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  • 特許-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D45/00
F02D45/00 360A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017211813
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019085881
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 純一
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-138833(JP,A)
【文献】特開2005-212748(JP,A)
【文献】特開2003-214238(JP,A)
【文献】特開2005-337171(JP,A)
【文献】特開2009-024687(JP,A)
【文献】特開平08-093518(JP,A)
【文献】特開2014-088106(JP,A)
【文献】特開2017-071299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を発生する内燃機関と、
前記内燃機関の排気ガスを車両側方又は車両後方へ排出する排気管と、を有する車両に搭載され、
バッテリの充電状態に応じて前記内燃機関の目標出力を決定する制御部を備える車両の制御装置であって、
前記制御部は、
前記排気管における前記車両のフロアパネルの下方の部位に対応する閾値である第1閾値と、
前記第1閾値よりも小さく設定され、前記車両の側方又は後方へ排気ガスを排出する排気管出口部に対応する閾値である第2閾値と、を有し、
前記バッテリへの充電のために前記目標出力が、前記車両にドライバ要求するアクセル開度に応じたドライバ要求出力より所定出力差以上大きく設定され、かつ、前記車両が停車状態である場合、
前記排気ガスから前記排気管へ伝熱する排気管伝熱量を積算した積算排気管伝熱量が前記第1閾値より大きい場合は前記内燃機関を停止し、
前記積算排気管伝熱量が前記第1閾値以下かつ前記第2閾値より大きい場合は前記内燃機関の前記目標出力を制限することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記排気管伝熱量を前記排気ガスの排気ガス温度と排気ガス流量とに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両周辺の外気温が高いほど前記第1閾値及び前記第2閾値を小さくなるように補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、排気ガスをエンジンから車外に排出する排気管には、排気ガスを浄化する触媒コンバータ等の排気浄化装置が設けられている。車両を停止させている際に、運転者が居眠りなどをして無意識にアクセルペダルを踏込み、意図せずにエンジンをアイドル状態よりも回転数の高い運転状態で維持してしまう場合がある。こうした、いわゆる空吹かしが長時間行われると排気系が過熱するため、停止車両の下方や周囲への影響について配慮をする必要がある。
【0003】
この問題に対し、従来、特許文献1に記載されたエンジンの空吹かし制御装置が知られている。特許文献1に記載のエンジンの空吹かし制御装置は、車両の停止状態を検知する手段、エンジンへの吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度調整のためアクセルペダルの踏込み状態を検知する手段およびアクセルペダルが踏み込まれている時間を測定する手段とを備えている。そして、各手段からの信号に基づき、当該車両が停止中であってアクセルペダルを踏み込んだ状態が所定時間以上経過したと判断したときには、スロットルバルブを閉じ側に駆動できるようにしている。
【0004】
このように構成したことにより、特許文献1に記載のエンジンの空吹かし制御装置は、吸入空気量が抑制され燃料噴射量も低減されてエンジンの回転数が低下し、エンジンの運転状態をアイドル状態にすることができる。従って、エンジンから送り込まれる熱量が低下して排気系の過熱状態が回避され、異常過熱による排気系の劣化や損傷が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-184396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、スロットルバルブの開度は、必ずしもアクセルペダルの踏込み量に対応するものではなく電気的に調整されるようになっており、アクセルペダルを踏み込んだ状態と排気系の過熱状態との間に常に相関が成り立つとは言えない。例えば、ハイブリッド車両においては、バッテリの充電状態や車両の走行状態等に応じてエンジンが間欠運転されるようになっており、アクセルペダルの踏込み状態とスロットルバルブの開度とが一致しない状況も多い。このため、アクセルペダルが踏込まれていない場合であってもエンジンが高い回転数で運転されることがある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、アクセルペダルを踏み込んだ状態が所定時間以上経過したと判断したとき、スロットルバルブを閉じ側に駆動するようになっている。このため、アクセルペダルが踏込まれていない場合であってもエンジンが高い回転数で運転されるような場合は、スロットルバルブが閉じ側に駆動されず、排気系の過熱を防止することができない。したがって、特許文献1に記載のものは、排気系の過熱を適切に防止できないおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、排気系の過熱を適切に防止できる車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、動力を発生する内燃機関と、前記内燃機関の排気ガスを車両側方又は車両後方へ排出する排気管と、を有する車両に搭載され、バッテリの充電状態に応じて前記内燃機関の目標出力を決定する制御部を備える車両の制御装置であって、前記制御部は、前記排気管における前記車両のフロアパネルの下方の部位に対応する閾値である第1閾値と、前記第1閾値よりも小さく設定され、前記車両の側方又は後方へ排気ガスを排出する排気管出口部に対応する閾値である第2閾値と、を有し、前記バッテリへの充電のために前記目標出力が、前記車両にドライバ要求するアクセル開度に応じたドライバ要求出力より所定出力差以上大きく設定され、かつ、前記車両が停車状態である場合、前記排気ガスから前記排気管へ伝熱する排気管伝熱量を積算した積算排気管伝熱量が前記第1閾値より大きい場合は前記内燃機関を停止し、前記積算排気管伝熱量が前記第1閾値以下かつ前記第2閾値より大きい場合は前記内燃機関の前記目標出力を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排気系の過熱を適切に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、図2の排気管過熱防止処理の詳細を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置により排気管伝熱量を演算する際に用いるマップである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、動力を発生する内燃機関と、内燃機関の排気ガスを車両側方又は車両後方へ排出する排気管と、を有する車両に搭載され、内燃機関の目標出力を決定する制御部を備える車両の制御装置であって、制御部は、車両にドライバが要求するドライバ要求出力より目標出力が所定出力差以上大きく、かつ、車両が停車状態である場合、排気ガスから排気管へ伝熱する排気管伝熱量を積算した積算排気管伝熱量が所定閾値以上であることを条件として、内燃機関の目標出力を制限することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、排気系の過熱を適切に防止できる。
【実施例
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。
【0014】
図1において、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両10は、車体11と、車体11の下面を構成するフロアパネル12と、車体11の前部に配置された駆動輪としての車輪15と、車体11の後部に配置された車輪16とを含んで構成されている。
【0015】
本実施例では車両10はシリーズハイブリッド車両であり、内燃機関20と、内燃機関20の発生する動力を用いて電力を発電する発電機31と、発電機31の発生した電力を蓄電するバッテリ32と、バッテリ32に蓄電された電力により駆動するモータ33とを備えている。
【0016】
内燃機関20は、ピストンが気筒を2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う4サイクルエンジンによって構成されている。内燃機関20は車体11の前部に配置されている。
【0017】
内燃機関20には排気管21が接続されており、排気管21は、車体11のフロアパネル12の下方を通って車体11の前部から後部に延伸している。排気管21は、車両10の後部に排気管出口部21Bを有しており、排気管出口部21Bは車両10の後方を向いて開口している。
【0018】
排気管21は、内燃機関20から排出された排気ガスを排気管出口部21Bから車両10の後方へ排出する。なお、排気管出口部21Bは、排気ガスを車両10の側方へ排出する姿勢で設けられていてもよい。
【0019】
排気管21の途中には排気浄化装置22、第1マフラ23、第2マフラ24が設けられている。排気浄化装置22は車体11内の下部であって内燃機関20の近傍に配置されており、排気ガスを浄化する。
【0020】
第1マフラ23、第2マフラ24はフロアパネル12の下方に配置されており、排気ガスの騒音を消音する。第1マフラ23は第2マフラ24よりも排気流れ方向の上流側に配置されている。
【0021】
発電機31は、内燃機関20の図示しないクランク軸に連結されており、クランク軸から伝達された動力を電気エネルギに変換することで発電を行う。バッテリ32はリチウムイオン電池等の二次電池からなる。
【0022】
モータ33は、ドライブシャフト等の図示しない動力伝達部材を介して車輪15に連結されており、バッテリ32の電力によって動力を発生する。車両10は、モータ33の動力により車輪15が回転されることによって走行する。なお、車両10の減速時は、モータ33の回生により発電された電力がバッテリ32に充電される。
【0023】
また、車両10は、アクセルペダル35Aの踏込み量(以下、アクセル開度ともいう)を検出するアクセル開度センサ35と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)40とを備えている。
【0024】
ECU40は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、内燃機関20の運転状態等を電気的に制御するようになっている。
【0025】
CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0026】
ECU40は、アクセル開度、バッテリ32の充電状態等に基づいて、内燃機関20及びモータ33を制御する。ここで、内燃機関20は図示しないスロットルバルブを備えており、スロットルバルブはECU40により制御される。
【0027】
すなわち、内燃機関20は電子制御スロットルバルブを備えている。ECU40は、スロットルバルブの開度(以下、スロットル開度ともいう)を電気的に制御することによって内燃機関20の運転状態を制御する。また、ECU40は、内燃機関20の目標出力を決定し、その目標出力を発生するように内燃機関20を制御する。
【0028】
ここで、車両10において、アクセルペダルが踏込まれていない場合であっても、バッテリ32への充電のためにエンジンが高い回転数で運転されることがある。このような状況が車両10の走行中に発生した場合、排気系の熱が走行風により冷却されるため、問題は生じない。一方、このような状況が車両10の停車中に発生した場合、排気系の過熱による影響が車両10の下方や周囲に及ぶおそれがある。
【0029】
車両停車中の発電は、振動や騒音に配慮した回転数となるように内燃機関20が制御されるため、ドライバの居眠り状態による空吹かしとは異なり、低い回転数で内燃機関20が運転される。そのため、停車時間が長時間に及ぶ場合は排気ガスから排気管21に伝熱される熱量が大きくなる。
【0030】
また、排気管21の温度は、排気管21に伝熱される熱量を時間で積算した積算値との相関が大きい。したがって、伝熱量の積算値を演算して閾値と比較することにより、排気系の過熱の可能性を判断でき、適切に排気系の過熱を防止することができる。
【0031】
そこで、本実施例では、ECU40は、内燃機関20にドライバが要求するドライバ要求出力より目標出力が所定出力差以上大きく、かつ、車両10が停車状態である場合、排気ガスから排気管21へ伝熱する排気管伝熱量を積算した積算排気管伝熱量が所定閾値以上であることを条件として、内燃機関20の目標出力を制限する。
【0032】
ECU40は、排気管伝熱量を排気ガスの排気ガス温度と排気ガス流量とに基づいて決定する。また、ECU40は、車両10が走行状態に変化し、走行状態に変化後の車両10の走行実績が所定走行実績となった場合、積算排気管伝熱量をゼロにリセットする。
【0033】
排気ガスの伝熱による排気管21の温度上昇は、その部位ごとに異なるため、一律に閾値を決定することができないため、排気系の過熱を適切に防止するためには、排気管21の部位に応じて閾値を設定することが好ましい。
【0034】
そこで、ECU40は、積算排気管伝熱量の閾値として第1閾値H1及び第2閾値H2を有している。第1閾値H1は、排気管21における車両10のフロアパネル12の下方の部位21Aに対応する閾値であり、第2閾値H2は、車両10の側方又は後方へ排気ガスを排出する排気管出口部21Bに対応する閾値である。
【0035】
内燃機関20に近い部位21Aよりも排気管出口部21Bの方が排気ガスから受ける熱量が小さいため、第1閾値H1よりも第2閾値H2が小さく設定されている。ECU40は、積算排気管伝熱量が第1閾値H1より大きい場合、内燃機関20を停止する。
【0036】
また、ECU40は、車両周辺の外気温が高いほど閾値を小さくなるように補正することが好ましい。
【0037】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る車両の制御装置においてECU40により実行される動作について説明する。
【0038】
図2において、ECU40は、ステップS1でアクセル開度が所定アクセル開度Aより小さいか否かを判別する。また、ECU40は、ステップS1で図示しないシフトレバーが非走行レンジに設定されているか否かを判別する。
【0039】
非走行レンジとは、PレンジまたはNレンジのことである。アクセル開度が所定アクセル開度Aより小さいこと、又はシフトレバーが非走行レンジに設定されていること、の何れかが成立している場合、ECU40はステップS1においてYESと判定し、何れも成立していない場合はNOと判別する。
【0040】
ステップS1でYESと判別した場合、ECU40は、ステップS2で、スロットル開度が所定スロットル開度Bより大きいこと、エンジン回転数(図中、E/g回転数と記す)が所定エンジン回転数Cより大きいこと、又は吸気温度が所定吸気温度Dより大きいこと、の何れかが成立しているか否かを判別する。ECU40はステップS1においてNOと判別した場合、再びステップS1を実行する。すなわち、ECU40はステップS1でYESと判別するまでステップS1を繰り返す。
【0041】
ECU40は、これらの条件の何れかが成立している場合はYESと判別し、何れも成立していない場合はNOと判別する。
【0042】
ここで、ステップS1及びS2の判別がともにYESとなる状況とは、例えば、ドライバがアクセル操作を行っていないにも関わらず内燃機関20が高速回転しているような状況が挙げられる。
【0043】
言い換えれば、車両10に対するドライバ要求出力が小さいのに対して内燃機関20の目標出力が相対的に大きく、かつ、ドライバ要求出力より目標出力が所定出力差以上大きいような状況の場合、ステップS1及びS2の判別がともにYESとなる。
【0044】
ステップS2でYESと判別した場合、ECU40は、排気管過熱防止制御を実施し(ステップS3)、その後、今回の動作を終了する。排気管過熱防止制御の詳細について図3を参照して説明する。
【0045】
図3において、ECU40は、排気温度及び排気流速を測定し(ステップS11)、排気管伝熱量を演算し(ステップS12)、排気管伝熱量を積算して積算排気管伝熱量を算出する(ステップS13)。
【0046】
ステップS12において、ECU40は、図4に示す相関マップを参照して排気管伝熱量を演算する。エンジン回転数と排気温度と排気管伝熱量との相関が定められている。この相関マップにおいて、エンジン回転数が大きいほど及び排気温度が高いほど、排気管伝熱量が大きくなっている。
【0047】
ECU40は、相関マップを参照し、エンジン回転数と排気温度とに基づいて、排気管伝熱量を演算する。なお、ステップS13の積算排気管伝熱量は、排気管過熱防止制御を開始してから現在までの経過時間の、排気管伝熱量の積算値である。
【0048】
次いで、ECU40は、積算排気管伝熱量が第1閾値H1より大きいか否かを判別する(ステップS14)。このステップS14で積算排気管伝熱量が第1閾値H1より大きい場合(ステップS14でYES)、ECU40は、内燃機関20を停止し(ステップS17)、今回の動作を終了する。
【0049】
ステップS14で積算排気管伝熱量が第1閾値H1以下の場合(ステップS14でNO)、ECU40は、ステップS15で積算排気管伝熱量が第2閾値H2より大きいか否かを判別する(ステップS15)。
【0050】
ステップS15で積算排気管伝熱量が第2閾値H2より大きい場合、ECU40は、ステップS16で内燃機関20の出力トルクを制限し、今回の動作を終了する。
【0051】
ステップS15で積算排気管伝熱量が第2閾値H2以下の場合、ECU40はステップS18で走行履歴が成立したか否かを判別する。
【0052】
ECU40は、ステップS18で走行履歴が成立していない場合はステップS11に戻り、走行履歴が成立している場合は、ステップS19で積算排気管伝熱量をゼロにリセットし、今回の動作を終了する。なお、ECU40は、積算排気管伝熱量が所定閾値以上であることを条件することに代えて、排気ガス温度が所定の温度閾値であること、または排気管温度が所定の温度閾値であることを条件として、内燃機関20の目標出力を制限するようにしてもよい。このように排気ガス温度または排気管温度の温度に基づいて、内燃機関20の目標出力を制限するようにした場合も、排気系の過熱を適切に防止できるためである。また、排気ガス温度または排気管温度の各温度閾値は、内燃機関20を停止することを決定する温度閾値(第1閾値H1に対応する温度閾値)と、出力トルクを制限することを決定する温度閾値(第2閾値H2に対応する温度閾値)と、の2段階の閾値を用いることが好ましい。排気ガス温度または排気管温度の温度によって、出力トルクを制限することで足りるか、または内燃機関20を停止する必要があるかが異なるためである。
【0053】
以上説明したように、本実施例では、ECU40は、車両10にドライバが要求するドライバ要求出力より目標出力が所定出力差以上大きく、かつ、車両10が停車状態である場合、排気ガスから排気管21へ伝熱する排気管伝熱量を積算した積算排気管伝熱量が所定の閾値以上であることを条件として、内燃機関20の目標出力を制限する。
【0054】
このようにしたことで、車両10の停車中にドライバがアクセルペダル35Aを踏み込んでいないにも関わらず内燃機関20の出力が上昇している状況において、内燃機関20の目標出力が制限される。このため、内燃機関20の出力上昇をドライバが認識せずに排気系が過熱することを回避できる。この結果、排気系の過熱を適切に防止できる。
【0055】
これに加え、本実施例では、ドライバのアクセル操作により内燃機関20の出力が上昇している状況では、内燃機関20の目標出力が制限されることがないため、不要な制御の介入によってドライバビリティが損なわれることを防止できる。
【0056】
また、本実施例では、ECU40は、排気管伝熱量を排気ガスの排気ガス温度と排気ガス流量とに基づいて決定する。
【0057】
これにより、排気管21の温度を直接計測することなく排気管21の温度を推定でき、排気系の過熱を適切に防止できる。
【0058】
また、本実施例では、ECU40は、車両10が走行状態に変化し、走行状態に変化後の車両10の走行実績が所定走行実績となった場合、積算排気管伝熱量をゼロにリセットする。
【0059】
これにより、車両10が走行状態に変化し、車両10の走行実績が所定走行実績となった場合は、排気系の過熱が解消されたことみなすことができるため、積算排気管伝熱量をゼロにリセットすることによって、車両10が停車状態か走行状態かに応じて適切に積算排気管伝熱量を算出でき、排気系の過熱を適切に防止できる。
【0060】
また、本実施例では、ECU40は、閾値として第1閾値H1及び第2閾値H2を有し、第1閾値H1は、排気管21における車両10のフロアパネル12の下方の部位21Aに対応する閾値であり、第2閾値H2は、車両10の側方又は後方へ排気ガスを排出する排気管出口部21Bに対応する閾値であり、第1閾値H1よりも第2閾値H2が小さく設定されている。
【0061】
これにより、排気ガスの伝熱による排気管21の温度上昇が排気管21の部位ごとに異なり、一律に閾値を決定することができないが、排気管21の部位に応じた第1閾値H1と第2閾値H2とを設定したことによって、排気系の過熱を適切に防止できる。
【0062】
また、本実施例では、ECU40は、積算排気管伝熱量が第1閾値H1より大きい場合、内燃機関20を停止する。また、積算排気管伝熱量が前記第1閾値H1以下かつ第2閾値H2より大きい場合、ECU40は、内燃機関20の目標出力を制限する。これにより、排気系の過熱を確実に防止できる。
【0063】
また、本実施例では、ECU40は、車両周辺の外気温が高いほど閾値を小さくなるように補正する。
【0064】
これにより、排気管21から外気へ放熱される熱量を反映して閾値を補正することができ、排気系の過熱を適切に防止できる。
【0065】
上述の通り、本発明の一実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0066】
10 車両
12 フロアパネル
20 内燃機関
21 排気管
21A 部位
21B 排気管出口部
22 排気浄化装置
40 ECU(制御部)
H1 第1閾値
H2 第2閾値
図1
図2
図3
図4