かを確認する。照合手段は例えば処方薬情報と照合するための情報が記録された書類または電子データである。配送された薬セット1内の処方薬200が配送前の薬セット1内の処方薬200と同じであることが確認できた場合、薬剤師等は薬セット1を服用者等に渡す。服用者は薬剤師等から渡された薬セット1を保管し、服用時期が到来したときに薬セット1から処方薬200を取り出し、処方薬200を服用する。
【0036】
薬セット1によれば次のような作用および効果が得られる。薬セット1によれば、小セット10が外箱40に収容されるため、服用者に処方薬200が渡されるまでの間、処方薬200が適切に保護される。また、外箱40内に収容されている小セット10を外箱40の開口部80から引き出すことができるため、小セット10の取り扱いに関する作業性が向上する。また、受託者から薬セット1が引き渡された段階で薬剤師等により処方薬200の内容が確認されるため、服用者等は薬局において薬剤師から処方薬200を直接受け取る場合と類似した環境で薬セット1を薬剤師等から受け取ることができる。このため、服用者は十分な安心感をもって処方薬200を服用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 :薬セット
20 :容器
100:トレイ
130:確認手段
132:ICタグ
150:リーダ装置
200:処方薬