(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】バルコニ床構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20220524BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20220524BHJP
E04B 5/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E04B1/00 501M
E04B5/02 P
E04B5/10
(21)【出願番号】P 2018111075
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】飯島 秀一郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-319137(JP,A)
【文献】特開平05-321346(JP,A)
【文献】特開2013-127148(JP,A)
【文献】特開平08-284246(JP,A)
【文献】実開平02-081828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 5/02
E04B 5/10
E04C 3/04
E04C 3/12
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面が基端側から先端側に向けて下り勾配とされたバルコニの床フレームの一部を構成すると共に、バルコニの基端側と先端側とにそれぞれ対向して配置されかつ断面内に接合用ブラケットが設けられた一対の床大梁と、
バルコニ基端側の前記床大梁とバルコニ先端側の前記床大梁との間に複数架け渡され、長手方向の両端部が前記ブラケットに接合されると共にバルコニ基端側端部の高さ寸法がバルコニ先端側端部の高さ寸法よりも大きく、かつ少なくとも前記バルコニ基端側端部の上端部は前記バルコニ基端側の床大梁の上面よりも上方に突出し、上面が前記勾配と同一勾配の傾斜面を構成すると共に床下地材を支持するように構成された床小梁と、
を備え
、
前記床小梁の下面は略水平である、
バルコニ床構造。
【請求項2】
前記バルコニ基端側の床大梁の上面の上に配置されて上面が前記床下地材を支持するスペーサを備える、請求項
1に記載のバルコニ床構造。
【請求項3】
前記一対の床大梁がバルコニ基端側とバルコニ先端側とに二対並列に配置され、バルコニ基端側に配置された第1の一対の床大梁の間に架け渡された第1の床小梁の前記バルコニ先端側端部の高さ寸法は、バルコニ先端側に配置された第2の一対の床大梁の間に架け渡された第2の床小梁の前記バルコニ基端側端部の高さ寸法よりも大きく、前記第1の床小梁の上面と前記第2の床小梁の上面とで前記傾斜面を構成すると共に前記床下地材を支持するように構成され、
さらに、前記第1の一対の床大梁を構成する前記バルコニ基端側の床大梁の上面の上に配置されて上面が前記床下地材を支持する第1のスペーサと、
前記第1の一対の床大梁を構成する前記バルコニ先端側の床大梁の上面と前記第2の一対の床大梁を構成する前記バルコニ基端側の床大梁の上面との間に架け渡されて上面が前記床下地材を支持する第2のスペーサと、
を備える請求項
1に記載のバルコニ床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニ床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、相対する床大梁間に架け渡され、一方の床大梁から他方の床大梁に向かう勾配を有する床小梁の取付構造が開示されている。この床小梁の長手方向の両端に予め設けられた取付係合片は、上フランジ上面の高さ方向における位置が床小梁の一端と他端とで異なるようにそれぞれ位置合わせされて床小梁の両端に溶接されている。この取付係合片の上フランジを相対する床大梁のそれぞれの上フランジ上面にのせた状態で取付係合片が床大梁に固定されることにより、床小梁に所定の勾配が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、床小梁に勾配を付与するために取付係合片を要するため、部材点数が増加する。また、取付係合片を予め床小梁に溶接しておき、更に床大梁に固定する必要があり施工に手間がかかる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、取付係合片を設けることなくバルコニの床面に勾配を設けることができるバルコニ床構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るバルコニ床構造は、床面が基端側から先端側に向けて下り勾配とされたバルコニの床フレームの一部を構成すると共に、バルコニの基端側と先端側とにそれぞれ対向して配置されかつ断面内に接合用ブラケットが設けられた一対の床大梁と、バルコニ基端側の前記床大梁とバルコニ先端側の前記床大梁との間に複数架け渡され、長手方向の両端部が前記ブラケットに接合されると共にバルコニ基端側端部の高さ寸法がバルコニ先端側端部の高さ寸法よりも大きく、かつ少なくとも前記バルコニ基端側端部の上端部は前記バルコニ基端側の床大梁の上面よりも上方に突出し、上面が前記勾配と同一勾配の傾斜面を構成すると共に床下地材を支持するように構成された床小梁と、を備える。
【0007】
第1の態様に係るバルコニ床構造によれば、バルコニ基端側の床大梁とバルコニ先端側の床大梁との間に床小梁が複数架け渡されている。この床小梁は、バルコニ基端側端部の高さ寸法がバルコニ先端側端部の高さ寸法よりも大きく、かつ少なくともバルコニ基端側端部の上端部がバルコニ基端側の床大梁の上面よりも上方に突出するように構成されている。また、床小梁の上面がバルコニ床面の勾配と同一勾配の傾斜面とされ、床小梁の上面により床下地材が支持されている。このように床小梁のバルコニ基端側端部の高さ寸法がバルコニ先端側端部の高さ寸法よりも大きくなるように構成されていることで、床小梁の上面がバルコニ基端側からバルコニ先端側に向けた下り勾配の傾斜面とされ、取付係合片を設けることなくバルコニの床面に勾配を設けることができる。
【0008】
第2の態様に係るバルコニ床構造は、第1の態様に係るバルコニ床構造において、前記床小梁の下面は略水平である。
【0009】
第2の態様に係るバルコニ床構造によれば、床小梁の下面が略水平とされている。このため、床小梁の下面が傾斜面とされている場合に比べて、床小梁の長手方向両端部を床大梁に設けられたブラケットに接合する際の位置合わせを容易かつ正確に行うことができる。これにより、取付係合片を設けることなく、容易かつ正確に床小梁に勾配を設けることができる。
【0010】
第3の態様に係るバルコニ床構造は、第1又は第2の態様に係るバルコニ床構造において、前記バルコニ基端側の床大梁の上面の上に配置されて上面が前記床下地材を支持するスペーサを備える。
【0011】
第3の態様に係るバルコニ床構造によれば、バルコニ基端側の床大梁の上面の上にスペーサが配置され、このスペーサの上面により床下地材が支持される。このため、床下地材が広い範囲で支持される。
【0012】
第4の態様に係るバルコニ床構造は、第1又は第2の態様に係るバルコニ床構造において、前記一対の床大梁がバルコニ基端側とバルコニ先端側とに二対並列に配置され、バルコニ基端側に配置された第1の一対の床大梁の間に架け渡された第1の床小梁の前記バルコニ先端側端部の高さ寸法は、バルコニ先端側に配置された第2の一対の床大梁の間に架け渡された第2の床小梁の前記バルコニ基端側端部の高さ寸法よりも大きく、前記第1の床小梁の上面と前記第2の床小梁の上面とで前記傾斜面を構成すると共に前記床下地材を支持するように構成され、さらに、前記第1の一対の床大梁を構成する前記バルコニ基端側の床大梁の上面の上に配置されて上面が前記床下地材を支持する第1のスペーサと、前記第1の一対の床大梁を構成する前記バルコニ先端側の床大梁の上面と前記第2の一対の床大梁を構成する前記バルコニ基端側の床大梁の上面との間に架け渡されて上面が前記床下地材を支持する第2のスペーサと、を備える。
【0013】
第4の態様に係るバルコニ床構造によれば、二対の床大梁が並列に配置され、バルコニ基端側に配置された第1の一対の床大梁の間に架け渡された第1の床小梁のバルコニ先端側端部の高さ寸法は、バルコニ先端側に配置された第2の一対の床大梁の間に架け渡された第2の床小梁のバルコニ基端側端部の高さ寸法よりも大きくなるように構成されている。このように、バルコニ基端側からバルコニ先端側に向かうにつれて第1の床小梁及び第2の床小梁の長手方向端部の高さ寸法が順に小さくなるように構成されていることにより、第1の床小梁の上面と第2の床小梁の上面とでバルコニ基端側からバルコニ先端側に向けた下り勾配の傾斜面が構成され、広いバルコニであっても取付係合片を設けることなくバルコニの床面に勾配を設けることができる。
【0014】
また、第1の一対の床大梁を構成するバルコニ基端側の床大梁の上面の上に第1のスペーサが配置され、第1の一対の床大梁を構成するバルコニ先端側の床大梁の上面と第2の一対の床大梁を構成するバルコニ基端側の床大梁の上面との間に第2のスペーサが架け渡されている。そして、第1のスペーサの上面及び第2のスペーサの上面により、床下地材が支持される。第1のスペーサ及び第2のスペーサが配置されることにより、広いバルコニであっても、床下地材が広い範囲で支持される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係るバルコニ床構造は、取付係合片を設けることなくバルコニの床面に勾配を設けることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は第1実施形態に係るバルコニ床構造が適用されたユニット建物の斜視図である。(B)は(A)のユニット建物の平面図である。
【
図2】
図1に示されるユニット建物のバルコニ床フレームの平面図である。
【
図3】バルコニ床構造の要部を示す、
図1(B)の3-3線断面図である。
【
図5】第2実施形態に係るバルコニ床構造が適用されたユニット建物の平面図である。
【
図6】バルコニ床構造の要部を示す、
図5の6-6線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、
図1~
図4を用いて、本発明に係るバルコニ床構造の第1実施形態について説明する。
【0018】
<バルコニ床構造が適用されたユニット建物10の構成>
図1(A)には、本実施形態に係るバルコニ床構造が適用されたユニット建物10をバルコニ側から見た斜視図が示されており、
図1(B)には、
図1(A)のユニット建物10の平面図が示されている。これらの図に示されるように、ユニット建物10は、一階部分を構成する建物ユニット12、14と、一階部分の建物ユニット14の上に設けられた二階部分の建物ユニット16と、一階部分の建物ユニット12の上に建物ユニット16と並列に設けられたバルコニ18と、を含んで構成されている。バルコニ18の外周には、建物ユニット16と接していない部分に腰壁部20が設けられている。
【0019】
建物ユニット12、14、16は、直方体の箱型ユニットであり、四隅に立設された図示しない4本の柱と、これらの柱の上端同士を連結しユニット天井を形成する図示しない天井フレームと、柱の下端同士を連結しユニット床を形成する図示しない床フレームと、によってその躯体が構成されている。
【0020】
図2に示されるように、バルコニ18の床フレーム22は、溝形鋼で構成された短辺側の一対の床大梁24、26と長辺側の一対の床大梁28、30とがそれぞれ対向して配置され、矩形枠状とされている。床フレーム22は更に、長辺側の一対の床大梁28、30間に所定の間隔で配置された床小梁32を備えている。床大梁28、30の溝形鋼の断面内には、後述する接合用のブラケット34、36(
図3参照)が設けられ、このブラケット34、36に床小梁32の長手方向両端部が接合されている。
【0021】
<第1実施形態の要部構成>
次に、第1実施形態に係るバルコニ床構造の要部の構成について詳細に説明する。
【0022】
図3は、
図1(B)に示されるユニット建物10の平面図において3-3線に沿って切断された状態の断面図であり、第1実施形態に係るバルコニ床構造の要部が示されている。この図において、一点鎖線は建物ユニット12、14、16、及びバルコニ18の境界線を示している。この図に示されるように、前述したバルコニ18の床フレーム22の長辺側の一対の床大梁28、30は、バルコニ18の基端側(建物ユニット16側)に配置されたバルコニ基端側の床大梁28(以下、適宜「床大梁28」と称する)と、バルコニ18の先端側に配置されたバルコニ先端側の床大梁30(以下、適宜「床大梁30」と称する)とから構成されている。そして、床大梁28、30が、一階部分の建物ユニット12の一部を構成する一対の天井大梁38、40の上にそれぞれ配置されている。同様に、二階部分の建物ユニット16の床大梁42は、一階部分の建物ユニット14の一部を構成する天井大梁44の上に配置されている。
【0023】
バルコニ18の床大梁28、30は、バルコニ18の内側に向かって開放された溝形鋼により構成されており、床大梁28と床大梁30とは設置される向きが異なるが寸法及び構造は同じである。床大梁28、30の断面内側には、床小梁32を接合するためのブラケット34、36が設けられている。ブラケット34、36は、板厚方向が床大梁28、30の長手方向とされた板状部材であり、上下方向の高さが床大梁28、30の内寸の高さと略同一とされると共に、板厚方向と直交する水平方向の幅が床大梁28、30の幅よりも大きく設定されている。そして、ブラケット34、36の上下端部の一部と、板厚方向と直交する水平方向の一端とが、床大梁28、30の内側に溶接により接合されている。ブラケット34、36の水平方向の他端は、床大梁28、30の側端よりもバルコニ18内側に突出している。
【0024】
図4に示されるように、床小梁32は、上フランジ32Aと、ウエブ32Bと、下フランジ32Cと、を含んで構成されている。下フランジ32Cは、床フレーム22(
図2参照)が組み立てられた状態で略水平とされている。ウエブ32Bは、下フランジ32Cの一端から垂直に立ち上がるように構成され、上フランジ32Aは、ウエブ32Bの上端から垂直かつ下フランジ32Cと同じ側に延出されている。ここで、床小梁32の長手方向のバルコニ基端側端部32D(以下、適宜「端部32D」と称する。)の高さ寸法H1は、バルコニ先端側端部32E(以下、適宜「端部32E」と称する。)の高さ寸法H2よりも大きくなるように設定されている。このため、上フランジ32Aと下フランジ32Cとは、平行とはされておらず、下フランジ32Cが水平であるのに対して、上フランジ32Aは、端部32Dから端部32Eに向かって下り勾配とされている。
【0025】
床小梁32を製造する方法としては、一例として、断面が直角とされた冶具を角部が下になるように設置しておき、その上に板状材料を水平に載置し、冶具と同じ向きを有する直角の型で板状材料を上から押圧して冶具と型とで板状材料を挟み込むことにより上フランジ32A及び下フランジ32Cを形成することが可能である。このとき、上フランジ32A形成時と下フランジ32C形成時とで2度の押圧作業を行うことになるが、2度目の押圧作業を行う前に、板状材料の方向を面内で所定の角度だけ変更することにより、上フランジ32Aと下フランジ32Cとは互いに平行ではなく、所定の角度を持つように構成される。これにより、端部32D、32Eの高さH1、H2が異なる床小梁32が得られる。
【0026】
図3に戻ると、床小梁32の下フランジ32Cが水平とされた状態で、床小梁32の端部32D、32Eが床大梁28、30に設けられたブラケット34、36にそれぞれ接合されている。詳しく説明すると、バルコニ基端側端部32Dにおけるウエブ32Bの外面の下部が、ブラケット34の床大梁28側端よりもバルコニ18内側に突出した部分の上部に重ね合わされて溶接により接合されている。ここで、床小梁32の端部32Dの上端部は、床大梁28の上フランジ28Aの上面よりも上方に突出している。そして、バルコニ先端側端部32Eにおけるウエブ32Bの外面が、ブラケット36が床大梁30側端よりもバルコニ18内側に突出した部分の上部に重ね合わされて溶接により接合されている。ここで、床小梁32の端部32Eの上端は、床小梁32の上フランジ32Aの上面と床大梁30の上フランジ30Aの上面との間に段差を生じないように位置合わせされている。
【0027】
床小梁32の上フランジ32Aの上面の上には、バルコニ基端側から先端側に亘って、床下地材46が載置されている。ここで、前述のように床小梁32の端部32Dの上端部が、床大梁28の上フランジ28A上面よりも上方に突出していることにより、床大梁28の上フランジ28Aの上面と床下地材46の下面との間に隙間が形成される箇所では、床大梁28の上フランジ28Aの上面にスペーサ48が配置され、このスペーサ48により床下地材46が支持されている。このスペーサ48は、床大梁28に沿って延在する長尺状とされてもよいし、所定の間隔で複数配置される構成としてもよい。
【0028】
床下地材46の上面には、断熱材50が配置され、断熱材50の上面には断熱材50よりも耐熱性の高い高耐熱断熱材52が配置されている。高耐熱断熱材52の上には、図示しない防水下地材及び床仕上げ材がこの順で配置されている。断熱材50、高耐熱断熱材52、防水下地材及び床仕上げ材はそれぞれ厚さが均一に構成されているため、床仕上げ材の上面により構成される床面54は床小梁32の上フランジ32Aの上面の下り勾配と同じ勾配(矢印Pで示される)を有する傾斜面を構成する。これにより、バルコニ18の床面54の上の水は、バルコニ基端側から先端側に流れる。
【0029】
バルコニ先端側には、床大梁30の長手方向に沿って床下地材46上面に断熱材50及び高耐熱断熱材52が配置されていない部分が設けられ、この部分の床下地材46の上面には断面が略三角形状の三次元勾配付の断熱材56が配置される。この断熱材56の上面は、バルコニ基端側から先端側に向かう下り勾配(矢印Qで示される)と、床大梁30の長手方向に沿って一端から他端に向かう下り勾配(紙面手前から奥に向かう勾配)とを併せ持つように構成されている。これにより、三次元勾配付の断熱材56の上に配置された図示しない防水下地材上の水は、バルコニ18の先端側の一角に向かって床大梁30の長手方向に沿って流れ、この一角に配置された図示しない排水孔からユニット建物10の外に排出される。
【0030】
バルコニ18の先端側に配置された床大梁30のウエブ30Bの外側には、腰壁部20が設けられている。腰壁部20は、ウエブ30Bの外側に下部が接合された柱58と、柱58の外側と内側とに図示しないビスによりそれぞれ固定された外壁パネル60と内壁パネル62と、を含んで構成されている。柱58の下端は、床大梁30のウエブ30Bに接合された支持部材64の上面によって支持されている。内壁パネル62の下端には、ビス66により柱58に固定された水切り68が設けられている。なお、
図3では図示されない短辺側の一対の床大梁24、26の外側に設けられた腰壁部20も、同様に構成されている。
【0031】
二階部分の建物ユニット16のバルコニ18側の床大梁42の上方には、防水立上り部70が設けられている。防水立上り部70の室外側には、サッシ下枠72と水切り74とが設けられ、窓等をつたって落下してきた水がバルコニ18の床面54に落下するように構成されている。
【0032】
<作用及び効果>
次に、第1実施形態に係るバルコニ床構造の作用及び効果について説明する。
【0033】
本実施形態に係るバルコニ床構造では、
図3に示されるように、バルコニ基端側の床大梁28とバルコニ先端側の床大梁30との間に床小梁32が複数架け渡されている。この床小梁32は、バルコニ基端側端部32Dの高さ寸法H1がバルコニ先端側端部32Eの高さ寸法H2よりも大きく、かつ少なくともバルコニ基端側端部32Dの上端部がバルコニ基端側の床大梁28の上面よりも上方に突出するように構成されている。また、床小梁32の上フランジ32Aの上面がバルコニ18の床面54の勾配と同一勾配の傾斜面とされ、床小梁32の上フランジ32Aの上面により床下地材46が支持されている。このように床小梁32のバルコニ基端側端部32Dの高さ寸法H1がバルコニ先端側端部32Eの高さ寸法H2よりも大きくなるように構成されていることで、床小梁32の上フランジ32Aの上面がバルコニ基端側から先端側に向けた下り勾配の傾斜面とされ、取付係合片を設けることなくバルコニ18の床面54に勾配を設けることができる。
【0034】
また、本実施形態に係るバルコニ床構造では、床面54の勾配が床小梁32の上フランジ32A上面の勾配と略同一とされている。換言すると、床小梁32の上フランジ32A上面に配置される断熱材50及び高耐熱断熱材52はそれぞれ厚さが均一に構成されている。このため、断熱材50及び高耐熱断熱材52に勾配を付与することにより床面54に水勾配を付与する場合に比べて、断熱材50及び高耐熱断熱材52の使用量を減らすことが可能となる。前述のとおり、床小梁32の上フランジ32Aを傾斜面とするためには、上フランジ32A形成時と下フランジ32C形成時とで板状材料の方向を面内で所定の角度だけ変更すればよいので、追加の作業や材料費は極めて少ない。断熱材50及び高耐熱断熱材52の材料費が非常に高額であることから、断熱材50及び高耐熱断熱材52の使用量を減らすことにより、全体の材料費を大幅に削減することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係るバルコニ床構造では、床小梁32の下面が略水平とされている。床小梁32の下面が略水平とされたバルコニ床構造を得るためには、床大梁28、30に設けられた接合用ブラケット34、36に床小梁の端部32D、32Eを接合する作業を、上面が水平面を構成する支持部材、例えば均一な厚さを有する板状支持部材等の上に床小梁32を載置した状態で行えばよい。このため、床小梁32の下面が傾斜面とされている場合に比べて、床小梁32の長手方向端部32Dと端部32Eとで異なる高さに調節するなどの複雑な位置合わせを必要とせずに、位置合わせを容易かつ正確に行うことができる。これにより、取付係合片を設けることなく、容易かつ正確に床小梁に勾配を設けることができる。
【0036】
また、本実施形態に係るバルコニ床構造では、バルコニ基端側の床大梁28の上面の上にスペーサ48が配置されている。このスペーサ48の上面により、床下地材46が支持される。床小梁32のバルコニ基端側端部32Dの上端部が床大梁28の上面よりも上方に突出することにより床大梁28の上面と床下地材46の下面との間に形成される隙間にスペーサ48が配置されることにより、床下地材46が広い範囲で支持される。
【0037】
〔第2実施形態〕
以下、
図5~
図7を用いて、本発明に係るバルコニ床構造の第2実施形態について説明する。なお、これらの図では、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0038】
図5には、第2実施形態に係るバルコニ床構造が適用されたユニット建物100の平面図が示されている。
図6は、
図5に示されるユニット建物100の平面図において6-6線に沿って切断された状態の断面図であり、第2実施形態に係るバルコニ床構造の要部が示されている。これらの図に示されるように、ユニット建物100のバルコニ102は、バルコニ基端側(建物ユニット104側)の第1のバルコニユニット106と、先端側の第2のバルコニユニット108とが並列に配置されて構成されている。第1のバルコニユニット106は、第1の一対の床大梁110、112と、第1の床小梁114とから構成され、第2のバルコニユニット108は、第2の一対の床大梁116、118と、第2の床小梁120とから構成されている。
【0039】
第1の一対の床大梁110、112と、第2の一対の床大梁116、118とは、一階部分の建物ユニット122、124の天井大梁126、128、130、132の上にそれぞれ配置されている。
【0040】
図6及び
図7に示されるように、第1の床小梁114のバルコニ基端側端部114D(以下、適宜「端部114D」と称する。)の高さ寸法H3及びバルコニ先端側端部114E(以下、適宜「端部114E」と称する。)の高さ寸法H4と、第2の床小梁120のバルコニ基端側端部120D(以下、適宜「端部120D」と称する。)の高さ寸法H5及びバルコニ先端側端部120E(以下、適宜「端部120E」と称する。)の高さ寸法H6とは、高さ寸法H3が一番大きく、続いて、H4、H5、H6の順に小さくなってゆくように設定されている(H3>H4>H5>H6)。ここで、少なくとも端部114D、端部114E、端部120Dの上端部は、床大梁110、112、116の上フランジ110A、112A、116Aの上面よりも上方に突出している。また、第1の床小梁114の上フランジ114Aの上面と第2の床小梁120の上フランジ120Aの上面とは、同一平面を構成し、第1の床小梁114の端部114Dから第2の床小梁120の端部120Eに向かう下り勾配(矢印Rで示される)を有する傾斜面を構成している。
【0041】
第1の床小梁114の下フランジ114C及び第2の床小梁120の下フランジ120Cは、それぞれ水平に構成されると共に、高さ方向の位置が略同一とされている。この状態で、床小梁114の端部114D、114Eにおけるウエブ114Bの外面がそれぞれ床大梁110、112に設けられたブラケット134、136に溶接により接合されている。同様に、床小梁120の端部120D、120Eにおけるウエブ120Bの外面がそれぞれ床大梁116、118に設けられたブラケット138、140に溶接により接合されている。
【0042】
第1の床小梁114の上フランジ114A及び第2の床小梁120の上フランジ120Aの上面の上には、バルコニ基端側から先端側に亘って、床下地材142が配置されている。床大梁110の上フランジ110Aの上面と床下地材142の下面との間に隙間が形成される箇所では、床大梁110の上フランジ110Aの上面に第1のスペーサ144が配置され、この第1のスペーサ144により床下地材142が支持されている。また、床大梁112の上面と床大梁116の上面との間に架け渡された第2のスペーサ146が配置され、この第2のスペーサ146により床下地材142が支持されている。
【0043】
床下地材142の上面には、断熱材148が配置され、断熱材148の上面には断熱材148よりも耐熱性の高い高耐熱断熱材150が配置されている。高耐熱断熱材150の上には、図示しない防水下地材及び床仕上げ材がこの順で配置されている。断熱材148、高耐熱断熱材150、防水下地材及び床仕上げ材はそれぞれ厚さが均一に構成されているため、床仕上げ材の上面により構成される床面152は床小梁114、120の上フランジ114A、120Aの上面の下り勾配と同じ勾配(矢印Rで示される)を有する傾斜面を構成する。これにより、バルコニ102の床面152の上の水は、バルコニ基端側から先端側に流れる。バルコニ先端側に集められた水は、三次元勾配付の断熱材154の勾配によってバルコニ102の先端側の一角に向かって流れ、この一角に配置された図示しない排水孔からユニット建物100の外に排出される。
【0044】
<作用及び効果>
次に、第2実施形態に係るバルコニ床構造の作用及び効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係るバルコニ床構造では、
図6に示されるように、二対の床大梁110、112、116、118が並列に配置され、バルコニ基端側に配置された第1の一対の床大梁110、112の間に架け渡された第1の床小梁114のバルコニ先端側端部114Eの高さ寸法H4は、バルコニ先端側に配置された第2の一対の床大梁116、118の間に架け渡された第2の床小梁120のバルコニ基端側端部120Dの高さ寸法H5よりも大きくなるように構成されている。このように、バルコニ基端側から先端側に向かうにつれて第1の床小梁114及び第2の床小梁120の端部114D、114E、120D、120Eの高さ寸法H3、H4、H5、H6が順に小さくなるように構成されていることにより、第1の床小梁114の上面と第2の床小梁120の上面とでバルコニ基端側から先端側に向けた下り勾配の傾斜面が構成され、広いバルコニ102であっても取付係合片を設けることなくバルコニ102の床面152に勾配を設けることができる。
【0046】
また、第1の一対の床大梁110、112を構成するバルコニ基端側の床大梁110の上面の上に第1のスペーサ144が配置され、第1の一対の床大梁110、112を構成するバルコニ先端側の床大梁112の上面と第2の一対の床大梁116、118を構成するバルコニ基端側の床大梁116の上面との間に第2のスペーサ146が架け渡されている。そして、第1のスペーサ144の上面及び第2のスペーサ146の上面により、床下地材142が支持される。床小梁114、120の端部114D、114E、120Dの上端部が床大梁110、112、116の上面よりも上方に突出する箇所では、床大梁110、112、116の上面と床下地材142の下面との間に隙間が形成されるが、この隙間に第1のスペーサ144及び第2のスペーサ146が配置されることにより、広いバルコニ102であっても、床下地材142が広い範囲で支持される。
【0047】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記第1及び第2実施形態では、一階の建物ユニット12、122、124の上にバルコニ18、102が配置される構成としたが、バルコニ下に建物ユニットのない片持ち支持構造のバルコニにおいて第1及び第2実施形態に係るバルコニ床構造を適用してもよい。
【0048】
また、上記第2実施形態では、2つのバルコニユニット106、108を並列に配置してバルコニ102を構成したが、3つ以上のバルコニユニットを並列に配置してバルコニを構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
18 バルコニ
22 床フレーム
28、30 一対の床大梁
28 バルコニ基端側の床大梁
30 バルコニ先端側の床大梁
32 床小梁
32D バルコニ基端側端部
32E バルコニ先端側端部
34、36 ブラケット
46 床下地材
48 スペーサ
54 床面
H1、H2 高さ寸法
110、112 第1の一対の床大梁
110 バルコニ基端側の床大梁
112 バルコニ先端側の床大梁
114 第1の床小梁
114E バルコニ先端側端部
116、118 第2の一対の床大梁
116 バルコニ基端側の床大梁
120 第2の床小梁
120D バルコニ基端側端部
134、136、138、140 ブラケット
142 床下地材
144 第1のスペーサ
146 第2のスペーサ
152 床面
H4、H5 高さ寸法