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  • 特許-車両前部の照灯周辺構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両前部の照灯周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20220524BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20220524BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B60Q1/04 A
B60Q1/26 A
B62D25/08 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018016541
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2018177197
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2017082212
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 健一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 理
(72)【発明者】
【氏名】岩田 豊
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晶哲
(72)【発明者】
【氏名】松延 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】浦野 慎一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼谷 諒一
(72)【発明者】
【氏名】山本 行一郎
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-008875(JP,A)
【文献】特開2008-265553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/26
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に臨み、車幅方向の寸法よりも車高方向の寸法が大きい縦長状の第1照灯と、
前記車高方向において、前記第1照灯の下方に設けられている第2照灯と、
前記車高方向において、前記第1照灯及び前記第2照灯を上下に挟むように配置され複数の突出部と、を備え
複数の前記突出部は、車高方向に沿って上下方向に順次配列されている第1突出部、第3突出部、第2突出部を含み、
前記第1突出部、前記第3突出部及び前記第2突出部は、前記第1照灯の表面の全部分よりも車両の進行方向の前方に突出させていることを特徴とする車両前部の照灯周辺構造。
【請求項2】
前記第1突出部は、前記第1照灯の上側に配置され、車幅方向に沿って延びているとともに、車幅方向外方に向かうに従って車両後方に変位している請求項1に記載の車両前部の照灯周辺構造。
【請求項3】
前記第3突出部は、車幅方向に沿って延びているとともに、一部が車幅方向に対して車高方向に角度を持って延びている請求項1に記載の車両前部の照灯周辺構造。
【請求項4】
前記第2突出部の突出量は、前記第1突出部及び前記第3突出部の突出量よりも大きく設定されている請求項1に記載の車両前部の照灯周辺構造。
【請求項5】
前記第3突出部の突出量は、前記第1突出部と同一に設定されているか、或いは、前記第1突出部の突出量よりも大きく設定されている請求項に記載の車両前部の照灯周辺構造。
【請求項6】
前記第1突出部及び前記第3突出部は、車高方向において、前記第1照灯の上下に互いに対向させて配置され、
前記第3突出部及び前記第2突出部は、車高方向において、前記第2照灯の上下に配置されている請求項4に記載の車両前部の照灯周辺構造。
【請求項7】
前記第3突出部は、平坦状の傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記第1照灯の表面から、前記車両の進行方向の前方に向かうに従って下り勾配を有している請求項4に記載の車両前部の照灯周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の照灯周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、そのフロント側(前部)には、フロントバンパが取り付けられている。フロントバンパは、例えば、衝突ないし接触に際し、車体を保護可能に構成されている。近年では、フロントバンパに、例えば、ヘッドランプ、ターンランプなどの照灯を搭載する仕様が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-264719号公報
【文献】意匠登録第1379114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、今日のフロントバンパは、薄肉状の板金や樹脂で構成されている。かかるフロントバンパは、車両が障害物に衝突(接触)した際に、容易に変形ないし破損することで、衝突エネルギを吸収する構造を有している。しかし、衝突(接触)時におけるバンパの変形ないし破損に伴って、当該バンパに搭載された照灯も変形ないし破損してしまうことは否めない。
【0005】
本発明の目的は、例えば、衝突時ないし接触時において、車両前部に搭載された照灯を保護及び地面からの泥はねを抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の車両前部の照灯周辺構造において、第1照灯(ヘッドランプ)と、第2照灯(ターンランプ)と、複数の突出部と、を備えている。第1照灯は、車両前方に臨み、車幅方向の寸法よりも車高方向の寸法が大きい縦長状を有している。第2照灯は、車高方向において、第1照灯の下方に設けられている。突出部は、車高方向において、第1照灯及び第2照灯を上下に挟むように配置されている。複数の突出部は、車高方向に沿って上下方向に順次配列されている第1突出部、第3突出部、第2突出部を含み、第1突出部、第3突出部及び第2突出部は、第1照灯の表面の全部分よりも車両の進行方向の前方に突出させている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、衝突時ないし接触時において、車両前部に搭載された照灯を保護及び地面からの泥はねを抑制するための技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態において、車両前部の照灯周辺構造を一部拡大して示す斜視図。
図2】本発明の一実施形態において、車両前部の照灯周辺構造を一部拡大して示す側面図。
図3図1のF3-F3線に沿う模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「一実施形態」
図1図2には、本実施形態において、車両前部の照灯周辺構造が示されている。図面において、矢印DGと矢印DHは、互いに直交する。矢印DGは、重力方向を指す。矢印DHは、水平方向を指す。フロント側(前部)からリア側(後部)に亘る車両の長手方向は、矢印DHに沿って規定される。また、以下の説明において「前方」とは、車体のフロント側から車の進行方向に亘る領域(範囲)を指す。更に、車両前方に臨み、重力方向DGに沿って「車高方向の寸法」が規定される。加えて、当該車高方向DG及び水平方向DHの双方に直交する方向DWに沿って「車幅方向の寸法」が規定される。
【0010】
ここで、車両前方に臨み、当該車両のフロント側には、例えば、ヘッドランプ(第1照灯)2、ターンランプ(第2照灯)3などの照灯4が搭載されている。照灯4を搭載する部分としては、例えば、フロントバンパ5、或いは、フロントバンパ5以外の部分(例えば、フェンダ6、ボンネット7)などが想定される。図面では一例として、照灯4をフロントバンパ5内に配置した仕様が示されている。
【0011】
このような仕様において、照灯4は、フロントグリル8の両側に配置されている。照灯4は、例えば、ヘッドランプ2とターンランプ3を、車高方向DGに沿って上下に並べて構成されている。ヘッドランプ2は、ターンランプ3の上側に配置されている。
【0012】
フロントバンパ5は、車両のフロント側において、車幅方向DWに沿って配置されている。フロントバンパ5は、フロントグリル8の下側から、当該フロントグリル8の両側に亘って構成されている。フロントグリル8の両側において、フロントバンパ5は、車両のフェンダ6に隣接している。フロントバンパ5は、薄肉状の板金や樹脂で構成することができる。
【0013】
「車両前部の照灯周辺構造」
車両前部には、照灯保護機構1が設けられている。照灯保護機構1は、車高方向DGにおいて、照灯4(ヘッドランプ(第1照灯)2、ターンランプ(第2照灯)3)を上下に挟むように配置されている。
【0014】
ここで、ヘッドランプ2の仕様としては、縦型のヘッドランプ2を想定している。縦型のヘッドランプ2は、車両前方に臨み、車幅方向DWの寸法よりも車高方向DGの寸法が大きい縦長状に設定されている。なお、図面では一例として、車高方向DGにおいて、ターンランプ3は、ヘッドランプ2の下方に設けられている。
【0015】
照灯保護機構1は、ヘッドランプ2及びターンランプ3よりも前方に突出させた複数の突出部(例えば、第1突出部9、第2突出部10、第3突出部11)を備えている。これら複数の突出部9,10,11は、車高方向DGに沿って上下方向に順次配列されている。即ち、車高方向DGの上から、第1突出部9、第3突出部11、第2突出部10、の順番に並んでいる。換言すると、第1突出部9と第2突出部10の間に、第3突出部11が配置されている。
【0016】
具体的には、第1突出部9及び第3突出部11は、車高方向DGにおいて、ヘッドランプ2の上下に互いに対向させて配置されている。第3突出部11及び第2突出部10は、車高方向DGにおいて、ターンランプ3の上下に配置されている。
【0017】
ここで、第2突出部10の突出量(突出長)は、第1突出部9及び第3突出部11の突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定されている。この場合、第3突出部11の突出量(突出長)を、第1突出部9の突出量(突出長)と同一に設定してもよいし、或いは、第1突出部9の突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定してもよい。図3では一例として、第3突出部11の突出量(突出長)は、第1突出部9の突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定されている。
【0018】
図3を参照して説明すると、第1突出部9は、上面部9aと、下面部9bと、第1突出端9tと、を備えている。上面部9aは、ボンネット7から滑らかに連続させて構成されている。下面部9bは、上面部9aの反対側に配置されている。下面部9bは、上面部9aからヘッドランプ2のレンズ面2aに向けて回り込んだ部分に構成されている。第1突出端9tは、上面部9aと下面部9bとの間に配置されている。第1突出端9tは、第1突出部9の中で最も前方に突出させた部位である。
【0019】
一方、第3突出部11は、第3突出端11tと、後述する傾斜面11sと、を備えている。第3突出端11tは、傾斜面11sよりも前方に配置されている。第3突出端11tは、第3突出部11の中で最も前方に突出させた部位である。
【0020】
かかる構成において、第3突出端11tの突出量(突出長)は、第1突出端9tの突出量(突出長)と同一に設定してもよいし、或いは、第1突出端9tの突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定してもよい。
【0021】
更に、ターンランプ3は、その全体を、第2突出部10及び第3突出部11よりも内奥へ凹ませて(窪ませて)構成されている。換言すると、第2突出部10及び第3突出部11は、ターンランプ3よりも前方へ突出させて(出っ張らせて)構成されている。なお、ターンランプ3の凹ませ(窪ませ)量、及び、第2~第3突出部10,11の突出(出っ張り)量は、例えば、車体のフロント側のデザインや空力特性などを考慮して設定されるため、ここでは特に数値限定しない。
【0022】
また、第1突出部9は、ヘッドランプ2の上側に配置されている。第1突出部9は、ヘッドランプ2に沿って横方向に延出されている。第1突出部9は、ヘッドランプ2の表面(レンズ面2a)よりも前方に突出させて構成されている。第1突出部9の構成方法としては、例えば、フロントバンパ5と共に第1突出部9を一体的に成形してもよいし、或いは、別体で成形した第1突出部9をヘッドランプ2の上側に後付けしてもよい。
【0023】
第3突出部11は、ヘッドランプ2の下側に配置されている。第3突出部11は、ヘッドランプ2に沿って横方向に延出されている。第3突出部11は、ヘッドランプ2の表面(レンズ面2a)よりも前方に突出させて構成されている。第3突出部11の構成方法としては、例えば、フロントバンパ5と共に第3突出部11を一体的に成形してもよいし、或いは、別体で成形した第3突出部11をヘッドランプ2の下側に後付けしてもよい。
【0024】
第3突出部11は、凹凸の無い平坦状の傾斜面11sを有している。傾斜面11sは、第1突出部9に対向しつつ、ヘッドランプ2に沿って横方向に延出されている。傾斜面11sは、ヘッドランプ2の表面(レンズ面2a)から前方に向かうに従って下り勾配を有している。傾斜面11sの下り勾配は、車高方向DGで見て、水平方向DHよりも下方に傾斜させて設定されている。なお、傾斜面11sの傾斜角度や広さ(表面積)は、例えば、車体のフロント側のデザインや空力特性などを考慮して設定されるため、ここでは特に数値限定しない。
【0025】
第2突出部10は、車両のフロント側において、車幅方向DWに沿って連続的或いは断続的に配置されている。図面には一例として、連続的に配置された第2突出部10が示されている。即ち、第2突出部10は、フロントグリル8の下側から、当該フロントグリル8の両側に亘って構成されている。フロントグリル8の両側において、当該第2突出部10は、上記した照灯4の下側を通ってフェンダ6に隣接されている。第2突出部10の構成方法としては、例えば、フロントバンパ5と共に第2突出部10を一体的に成形してもよいし、或いは、別体で成形した第2突出部10を、車両のフロント側に後付けしてもよい。
【0026】
なお、第2突出部10を断続的に配置する仕様においても、第2突出部10は、少なくとも、フロントグリル8の両側において、照灯4の下側に配置させることが好ましい。これにより、衝突(接触)時における照灯4に対する保護機能を一定に維持することができる。
【0027】
ここで、第2突出部10の突出量(厚さ、長さ、幅)は、第1突出部9及び第3突出部11の突出量(厚さ、長さ、幅)よりも大きく設定されている。なお、第2突出部10の突出量(厚さ、長さ、幅)は、例えば、車体のフロント側のデザインや空力特性などを考慮して設定されるため、ここでは特に数値限定しない。
【0028】
「照灯保護機構1の主機能」
車両のフロント側が障害物に衝突(接触)する。このとき、複数の突出部(例えば、第1突出部9、第2突出部10、第3突出部11)が変形ないし破損する。そして、当該突出部9,10,11の変形(破損)によって、衝突エネルギが吸収されて除去される。詳しくは、車高方向DGにおいて、第1~第3突出部9,10,11を、照灯4(ヘッドランプ2、ターンランプ3)の上下を挟むように突出させたことで、上記した衝突エネルギは、当該突出部9,10,11が変形(破損)することで、その全てが吸収除去される。かくして、車両のフロント側に搭載された照灯4(ヘッドランプ2、ターンランプ3)は、変形(破損)することなく保護される。
【0029】
「一実施形態の効果」
本実施形態によれば、照灯保護機構1を、照灯4(ヘッドランプ2、ターンランプ3)の上下を挟むように配置する。照灯保護機構1は、ヘッドランプ2よりも前方に突出させた複数の突出部(第1突出部9、第2突出部10、第3突出部11)を備える。これにより、車両のフロント側が障害物に衝突(接触)した際に、突出部9,10,11の変形(破損)によって、衝突エネルギが吸収されて除去される。この結果、車両のフロント側に搭載された照灯4を、変形(破損)させることなく、保護することができる。
【0030】
本実施形態によれば、第2突出部10の突出量(突出長)を、第1突出部9及び第3突出部11の突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定する。この場合、衝突エネルギを段階的に吸収する衝撃吸収構造が構築される。これにより、個々の突出部9,10,11の大きさや形状などの選択の自由度を向上させることができる。この結果、複数の突出部9,10,11を、例えば、車体のフロント側のデザインや空力特性などを考慮して設定することができる。
【0031】
また、車高方向DGにおいて、ヘッドランプ2から最も離間する第2突出部10の突出量(突出長)を、第1突出部9及び第3突出部11の突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定している。これにより、車両のフロント側が障害物に衝突(接触)した際に、第2突出部10にいち早く加わる衝撃がヘッドランプ2に伝達され難くなる。この結果、ヘッドランプ2の変形(破損)を抑制することが可能となる。
【0032】
本実施形態によれば、ヘッドランプ2とターンランプ3の間に第3突出部11を介在させると共に、ターンランプ3を第2突出部10及び第3突出部11よりも内奥へ凹ませて(窪ませて)構成する。これにより、ヘッドランプ2からの発光に、ターンランプ3からの発光が混ざり合うことを防止することができる。この結果、ターンランプ3からの発光の被視認性を、一定に維持ないし向上させることができる。
【0033】
本実施形態によれば、第3突出部11の突出量(突出長)を、第1突出部の突出量(突出長)よりも大きく(長く)設定する。第3突出部11に、凹凸の無い平坦状の傾斜面11sを構成する。これにより、例えば、降雨時の走行中に、ボンネット7から第1突出部9を通って重力方向DGの下方に落下する雨滴は、第2突出部10に到達する前に、第3突出部11の傾斜面11sによって受け止められる。このとき、雨滴は、当該傾斜面11sに沿って滑り落ちるように着地する。この結果、着地の際の衝撃が緩和される。かくして、傾斜面11sからの雨滴の跳ね返りを抑制することができる。加えて、当該跳ね返った雨滴がヘッドランプ2に付着する分量を、軽減させることができる。
【0034】
また、地面からの雨滴、泥の跳ね返りが、突起部10により抑制され、これにより、照灯4のレンズへの汚れ付着を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…照灯保護機構、2…ヘッドランプ(第1照灯)、3…ターンランプ(第2照灯)、
4…照灯、5…フロントバンパ、6…フェンダ、7…ボンネット、8…フロントグリル、
9…第1突出部、10…第2突出部、11…第3突出部、11s…傾斜面。
図1
図2
図3