(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】噛合調整用電動やすり及びやすり紙付きの噛合調整用電動やすり
(51)【国際特許分類】
A61C 1/07 20060101AFI20220524BHJP
A61C 1/06 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61C1/07 Z
A61C1/06
(21)【出願番号】P 2018079439
(22)【出願日】2018-03-31
【審査請求日】2021-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148981(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196656(US,A1)
【文献】特開平5-154164(JP,A)
【文献】実開平5-21638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/00 - 1/18
A61C 3/00 - 3/16
A61C 7/00 - 7/36
A61C 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一に記載の噛合調整用電動やすりの、前記逆動作鉗子に前記やすり紙をその片辺で挟持させて成る、やすり紙付きの噛合調整用電動やすり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は歯科技工所や歯科医院での全部床義歯などの入歯の調整を行うのに適した、電動の切削用具に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯が合わない問題を解決することは容易ではないため、義歯が少しでも長く患者さんに合うようにする努力が、歯科技工所でも歯科医院でも日夜続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3160492号公報(後出)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば全部床義歯に付いて、やすりを掛けて早期接触部が無くなるまで研磨調整することが行われる。この時の研磨調整は上下の入歯の咬み合せを解いて行われるものであるため、この動作を減らすことが出来れば、作業能率が向上して、時間節約になると共に調整コストが低減するはずである。この発明は、このような問題点の解決を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当発明者は、当発明者の考案になる実用新案登録第3160492号の「歯科用やすり」が問題の解決に繋がるのではないかと考えた。この実用新案登録第3160492号の「歯科用やすり」は、口内の歯の治療に於いて、咬み合せの早期接触部を診断するのと同じようなやり方で早期接触部を研磨調整することを可能にした実用的な考案であった。すなわちそれまで歯科用咬合検査シートによる検査と削合調整とを繰り返し繰り返し行わなくてはならなかった所、上記のような調整作業を容易に行えるようにした点で、優れた考案であると言うことが出来る。
【0006】
そこで上記課題は、ハンドルとこのハンドル内に納められた電気的往復動発生装置と、この電気的往復動発生装置の出力取出部に設けたやすり紙を挟持するための挟持具と、から成るやすり紙用の電動やすりを提供することにより達成される。このやすり紙に上記歯科用やすりが含まれる。
【0007】
なお実用新案登録第3160492号の「歯科用やすり」は、咬み合せの早期接触部を削合調整するためのやすり面を片面側に有するシートより成るものである。このシートにはプラスチックシートやラミネート紙や金属箔にプラスチックフィルムを張り合わせたものなどが用いられる。このようなシートの片面にセラミック粉やアルミナ粉などの研削性粉体を付着させるなどしてやすり面が構成される。この構成は十分参考になる。
【0008】
さてその使用法であるが、電気的往復動発生装置の出力取出部にある挟持具にやすり紙を挟持させて、電気的往復動発生装置をONの状態にすれば良い。全部床義歯などの入歯の製作工程や、患者への適合工程に於いて、やすり紙を上下の入歯で咬み合せるようにしたり、上下の入歯の咬み合せに挿入させるようにしたりする。これにより上下の入歯が噛み合った状態のまま、早期接触部の研磨調整を行うことが出来る。なお挟持具が出力取出部に対して着脱自在であるように設けられていると、挟持具にやすり紙を取り付けたりする作業が楽になる。電気的往復動発生装置をONにすると、やすり紙は歯間にあって往復動を行い、早期接触部を研磨するように動作する。
【0009】
次に、電気的往復動発生装置には各種あるが、特に磁気回路を構成するヨークと、このヨークに対して往復動し得るように設けられた、前記磁気回路を構成するムービングコイルと、から成り、このムービングコイルを前記出力取出部として成るものとすることが出来る。電気的往復動発生装置にいわゆるボイスコイルモータを適用するのである。ボイスコイルモータによる電気的往復動発生装置には、比較的に大きな出力が容易に得られると言う利点がある。
【0010】
次に、電気的往復動発生装置が、電動モータの回転軸に設けたカムを前記出力取出部に接触させて成るものとすることが出来る。このようなカムやクランクを用いた電気的往復
動発生装置には、比較的に構成が単純でコストが安いと言う利点がある。
【発明の効果】
【0011】
この発明の噛合調整用電動やすり及びやすり紙付きの噛合調整用電動やすりによれば、全部床義歯などの入歯の製作工程に於いて、研磨調整を上下の入歯の咬み合せを解かずとも行うことが出来るようになり、作業能率の向上や作業時間の節約や製作コストの低減が実現されると言う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施例1のボイスコイルモータ30の説明図である。
【
図3】実施例1の電気回路をブロック図で表した説明図である。
【
図4】実施例1で用いたやすり紙Yの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の2種類の実施例を
図1~
図6を参照しつつ説明するが、本発明はこれ等の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1乃至
図3で表したこの実施例の電動やすり1は、
図4(A)で表したやすりYを付けて使用するものである。やすりYは鋼製の薄いシート状体iの片面側にアルミナジルコニア粉末の研削材をにかわ質の接着剤にて二層コーティングにより接着してやすり部yを形成したものである。
【0015】
ハンドル10に
図3のムービングコイル35と制御回路36と二次電池37とから成る駆動回路3が内蔵されている。制御回路36の電源スイッチ38はハンドル10の表面に設けたスイッチカバー14の下に位置し、またLED(Light Emitting Diode)39はハンドル10の表面に設けたインジケータ窓15の下に位置している。ハンドル10の後端部に充電端子300が設けられており、ここから制御回路36に配線されて、充電時の外部電力が供給されるようになっている。またハンドル10の前端部には開口部16があり、ムービングコイル35を構成要素とするボイスコイルモータ30の出力取出部11がハンドル10の外部に取り出されている。
【0016】
ボイスコイルモータ30は
図2で表すような構成である。すなわち円筒形状の内ヨーク31の回りに間を開けるようにして外ヨーク32が接続されており、外ヨーク32の内側に添うようにして磁石33が取り付けられている。この磁石33と内ヨーク31との間に各々との間を開けるようにして、外側にムービングコイル35が捲回されたコイルボビン34が挿着されている。従ってコイルボビン34は内ヨーク31に対して往復動自在である。このようにして磁気回路が構成されている。
【0017】
駆動回路3の制御回路36は、充電端子300が電源に接続されたら、充電管理を行いつつ二次電池37に充電を行う。また制御回路36はOFFの状態から電源スイッチ38が押されるとムービングコイル35に振動電流を供給して、2度目に電源スイッチ38が押されたならば振動数を上げ、3度目に電源スイッチ38が押されたならばOFFの状態にする、と言う制御を行うように設定されている。
【0018】
上記出力取出部11の先端部には逆動作鉗子2の右片20と左片21との接合部22を装着するための鉗子装着口13が開口されていると共にチャック12が螺嵌されている。逆動作鉗子2は鉗子装着口13に対して着脱自在である。この逆動作鉗子2は右片20と左片21とが中央で交差する構成であり、接合部22に近い部位の右片20と左片21とを閉じるように押すと、逆に先端部の左片21と右片20とが開くようになっている。
【0019】
逆動作鉗子2の左片21と右片20とを開き、左片21と右片20との間でやすりYを挟持させてから、逆動作鉗子2の接合部22を鉗子装着口13に装着して、チャック12で締結すると、この実施例の電動やすり1が使用し得る状態となる。やすりYは恰も咬合検査シートのように、しかし入歯の、上下の歯の間に挟んで使用することが出来るものである。このやすりYのやすり部yの面を研削したい早期接触部に向けるようにして、スイッチカバー14を押すとスイッチ38が入ってLED39が点灯したことがインジケータ窓15から確認され、ボイスコイルモータ30が往復動を発生して、やすりYが左右の矢線の方向に振動し、入歯の早期接触部を研削して均す作業がスピーディーに行われるのである。
【0020】
なお
図4(B)で表したやすりは、合繊紙製の薄いシート状体pの表面にやすり部yを形成し、裏面にPP(ポリプロピレン)樹脂製の薄いシート状体sを張り合せて成るものである。この構成によれば研削しない義歯の側にPP樹脂のシート状体sが当ることになるため、研削しない義歯に対する滑り性が良好になると言う特質を有する。なお合繊紙製のシート状体pの代わりにPP樹脂等の滑りの良い素材から成るシート状体を用いる構成も可能である。
【実施例2】
【0021】
図5及び
図6で表したこの実施例の電動やすり4は、モータ46の回転軸47に板カム45が取り付けられており、この板カム45は後述するコロ48に接触している。一方、振動側筐体41の先端部には装着口42が開口されており、ここに逆動作鉗子5が装着される。この振動側筐体41は外側のハンドルとしての筐体40に対して、バネ44を以て板カム45の方向に付勢されつつ前後方向に振動可能に設けられている。また振動側筐体41はその後端部のコロ48を以て板カム45に接触するように設けられている。このように
電気的往復動発生装置が構成されている。
【0022】
この実施例で用いる逆動作鉗子5は、金属製の薄板をM字形状に加工したものであり、M字形状の3角は各々丸くカーブした形状をしており、M字形状の2片(右片50と左片51)が合わさり鉗子の挟着部を構成している。この逆動作鉗子5は、振動側筐体41の装着口42に納められる際に装着口42内の3か所に立設された固定柱43に上記3角のカーブした部位が掛かって固定されるようになっている。なおこの装着口42には逆動作鉗子5の装着後に、図示しない蓋部が被せられる。またM字形状の右片50と左片51の内側の合わさる部位には、右片50と左片51とで挟着した時に、噛み込ませることによってやすりYから外れたりすることがないようにするための複数個の突起52が設けられている。
【0023】
モータ46の板カム45が回転すると、これに接触するコロ48は板カム45に押されたり、押されていない時にはバネ44に引かれたりして、コロ48が設けられている振動側筐体41に往復振動を起こさせる。従って振動側筐体41に装着された逆動作鉗子5が往復振動を行って、やすりYが左右の矢線の方向に振動し、入歯の早期接触部を研削して均す作業がスピーディーに行われることになる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明の噛合調整用電動やすりは、全部床義歯などの入歯の研磨調整に威力を発揮するものであるが、患者の口の中で行う歯の治療に於ける、早期接触部を無くする研磨調整に対しても十分役立つものであり、これもまたこの発明の権利範囲内にある。
【符号の説明】
【0025】
1 電動やすり 10 ハンドル 11 出力取出部
12 チャック 13 鉗子装着口 14 スイッチカバー
15 インジケータランプ 16 開口部
2 逆動作鉗子 20 右片 21 左片
22 接合部
3 駆動回路 30 ボイスコイルモータ 31 内ヨーク
32 外ヨーク 33 磁石 34 コイルボビン
35 ムービングコイル 36 制御回路 37 二次電池
38 電源スイッチ 39 LED 300充電端子
4 電動やすり 40 筐体 41 振動側筐体
42 装着口 43 固定柱 44 バネ
45 板カム 46 モータ 47 回転軸
48 コロ
5 逆動作鉗子 50 右片 51 左片
52 突起