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特許7077748硬化フィルム形成用組成物及び硬化フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】硬化フィルム形成用組成物及び硬化フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220524BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20220524BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20220524BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20220524BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220524BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220524BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220524BHJP
   C08L 63/02 20060101ALI20220524BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/06
C08G59/24
C08G59/62
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CFC
C08K7/02
C08L1/02
C08L63/02
G02B5/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018085369
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2018188633
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2017093157
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 香奈
(72)【発明者】
【氏名】清水 美絵
(72)【発明者】
【氏名】羽場 靖洋
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/175315(WO,A1)
【文献】特開2012-177877(JP,A)
【文献】特開2016-157821(JP,A)
【文献】特開2013-032510(JP,A)
【文献】特開2015-196693(JP,A)
【文献】特開2011-047084(JP,A)
【文献】特開2015-000935(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111612(WO,A1)
【文献】特開2016-188353(JP,A)
【文献】特開2014-101466(JP,A)
【文献】特開2002-161152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/
C08L 1/
C08L 63/
C08J 5/18
C08K 7/02
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のグリシジル基と芳香環を有する化合物(A)と、3つ以上の水酸基を有する化合物(B)と、セルロースナノファイバーとを含有し、
前記化合物(A)が、ビスフェノールA型エポキシ化合物であり、
前記化合物(B)が、ポリカプロラクトントリオールであり、
前記化合物(B)の配合割合が、前記化合物(A)の11~100重量%である、硬化フィルム形成用組成物。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーの配合割合が、前記化合物(A)の5~50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化フィルム形成用組成物。
【請求項3】
2つ以上のグリシジル基と芳香環を有する化合物(A)と、3つ以上の水酸基を有する化合物(B)と、2つ以上の脂環エポキシ基を有する化合物(C)と、セルローナノファイバーとを含有し、
前記化合物(A)が、ビスフェノールA型エポキシ化合物であり、
前記化合物(B)が、ポリカプロラクトントリオールであり、
前記化合物(C)が、3’、4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり、
前記化合物(C)の配合量が、前記化合物(A)100重量部に対して100重量部以下であり、
前記化合物(B)の配合割合が、前記化合物(A)及び(C)の11~100重量%である、硬化フィルム形成用組成物。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーの配合割合が、前記化合物(A)及び(C)の5~50重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の硬化フィルム形成用組成物。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーが四級アルキルアミン化されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の硬化フィルム形成用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の硬化フィルム形成用組成物の硬化膜からなる、硬化フィルム。
【請求項7】
前記硬化フィルムの引張強度が45N/mm以上であり、160℃での熱線膨張係数が10×10-5/℃以下であり、かつ、下記式(I)で定義される引張伸度が4%以上
である、請求項6に記載の硬化フィルム。
引張伸度(%)={(破断時の長さ)-(引張前の初期長さ)}×100/引張前の初期長さ・・・式(I)
【請求項8】
前記硬化フィルムの厚みが10乃至200μmである、請求項6または7に記載の硬化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、発光ダイオード表示装置、EL表示装置、タッチパネルなどの表示装置部品の保護フィルム、または、その他の機能性フィルムとして使用できる硬化フィルム及びその形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野をはじめ医療、食品、建装材など幅広い分野において用いられる機能性フィルムは、帯電防止性やガスバリア性、光学特性、熱特性などの機能性を有している。例えば、各種ディスプレイに用いられるハードコートフィルムには耐擦傷性や耐薬品性、及び耐候性などが求められている。
【0003】
しかしながら、半導体基材として機能性フィルムを用いようと試みた場合、有機物からなる機能性フィルムはガラス基材と比べ熱線膨張係数が大きいため、加熱工程後に機能性フィルムが収縮し、半導体が基材から剥がれてしまうといった問題があった。
【0004】
通常、有機物からなるフィルムに低線膨張性が要求される場合、プラスチックフィルム材料の中にセルロースナノファイバーを添加する方法が知られている(特許文献1)。この方法によれば、熱可塑性の樹脂にセルロースナノファイバーを添加することで低線膨張特性などの優れた特性を付与することが出来る。しかし、一般に熱可塑性フィルムは硬化性フィルムと比べて耐熱性が低く、高温での使用によりフィルムが融解してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-222745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる問題を鑑みてなされたもので、高温での熱線膨張係数が低く、かつ伸張性が高い硬化フィルム及びその形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る硬化フィルム形成用組成物は、2つ以上のグリシジル基と芳香環を有する化合物(A)と、3つ以上の水酸基を有する化合物(B)と、セルロースナノファイバーとを含有し、化合物(A)が、ビスフェノールA型エポキシ化合物であり、化合物(B)が、ポリカプロラクトントリオールであり、化合物(B)の配合割合が、化合物(A)の11~100重量%である。
【0008】
また、セルロースナノファイバーの配合割合が、化合物(A)の5~50重量%であってもよい。
【0009】
また、本発明に係る硬化フィルム形成用組成物は、2つ以上のグリシジル基と芳香環を有する化合物(A)と、3つ以上の水酸基を有する化合物(B)と、2つ以上の脂環エポキシ基を有する化合物(C)と、セルロースナノファイバーとを含有し、化合物(A)が、ビスフェノールA型エポキシ化合物であり、化合物(B)が、ポリカプロラクトントリオールであり、化合物(C)が、3’、4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり、化合物(C)の配合量が、化合物(A)100重量部に対して100重量部以下であり、化合物(B)の配合割合が、化合物(A)及び(C)の11~100重量%である。
【0010】
また、セルロースナノファイバーの配合割合が、化合物(A)の5~50重量%であってもよい。
【0011】
また、セルロースナノファイバーが四級アルキルアミン化されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る硬化フィルムは,上記の硬化フィルム形成用組成物の硬化膜からなるものである。
【0013】
また、硬化フィルムの引張強度が45N/mm以上であり、160℃での熱線膨張係数が10×10-5/℃以下であり、かつ、下記式(I)で定義される引張伸度が4%以上であることが好ましい。
引張伸度(%)={(破断時の長さ)-(引張前の初期長さ)}×100/引張前の初期長さ・・・式(I)
【0014】
また、硬化フィルムの厚みが10乃至200μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芳香環及びグリシジル基を含む化合物とセルロースナノファイバーを主原料として、熱線膨張係数が低く、かつ伸張性が高い硬化フィルムを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態は、以下に記載する実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も、本発明の実施の形態の範囲に含まれうるものである。
【0017】
また、本発明で使用される硬化性重合体とは、紫外線や電子線といった活性エネルギー線の照射と後加熱により硬化性化合物が架橋反応を経て硬化した物質のことをいう。
【0018】
本実施の形態にかかる硬化フィルムは、1分子中に2つ以上のグリシジル基と芳香環を有する化合物(A)と、3つ以上の水酸基を有する化合物(B)と、セルロースナノファイバーとを少なくとも含む組成物を支持体に塗布して硬化させ、硬化性重合体を支持体から剥離することにより得られる。
【0019】
化合物(A)として、グリシジル基が1つである化合物を用いた場合、硬化不足により目的とする硬化フィルムを形成することが困難である。また、化合物(B)として、水酸基が2つ以下である化合物を用いた場合には目的の特性を持ったフィルムが得られない。
【0020】
硬化フィルムの主原料である化合物(A)が芳香環を含むことにより、硬化フィルムに耐熱性と伸張性を付与することを可能とする。芳香環は共役系でありπ電子が非局在化しているため、芳香環を含む高分子は剛直で耐熱性に優れたものである場合が多い。さらに、芳香族環同士が分子間力で結合しているため、化合物(B)のような可とう性付与剤を併用することにより伸張性が高い硬化フィルムを提供することが出来る。
【0021】
上記の化合物(A)、(B)及びセルロースナノファイバーに加えて、化合物(C)として、1分子中に2つ以上の脂環エポキシ基を有する化合物を使用しても良い。化合物(C)を更に配合した場合、反応性が向上し、組成物が硬化しやすくなる。この結果、活性エネルギー線の照射後にポストベイクを行うことなく巻き取りを行うことが可能となる。化合物(C)を更に配合する場合においても、活性エネルギー線照射後のポストベイクを行っても良い。ポストベイクを行うことにより、更に伸張性が向上する。
【0022】
化合物(C)を配合する場合、化合物(C)の配合量は、化合物(A)100重量部に対して100重量部以下とする。この配合量を満たさない場合、目的とする熱線膨張係数ないし伸張性を付与することが困難となる。
【0023】
化合物(B)の配合割合は、化合物(C)を配合しない場合は、化合物(A)に対して、11~100重量%とし、化合物(C)を配合する場合は、化合物(A)及び(C)の合計に対して、11~100重量%とする。この配合割合を満たさない場合、目的とする熱線膨張係数ないし伸張性を付与することが困難となる。
【0024】
セルロースナノファイバーの配合割合は、化合物(C)を配合しない場合は、化合物(A)に対して、5~50重量%とし、化合物(C)を配合する場合は、化合物(A)及び(C)の合計に対して、5~50重量%とする。化合物(C)の配合割合が5重量%より少ない場合には目的とする熱線膨張係数ないし伸張性を付与することが困難であり、化合物(C)の配合割合が50重量%より多い場合には塗液の粘性が高くなるため塗膜化が困難となる。
【0025】
化合物(A)としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することが出来る。中でも芳香族環をビスフェノールAやビスフェノールFとして含むものが好ましい。これらの化合物は、市販品を用いてもよいし、ポリマーの側鎖へエポキシ基を導入することによっても得られる。市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1004、jER1007、jER1009、jER1010、jER1055(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON840、EPICLON850、EPICLON1050、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等であり、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、jER806、jER807、jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、RE-3035-L(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0026】
化合物(B)としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することが出来る。中でも上記化合物(B)としてはポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールが好ましい。これらの化合物は、市販品を用いてもよいし、合成しても良い。市販品としては、例えば、プラクセル205、プラクセル205U、プラクセル208、プラクセル210、プラクセル210N、プラクセル212、プラクセルL212AL、プラクセル220、プラクセル220N、プラクセル220NP1、プラクセル230、プラクセル230N、プラクセル240、プラクセル303、プラクセル305、プラクセル308、プラクセル309、プラクセル312、プラクセル320、プラクセルCD205PL、プラクセルCD210、プラクセルCD210PL(以上、(株)ダイセル製)、デュラノールT6002、デュラノールT6001、デュラノールT5652、デュラノールT5651、デュラノールT5650J、デュラノールT4672、デュラノールT4692、デュラノールG3452(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)等が使用できる。
【0027】
化合物(C)としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することが出来る。中でも上記脂環エポキシ基としてはシクロヘキセンオキシド基が好ましい。これらの化合物は、市販品を用いてもよいし、ポリマーの側鎖へ脂環エポキシ基を導入することによっても得られる。市販品としては、例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、EPOLEADGT401(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0028】
〔セルロースナノファイバーおよびその製造方法〕
本実施の形態において用いるセルロースナノファイバーは、その繊維径が以下に示す範囲内にあればよく、その調整方法については特に限定されない。すなわち短軸径において数平均短軸径が1nm以上100nm以下であればよく、好ましくは2nm以上50nm以下、より好ましくは3nm以上20nm以下である。数平均短軸径が1nm未満では、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、熱線膨張係数が不十分となる。一方、数平均短軸径が100nmを超えると、透明性が損なわれるほか、良好な塗工面性が得られにくくなる。また、長軸径においては、数平均長軸径が20nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましい。数平均長軸径が20nm未満では、繊維の絡み合い効果が不足し、十分な延性が得られない。また、本発明の効果の向上という観点から、数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることがさらに好ましい。
【0029】
セルロースナノファイバーの数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維(セルロースナノファイバー)の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、セルロースナノファイバーの数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維(セルロースナノファイバー)の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
【0030】
セルロースナノファイバーの原料として用いることができるセルロースの種類も特に限定されず、例えば木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースや、さらにレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースを用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。
【0031】
セルロースナノファイバーの製造方法も特に限定されないが、例えばグラインダーによる機械処理の他、TEMPO等のN-オキシル化合物を用いた酸化処理、希酸加水分解処理、酵素処理等を機械処理と併用してセルロースナノファイバーを得る方法が知られている。また、バクテリアセルロースもセルロースナノファイバーとして用いることができる。さらに、各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させたのち、電界紡糸することによって得られる再生セルロースナノファイバーを用いてもよい。特に、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物を用いた酸化反応では、結晶表面のセルロース分子鎖が持つグルコピラノース単位の第6位の-CHOHが高い選択性で酸化され、アルデヒド基を経てカルボキシ基に変換される。このように、結晶表面に導入されたカルボキシ基を有するセルロースナノファイバー間には静電的な反発力が働くため、ミクロフィブリル単位にまで分散したセルロースシングルナノファイバーを得ることができる。
【0032】
上記セルロースシングルナノファイバー中のカルボキシ基の含有量は、該セルロースシングルナノファイバー1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下の範囲内であることが好ましく、0.5mmol以上3.0mmol以下であることがより好ましい。カルボキシ基量が0.1mmol/g以上であると、分散安定性が良好である。カルボキシ基量が5.0mmol/g以下であると、セルロースシングルナノファイバーの結晶構造が十分に保持され、作製する硬化フィルムの熱線膨張係数が良好である。
【0033】
以下、木材系天然セルロースから、N-オキシル化合物を用いた酸化反応により導入されたカルボキシ基を有するセルロースシングルナノファイバーの分散液を調製する方法の一例を説明するが、ナノファイバー調整方法としてはこの方法に限らない。この例の調整方法は、木材系天然セルロースを、N-オキシル化合物を用いて酸化して酸化セルロースを得る工程(酸化工程)と、酸化セルロースのカルボキシル基をアンモニウム塩化する工程(アンモニウム塩化工程)と、該酸化セルロースを水性媒体中で微細化してセルロースシングルナノファイバー分散液を調製する工程(微細化工程)とを含む。
【0034】
〔セルロースナノファイバーの酸化工程〕
木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ等、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。N-オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル等、が挙げられる。その中でも、TEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01~5.0質量%程度である。
【0035】
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、該オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。上記共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物等、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~200質量%程度である。
【0036】
上記N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を改善することができる。該化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。該化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
【0037】
酸化反応の反応温度は、4~50℃が好ましく、10~40℃がより好ましい。反応温度が4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。一方、反応温度が50℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化し、増粘性の低下を引き起こす。酸化処理の反応時間は、反応温度や所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常1~5時間程度である。
【0038】
酸化反応時の反応系のpHは、9~11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。上記酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液等の有機アルカリ等、が挙げられる。
【0039】
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは9~11に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノール等の低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性等から、エタノールが特に好ましい。
【0040】
酸化処理後の反応液において、N-オキシル化合物等の触媒や不純物等を除去してから反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、回収した酸化セルロースを洗浄液で洗浄する。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。また、酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては、酸化反応時のpHをコントロールする際にアルカリ化されたカルボルキシル基を一旦酸性化するため、塩酸、蒸留水の順で洗浄するのが好ましい。
【0041】
〔セルロースナノファイバーのアンモニウム塩化工程〕
その後、作製するセルロースシングルナノファイバーと上述の化合物(A)~(C)との親和性を高めるために、回収したセルロースナノファイバーを蒸留水等に分散させた後、四級アルキルアンモニウム塩を加える。このときの四級アルキルアンモニウム塩としては、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられるが、特に限定しない。
【0042】
一般にセルロースナノファイバーは疎水性の樹脂と混和しにくく白濁してしまうが、四級アルキルアミン化されたセルロースナノファイバーを用いることで、上述の化合物(A)~(C)と白濁すること無く混和する。また、四級アルキルアミン化されたセルロースナノファイバーを用いることで、透明性に優れた硬化フィルムを提供することができる。また、副次的効果として、四級アルキルアミンを加えることにより、硬化フィルムに帯電防止性を持たせることが可能となる。
【0043】
〔セルロースナノファイバーの微細化工程〕
続いてセルロースナノファイバー分散液に物理的解繊処理を施して、酸化セルロースを微細化する。物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突等の機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中の酸化セルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するセルロースシングルナノファイバーの分散液を得ることができる。このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られるセルロースシングルナノファイバー分散液に含まれるセルロースシングルナノファイバーの数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
【0044】
このようにして微細化したセルロースシングルナノファイバーの分散液を上述の化合物(A)~(C)および光酸発生剤と混合し、硬化フィルム形成用組成物が完成する。
【0045】
または、上述のようなアンモニウム塩化工程および微細化工程を踏まず、酸化工程までを行った後、上述の化合物(A)~(C)、四級アンモニウム塩、光酸発生剤を加え、上記の物理的解繊処理を施しても構わない。処理条件により、セルロースシングルナノファイバーの数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
【0046】
光酸発生剤は、組成物を紫外線照射により反応させる為に添加される。光酸発生剤としては、紫外線が照射された際にカチオンを発生するものであれば良く、市販品としては、例えば、CPI-101A、CPI-100P、CPI-200K、CPI-210S(以上、サンアプロ(株)製)等が挙げられる。
【0047】
光酸発生剤の使用量は、化合物(A)及び(C)の合計に対して0.03~3重量%とすることが好ましく、この範囲より多い場合には、引張強度が低下する傾向にある。特に、多すぎる場合には、硬化重合体が着色する可能性もある。また、少ない場合には、硬化不足によるタックが生じる。
【0048】
また、硬化性重合体を形成する組成物に含まれる溶剤は、化合物との相溶性が良い、ケトン系溶剤であるアセトンないしはメチルエチルケトン等から塗工適性等を考慮して適宜選択される。
【0049】
調製した組成物には、防汚性、滑り性付与、欠陥防止、粒子の分散性向上のために添加剤を用いることができる。添加剤の例としては、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー、エポキシ系共重合物等が挙げられる。
【0050】
調製した組成物には、ブロッキング防止剤や硬度付与、防眩性、帯電防止性能付与、または屈折率調整のために無機あるいは有機化合物の微粒子を加えることが出来る。
【0051】
調製した組成物に添加する無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、五酸化アンチモンといった酸化物やアンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ等複合酸化物が挙げられる他、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等も使用することができる。
【0052】
また、有機微粒子としては、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリル-スチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン系粉末、ポリカーボネート粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末等を挙げることができる。
【0053】
無機あるいは有機微粒子の平均粒径としては、5nm~20μmが好ましく、より好ましくは10nm~10μmが好ましい。また、これらの微粒子は二種類以上を複合して用いることもできる。
【0054】
組成物は、溶媒に溶かして固形分を40~100質量%、より好ましくは60~95質量%に調整して、プラスチック基材フィルムに塗工することができる。固形分が40質量%よりも少ない場合は、目的の膜厚を得ることが困難になる。
【0055】
組成物を硬化させ、硬化フィルムを形成するための光源は、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を使用できる。照射条件として紫外線照射量は、通常100~500mJ/cmである。
【0056】
上記の材料を十分に混合し、基材に塗工・乾燥・UV露光した後で、加熱処理をすることにより、硬化性重合体が完成する。
【0057】
上記硬化性重合体をポストベイクする際、その加熱温度は、60乃至150℃であることが望ましい。加熱温度が60℃未満である場合、硬化不足により硬化フィルムを形成することが困難となる可能性がある。加熱温度が150℃を超える場合、硬化フィルムが茶色に変色する可能性がある。
【0058】
上記の硬化性重合体をポストベイクする際、その加熱時間は硬化不足とならないよう10分以上が望ましく、熱による劣化が起きないよう60分以下であることが望ましい。
【0059】
その後、硬化した硬化性重合体を基材から剥離することにより、硬化フィルムが完成する。
【0060】
硬化フィルムの厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましい。硬化フィルムの厚みが10μm未満であると、薄すぎて硬化フィルムの取扱い性が悪化する。一方、硬化フィルムの厚みが200μmを超えると、硬化フィルムが硬化しにくくなる。
【0061】
尚、基材への組成物の塗工方法としては、ウェットコーティング法を利用できる。ウェットコーティング法の例として、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を挙げることができる。
【実施例
【0062】
以下に、実施例を記載する説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0063】
〔評価方法〕
実施例及び比較例で得られた硬化フィルムについて、以下の評価試験を実施した。
【0064】
<引張特性>
基材の引張特性は、以下の方法により調べた。先ず、硬化フィルムを100mm(MD方向)×15mm(TD方向)の寸法に切り出して、短冊形状サンプルを得た。このサンプルについて、島津製作所社製小型卓上試験機EZ-Lを用いた測定を行った。ここでは、測定開始時のチャック間距離は50mmとし、引張速度は5mm/minとした。そして、引張伸度は、上記式(I)を用いて算出した。
【0065】
<熱線膨張係数>
基材の熱線膨張係数は、以下の方法により調べた。先ず、硬化フィルムを250mm(MD方向)×約4mm(TD方向)の寸法に切り出して、短冊形状サンプルを得た。このサンプルについて、日立ハイエンテクス製TMA SII EXSTAR6000 TMASS6100を用いた測定を行った。ここでは、測定時の荷重を25mNとして、2℃/分の速度で昇温し、温度-変位曲線により155℃から165℃における熱線膨張係数を算出した。
【0066】
以下の実施例及び比較例では、次の化合物を使用した。
・化合物(A):「jER828(三菱化学(株)製)」
・化合物(B):「プラクセル305(ポリカプロラクトントリオール、ダイセル化学工業(株)製)」
・化合物(C):「セロキサイド2021P(3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業(株)製)
・光酸発生剤:「CPI-210S(サンアプロ(株)製)」「CPI-110A(サンアプロ(株)製)」
・セルロース:針葉樹クラフトパルプ
・四級アルキルアミン化試薬:「ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(興人社製)」
【0067】
以下の実施例及び比較例で使用したセルロースナノファイバーは、以下のように調整した。
・木材セルロースのTEMPO酸化:
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.00mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて1mol/Lの塩酸で洗浄を行い、蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
【0068】
〔実施例1〕
<組成物の調製>
下記の配合割合(単位:重量部)で、化合物(A)、(B)、光酸発生剤、及び酸化パルプを混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させ、超音波をかけて脱泡することにより組成物を得た。
jER828 100.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
【0069】
<硬化性重合体の作製>
組成物の調製で得た組成物(メチルエチルケトン希釈)を、PETフィルムであるルミラーT60(厚さ75μm;東レ(株)製)に、バーコート法によって硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗膜を80℃のオーブンで2分40秒間乾燥させた後、これに高圧水銀ランプによって300mJ/cmの紫外線を照射した。その後、120℃・20分のポストベイクを経て硬化性重合体を得た。
【0070】
<硬化フィルムの作製>
硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度70N/mm、引張伸度5%、熱線膨張係数6×10-5/℃の特性良好な硬化フィルムであった。
【0071】
〔実施例2〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 11.1重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度70N/mm、引張伸度7%、熱線膨張係数6×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0072】
〔実施例3〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度75N/mm、引張伸度4%、熱線膨張係数4×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0073】
〔実施例4〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 100.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度50N/mm、引張伸度10%、熱線膨張係数9×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0074】
〔実施例5〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 50.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 10.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度80N/mm、引張伸度4%、熱線膨張係数1×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0075】
〔実施例6〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 100.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 50.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 10.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度60N/mm、引張伸度4%、熱線膨張係数4×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0076】
〔実施例7〕
jER828 90.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
セロキサイド2021P 10.0重量部
CPI-110A 0.03重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度55N/mm、引張伸度10%、熱線膨張係数5×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0077】
〔実施例8〕
jER828 80.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
セロキサイド2021P 20.0重量部
CPI-110A 0.03重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度65N/mm、引張伸度10%、熱線膨張係数6×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0078】
〔実施例9〕
jER828 50.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
セロキサイド2021P 50.0重量部
CPI-110A 0.03重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度50N/mm、引張伸度5%、熱線膨張係数8×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0079】
〔実施例10〕
jER828 90.0重量部
プラクセル305 11.1重量部
セロキサイド2021P 10.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 50.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 10.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度60N/mm、引張伸度6%、熱線膨張係数2×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0080】
〔実施例11〕
jER828 50.0重量部
プラクセル305 11.1重量部
セロキサイド2021P 50.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 50.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 10.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度70N/mm、引張伸度4%、熱線膨張係数5×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0081】
〔実施例12〕
jER828 90.0重量部
プラクセル305 100.0重量部
セロキサイド2021P 10.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 50.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 10.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・20分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度45N/mm、引張伸度20%、熱線膨張係数4×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0082】
〔実施例13〕
jER828 50.0重量部
プラクセル305 100.0重量部
セロキサイド2021P 50.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 50.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 10.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度50N/mm、引張伸度15%、熱線膨張係数7×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0083】
〔実施例14〕
jER828 50.0重量部
プラクセル305 11.1重量部
セロキサイド2021P 50.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度55N/mm、引張伸度4%、熱線膨張係数9×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0084】
〔実施例15〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が10μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度55N/mm、引張伸度7%、熱線膨張係数4×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0085】
〔実施例16〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
酸化パルプ 5.0重量部
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩 1.0重量部
を混合した後、遊星ボールミルを用いてメチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が200μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・60分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度60N/mm、引張伸度10%、熱線膨張係数6×10-5/℃である特性良好な硬化フィルムであった。
【0086】
〔比較例1〕
jER828 100.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
を混合した後、メチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度40N/mm、引張伸度15%、熱線膨張係数28×10-5/℃である、高熱線膨張かつ引張強度の低い硬化フィルムであった。
【0087】
〔比較例2〕
jER828 80.0重量部
プラクセル305 25.0重量部
セロキサイド2021P 20.0重量部
CPI-210S 1.0重量部
を混合した後、メチルエチルケトンに分散させた。組成物に超音波をかけて脱泡した後、PETフィルム上に硬化膜厚が45μmになるように塗布した。塗布した組成物(メチルエチルケトン希釈)をオーブン内で乾燥(80℃・2分40秒)した後、UV照射・ポストベイク(120℃・10分)により得られた硬化性重合体をPETフィルムから剥離して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムは、引張強度55N/mm、引張伸度15%、熱線膨係数24×10-5/℃である、高熱線膨張の硬化フィルムであった。
【0088】
表1に、上述した実施例1~16及び比較例1、2に係る組成物の組成、成膜条件、評価結果をまとめて示す。
【0089】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、低線膨張特性を必要とする半導体基材やタッチパネル等の表示装置の保護フィルム、その他の機能性フィルムの基材として利用できる。