(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】電子写真画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220524BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220524BHJP
G03G 5/147 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G03G21/00 314
G03G21/00 318
G03G21/00 312
G03G15/00 651
G03G5/147 503
G03G5/147 502
(21)【出願番号】P 2018073044
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 真優子
(72)【発明者】
【氏名】崎村 友子
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022297(JP,A)
【文献】特開2017-107128(JP,A)
【文献】特開2009-102634(JP,A)
【文献】特開2005-070276(JP,A)
【文献】特開平07-072764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0151363(US,A1)
【文献】特開2004-233612(JP,A)
【文献】特開平06-348182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機感光体を使用し、少なくとも帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、
前記有機感光体が、導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置される感光層と、前記感光層上に配置される保護層と、を有し、
前記保護層が、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有し、
前記クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置され
、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とすることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【請求項2】
前記導電性微粒子が、その個数平均1次粒径が50~200nmの範囲内であり、かつ反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項3】
前記導電性微粒子が、芯材の表面に導電性金属酸化物を付着させた複合微粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項4】
前記複合微粒子における芯材が、硫酸バリウム、シリカ及び酸化アルミニウムの中から選択される化合物を含むことを特徴とす
る請求項
3に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項5】
前記保護層が、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子及び重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを重合した重合硬化物を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項6】
前記重合性基を有するパーフルオロポリエーテルが、重合性基の数が4以上である第1のパーフルオロポリエーテルと、重合性基の数が0~3の範囲内である第2のパーフルオロポリエーテルとを含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項7】
前記パーフルオロポリエーテルにおける重合性基が、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることを特徴とする請求項
5又は請求項
6に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項8】
前記トナー擦過部材が、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたブラシ回転体であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項9】
前記トナー擦過部材が、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたローラーであることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成方法に関し、より詳しくは、硬化型OCL感光体の使用に際し、長期にわたって高クリーニング性を維持することのできる電子写真画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を記録用紙に転写し、転写されたトナー像を加熱定着することで、記録用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
感光体ドラムとしては、その表面に無機フィラーとモノマーとからなる硬化型の保護層(OCL:Over Coat Layer)を備えた有機感光体(以下、硬化型OCL感光体ともいう。)で構成されたものが知られている。近年、硬化型OCL感光体においては、クリーニングブラシとクリーニングブレードとを組み合わせたクリーニングシステムが採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、上記のようなクリーニングシステムでは、耐久末期においてクリーニングブラシにトナーや紙粉等が固着し、汚染されたブラシが感光体表面を傷つけてしまうといった問題がある。
また、硬化型OCL感光体を採用することでクリーニング性能が向上し、滑剤メモリは改善するものの、滑剤塗布量が少量となってしまう末期状態では、外添剤すり抜けが起こり、滑剤塗布ブラシが汚染され、品質不良として像担持体の回転方向のスジ(FDスジ)が発生するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、硬化型OCL感光体の使用に際し、長期にわたって高クリーニング性を維持することのできる電子写真画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有する保護層を有する有機感光体を使用し、クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置され、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とすることにより、長期にわたって高クリーニング性を維持することのできる電子写真画像形成方法を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.有機感光体を使用し、少なくとも帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、
前記有機感光体が、導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置される感光層と、前記感光層上に配置される保護層と、を有し、
前記保護層が、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有し、
前記クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置され、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とすることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【0010】
2.前記導電性微粒子が、その個数平均1次粒径が50~200nmの範囲内であり、かつ反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されていることを特徴とする第1項に記載の電子写真画像形成方法。
【0011】
3.前記導電性微粒子が、芯材の表面に導電性金属酸化物を付着させた複合微粒子であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の電子写真画像形成方法。
【0012】
4.前記複合微粒子における芯材が、硫酸バリウム、シリカ及び酸化アルミニウムの中から選択される化合物を含むことを特徴とする第3項に記載の電子写真画像形成方法。
【0013】
5.前記保護層が、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子及び重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを重合した重合硬化物を含有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【0014】
6.前記重合性基を有するパーフルオロポリエーテルが、重合性基の数が4以上である第1のパーフルオロポリエーテルと、重合性基の数が0~3の範囲内である第2のパーフルオロポリエーテルとを含むことを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【0015】
7.前記パーフルオロポリエーテルにおける重合性基が、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることを特徴とする第5項又は第6項に記載の電子写真画像形成方法。
【0016】
8.前記トナー擦過部材が、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたブラシ回転体であることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【0017】
9.前記トナー擦過部材が、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたローラーであることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の電子写真画像形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、硬化型OCL感光体の使用に際し、長期にわたって高クリーニング性を維持することのできる電子写真画像形成方法を提供することができる。
【0019】
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
【0020】
本発明の電子写真画像形成方法は、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有する保護層を有する有機感光体を使用した電子写真画像形成方法であり、クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置され、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とすることを特徴とする。
【0021】
上述したように、クリーニングブラシのようなクリーニング補助手段を設けたクリーニングシステムでは、クリーニング性能を向上させることができるが、一方で継続して画出しを行っていくとクリーニングブラシにトナーや紙粉等が付着し汚染され、感光体表面を傷つけてしまう。ここでのクリーニングブラシは、当該クリーニングブラシで感光体上の転写残留トナーを掻き取るという狙いがある。
これに対し、本発明では、クリーニングブレードの上流側にトナー擦過部材を配置する。本発明に係るトナー擦過部材は、感光体上の転写残留トナーを擦過するが、そのトナー回収率は5%以下と少ないものである。このトナー擦過部材は、トナーを掻き取るという狙いではなく、擦過することでトナーの帯電量を下げる役割を担うものである。
【0022】
一方で、硬化型OCL感光体(特に、自己潤滑型OCL感光体)は、熱可塑性型OCL感光体と比較して、表面自由エネルギーが低いため、トナーとの付着力が低くなっている。硬化型OCL感光体では、部材と接触することで転写残留トナーがずれ、帯電量が低下しやすく、特に、パーフルオロポリエーテルが保護層に含有されている場合、著しく帯電量が低下する。
【0023】
すなわち、本発明の電子写真画像形成方法によれば、硬化型OCL感光体とトナー擦過部材とを組み合わせることにより、クリーニングブレードに達する転写残留トナーの静電的付着力をより低減し、クリーニング性能を向上させることができるものと考えている。
また、トナー擦過部材によるトナー回収率が低いため、トナー擦過部材そのものの汚染を防止し、初期状態を維持して持続的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る有機感光体を備える画像形成装置の一例を示す概略構成図
【
図4】本発明に係る有機感光体の一例を示す概略断面図
【
図5】本発明に係る複合微粒子を製造するための装置の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の電子写真画像形成方法は、有機感光体を使用し、少なくとも帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、有機感光体が、導電性支持体と、導電性支持体上に配置される感光層と、感光層上に配置される保護層と、を有し、保護層が、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有し、クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置され、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とすることを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0026】
本発明の実施態様としては、耐摩耗性向上及びトナーの低付着性を持続する観点から、導電性微粒子が、その個数平均1次粒径が50~200nmの範囲内であり、かつ反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されていることが好ましい。
【0027】
また、粒径の大きい導電性微粒子を製造しやすく、本発明の効果をより効果的に発現できる観点から、導電性微粒子が、芯材の表面に導電性金属酸化物を付着させた複合微粒子であることが好ましい。
【0028】
また、粒径と屈折率(透明性)とを確保する観点から、複合微粒子における芯材が、硫酸バリウム、シリカ及び酸化アルミニウムの中から選択される化合物を含むことが好ましい。
【0029】
また、クリーニング性向上の観点から、保護層が、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子及び重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを重合した重合硬化物を含有することが好ましい。
【0030】
また、クリーニング性及びクリーニングブレードの耐摩耗性向上の観点から、重合性基を有するパーフルオロポリエーテルが、重合性基の数が4以上である第1のパーフルオロポリエーテルと、重合性基の数が0~3の範囲内である第2のパーフルオロポリエーテルとを含むことが好ましい。
【0031】
また、少ない光量又は短い時間での硬化を可能とする観点から、パーフルオロポリエーテルにおける重合性基が、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましい。
【0032】
また、本発明の効果を効果的に発現する観点から、トナー擦過部材が、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたブラシ回転体、又は反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたローラーであることが好ましい。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
【0034】
《電子写真画像形成方法》
本発明の電子写真画像形成方法は、有機感光体(以下、感光体ともいう。)を使用し、少なくとも帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、有機感光体が、導電性支持体と、導電性支持体上に配置される感光層と、感光層上に配置される保護層と、を有し、保護層が、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有し、クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置され、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とすることを特徴とする。
【0035】
本発明の電子写真画像形成方法としては、具体的には、下記工程を有する電子写真画像形成方法が挙げられる。
【0036】
工程1(帯電工程):有機感光体上に帯電部にて帯電する工程
工程2(露光工程):露光部により有機感光体上に静電的に形成された静電潜像を形成する工程
工程3(現像工程):現像部によって静電潜像を現像することにより顕像化させてトナー画像を得る工程
工程4(転写工程):形成されたトナー画像を転写手段によって紙などの転写媒体上に転写する工程
工程5(定着工程):転写媒体上に転写されたトナー画像を接触加熱方式の定着処理によって転写媒体に定着する工程
工程6(クリーニング工程):有機感光体の表面をクリーニング部によってクリーニングする工程
【0037】
以下、本発明の電子写真画像形成方法に用いることのできる電子写真画像形成装置について説明する。
【0038】
《電子写真画像形成装置》
電子写真画像形成装置は、有機感光体、有機感光体表面を帯電する帯電手段、帯電手段により帯電された有機感光体表面に像露光を行い静電潜像を形成する露光手段、露光手段により形成された静電潜像を顕像化してトナー画像を形成する現像手段、現像手段により有機感光体表面に形成されたトナー画像を用紙等又は転写ベルト等の転写媒体上に転写する転写手段、有機感光体に当接して該有機感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段と、を備えて構成されている。
【0039】
図1に示す電子写真画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bk、無端ベルト状中間転写体ユニット7、給紙手段21、定着手段24等を備えている。電子写真画像形成装置100の装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0040】
イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、ドラム状の感光体1Yの周囲に感光体1Yの回転方向に沿って順次配置された、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写ローラー5Y及びクリーニング手段6Yを有する。
マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、ドラム状の感光体1Mの周囲に感光体1Mの回転方向に沿って順次配置された、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写ローラー5M及びクリーニング手段6Mを有する。
シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、ドラム状の感光体1Cの周囲に感光体1Cの回転方向に沿って順次配置された、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写ローラー5C及びクリーニング手段6Cを有する。
黒色画像を形成する画像形成ユニット10Bkは、ドラム状の感光体1Bkの周囲に感光体1Bkの回転方向に沿って順次配置された、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、1次転写ローラー5Bk及びクリーニング手段6Bkを有する。
感光体1Y、1M、1C、1Bkとしては、本発明に係る有機感光体を用いる。
【0041】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bk上に形成するトナー像の色が異なるのみで同様に構成される。したがって、画像形成ユニット10Yを例にとって詳細に説明し、画像形成ユニット10M、10C、10Bkの説明を省略する。
【0042】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写ローラー5Y及びクリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。また、本実施形態においては、画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y及びクリーニング手段6Yが一体化されて設けられている。
【0043】
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0044】
露光手段3Yは、帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段3Yとしては、例えば、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又はレーザー光学系が用いられる。
【0045】
現像手段4Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0046】
1次転写ローラー5Yは、感光体1Y上に形成されたトナー像を無端ベルト状の中間転写体70に転写する手段である。1次転写ローラー5Yは、中間転写体70と当接して配置されている。
【0047】
クリーニング手段6Yは、
図2に示すように、トナー擦過部材61、クリーニングブレード62、固形潤滑剤(滑剤)63、滑剤塗布ブラシ64及び均しブレード65、並びに各部材を収容する筐体66を備えて構成されている。
【0048】
トナー擦過部材61は、感光体1Yの回転方向における最上流側に、感光体1Yに当接するようにして設けられ、感光体1Yを擦過し、トナーの帯電量を低減する。このとき、トナー擦過部材61のトナー回収率は、5%以下とされている。
ここで、本発明におけるトナー回収率は、全ベタ255 2層(グリーン)で画出しをし(強制停止し)、この際、下式(1)で算出される値をトナー回収率と定義する。
【0049】
式(1):
トナー回収率
=(トナー擦過部材の質量増加量/擦過前の感光体上の転写残留トナーの質量)×100
【0050】
トナー擦過部材61は、感光体1Yの表面に接触して対向配置され、感光体1Yの回転方向に対して反対方向(カウンタ方向)に回転可能に構成されている。
【0051】
トナー擦過部材としては、例えば、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたブラシ回転体や、
図3に示すような反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されたローラーを用いることができる。ここで、反応性有機基とは、ブラシ回転体やローラー表面に存在するヒドロキシ基等の極性基に対し反応性を有する基のことであり、具体的には、加水分解性シリル基、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、エポキシ基等が挙げられる。
表面修飾剤としては、フッ素やシリコーンを含む表面修飾剤が挙げられる。表面修飾することで、トナー擦過部材は低付着力化され、トナーや紙粉等が固着されにくくなり、トナー擦過部材の汚染が起こりにくくなる。
【0052】
ブラシ回転体は、その表面に、表面修飾された繊維が複数植毛されて構成されている。繊維の材料としては、6-ナイロン、12-ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロンなどの合成樹脂が挙げられる。ここで、表面修飾された繊維とは、未処理の繊維に表面修飾剤による表面修飾が施されたものを意味する。
【0053】
ローラーとしては、低付着力となる樹脂で構成されたものを用いてもよい。この際、ローラー表面は、表面修飾剤によって表面修飾されていなくてもよい。樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0054】
トナー擦過部材61の感光体1Yの回転方向下流側には、クリーニングブレード62が設けられている。クリーニングブレード62は、ゴム等の弾性部材であり、感光体1Y上の残留トナーを掻き落とすとともに、残留トナー以外の紙粉等の付着物を除去する。
【0055】
クリーニングブレード62の感光体1Yの回転方向下流側には、感光体1Yに滑剤を塗布するための固形潤滑剤(滑剤)63及び滑剤塗布ブラシ64が設けられている。固形潤滑剤(滑剤)63及び滑剤塗布ブラシ64は、感光体1Yの軸方向に沿って複数設けられている。
滑剤塗布ブラシ64は、固形潤滑剤63と感光体1Yの両方に当接するように設けられ、感光体1Yの回転軸と平行な回転軸を有し、感光体1Yの回転方向に対して反対方向(カウンタ方向)に回転しながら、固形潤滑剤63から削り出した滑剤粒子を感光体1Yに供給する。その際、当接圧によって滑剤粒子を感光体1Y上に延展塗布する役割も担っている。
なお、滑剤塗布ブラシ64の回転方向を感光体1Yの回転方向に対して反対方向(カウンタ方向)としているが、同一方向(ウィズ方向)とすることも可能である。
【0056】
固形潤滑剤63の材料としては、感光体1Y表面に塗布可能で、その表面エネルギーを低下させてトナーと感光体1Yとの付着力を低減できる材料であれば特に制限されず、例えば、脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等が挙げられ、特に、脂肪酸金属塩が好ましい。
これらは、単独又は2種類以上を混合して用いることもできる。
上記材料を溶融して成形する、又は上記材料の粒子を圧縮成型することで、滑剤塗布ブラシ64で削り出すことが可能な形状に整え、固形潤滑剤63として使用する。
【0057】
滑剤塗布ブラシ64の更に下流側には、均しブレード65が設けられている。均しブレード65は、滑剤塗布ブラシ64によって感光体1Y上へ供給された固形潤滑剤63を更に感光体1Y上に延展塗布するとともに、過剰な滑剤粒子を排除する目的で設置される。
均しブレード65の材質としては、クリーニングブレード62と同様に、弾性体よりなる平板状のブレードが代表的である。
【0058】
筺体66は、上記したトナー擦過部材61、クリーニングブレード62、固形潤滑剤(滑剤)63、滑剤塗布ブラシ64及び均しブレード65等を収容する。筺体66の底部にはスクリュー(図示せず)が設けられている。スクリューは、所定の方向に回転可能に構成されており、上方から落下してきた残留トナーを回収する。スクリューは、回収した残留トナーを廃トナーボックス(図示せず)に収容する。
【0059】
なお、上記したようなトナー擦過部材を有するクリーニング手段は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkの少なくとも一つに備えられていればよい。
【0060】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラー71~74により巻回され、回動可能に支持された無端ベルト状の中間転写体70を有する。無端ベルト状中間転写体ユニット7には、中間転写体70上にトナーを除去するクリーニング手段6bが配置されている。
【0061】
また、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とにより筐体8が構成されている。筐体8は、装置本体Aから支持レール82L、82Rを介して引き出し可能に構成されている。
【0062】
定着手段24としては、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0063】
なお、上記した実施形態においては、電子写真画像形成装置100がカラーのレーザープリンターであるものとしたが、モノクロのレーザープリンター、コピー機、複合機等であってもよい。また、露光光源は、レーザー以外の光源、例えばLED光源等であってもよい。
【0064】
上記のように構成される電子写真画像形成装置100においては、次のようにして用紙P上に画像が形成される。
【0065】
まず、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を負に帯電させる。
【0066】
次いで、露光手段3Y、3M、3C、3Bkで、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。
【0067】
次いで、現像手段4Y、4M、4C、4Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面にトナーを付与して現像し、トナー像を形成する。
【0068】
次いで、1次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bk上にそれぞれ形成した各色のトナー像を、回動する中間転写体70上に逐次転写(1次転写)させて、中間転写体70上にカラー画像を形成する。
【0069】
その後、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面に残存したトナーを、クリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkで除去する。この際、トナー擦過部材61によるトナー回収率は、5%以下とされている。
【0070】
そして、次の画像形成プロセスに備えて、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより感光体1Y、1M、1C、1Bkを負に帯電させる。
【0071】
一方、給紙カセット20から給紙手段21により用紙Pを給紙し、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て2次転写部5bに搬送する。そして、二次転写部5bにより、用紙P上にカラー画像を転写(2次転写)する。
【0072】
このようにしてカラー画像が転写された用紙Pを、定着手段24で定着処理した後、排紙ローラー25で挟持して装置外に排紙し、排紙トレイ26上に載置する。また、用紙Pが中間転写体70から分離された後、クリーニング手段6bにより中間転写体70上の残存トナーを除去する。
以上のようにして、用紙P上に画像を形成することができる。
【0073】
《有機感光体》
本発明に係る有機感光体は、導電性支持体と、導電性支持体上に配置される感光層と、感光層上に配置される保護層と、を有し、保護層が重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有することを技術的特徴とする。
【0074】
図4に示すとおり、本発明に係る有機感光体1は、少なくとも、導電性支持体1a上に、感光層1c及び保護層1dが順次積層されて構成されている。
導電性支持体1aと感光層1cとの間には、中間層1bを有していてもよい。
感光層1cは、電荷発生層1e及び電荷輸送層1fから構成されている。
保護層1dには、重合性基を有する導電性微粒子1dAが含有されている。
【0075】
〈保護層〉
保護層は、感光層の上に配置され、感光体の表面を構成する当該感光層を保護するための層である。
保護層は、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有しているが、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子、及び重合性基を有するパーフルオロポリエーテル(以下、PFPEともいう。)を重合した重合硬化物を含有することが好ましい。すなわち、保護層は、重合性モノマーの重合による一体的な重合体で構成され、その内部にパーフルオロポリエーテル成分、導電性微粒子等が分散されている。パーフルオロポリエーテル成分及び導電性微粒子は、上記重合体と重合反応による共有結合によって結合している。
【0076】
これら重合性モノマー、パーフルオロポリエーテル及び導電性微粒子はそれぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
以下、保護層を構成する材料について詳細に説明する。
【0078】
(重合性モノマー)
本発明に係る重合性モノマーは、重合性基を有し、紫外線、可視光線、電子線等の活性線の照射により、又は加熱等のエネルギーの付加により、重合して、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となる化合物である。なお、重合性モノマーには、重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを含めないものとする。
【0079】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合反応を経て硬化するラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
【0080】
重合性モノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N-ビニルピロリドン系モノマー等が挙げられ、バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリレート等が挙げられる。
【0081】
重合性モノマーが有する重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。重合性基は、少ない光量又は短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH2=CHCO-)又はメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO-)であることが特に好ましい。
【0082】
重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、以下の化合物M1~M11が挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記の各式中、Rは、アクリロイル基を表し、R′は、メタクリロイル基を表す。
【0083】
【0084】
上記重合性モノマーは、公知の方法で合成することができ、また市販品としても入手することができる。
【0085】
重合性モノマーとしては、重合性基を3個以上有する化合物であることが、架橋密度の高い高硬度の保護層を形成する観点から好ましい。
【0086】
(重合性基を有する導電性微粒子)
本発明に係る保護層は、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子、及び重合性基を有するPFPEを重合した重合硬化物を含有している。
導電性微粒子が有する重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。導電性微粒子が有する重合性基は、1種でもそれ以上でもよく、互いに同じであっても異なっていてもよく、また、重合性モノマーやPFPEが有する重合性基と同じであっても異なっていてもよい。
導電性微粒子としては、ラジカル重合反応を経て硬化するラジカル重合性基を有する導電性微粒子であることが好ましい。
【0087】
重合性基を有する導電性微粒子は、重合性基を含む成分を表面に担持した導電性微粒子である。導電性微粒子の表面への重合性基を含む成分の担持は、物理的な担持であってもよいし、化学的な結合によるものであってもよい。重合性基を有する導電性微粒子は、例えば、導電性微粒子と、その表面に化学結合している表面修飾剤残基と、当該表面修飾剤残基に含まれる重合性基とを有し、保護層中では、導電性微粒子が、その表面に有する表面修飾剤残基を介して、保護層を構成している一体的な重合体と化学結合した状態で存在する。なお、表面修飾剤残基とは、例えば、導電性微粒子の表面に化学結合している分子構造であって当該表面修飾剤由来の部分である。
【0088】
導電性微粒子を構成する金属には、遷移金属も含まれる。導電性微粒子としては、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化スズ、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、銅アルミ酸化物等が挙げられる。中でも、アルミナ(Al2O3)、酸化スズ(SnO2)、二酸化チタン(TiO2)、銅アルミ複合酸化物(CuAlO2)であることが好ましい。
導電性微粒子は、1種でもそれ以上でもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0089】
また、導電性微粒子としては、電気抵抗を調整することを目的として、アルミナ粒子やシリカ粒子を用いることもできる。
【0090】
導電性微粒子の個数平均1次粒径は、50~200nmの範囲内であることが好ましい。導電性微粒子の個数平均1次粒径が50nm以上であれば、保護層表面への露出が多く、トナーと接触できるため、トナーとの付着力を得ることができ、また、十分な耐摩耗性を得ることができる。個数平均1次粒径が200nm以下であれば、導電性微粒子がクリーニングブレードに引っかからず、クリーニングブレードのスティックスリップが発生しないため、クリーニング性が低下することがない。
導電性微粒子の個数平均1次粒径は、カタログ値でもよいが、以下のようにして求めることができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込み、得られた写真画像から、凝集粒子を除く100個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム「ルーゼックス AP」(株式会社ニレコ製、「LUZEX」は同社の登録商標、ソフトウェアVer.1.32)を使用して2値化処理して当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出し、その平均値を算出して、導電性粒子の個数平均1次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。
【0091】
重合性基を含む成分の導電性微粒子表面への担持は、導電性微粒子の公知の表面処理技術によって行うことが可能である。
【0092】
導電性微粒子は、反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されていることが好ましい。
表面修飾剤は、重合性基及び表面修飾基を有している。表面修飾基は、導電性微粒子の表面に存在するヒドロキシ基等の極性基への反応性を有する官能基(反応性有機基)である。重合性基としては、例えば、ビニル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。表面修飾剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合して用いられてもよい。
【0093】
表面修飾剤は、重合性基を有するシランカップリング剤であることが好ましく、例えば、下記化合物S-1~S-31が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
S-1:CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2
S-2:CH2=CHSi(OCH3)3
S-3:CH2=CHSiCl3
S-4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S-5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S-6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S-7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S-8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S-9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S-10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S-11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S-12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S-13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S-14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S-15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S-16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S-17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S-18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S-19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S-20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S-21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S-22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S-23:CH2=CHSi(OC2H5)3
S-24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S-25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S-26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S-27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S-28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S-29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S-30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
S-31:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)2(OCH3)
【0095】
重合性基を有する導電性微粒子の添加量は、重合性モノマーと重合性基を有するPFPEとの合計100質量部に対して、30~200質量部の範囲内であることが好ましい。導電性微粒子の添加量が30質量部以上であれば、保護層の機械的強度を十分に発現させ、適切な電気抵抗を実現することができ、200質量部以下であれば、導電性微粒子がクリーニングブレードに引っかかることでトルクが増大し、スティックスリップによるクリーニング性の低下を抑制できる。
【0096】
(1)フッ素原子含有表面修飾剤
本発明に係る重合性基を有する導電性微粒子は、更にフッ素原子含有表面修飾剤で表面修飾されていることが好ましい。フッ素原子含有表面修飾剤で表面修飾された導電性微粒子は、保護層形成用塗布液中で良好な分散性を示すので、塗膜中でも優れた分散性を示す。
【0097】
フッ素原子含有表面修飾剤を用いた導電性微粒子の表面修飾処理は、具体的には、例えば、メタノール、2-ブタノール等のアルコール系分散媒に、重合性基を有する導電性微粒子を分散させる。これに、フッ素原子含有表面修飾剤を添加して混合した後、分散媒を揮発させることによって、又は分散媒を揮発させた後に加熱処理を行うことによって、導電性微粒子の表面修飾を行うことができる。
【0098】
フッ素原子含有表面修飾剤で表面修飾された重合性基を有する導電性微粒子の含有量は、例えば、保護層に十分な機械的強度を発現させる観点から、重合性モノマーの100質量部、又は重合性モノマー及び重合性基を有するPFPEの合計100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましい。また、保護層に十分な高クリーニング性を発現させる観点から、例えば、200質量部以下であることが好ましい。
【0099】
フッ素原子含有表面修飾剤は、フッ素原子含有基及び表面修飾官能基を有する。
フッ素原子含有基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロポリエーテル基等が挙げられる。
表面修飾官能基としては、例えば、カルボン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0100】
フッ素原子含有表面修飾剤は、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体を含有することが好ましく、下記一般式(1a)で表される構造単位及び下記一般式(1b)で表される構造単位をともに有することがより好ましい。
【0101】
【0102】
上記一般式(1a)及び(1b)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Xは、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R3は、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を表す。
【0103】
フッ素原子含有表面修飾剤が、一般式(1a)で表される構造単位及び一般式(1b)で表される構造単位をともに有することにより、導電性微粒子表面にフッ素原子含有表面修飾剤を高い密着性で存在させることができ、高いフッ素密度を得ることができる。
【0104】
フッ素原子含有表面修飾剤の分子量は、数平均分子量で5000~30000の範囲内であることが好ましい。
【0105】
フッ素原子含有表面修飾剤としては、例えば、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチルメタクリレート/アクリル酸共重合体等を用いることができる。
これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
【0106】
フッ素原子含有表面修飾剤の使用量は、導電性微粒子100質量部に対して、0.5~20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~10質量部の範囲内である。
【0107】
導電性微粒子にフッ素原子含有表面修飾剤による表面修飾処理が施されていることは、示差熱・熱重量(TG/DTA)測定によって確認することができる。
【0108】
(2)複合微粒子
本発明に係る重合性基を有する導電性微粒子としては、単一の導電性材によって構成されたものであってもよいが、芯材の表面の一部又は全部に導電性材からなる外殻が形成されてなるコア・シェル構造の複合微粒子などの、複数材料によって構成されたものであることが好ましい。例えば、導電性微粒子としては、芯材の表面に導電性金属酸化物が付着された複合微粒子を使用することが好ましい。
複合微粒子は、樹脂の屈折率との差が小さいため、光透過性が大きく、結果として膜強度を確保することができる。そのため、大径の外添剤が保護層を削りながらすり抜けやすくなることを抑制することができる。すなわち、芯材を設けることで(特に、硫酸バリウム)、分散性と光透過性とを確保でき、クリーニングブレードへの引っ掛かりや、外添剤が保護層を削りながらすり抜けることを抑制することができる。
【0109】
複合微粒子は、体積抵抗率が1×10-3~1×107Ω・cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1×10-1~1×103Ω・cmの範囲内である。
なお、本発明において、体積抵抗率は、温度23℃、湿度50%の環境下において武田理研(株)製TR8611A型デジタル超絶縁抵抗/微少電流計により測定される値である。
【0110】
なお、本発明において、導電性微粒子が複合微粒子からなる場合、芯材の個数平均1次粒径を導電性微粒子の個数平均1次粒径とする。
【0111】
(2.1)芯材
複合微粒子を構成する芯材としては、例えば、体積抵抗率が1×1010~1×1016Ω・cm程度の絶縁性材料が挙げられる。具体的には、硫酸バリウム、シリカ、酸化アルミニウムなどが挙げられ、これらのうち少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの中でも、硫酸バリウムは分散性が高いことに加え、経済性の観点からも好ましい。
【0112】
芯材の屈折率は、保護層の光透過性の観点から、1.8以下であることが好ましく、より好ましくは1.4~1.7の範囲内である。一般的な文献値として、硫酸バリウムの屈折率は1.64、シリカの屈折率は1.45、酸化アルミニウムの屈折率は1.76とされる。
芯材の屈折率が上記範囲内であることにより、複合微粒子を大径化しても保護層の光透過性が損なわれないので、抵抗調整が可能となる。
【0113】
(2.2)導電性金属酸化物
複合微粒子を構成する導電性金属酸化物としては、例えば、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化インジウムスズなどが挙げられる。
【0114】
導電性金属酸化物の体積抵抗率は、1×10-3~1×107Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
【0115】
導電性金属酸化物の芯材に対する付着量は、芯材100質量部に対し、30~70質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは40~60質量部の範囲内である。
導電性金属酸化物の付着量が上記範囲であることにより、電気特性及び膜強度の向上を図ることができる。
【0116】
被覆材である導電性金属酸化物の芯材に対する付着方法としては、例えば、特開2009-255042号公報などに開示されている方法を採用することができる。
【0117】
(重合性基を有するパーフルオロポリエーテル)
パーフルオロポリエーテル(perfluoropolyether:PFPE)は、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位として有するオリゴマー又はポリマーである。保護層にPFPEを適用することにより、保護層中にフッ素成分が組み込まれ、保護層表面の摩擦の差が小さくなるため、スティックスリップが抑制されクリーニング性を向上させることができる。
【0118】
PFPEとしては、ラジカル重合反応を経て硬化するラジカル重合性基を有するPFPEであることが好ましい。
【0119】
パーフルオロアルキレンエーテルの繰り返し単位としては、例えば、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、パーフルオロプロピレンエーテル等の繰り返し単位が挙げられる。中でも、パーフルオロポリエーテルは、下記式(a)で表される繰り返し単位、又は下記式(b)で表される繰り返し単位を有していることが好ましい。
【0120】
【0121】
式(a)で表される繰り返し単位の繰り返し数m、及び式(b)で表される繰り返し単位の繰り返し数nは、0以上の整数であり、かつm+n≧5である。mは、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましい。また、nは、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましい。
【0122】
また、PFPEが、上記式(a)で表される繰り返し単位、及び上記式(b)で表される繰り返し単位の両方を有する場合、それら2種の繰り返し単位は、ブロック共重合体構造を形成していてもよいし、ランダム共重合体構造を形成していてもよい。
【0123】
PFPEの重量平均分子量(Mw)は、100~8000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは500~5000の範囲内である。重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を利用する公知の方法によって求めることができる。
【0124】
PFPEが有する重合性基の数は、1以上であり、2以上であることが好ましい。2以上の重合性基は、PFPEの片末端又は両末端に置換していてもよい。
【0125】
中でも、重合性基を4以上有するPFPEは、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子との反応点をより多く持つ。よって、感光体の耐摩耗性及びクリーニング性を高める観点から特に好ましい。
【0126】
PFPEが有する重合性基は、重合性モノマーの重合性基と同じく、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。当該重合性基としては、例えば、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることが特に好ましい。PFPEが有する重合性基は、上記重合性モノマーが有する重合性基と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、PFPEが複数の重合性基を有する場合には、それらは互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0127】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するPFPEとしては、例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFluorolink AD1700、MD500、MD700、5101X、5113X、Fomblin MT70(「FLUOROLINK」及び「FOMBLIN」は、いずれも同社の登録商標)、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC、信越化学工業株式会社製のKY-1203等が挙げられる。
【0128】
また、重合性基を有するPFPEは、末端にヒドロキシ基やカルボキシ基を有するPFPEを原料として、適宜に合成することも可能であり、そのような合成品を使用してもよい。
末端にヒドロキシ基を有するPFPEとしては、例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblin D2、Fluorolink D4000、Fluorolink E10H、5158X、5147X、Fomblin Z DOL、Fomblin Z-tet-raol、ダイキン工業株式会社製のDemnum-SA等が挙げられる。
末端にカルボキシ基を有するPFPEとしては、例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinZDIZAC4000、ダイキン工業株式会社製のDemnum-SH等が挙げられる。
【0129】
重合性基を有するPFPEの含有量の下限としては、感光体のクリーニング性を十分に発現させる観点から、例えば、重合性モノマー100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。また、重合性基を有するPFPEの含有量の上限としては、感光体の耐摩耗性及び耐傷性を十分に発現させる観点から、例えば、重合性モノマー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0130】
(1)第1のPFPE
本発明に係るPFPEは、重合性基の数が4以上である第1のパーフルオロポリエーテルと、重合性基の数が0~3の範囲内である第2のパーフルオロポリエーテルとを含むことが好ましい。第1のPFPEと第2のPFPEとを混合させることで、成膜時にハジキや白濁させることなく高濃度で膜中にフッ素成分を導入することができるため、更に低摩擦力及び低付着力化効果によりクリーニング性を向上させることができる。
【0131】
第1のPFPEは、重合性基を4以上有するPFPEである。保護層が第1のPFPEを含有することにより、PFPEと重合性モノマー等との結合箇所が増え、更に高い耐摩耗性及びより高いクリーニング性が持続する保護層を形成可能とする。
【0132】
第1のPFPEは、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0133】
【0134】
一般式(1)中、Aは、(q+1)価の連結基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは、重合性基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。m及びnは、0以上の整数を表し、m+n≧5である。qは、2以上の整数を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0135】
一般式(1)におけるAで表される連結基は、独立して、その分子量が100~400の範囲内であることが好ましい。100~400の範囲内であることで、第1のPFPEが重合性モノマーに対して十分な相溶性を有し、その結果、保護層中に第1のPFPEを十分に添加できるとともに、第1のPFPEを良好に分散させることができる。
【0136】
Aで表される連結基の分子量は、例えば、第1のPFPEのGPCによる分子量の測定や、核磁気共鳴(NMR)等の公知の分析技術を利用する公知の方法によって求めることができる。
【0137】
Aで表される連結基としては、所定の分子量を有する有機基であればよく、例えば、エステル結合又はウレタン結合を含む3価以上の有機基等が挙げられる。
【0138】
一般式(1)におけるXで表される重合性基は、重合性モノマーが有する重合性基と同様、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。第1のPFPEが有する重合性基としては、重合性モノマーが有する重合性基と同一であってもよいし、異なっていてもよく、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0139】
一般式(1)におけるqは2以上の整数であるため、第1のPFPEが有する重合性基の数は4以上となる。重合性基の数が4以上であると、保護層の十分な膜強度が得られる。また、第1のPFPEを容易に合成する観点から、第1のPFPEの分子構造が対称性を有することが好ましいため、重合性基の数は偶数であることが好ましい。
【0140】
第1のPFPEは、上記したように、末端にヒドロキシ基やカルボキシ基を有するPFPEを原料として、これらの置換基の置換又はこれらの置換基からの誘導によって適宜に合成できる。第1のPFPEの合成方法としては、例えば、以下の合成方法(i)~(iii)の方法が含まれる。
【0141】
(i)末端にヒドロキシ基を有するPFPEに対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸によりエステル化反応させる方法
(ii)末端にヒドロキシ基を有するPFPEに対して、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネートをウレタン化反応させる方法
(iii)末端にカルボキシ基を有するPFPEを常法により酸ハロゲン化物とし、この酸ハロゲン化物に対して、(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基を有する化合物をエステル化反応させる方法
【0142】
第1のPFPEの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記化合物中、PFPE-A-1~PFPE-A-9は、いずれも上記一般式(1)で表される構造を有する。下記の各式中、Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、m及びnは、0以上の整数を表し、m+n≧5である。また、下記式中、p及びqは、0以上の整数を表す。
【0143】
【0144】
【0145】
(2)第2のPFPE
第2のPFPEは、重合性基の数が異なる以外は上記第1のPFPEと同じ構造を有する。第2のPFPEは、重合性基の数が0~3の範囲内である。重合性基の数が2又は3の場合、当該重合性基は、片末端に結合していてもよいし、両末端にそれぞれ結合していてもよい。
【0146】
第2のPFPEにおける重合性基の数が0~3の範囲内であれば、PFPEが保護層中でも可動でき、保護層の高いクリーニング性を長期にわたって維持できる。
【0147】
第2のPFPEが有する重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。当該重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が好ましい。
【0148】
重合性基の数が0の第2のPFPEは、保護層から抽出した溶剤可溶成分を熱分解GC-MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、元素分析等の公知の機器分析技術による分析によって確認できる。
【0149】
第2のPFPEは、上記したように、市販品を使用してもよいし、末端にヒドロキシ基やカルボキシ基を有するPFPEを材料として適宜合成してもよい。
【0150】
第2のPFPEの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。下記の各式中、Xは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、m及びnは、0以上の整数を表し、m+n≧5である。また、下記式中、pは、1以上の整数を表す。
【0151】
【0152】
〈感光層〉
感光層は、露光により所期の画像の静電潜像を有機感光体の表面に形成するための層である。感光層は、単層で構成されていてもよいし、複数の層が積層されて構成されていてもよい。例えば、電荷輸送化合物と電荷発生化合物とを含有する単層構成や、電荷輸送化合物を含有する電荷輸送層と、電荷発生化合物を含有する電荷発生層との積層構成等が挙げられる。
【0153】
また、本発明に係る有機感光体は、本実施形態に係る効果が得られる範囲において、導電性支持体、感光層及び保護層以外の他の構成を更に備えていてもよい。当該他の構成としては、例えば、導電性支持体と感光層との間に配置され、バリアー機能と接着機能とを有する中間層が挙げられる。
【0154】
感光体を構成する保護層以外の各部材は、公知の有機感光体と同様に構成することが可能である。
【0155】
〈導電性支持体〉
導電性支持体は、感光層を支持可能で、かつ導電性を有する部材である。導電性支持体としては、例えば、金属製のドラム又はシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の膜を有するプラスチックフィルム、導電性物質又はそれとバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材やプラスチックフィルム、紙等が挙げられる。ここで用いられる金属としては、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレス鋼等が挙げられ、導電性物質としては、例えば、上記金属、酸化インジウム、酸化スズ等が挙げられる。
【0156】
〈有機感光体の製造方法〉
本発明に係る有機感光体は、保護層形成用塗布液として、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を含む組成物を含有する塗布液を用いる以外は、公知の感光体の製造方法によって製造することができる。例えば、導電性支持体上に形成された感光層の表面に、上記組成物を含有する保護層形成用塗布液を塗布する工程と、形成された塗膜に対して活性線の照射又は加熱を施して当該組成物を重合させる工程と、を有する方法を採用することが可能である。
【0157】
保護層形成用塗布液は、本実施形態の効果が得られる範囲内において、上記組成物以外の他の成分を更に含有していてもよい。当該他の成分としては、例えば、溶剤及び重合開始剤が挙げられる。
【0158】
保護層形成用塗布液に含有される溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミンが挙げられる。
溶剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合して用いられてもよい。
【0159】
保護層形成用塗布液に含有される重合開始剤は、保護層の形成工程に応じて公知の重合開始剤から適宜選択して用いることができる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、並びに光及び熱の両方で重合開始可能な重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合して用いられてもよい。
【0160】
また、光重合開始剤には、光重合促進効果を有する光重合促進剤を併用してもよい。光重合促進剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル及び4,4′-ジメチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。
【0161】
保護層形成用塗布液に含有される重合開始剤としては、光重合開始剤であることが好ましく、例えば、アルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、α-ヒドロキシアセトフェノン構造を有する重合開始剤、又はアシルフォスフィンオキサイド構造を有する重合開始剤が更に好ましい。
【0162】
保護層を形成するための組成物における重合開始剤の含有量は、重合性モノマー100質量部に対して0.1~40質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5~20質量部の範囲内である。
【0163】
保護層中、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子は、保護層を形成する一体的な重合硬化物を構成している。当該重合硬化物が重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子の重合体(あるいは、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子及び重合性基を有するPFPE)の重合体であることは、熱分解GC-MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、元素分析等の公知の機器分析技術による当該重合硬化物の分析によって確認することが可能である。
【0164】
重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子及び重合性基を有するPFPEは、いずれも重合性基を有する。このため、保護層を形成するための組成物中において、これらの成分は、互いに高い相溶性を有する。したがって、導電性微粒子及びPFPE成分は、いずれも上記組成物中で均一に分散し、保護層中でその面方向及び層厚方向のいずれにおいても均一に分散した状態で存在する。
【0165】
また、保護層中では、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子(あるいは、重合性モノマー、重合性基を有する導電性微粒子及び重合性基を有するPFPE)の重合性基がそれぞれ互いに反応し、架橋構造を形成している。よって、保護層中に重合性基を有するPFPEが含有されている場合、PFPE成分の含有量がある程度多くても、十分な耐摩耗性を有する高強度な保護層を形成することができる。
【0166】
また、保護層中では、PFPE成分及び導電性微粒子が保護層の面方向及び層厚方向において均一に分散した状態で存在するので、保護層の表面が減耗しても高いクリーニング性を維持するのに十分な量のPFPE成分が保護層中に存在する。これにより、高いクリーニング性が長期にわたって維持される。
【実施例】
【0167】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
《導電性微粒子の作製》
以下のようにして、導電性微粒子1~11を作製した。
【0169】
〈導電性微粒子1の作製〉
メタノール10mLに、未処理の導電性微粒子として酸化スズ(数平均1次粒径20nm)5gを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。次いで、これにカップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM503」(信越化学工業社製)0.25g及びトルエン10mLを加え、室温(25℃)で1時間撹拌した。さらに、エバポレーターによって混合物から溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、重合性基を有する導電性微粒子1を得た。
【0170】
〈導電性微粒子2の作製〉
(1)複合微粒子の作製
まず、
図5に示す製造装置を用い、硫酸バリウム芯材の表面に酸化スズが付着されてなる複合微粒子を作製した。
具体的には、母液槽11中に純水3500cm
3を投入し、次に個数平均1次粒径が20nmである球状の硫酸バリウム芯材900gを投入して5パス循環させた。母液槽11から流出するスラリーの流速は2280cm
3/minであった。また、強分散装置13の撹拌速度を16000rpmとした。循環完了後のスラリーを純水で全量9000cm
3にメスアップし、そこに1600gのスズ酸ナトリウム及び2.3cm
3の水酸化ナトリウム水溶液(濃度25N)を投入して5パス循環させた。このようにして母液を得た。
【0171】
この母液を、母液槽11から流出する流速S1が200cm3となるように循環させながら、強分散装置13としてのホモジナイザー「magic LAB」(IKAジャパン株式会社製)に20%硫酸を供給した。供給速度S3を9.2cm3/minとした。ホモジナイザーの容積は20cm3、撹拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザーに供給した。このようにして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化スズの被覆層が形成された粒子を得た。
【0172】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで、乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、45分間還元焼成した。これによって、硫酸バリウム芯材の表面に酸化スズが付着されてなる複合微粒子1(個数平均1次粒径:20nm)を得た。
【0173】
ここで、
図5に示す製造装置において、符号12及び14は、母液槽11と強分散装置13との間の循環路を形成する循環配管、符号15及び16は、循環配管12及び14にそれぞれ設けられたポンプ、符号11aは撹拌翼、符号13aは撹拌部、符号11b及び13bはシャフト、符号11c及び13cはモーターを示す。
【0174】
(2)フッ素原子含有表面修飾剤〔A〕の作製
2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート9.9g、アクリル酸0.1g、重合開始剤「パーロイルSA」(日油社製)0.3g、及びフッ素系溶剤:メチルパーフルオロブチルエーテル(東京化成工業社製)60.0gを反応容器に加えた。これを乾燥窒素でパージして反応容器を密封し、70℃で24時間、撹拌下で加熱した後、反応容器を冷却し、開封した。次いで、反応容器内の溶液をメタノール300mL中に注ぎ、得られた重合体を沈殿させ、沈殿物を真空下にて乾燥させた。これにより、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体よりなるフッ素原子含有表面修飾剤〔A〕を得た。
【0175】
なお、フッ素原子含有表面修飾剤〔A〕は、上記一般式(1a)で表される構造単位及び上記一般式(1b)で表される構造単位を有する。
【0176】
(3)導電性微粒子2の作製
メタノール10mLに、上記作製した複合微粒子5gを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。次いで、これにカップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM503」(信越化学工業社製)0.25g及びトルエン10mLを加え、室温(25℃)で1時間撹拌した。さらに、エバポレーターによって混合物から溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、重合性基を有する導電性微粒子〔a〕を得た。
【0177】
得られた導電性微粒子〔a〕5gを、2-ブタノール40gに加え、USホモジナイザーを用いて60分間分散を行った。次いで、メチルパーフルオロブチルエーテル10gを加え、更にフッ素原子含有表面修飾剤〔A〕0.25gを加えて、60分間USホモジナイザーを用いて分散を行った。分散後、溶剤を室温(25℃)下で揮発させ、80℃で60分間乾燥させることにより、フッ素原子含有表面修飾剤で表面修飾された、重合性基を有する導電性微粒子2を作製した。
【0178】
〈導電性微粒子3~11の作製〉
導電性微粒子2の作製において、未処理の導電性微粒子の種類及び個数平均1次粒径を表Iに記載のとおりに変更した以外は同様にして、フッ素原子含有表面修飾剤で表面修飾された、重合性基を有する導電性微粒子3~11を作製した。
【0179】
《有機感光体の作製》
以下のようにして、有機感光体1~14を作製した。
【0180】
〈有機感光体1の作製〉
(1)導電性支持体の準備
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
【0181】
(2)中間層の形成
下記成分を下記分量で混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層形成用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥し、厚さ2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
【0182】
ポリアミド樹脂(X1010:ダイセルデグサ株式会社) 10質量部
酸化チタン粒子(SMT500SAS:テイカ株式会社) 11質量部
エタノール 200質量部
【0183】
(3)感光層の形成
(3.1)電荷発生層の形成
下記成分を下記分量で混合し、循環式超音波ホモジナイザー(RUS-600TCVP:株式会社日本精機製作所)を19.5kHz、600Wにて循環流量40L/時間で0.5時間分散することにより、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって中間層の表面に塗布し、乾燥させて、厚さ0.3μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
【0184】
電荷発生物質(Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニン及び(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混晶)
24質量部
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBL-1:積水化学工業株式会社、「エスレック」は、同社の登録商標) 12質量部
混合液(3-メチル-2-ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V))
400質量部
【0185】
(3.2)電荷輸送層の形成
下記成分を下記分量で混合した電荷輸送層形成用の塗布液を浸漬塗布法によって電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、厚さ24μmの電荷輸送層を電荷発生層上に形成した。
【0186】
下記化合物A 60質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300:三菱ガス化学株式会社) 100質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010:BASF社、「IRGANOX」は同社の登録商標) 4質量部
【0187】
【0188】
(4)保護層の形成
下記成分を下記分量で混合した保護層形成用の塗布液(ラジカル重合性樹脂組成物)を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、塗布された塗布液の膜に、メタルハライドランプで紫外線を1分間照射して当該膜を硬化させることにより、厚さ3.0μmの保護層を電荷輸送層(感光層)上に形成した。
【0189】
重合性モノマー(M2) 120質量部
導電性微粒子1 100質量部
重合開始剤(イルガキュア819:BASFジャパン社) 10質量部
2-ブタノール 400質量部
【0190】
〈有機感光体2~11の作製〉
有機感光体1の作製において、導電性微粒子の種類を表Iに記載のとおりに変更した以外は同様にして、有機感光体2~11を作製した。
【0191】
〈有機感光体12の作製〉
有機感光体1の作製において、保護層を以下のようにして形成した以外は同様にして、有機感光体12を作製した。
【0192】
(4)保護層の形成
下記成分を下記分量で混合した保護層形成用の塗布液(ラジカル重合性樹脂組成物)を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、塗布された塗布液の膜に、メタルハライドランプで紫外線を1分間照射して当該膜を硬化させることにより、厚さ3.0μmの保護層を電荷輸送層(感光層)上に形成した。
【0193】
重合性モノマー(M2) 120質量部
重合性基を有するPFPE:Fomblin MT70(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン製) 20質量部
下記式で表される電荷輸送物質CTM-13 20質量部
導電性微粒子4 100質量部
重合開始剤(イルガキュア819:BASFジャパン社) 10質量部
2-ブタノール 400質量部
【0194】
【0195】
なお、MT70の重合性基の数は、4である。
【0196】
〈有機感光体13の作製〉
有機感光体12の作製において、重合性基を有するPFPE(MT70)をFluorolink MD700(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン製)とFluorolink AD1700(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン製)との混合物に変更した以外は同様にして、有機感光体13を作製した。MD700とAD1700との混合質量比は、MD700/AD1700=1:1とした。
【0197】
〈有機感光体14の作製〉
有機感光体1の作製において、保護層を以下のようにして形成した以外は同様にして、有機感光体14を作製した。
【0198】
(4)保護層の形成
下記成分を下記分量で混合し、分散・溶解した保護層形成用の塗布液を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚6.0μmの熱可塑性型の保護層を形成した。
【0199】
フィラー:シリカ粒子(1次処理:ジメチルジクロロシラン、2次処理:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された個数平均1次粒径50nmのシリカ) 30質量部
電荷輸送物質:(N-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジン) 150質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010::BASF社、「IRGANOX」は同社の登録商標) 12質量部
テトラヒドロフラン(THF) 2800質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 4質量部
【0200】
《評価》
以下のようにして、作製した有機感光体1~14について、下記各評価を行った。
具体的には、有機感光体1~14のそれぞれを、フルカラー印刷機(bizhub PRESS C1070:コニカミノルタ株式会社、「bizhub」は同社の登録商標)に、図3に示すブラシ回転体を組み込んだ装置に搭載し、10℃、15%RHの低温低湿環境(LL環境)下で、2本の縦帯状ベタ画像(幅5cm)からなるテスト画像をA4横送りにおいて10万枚連続印刷する耐久実験を実施した。次いで、各有機感光体の減耗量、クリーニングブレードの摩耗量、及びクリーニング性の評価を行った。ブラシ回転体としては、6-ナイロンを上記フッ素原子含有表面修飾剤〔A〕(2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体)で表面修飾した繊維を複数植毛したブラシを用いた。
評価結果を表Iに示す。
【0201】
なお、有機感光体1については、ブラシ回転体を有さない場合(比較例1)、及び反応性有機基を有する表面修飾剤によって表面修飾されていないブラシ回転体を有する場合(比較例2)についても評価した。
【0202】
〈減耗量〉
上記耐久実験前後における各有機感光体の縦帯状ベタ画像部に対応する部分(担持体の両端は膜厚が不均一になりやすいので、少なくとも両端から3cmの部分を除く。)を、過電流方式の膜厚測定器(商品名:「EDDY560C」、HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いてランダムに10か所測定し、その平均値を求め、これを縦帯状ベタ画像の厚さとした。そして、上記耐久実験前後の縦帯状ベタ画像の厚さの差を減耗量とし、下記評価基準に従って減耗量を評価した。なお、減耗量0.20μm以下を実用可能と判断した。
【0203】
A:減耗量が0.05μm以下
B:減耗量が0.05μmより大きく、0.10μm以下
C:減耗量が0.10μmより大きく、0.15μm以下
D:減耗量が0.15μmより大きく、0.20μm以下
E:減耗量が0.20μmより大きい
【0204】
〈クリーニングブレードの摩耗量〉
上記耐久実験前後におけるクリーニングブレードの縦帯ベタ画像部に対応する部分を、形状測定レーザマイクロスコープ「VK-X100」(株式会社キーエンス製)を用いて観察し、摩耗幅を算出した。そして、上記耐久実験前後のクリーニングブレードの摩耗幅の差を摩耗量とし、下記評価基準に従って摩耗量を評価した。なお、摩耗量20μm以下を実用可能と判断した。
【0205】
A:摩耗幅が5μm以下
B:摩耗幅が5μmより大きく、10μm以下
C:摩耗幅が10μmより大きく、15μm以下
D:摩耗幅が15μmより大きく、20μm以下
E:摩耗幅が20μmより大きい
【0206】
〈クリーニング性〉
上記耐久実験後に、10℃、15%RHの低温低湿環境(LL環境)で、紙の搬送方向の前方向に黒地部、後方部に白地部が位置するように、ハーフトーン画像を、A3版中性紙に100枚印刷した。100枚目のプリントの白地部について、トナーのすり抜けにより発生した汚れを目視により観察するとともに、滑剤塗布ブラシの外添剤すり抜けによる汚染を目視により観察し、下記評価基準に従ってクリーニング性を評価した。なお、評価結果が「A」及び「B」の場合を合格と判定した。
【0207】
A:滑剤塗布ブラシに外添剤すり抜け汚染が全くなく、問題ないレベル
B:滑剤塗布ブラシに一部外添剤すり抜け汚染は認められるが、画像上スジ状の汚れは視認できず、実用上問題なし
C:滑剤塗布ブラシに外添剤すり抜け汚染が認められ、画像上でもスジ状の汚れが視認でき、実用上問題あり
【0208】
【0209】
〈まとめ〉
表Iから明らかなように、本発明の電子写真画像形成方法である実施例1~13は、比較例1~3と比べて、減耗量及びクリーニングブレードの摩耗量が少なく、クリーニング性に優れていることがわかる。
以上から、導電性支持体と、導電性支持体上に配置される感光層と、感光層上に配置される保護層と、を有し、保護層が、重合性モノマー及び重合性基を有する導電性微粒子を重合した重合硬化物を含有する有機感光体を使用し、クリーニング工程では、クリーニングブレードよりも上流側に配置されたトナー擦過部材によるトナー回収率を5%以下とする電子写真画像形成方法が、硬化型OCL感光体の使用に際し、長期にわたって高クリーニング性を維持することに有用であることが確認できた。
【符号の説明】
【0210】
1 有機感光体
1a 導電性支持体
1c 感光層
1d 保護層
1dA 重合性基を有する導電性微粒子
61 トナー擦過部材
62 クリーニングブレード
63 固形潤滑剤(滑剤)
64 滑剤塗布ブラシ
65 均しブレード
66 筐体
100 画像形成装置