(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】放射線画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 300S
(21)【出願番号】P 2018067001
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】太田 生馬
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195624(JP,A)
【文献】特開2014-168203(JP,A)
【文献】特開2017-228863(JP,A)
【文献】特開2016-061739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0131785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G01T 1/00 - 7/12
H04N 5/30 - 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生装置から照射される放射線を受光し、前記放射線に応じた信号を出力する放射線検出部と、
前記信号を充電および放電する充放電部と、
前記充放電部
で充電された前記信号に基づいて、前記放射線の照射開始を判定する照射開始判定部と、
前記充放電部で充電された前記信号に影響を与える外乱ノイズを検出するノイズ検出部と、
検出された前記外乱ノイズに基づいて
、前記充放電部の充放電周期を変更する変更部と、
を有する放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記ノイズ検出部は、前記充放電部
で充電された前記信号から前記外乱ノイズを検出する、
請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記外乱ノイズの大きさが閾値を超えた場合、前記充放電周期を変更する、
請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記照射開始判定部は、前記変更部が前記充放電周期を変更
する間、前記放射線の照射開始を判定しない、
請求項3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
変更された前記充放電周期ごとに
、前記充放電部で充電された前記信号から分離抽出された信号を前記外乱ノイズ
として記憶する記憶部、をさらに備え、
前記変更部は、前記記憶部に記憶された前記充放電周期ごとにおける前記外乱ノイズに基づいて、前記充放電周期を変更する、
請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記ノイズ検出部は、
前記外乱ノイズに応じたノイズ信号を出力するセンサと、
前記ノイズ信号を充電および放電するノイズ充放電部と、
前記ノイズ充放電部のノイズ充放電周期を変更する周期変更部と、
変更された前記ノイズ充放電周期ごとにおける前記ノイズ信号を記憶する記憶部と、を備え、
前記周期変更部は、前記記憶部に記憶された前記ノイズ充放電周期ごとにおける前記ノイズ信号に基づいて、前記充放電周期を変更する、
請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記周期変更部は、前記記憶部に記憶された前記ノイズ充放電周期ごとにおける前記ノイズ信号の発生頻度を算出し、発生頻度の最も小さい前記ノイズ充放電周期に、前記充放電周期を変更する、
請求項6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記放射線検出部に蓄積される蓄積電荷をリセットするリセット部、をさらに有し、
前記リセット部は、前記蓄積電荷をリセットするリセット周期を前記充放電周期に合わせる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の放射線画像撮影装置が開発され、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれるものがある。このタイプの放射線画像撮影装置は、従来、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型(固定型ともいう)として構成されていたが、近年、放射線検出素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型(カセッテ型ともいう)も開発されている。
【0003】
また、近年、放射線画像撮影装置には、放射線発生装置との間でインターフェースが構築されなくても、放射線が照射されたことを自動検出する機能(以下、放射線自動検出機能:AED:Auto Exposure Detection)を備えたものがある。
【0004】
放射線画像撮影装置が使用される環境では、様々な医療機器が使用されている場合がある。そのため、放射線画像撮影装置は、AED動作中に放射線が照射されていないにも関わらず、医療機器から発せられる電磁波ノイズを検出して放射線が照射されたと誤検出することがある。従来、外来ノイズの影響が及ぶノイズ環境下においても、放射線の照射開始の誤検出を防止することができる放射線画像撮影装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、ノイズのレベルのばらつきに基づいて、放射線の照射開始の検出感度の閾値を変更する。そのため、特許文献1では、例えば、放射線の照射開始の検出感度を上げた場合、放射線が照射されていないにも関わらず、放射線の照射開始を検出する可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、放射線の照射開始の検出感度を変更せず、適切に放射線の照射開始を検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線画像撮影装置は、
放射線発生装置から照射される放射線を受光し、前記放射線に応じた信号を出力する放射線検出部と、
前記信号を充電および放電する充放電部と、
前記充放電部で充電された前記信号に基づいて、前記放射線の照射開始を判定する照射開始判定部と、
前記充放電部で充電された前記信号に影響を与える外乱ノイズを検出するノイズ検出部と、
検出された前記外乱ノイズに基づいて、前記充放電部の充放電周期を変更する変更部と、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線の照射開始の検出感度を変更せず、放射線の照射開始を適切に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係るX線画像撮影システムの一例を示した図である。
【
図2】X線画像撮影システムの動作例を説明する図である。
【
図3】TFTセンサのリセット動作を説明する図である。
【
図4】ゲート駆動周期とサンプリング周期との関係を説明する図である。
【
図5】X線画像撮影装置の回路ブロック例を示した図である。
【
図6】X線検出回路の外乱ノイズの影響を説明する図である。
【
図7】外乱ノイズの影響を抑制する原理を説明する図である。
【
図8】サンプリング周期変更部の動作例を説明する図のその1である。
【
図9】サンプリング周期変更部の動作例を説明する図のその2である。
【
図10】積分器の充電期間とリセット期間とを説明する図である。
【
図11】X線画像撮影装置の動作例を示したフローチャートである。
【
図12】第2の実施の形態に係るX線画像撮影装置の回路ブロック例を示した図である。
【
図13】記憶装置に記憶される電磁波センサの外乱ノイズ信号の例を説明する図である。
【
図14】X線検出回路の積分器のサンプリング周期の選択を説明する図である。
【
図15】サンプリング周期変更部の動作例を示したフローチャートである。
【
図16】X線画像撮影装置の動作例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。以下では、放射線画像撮影装置をX線画像撮影装置に適用した例について説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るX線画像撮影システムの一例を示した図である。
図1に示すように、X線画像撮影システムは、X線画像撮影装置1と、X線発生装置2と、回診車3と、制御装置4と、ディスプレイ5と、を有している。また、
図1には、X線画像撮影システムの他に、ベッド6と、患者7と、が示してある。
【0013】
X線画像撮影装置1は、例えば、FPDである。X線画像撮影装置1は、例えば、2次元のTFT(Thin Film Transistor)センサを備え、X線発生装置2から照射されるX線を2次元で捉える。TFTセンサ(放射線検出部)で捉えられたX線は、TFTセンサから、電気信号(画像信号)に変換され、出力される。X線画像撮影装置1は、TFTセンサから出力された電気信号を、例えば、無線または有線によって、回診車3の制御装置4に送信する。
【0014】
X線発生装置2は、回診車3に搭載される制御装置4の制御に応じて、X線を出力する。X線発生装置2は、例えば、制御装置4から指示される線量のX線を、制御装置4から指示される時間、放射する。
【0015】
回診車3は、X線発生装置2、制御装置4、およびディスプレイ5を搭載している。回診車3は、車輪を有し、例えば、X線画像撮影装置1とともに病室に運ばれて、患者7をX線撮影することができる。
【0016】
制御装置4は、X線画像撮影システムの全体を制御する。例えば、制御装置4は、無線または有線によって、X線画像撮影装置1、X線発生装置2、およびディスプレイ5と通信し、これらを制御する。制御装置4は、X線画像撮影装置1から送信される画像信号に基づいてX線画像を生成し、生成したX線画像をディスプレイ5に表示する。
【0017】
ディスプレイ5は、例えば、タッチパネル式のディスプレイである。ディスプレイ5は、例えば、制御装置4の制御によって、X線画像撮影のための画面を表示する。また、ディスプレイ5は、例えば、放射線技師等の操作者の操作を受け付け、受け付けた操作に対応する信号(情報)を、制御装置4に出力する。
【0018】
ベッド6は、X線撮影を受ける患者7が横たわるベッドである。X線画像撮影装置1は、例えば、ベッド6と患者7との間に挿入される。
【0019】
図1では、回診車3を用いたX線画像撮影システムの例を示したが、これに限られない。X線画像撮影システムは、例えば、X線撮影室に適用されてもよい。例えば、X線撮影室の診察台に、X線画像撮影装置1を取り付けてもよい。
【0020】
図2は、X線画像撮影システムの動作例を説明する図である。制御装置4は、例えば、ディスプレイ5にスタンバイボタンを表示する。制御装置4は、ディスプレイ5に表示されたスタンバイボタンが、操作者によって押下されると、X線画像撮影装置1を待機状態に遷移させる。
【0021】
X線画像撮影装置1は、制御装置4から待機状態の指示があると、リセット動作と、X線の照射開始の検出動作とを行う。例えば、X線画像撮影装置1のTFTセンサは、X線発生装置2からX線が照射されていなくても、微弱な暗電流が流れ、電荷が蓄積される。X線画像撮影装置1は、制御装置4から待機状態の指示があると、暗電流による電荷の蓄積を、所定周期でリセット(放電)する。また、X線画像撮影装置1は、AEDによる、X線照射開始を検出するため、TFTセンサから出力される信号のサンプリング(TFTセンサから出力される信号の周期的な読み取り)を開始する。
【0022】
制御装置4は、例えば、X線の撮影ボタンをディスプレイ5に表示する。制御装置4は、ディスプレイ5に表示された撮影ボタンが、操作者によって押下されると、X線を照射するようにX線発生装置2を制御する。
【0023】
X線発生装置2は、制御装置4からX線照射の指示があると、X線を照射する。X線が照射されると、X線画像撮影装置1のTFTセンサから出力される信号は、振幅が大きくなる。X線画像撮影装置1は、TFTセンサから出力される信号の振幅が所定値を超えると、X線発生装置2からX線が照射されたと判定し、リセット動作を停止する。
【0024】
これにより、X線画像撮影装置1のTFTセンサには、X線照射に応じた電荷が蓄積される。つまり、X線画像撮影装置1は、制御装置4から指示等を受信することなく、X線発生装置2からX線が照射されたことを自律的に判定し、X線撮影を行う。
【0025】
X線照射(X線撮影)が終わると、X線画像撮影装置1は、待機状態の前の状態(リセット動作を行わず、また、信号のサンプリング動作を行わない状態)に戻ってもよい。また、X線撮影を連続して行う場合には、X線画像撮影装置1は、X線撮影の終了後、再び待機状態に戻ってもよい。
【0026】
図3は、TFTセンサのリセット動作を説明する図である。
図2で説明したように、X線画像撮影装置1のTFTセンサは、待機状態では、電荷のリセットが周期的に行われる。X線画像撮影装置1のリセット回路(図示せず)は、行方向に延びるゲート配線を介して、行単位でTFTセンサのTFTをオン・オフする。
【0027】
例えば、
図3に示すG1,G2,…は、TFTの行方向に伸びるゲート配線を示している。TFTセンサは、リセット回路により、G1,G2,…ごとにオン・オフされ、電荷のリセットが行われる。
【0028】
ゲート配線の行ごとにおけるTFTのオン・オフ周期をゲート駆動周期またはゲート駆動周波数と呼ぶ。ゲート駆動周期と、AEDでの信号の読み取り周期(以下、サンプリング周期またはサンプリング周波数と呼ぶ)は、一般的に、次の式(1)に示される関係を有する。なお、式(1)のnは、正の整数(1,2,3,…)である。
【0029】
サンプリング周期=(1/n)×ゲート駆動周期 …(1)
【0030】
図4は、ゲート駆動周期とサンプリング周期との関係を説明する図である。
図4に示すG1,G2,…は、TFTの行を示している。TFTの各行は、待機状態では、ゲート駆動周期T
Gでリセットされる。
【0031】
図2で説明したように、X線画像撮影装置1は、待機状態では、X線発生装置2からX線が照射されたことを検出するため(X線の照射開始を検出するため)、TFTセンサから出力される信号の読み取りを周期的に行っている。
図4に示す矢印A1は、TFTセンサから出力される信号のサンプリング周期を示している。
【0032】
サンプリング周期とゲート駆動周期は、上記の式(1)に示す関係を有する。
図4の矢印A1は、式(1)の「n」が、「n=1」の場合を示している。つまり、
図4の矢印A1は、「サンプリング周期=ゲート駆動周期」の例を示している。
【0033】
図4の矢印A2は、上記の式(1)の「n」が、「n=2」の場合を示している。つまり、
図4の矢印A2は、「サンプリング周期=(1/2)×ゲート駆動周期」の例を示している。
【0034】
図5は、X線画像撮影装置1の回路ブロック例を示した図である。
図5に示すように、X線画像撮影装置1は、TFTセンサ11と、積分器(充放電部)12と、LPF(Low Pass Filter)13と、A/D(Analog/Digital)変換器14,17と、照射開始判定部15と、BPF(Band Pass Filter)16と、サンプリング周期変更部(変更部)18と、を有している。
【0035】
TFTセンサ11は、2次元に配列されたTFTを有している。TFTセンサ11は、X線発生装置2から照射されるX線を受光し、X線に応じた信号を出力する。
【0036】
積分器12の入力は、TFTセンサ11が備えるバイアス線と接続されている。バイアス線は、TFTセンサ11が備えるフォトダイオードにバイアス電圧を供給する線である。フォトダイオードにX線が照射されると、バイアス線には電流が流れる。従って、X線画像撮影装置1は、バイアス線を流れる電流をモニタすることにより、X線発生装置2からX線が照射されたか判定できる。なお、X線画像撮影装置1は、バイアス線の電流をモニタする以外に、信号線またはゲート線の電流をモニタしてもよい。
【0037】
積分器12は、TFTセンサ11から出力される電流(バイアス線を流れる電流)を充放電する。積分器12は、スイッチSW1と、コンデンサC1と、オペアンプOP1と、を有している。
【0038】
TFTセンサ11のバイアス線を流れる電流の電荷は、スイッチSW1が開いているとき、コンデンサC1に蓄積(充電)される。コンデンサC1に充電された電荷は、スイッチSW1が閉じると放電される。スイッチSW1は、サンプリング周期変更部18によって、オン・オフが制御される。スイッチSW1のオン・オフの周期は、TFTセンサ11の信号の読み取り周期(サンプリング周期またはサンプリング周波数)となる。
【0039】
LPF13には、積分器12で充電された電荷の電圧が入力される。つまり、LPF13には、積分器12で読み取られたTFTセンサ11の信号が入力される。LPF13は、入力された信号の低域周波数成分を通過させる。LPF13の遮断周波数は、例えば、数十Hzから数kHzである。
【0040】
A/D変換器14は、LPF13から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器14のサンプリング周期は、例えば、LPF13の遮断周波数の2倍の周波数である。
【0041】
照射開始判定部15には、A/D変換器14から出力されるデジタル信号が入力される。つまり、照射開始判定部15には、LPF13を通過したTFTセンサ11から出力された信号(デジタル値)が入力される。
【0042】
照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力されるデジタル信号に基づいて、X線発生装置2からX線が照射されたか否かを判定する。例えば、照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力されるデジタル信号の値(絶対値)が所定の閾値を超えた場合、X線発生装置2からX線が照射されたと判定する。照射開始判定部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成されてもよい。
【0043】
BPF16には、積分器12で充電された電荷の電圧が入力される。つまり、BPF16には、積分器12で読み取られたTFTセンサ11の信号が入力される。BPF16は、入力された信号の、所定帯域幅の周波数成分を通過させる。BPF16の低域側遮断周波数は、例えば、数kHzであり、高域側遮断周波数は、例えば、数MHzである。
【0044】
A/D変換器17は、BPF16から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器17のサンプリング周期は、例えば、BPF16の高域側遮断周波数の2倍の周波数である。
【0045】
サンプリング周期変更部18には、A/D変換器17から出力されるデジタル信号が入力される。つまり、サンプリング周期変更部18には、BPF16を通過したTFTセンサ11から出力された信号(デジタル値)が入力される。
【0046】
サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力されるデジタル信号に基づいて、積分器12のスイッチSW1のオン・オフ周期を変更する。例えば、サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力されるデジタル信号の値(絶対値)が所定の閾値を超えた場合、積分器12のスイッチSW1のオン・オフ周期を変更する。以下で説明するが、A/D変換器17から出力されるデジタル信号は、外乱ノイズの指標と言える。つまり、サンプリング周期変更部18は、外乱ノイズに基づいて、積分器12のスイッチSW1のオン・オフ周期を変更する。サンプリング周期変更部18は、例えば、CPUによって構成されてもよい。
【0047】
なお、TFTセンサ11の電荷をリセットするリセット回路は、リセット周期をサンプリング周期変更部18が変更したサンプリング周期に合わせる。
【0048】
以下では、TFTセンサ11、積分器12、LPF13、A/D変換器14、および照射開始判定部15を含む回路を、X線検出回路と呼ぶことがある。また、TFTセンサ11、積分器12、BPF16、A/D変換器17、およびサンプリング周期変更部18を、ノイズ検出回路と呼ぶことがある。
【0049】
TFTセンサ11に、サンプリング周波数の倍数の外乱ノイズが入力されると、X線検出回路のA/D変換器14の出力は、あたかも直流レベルの外乱ノイズが印可されたように見える(エイリアシングの影響)。従って、X線検出回路は、サンプリング周波数の倍数において、ノイズ影響を受けやすくなる。
【0050】
なお、
図5の積分器12は、スイッチSW1を放電用の固定抵抗とし、トランスインピーダンスアンプとして使用してもよい。この場合、サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力されるデジタル信号に基づいて、A/D変換器14のサンプリング周期を変更し、TFTセンサ11のゲート駆動周期を変更する。積分器12をトランスインピーダンスアンプとすることにより、固定抵抗が常時放電の役割を果たすため、スイッチSW1の制御が不要となり、回路構成が簡便になるメリットがある。なお、TFTセンサ11のゲート駆動周期とA/D変換器14のサンプリング周期は必ずしも同期する必要はないが、同期させる場合は、(ゲート駆動周期)=N×(サンプリング周期)の関係になるように制御するのが望ましい。
【0051】
図6は、X線検出回路の外乱ノイズの影響を説明する図である。
図6の横軸は、外乱ノイズの周波数を示している。縦軸は、X線検出回路の外乱ノイズの影響の受けやすさを示している。縦軸において、値が小さくなるほど、X線検出回路は、外乱ノイズの影響を受けにくいことを示している。
図6に示す波形W1は、サンプリング周期が200μsの場合の、X線検出回路の外乱ノイズに対する影響を示している。波形W2は、サンプリング周期が250μsの場合の、X線検出回路の外乱ノイズに対する影響を示している。
【0052】
波形W1,W2は、サンプリング周波数の正の整数倍において、山を有している。つまり、X線検出回路は、サンプリング周波数の正の整数倍の周波数の外乱ノイズにおいて、影響を受けやすい。従って、X線検出回路は、周囲にサンプリング周波数の正の整数倍の周波数の外乱ノイズを発する電子機器等があると、誤動作を起こす可能性がある。例えば、X線検出回路は、X線発生装置2がX線を照射していないにも関わらず、X線照射を開始したと誤判定する可能性がある。
【0053】
X線検出回路は、波形W1,W2に示すように、サンプリング周期が変わると、外乱ノイズ影響を受ける周波数が変わる。例えば、
図6の矢印A11に示す周波数の外乱ノイズ(10kHz)が発生したとする。この場合、X線検出回路は、サンプリング周期が200μs(波形W1)の場合、外乱ノイズの影響を受けやすいが、サンプリング周期が250μs(波形W2)の場合、外乱ノイズの影響を受けにくいことが分かる。
【0054】
つまり、X線検出回路は、サンプリング周波数を変更することにより、外乱ノイズの影響を抑制できる。例えば、X線検出回路は、待機状態において、200μsのサンプリング周期で信号を読み取っていたとする。そして、
図6の矢印A11に示す周波数の外乱ノイズが発生したとする。この場合、X線検出回路は、サンプリング周期を、200μsから250μsに変更することにより、外乱ノイズの影響を抑制できる。
【0055】
なお、X線検出回路のSN比を向上させるために、X線検出回路の出力信号に対して積分処理や移動平均等の処理を施すと、前述の山の大きさは大きくなる。つまり、X検出回路は、外乱ノイズの影響を受けやすくなる。
【0056】
図7は、外乱ノイズの影響を抑制する原理を説明する図である。
図7に示す矢印A21は、ゲート駆動周期を示している。TFTセンサ11は、待機状態において、
図7に示す矢印A21の周期で、各ゲートの暗電流による電荷の蓄積をリセットする。
【0057】
図7に示す矢印A22は、X線検出回路のサンプリング周期を示している。矢印A22に示すサンプリング周期は、ゲート駆動周期と同じになっている。
【0058】
図7に示す波形W11は、外乱ノイズを示している。外乱ノイズの周波数は、矢印A22に示すサンプリング周波数の正の整数倍(2倍)となっている。TFTセンサ11は、波形W11に示す外乱ノイズを拾い、積分器12から出力される信号には、外乱ノイズが含まれる。
【0059】
図6で説明したように、外乱ノイズの周波数が、サンプリング周波数の正の整数倍のとき、X線検出回路は、外乱ノイズの影響を受けやすい。例えば、積分器12は、矢印A22に示すサンプリング周期で、TFTセンサ11から出力される信号を読み取ると、外乱ノイズの山の部分の信号を読み取ることになる。例えば、波形W1の黒丸部分で信号を読み取ることになる。このため、照射開始判定部15に入力される信号は、例えば、所定の閾値を超え、照射開始判定部15は、X線発生装置2からX線が照射されたと誤判定する。
【0060】
しかし、
図5に示すX線画像撮影装置1は、積分器12から出力される信号を、サンプリング周期変更部18でモニタし、サンプリング周期を変更する。例えば、サンプリング周期変更部18は、積分器12から出力される信号(A/D変換器17から出力される信号の絶対値)が所定の閾値を超えた場合、サンプリング周期を変更する。
【0061】
図7に示す矢印A23は、X線画像撮影装置1の変更されたサンプリング周期を示している。積分器12は、矢印A23に示すサンプリング周期に変更されると、例えば、波形W1の三角部分で信号を読み取ることになる。積分器12は、波形W1に示す外乱ノイズを、黒丸で示すピーク値ではなく、三角で示すピーク値より小さい値で読み取る。これにより、X線検出回路は、外乱ノイズによる誤判定の影響を抑制できる。
【0062】
外乱ノイズは、例えば、X線画像撮影システムの周辺で使用される電子機器から発生される。外乱ノイズの周波数は、例えば、数kHzから数MHzまで多岐にわたる。一方、X線照射に基づく信号の周波数は、数kHz以下である。
【0063】
従って、
図5に示した、ノイズ検出回路のBPF16の通過帯域は、X線検出回路のLPF13の通過帯域より高くなっている。また、ノイズ検出回路のノイズA/D変換器17のサンプリング周波数は、X線検出回路のA/D変換器14のサンプリング周波数より高くなっている。
【0064】
なお、
図5では、LPF13およびBPF16はアナログ回路で形成する例を示したが、積分器12の出力信号を高速A/D変換器でデジタル信号に変換した後に、X線検出回路用LPFとノイズ検出回路用BPFに分けて処理してもよい。この場合、高速A/D変換器の前段には、アンチエイリアシング用のアナログLPFを設けることが望ましい。
【0065】
図8は、サンプリング周期変更部18の動作例を説明する図のその1である。
図8の波形W21は、サンプリング周期変更部18に入力される信号波形を示している。言い換えれば、波形W21は、A/D変換器17から出力される信号波形を示している。
【0066】
サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が所定の閾値を超えたか否かを判定する。サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が所定の閾値を超えた場合、積分器12のサンプリング周波数を変更する。例えば、
図8に示す点線は、所定の閾値を示している。サンプリング周期変更部18は、波形W21が所定の閾値を超えた場合、積分器12のサンプリング周波数を変更する。
【0067】
図9は、サンプリング周期変更部18の動作例を説明する図のその2である。
図9に示す波形W31は、サンプリング周波数を変更したことによって変化した、サンプリング周期変更部18に入力される信号波形を示している。点線の波形W32は、
図8に示した波形W21を示している。
【0068】
サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が所定の閾値を超えなくなるまで、サンプリング周波数を変更する。例えば、サンプリング周期変更部18は、閾値を超えていた波形W32が、波形W31に示すように、所定の閾値を超えなくなるまで、サンプリング周波数を変更する。つまり、サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が所定の閾値を超えなくなると、サンプリング周波数の変更を停止し、固定する。なお、サンプリング周期変更部18は、絶対値を使用する以外に、微分や高次微分、積分、移動平均等の処理を行ったデータに対して閾値を設け、サンプリング周波数の変更を判定してもよい。高次微分波形を用いることで、検出したい外乱ノイズ成分が、回路等で発生するDC成分やトレンド成分と分離できるメリットがある。積分値や移動平均値を用いると、検出したい外乱ノイズ成分と回路等で発生するランダムノイズの影響を抑えることができる。
【0069】
サンプリング周期変更部18は、一定の周波数幅でサンプリング周波数を変更してもよい。例えば、サンプリング周期変更部18は、一定の周波数幅でサンプリング周波数を小さくしてもよい。または、サンプリング周期変更部18は、一定の周波数幅でサンプリング周波数を大きくしてもよい。
【0070】
サンプリング周期変更部18は、サンプリング周波数の変更を開始する閾値と、サンプリング周波数の変更を停止する閾値とを、異なる値としてもよい。例えば、サンプリング周波数の変更を開始する閾値を第1の閾値とする。サンプリング周波数の変更を停止する閾値を第2の閾値とする。第2の閾値は、第1の閾値より小さいとする。この場合、サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が第1の閾値を超えたとき、サンプリング周波数を変更し、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が第2の閾値を下回ったとき、サンプリング周波数の変更を停止してもよい。
【0071】
照射開始判定部15は、サンプリング周期変更部18がサンプリング周波数を変更している間、照射開始判定を行わない。サンプリング周期変更部18がサンプリング周波数を変更している間、外乱ノイズの影響が大きいため、照射開始判定部15は、外乱ノイズによってX線の照射開始を判定しないよう、照射開始判定を行わない。
【0072】
サンプリング周期の1周期には、電荷を充電する充電期間(積分期間)と、電荷を放電するリセット期間とがある。サンプリング周期変更部18は、サンプリング周期を短くなるように変更する場合、リセット期間を短くする。
【0073】
図10は、積分器12の充電期間とリセット期間とを説明する図である。
図10に示すTs1は、
図5に示した積分器12の充放電周期を示している。すなわち、Ts1は、TFTセンサ11から出力される信号のサンプリング周期を示している。
【0074】
図10に示すTc1は、
図5に示した積分器12の、コンデンサC1の充電期間(積分期間)を示している。すなわち、Tc1は、スイッチSW1をオフしている期間を示している。
【0075】
図10に示すTr1は、
図5に示した積分器12の、コンデンサC1のリセット期間を示している。すなわち、Tr1は、スイッチSW1をオンしている期間を示している。
【0076】
上記したように、サンプリング周期変更部18は、外乱ノイズに応じて、サンプリング周期を変更する。例えば、サンプリング周期変更部18は、
図10に示すように、サンプリング周期をTs1からTs2に変更する。
図10の例では、「Ts2<Ts1」となっている。
【0077】
サンプリング周期変更部18は、サンプリング周期を変更するとき、充電期間を変更しないで、リセット期間を変更する。例えば、サンプリング周期変更部18は、
図10に示すように、リセット期間をTr1からTr2(Tr2<Tr1)に変更する。充電期間Tc2は、変更されていない(Tc2=Tc1)。
【0078】
積分器12は、コンデンサC1の充電とリセットとを繰り返す。充電時間が長い程、X線検出回路のX線の検出感度が向上する。そこで、サンプリング周期変更部18は、サンプリング周波数を変更するとき、上記したように、充電期間を変更するのではなく、リセット期間を変更する。これにより、X線画像撮影装置1は、X線の検出感度を維持できる。
【0079】
なお、積分器12のリセット期間を短くすることは、TFTセンサ11のリセット期間(暗電流の放電時間)を短くすることに相当する。従って、積分器12のリセット期間を短くしても、TFTセンサ11の暗電流を十分放電できるようなリセット期間を、設計の段階で確保する。
【0080】
図11は、X線画像撮影装置1の動作例を示したフローチャートである。X線画像撮影装置1は、例えば、ディスプレイ5にて、スタンバイボタンが押下されたときに
図11に示すフローチャートを実行する。X線画像撮影装置1は、
図11に示すフローチャートを、X線検出回路がX線の照射開始を判定するまで、所定の周期で繰り返し実行する。
【0081】
なお、スタンバイボタンが押下されたとき、X線画像撮影装置1のA/D変換器14,17は、入力されるアナログ信号を、所定のサンプリング周期でデジタル変換する。また、積分器12は、初期値のサンプリング周波数でコンデンサC1の充放電を行う。以下では、サンプリング周波数の変更を開始する閾値と、サンプリング周波数の変更を停止する閾値とが異なる場合について説明する。
【0082】
サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が、第1の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、サンプリング周期変更部18は、X線画像撮影装置1の周辺で外乱ノイズが発生したか否かを判定する。サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が、第1の閾値を超えていないと判定した場合(S1の「No」)、処理をステップS4に移行する。
【0083】
一方、サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が、第1の閾値を超えていると判定した場合(S1の「Yes」)、積分器12のサンプリング周波数を変更する(ステップS2)。例えば、サンプリング周期変更部18は、サンプリング周波数を所定値大きくする。
【0084】
サンプリング周期変更部18は、サンプリング周波数を変更した後、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値<第1の閾値)を下回ったか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、サンプリング周期変更部18は、サンプリング周波数を変更したことによって、X線画像撮影装置1の外乱ノイズによる影響が低減されたか否かを判定する。サンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が、第2の閾値を下回っていないと判定した場合(S3の「No」)、処理をステップS2に移行する。すなわち、サンプリング周期変更部18は、さらにサンプリング周波数を変更する。
【0085】
一方、サンプリング周期変更部18が、A/D変換器17から出力される信号の絶対値が、第2の閾値を下回ったと判定した場合(S3の「Yes」)、照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力される信号の絶対値が、所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS4)。すなわち、照射開始判定部15は、外乱ノイズの影響が抑制されている状態で、X線発生装置2のX線の照射開始を判定する。照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力される信号の絶対値が、所定の閾値を超えたと判定した場合(S4の「Yes」)、X線発生装置2のX線の照射開始を判定する(ステップS5)。
【0086】
一方、照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力される信号の絶対値が、所定の閾値を超えていないと判定した場合(S4の「No」)、X線発生装置2のX線の照射開始を判定せず、当該フローチャートの処理を終了する。
【0087】
なお、TFTセンサ11は、ディスプレイ5にて、スタンバイボタンが押下されたとき、暗電流による電荷のリセット動作を開始する。照射開始判定部15が、X線発生装置2のX線の照射開始を判定した場合、TFTセンサ11は、リセット動作を停止する。すなわち、TFTセンサ11は、X線の撮影状態に入る。
【0088】
以上説明したように、X線画像撮影装置1は、X線発生装置2から照射されるX線を受光し、X線に応じた信号を出力するTFTセンサ11と、TFTセンサ11の信号を充電および放電する積分器12と、積分器12で充電された信号に基づいて、X線発生装置2のX線の照射開始を判定する照射開始判定部15と、外乱ノイズを検出するノイズ検出回路と、外乱ノイズに基づいて、積分器12のサンプリング周期を変更するサンプリング周期変更部18と、を有する。
【0089】
これにより、X線画像撮影装置1は、適切にX線の照射開始を検出できる。例えば、X線画像撮影装置1は、X線の照射開始の検出感度を変更せず、積分器12のサンプリング周期を変更し、外乱ノイズの当該装置に対する影響を抑制するので、X線の照射開始を適切に検出できる。
【0090】
なお、X線画像撮影装置1は、通過帯域が重ならない複数のBPFを備え、複数のBPFから1つのBPFを選択してもよい。例えば、X線画像撮影装置1は、周囲で使用される電子機器が発する外乱ノイズの周波数に応じて、BPFを選択してもよい。
【0091】
また、上記では、サンプリング周期変更部18は、一定の周波数幅でサンプリング周波数を変更するとしたが、ランダムに変更してもよい。
【0092】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、積分器12から出力される信号から外乱ノイズの有無を判定した。第2の実施の形態では、外乱ノイズを検出するセンサを備え、そのセンサから出力される信号から、外乱ノイズの有無を判定する。
【0093】
図12は、第2の実施の形態に係るX線画像撮影装置21の回路ブロック例を示した図である。
図12において、
図5と同じものには同じ符号が付してある。以下では、
図5と異なる部分について説明する。
【0094】
図12に示すように、X線画像撮影装置21は、電磁波センサ(センサ)31と、積分器(ノイズ充放電部)32と、BPF33と、A/D変換器34と、サンプリング周期変更部(周期変更部)35と、を有している。
【0095】
電磁波センサ31は、X線画像撮影装置21の周囲で発生する電磁波ノイズを検出する。電磁波ノイズは、例えば、X線画像撮影装置21の周囲で使用される電子機器から発生する。電磁波センサ31は、例えば、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、巨大磁気抵抗センサ、または磁気インピーダンス素子等である。
【0096】
積分器32は、電磁波センサ31から出力される信号を充放電する。積分器32は、スイッチSW11と、コンデンサC11と、オペアンプOP11と、を有している。積分器32は、積分器12と同様の構成を有し、その説明を省略する。
【0097】
BPF33には、積分器32で充電された電荷の電圧が入力される。つまり、BPF33には、積分器32で読み取られた電磁波センサ31の信号が入力される。BPF33は、入力された信号の、所定帯域幅の周波数成分を通過させる。BPF33の通過帯域周波数は、BPF16の通過帯域周波数と同じ(略同じも含む)である。
【0098】
A/D変換器34は、BPF33から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器34のサンプリング周期は、例えば、BPF33の高域側遮断周波数の2倍の周波数である。
【0099】
サンプリング周期変更部35には、A/D変換器34から出力されるデジタル信号が入力される。つまり、サンプリング周期変更部35には、BPF33を通過した電磁波センサ31から出力される信号(デジタル値)が入力される。サンプリング周期変更部35は、例えば、CPUによって構成されてもよい。
【0100】
サンプリング周期変更部35は、待機状態中に積分器32のサンプリング周期(サンプリング周波数)を変更する。サンプリング周期変更部35は、変更したサンプリング周期ごとの信号をメモリ等の記憶装置(図示せず)に記憶する。サンプリング周期変更部35は、記憶装置に記憶した信号に基づいて、次の待機状態における積分器12のサンプリング周波数を選択(判定)する。つまり、サンプリング周期変更部35は、過去のサンプリング周期に対する電磁波センサ31の外乱ノイズ信号から、積分器12のサンプリング周波数を選択する。
【0101】
以下では、TFTセンサ11、積分器12、LPF13、A/D変換器14、および照射開始判定部15を含む回路を、X線検出回路と呼ぶことがある。電磁波センサ31、積分器32、BPF33、A/D変換器34、およびサンプリング周期変更部35を、ノイズ検出回路と呼ぶことがある。
【0102】
図13は、記憶装置に記憶される電磁波センサの外乱ノイズ信号の例を説明する図である。サンプリング周期変更部35は、待機状態中に積分器32のサンプリング周期を変更する。そして、サンプリング周期変更部35は、各サンプリング周期における電磁波センサ31の外乱ノイズ信号(デジタル値)を記憶する。
【0103】
例えば、サンプリング周期変更部35は、積分器32のサンプリング周期を、「200μs」、「205μs」、および「210μs」の3つで切り替える。サンプリング周期変更部35は、
図13に示すように、3つのサンプリング周期「200μs」、「205μs」、および「210μs」のそれぞれにおける外乱ノイズ信号を記憶装置に記憶(蓄積)する。サンプリング周期変更部35は、一定期間(例えば、数日分)の外乱ノイズ信号を、FIFO(First In First Out)で記憶してもよい。
【0104】
サンプリング周期変更部35は、記憶装置に記憶した過去の電磁波センサ31の信号から、X線検出回路の積分器12のサンプリング周期を選択する。
【0105】
図14は、X線検出回路の積分器12のサンプリング周期の選択を説明する図である。サンプリング周期変更部35は、記憶装置に記憶した外乱ノイズ信号の、発生頻度のヒストグラムを生成する。例えば、サンプリング周期変更部35は、
図14に示すように、サンプリング周期「200μs」、「205μs」、および「210μs」のそれぞれにおける外乱ノイズ信号の、ノイズ強度に対する発生頻度を算出する。
【0106】
サンプリング周期変更部35は、生成したヒストグラムに基づいて、サンプリング周期「200μs」、「205μs」、および「210μs」のうち、最もノイズ強度指標の低いサンプリング周波数を選択する。
【0107】
例えば、サンプリング周期変更部35は、各サンプリング周期において、ノイズ強度の大きい方から、10%のノイズ強度に対する頻度を抽出する。そして、サンプリング周期変更部35は、抽出した頻度を平均する。より具体的には、
図14のサンプリング周期210μsの場合、サンプリング周期変更部35は、ノイズ強度「20」の頻度と、ノイズ強度「19」の頻度とを抽出する。そして、サンプリング周期変更部35は、ノイズ強度「20」の頻度と、ノイズ強度「19」の頻度との平均値を算出する。
【0108】
サンプリング周期変更部35は、他のサンプリング周期「200μs」および「205μs」に対しても、同様にノイズ頻度の平均値を算出する。サンプリング周期変更部35は、ノイズ頻度の平均値の最も低いサンプリング周期を、積分器12のサンプリング周期として選択する。
【0109】
図15は、サンプリング周期変更部35の動作例を示したフローチャートである。サンプリング周期変更部35は、例えば、ディスプレイ5にて、スタンバイボタンが押下されたときに
図15に示すフローチャートを実行する。サンプリング周期変更部35は、
図15に示すフローチャートを、X線検出回路がX線の照射開始を検出するまで、所定の周期で繰り返し実行する。つまり、サンプリング周期変更部35は、待機状態中において、
図15に示すフローチャートの処理を一定周期で実行する。
【0110】
なお、スタンバイボタンが押下されたとき、A/D変換器34は、入力されるアナログ信号を、所定のサンプリング周期でデジタル変換する。また、積分器32は、初期値のサンプリング周波数でコンデンサC11の充放電を行う。
【0111】
サンプリング周期変更部35は、A/D変換器34から出力される信号を記憶装置に記憶する(ステップS11)。すなわち、サンプリング周期変更部35は、電磁波センサ31から出力される外乱ノイズ信号(デジタル値)を記憶装置に記憶する。
【0112】
サンプリング周期変更部35は、一定時間経過したか否かを判定する(ステップS12)。サンプリング周期変更部35は、一定時間経過していなければ(S12の「No」)、当該フローチャートの処理を終了する。
【0113】
一方、サンプリング周期変更部35は、一定時間経過していれば(S12の「Yes」)、積分器32のサンプリング周期を変更する(ステップS13)。例えば、サンプリング周期変更部35は、3つのサンプリング周期「200μs」、「205μs」、および「210μs」の中から、1つ選択(順番に選択)し、積分器32のサンプリング周期を変更する。これにより、記憶装置には、例えば、
図13で説明したように、各サンプリング周期における外乱ノイズ信号が記憶される。
【0114】
なお、ステップS12の一定時間は、例えば、想定される待機状態の時間より短くなるように設定する。また、一定時間は、1回の待機状態中に、複数のサンプリング周波数において、外乱ノイズがサンプリングされるように設定する。例えば、一定時間は、1回の待機状態中に、3つのサンプリング周期「200μs」、「205μs」、および「210μs」における外乱ノイズ信号が記憶されるように設定する。
【0115】
図16は、X線画像撮影装置21の動作例を示したフローチャートである。X線画像撮影装置21は、例えば、ディスプレイ5にて、スタンバイボタンが押下されたときに
図16に示すフローチャートを実行する。X線画像撮影装置21は、
図16に示すフローチャートを、X線検出回路がX線の照射開始を判定するまで、所定の周期で繰り返し実行する。なお、スタンバイボタンが押下されたとき、X線画像撮影装置21のA/D変換器14は、入力されるアナログ信号を、所定のサンプリング周期でデジタル変換する。
【0116】
サンプリング周期変更部35は、当該フローチャートの処理が、スタンバイボタンが押下された後、初めての実行であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0117】
サンプリング周期変更部35は、当該フローチャートの処理が、スタンバイボタンが押下された後、初めての実行であると判定した場合(S21の「Yes」)、記憶装置に記憶されている過去の外乱ノイズ信号に基づいて、積分器12のサンプリング周期を選択する(ステップS22)。例えば、サンプリング周期変更部35は、
図14で説明した統計処理に基づいて、積分器12のサンプリング周期を選択する。
【0118】
なお、記憶装置には、
図15で説明したフローチャートの処理により、過去の外乱ノイズ信号が記憶されている。また、ステップS22の処理は、ステップS21の処理を経由して実行されるため、積分器12のサンプリング周期は、1回選択された後は、X線撮影が行われるまで、変更されない。
【0119】
一方、サンプリング周期変更部35が、当該フローチャートの処理が、スタンバイボタンが押下された後、初めての実行でないと判定した場合(S21の「No」)、照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力される信号が、所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS23)。すなわち、照射開始判定部15は、X線発生装置2のX線の照射開始を判定する。照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力される信号の絶対値が、所定の閾値を超えたと判定した場合(S23の「Yes」)、X線発生装置2のX線の照射開始を判定する(ステップS24)。
【0120】
一方、照射開始判定部15は、A/D変換器14から出力される信号の絶対値が、所定の閾値を超えていないと判定した場合(S23の「No」)、X線発生装置2のX線の照射開始を判定せず、当該フローチャートの処理を終了する。
【0121】
以上説明したように、X線画像撮影装置21は、外乱ノイズ信号を出力する電磁波センサ31と、外乱ノイズ信号を充電および放電する積分器32と、積分器32の外乱ノイズサンプリング周期を変更するサンプリング周期変更部35と、変更された外乱ノイズサンプリング周期ごとにおける外乱ノイズ信号を記憶する記憶装置と、を備える。そして、サンプリング周期変更部35は、記憶装置に記憶された外乱ノイズサンプリング周期ごとにおける、外乱ノイズ信号に基づいて、積分器12のサンプリング周期を変更する。例えば、サンプリング周期変更部35は、記憶装置に記憶されている、変更された外乱ノイズサンプリング周期ごとにおける、外乱ノイズ信号の発生頻度を算出し、発生頻度の小さい外乱ノイズサンプリング周期に、積分器12のサンプリング周期を変更する。
【0122】
これにより、X線画像撮影装置21は、適切にX線の照射開始を検出できる。例えば、X線画像撮影装置21は、X線の照射開始の検出感度を変更せず、積分器12のサンプリング周期を変更し、外乱ノイズの当該装置に対する影響を抑制するので、X線の照射開始を適切に検出できる。
【0123】
なお、上記では、サンプリング周期変更部35は、記憶装置に記憶された外乱ノイズサンプリング周期ごとにおける、外乱ノイズ信号の発生頻度を算出したがこれに限られない。例えば、サンプリング周期変更部35は、補間処理によって、記憶装置に記憶された外乱ノイズサンプリング周期以外の周期における外乱ノイズ信号の発生頻度を算出してもよい。そして、サンプリング周期変更部35は、算出した発生頻度のうち、最も小さい発生頻度の外乱ノイズサンプリング周期に、積分器12のサンプリング周期を変更してもよい。
【0124】
また、上記では、X線画像撮影装置21に、外乱ノイズ信号を出力する電磁波センサ31を専用に設けたが、
図5に示した一つの積分器12の出力から外乱ノイズ信号を計測する構成においても、積分器12のサンプリング周期を変更した際の外乱ノイズデータを記憶装置に記憶することも可能である。例えば、
図5のサンプリング周期変更部18は、A/D変換器17から出力される信号を、サンプリング周期ごとに記憶装置に記憶する。そして、サンプリング周波数変更部18は、
図16に示すフローチャートと同様の処理を実行する。
【0125】
上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0126】
1,21 X線画像撮影装置
2 X線発生装置
3 回診車
4 制御装置
5 ディスプレイ
6 ベッド
7 患者
11 TFTセンサ
12,32 積分器
13 LPF
14,17,34 A/D変換器
15 照射開始判定部
16,33 BPF
18,35 サンプリング周期変更部
31 電磁波センサ
SW1,SW11 スイッチ
C1,C11 コンデンサ
OP1,OP11 オペアンプ