(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20220524BHJP
E03D 5/09 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D5/09
(21)【出願番号】P 2018035332
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今泉 祥子
(72)【発明者】
【氏名】安倍 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠原 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】古賀 光男
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/097123(WO,A1)
【文献】特開平09-279658(JP,A)
【文献】特開2004-052434(JP,A)
【文献】特開2013-096187(JP,A)
【文献】特開昭57-187438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯水する洗浄水タンクを有する洗浄水タンク装置であって、
便器を洗浄するための洗浄水を水源から前記洗浄水タンク内に給水する給水装置と、
前記洗浄水タンクの底面に設けられ、前記便器と連通する排水流路を開閉する排水弁装置と、
前記排水弁装置に設けられ、前記洗浄水タンクに貯水される洗浄水が満水水位を超えた場合に、上縁に形成された開口から洗浄水を前記排水流路に排出するオーバーフロー管と、
前記排水弁装置を駆動して前記排水流路の開閉動作を行う駆動ユニットと、
を備え、
前記駆動ユニットは固定部材によって前記オーバーフロー管の開口よりも上方に位置するように前記オーバーフロー管に固定され、
前記駆動ユニットの重量を受けて、前記オーバーフロー管の開口よりも上方に位置する前記駆動ユニットとともに前記排水弁装置が回動する方向を支えるように、前記固定部材は前記洗浄水タンクの内壁と接触
して前記駆動ユニットを支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記洗浄水タンクの内壁までの長さが調節可能であることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
前記支持部は固定部材から下方に延在し、前記洗浄水タンクの底面と接触して前記駆動ユニットを支持することを特徴とする請求項1に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
前記駆動ユニットは、操作部と電動駆動部とを有し、前記操作部は前記オーバーフロー管の開口の上方に位置し、前記支持部は前記電動駆動部の下方に位置することを特徴とする請求項2に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
前記支持部は、上下方向に長さが調節可能であることを特徴とする請求項3に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
前記固定部材は、前記オーバーフロー管の上端と当接し、前記開口の周縁を覆うキャップ部を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項6】
前記給水装置は、洗浄水を前記オーバーフロー管に供給する補給水供給手段を有し、前記キャップ部は、前記補給水供給手段を前記オーバーフロー管の内部に誘導する補給水誘導部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に載置される洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から洗浄水により水洗大便器を洗浄して汚物を排出する洗浄水タンク装置として、例えば、モータを内部に有する駆動ユニット(自動操作用回転軸ユニット)によって洗浄水タンクに設けられた排水弁の開閉を行うものが知られている(特許文献1)。特許文献1では、洗浄水タンクの側壁面に開口を形成し、その開口に駆動ユニットを固定している。
【0003】
近年では、特にローシルエットな洗浄水タンクが好まれており、多様な形状を有するタンクが知られている。このような多様な形状のタンクでは、洗浄水タンクの満水水位(オーバーフロー管の上端の高さ)がそれぞれ異なるため、駆動ユニットが水没しないように最適化する必要がある。すなわち、製品ごとに洗浄水タンクの最適な配置や、最適な駆動ユニットを設ける必要があった。
【0004】
これに対して、特許文献2では、自動洗浄を行う駆動ユニットを洗浄水タンクの外に配置し、チューブやワイヤを洗浄水タンクの上方に形成された切り欠きを介して排水弁と接続した水洗大便器装置が開示されている。このような水洗大便器装置においては、タンク形状によって駆動ユニットの配置上の問題が生じることはないため、多様なタンク形状に駆動ユニットを適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-001640号公報
【文献】特開2016-056554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、駆動ユニットを洗浄水タンクの外部に配置した場合には、駆動ユニットを貯水タンクの内部に配置した場合に比べて排水弁と駆動ユニットとの間の経路長さも長くなるため、その分、チューブ及びワイヤの長さも長く構成されることとなる。
【0007】
したがって、排水弁と駆動ユニットとの間の経路長さやチューブ及びワイヤの長さが長くなるほど、これらの長さの公差やばらつきや、チューブとワイヤとの間の摺動抵抗等が、排水弁の操作量に大きく影響することとなり、排水弁の操作量がばらつき、排水弁の開閉動作に不具合が生じ、適切に動作を行うことが難しくなる。
【0008】
また、排水弁と駆動ユニットとの間の経路長さやチューブ及びワイヤの長さが長くなるため、排水弁の開閉に要する力が増加し、モータの出力を上げる必要がある。これにより、駆動ユニット自体の肥大化やコストが増加してしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、多様なタンク形状においても駆動ユニットの設置自由度を向上させ、且つ排水弁の操作性能を向上させた洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一様態に係る洗浄水タンク装置によれば、洗浄水を貯水する洗浄水タンクを有する洗浄水タンク装置であって、便器を洗浄するための洗浄水を水源から洗浄水タンク内に給水する給水装置と、洗浄水タンクの底面に設けられ、便器と連通する排水流路を開閉する排水弁装置と、排水弁装置に設けられ、洗浄水タンクに貯水される洗浄水が満水水位を超えた場合に、上縁に形成された開口から洗浄水を排水流路に排出するオーバーフロー管と、排水弁装置を駆動して排水流路の開閉動作を行う駆動ユニットと、を備え、駆動ユニットは固定部材によってオーバーフロー管の開口よりも上方に位置するようにオーバーフロー管に固定され、固定部材は洗浄水タンクの内壁と接触する支持部を有する。
【0011】
このように構成された本発明においては、オーバーフロー管よりも上方に位置するように駆動ユニットがオーバーフロー管に設けられているため、どのようなタンク形状であっても、満水水位よりも上方に駆動ユニットが位置し、駆動ユニットが洗浄水と接触することはない。また、駆動ユニットが排水弁装置のオーバーフロー管に設けられるため、駆動ユニットと排水弁装置とを近接させることができる。このため、排水弁装置を効率的に開閉させることが可能となる。
【0012】
ここで、駆動ユニットは上下方向に延在するオーバーフロー管に設けられるため、駆動ユニットの重量を受けて、オーバーフロー管と共に排水弁装置が回動してしまい、排水弁装置のシール性能に影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、本発明によれば、固定部材には洗浄水タンクの内壁面と接触して駆動ユニットを支持する支持部が設けられているため、オーバーフロー管と支持部によって確実に駆動ユニットをオーバーフロー管の上方で支持することが可能となる。
【0013】
また本発明の一態様においては、支持部は固定部材から下方に延在し、洗浄水タンクの底面と接触して駆動ユニットを支持する。
【0014】
このように構成された本発明においては、支持部が洗浄水タンクの底面と接触しているため、駆動ユニットの重量がかかる下方向において、洗浄水タンクの底面によって確実に支持することができる。
【0015】
また本発明の一様態においては、駆動ユニットは、操作部と電動駆動部とを有し、操作部はオーバーフロー管の開口の上方に位置し、支持部は電動駆動部の下方に位置する。
【0016】
このように構成された本発明においては、駆動ユニットは排水弁を操作する操作部と、モータ等を有する電動駆動部とを有し、操作部がオーバーフロー管の開口の上方に位置するため、排水弁装置との長さ距離を小さくすることが可能となり、排水弁装置の操作性を向上させることができる。さらに、駆動ユニットにおいて、重量が大きくなるモータ部の下方には支持部があるため、確実に下方から指示することが可能であり、排水弁の性能に影響を与えることを抑制することができる。
【0017】
ここで、「オーバーフロー管の開口の上方に位置し」とは開口の直上に位置する様子を示し、「電動駆動部の下方に位置する」とは、電動駆動部の直下に位置する様子を示すものである。
【0018】
また本発明の一態様においては、支持部は、上下方向に長さが調節可能である。
【0019】
このように構成された本発明においては、支持部が上下方向に長さ調節が可能であるため、どのようなタンク形状であっても、長さを調整することで支持部と洗浄水タンク底面とを接触させることが可能であり、確実に下方から駆動ユニットを支持することが可能である。
【0020】
また本発明の一態様においては、固定部材は、オーバーフロー管の上端と当接し、開口の周縁を覆うキャップ部を有している。
【0021】
このように構成された本発明においては、キャップ部がオーバーフロー管の開口を形成する上端、及びオーバーフロー管の開口周縁を覆うように設けられているため、2つの当接面によって、特別な固定具を必要とせず、確実にオーバーフロー管に固定部材を固定させることができる。
【0022】
また本発明の一態様においては、給水装置は、洗浄水をオーバーフロー管に供給する補給水供給手段を有し、キャップ部は、補給水供給手段をオーバーフロー管の内部に誘導する補給水誘導部が設けられている。
【0023】
このように構成された本発明においては、オーバーフロー管の開口近傍がキャップ部によって覆われているため、補給水供給手段からの洗浄水をオーバーフロー管の内部に供給しにくくなる。しかし、キャップ部には補給水供給手段をオーバーフロー管の内部に誘導する補給水誘導手段が設けられているため、キャップ部による支持を行いながら補給動作も行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、多様なタンク形状においても駆動ユニットの設置自由度を向上させ、且つ排水弁の操作性能を向上させた洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態における洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態における洗浄水タンク装置のII-II断面を示す正面断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における駆動ユニットを示す部分斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態における排水弁装置に固定された駆動ユニットを示す部分拡大正面図である
【
図5】本発明の一実施形態における排水弁装置に固定された駆動ユニットを示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下の説明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、以下の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【0027】
まず、
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による排水弁装置28が適用される洗浄水タンク装置4を備えた水洗大便器1は、汚物を受ける便器本体2と、この便器本体2の後方の上方に設けられた直方体状の洗浄水タンク装置4とを備えている。洗浄水タンク装置4は、便器を洗浄するための洗浄水を貯える貯水タンク6を備えている。さらに、貯水タンク6の上方には、開口部分をほぼ全体的に覆うように、着脱自在に固定されている蓋8が設けられている。また、この貯水タンク6の底部には、上下方向に貫く排水口10が設けられている。なお、本発明の一実施形態は、洗浄水タンク装置4と便器本体2とが別々に形成された水洗大便器であってもよく、また、洗浄水タンク装置4と便器本体2とが一体的に形成された水洗大便器であってもよい。
【0028】
さらに、
図1に示すように、水洗大便器1の便器本体2は、その前方側に設けられたボウル部12と、このボウル部12の上縁に形成されたリム部14とを備えている。
また、便器本体2のボウル部12の底部には、排水トラップ管路16の入口16aが開口し、この入口16aから後方の排水トラップ管路16は排水ソケット(図示せず)等を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。
本実施形態による水洗大便器1は、サイホン作用を利用してボウル部12内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路16から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器であってもよく、他に、水洗大便器1としては、サイホン式の水洗大便器に限定されず、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器等の他のタイプの水洗便器にも適用可能である。
【0029】
つぎに、便器本体2は、貯水タンク6の排水口10から排出される洗浄水が流入する導水路20と、リム部14の前方から見て左側中央近傍に形成された第1リム吐水口22と、リム部14の前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口24(
図1参照)とを備えている。
また、導水路20は、便器本体2の後方の中央から前方側に向かって延びた後、分岐されて第1リム吐水口22又は第2リム吐水口24まで延びる流路を形成している。貯水タンク6の排水口10から排出された洗浄水は、導水路20において便器本体2の後方の中央から前方側に向かって流れた後、分岐されて、第1リム吐水口22又は第2リム吐水口24に到達する。第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24のそれぞれから吐水された洗浄水は、ボウル部12を洗浄し、汚物を排水トラップ管路16から排出するようになっている。
【0030】
つぎに、
図2により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4の内部構造について説明する。
図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、貯水タンク6内に洗浄水を供給する給水装置26と、貯水タンク6に貯えられた洗浄水について排水口10を開放して便器本体2の導水路20に流出させる排水弁装置28と、を備えている。
【0031】
貯水タンク6には、排水弁装置28を駆動してケーシング41の内部に配置された排水弁体40の開閉動作を自動的に行う自動洗浄用の駆動ユニット42と、貯水タンク6の側部に設けられ、排水弁装置28の排水弁体40の開閉動作を手動により操作可能な手動操作ユニット38とにより構成されている。
【0032】
手動操作ユニット38は、駆動ユニット42とは別体で設けられている。そして、手動操作ユニット38は、使用者が操作可能なように貯水タンク部6の外側に配置される手動用操作レバー46と、手動用操作レバーと連動する回転機構ユニット48と、から構成され、さらに手動操作用の操作部材50が排水弁装置28に接続されている。
【0033】
なお、本発明の一実施形態ではレバーで稼働する手動操作ユニット38を備えた洗浄水タンク装置4を示したが、押しボタン式で稼働するものでもよい。また、自動洗浄のみを行うものにおいては、手動操作ユニット38を具備していなくともよい。
【0034】
また、給水装置26は、外部の給水源(図示せず)に接続され且つ貯水タンク6の底部から上方に延びるように設けられた給水管30と、この給水管30の上端部に取り付けられ、給水管30から給水される洗浄水の貯水タンク6内への吐水と止水を切り替える給水バルブ32と、貯水タンク6内の水位の変動に応じて上下動して給水バルブ32による吐水と止水を切り替えるフロート34とを備えている。
【0035】
給水装置26は、給水バルブ32を通過した洗浄水が吐水口(図示せず)から貯水タンク6内に吐水されるようになっている。また、排水弁装置28により、貯水タンク6内の洗浄水が便器に排水されると、洗浄水の水位が低下してフロート34が下降し、それにより給水バルブ32が開き、吐水口からの吐水が開始され、貯水タンク6の外部の給水源(図示せず)から貯水タンク6内への吐水が開始されるようになっている。さらに、吐水が継続されて貯水タンク6内の水位が上昇すると、フロート34が上昇し、それにより給水バルブ32が閉鎖され、吐水口からの吐水が止水されるようになっている。これにより、貯水タンク6内の洗浄水の水位が満水時の所定水位(WL1)に維持されるようになっている。
【0036】
また、給水装置26は、リフィール管(補給水供給手段)36を備えており、このリフィール管36からの洗浄水が、オーバーフロー管58内に直接流れ込み、便器本体2の導水路20を経て補給水としてボウル部12内に供給されることができるようになっている。
【0037】
つぎに、本発明の一実施形態による排水弁装置28の基本的な構造について
図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、貯水タンク部6内に設けられて貯水タンク部6を正面側から見て左右方向の中心に配置された排水弁装置28を備えている。この排水弁装置28は、貯水タンク部6の底部において正面側から見て左右方向の中心に上下方向に貫くように形成された排水口10を開閉する排水弁体40を備えており、排水弁体40が上下動することにより排水口10を開閉する、いわゆる直動式の排水弁装置である。
【0038】
排水弁装置28は、排水弁装置28の外観を形成するケーシング41と、このケーシング41の内部を上下方向に移動して貯水タンク6の排水口10を開閉する排水弁体40と、このケーシング41の外部からの操作により排水弁体40を上方に引上げることことによって、排水弁装置28を開閉させる。
【0039】
排水弁装置28は、さらに、このケーシング41の側方において、上下方向に延びるオーバーフロー管58を備えている。オーバーフロー管58は、このオーバーフロー管58
内の下流側端部が、排水弁体40の下方の排水口10と連通するようになっている。オーバーフロー管58は、貯水タンク6内の洗浄水がオーバーフロー管58の上端位置に相当する高さの水位(WL1)を超えた場合に排水弁装置28へ流出させることができる。
【0040】
なお、図示は省略するが、オーバーフロー管58の上方の端部は開口しており、開口面は筒状に形成され、オーバーフロー管の外周壁と内周壁との間には所定の厚みを有するものである。
【0041】
つぎに、
図2及び
図3に示す駆動ユニット42について説明する。
洗浄水タンク装置4は、この排水弁装置28を駆動して排水弁体40の開閉動作を自動的に行う自動洗浄用の駆動ユニット42を備えている。この駆動ユニット42は、排水弁装置28を電動駆動するモータ(図示せず)等を内蔵する電動駆動部52と、モータの駆動によって排水弁装置28の排水弁体40の引き上げ操作を行う操作部54と、を具備している。さらに、駆動ユニット42は、排水弁装置28と操作部54とを接続して電動駆動部52の駆動により排水弁体40の開閉動作を操作する細長状の電動操作用の操作部材56を備えている。また、駆動ユニット42の電動駆動部52は回転軸60を有し、回転軸60の軸線上(A1-A2)において、電動駆動部52と操作部54とは並列に配置されている。
【0042】
駆動ユニット42は、便器の使用者を検知したセンサ等からの信号(又はセンサ等からの信号を受信した制御部から発信される制御信号)に基づいて電気的に駆動されるモータにより操作部材56を介して排水弁装置28を作動させる。
なお、駆動ユニット42は、壁付けのリモコン等(図示せず)からの信号(又はセンサ等からの信号を受信した制御部から発信される制御信号)に基づいて電気的に駆動されたモータによりワイヤ引上げを行うものであるが、これに限らず様々なトリガによって駆動を行うものでよい。
【0043】
図4及び
図5は、本発明の一実施形態における排水弁装置28に駆動ユニット42を固定した状態を示し、
図4は正面視における部分断面図であり、
図5は側面視における部分断面図である。
【0044】
図4に示すように、駆動ユニット42は固定部材62によってオーバーフロー管58よりも上方に設置されており、固定部材62は、駆動ユニット42と固定される本体部64と、オーバーフロー管58に取り付けられるキャップ部66と、固定部材62から下方に延在し、貯水タンク6の底面(
図4及び
図5における点線)に当接する支持部68とを備える。
【0045】
まず、駆動ユニット42は本体部64に取り付けられており、本体部64は底面が平坦となるように形成され、この平坦に形成された底面に駆動ユニット42が載置されている。さらに、電動駆動部52は回転を行う回転軸60を有し、この回転軸60は本体部62の側面に形成された開口に挿通され、外部から固定ナットによって本体部に固定されている。
【0046】
なお、本発明の一実施形態においては、上記のように固定したが、これに限定されるものではなく、例えばボルト等によって駆動ユニット42と本体部64とを固定してもよい。
【0047】
さらに、本体部64には、オーバーフロー管58に取り付けるためのキャップ部66が一体的に形成されている。キャップ部66はオーバーフロー管58の開口を形成する上端と当接するように開口全周に設けられており、さらに、キャップ部66はオーバーフロー管58の周縁とも当接している。ここで、「上端」とはオーバーフロー管58の最も上部の開口端部の上向き面を指し、「周縁」とは、上端近傍のオーバーフロー管58外方の側壁面全周をさすものである。すなわち、キャップ部66はオーバーフロー管58の開口を覆うようにキャップ状(蓋状)に設けられ、これにより、上端と周縁の2つの面から駆動ユニット42を確実に支持することができる。
【0048】
また、本体部64には、駆動ユニット42を貯水タンク6の底面によって支持するための支持部68が設けられている。支持部68は、本体部62の平坦に形成された底面から下方に延在し、その下端が貯水タンク6の底面に当接するように設けられている。
【0049】
ここで、オーバーフロー管58は排水弁装置28の外観を形成するケーシング41の側方に位置するように設けられており、オーバーフロー管58に駆動ユニット42の重量がかかると、排水口10を基点に排水弁装置28にモーメントが生じてしまう(排水弁装置28が回動する方向に負荷がかかってしまう)。これにより、排水弁装置28のシール性能に影響を及ぼしてしまうおそれがある。
【0050】
しかしながら、本発明の一実施形態によれば、支持部68が駆動ユニット42を貯水タンク6の底面によって支持しているため、排水弁装置28のシール性能に影響を与えることなく、オーバーフロー管58の上方に駆動ユニット42を設置することができる。なお、本実施形態においては、貯水タンク6の底面と支持部68とが当接する形態について説明したが、例えば、本体部64の側面から支持部68が延在し、貯水タンク6の側壁面と当接する形態とすることも好ましい。
【0051】
このように、本発明の一実施形態によれば、本体部64に形成されたキャップ部66及び支持部68によって、オーバーフロー管58よりも上方に駆動ユニット42を設けることが可能となり、タンク形状によって満水時の水位(WL1)が変化したとしても駆動ユニットの水没を抑制することができる。また、貯水タンク6の内部に駆動ユニット42を配置しているため、電動操作用の操作部材56の長さを短くすることが可能となり、排水弁体40の操作性能を向上させることができる。
【0052】
つぎに、支持部68は、本体部64において、電動駆動部52が配置された部分に対応する底面(電動駆動部52の直下)から下方に延在するように形成されている。すなわち、支持部68は電動駆動部52を貯水タンク6の底面から支持するように構成されている。駆動ユニット42は、一般的には、モータを含む電動駆動部52が最も重量が大きくなるが、この部分に支持部68が設けられているため、排水弁装置28に発生するモーメントにより、排水弁装置28のシール性能に影響を与えることを抑制することができる。
【0053】
また、支持部68は2部品で構成されることが好ましい。すなわち、支持部68を雄ねじ部68a、雌ねじ部68bとして構成し、これにより支持部68の長さを調整することで、タンク形状によって満水時の水位(WL1)が変化したとしても、貯水タンク6の底面から駆動ユニット42を支持することができる。なお、本実施形態ではねじ式によって長さを調整することとしたが、これに限るものではなく、また支持部68を1部品として構成してもよい。
【0054】
つぎに、
図4及び
図5に示すように、駆動ユニット42の操作部54はオーバーフロー管58の開口の上方(オーバーフロー管58の開口の直上)に位置するように配置されている。これにより、操作部54をより排水弁体40側に近接して配置することができるため、排水弁体40の操作性能を向上させることができる。
【0055】
また、キャップ部66には、リフィール管(補給水供給手段)36をオーバーフロー管58の内部に誘導するための補給水誘導部70が設けられている。補給水誘導部70は、リフィール管36と接続される接続部72と、接続部72と連通してオーバーフロー管58の内部に補給水を供給する開口(図示せず)が設けられている。このため、キャップ部66がオーバーフロー管58の開口を覆うように設けられていても、リフィール管(補給水供給手段)36をオーバーフロー管58の内部に供給することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 洗浄水タンク装置
6 貯水タンク(洗浄水タンク)
8 蓋
10 排水口(排水流路)
12 ボウル部
14 リム部
16 排水トラップ管路
16a 入口
20 導水路
22 第1リム吐水口
24 第2リム吐水口
26 給水装置
28 排水弁装置
30 給水管
32 給水バルブ
34 フロート
36 リフィール管(補給水供給手段)
38 手動操作ユニット
40 排水弁体
41 ケーシング
42 駆動ユニット
46 手動用操作レバー
48 回転機構ユニット
50 操作部材(手動操作用)
52 電動駆動部
54 操作部
56 操作部材(電動操作用)
58 オーバーフロー管
60 回転軸
62 固定部材
64 本体部
66 キャップ部
68 支持部
68a 雄ねじ部
68b 雌ネジ部
70 補給水誘導部
72 接続部