(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両用バックドア、車両用警告システムと車両用警告方法
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220524BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B60R11/02 S
B60J5/10 Z
(21)【出願番号】P 2018099035
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 数人
(72)【発明者】
【氏名】坂 裕文
(72)【発明者】
【氏名】世良 直博
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 健太
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116902(JP,A)
【文献】特開平11-291874(JP,A)
【文献】米国特許第6019418(US,A)
【文献】特開2008-158963(JP,A)
【文献】特開2017-69806(JP,A)
【文献】実開昭58-135188(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60J 5/00 - 5/14
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用バックドア本体と、
前記バックドア本体に取り付けられたバックドアガラスと、
前記バックドア本体の車幅方向中央部に固定されたブラケットと、
前記ブラケットに固定されたモータと、
前記モータに駆動連結されたワイパ駆動軸と、
前記ワイパ駆動軸に取り付けられたワイパを備えた車両用バックドアにおいて、
前記ブラケットはスピーカ支持部を備えており、
前記スピーカ支持部にスピーカが支持されていることを特徴とする車両用バックドア。
【請求項2】
前記車幅方向に関して前記ワイパ駆動軸の左側又は右側のいずれか一方の領域に前記モータが配置され、前記左側又は右側のいずれか他方の領域に前記スピーカが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用バックドア。
【請求項3】
前記スピーカは、車高方向軸に対する前記スピーカの中心軸の角度が、前記車高方向軸に対する前記バックドアガラスの傾斜角よりも小さい状態で、前記ブラケットに固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両用バックドア。
【請求項4】
前記スピーカは、前記スピーカの中心軸が前記バックドアガラスに向けられた状態で、前記ブラケットに固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両用バックドア。
【請求項5】
前記バックドアガラスで反射した音が水平面よりも上に向けられるように前記スピーカが配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の車両用バックドア。
【請求項6】
車両後方の障害物を検知して警告音を発する車両用警告システムであって、
前記車両は請求項1~5のいずれかに記載の車両用バックドアを備えており、
前記車両用警告システムは、
車両後方の障害物を検知する検知部と、
前記障害物と前記車両との距離が所定値以下のとき、前記スピーカを駆動して警告音を発する制御部とを備えていることを特徴とする、車両用警告システム。
【請求項7】
車両後方の障害物を検知してスピーカから警告音を発する車両用警告方法であって、
前記車両は請求項1~5のいずれかに記載の車両用バックドアを備えており、
前記車両と前記障害物との距離が所定値以下のとき、前記スピーカを駆動して警告音を発することを特徴とする車両用警告方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用バックドアに関する。本発明はまた、車両用警告システムと車両用警告方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の変速シフトレバーが後進に設定された状態で、車両後部に設けたセンサが車両後方の障害物を検知すると、運転席の近くに設けたスピーカから警告音を発するように構成された支援システムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところが、このような後方障害物検知及び警告システムでは、運転席の近くからではなく、車室後方から警告音を発生させることが好ましい。これは、前席乗員(特に、ドライバ)が後方側に衝突の危険があることを直感的に理解しやすいためである。
【0005】
しかし、警告音を発するスピーカを車両後部に配置するためには、このスピーカを支持する部材が必要である。このような支持部材を新たに設けると、スピーカ以外にも多くの部品が必要になる。また、車室後部で発生した警告音を車室前部のドライバが確実に聴いて確認できるようにするためには、スピーカの配置位置や配置方向に十分な配慮が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、バックドアのリアワイパモータブラケットにスピーカを取り付けた車両用バックドア、及びその車両用バックドアを用いた車両用警告システム及び車両用警告方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的に、請求項1に係る実施形態は、
車両用バックドア本体と、
前記バックドア本体に取り付けられたバックドアガラスと、
前記バックドア本体の車幅方向中央部に固定されたブラケットと、
前記ブラケットに固定されたモータと、
前記モータに駆動連結されたワイパ駆動軸と、
前記ワイパ駆動軸に取り付けられたワイパを備えた車両用バックドアにおいて、
前記ブラケットはスピーカ支持部を備えており、
前記スピーカ支持部にスピーカが支持されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1の形態に係る車両用バックドアによれば、ワイパを駆動するモータを支持するためのブラケットにスピーカ支持部を設け、そこにスピーカを支持している。したがって、バックドアにスピーカを取り付けるにあたって、既存の構成(例えば、ワイパ駆動部)を大幅に変更する必要がない。
【0009】
請求項2に係る実施形態の車両用バックドアは、前記車幅方向に関して前記ワイパ駆動軸の左側又は右側のいずれか一方の領域に前記モータが配置され、前記左側又は右側のいずれか他方の領域に前記スピーカが配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の実施形態に係る車両用バックドアによれば、ワイパ駆動用モータとスピーカの干渉を避けることができる。また、ワイパ駆動軸を挟んで左右の重量をバランスさせることができる。
【0011】
請求項3に係る実施形態の車両用バックドアは、前記スピーカは、車高方向軸に対する前記スピーカの中心軸の角度が、前記車高方向軸に対する前記バックドアガラスの傾斜角よりも小さい状態で、前記ブラケットに固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の実施形態に係る車両用バックドアによれば、スピーカの発した音がバックドアガラスに反射して車室前方に送られるため、前席乗員は後方スピーカからの警告音等を確実に認識できる。
【0013】
請求項4に係る実施形態の車両用バックドアは、前記スピーカは、前記スピーカの中心軸が前記バックドアガラスに向けられた状態で、前記ブラケットに固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の実施形態に係る車両用バックドアによれば、スピーカの発した音がバックドアガラスに反射して車室前方に送られるため、前席乗員は後方スピーカからの警告音等を確実に認識できる。
【0015】
請求項5に係る実施形態の車両用バックドアは、前記バックドアガラスで反射した音が水平面よりも上に向けられるように前記スピーカが配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る実施形態の車両用バックドアによれば、バックドアガラスで反射した音は水平面よりも上に向けられるため、スピーカが発する音は後部座席を超えて前席乗員に確実に伝達される。したがって、ドライバは後方から来る音を確実に認識できる。
【0017】
請求項6の実施形態に係る、車両後方の障害物を検知して警告音を発する車両用警告システムにおいて、
前記車両は請求項1~5のいずれかに記載の車両用バックドアを備えており、
前記車両用警告システムは、
車両後方の障害物を検知する検知部と、
前記障害物と前記車両との距離が所定値以下のとき、前記スピーカを駆動して警告音を発する制御部とを備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る実施形態の車両用警告システムによれば、スピーカの発した音はバックドアガラスに反射して車室前方に送られる。したがって、ドライバは、スピーカが発した音を後方から来た音と認識し、後方障害物の存在を認識する。
【0019】
請求項7の実施形態に係る、車両後方の障害物を検知してスピーカから警告音を発する車両用警告方法は、
前記車両は請求項1~5のいずれかに記載の車両用バックドアを備えており、
前記車両と前記障害物との距離が所定値以下のとき、前記スピーカを駆動して警告音を発することを特徴とする。
【0020】
請求項7に係る実施形態の車両用警告方法によれば、スピーカの発した音はバックドアガラスに反射して車室前方に送られる。したがって、ドライバは、スピーカが発した音を後方から来た音と認識し、後方障害物の存在を認識する。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明の実施形態によれば、バックドアにスピーカを取り付けるにあたって、新たな構成を設ける必要がないし、既存の構成(例えば、ワイヤ駆動部)を大幅に変更する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1に示す車両用バックドアのバックドア本体の構造を示す、車室側から見た図である。
【
図3】
図2に示すバックドア本体からバックドアトリムを取り外した、スピーカの配置位置を示す、インナパネルを車両前方から見た概略図である。
【
図4】
図3に示すリアワイパモータブラケットの拡大図である。
【
図5】
図4に示すリアワイパモータブラケットを方向Aから見た概略図である。
【
図6】スピーカの発した音が進行する方向を説明する断面図である。
【
図7】スピーカを含む車両用警告システムの構成を示す図である。
【
図8】
図7に示す車両用警告システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図7,8に示す車両用警告システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車両用バックドア、車両用警告システムと車両用警告方法の実施形態を説明する。
【0024】
(1)車両用バックドア
図1,2は車両2の後部構造、特に跳ね上げ式バックドア4の構造を示す。バックドア4の前方には後部座席6が配置されており、バックドア4と後部座席6の間に、車室8の一部を構成する荷室10が形成されている。
【0025】
本発明は跳ね上げ方式のバックドアに限るものではない。周知のとおり、バックドア4の開閉方式には跳ね上げ方式、片開き方式、及び両開き方式が知られており、本発明は片開き方式及び両開き方式のバックドアについても同様に適用可能である。
【0026】
実施形態のバックドア4は、バックドア4の上端とそれに対応する車両本体部分にヒンジ機構(図示せず)を備えており、このヒンジ機構によってバックドア4が車両本体に対して跳ね上げ(開閉)可能となっている。また、バックドア4の下端と対応する車両本体部分にラッチ機構(図示せず)を備えており、このラッチ機構によってバックドア4が車両本体に対して施錠できるようになっている。
【0027】
バックドア4はバックドア本体12を有する。バックドア本体12は、バックドア本体上部14とバックドア本体下部16を含む。バックドア本体上部14は窓用開口部18を備えており、この窓用開口部18にバックドアガラス(後部窓ガラス)20が取り付けてある。実施形態において、窓用開口部18は、そこに取り付けたバックドアガラス20が後方から前方に向かって斜め上方に向けられるように形成されている。実施形態において、バックドアガラス20は、
図1に示すように、車室8の内側から外側に向かってわずかに凸状に湾曲している。
【0028】
図1に示すように、バックドア本体12は、内側のインナパネル22と外側のアウタパネル24を有する。実施形態では、バックドア本体下部16において、インナパネル22とアウタパネル24の間に補強パネル26が配置されている。また、インナパネル22の内側にはバックドアトリム28が設けてある。
【0029】
バックドアトリム28は、窓用開口部18の近くから車室内側前方に向かって伸びる上部水平部30と、上部水平部30の前端から下方に向かって伸びる垂直部32と、垂直部32の下端から後方に伸びる下部水平部34を有する。図示するように、実施形態では、上部水平部30は、窓用開口部18の近くから斜め下方前方に向かって傾斜している。
【0030】
バックドアトリム上部水平部30の車幅方向中央付近にはスピーカ用開口36が形成されおり、このスピーカ用開口36にスピーカ38が配置されている。
【0031】
図3を参照して詳細に説明すると、スピーカ38は、バックドアガラス20より下方にあって車幅方向中央部に固定されたリアワイパモータブラケット(以下、「ブラケット」という。)40に取り付けてある。なお、車幅方向中央部は、車幅方向の中央位置だけでなく、その近傍領域を含む。実施形態では、ブラケット40は、車幅方向両側に位置する左右の締結点42,44と、これらの締結点42,44の間に位置する中央の締結点46で適当な手段(例えば、ボルト)によってインナパネル22に固定されている。
【0032】
図4,5を参照して詳細に説明すると、ブラケット40はワイパ駆動部47を支持している。ワイパ駆動部47は、モータ48と、歯車機構(図示せず)を内蔵したギヤボックス50と、ワイパ駆動軸52を備えており、モータ48の回転がギヤボックス50内の歯車機構を介してワイパ駆動軸52で伝達されるように構成されており、モータ48の駆動に基づいてワイパ駆動軸52が所定角度の範囲を正逆回転するようになっている。ワイパ駆動軸52は、バックドア本体12又はバックドアガラス20を貫通して車室外に突出しており、その突出部にリアワイパ53(
図3を参照)が取り付けてある。
【0033】
実施形態では、車室の内側から外側に向かって見たとき、ワイパ駆動軸52を挟んで左側にモータ48とギヤボックス50が配置され、ワイパ駆動軸52を挟んで右側にスピーカ38が配置されている。したがって、モータ48とスピーカ38が干渉することがないし、左右の重量をバランスさせることができる。また、ブラケット40は左右の締結点42,44と中央の締結点46でインナパネル22に固定されているので、モータ48の振動がブラケット40によって増幅されることはない。
【0034】
図4に示すように、スピーカ38の外観は、上部構造54と下部構造56で構成されている。上部構造54は振動板58と該振動板58を囲むフレーム60を有する。下部構造56は、コイル、磁石、及びヨーク(いずれも図示せず)を含む。実施形態において、スピーカ38には、上部構造54と下部構造56との境界付近に、スピーカ38をブラケット40に取り付けるための環状フランジ62が固定されている。
【0035】
これに対し、ブラケット40において、スピーカ38を支持するスピーカ支持部64は、スピーカ下部構造56の外形に対応する大きさと形状を有する孔又は湾型の切り欠きが形成されており、この孔又は湾形切り欠きに下部構造56をはめ込み、ボルト66によって環状フランジ62をブラケット40に連結することで、スピーカ38がブラケット40に固定されている。
【0036】
スピーカ38の姿勢(特に向き)について説明すると、
図1に示すように、スピーカ38は、振動板58の振動方向、すなわちスピーカ38の中心軸がバックドアガラス20に対して斜めに当たるように、向けられている。
【0037】
図6を参照して詳細に説明すると、車両前後方向の縦断面上において、車高方向軸(鉛直軸)68とスピーカ中心軸70との交角をα1、スピーカ中心軸70がバックドアガラス20に当たる点72におけるバックドアガラス接線74と車高方向軸68との交角をα2とすると、α1<α2の関係を満たすように、バックドアガラス20に対してスピーカ38が設定されている。
【0038】
以下、スピーカ38が発した音の方向に関して、音の「方向」とはスピーカ中心軸70に沿って進行する音の方向をいう。スピーカ38の発した音が物(具体的には、バックドアガラス20)に反射して方向が変わる場合、スピーカ中心軸70に沿ってある入射角をもって物に入射した音が入射角と同じ反射角をもって物から反射する音の進行する方向をスピーカ中心軸といい、反射後のスピーカ中心軸を
図6では符号71で示している。
【0039】
本実施形態によれば、例えばα1が27度、α2が57度に設定されている。そのため、スピーカ38が発した音、特に中心軸70に沿って進行する最も音圧レベルの高い部分は、バックドアガラス20に当たった後、水平面76に対して約+3度の上り角度をもって前方に進む。その結果、反射音は、
図6に符号71で示すスピーカ中心軸に沿って、後部座席6の上を超えて前方に進行する。したがって、車室8の前方にいるドライバは、車両後方から送られた音をはっきりと聴き取ることができる。
【0040】
(2)警告システム
図7,8は、本発明に係る警告システム80の構成を示す。図示する実施形態の警告システム80は、上述したスピーカ38と、シフトレンジがリバースに設定されていることを検知するシフトセンサ82と、車体後部に存在する一つ又は複数の障害物検出センサ84と、これらのシフトセンサ82と障害物検出センサ84と電気的に接続されたコントローラ86を備えている。障害物検出センサ84は、後方障害物の有無又は車両と後方障害物との距離を検出できればいずれの形式のセンサであってもよい。
【0041】
このように構成された警告システム80によれば、
図9に示すように、コントローラ86は、シフトセンサ82の出力を受信し(ステップS1)、シフトがリバースレンジに設定されているか否か判断する(ステップS2)。シフトがリバースレンジに設定されている場合、コントローラ86は障害物検出センサ84の出力を受信し(ステップS3)、障害物の有無を判断し(ステップS4)、障害物が有れば該障害物と車両との距離(D)が予め決められた閾値(Dt)以下か否か判断し(ステップS5)、距離(D)が閾値(Dt)以下であればスピーカ36を駆動して所定の警告音を発する(ステップS6)。上述のとおり、スピーカ36からの警告音は、バックドアガラス20で反射し、車室前方に送られる。したがって、ドライバは、後方から伝わる警告音を聞くことによって、後方に障害が存在することを直感的に認識できる。
【符号の説明】
【0042】
4:バックドア
12:バックドア本体
20:バックドアガラス
38:スピーカ
40:リアワイパモータブラケット
47:ワイパ駆動部
48:モータ
52:ワイパ駆動軸
53:ワイパ
64:スピーカ支持部
68:車高方向軸
70:スピーカ中心軸