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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】インサートおよび無機質板の固定方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/04 20060101AFI20220524BHJP
   F16B 37/04 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
F16B13/04 H
F16B37/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018035229
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148328
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】岡部 義和
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-032813(JP,U)
【文献】特開2008-241019(JP,A)
【文献】特開2006-132759(JP,A)
【文献】特開2003-343528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/00- 13/14
F16B 37/04
F16B 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機質板に設けられた非貫通孔に挿入されるインサートであって、
両側を貫く貫通孔を有する胴部と、
前記両側のいずれか一方の側において前記胴部から延び互いに離れて設けられた複数の脚を有する脚部と、
を備え、
前記脚部に接続された前記胴部の接続部の幅は、前記脚部の幅よりも狭く、前記非貫通孔の開口部の幅よりも狭く、
前記胴部と前記脚部とは、前記非貫通孔に挿入され、
前記脚部は、前記貫通孔および前記貫通孔に接続された前記複数の脚の間の空間に内挿部材が挿入されると、前記脚部の幅の縮小の抑制および前記脚部の幅の拡大の少なくともいずれかにより前記非貫通孔の内壁に押し当てられ固定されることを特徴とするインサート。

【請求項2】
前記脚が延びた方向において、前記脚部の長さは、前記胴部の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
前記接続部からみて前記脚部とは反対の側において前記胴部に接続され、前記非貫通孔の開口部の幅よりも広い幅を有するフランジをさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のインサート。
【請求項4】
前記脚が延びた方向において、隣り合う前記複数の脚同士の間の隙間の長さは、前記脚部の長さよりも長いことを特徴とする請求項3に記載のインサート。
【請求項5】
前記胴部から離れた前記脚の先端部の肉厚は、前記胴部に接続された前記脚の根元部の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のインサート。
【請求項6】
前記脚部は、外面に設けられたローレットを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のインサート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のインサートと、前記無機質板を被固定部位に固定するための固定具と、を用いて前記無機質板を前記被固定部位に固定する方法であって、
前記無機質板に設けられた前記非貫通孔に前記インサートを挿入する工程と、
前記複数の脚の間の空間に内挿部材を挿入し、前記固定具が前記内挿部材もしくは前記インサートと前記無機質板との間に挟まれた状態、または前記内挿部材と前記インサートとの間に挟まれた状態で、前記脚部の幅の縮小の抑制および前記脚部の幅の拡大の少なくともいずれかにより前記非貫通孔の内壁に前記脚部を固定する工程と、
前記固定具を前記被固定部位に接続する工程と、
を備えたことを特徴とする無機質板の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄物の無機質板の固定に用いられるインサートおよび薄物の無機質板の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で大型の陶磁器板のような無機質板が、様々な箇所において仕上材として使用されている。例えば、タイルなどの無機質板が、内装材または外装材として用いられている。このような薄物の無機質板の使用においては、無機質板が固定される高さや部位に応じて、接着剤による接着固定に加えてネジなどの締結部材による機械固定が求められることがある。
【0003】
特許文献1には、アンダーカット部を有するブラインドホールが設けられた物体に対し部材を取り付けるための取付装置が開示されている。特許文献1に記載された取付装置は、舌片の外面に突部が設けられた筒体と、筒体の突部をアンダーカット部に係合させる挿入体と、を備えている。挿入体が筒体に挿入されると、舌片が拡開することにより突部がアンダーカット部に係合する。しかし、特許文献1に記載された取付装置では、アンダーカット部を有するブラインドホールの加工が困難であるという問題がある。
【0004】
特許文献2には、湾曲した輪郭の保持壁を有する穴の中に受け入れられるインサートが開示されている。特許文献2に記載された穴は、ガラスタイプの脆性材料で作られている板の中に形成されている。湾曲した輪郭の側壁の凹面は、内側に向いている。そして、インサートのカップ形要素が、連結要素と協働して穴の中に嵌合される。しかし、特許文献2に記載されたインサートでは、内側に向いた凹面を有する穴の加工が困難であるという問題がある。
【0005】
特許文献3には、プラスチック成形品等にビスやボルト等を螺入する際に使用される螺入用埋込金具が開示されている。特許文献3に記載された螺入用埋込金具の胴部の外周面は、粗面に形成されている。螺入用埋込金具の脚部は、複数の切込溝により複数の脚片に分割されている。脚片の外周面は、粗面に形成されている。そして、プラスチック成形品等の下孔に圧入された螺入用埋込金具は、下孔の周面に食い込んだ突条の摩擦力により、ビスの締結開始時に働く回転力と引抜き力に耐えることができる。
【0006】
このように、特許文献1に記載された取付装置、特許文献2に記載されたインサート、および特許文献3に記載された螺入用埋込金具は、被固定部材に形成された孔に取り付けられる。しかし、特許文献1~3に記載された技術が薄物の無機質板にそのまま適用されると、割れや欠けなどの破損が無機質板に生ずるおそれがある。破損が無機質板に生ずると、被固定部材の表面および裏面に対して垂直な方向の引張りに対して十分な固定強度を得ることができない。また、特許文献1~3に記載された技術は仕上材の落下防止に適用されることが多い。そのため、特許文献1~3に記載された技術を家具やトイレライニングなどの前面板や表面仕上材に適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-230130号公報
【文献】特表2006-507453号公報
【文献】実開昭61-20910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板に生ずることを抑えつつ薄物の無機質板に強固に固定されるインサート、およびそのインサートを用いた無機質板の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明によれば、薄物の無機質板に設けられた非貫通孔に挿入されるインサートであって、両側を貫く貫通孔を有する胴部と、前記両側のいずれか一方の側において前記胴部から延び互いに離れて設けられた複数の脚を有する脚部と、を備え、前記脚部に接続された前記胴部の接続部の幅は、前記脚部の幅よりも狭く、前記非貫通孔の開口部の幅よりも狭く、前記脚部は、前記貫通孔および前記貫通孔に接続された前記複数の脚の間の空間に内挿部材が挿入されると、前記脚部の幅の縮小の抑制および前記脚部の幅の拡大の少なくともいずれかにより前記非貫通孔の内壁に押し当てられ固定されることを特徴とするインサートにより解決される。
【0010】
前記構成によれば、例えばネジやボルトなどの内挿部材が胴部の貫通孔および複数の脚の間の空間に挿入されると、互いに離れて設けられた複数の脚を有する脚部は、脚部の幅の縮小が抑えられることおよび脚部の幅が拡大することの少なくともいずれかにより、薄物の無機質板に設けられた非貫通孔の内壁に押し当てられ固定される。このとき、脚部に接続された胴部の接続部の幅は、脚部の幅よりも狭く、非貫通孔の開口部の幅よりも狭い。そのため、インサートが非貫通孔に挿入される際および内挿部材がインサートに挿入される際に、胴部の接続部が非貫通孔の開口部に当たることを抑えることができる。割れや欠けなどの破損は、非貫通孔の奥の部分(深い部分)と比較すると、非貫通孔の開口部(浅い部分)において生じやすい。本発明によれば、胴部の接続部が非貫通孔の開口部に当たることを抑えることができるため、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔の開口部の破損によってインサートの固定強度が低下することが抑えられ、インサートは、薄物の無機質板に強固に固定される。
【0011】
好ましくは、前記脚が延びた方向において、前記脚部の長さは、前記胴部の長さよりも長いことを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、脚部は、非貫通孔の内壁に対してより一層強固に固定される。これにより、インサートは、薄物の無機質板に対してより一層強固に固定される。
【0013】
好ましくは、前記接続部からみて前記脚部とは反対の側において前記胴部に接続され、前記非貫通孔の開口部の幅よりも広い幅を有するフランジをさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、フランジは、非貫通孔の開口部の幅よりも広い幅を有するため、インサートが無機質板の非貫通孔に挿入されたときの挿入深さを一定に保持することができる。そのため、インサートの先端部が非貫通孔の底に当たることを抑えることができる。これにより、無機質板の非貫通孔の底に破損が生ずることを抑えることができる。また、フランジは、インサートが無機質板の非貫通孔に挿入されたときに無機質板の表面に接触するため、非貫通孔に挿入された後のインサートの姿勢を安定化させることができる。さらに、内挿部材がネジやボルトである場合において、フランジは、内挿部材がインサートに締まる際にインサートが内挿部材と共に非貫通孔において回転することを抑えることができる。
【0015】
好ましくは、前記脚が延びた方向において、隣り合う前記複数の脚同士の間の隙間の長さは、前記脚部の長さよりも長いことを特徴とする。
【0016】
前記構成によれば、内挿部材がインサートに挿入されると、脚部の全体の幅が拡大する。そのため、脚部は、非貫通孔の内壁に対してより一層強固に固定される。これにより、インサートは、薄物の無機質板に対してより一層強固に固定される。
【0017】
好ましくは、前記胴部から離れた前記脚の先端部の肉厚は、前記胴部に接続された前記脚の根元部の肉厚よりも厚いことを特徴とする。
【0018】
前記構成によれば、脚の先端部の肉厚が脚の根元部の肉厚と同じである場合、および脚の先端部の肉厚が脚の根元部の肉厚よりも薄い場合と比較して、内挿部材がインサートに挿入されると、脚部の幅はより一層拡大する。そのため、脚部は、非貫通孔の内壁に対してより強い押圧力を与えるとともにより一層強固に固定される。これにより、インサートは、薄物の無機質板に対してより一層強固に固定される。
【0019】
好ましくは、前記脚部は、外面に設けられたローレットを有することを特徴とする。
【0020】
前記構成によれば、ローレットが脚部の外面に設けられているため、脚部は、非貫通孔の内壁に対してより一層強固に固定される。
【0021】
前記課題は、本発明によれば、上記いずれかのインサートと、前記無機質板を被固定部位に固定するための固定具と、を用いて前記無機質板を前記被固定部位に固定する方法であって、前記無機質板に設けられた前記非貫通孔に前記インサートを挿入する工程と、前記複数の脚の間の空間に内挿部材を挿入し、前記固定具が前記内挿部材もしくは前記インサートと前記無機質板との間に挟まれた状態、または前記内挿部材と前記インサートとの間に挟まれた状態で、前記脚部の幅の縮小の抑制および前記脚部の幅の拡大の少なくともいずれかにより前記非貫通孔の内壁に前記脚部を押し当て固定する工程と、前記固定具を前記被固定部位に接続する工程と、を備えたことを特徴とする無機質板の固定方法により解決される。
【0022】
前記構成によれば、無機質板に設けられた非貫通孔にインサートを挿入する工程と、非貫通孔の内壁に脚部を固定する工程と、により、例えばネジやボルトなどの内挿部材が胴部の貫通孔および複数の脚の間の空間に挿入されると、互いに離れて設けられた複数の脚を有する脚部は、脚部の幅の縮小が抑えられることおよび脚部の幅が拡大することの少なくともいずれかにより、薄物の無機質板に設けられた非貫通孔の内壁に押し当てられ固定される。このとき、無機質板を被固定部位に固定するための固定具は、内挿部材もしくはインサートと無機質板との間に挟まれた状態、または内挿部材とインサートとの間に挟まれた状態になる。また、脚部に接続された胴部の接続部の幅は、脚部の幅よりも狭く、非貫通孔の開口部の幅よりも狭い。そのため、インサートが非貫通孔に挿入される際および内挿部材がインサートに挿入される際に、胴部の接続部が非貫通孔の開口部に当たることを抑えることができる。割れや欠けなどの破損は、非貫通孔の奥の部分(深い部分)と比較すると、非貫通孔の開口部(浅い部分)において生じやすい。本発明によれば、胴部の接続部が非貫通孔の開口部に当たることを抑えることができるため、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔の開口部の破損によってインサートの固定強度が低下することが抑えられ、インサートは、薄物の無機質板に強固に固定される。続いて、固定具を被固定部位に接続する工程により、無機質板は、被固定部位に固定される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板に生ずることを抑えつつ薄物の無機質板に強固に固定されるインサート、およびそのインサートを用いた無機質板の固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るインサートを表す平面図である。
図2】本実施形態に係るインサートが無機質板の非貫通孔に挿入された状態を表す断面図である。
図3】内挿部材が本実施形態に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
図4】本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す上面図である。
図5】本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す側面図である。
図6】本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す側面図である。
図7】本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す下面図である。
図8図7に表した切断面A-Aにおける断面図である。
図9】本実施形態の第2具体例に係るインサートを表す上面図である。
図10】本実施形態の第2具体例に係るインサートを表す側面図である。
図11】本具体例における回り止め工具の一例を例示する斜視図である。
図12】本実施形態の第3具体例に係るインサートを表す上面図である。
図13】本実施形態の第3具体例に係るインサートを表す側面図である。
図14図12に表した切断面B-Bにおける断面図である。
図15】本実施形態の第3具体例に係るインサートが無機質板の非貫通孔に挿入された状態を表す断面図である。
図16】内挿部材が本実施形態の第3具体例に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
図17】本実施形態の第4具体例に係るインサートを表す断面図である。
図18】内挿部材が本実施形態の第4具体例に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
図19】本実施形態の第5具体例に係るインサートを表す側面図である。
図20】本実施形態に係る第6具体例に係るインサートを表す側面図である。
図21】本実施形態に係る第7具体例に係るインサートを表す側面図である。
図22】本実施形態に係る第8具体例に係るインサートを表す断面図である。
図23】本実施形態に係る第8具体例に係るインサートを表す断面図である。
図24】本実施形態に係る第9具体例に係るインサートを表す断面図である。
図25】本実施形態に係る第9具体例に係るインサートを表す断面図である。
図26】本発明の実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
図27】本発明の実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
図28】本発明の実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
図29】本発明の実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
図30】本実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する斜視図である。
図31】本実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
図32】本実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0026】
発明の基本態様
本発明による態様の一つは、薄物の無機質板4に設けられた非貫通孔41に挿入されるインサート2に関する。また、本発明の別の態様の一つは、インサート2と、無機質板4を被固定部位に固定するための固定具6と、を用いて無機質板4を被固定部位に固定する方法に関する。インサート2の脚部22に接続された胴部21の接続部の幅W1は、脚部22の幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。そのため、インサート2が非貫通孔41に挿入される際および内挿部材3がインサート2に挿入される際に、インサート2の胴部21が非貫通孔41の開口部411に当たることを抑えることができる。これにより、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔41の開口部411の破損によってインサート2の固定強度が低下することが抑えられ、インサート2は、薄物の無機質板4に強固に固定される。このように、本発明は、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えつつ、インサート2を薄物の無機質板4に強固に固定することができるとの優れた利点を有するものである。
以下、定義を述べた後、本発明によるインサートおよび無機質板の固定方法を説明する。
【0027】
定義
無機質板
本発明によるインサートが挿入される無機質板、および本発明による固定方法によって固定される無機質板は、例えば陶磁器、石、またはガラスからなるものである。本発明の一つの態様によれば、本発明において無機質板は、平板として、外装または内装の壁、床、天井の仕上材や、キャビネット面材やカウンターの仕上材に好ましく用いられる。従って、無機質板は、好ましくは意匠が施された化粧面と、躯体等の被施工面に張り付けられる施工面と、を備える。本発明によるインサートおよび固定方法は、薄物の無機質板に対して好ましく適用される。本発明の一つの態様によれば、無機質板の厚さは、例えば厚さは3mm以上15mm以下程度、好ましくは10mm以下程度、より好ましくは8mm以下程度である。
【0028】
本発明において無機質板は、その表面に釉薬層を有していてもよい。釉薬の成分は特に限定されない。釉薬層の形成は、成形後に施釉し、成形体と一体的に焼成するか、または、焼成体(仮焼体)に施釉した後に焼成するか、いずれかの方法を用いてもよい。さらに、施釉の前後に乾燥工程を設けてもよい。
【0029】
非貫通孔
無機質板は、表面および裏面の少なくともいずれかに設けられた非貫通孔を有する。非貫通孔は、好ましくは、無機質板の施工面に相当する裏面に設けられる。非貫通とは、無機質板の表面および裏面のいずれか一方から無機質板の表面および裏面のいずれか他方に向かって掘り下げられて孔が形成されるが、他方の面にまで至らない状態を意味する。非貫通孔の開口形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円、三角形、四角形、その他多角形であってよい。非貫通孔の開口形状は、好ましくは、円形である。非貫通孔が延びた方向に沿ってみたときの非貫通孔の形状は、三角形(錐体形状)、四角形(筒体形状)、半円形(U溝形状)であってよい。非貫通孔は、好ましくは、開口形状が円形で、延びた方向における形状が四角形(筒体形状)である円筒形状である。非貫通孔が延びた方向とは、非貫通孔の深さ方向に相当する。なお、非貫通孔の開口面積は、非貫通孔の深さ方向に沿って変化していてもよい。この場合には、非貫通孔の相対的に深い部分における開口面積は、非貫通孔の相対的に浅い部分における開口面積よりも広いことが好ましい。
【0030】
非貫通孔の深さは、特に限定されない。無機質板の強度等への影響を考慮すると、非貫通孔の深さは、無機質板の厚さ方向、すなわち施工面(裏面)から化粧面(表面)へ向かう方向の距離換算で無機質板の厚さと同等以下とされることが望ましい。本発明によるインサートおよび固定方法は、とりわけこのような薄物の無機質板における比較的浅い非貫通孔に対して有利に適用される。
【0031】
被施工面および被固定部位
本発明において、外装または内装の壁、床、天井の表面や、キャビネット面材やカウンターの表面のように、本発明による固定方法により無機質板が固定される表面を「被施工面」という。また、被施工面のうちで、無機質板を固定するための固定具が取り付けられたり引っ掛けられたりする部分を「被固定部位」という。例えば、被固定部位には、孔または溝が設けられている。なお、固定具が取付可能あるいは引っ掛け可能である限りにおいて、溝と孔とは、互いに明確に区別される必要はない。
【0032】
本発明によるインサート
以下、本発明によるインサートについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインサートを表す平面図である。
図2は、本実施形態に係るインサートが無機質板の非貫通孔に挿入された状態を表す断面図である。
図3は、内挿部材が本実施形態に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
【0033】
本実施形態に係るインサート2は、胴部21と、脚部22と、を備え、薄物の無機質板4に設けられた非貫通孔41に挿入される。インサート2の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、および鉄、ならびにこれらの少なくともいずれかの金属を含む合金が挙げられる。好適には、インサート2の材料としては、真鍮および砲金などの銅合金が挙げられる。あるいは、インサート2の材料としては、樹脂が挙げられる。
【0034】
胴部21は、接続部213において脚部22に接続されている。接続部213は、胴部21が脚部22に接続された部分である。図2および図3に表したように、インサート2が無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、接続部213は、非貫通孔41の開口部411の近傍に配置される。開口部411とは、非貫通孔41が開口した縁の部分、すなわち非貫通孔41の上縁部分をいう。図1図3に表したインサート2の例では、胴部21の略全体が接続部213に相当する。胴部21が、脚部22に接続された接続部213と、接続部213とは異なる他の部分と、を有する例については後述する。
【0035】
接続部213の幅W1は、脚部22の幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。本願明細書において「幅」とは、非貫通孔41が延びた方向(非貫通孔41の深さ方向)に直交する方向の長さをいう。脚部22が延びた方向において、脚部22の幅が変化する場合には、接続部213の幅W1は、脚部22の最大幅よりも狭い。脚部22が延びた方向とは、非貫通孔41が延びた方向と平行な方向をいう。
【0036】
胴部21は、両側(図1では上側および下側)を貫く貫通孔211を有する。図2および図3に表したように、内挿部材3が、胴部21の貫通孔211を通してインサート2の内部に挿入される。内挿部材3の詳細については、後述する。
【0037】
脚部22は、複数の脚221を有し、胴部21に接続されている。好ましくは、複数の脚221は、胴部21と一体的に形成されている。複数の脚221は、胴部21の両側のいずれか一方の側(図1では下側)において胴部21から延び、互いに離れて設けられている。図1に表したように、隣り合う脚221同士は、隣り合う脚221同士の間の隙間224を介して離れて設けられている。複数の脚221の間には、空間222が形成されている。空間222は、複数の脚221が設けられた領域の中央部に位置し、胴部21の貫通孔211に接続されている。図2および図3に表したように、内挿部材3が、胴部21の貫通孔211と、脚部22の空間222と、を通してインサート2の内部に挿入される。
【0038】
脚部22あるいは脚221が延びた方向において、脚部22の長さL2は、胴部21の長さL1よりも長く、非貫通孔41の深さL4よりも短い。脚221が延びた方向とは、脚部22が延びた方向と同様に、非貫通孔41が延びた方向と平行な方向をいう。なお、脚部22の長さL2は、胴部21の長さL1よりも長いことに限定されるわけではなく、胴部21の長さL1よりも短くともよい。脚部22の長さL2が胴部21の長さL1よりも短い例、言い換えれば、胴部21の長さL1が脚部22の長さL2よりも長い例については、後述する。脚部22の幅W2は、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。脚部22が延びた方向において、脚部22の幅が変化する場合には、脚部22の最大幅は、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。
【0039】
内挿部材3は、胴部21の貫通孔211と、脚部22の空間222と、を通してインサート2の内部に挿入される部材である。内挿部材3の材料としては、金属および樹脂が挙げられる。インサート2に対する内挿部材3の固定性能や装着性能を考慮すると、内挿部材3は、ネジやボルトであることが好ましい。内挿部材3がネジやボルトである場合には、インサート2は、インサートナットになる。すなわち、内挿部材3がネジやボルトである場合には、胴部21の貫通孔211と、脚部22の空間222と、の内壁には、雌ネジが形成される。この具体例については、後述する。また、内挿部材3は、胴部21の貫通孔211と、脚部22の空間222と、の少なくともいずれかの形状に嵌まり合う形状を有するリベットであってもよい。
【0040】
内挿部材3は、胴部21の貫通孔211と、脚部22の空間222と、を通して、無機質板4の非貫通孔41に挿入されたインサート2の内部に挿入される。そうすると、図3に表したように、脚部22は、脚部22の幅W2の縮小の抑制および脚部22の幅W2の拡大の少なくともいずれかにより、無機質板4の非貫通孔41の内壁に押し当てられ固定される。すなわち、内挿部材3の挿入により、脚部22の幅W2が縮小することが抑制されたり、図3に表した矢印A1および矢印A2のように脚部22の幅W2が拡大したりすることで、脚部22が無機質板4の非貫通孔41の内壁に押し当てられ固定される。これにより、インサート2が無機質板4の非貫通孔41の内壁に固定される。
【0041】
このとき、前述したように、胴部21の接続部213の幅W1は、脚部22の幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。そのため、インサート2が無機質板4の非貫通孔41に挿入される際および内挿部材3がインサート2に挿入される際に、胴部21の接続部213が非貫通孔41の開口部411に当たることを抑えることができる。割れや欠けなどの破損は、非貫通孔41の奥の部分(深い部分)と比較すると、非貫通孔41の開口部411(浅い部分)において生じやすい。本実施形態に係るインサート2によれば、胴部21の接続部213が非貫通孔41の開口部411に当たることを抑えることができるため、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔41の開口部411の破損によってインサート2の固定強度が低下することが抑えられ、インサート2は、薄物の無機質板4に強固に固定される。
【0042】
また、前述したように、脚221が延びた方向において、脚部22の長さL2は、胴部21の長さL1よりも長い。これによれば、脚部22は、非貫通孔41の内壁に対してより一層強固に固定される。これにより、インサート2は、薄物の無機質板4に対してより一層強固に固定される。
【0043】
次に、本実施形態の具体例に係るインサートを、図面を参照して説明する。
なお、具体例に係るインサート2A~2H、2Jの構成要素が、図1図3に関して前述した本実施形態に係るインサート2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0044】
図4は、本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す上面図である。
図5および図6は、本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す側面図である。
図7は、本実施形態の第1具体例に係るインサートを表す下面図である。
図8は、図7に表した切断面A-Aにおける断面図である。
なお、図5は、図4に表した矢印A3の方向からインサート2Aを眺めたときの側面図である。図6は、図4に表した矢印A4の方向からインサート2Aを眺めたときの側面図である。
【0045】
本具体例に係るインサート2Aは、胴部21Aと、脚部22Aと、を備える。
胴部21Aは、接続部213において脚部22Aに接続されている。図6に表したように、胴部21Aの接続部213の幅W1は、脚部22Aの幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4(図2参照)よりも狭い。図8に表したように、胴部21Aの貫通孔211の内壁には、雌ネジが形成されている。そのため、胴部21Aの貫通孔211に挿入される内挿部材3は、外周面に雄ネジ31(図15参照)が形成されたネジやボルトなどの部材である。胴部21Aのその他の構造は、図1図3に関して前述した胴部21の構造と同様である。
【0046】
脚部22Aは、複数の脚221を有し、胴部21Aに接続されている。図7に表したように、本具体例に係るインサート2Aでは、4つの脚221が設けられている。そのため、本具体例に係るインサート2Aでは、4つの隙間224が設けられている。なお、脚221の数は、4つに限定されるわけではない。図8に表したように、脚部22Aの空間222の内壁には、雌ネジが形成されている。そのため、前述したように、胴部21Aの貫通孔211を通して脚部22Aの空間222に挿入される内挿部材3は、外周面に雄ネジ31(図15参照)が形成されたネジやボルトなどの部材である。脚部22Aのその他の構造は、図1図3に関して前述した脚部22の構造と同様である。
【0047】
図4および図6に表したように、胴部21Aの外面のうちの少なくとも一部には、平面部212が設けられている。本具体例に係るインサート2Aでは、互いに平行な2つの平面部212が胴部21Aの外面に設けられている。なお、平面部212の数は、2つに限定されるわけではない。これによれば、ネジやボルトなどの内挿部材3が胴部21Aの貫通孔211および脚部22Aの空間222の内壁に形成された雌ネジに締まる際に、作業者がスパナやレンチなどの工具で平面部212を押さえてインサート2Aを固定することにより、インサート2Aが内挿部材3と共に非貫通孔41において回転することを抑えることができる。
【0048】
図5および図6に表したように、脚部22Aの外面には、ローレット223が設けられている。すなわち、複数の脚221の少なくともいずれかの外面には、ローレット223が設けられている。本具体例に係るインサート2Aでは、ローレット223は、全ての脚221の外面に設けられている。これによれば、インサート2Aが無機質板4の非貫通孔41の内壁に固定される際に、ローレット223の先端が潰れることにより、脚部22Aは、非貫通孔41の内壁に対してより一層強固に固定される。このように、ローレット223は、無機質板4よりも柔らかいことが好ましい。これにより、インサート2Aは、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えつつ、薄物の無機質板4に強固に固定される。なお、インサート2Aの材料は、図1図3に関して前述したインサート2の材料と同様である。
【0049】
本具体例に係るインサート2Aのその他の構造は、図1図3に関して前述したインサート2の構造と同様である。本具体例に係るインサート2Aにおいても、図1図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0050】
図9は、本実施形態の第2具体例に係るインサートを表す上面図である。
図10は、本実施形態の第2具体例に係るインサートを表す側面図である。
図11は、本具体例における回り止め工具の一例を例示する斜視図である。
なお、図10は、図9に表した矢印A5の方向からインサート2Aを眺めたときの側面図である。
【0051】
本具体例に係るインサート2Bは、胴部21Bと、脚部22Bと、を備える。胴部21Bは、接続部213において脚部22Bに接続されている。胴部21Bの貫通孔211の内壁には、雌ネジが形成されている。図9および図10に表したように、胴部21Bの上面には、胴部21Bの上面から脚部22Bに向かって後退した凹部215が設けられている。本具体例に係るインサート2Bでは、略同一直線上に延びた2つの凹部215が設けられている。なお、凹部215の数は、2つに限定されるわけではない。胴部21Bのその他の構造は、図4図8に関して前述した胴部21Aの構造と同様である。また、脚部22Bの構造は、図4図8に関して前述した脚部22Aの構造と同様である。
【0052】
図11に表したように、本具体例に係るインサート2Bを固定する際に用いられる回り止め工具5は、把持部51と、連結部52と、爪部53と、を有する。把持部51は、作業者等が回り止め工具5を用いる際に把持する部分である。連結部52は、把持部51と爪部53とを連結している。すなわち、連結部52の一方の端部は、把持部51に接続されている。連結部52の他方の端部は、爪部53に接続されている。連結部52は、湾曲した形状を呈する。例えば、連結部52は、円弧状を呈する。爪部53は、連結部52の他方の端部から略垂直方向に屈曲し延びている。例えば、爪部53は、円弧状の連結部52の両端部に設けられている。例えば、回り止め工具5は、金属板のプレス加工により形成される。あるいは、回り止め工具5は、樹脂の射出成形により形成されてもよい。
【0053】
本具体例に係るインサート2Bによれば、ネジやボルトなどの内挿部材3が胴部21Bの貫通孔211および脚部22Bの空間222の内壁に形成された雌ネジに締まる際に、作業者が回り止め工具5の爪部53を胴部21Bの凹部215に挿入してインサート2Bを保持することにより、インサート2Bが内挿部材3と共に非貫通孔41において回転することを抑えることができる。このとき、作業者は、回り止め工具5の爪部53を胴部21Bの凹部215に挿入した状態において、連結部52の内側の空間521を通して内挿部材3をインサート2Bの内部に形成された雌ネジに締めることができる。
【0054】
本具体例に係るインサート2Bのその他の構造は、図1図3に関して前述したインサート2の構造と同様である。本具体例に係るインサート2Bにおいても、図1図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。なお、本具体例に係るインサート2Bにおいて、胴部21Bの平面部212は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0055】
図12は、本実施形態の第3具体例に係るインサートを表す上面図である。
図13は、本実施形態の第3具体例に係るインサートを表す側面図である。
図14は、図12に表した切断面B-Bにおける断面図である。
図15は、本実施形態の第3具体例に係るインサートが無機質板の非貫通孔に挿入された状態を表す断面図である。
図16は、内挿部材が本実施形態の第3具体例に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
なお、図13は、図12に表した矢印A6の方向からインサート2Cを眺めたときの側面図である。
【0056】
本具体例に係るインサート2Cは、胴部21Cと、脚部22Cと、フランジ23と、を備える。すなわち、本具体例に係るインサート2Cは、図1図11に関して前述したインサート2、2A、2Bと比較して、フランジ23をさらに備える。胴部21Cの構造は、図4図8に関して前述した胴部21Aの構造と同様である。脚部22Cの構造は、図4図8に関して前述した脚部22Aの構造と同様である。
【0057】
フランジ23は、胴部21Cの接続部213からみて脚部22Cとは反対の側において胴部21Cに接続されている。本願明細書において「フランジ」とは、非貫通孔41が延びた方向(非貫通孔41の深さ方向)に直交する方向に胴部から突出した鍔形状の部分をいう。フランジ23は、両側(図14では上側および下側)を貫く貫通孔231を有する。図14に表したように、フランジ23の貫通孔231は、胴部21Cの貫通孔211を通して脚部22Cの空間222に接続されている。フランジ23の貫通孔231の内壁には、雌ネジが形成されている。そのため、フランジ23の貫通孔231と、胴部21Cの貫通孔211と、を通して脚部22Cの空間222に挿入される内挿部材3は、外周面に雄ネジ31(図15参照)が形成されたネジやボルトなどの部材である。
【0058】
図12および図13に表したように、フランジ23の外面のうちの少なくとも一部には、平面部232が設けられている。本具体例に係るインサート2Cでは、互いに平行な2つの平面部232がフランジ23の外面に設けられている。なお、平面部232の数は、2つに限定されるわけではない。これによれば、図15および図16に表したように、ネジやボルトなどの内挿部材3がフランジ23の貫通孔231、胴部21Cの貫通孔211、および脚部22Cの空間222の内壁に形成された雌ネジに締まる際に、作業者がスパナやレンチなどの工具で平面部232を押さえてインサート2Cを固定することにより、インサート2Cが内挿部材3と共に非貫通孔41において回転することを抑えることができる。
【0059】
図13に表したように、フランジ23の幅W3は、胴部21Cの幅W1、脚部22Cの幅W2、および非貫通孔41の開口部411の幅W4(図15参照)よりも広い。そのため、図15および図16に表したように、インサート2Cが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、脚部22Cに対向するフランジ23の面233(図13および図14では下面)は、無機質板4の表面42に接触する。言い換えれば、インサート2Cが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、フランジ23は、無機質板4の表面42に引っ掛かる。また、脚部22Cが延びた方向において、フランジ23の面233と、脚部22Cの先端部225と、の間の距離L5は、脚部22Cの長さL2よりも長く、非貫通孔41の深さL4よりも短い。なお、脚部22Cの先端部225は、本発明の「インサートの先端部」に相当する。
【0060】
これにより、フランジ23は、インサート2Cが無機質板4の非貫通孔41に挿入されたときの挿入深さを一定に保持することができる。そのため、脚部22Cの先端部225が非貫通孔41の底412に当たることを抑えることができる。これにより、無機質板4の非貫通孔41の底412に破損が生ずることを抑えることができる。また、フランジ23は、インサート2Cが無機質板4の非貫通孔41に挿入されたときに無機質板4の表面42に接触するため、非貫通孔41に挿入された後のインサート2Cの姿勢を安定化させることができる。
【0061】
図14に表したように、隣り合う複数の脚221同士の間の隙間224の長さL6は、脚部22Cの長さL2よりも長い。本具体例に係るインサート2Cでは、隙間224の長さL6は、フランジ23の面233と、脚部22Cの先端部225と、の間の距離L5と同じである。なお、隙間224の長さL6は、フランジ23の面233と、脚部22Cの先端部225と、の間の距離L5と同じであることに限定されるわけではない。これによれば、図16に表したように、内挿部材3がインサート2Cに挿入されると、脚部22Cの全体の幅が拡大する。そのため、脚部22Cは、非貫通孔41の内壁に対してより一層強固に固定される。これにより、インサート2Cは、薄物の無機質板4に対してより一層強固に固定される。また、本具体例に係るインサート2Cにおいても、図1図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0062】
図17は、本実施形態の第4具体例に係るインサートを表す断面図である。
図18は、内挿部材が本実施形態の第4具体例に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
なお、図17は、図12に表した切断面B-Bにおける断面図に相当する。図18では、説明の便宜上、内挿部材3を省略している。
【0063】
本具体例に係るインサート2Dは、胴部21Dと、脚部22Dと、フランジ23と、を備える。胴部21Dの構造は、図4図8に関して前述した胴部21Aの構造と同様である。フランジ23の構造は、図12図16に関して前述したフランジ23と同様である。
【0064】
脚部22Dは、複数の脚221Dを有し、胴部21Dに接続されている。胴部21Dから離れた脚221Dの先端部225の肉厚T1は、胴部21Dに接続された脚221Dの根元部226の肉厚T2よりも厚い。なお、脚221Dの先端部225は、脚部22Dの先端部およびインサート2Dの先端部に相当する。
【0065】
具体的に説明すると、本具体例に係るインサート2Dのように脚部22Dの空間222の内壁に雌ネジが形成されている場合には、脚221Dの先端部225における脚部22Dの外面と雌ネジの山との間の厚さT1は、脚221Dの根元部226における脚部22Dの外面と雌ネジの山との間の厚さT2よりも厚い。本願明細書において「脚の根元部」とは、脚が胴部に接続された部分をいう。そのため、図17に表した二点鎖線L21、L22のように、雌ネジの内径は、脚221Dの根元部226から脚221Dの先端部225に向かって小さくなる。なお、図17に表した二点鎖線L23、L24は、フランジ23の貫通孔231の内壁に形成された雌ネジの山を基準として、フランジ23の貫通孔231、胴部21Dの貫通孔211、および脚部22Dの空間222の軸C1に平行に延びた線である。
【0066】
図18に表した矢印A6および矢印A7のように、内挿部材3がフランジ23の貫通孔231と、胴部21Dの貫通孔211と、を通して脚部22Dの空間222に挿入されると、脚部22Dの幅W2はより一層拡大する。つまり、脚の先端部の肉厚が脚の根元部の肉厚と同じである場合、および脚の先端部の肉厚が脚の根元部の肉厚よりも薄い場合と比較して、脚部22Dの幅W2は、より一層拡大する。このとき、インサート2Dの内部に形成された雌ネジの内径を示す二点鎖線L21、L22は、軸C1に平行に延びた二点鎖線L23、L24と平行になる。
【0067】
本具体例によれば、内挿部材3がインサート2Dに挿入されると、脚部22Dの幅がより一層拡大する。そのため、脚部22Dは、非貫通孔41の内壁に対してより強い押圧力を与えるとともにより一層強固に固定される。これにより、インサート2Dは、薄物の無機質板4に対してより一層強固に固定される。また、本具体例に係るインサート2Dにおいても、図1図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0068】
図19は、本実施形態の第5具体例に係るインサートを表す側面図である。
本具体例に係るインサート2Eは、胴部21Eと、脚部22Eと、を備える。脚221が延びた方向において、胴部21Eの長さL1は、脚部22Eの長さL2よりも長い。インサート2Eが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、胴部21Eの少なくとも一部は、無機質板4の表面42(図15参照)から突出していてもよい。
【0069】
胴部21Eの幅W1は、胴部21Eが延びた方向において一定である。胴部21Eの幅W1は、脚部22Eの幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4(図2参照)よりも狭い。インサート2Eのその他の構造は、図4図8に関して前述したインサート2Aの構造と同様である。
【0070】
本具体例に係るインサート2Eのように、胴部21Eの長さL1は、脚部22Eの長さL2よりも長くともよい。そして、胴部21Eの少なくとも一部は、無機質板4の表面42から突出していてもよい。本具体例に係るインサート2Eによれば、無機質板4を仕上材として被施工面に接着剤を用いて張り付ける場合に、無機質板4の表面42から突出した胴部21Eの部分を利用することができる。すなわち、無機質板4の表面42から突出した胴部21Eの部分の長さが接着層の厚さと同等に設定されることで、無機質板4を被施工面に対して安定的に接着することができる。また、本具体例に係るインサート2Eにおいても、図1図3に関して前述した効果および図4図8に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0071】
図20は、本実施形態に係る第6具体例に係るインサートを表す側面図である。
本具体例に係るインサート2Fは、胴部21Fと、脚部22Fと、を備える。胴部21Fは、接続部213と、胴部本体214と、を有する。胴部21Fは、接続部213において脚部22Fに接続されている。脚221が延びた方向において、接続部213の長さL11は、脚部22Fの長さL2よりも短く、胴部本体214の長さL12よりも短い。脚221が延びた方向において、胴部本体214の長さL12は、脚部22Fの長さL2よりも長い。
【0072】
インサート2Fが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、接続部213は、非貫通孔41の開口部411の近傍に配置される。また、インサート2Fが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、胴部本体214は、無機質板4の表面42(図15参照)から突出する。
【0073】
接続部213の幅W11は、胴部本体214の幅W12よりも狭い。また、接続部213の幅W11は、脚部22Fの幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。胴部本体214の幅W12は、脚部22Fの幅W2と同じであってもよく、脚部22Fの幅W2よりも広くともよい。また、胴部本体214の幅W12は、非貫通孔41の開口部411の幅W4と略同じであってもよく、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも広くともよい。このように、本具体例に係るインサート2Fでは、胴部21Fの幅は、胴部21Fが延びた方向において一定ではなく変化している。インサート2Fのその他の構造は、図4図8に関して前述したインサート2Aの構造と同様である。
【0074】
本具体例に係るインサート2Fのように、胴部21Fの幅は、胴部21Fが延びた方向において変化していてもよい。そして、無機質板4の表面42から突出した胴部本体214の幅は、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも広くともよい。本具体例に係るインサート2Fは、脚部22Fに接続された接続部213と、接続部213とは異なる他の部分(本具体例では胴部本体214)と、を有する例に相当する。本具体例に係るインサート2Fによれば、無機質板4の表面42から突出した胴部本体214の長さL12が接着層の厚さと同等に設定されることで、無機質板4を被施工面に対して安定的に接着することができる。また、本具体例に係るインサート2Fにおいても、図1図3に関して前述した効果および図4図8に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0075】
図21は、本実施形態に係る第7具体例に係るインサートを表す側面図である。
本具体例に係るインサート2Gは、胴部21Gと、脚部22Gと、フランジ23と、を備える。胴部21Gは、接続部213と、胴部本体214と、を有する。胴部21Gは、接続部213において脚部22Gに接続されている。フランジ23は、接続部213からみて脚部22Gとは反対の側において、接続部213と胴部本体214との間に挟設されている。脚221が延びた方向において、接続部213の長さL11は、脚部22Gの長さL2よりも短く、胴部本体214の長さL12よりも短い。脚221が延びた方向において、胴部本体214の長さL12は、脚部22Gの長さL2よりも長い。
【0076】
脚部22Gに対向するフランジ23の面233(図21では下面)は、無機質板4の表面42に接触する。言い換えれば、インサート2Gが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、フランジ23は、無機質板4の表面42に引っ掛かる。そのため、インサート2Gが無機質板4の非貫通孔41に挿入された状態において、胴部本体214は、無機質板4の表面42から突出する。また、脚部22Gが延びた方向において、フランジ23の面233と、脚部22Gの先端部225と、の間の距離(L11+L2)は、非貫通孔41の深さL4よりも短い。
【0077】
接続部213の幅W11は、胴部本体214の幅W12と同じであってもよく、胴部本体214の幅W12と異なっていてもよい。図21に表した例では、接続部213の幅W11は、胴部本体214の幅W12と同じである。また、接続部213の幅W11は、脚部22Gの幅W2よりも狭く、非貫通孔41の開口部411の幅W4よりも狭い。フランジ23の幅W3は、接続部213の幅W11よりも広く、胴部本体214の幅W12よりも広い。つまり、フランジ23は、非貫通孔41が延びた方向(非貫通孔41の深さ方向)に直交する方向に接続部213および胴部本体214から突出した鍔形状の部分である。インサート2Gのその他の構造は、図12図16に関して前述したインサート2Cの構造と同様である。
【0078】
本具体例に係るインサート2Gによれば、無機質板4の表面42から突出した胴部本体214の長さL12が接着層の厚さと同等に設定されることで、無機質板4を被施工面に対して安定的に接着することができる。また、本具体例に係るインサート2Gにおいても、図1図3に関して前述した効果および図12図16に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0079】
図22および図23は、本実施形態に係る第8具体例に係るインサートを表す断面図である。
なお、図22は、本実施形態の第8具体例に係るインサートが無機質板の非貫通孔に挿入された状態を表す断面図である。図23は、内挿部材が本実施形態の第8具体例に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
【0080】
本具体例では、インサート2Hに挿入される内挿部材として、外周面に雄ネジが形成されたネジやボルトなどではなく、インサート2Hに嵌まり合うリベットが用いられる。本具体例の内挿部材3Aは、頭部31Aと、軸部32Aと、嵌合部33Aと、を有する。頭部31Aは、軸部32Aを介して嵌合部33Aに接続されている。嵌合部33Aは、非貫通孔41が延びた方向に直交する方向に軸部32Aから突出している。
【0081】
本具体例に係るインサート2Hは、胴部21Hと、脚部22Hと、フランジ23と、を備える。脚部22Hは、複数の脚221Hを有し、胴部21Hに接続されている。フランジ23の貫通孔231、胴部21Hの貫通孔211、および脚部22Hの空間222Hの内壁には、雌ネジは形成されていない。一方で、脚部22Hの空間222Hの内壁には、フランジ23の貫通孔231および胴部21Hの貫通孔211の内壁から脚部22Hの外面に向かって後退した凹部227が形成されている。
【0082】
図23に表したように、内挿部材3Aがインサート2Hに挿入されると、内挿部材3Aの嵌合部33Aが脚部22Hの凹部227に嵌まる。そうすると、脚部22Hの幅が縮小することが抑制されたり、脚部22Hの幅が拡大したりすることで、脚部22Hが無機質板4の非貫通孔41の内壁に押し当てられ固定される。これにより、インサート2Hが無機質板4の非貫通孔41の内壁に固定される。
【0083】
本具体例に係るインサート2Hによれば、内挿部材3Aがリベットである場合であっても、胴部21Hが非貫通孔41の開口部411に当たることを抑えることができるため、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔41の開口部411の破損によってインサート2Hの固定強度が低下することが抑えられ、インサート2Hは、薄物の無機質板4に強固に固定される。
【0084】
図24および図25は、本実施形態に係る第9具体例に係るインサートを表す断面図である。
なお、図24は、本実施形態の第9具体例に係るインサートが無機質板の非貫通孔に挿入された状態を表す断面図である。図25は、内挿部材が本実施形態の第9具体例に係るインサートに挿入された状態を表す断面図である。
【0085】
本具体例では、インサート2Jに挿入される内挿部材として、外周面に刻み目が形成された部材が用いられる。本具体例の内挿部材3Bは、頭部31Bと、軸部32Bと、を有する。軸部32Bの外周面には、刻み目が形成されている。
【0086】
本具体例に係るインサート2Jは、胴部21Jと、脚部22Jと、フランジ23Jと、を備える。脚部22Jは、複数の脚221Jを有し、胴部21Jに接続されている。フランジ23Jの貫通孔231J、胴部21Jの貫通孔211J、および脚部22Jの空間222Jの内壁には、内挿部材3Bの軸部32Bの外周面に形成された刻み目と嵌まり合う刻み目が形成されている。
【0087】
図25に表したように、内挿部材3Bがインサート2Jに挿入されると、内挿部材3Bの刻み目が、フランジ23Jの貫通孔231J、胴部21Jの貫通孔211J、および脚部22Jの空間222Jの内壁に形成された刻み目に嵌まる。そうすると、脚部22Jの幅が縮小することが抑制されたり、脚部22Jの幅が拡大したりすることで、脚部22Jが無機質板4の非貫通孔41の内壁に押し当てられ固定される。これにより、インサート2Jが無機質板4の非貫通孔41の内壁に固定される。
【0088】
本具体例に係るインサート2Jによれば、内挿部材3Bがネジ、ボルトおよびリベットでなくとも、胴部21Jが非貫通孔41の開口部411に当たることを抑えることができるため、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔41の開口部411の破損によってインサート2Jの固定強度が低下することが抑えられ、インサート2Jは、薄物の無機質板4に強固に固定される。また、内挿部材3Bの刻み目およびインサート2Jの刻み目がラチェット構造を有する場合には、内挿部材3Bがインサート2Jから外れることをより確実に抑えることができる。これにより、インサート2Jは、薄物の無機質板4により一層強固に固定される。
【0089】
本発明による無機質板の固定方法
以下、本発明による無機質板の固定方法について、図面を参照しながら説明する。
図26図29は、本発明の実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
図30は、本実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する斜視図である。
図31および図32は、本実施形態に係る無機質板の固定方法を説明する断面図である。
以下、本発明による無機質板の固定方法に用いられるインサートとして図12図16に関して前述したインサート2Cを例に挙げ、本発明による無機質板の固定方法を工程ごとに説明する。なお、本発明による無機質板の固定方法に用いられるインサートは、図12図16に関して前述したインサート2Cには限定されず、図1図10図17図25に関して前述したインサート2~2B、2D~2H、2Jであってもよい。
【0090】
非貫通孔にインサートを挿入する工程
図26および図27を参照しながら、非貫通孔にインサートを挿入する工程を説明する。
図26および図27に表したインサート2Cでは、胴部21Cの幅W1(図13参照)および脚部22Cの幅W2(図13参照)は、胴部21Cの接続部213から脚部22Cの先端部225に向かって小さくなっている。すなわち、胴部21Cの貫通孔211の内径および脚部22Cの空間222の内径は、胴部21Cの接続部213から脚部22Cの先端部225に向かって小さくなっている。このように、胴部21Cの幅W1および脚部22Cの幅W2は、脚221が延びた方向において一定でなくともよい。
【0091】
この工程では、作業者は、無機質板4に設けられた非貫通孔41にインサート2Cを挿入する。具体的には、作業者は、インサート2Cのうちの脚部22Cを無機質板4に向けて非貫通孔41に挿入する。このとき、脚部22Cの幅W2が脚部22Cの先端部225に向かって小さくなっているため、作業者は、インサート2Cを非貫通孔41に容易に挿入することができる。
【0092】
非貫通孔の内壁に脚部を固定する工程
図28図32を参照しながら、非貫通孔の内壁に脚部を固定する工程を説明する。
図28および図29に表したように、作業者は、フランジ23の貫通孔231と、胴部21Cの貫通孔211と、を通して内挿部材3を脚部22Cの空間222に挿入する。具体的には、作業者は、内挿部材3をインサート2Cの内部に形成された雌ネジに締める。そうすると、脚部22Cの幅W2が縮小することが抑制されたり、図29に表した矢印A1および矢印A2のように脚部22Cの幅W2が拡大したりすることで、脚部22Cが無機質板4の非貫通孔41の内壁に押し当てられ固定される。これにより、インサート2Cが無機質板4の非貫通孔41の内壁に固定される。
【0093】
このとき、胴部21Cの接続部213の幅W1は、脚部22Cの幅W2よりも狭い。そのため、インサート2Cが無機質板4の非貫通孔41に挿入される際および内挿部材3がインサート2Cに挿入される際に、胴部21Cの接続部213が非貫通孔41の開口部411に当たることを抑えることができる。これにより、割れや欠けなどの破損が薄物の無機質板4に生ずることを抑えることができる。そして、非貫通孔41の開口部411の破損によってインサート2Cの固定強度が低下することが抑えられ、インサート2Cは、薄物の無機質板4に強固に固定される。
【0094】
また、本発明による無機質板の固定方法では、無機質板4を被固定部位に固定するための固定具が用いられる。固定具は、内挿部材3をインサート2Cに挿入することにより無機質板4に固定される。
図30図32を参照しながら、固定具を無機質板に固定しつつ非貫通孔の内壁に脚部を固定する工程を説明する。
【0095】
図30図32に表したように、本実施形態の固定具6は、基部61と、係止部62と、を有し、金属板などの板状の部材により形成されている。係止部62は、基部61の一方の端部に設けられ、基部61に対して屈曲している。係止部62は、被固定部位に取り付けられたり、引っ掛けられたりする部分である。基部61は、インサート2Cのフランジ23が挿入される貫通孔611を有する。
【0096】
図30および図31に表したように、作業者は、図26および図27に関して前述した工程により非貫通孔41に挿入されたインサート2Cのフランジ23を固定具6の基部61に形成された貫通孔611に挿入する。続いて、図32に表したように、作業者は、ワッシャ35を介して内挿部材3をインサート2Cに挿入する。具体的には、作業者は、ワッシャ35を介して内挿部材3をインサート2Cの内部に形成された雌ネジに締める。そうすると、図32に表したように、固定具6が、ワッシャ35を介して内挿部材3と無機質板4との間に挟まれた状態になる。これにより、固定具6が無機質板4に固定されつつ、脚部22Cが非貫通孔41の内壁に固定される。
【0097】
なお、無機質板4に対する固定具6の固定形態は、これだけには限定されない。例えば、基部61に形成された貫通孔611の内径は、フランジ23の幅W3(図13参照)よりも小さくともよい。この場合の固定形態の一例では、フランジ23の面233(図13参照)が基部61の表面612に接触する。つまり、フランジ23は、基部61の表面612に引っ掛かる。そのため、この場合には、固定具6は、インサート2Cと無機質板4との間に挟まれた状態になる。これにより、固定具6は、無機質板4に固定される。
【0098】
あるいは、固定形態の他の一例では、基部61の裏面613がフランジ23の面233とは反対側の面(図32では上面)に接触する。つまり、基部61がフランジ23の面233とは反対側の面に乗る。このため、この場合には、固定具6は、内挿部材3とインサート2Cとの間に挟まれた状態になる。なお、この場合において、固定具6は、ワッシャ35を介して内挿部材3とインサート2Cとの間に挟まれた状態になってもよい。これにより、固定具6は、無機質板4に固定される。
【0099】
なお、本実施形態に係る無機質板4の固定方法では、固定具6が基部61と係止部62とを有し、金属板などの板状の部材により形成された場合を例に挙げた。ただし、無機質板4を被固定部位に固定するための固定具は、図30図32に表した固定具6だけに限定されるわけではない。例えば、固定具は、ワイヤなどの線材であってもよい。
【0100】
固定具を被固定部位に接続する工程
続いて、固定具6が無機質板4に固定された状態において、作業者は、固定具6を被固定部位に接続する。例えば、作業者は、固定具6を被固定部位に取り付けたり、引っ掛けたりする。これにより、無機質板4の非貫通孔41に挿入されたインサート2Cと、無機質板4を被固定部位に固定するための固定具6と、を用いて無機質板4を被固定部位に固定することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0102】
2、2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、2J・・・インサート、 3、3A、3B・・・内挿部材、 4・・・無機質板、 5・・・回り止め工具、 6・・・固定具、 21、21A、21B、21C、21D、21E、21F、21G、21H、21J・・・胴部、 22、22A、22B、22C、22D、22E、22F、22G、22H、22J・・・脚部、 23、23J・・・フランジ、 31・・・雄ネジ、 31A、31B・・・頭部、 32A、32B・・・軸部、 33A・・・嵌合部、 35・・・ワッシャ、 41・・・非貫通孔、 42・・・表面、 51・・・把持部、 52・・・連結部、 53・・・爪部、 61・・・基部、 62・・・係止部、 211、211J・・・貫通孔、 212・・・平面部、 213・・・接続部、 214・・・胴部本体、 215・・・凹部、 221、221D、221H、221J・・・脚、 222、222H、222J・・・空間、 223・・・ローレット、 224・・・隙間、 225・・・先端部、 226・・・根元部、 227・・・凹部、 231、231J・・・貫通孔、 232・・・平面部、 233・・・面、 411・・・開口部、 412・・・底、 521・・・空間、 611・・・貫通孔、 612・・・表面、 613・・・裏面
図1
図2
図3
図4
図5
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