(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】セメントクリンカー製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C04B 7/40 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
C04B7/40
(21)【出願番号】P 2017214280
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】白濱 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-032808(JP,B1)
【文献】特開平02-229743(JP,A)
【文献】特開昭53-063429(JP,A)
【文献】特開昭58-120550(JP,A)
【文献】特開2014-141396(JP,A)
【文献】特開昭54-150429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調合されたセメントクリンカー原料を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程により得られた粉砕粉末を固めて造粒する造粒工程と、造粒工程により得られた造粒粉体を気中で加熱して焼成する気中焼成工程とを有し、前記造粒粉体を空気をキャリアガスとして搬送して前記気中焼成工程に供給
しており、
前記粉砕工程は、前記セメントクリンカー原料に水を混合して粉砕することにより粉砕粉末を含有するスラリーを生成し、前記造粒工程では、前記スラリーをスプレードライ法によって造粒し、
前記粉砕粉末の平均粒径を10μm以下とし、前記造粒粉体の平均粒径を20μm以上80μm以下とすることを特徴とするセメントクリンカー製造方法。
【請求項2】
前記粉砕工程において、前記スラリー中の固形分比が40質量%以上60質量%以下となるように水を混合することを特徴とする請求項
1記載のセメントクリンカー製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程において、前記セメントクリンカー原料と水を混合する際に、分散剤を粉砕粉末の質量に対して0.1質量%以上1.0質量%以下の比率で添加することを特徴とする請求項
1又は2記載のセメントクリンカー製造方法。
【請求項4】
造粒工程では、前記スラリーに結合剤を粉砕粉末の質量に対して0.5質量%以上7質量%以下の比率で添加することを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項記載のセメントクリンカー製造方法。
【請求項5】
前記気中焼成工程は、プラズマによって形成した高温雰囲気中に前記造粒粉体を投入して焼成することを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項記載のセメントクリンカー製造方法。
【請求項6】
調合されたセメントクリンカー原料を粉砕する
湿式ビーズミルの粉砕装置と、粉砕装置により得られた粉砕粉末を
含有するスラリーをスプレードライ法によって造粒する造粒装置と、造粒装置により得られた造粒粉体を気中で加熱して焼成する気中焼成装置とを備え、前記造粒粉体を空気をキャリアガスとして前記気中搬送装置に搬送することを特徴とするセメントクリンカー製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントの原料となるセメントクリンカーを気中加熱により製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの原料となるセメントクリンカーを製造する技術として、ロータリーキルンを用いた製造方法が知られている。この方法は、セメントクリンカー原料をプレヒータで予熱した後に、高温雰囲気に保持されたロータリーキルン内で焼成してセメントクリンカーとする方法である。
この製造方法では、大量のセメントクリンカーを安定して製造することができるが、高い温度を必要とするため、多くの化石燃料が必要であり、多くの温室効果ガス(CO2)を排出し、さらにNOxやSOx等を含む排気ガスの処理設備も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】熱プラズマの非平衡性を利用するプロセスと高温を利用するプロセス 渡辺隆行 J. Plasma Fusion Res, Vol.85, No.2, (2009) 83頁~87頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、排ガス中のNOxやSOx等を抑制する技術や温室効果ガス(CO2)の排出を抑制する技術が求められている。
この点、特許文献1や非特許文献1記載のプラズマの熱を利用して気中で焼成すれば、燃料由来の排ガスを抑制できると考えられるが、ロータリーキルンで用いられているセメントクリンカー原料をそのまま加熱してもセメントクリンカーを生成することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、気中での焼成を可能とするセメントクリンカー製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセメントクリンカー製造方法は、調合されたセメントクリンカー原料を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程により得られた粉砕粉末を固めて造粒する造粒工程と、造粒工程により得られた造粒粉体を気中で加熱して焼成する気中焼成工程とを有し、前記造粒粉体を空気をキャリアガスとして搬送して前記気中焼成工程に供給しており、前記粉砕工程は、前記セメントクリンカー原料に水を混合して粉砕することにより粉砕粉末を含有するスラリーを生成し、前記造粒工程では、前記スラリーをスプレードライ法によって造粒し、前記粉砕粉末の平均粒径を10μm以下とし、前記造粒粉体の平均粒径を20μm以上80μm以下とする。
【0008】
調合したセメントクリンカー原料を粉砕した粉砕粉末をさらに造粒して得られた造粒粉体を焼成するので、気中での焼成が可能になる。この場合、セメントクリンカー原料を粉砕して得た粉砕粉末により造粒粉体を形成しているので、造粒を容易にし、造粒粉体の組成を均一にすることができ、均一な組成のセメントクリンカーを製造することができる。
【0010】
粉砕工程で得られる粉砕粉末の平均粒径が10μmを超えると、その後の造粒工程で造粒しにくいとともに、得られる造粒粉体の組成がばらつき易い。
また、造粒工程で得られる造粒粉体の平均粒径が20μm未満であると、その後の気中焼成工程で高温雰囲気からはじかれ易いため、加熱しにくく、80μmを超えると気中で十分な反応を行わせることが難しい。
【0011】
この場合、粉砕工程ではスラリー中の固形分比が40質量%以上60質量%以下となるように水を混合するとよい。また、分散剤を粉砕粉末の質量に対して0.1質量%以上1.0質量%以下の比率で添加するとよい。
造粒工程では、前記スラリーに結合剤を粉砕粉末の質量に対して0.5質量%以上7質量%以下の比率で添加するとよい。
【0012】
水を混合してスラリーにしてから、スプレードライ法により造粒粉体を製造しているので、造粒を容易にすることができる。その場合のスラリー中の固形分比が40質量%未満では、スプレードライ法による造粒が難しくなり、60質量%を超えると造粒粉体を所望の大きさとすることが難しくなる。また、分散剤の添加は、スラリー中で粉砕粉末が局部的に凝集することを防止する効果があるが、0.1質量%未満では添加する効果に乏しく、1.0質量%を超えても効果は飽和する。
また、造粒工程では、結合剤の添加は、造粒粉体が搬送中に解砕されてしまうことを防止する効果があるが、0.5質量%未満ではその効果に乏しく、7質量%を超えると短時間で焼成する場合に、焼成後に残るおそれがある。
【0013】
本発明のセメントクリンカー製造方法の好適な実施態様として、前記気中焼成工程は、プラズマによって形成した高温雰囲気中に前記造粒粉体を投入して焼成するとよい。
【0014】
プラズマは1万℃以上の高温雰囲気を作ることが可能であり、造粒粉体を短時間で均一に焼成することができ、高品質のセメントクリンカーを製造することができる。また、化石燃料を用いないので、排気ガスも原料由来のCO2ガスが主体であり、NOxやSOxの発生は原料由来のもののみであるためほとんど排出されない。そのCO2ガスを高濃度、高効率で回収することも可能である。
【0015】
本発明のセメントクリンカー製造装置は、調合されたセメントクリンカー原料を粉砕する湿式ビーズミルの粉砕装置と、粉砕装置により得られた粉砕粉末を含有するスラリーをスプレードライ法によって造粒する造粒装置と、造粒装置により得られた造粒粉体を気中で加熱して焼成する気中焼成装置とを備え、前記造粒粉体を空気をキャリアガスとして前記気中搬送装置に搬送する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、造粒粉体を焼成するので、気中での焼成が可能であり、その際に、セメントクリンカー原料を粉砕して得た粉砕粉末により造粒粉体を形成しているので、造粒を容易にし、造粒粉体の組成を均一にすることができ、均一な組成のセメントクリンカーを製造することができる。また、プラズマの熱を用いて焼成すれば、NOxやSOxの発生も抑制することができる。また、本発明には、プラズマに替えて高温環状電気炉など高温雰囲気を形成できる気中焼成装置を用いることができる。電気炉で加熱できる最高温度は3000℃程度であるが、造粒粉体の滞留時間を長くすることでプラズマによる焼成と実質的に同等の焼成効果が得られるためである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態で適用されるセメントクリンカー原料の組成を示す酸化物基準の三元系状態図である。
【
図2】本発明の実施形態で用いられる粉砕装置の例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態で用いられる造粒装置の例を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態で用いられる気中焼成装置の例を示す模式図である。
【
図5】粉砕装置におけるビーズ径と粉砕粉末の粒度分布との関係を示すグラフである。
【
図6】造粒装置で得られた造粒粉体の粒度分布を示すグラフである。
【
図7】試験番号1の造粒粉体について気中搬送試験の前後の状態を示す写真であり、左が試験前、右が試験後の状態を示す。
【
図8】試験番号2の造粒粉体について気中搬送試験の前後の状態を示す
図7同様の写真である。
【
図9】試験番号3の造粒粉体について気中搬送試験の前後の状態を示す
図7同様の写真である。
【
図10】試験番号4の造粒粉体について気中搬送試験の前後の状態を示す
図7同様の写真である。
【
図11】実施形態の方法で作製されたセメントクリンカーと通常のセメントクリンカー原料から電気炉を用いて作製したセメントクリンカーとを比較したXRDプロファイル図である。
【
図12】実施形態の方法で作製されたセメントクリンカーのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態のセメントクリンカー製造装置は、調合されたセメントクリンカー原料を粉砕する粉砕装置10と、粉砕装置10により得られた粉砕粉末を固めて造粒する造粒装置20と、造粒装置20により得られた造粒粉体を気中で加熱して焼成する気中焼成装置30とを備える。
セメントクリンカー原料としては、
図1のSiO
2、CaO、Al
2O
3の酸化物基準の三成分系状態図において太い黒枠で囲った範囲内の組成に調合したものが用いられる。後述の表1に示す組成は一例である。
【0020】
粉砕装置10は例えば湿式ビーズミルが用いられ、
図2に示すように、粉砕室11内に、ロータ12によって回転させられる撹拌ディスク12と、ビーズBと粉砕粉末とを分離するためのスクリーン14とが設けられており、調合されたセメントクリンカー原料を水と混合して粉砕室に投入し、ロータ12よって撹拌ディスク13を回転させながら多数のビーズBとともにセメントクリンカー原料を撹拌することにより、セメントクリンカー原料を砕いて粉砕粉末としながら水と混合してスラリーにするものである。ビーズBどうしの衝突によって粉砕するものであるので、ビーズBの直径は小さいものが細かく粉砕できる。例えばビーズ直径としては1.0mm~1.25mmのものが用いられる。粉砕粉末はスクリーン14によってビーズBと分離されて取り出される。
符号15はミキサー、符号16はポンプを示しており、粉砕室11で粉砕された粉砕粉末は所定の粒径となるまでミキサーを経由して循環される。
【0021】
造粒装置20は、
図3に示すように、スラリーを溜めるタンク21と、スラリーを噴霧するアトマイザー22を備える乾燥容器23と、微粉末を回収するサイクロン24とを有する。タンク21に溜めたスラリーはポンプ25によりアトマイザー22に送られ、アトマイザー22で乾燥容器23内に噴霧される。乾燥容器23には、ヒータ26により加熱された加熱空気が供給されており、アトマイザー22から噴霧されたスラリーを瞬時に乾燥して造粒する。造粒粉体dは製品ポット23aに回収される。なお、ヒータ26の前後には吸気フィルタ27、HEPAフィルタ28が設けられる。符号29はサイクロン24に接続された排風機である。
【0022】
気中焼成装置30は、例えば多相アーク炉が用いられ、
図4に示すように、炉31の内部に複数の電極32が放射状に配置されており、これら電極32に交流電源33から位相の異なる交流電圧を印加してプラズマPを発生させ、そのプラズマP中に矢印で示すように造粒粉体dを投入することにより、これを焼成してセメントクリンカーCとするものである。
造粒粉体供給系34では空気をキャリアガスとして造粒粉体dが搬送され、噴出管35によって炉31内に噴出される。噴出管35は冷却水によって冷却される。また、各電極32も、アルゴンガスによりシールドされるとともに、冷却水によって冷却される。
なお、炉31には、内部の排ガスを排出する排ガス系36が接続される。
【0023】
このように構成されたセメントクリンカー製造装置を用いてセメントクリンカーを製造する方法について説明する。
セメントクリンカー原料は前述したように
図1の三成分系状態図の太い黒枠で囲った範囲内から適宜の組成(例えば後述の表1に示す組成)に調合される。
【0024】
(粉砕工程)
調合されたセメントクリンカー原料に水を混合して粉砕装置10で粉砕し、粉砕粉末を含有するスラリーを生成する。水は、スラリー中の固形分比が40質量%以上60質量%以下となるように混合する。また、分散剤として例えばポリカルボン酸型高分子界面活性剤を粉砕粉末の質量に対して0.1質量%以上1.0質量%以下の範囲で添加し、粉砕粉末の局部的な凝集が生じないようにしておく。
スラリーは、後工程の造粒工程でスプレードライ法によって造粒されるので、その固形分比が40質量%未満では、スプレードライ法による造粒が難しくなり、60質量%を超えると造粒粉体を所望の大きさとすることが難しくなる。また、分散剤は、粉砕粉末の質量に対して0.1質量%未満では凝集防止効果に乏しく、粉砕粉末の質量に対して1.0質量%を超えても効果は飽和する。この分散剤の添加は好ましくは粉砕粉末の質量に対して0.3質量%以上0.7質量%以下である。
セメントクリンカー原料は平均粒径が 10μm 以下になるまで粉砕される。平均粒径が10μmを超えていると、その後の造粒工程で造粒しにくいとともに、得られる造粒粉体の組成がばらつき易い。
なお、分散剤としては、前述したポリカルボン酸型高分子界面活性剤以外にも、ポリカルボン酸系であれば、ポリカルボン酸高分子、ポリカルボン酸高分子化合物と架橋高分子等を使用することができ、ポリカルボン酸系以外にも、メラミン系(メラミンスルホン酸と変性リグニン、変性メチロースメラミン縮合物と水溶性特殊高分子等)、ナフタリンスルフォン酸系等を使用することができる。
【0025】
(造粒工程)
粉砕工程で得られたスラリーを造粒装置20のタンク21に貯留し、アトマイザー22から乾燥容器23内に噴霧することにより造粒粉体dを生成する。
造粒粉体dは気中加熱装置30まで空気をキャリアガスとして搬送されるため、搬送時に破損したり、微粉化したりしないように、造粒の際に結合剤を添加して機械的強度を高めておく。結合剤としては、例えば固形パラフィンを粉砕粉末の質量に対して2質量%以上7質量%以下の範囲で添加する。結合剤の好ましい添加量は粉砕粉末の質量に対して3質量%以上5質量%以下である。
結合剤としては、固形パラフィン以外にも、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クアガム誘導体、デンプン、デキストリンなどを使用することができる。
また、造粒粉体dの平均粒径は20μm以上80μm以下とする。平均粒径が20μm未満であると、その後の気中焼成工程でプラズマ雰囲気からはじかれ易いため、加熱されにくく、80μmを超えるとプラズマ雰囲気を通過する短時間のうちに十分な反応を行わせることが難しい。この造粒粉体dは球形に近く、流動性に優れており、気中搬送に好適である。
【0026】
(気中焼成工程)
気中焼成装置30のアーク炉31内でプラズマPを発生させておき、造粒粉体を空気をキャリアガスとして搬送して、アーク炉31内のプラズマPによって形成した高温雰囲気中に投入し、その熱によって造粒粉体dを焼成し、セメントクリンカーCとする。
このとき、実施形態では、造粒粉体dはアーク炉31の上方から噴出管35によってプラズマ雰囲気中に投入されるが、造粒粉体dがプラズマPによって飛散せずにプラズマ雰囲気中を通過するように、キャリアガスとしての空気の圧力を高めて造粒粉体を自由落下以上の速度で投入する。
焼成された造粒粉体は球状のセメントクリンカーCとなりアーク炉31の底部に堆積する。また、この造粒粉体の焼成により発生するCO2ガスが排ガス系36より排気される。
【0027】
以上説明したように、セメントクリンカー原料をそのまま造粒するのではなく、平均粒径が10μm以下の粉砕粉末にしてから造粒し、その造粒粉体を焼成しているので、均一な組成で安定した形状のセメントクリンカーを得ることができる。そして、このようにして生成されたセメントクリンカーは、その後、粉砕して石こう等と混合されセメントに仕上げられるが、組成が均一であるので、破砕エネルギーも小さくて済む。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0029】
表1に示す化学組成(単位:質量%)に調合したセメントクリンカー原料を用いて、上記の方法によりセメントクリンカーを生成した。各成分の数値はいずれも質量%である。この組成のセメントクリンカー原料の強熱減量はJIS R 5202「セメントの化学分析方法」に準拠し950℃で恒量になるまで加熱して求めた。その他の化学成分は、JIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して測定した。強熱減量は35.26質量%であった。
このセメントクリンカー原料を、
図2に示す湿式ビーズミルの粉砕装置10を用いて、平均粒径が10μm以下になるまで粉砕した。このときのスラリー作製条件は表2に示す通りとした。
【0030】
表2において、周速はビーズを動かす撹拌ディスクの外周の速度を示し、主に微細化速度に影響する。流量はスラリーを粉砕室内に送液する単位時間当たりの量である。ビーズとしては、部分安定化ジルコニア(PSZ:Partially Stabilized Zirconia)を用いた。分散剤としては、中京油脂株式会社製分散剤「セルナ D-305」を固形分比内で使用した。
【0031】
【0032】
【0033】
このようにして得られたスラリーの粉砕時間ごとの平均粒径、粘度を表3に、粒度分布を
図5に示す。比較として粉砕前のセメントクリンカー原料の平均粒径も示した。
図5の調合原料がセメントクリンカー原料である。
【0034】
【0035】
上記のスラリーから
図3に示すスプレードライ法を用いた造粒装置20により、造粒粉体を製造した。そのときの造粒条件を表4に示し、得られた造粒粉体の平均粒径及び粒子形状を表5に示す。
図6は、各試験番号の造粒粉体の粒度分布グラフである。
【0036】
【0037】
【0038】
これら表5及び
図6に示されるように、粒度分布がほぼ同等の造粒粉体を得ることができた。試験番号3及び4において一部結合したものがあったが、実用上は問題ない程度である。
【0039】
次に、製造した造粒粉体は空気をキャリアガスとした搬送試験を実施し、搬送試験前後の造粒粉体の状態を観察した。
図7は試験番号1、
図8は試験番号2、
図9は試験番号3、
図10は試験番号4の試験前後の造粒粉体の状態を示す。わずかに微粉化したものもあるが、粒径が1μm以下の微粒分は0.1%以下であり、実用上問題ない程度であった。特に、試験番号3が最も優れた結果であった。
【0040】
次に、
図4に示す多相アーク炉を有する気中加熱装置30を用い、造粒粉体からセメントクリンカーを生成した。多相アーク炉の試験条件(プラズマ条件及び原料供給条件)を表6に示す。試験には、表5の試験番号3の造粒粉体を用いた。
【0041】
【0042】
このようにして製造されたセメントクリンカーについて、X線回折して得られたXRDプロファイルを
図11の(1)に示す。参考として電気炉を用いて作製したセメントクリンカーについてのXRDプロファイルを(2)として併記した。この
図11から明らかなように、電気炉で作製したセメントクリンカーとほぼ同じ鉱物組成のセメントクリンカーが生成できている。
図12は、得られたセメントクリンカーのSEM画像であり、球状のセメントクリンカーを生成できた。
【符号の説明】
【0043】
10 粉砕装置
11 粉砕室
12 ロータ
13 撹拌ディスク
14 スクリーン
15 ミキサー
16 ポンプ
20 造粒装置
21 タンク
22 アトマイザー
23 乾燥容器
24 サイクロン
25 ポンプ
26 ヒータ
27 吸気フィルタ
28 HEPAフィルタ
29 排風機
30 気中焼成装置
31 炉
32 電極
33 交流電源
34 造粒粉体供給系
35 噴出管
36 排ガス系
B ビーズ
C セメントクリンカー
d 造粒粉体
P プラズマ