(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 63/30 20060101AFI20220524BHJP
F16H 61/34 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
F16H63/30
F16H61/34
(21)【出願番号】P 2018113311
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】松元 光輔
(72)【発明者】
【氏名】笹子 洋平
(72)【発明者】
【氏名】東山 友幸
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-286346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/30
F16H 61/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を伝達する軸を支持する変速機ケースと、
前記変速機ケース内に配置されるシフト装置と、を備え、
前記変速機ケースは、
前記軸の一端側を支持する軸受部が形成される第1側壁と、
前記第1側壁に連なり、前記軸の軸方向他端側に向かうに従って前記軸の径方向外側に傾斜する第2側壁と、
前記第2側壁に連なり、前記軸に対向する第3側壁と、を有し、
前記シフト装置は、
前記軸と前記第3側壁との間で前記軸の軸方向に対して交差する方向に延びるシフトアンドセレクト軸と、
変速段のニュートラル状態を検出する第1ニュートラルスイッチ及び第2ニュートラルスイッチと、を有し、
前記第1ニュートラルスイッチは、前記第3側壁に設けられ、
前記第2ニュートラルスイッチは、前記第2側壁に設けられ、
前記第1ニュートラルスイッチ及び前記第2ニュートラルスイッチは、前記シフトアンドセレクト軸に対向するように配置され、
前記第2側壁は、前記第2ニュートラルスイッチを取り付けるための取付部を有し、
前記取付部は、第1側壁側に偏って配置されることを特徴とする変速機。
【請求項2】
前記第2側壁の内側面に、前記シフトアンドセレクト軸に向かって膨出する膨出部が形成されることを特徴とする請求項
1に記載の変速機。
【請求項3】
前記膨出部は、
前記第1ニュートラルスイッチに向かって膨出する第1膨出部と、
前記第1膨出部及び前記取付部に連なる第2膨出部と、を有することを特徴とする請求項
2に記載の変速機。
【請求項4】
前記変速機ケースは、前記軸の他端側を支持する軸受部が形成される隔壁を更に有し、
前記隔壁に沿ってファイナルドリブンギヤが配置され、
前記シフトアンドセレクト軸は、前記ファイナルドリブンギヤの回転方向下流側において、前記隔壁の側方に配置され、
前記隔壁側に配置される前記第1ニュートラルスイッチは、接触式のセンサで構成され、
前記シフトアンドセレクト軸を挟んで前記隔壁の反対側に配置される前記第2ニュートラルスイッチは、非接触式のセンサで構成されることを特徴とする請求項
3に記載の変速機。
【請求項5】
前記シフトアンドセレクト軸には、
前記第1ニュートラルスイッチに対向する第1カム部と、
前記第2ニュートラルスイッチに対向する第2カム部と、が設けられ、
前記膨出部は、前記第1カム部及び前記第2カム部と同じ高さに設けられ、
前記第1膨出部は、前記第1カム部に向かって膨出し、
前記第2膨出部は、前記第2カム部に向かって膨出することを特徴とする請求項
4に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の手動変速機においては、変速段のニュートラル位置を検出するニュートラルスイッチが設けられる(特許文献1参照)。特許文献1に記載のニュートラルスイッチは、先端に出没自在の凸状のセンシング部と、該センシング部が当接するカム部(ニュートラル検出峰部)とを備えた、いわゆる接触式のセンサで構成される。センシング部の当接位置がカム部との関係で変化することにより、変速機のニュートラル状態又は非ニュートラル状態を検出することが可能である。このようなニュートラルスイッチは、例えば、変速機ケースを貫通するように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変速機ケースは、エンジンに隣接して配置されるため、エンジンの振動によって変速機ケースにも振動が発生し得る。上記のように変速機ケースにニュートラルスイッチが設けられる場合、変速機ケースの振動がニュートラルスイッチに伝達される可能性がある。この結果、ニュートラルスイッチの検出精度に影響を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、ニュートラルスイッチに対する振動を抑制して、ニュートラル状態の検出精度を向上させることができる変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の変速機は、エンジンの動力を伝達する軸を支持する変速機ケースと、前記変速機ケース内に配置されるシフト装置と、を備え、前記変速機ケースは、前記軸の一端側を支持する軸受部が形成される第1側壁と、前記第1側壁に連なり、前記軸の軸方向他端側に向かうに従って前記軸の径方向外側に傾斜する第2側壁と、前記第2側壁に連なり、前記軸に対向する第3側壁と、を有し、前記シフト装置は、前記軸と前記第3側壁との間で前記軸の軸方向に対して交差する方向に延びるシフトアンドセレクト軸と、変速段のニュートラル状態を検出する第1ニュートラルスイッチ及び第2ニュートラルスイッチと、を有し、前記第1ニュートラルスイッチは、前記第3側壁に設けられ、前記第2ニュートラルスイッチは、前記第2側壁に設けられ、前記第1ニュートラルスイッチ及び前記第2ニュートラルスイッチは、前記シフトアンドセレクト軸に対向するように配置され、前記第2側壁は、前記第2ニュートラルスイッチを取り付けるための取付部を有し、前記取付部は、第1側壁側に偏って配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ニュートラルスイッチに対する振動を抑制し、ニュートラル状態の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る変速機周辺の正面図である。
【
図2】
図1から変速機ケースの一部を省略した図である。
【
図5】本実施の形態に係るシフト装置の正面図である。
【
図6】本実施の形態に係るシフト装置の左側面図である。
【
図7】本実施の形態に係る中央カム部材周辺を左前方から見た斜視図である。
【
図8】本実施の形態に係る中央カム部材周辺を右後方から見た斜視図である。
【
図9】本実施の形態に係るシフト装置のニュートラルスイッチ周辺を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、添付図面で示す各方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印RE、車両上方を矢印UP、車両下方を矢印LO、車両左方を矢印L、車両右方を矢印Rでそれぞれ表すことにする。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0010】
図1から
図6及び
図11を参照して、本実施の形態に係る車両用の手動変速機の概略構成について説明する。
図1から
図6に示すように、本実施の形態に係る車両は、いわゆるFF式の四輪車である。車両は、前後に延びる左右一対の車体フレーム(不図示)間にエンジン1及び変速機2を配置して構成される。エンジン1及び変速機2は、左右に並んで配置される。具体的には、車両前方の右側にエンジン1が配置され、エンジン1の左側に変速機2が配置される。
【0011】
エンジン1は、例えばガソリンエンジンであり、エンジンケース内にクランク軸(共に不図示)等の各種構成部品が収容されている。クランク軸の軸方向は、車幅方向(左右方向)に向けられる。なお、エンジン1は、ガソリンエンジンに限らず、例えばディーゼルエンジン等、他のタイプのエンジンであってもよい。
【0012】
変速機2は、例えば乗員の手動操作によって変速をギヤを選択する手動変速機である。変速機2は、エンジン1の動力を変速して駆動輪(不図示)に伝達する。変速機2は、変速機ケース20内に各種構成部品を収納して構成される。各種構成部品としては、クラッチ(不図示)、複数の変速ギヤ等が設けられた各種軸、及びシフト装置7等が挙げられる。すなわち、エンジン1の動力を駆動輪に伝達する各種軸は、変速機ケース20に支持される。なお、変速機2は、変速用装置が自動的に変速ギヤを選択する手動変速機であってもよい。
【0013】
変速機ケース20は、分割可能な構造であり、ライトケース21(第1ケース)及びレフトケース22(第2ケース)を有している。ライトケース21は、変速機ケース20の右側空間(第1空間)を形成し、レフトケース22は、変速機ケース20の左側空間(第2空間)を形成する。特にライトケース21は、変速機ケース20内の空間を左右(上記した左側空間及び右側空間)に仕切る隔壁23を有している。隔壁23は、ライトケース21とレフトケース22の合わせ面よりややライトケース21側において、前後方向及び上下方向に拡がるように形成される(
図3及び
図4参照)。
【0014】
隔壁23の右側におけるライトケース21内には、クランク軸と同軸上に配置されるクラッチ(不図示)が設けられる。また、隔壁23の左側におけるレフトケース22内には、各種軸として、入力軸3、第1カウンタ軸4、及び第2カウンタ軸5が配置される。これらの各種軸は、車幅方向でクランク軸の軸方向に延びる。各種軸の左端側(一端側)はレフトケース22に軸受を介して支持され、各種軸の右端側(他端側)はライトケース21の隔壁23に軸受を介して支持される。また、レフトケース22内の底部には、変速ギヤや各種軸を潤滑するためのオイル(不図示)が貯留される。
【0015】
レフトケース22は、上記した各構成を覆うように構成される。具体的にレフトケース22は、上方を覆う上壁26と、下方を覆う底壁27と、側方を覆う側壁28と、を有する。側壁28は更に、左壁を構成する第1側壁28aと、前壁を構成する第2側壁28b及び第3側壁28cと、後壁を構成する第4側壁28dと、を有する。
【0016】
第1側壁28aは、
図4に示す上面視において、車両の前後方向に延びている。また、第1側壁28aには、各種軸の一端側を支持する軸受部(
図4では一部のみ図示)が形成されている。第2側壁28bは、第1側壁28aの前端部から、右前方に向かって傾斜している。すなわち、第2側壁28bは、各種軸の軸方向他端側(右側)に向かうに従って各種軸の径方向外側(前側)に傾斜する。
【0017】
第3側壁28cは、第2側壁28bの前端部から、上記の各種軸に沿って右方に向かって延びている。第4側壁28dは、第1側壁の後端部から、右方に向かって延びている。このように、変速機ケース20内に配置される各構成は、側壁28によって前方、左方及び後方が囲われる。
【0018】
入力軸3は、エンジン1からの動力がクラッチを介して入力される軸である。入力軸3は、クランク軸と同軸上に配置される。
図3に示すように、入力軸3は、側面視においてレフトケース22の中央よりやや前方且つ上方に偏った位置に設けられる。入力軸3には、右側から1速用の入力ギヤ30、2速用の入力ギヤ31、5速用の入力ギヤ32、3速用の入力ギヤ33、及び4速-6速用の入力ギヤ34が設けられる。なお、入力ギヤは、駆動ギヤと呼ばれてもよい。
【0019】
入力軸3のやや後方且つ下方には、第1カウンタ軸4が配置される。第1カウンタ軸4には、右側から第1ファイナルドライブギヤ(不図示)、1速用のカウンタギヤ40、2速用のカウンタギヤ41、3速用のカウンタギヤ42、及び4速用のカウンタギヤ43が設けられる。第1カウンタ軸4に配置される各カウンタギヤは、第1カウンタ軸4に対して遊転可能に配置されている。なお、上記のカウンタギヤは、従動ギヤと呼ばれてもよい。
【0020】
入力軸3のやや後方且つ上方には、第2カウンタ軸5が配置される。第2カウンタ軸5は、第1カウンタ軸4よりも上方且つ後方に位置している。第2カウンタ軸5には、右側から第2ファイナルドライブギヤ50、リバースギヤ51、5速用のカウンタギヤ52、及び6速用のカウンタギヤ53が設けられる。また、第2カウンタ軸5に配置される各カウンタギヤは、第2カウンタ軸5に対して遊転可能に配置されている。なお、上記のカウンタギヤは、従動ギヤと呼ばれてもよい。
【0021】
また、第1カウンタ軸4及び第2カウンタ軸5には、それぞれ所定のカウンタギヤ間にシフトスリーブが配置される。具体的に第1カウンタ軸4には、1速用のカウンタギヤ40と2速用のカウンタギヤ41の間に第1シフトスリーブ44が配置され、3速用のカウンタギヤ42と4速用のカウンタギヤ43の間に第2シフトスリーブ45が配置される。第1シフトスリーブ44、第2シフトスリーブ45は、第1カウンタ軸4と常に一体回転するように構成されている。また、第2カウンタ軸5には、リバースギヤ51と5速用のカウンタギヤ52の間に第3シフトスリーブ54が配置され、5速用のカウンタギヤ52と6速用のカウンタギヤ53の間に第4シフトスリーブ55が配置される。第3シフトスリーブ54、第4シフトスリーブ55は、第2カウンタ軸5と常に一体回転するように構成されている。
【0022】
詳細は後述するが、乗員のシフト操作に応じて所定のシフトスリーブが軸方向にスライドすることで、当該所定のシフトスリーブと隣接するカウンタギヤとの係合関係が切り替えられる。この結果、入力ギヤとカウンタギヤとの組み合わせが切り替えられ、変速が可能となる。
【0023】
また、第2カウンタ軸5の後下方には、ディファレンシャル装置6が設けられる。ディファレンシャル装置6は、ファイナルドリブンギヤ60と、ファイナルドリブンギヤ60のデフケース(不図示)とを含んで構成される。ファイナルドリブンギヤ60はデフケースに固定される。ファイナルドリブンギヤ60の軸方向は車幅方向に向けられている。ファイナルドリブンギヤ60の中心軸は、
図3に示すように、第1カウンタ軸4と略同じ高さに位置付けられている。また、ファイナルドリブンギヤ60は、隔壁23に沿って配置される。
【0024】
また、隔壁23の左側方であって入力軸3の前方には、シフト装置7が配置される。シフト装置7は、乗員の変速操作に応じて各変速ギヤの組み合わせを変更することで変速を実現するものである。具体的にシフト装置7は、レフトケース22内で鉛直方向に延びるシフトアンドセレクト軸70を備えている。シフトアンドセレクト軸70は、入力軸3と第3側壁28cとの間で入力軸3の軸方向に対して交差する方向に延びている。
【0025】
レフトケース22の上部には、開口(不図示)が形成されている。開口からレフトケース22内にシフトアンドセレクト軸70が挿入される。また、シフトアンドセレクト軸70の上端側には、シフトアンドセレクト軸70を支持するシフトケース71が設けられる。シフトケース71は、上記開口を塞ぐ蓋部材としても機能する。
【0026】
具体的にシフトケース71は、シフトアンドセレクト軸70の一部を覆う箱型のケース部71aと、ケース部71aの上面に形成される板状の蓋部71bとによって構成される。ケース部71aは、レフトケース22の開口より小さい形状を有する。また、ケース部71aは、シフトアンドセレクト軸70を軸方向(セレクト方向)に移動可能且つ軸回り(シフト方向)に回転可能に支持する。
【0027】
蓋部71bは、ケース部71aより大きい面積でレフトケース22の開口に対応した形状を有している。蓋部71bによってレフトケース22の開口が塞がれる。シフトケース71は、蓋部71bをレフトケース22にボルト締結することでレフトケース22に固定される。これにより、シフトアンドセレクト軸70は、レフトケース22を介してシフトケース71に支持される。
【0028】
シフトアンドセレクト軸70の上端側は、蓋部71bを貫通してレフトケース22の外側に突出している。突出したシフトアンドセレクト軸70の先端(上端)には、シフトアウタレバー72が設けられ、シフトケース71には、セレクトアウタレバー73が設けられている。
【0029】
シフトアウタレバー72の一端には、図示しないシフトケーブルの一端が連結される。シフトケーブルの他端は、乗員が操作するシフトレバー(不図示)に連結される。また、セレクトアウタレバー73の一端には、図示しないセレクトケーブルの一端が連結される。セレクトケーブルの他端は、上記したシフトレバーに連結される。
【0030】
乗員によってシフトレバーがセレクト方向に操作されると、セレクトアウタレバー73は、セレクトケーブルを介してシフトアンドセレクト軸70を軸方向(セレクト方向)に移動させる。一方、乗員によってシフトレバーがシフト方向に操作されると、シフトアウタレバー72は、シフトケーブルを介してシフトアンドセレクト軸70を軸回り(シフト方向)に回転させる。なお、乗員によるシフトレバーのセレクト方向の操作をセレクト操作と呼び、シフト方向の操作をセレクト操作と呼ぶことにする。
【0031】
このように、本実施の形態に係るシフト装置7は、いわゆるリモートコントロール式のシフト装置を例に挙げているが、これに限定されず、適宜変更が可能である。シフト装置7は、シフトアンドセレクト軸70に直接シフトレバーを取り付けた、いわゆるダイレクトコントロール式のシフト装置で構成されてもよい。
【0032】
また、シフトアンドセレクト軸70には、乗員のシフト操作又はセレクト操作に応じて軸方向に移動又は軸回りに回転する複数のカム部材が設けられる。具体的にカム部材は、ケース部71a内に設けられる上側カム部材74と、シフトアンドセレクト軸70の下端に設けられる下側カム部材75とを含んで構成される。また、シフトアンドセレクト軸70の軸方向において、上側カム部材74と下側カム部材75との間には、中央カム部材76が設けられる。
【0033】
上側カム部材74は、シフトアンドセレクト軸70と一体に固定される。具体的に上側カム部材74は、シフトアンドセレクト軸70の径方向外側で且つ後方に向かって突出する上側フィンガ部74aと、シフトアンドセレクト軸70の径方向外側で且つ前方に向かって突出するガイドピン74bとを有する。上側フィンガ部74aとガイドピン74bとは、シフトアンドセレクト軸70を挟んで逆方向に延びて形成される。
【0034】
また、シフトアンドセレクト軸70には、上側カム部材74の上下及び後方を覆うように上側インタロックプレート77が設けられる。
図6に示すように、上側インタロックプレート77は、上側カム部材74の上下を挟み込むようにして、側面視C字状に形成される。上側インタロックプレート77は、シフトアンドセレクト軸70に対して回転自在に取り付けられる。上側インタロックプレート77の後面には、スリット77aが形成されている。上側フィンガ部74aは、スリット77aを通じて上側インタロックプレート77の後方に突出する。
【0035】
上側インタロックプレート77は、シフトアンドセレクト軸70に対して軸回り(シフト方向)で回転自在、かつ、軸方向(セレクト方向)で連動するようにシフトアンドセレクト軸70に取付けられる。さらに、上側インタロックプレート77は、ケース部71aに対して軸回り(シフト方向)で回転を規制され、かつ、軸方向(セレクト方向)に移動自在となるようにケース部71aに関係づけられる。これらの構造により、上側インタロックプレート77は、シフトアンドセレクト軸70と一体に軸方向(セレクト方向)に移動自在、かつ、軸回り(シフト方向)で回転を規制される。
【0036】
また、シフトケース71の前面には、上側カム部材74の移動をガイドするガイドプレート78が取り付けられる。ガイドプレート78は、シフトアンドセレクト軸70の軸方向に沿って下方に延びている。ガイドプレート78は、ケース部71aより更に下方において後方に向かって屈曲した側面視L字状に形成される。屈曲したガイドプレート78の下部は、シフトアンドセレクト軸70に貫通される。ガイドプレート78は、シフトアンドセレクト軸70を軸回り(シフト方向)で回転自在、かつ、軸方向(セレクト方向)でシフトアンドセレクト軸70を移動自在に取付けられる。
【0037】
ガイドプレート78の正面には、ガイドピン74bを受容可能なガイドスリット78aが形成される。ガイドスリット78aは、シフトパターンに応じた形状に形成される。具体的にガイドスリット78aは、上下方向に複数列並んだ水平スリットと、それぞれの水平スリットの中央を上下方向に連ねた鉛直スリットと、によって構成される。ガイドピン74bは、ガイドスリット78aに沿ってシフト方向及びセレクト方向に移動可能である。すなわち、ガイドスリット78aによってガイドピン74bの移動が規制される。ここで、水平スリットがシフト方向に対応し、鉛直スリットがセレクト方向に対応している。
【0038】
また、詳細は後述するが、ガイドプレート78は、付着したオイルを下方に誘導する役割も果たす。具体的にガイドプレート78は、正面視で下方に向かうに従って車幅方向に先細りする略三角形状を有する。ガイドプレート78の先端(下端)は、鋭角形状を成している。
【0039】
図5に示すように、ガイドプレート78の右端部(隔壁23側に位置する端部)の外面形状は、下方に向かうに従って車幅方向でシフトアンドセレクト軸に近づくように左側に傾斜している。傾斜部分を第1傾斜部78bと呼ぶことにする。また、ガイドプレート78の左端部(シフトアンドセレクト軸70を挟んで隔壁23の反対側に位置する端部)の外面形状も同様に、下方に向かうに従って車幅方向でシフトアンドセレクト軸に近づくように右側に傾斜している。傾斜部分を第2傾斜部78cと呼ぶことにする。
【0040】
また、ガイドプレート78の前面には、第1傾斜部78bと第2傾斜部78cの間に設けられ、第1傾斜部78bと第2傾斜部78cに平行な辺を有する開口部78dが形成されている。開口部78dは、下方に向かうに従って車幅方向に狭くなる鋭角の三角形状を有する。また、ガイドプレート78は、後述する中央カム部材76の真上に位置している。
【0041】
また、ガイドプレート78の下部と上側インタロックプレート77との間におけるシフトアンドセレクト軸70には、圧縮コイルバネ70aが設けられる。これにより、シフトアンドセレクト軸70は、常時上方に付勢される。
【0042】
下側カム部材75は、シフトアンドセレクト軸70と一体に固定される。具体的に下側カム部材75は、シフトアンドセレクト軸70の径方向外側で且つ後方に向かって突出する下側フィンガ部75aと、下側フィンガ部75aの取付け面と直交する面に形成されるカム面75bとを有する。
【0043】
また、シフトアンドセレクト軸70には、下側カム部材75を覆うように下側インタロックプレート79が設けられる。
図6に示すように、下側インタロックプレート79は、下側カム部材75を上下で挟み込むようにして、側面視C字状に形成される。下側インタロックプレート79は、シフトアンドセレクト軸70に対して回転自在に取り付けられる。下側インタロックプレート79の後面には、スリット(不図示)が形成されている。下側フィンガ部75aは、当該スリットを通じて下側インタロックプレート79の後方に突出する。
【0044】
また、下側インタロックプレート79は、上面の左側縁部から突出して下方に屈曲する屈曲部79aを有する。屈曲部79aは、上記したカム面75bに対向している。屈曲部79aには、プランジャ80が取り付けられる。プランジャ80は、先端が軸方向に出没可能に構成され、その軸方向が車幅方向(左右方向)に向けられる。
【0045】
また、プランジャ80の先端がカム面75bに当接している。すなわち、プランジャ80は、軸方向に沿ってカム面75bを付勢している。なお、下側インタロックプレート79は、シフトアンドセレクト軸70の軸方向の移動が許容されつつも、ケース固定のシフトボルト92により軸回りの移動(回転)が規制される。
【0046】
中央カム部材76は、後述するニュートラルスイッチで変速段のニュートラル状態を検出するための被検出部である。中央カム部材76の形状等、及びニュートラルスイッチについては後述する。
【0047】
また、シフト装置7は、シフトアンドセレクト軸70のシフト方向の移動に応じて所定のシフトスリーブを軸方向に移動させるシフトフォークを備えている。シフトフォークは、シフトスリーブごとに設けられる。具体的にシフトフォークは、1速-2速用の第1シフトフォーク81と、2速-3速用の第2シフトフォーク82と、リバース用の第3シフトフォーク83と、5速-6速用の第4シフトフォーク84とによって構成される。
【0048】
第1シフトフォーク81は、第1シフトスリーブ44を軸方向に移動させるものである。具体的に第1シフトフォーク81は、第1カウンタ軸4の前下方で左右方向に延びる第1フォークシャフト81aと、下側フィンガ部75aに係合可能な第1ヨーク部81bと、第1シフトスリーブ44に係合する第1フォーク部81cとを有する。
【0049】
第1フォークシャフト81aは、シフトアンドセレクト軸70と第1カウンタ軸4との間で、第1カウンタ軸4と平行に延びている。第1フォークシャフト81aの両端は、ライトケース21及びレフトケース22に支持される。
【0050】
第1ヨーク部81bは、一端部分が下側フィンガ部75aに係合可能である一方、他端部分が第1フォークシャフト81aに連結される板状体で形成される。具体的に第1ヨーク部81bは、第1フォークシャフト81aの外面に取り付けられ、上方に向かって突出し、下側インタロックプレート79の後方で前方に向かって屈曲する。屈曲した第1ヨーク部81bの先端は、下側フィンガ部75aと前後方向で重なる位置まで延びている。これにより、下側フィンガ部75aと第1ヨーク部81bとは、シフトアンドセレクト軸70の軸方向における下側フィンガ部75aの高さが、第1ヨーク部81bの高さと一致したときに係合可能となる。
【0051】
第1フォーク部81cは、側面視C字状の板状体で形成される。第1フォーク部81cは、二股に分岐した先端部分が第1シフトスリーブ44に係合する一方、基端部分が第1フォークシャフト81aに連結される。このように、第1フォークシャフト81a、第1ヨーク部81b、及び第1フォーク部81cは、一体的に構成される。第1シフトフォーク81は、全体として、下側フィンガ部75aのシフト方向の移動に応じて第1カウンタ軸4の軸方向にスライド可能になっている。これにより、第1シフトスリーブ44と隣接するカウンタギヤ(1速用のカウンタギヤ40及び2速用のカウンタギヤ41)との係合関係が切り替え可能となる。
【0052】
第2シフトフォーク82は、第2シフトスリーブ45を軸方向に移動させるものである。具体的に第2シフトフォーク82は、第1カウンタ軸4の前上方で左右方向に延びる第2フォークシャフト82aと、下側フィンガ部75aに係合可能な第2ヨーク部82bと、第2シフトスリーブ45に係合する第2フォーク部82cとを有する。
【0053】
第2フォークシャフト82aは、シフトアンドセレクト軸70と第1カウンタ軸4との間で、第1カウンタ軸4と平行に延びている。第2フォークシャフト82aの両端は、ライトケース21及びレフトケース22に支持される。
【0054】
第2ヨーク部82bは、一端部分が下側フィンガ部75aに係合可能である一方、他端部分が第2フォークシャフト82aに連結される板状体で形成される。具体的に第2ヨーク部82bは、第2フォークシャフト82aの外面に取り付けられ、下方に向かって突出し、下側インタロックプレート79の後方で前方に向かって屈曲する。屈曲した第2ヨーク部82bの先端は、下側フィンガ部75aと前後方向で重なる位置まで延びている。これにより、下側フィンガ部75aと第2ヨーク部82bとは、シフトアンドセレクト軸70の軸方向における下側フィンガ部75aの高さが、第2ヨーク部82bの高さと一致したときに係合可能となる。
【0055】
なお、
図6に示すように、第2ヨーク部82bの一端部分は、第1ヨーク部81bの一端部分に対して高さ方向に僅かにずれて配置される。具体的に第2ヨーク部82bの一端部分は、第1ヨーク部81bの一端部分よりも高い位置に設けられている。
【0056】
第2フォーク部82cは、側面視C字状の板状体で形成される。第2フォーク部82cは、二股に分岐した先端部分が第2シフトスリーブ45に係合する一方、基端部分が第2フォークシャフト82aに連結される。このように、第2フォークシャフト82a、第2ヨーク部82b、及び第2フォーク部82cは、一体的に構成される。第2シフトフォーク82は、全体として、下側フィンガ部75aのシフト方向の移動に応じて第1カウンタ軸4の軸方向にスライド可能になっている。これにより、第2シフトスリーブ45と隣接するカウンタギヤ(3速用のカウンタギヤ42及び4速用のカウンタギヤ43)との係合関係が切り替え可能となる。
【0057】
第3シフトフォーク83は、第3シフトスリーブ54を軸方向に移動させるものである。具体的に第3シフトフォーク83は、第2カウンタ軸5の前上方で左右方向に延びる第3フォークシャフト83aと、上側フィンガ部74aに係合可能な第3ヨーク部83bと、第3シフトスリーブ54に係合する第3フォーク部83cとを有する。
【0058】
第3フォークシャフト83aは、シフトアンドセレクト軸70と第2カウンタ軸5との間で且つ入力軸3の上方で、第2カウンタ軸5と平行に延びている。第3フォークシャフト83aの両端は、ライトケース21及びレフトケース22に支持される。
【0059】
第3ヨーク部83bは、一端部分が下側フィンガ部75aに係合可能である一方、他端部分が第3フォークシャフト83aに連結される板状体で形成される。具体的に第3ヨーク部83bは、第3フォークシャフト83aの外面に取り付けられ、前下方に向かって突出し、下側インタロックプレート79の後方で前方に向かって僅かに屈曲する。屈曲した第3ヨーク部83bの先端は、上側フィンガ部74aと前後方向で重なる位置まで延びている。これにより、上側フィンガ部74aと第3ヨーク部83bとは、シフトアンドセレクト軸70の軸方向における上側フィンガ部74aの高さが、第3ヨーク部83bの高さと一致したときに係合可能となる。
【0060】
第3フォーク部83cは、側面視C字状の板状体で形成される。第3フォーク部83cは、二股に分岐した先端部分が第3シフトスリーブ54に係合する一方、基端部分が第3フォークシャフト83aに連結される。このように、第3フォークシャフト83a、第3ヨーク部83b、及び第3フォーク部83cは、一体的に構成される。第3シフトフォーク83は、全体として、上側フィンガ部74aのシフト方向の移動に応じて第2カウンタ軸5の軸方向にスライド可能になっている。これにより、第3シフトスリーブ54と隣接するカウンタギヤ(リバースギヤ51)との係合関係が切り替え可能となる。
【0061】
第4シフトフォーク84は、第4シフトスリーブ55を軸方向に移動させるものである。具体的に第4シフトフォーク84は、第2カウンタ軸5の前上方で左右方向に延びる第4フォークシャフト84aと、上側フィンガ部74aに係合可能な第4ヨーク部84bと、第4シフトスリーブ55に係合する第4フォーク部84cとを有する。
【0062】
第4フォークシャフト84aは、シフトアンドセレクト軸70と第2カウンタ軸5との間で且つ入力軸3の上方で、第2カウンタ軸5と平行に延びている。第4フォークシャフト84aの両端は、ライトケース21及びレフトケース22に支持される。
【0063】
第4ヨーク部84bは、一端部分が下側フィンガ部75aに係合可能である一方、他端部分が第4フォークシャフト84aに連結される板状体で形成される。具体的に第4ヨーク部84bは、第4フォークシャフト84aの外面に取り付けられ、前下方に向かって突出し、下側インタロックプレート79の後方で前方に向かって僅かに屈曲する。屈曲した第4ヨーク部84bの先端は、上側フィンガ部74aと前後方向で重なる位置まで延びている。これにより、上側フィンガ部74aと第4ヨーク部84bとは、シフトアンドセレクト軸70の軸方向における上側フィンガ部74aの高さが、第4ヨーク部84bの高さと一致したときに係合可能となる。
【0064】
なお、第4ヨーク部84bの一端部分は、第3ヨーク部83bの一端部分に対して高さ方向に僅かにずれて配置される。具体的に第4ヨーク部84bの一端部分は、第3ヨーク部83bの一端部分よりも高い位置に設けられている。
【0065】
第4フォーク部84cは、側面視C字状の板状体で形成される。第4フォーク部84cは、二股に分岐した先端部分が第4シフトスリーブ55に係合する一方、基端部分が第4フォークシャフト84aに連結される。このように、第4フォークシャフト84a、第4ヨーク部84b、及び第4フォーク部84cは、一体的に構成される。第4シフトフォーク84は、全体として、上側フィンガ部74aのシフト方向の移動に応じて第2カウンタ軸5の軸方向にスライド可能になっている。これにより、第4シフトスリーブ55と隣接するカウンタギヤ(5速用のカウンタギヤ52及び6速用のカウンタギヤ53)との係合関係が切り替え可能となる。
【0066】
ところで、車両用の変速機においては、変速状態を検出する変速スイッチとして、例えばニュートラルスイッチが設けられる。ニュートラルスイッチは、変速段のニュートラル状態を検出し、その検出値をECU(Electronic Control Unit)に出力する。ECUは、ニュートラルスイッチの検出値に基づいて、アイドリングストップ制御や自動変速制御を実施する。
【0067】
ニュートラルスイッチは、シフト操作によって可動する部位に設けたカム部の状態を検出することにより、変速機のニュートラル状態又は非ニュートラル状態を検出する。詳しくは、ニュートラルスイッチは、検出部がカム部と接触する接触式、および、検出部がカム部と接触しない非接触式の2つの検出方式がある。接触式のニュートラルスイッチは、検出部の先端に出没自在の凸部を備え、凸部と接触するカム部の形状によって変化する凸部の出没状態を電気信号として出力する。非接触式のニュートラルスイッチは、検出部の先端に例えば磁気素子を備え、検出部と接触せずに対向するカム部の形状によって変化する磁気素子の検出値を電気信号として出力する。
【0068】
ニュートラルスイッチは、ニュートラル状態をより確実且つ正確に検出するためや、フェールセーフを目的として、変速機に複数設けられることが想定される。接触式のニュートラルスイッチにおいては、検出部とカム部との間の潤滑性を向上するためにオイル供給が必要である。このため、複数のニュートラルスイッチを配置する場合、配置箇所によっては、十分なオイル供給が受けられずにニュートラル状態の検出精度に影響を与えるおそれがある。
【0069】
また、複数のニュートラルスイッチを設ける場合に、同じ検出方式のニュートラルスイッチ(上記の例で言えば接触式のニュートラルスイッチ)を採用すると、ニュートラルスイッチの寿命が同時期に迫る可能性がある。これは、フェールセーフの観点からするとあまり好ましくない。
【0070】
そこで、本件発明者等は、先ず、フェールセーフの観点から複数のニュートラルスイッチをシフト装置に設ける際に、その検出方式として接触式と非接触式の2つのニュートラルスイッチを採用することにした。具体的に本実施の形態では、変速段のニュートラル状態を検出するニュートラルスイッチとして、接触式の第1ニュートラルスイッチ90と非接触式の第2ニュートラルスイッチ91と、をシフト装置7に備えることにした。
【0071】
この構成によれば、ニュートラルスイッチにおいて2つの異なる検出方式を採用したことにより、その寿命を異ならせることが可能である。よって、一方のニュートラルスイッチの検出精度に影響が出た場合であっても、他方のニュートラルスイッチで変速段のニュートラル状態を検出することができる。よって、フェールセーフの観点からニュートラルスイッチの検出精度を確保することが可能である。
【0072】
しかしながら、上記の場合、変速機ケース20内におけるそれぞれのニュートラルスイッチのレイアウトに問題が生じ得る。具体的に接触式の第1ニュートラルスイッチ90においては、その検出部に対するオイルの積極的な供給が必要である。一方、非接触式の第2ニュートラルスイッチ91においては、オイル中の異物が検出精度に影響を与えるため、可能な限りオイルが供給されない位置に配置されることが好ましい。また、変速機ケース20内の限られたスペースに2つのニュートラルスイッチを配置するため、それらの配置箇所を工夫する必要がある。
【0073】
そこで、更に本件発明者等は、異なる検出方式を採用する2つのニュートラルスイッチを変速機ケース20内に配置するに際し、2つのニュートラルスイッチの配置箇所と、変速機ケース20内のオイル流れに着目して本発明に想到した。
【0074】
具体的に本実施の形態では、ライトケース21の隔壁23に沿ってファイナルドリブンギヤ60を配置し、ファイナルドリブンギヤ60の前方に、シフト装置7を隔壁23の側方に配置した。シフト装置7のシフトアンドセレクト軸70は、レフトケース22内でファイナルドリブンギヤ60の軸方向に対して直交する鉛直方向に延びている。
【0075】
図1及び
図4に示すように、第1ニュートラルスイッチ90は、シフトアンドセレクト軸70の前方において、先端である検出部90a(
図7参照)が、レフトケース22の前面(第3側壁28c)からレフトケース22内に貫通するように取り付けられる。すなわち、第1ニュートラルスイッチ90は、隔壁に沿う方向である前後方向において、シフトアンドセレクト軸70に対向するように配置される。
【0076】
また、第2ニュートラルスイッチ91は、シフトアンドセレクト軸70の左側方において、先端である検出部91a(
図7参照)が、レフトケース22の左側面(第2側壁28b)からレフトケース22内に貫通するように取り付けられる。すなわち、第2ニュートラルスイッチ91は、
図4に示す上面視において、シフトアンドセレクト軸70を挟んで隔壁23の反対側に配置される。
【0077】
これらの構成によれば、
図3及び
図4に示すように、前進時においては、ファイナルドリブンギヤ60の回転に伴って掻き上げられるオイルが、隔壁23に沿ってファイナルドリブンギヤ60の回転方向下流側である前方に向かって流れる(破線矢印参照)。ファイナルドリブンギヤ60の前方に位置するシフトアンドセレクト軸70へ、隔壁23や周辺部品に衝突して跳ね返ったオイルが飛散する。
【0078】
隔壁23の左側方で且つシフトアンドセレクト軸70の前方に第1ニュートラルスイッチ90が位置するため、車両の運転状態のうち頻度の多い車両前進時のオイルの流れを考慮すると、上記のように隔壁23や周辺部品に衝突して跳ね返ったオイルを第1ニュートラルスイッチ90にも供給することができる。この結果、積極的に第1ニュートラルスイッチ90の検出部90aを潤滑することができ、検出部90aが当接する第1溝部11cとの摩耗を抑制し、当接部の劣化を防止できる。よって、検出部90aの耐久性が向上でき、その検出精度を高めることが可能である。
【0079】
一方、非接触式である第2ニュートラルスイッチ91は、上記のように、シフトアンドセレクト軸70を挟んで隔壁23の反対側に配置される。このため、ファイナルドリブンギヤ60が掻き上げるオイルの軌跡から第2ニュートラルスイッチ91を離れた位置に設けることが可能である。これにより、オイルが第2ニュートラルスイッチ91に飛散し難くなっている。
【0080】
また、隔壁23と第2ニュートラルスイッチ91との間にシフトアンドセレクト軸70が位置することで、オイルの飛散をシフトアンドセレクト軸70で遮ることが可能である。すなわち、シフトアンドセレクト軸70をオイル飛散防止のための壁として活用することが可能である。よって、第2ニュートラルスイッチ91に対するオイル飛散をより効果的に防止することが可能である。この結果、第2ニュートラルスイッチ91にオイル中の異物が付着することを防止でき、その検出精度を向上することができる。以上により、2つのニュートラルスイッチの検出精度を損なうことがなく、適切に変速段のニュートラル状態を検出することが可能である。
【0081】
また、ファイナルドリブンギヤ60の径方向の延長線上には、オイルガター24及びオイルキャッチタンク25が設けられる。具体的にオイルガター24は、入力軸3及び第2カウンタ軸5の上方において、隔壁23から左方に向かって延びるオイル通路を形成する。オイルガター24の先端は、入力軸3及び第2カウンタ軸5の左端部上方に位置付けられている。オイルガター24は、ファイナルドリブンギヤ60によって掻き上げられるオイルを隔壁23とは反対側である左側に誘導する樋の役割を果たす。これにより、各種軸の左端側にもオイルを供給することが可能である。
【0082】
オイルキャッチタンク25は、
図3及び
図4に示すように、入力軸3及び第1カウンタ軸4の前方において、隔壁23とシフトアンドセレクト軸70との間に配置される。具体的にオイルキャッチタンク25は、隔壁23の壁面から左方に膨出した形状を有する。また、オイルキャッチタンク25の上方は開放されている。これにより、所定容量のオイル貯留空間が形成される。ファイナルドリブンギヤ60によって掻き上げられるオイルは、オイルガター24に流れ込むだけでなく、オイルキャッチタンク25にも流れ込む。オイルキャッチタンク25に所定量のオイルが貯留されることで、レフトケース22内の底部におけるオイル液面の高さを低くすることが可能である。この結果、ファイナルドリブンギヤ60によるオイル攪拌抵抗を削減することが可能である。
【0083】
また、ファイナルドリブンギヤ60によって掻き上げられるオイルをオイルキャッチタンク25で捕集することで、オイルの跳ね返りを防止することができる。この結果、第2ニュートラルスイッチ91に対するオイル飛散防止の効果をより高めることが可能である。
【0084】
更に、オイルキャッチタンク25の開放箇所は、第1ニュートラルスイッチ90よりも高い位置に設けられている。より具体的にオイルキャッチタンク25の開放箇所は、ファイナルドリブンギヤ60の軸方向からみてガイドプレート78と重なる位置、又はガイドプレート78よりも高い位置で且つ、シフトケース71と重なる位置、又はシフトケース71よりも低い位置に設けられる。更に開放箇所は、ガイドプレート78の開口部78dよりも上方に位置している。この構成によれば、オイルキャッチタンク25の上端からオイルが溢れた場合、当該オイルは、シフトケース71やガイドプレート78を介して、下方の第1ニュートラルスイッチ90に供給される。すなわち、オイルキャッチタンク25から溢れるオイルを無駄なく第1ニュートラルスイッチ90に供給することができる。これにより、第1ニュートラルスイッチ90の潤滑性を更に向上することが可能である。
【0085】
また、接触式の第1ニュートラルスイッチ90においては、真上にガイドプレート78が位置することで、上記したオイルをガイドプレート78によって下方の第1ニュートラルスイッチ90及び後述する第1カム部11に誘導することが可能である。具体的には、シフトケース71やガイドプレート78の上端に供給されたオイルは、第1傾斜部78b又は第2傾斜部78cを伝って、ガイドプレート78の下端に集められる。このとき、第1傾斜部78bと第2傾斜部78cとの間に開口部78dが形成されることで、ガイドプレート78の前面をオイルが流れる際の流路を直線的に形成することが可能である(
図5の破線部参照)。これにより、ガイドプレート78の下端にオイルを集めることが可能である。
【0086】
ガイドプレート78の下端の直下には、上記した第1ニュートラルスイッチ90及び後述する中央カム部材76の第1カム部11が位置するため、第1ニュートラルスイッチ90の検出部90aと第1カム部11との接触部分に集中的にオイルを滴下することが可能である。したがって、効果的に第1ニュートラルスイッチ90を潤滑することが可能である。
【0087】
また、第1ニュートラルスイッチ90及び第2ニュートラルスイッチ91を変速機ケース20に取り付けるに際し、車両の振動が問題となる。具体的に変速機ケース20は、エンジン1に隣接して配置されるため、エンジン1の振動によって変速機ケース20にも振動が発生し得る。この場合、変速機ケース20の振動が上記のニュートラルスイッチに伝達される可能性がある。この結果、ニュートラルスイッチの検出精度に影響を与えるおそれがある。
【0088】
そこで、本件発明者等は、第1ニュートラルスイッチ90及び第2ニュートラルスイッチ91が取り付けられる変速機ケース20の側壁28の形状及びレイアウトに着目し、本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、
図4及び
図11に示すように、第1ニュートラルスイッチ90及び第2ニュートラルスイッチ91をシフトアンドセレクト軸70に対向するように配置した。そして、第1ニュートラルスイッチ90を第3側壁28cに設け、第2ニュートラルスイッチ91を第2側壁28bに設けている。
【0089】
入力軸3等の軸受部が形成される第1側壁28aは高剛性を有し、第1側壁28aに連なるように右前方に向かって傾斜した第2側壁28bを形成している。このため、第2側壁28bの剛性を高めることが可能である。よって、比較的振動の影響を受け易い第2ニュートラルスイッチ91を第2側壁28bに設けたことで、第2ニュートラルスイッチ91を入力軸3の軸受部に近づけて配置することが可能である。この結果、第2ニュートラルスイッチ91に対する振動の影響を抑制することができ、その検出精度を高めることが可能である。
【0090】
また、剛性が高められた第2側壁28bに連なるように第3側壁28cを形成したことで、第3側壁28cの剛性も高めることが可能である。よって、第1ニュートラルスイッチ90を第3側壁28cに設けたことで、第1ニュートラルスイッチ90に対する振動の影響を抑制することが可能である。
【0091】
また、第1ニュートラルスイッチ90及び第2ニュートラルスイッチ91をそれぞれ異なる剛性の側壁28(第3側壁28c及び第2側壁28b)に設けたことで、振動が発生する周波数帯を異ならせることが可能である。このため、仮にエンジン1の振動によって変速機ケース20に振動が発生したとしても、第2側壁28bと第3側壁28cとが同じ周波数帯で振動するのを抑制することが可能である。
【0092】
よって、第1ニュートラルスイッチ90及び第2ニュートラルスイッチ91が同じ周波数帯での振動の影響を受けることがない。すなわち、いずれか一方のニュートラルスイッチが振動の影響を受けたとしても、他方のニュートラルスイッチはその周波数帯での振動の影響を受け難いため、ニュートラル状態の検出精度を確保することが可能である。このように、本発明は、フェールセーフの観点からも有効である。
【0093】
また、右前方に向かって傾斜する第2側壁28bは、シフトアンドセレクト軸70及び中央カム部材76の前後幅に対応した前後幅、又はそれよりも大きい前後幅を有する。これにより、第2ニュートラルスイッチ91が取り付けられる部分の剛性を効果的に高めることができ、振動抑制の効果も高めることが可能である。
【0094】
また、第2側壁28bには、第2ニュートラルスイッチ91を取り付けるための取付部28eが形成される。取付部28eは、第2側壁28bの外面からシフトアンドセレクト軸70に向かって右方に凹んだ形状を有する。その凹んだ部分の底面は、各種軸に直交する平坦面となっている。当該平坦面は、第2ニュートラルスイッチ91の取付座面を構成する。
【0095】
取付座面には、第2ニュートラルスイッチ91を挿入するための貫通穴(不図示)が形成される。貫通穴の軸方向は車幅方向に向けられる。また、取付部28eは、第2側壁28bの外面が凹んだ分、内面がシフトアンドセレクト軸70に向かって膨出している。よって、取付部28e自体の剛性を確保することが可能である。
【0096】
取付部28eは、第2側壁28bの前後幅内でやや後側、すなわち第1側壁28a側に偏って配置されている。このため、高剛性の第1側壁28aに取付部28eを近づけて配置することができ、更に剛性を高めることが可能である。また、傾斜する第2側壁28bに交差するように取付部28eが形成されることで、傾斜しない壁に対して取付部が形成される場合に比べ、取付部28eの開口面積を大きく確保することが可能である。この結果、取付部28eに対するアクセススペースが得られ、第2ニュートラルスイッチ91の取付作業性が向上される。また、外面が凹んだ取付部28eに第2ニュートラルスイッチ91を設けたことで、外方からの飛散物が第2ニュートラルスイッチ91に当たり難くなり、第2ニュートラルスイッチ91を保護することができる。
【0097】
また、第2側壁28bの内側面には、シフトアンドセレクト軸70に向かって膨出する膨出部29が形成される。具体的に膨出部29は、第1ニュートラルスイッチ90に向かって膨出する第1膨出部29aと、第1膨出部29a及び取付部28eに連なる第2膨出部29bと、を有する。すなわち、第1膨出部29aは第2膨出部29bより前方に位置し、第2膨出部29bは取付部28eよりも前方に位置する。また、第1膨出部29aは第2膨出部29bよりも右側に突出しており、第2膨出部29bは取付部28eよりも右側に突出している。
【0098】
第1膨出部29a及び第2膨出部29bは、例えば、ニュートラルスイッチのハーネス固定用ネジ穴を確保するためのボスで構成される。第2側壁28bの内側面にこれらの膨出部29を形成したことで、取付部28e周辺の剛性を更に高めることができ、各ニュートラルスイッチに対する振動を効果的に抑制することが可能である。
【0099】
また、詳細は後述するが、シフトアンドセレクト軸70に設けられる中央カム部材76は、第1ニュートラルスイッチ90の検出部90aに対向する第1カム部11と、第2ニュートラルスイッチ91の検出部91aに対向する第2カム部12と、を有する。
【0100】
上記した第1膨出部29a及び第2膨出部29bは、第1カム部11及び第2カム部12と同じ高さに設けられる。また、第1膨出部29aは、第1カム部11に向かって膨出し、第2膨出部29bは、第2カム部12に向かって膨出している。
【0101】
この構成によれば、第1カム部11と第2側壁28bとの隙間や第2カム部12と第2側壁28bとの隙間を第1膨出部29a及び第2膨出部29bで埋めることが可能である。上記したように、第1ニュートラルスイッチ90及び第1カム部11には、オイルが積極的に供給される。このため、上記の隙間を膨出部29で埋めることで、当該オイルを膨出部29で遮ることが可能である。すなわち、第1ニュートラルスイッチ90周辺に供給されるオイルが第2ニュートラルスイッチ91側に流れるのを防止することが可能である。よって、非接触式の第2ニュートラルスイッチ91の検出精度がオイルによって損なわれることを効果的に防止することが可能である。
【0102】
次に、
図7から
図10を参照して、各ニュートラルスイッチの検出部近傍の詳細構成について説明する。
図7から
図10に示すように、中央カム部材76は、シフトアンドセレクト軸70の軸方向略中央部分に固定される。中央カム部材76は、シフトアンドセレクト軸70の周囲を囲う円形の筒状部10と、筒状部10の外面から径方向外側に突出する第1カム部11及び第2カム部12とを有する。
【0103】
第1カム部11は、筒状部10から前方に突出した後、上方に向かって立ち上がるように、軸方向に沿った断面視で略L字状に形成される。また、第1カム部11は、上面視で扇状に形成される。ここで、上方に立ち上がる部分を第1縦壁部11aと呼ぶことにする。第1縦壁部11aの径方向外側の壁面には、第1ニュートラルスイッチ90の検出部90aに当接する第1カム面11bが形成される。また、第1カム面11bには、高さ方向に延びる第1溝部11cが形成される。これにより、第1カム面11bは、一部が径方向内側に凹んだ凹凸状の外面形状を有する。
【0104】
第2カム部12は、筒状部10から左方に突出した後、上方に向かって立ち上がるように、軸方向に沿った断面視で略L字状に形成される。また、第2カム部12は、上面視で扇状に形成される。ここで、上方に立ち上がる部分を第2縦壁部12aと呼ぶことにする。第2縦壁部12aの径方向外側の壁面には、第2ニュートラルスイッチ91の検出部91aに対向する第2カム面12bが形成される。また、第2カム面12bには、高さ方向に延びる第2溝部12cが形成される。これにより、第2カム面12bは、一部が径方向内側に凹んだ凹凸状の外面形状を有する。
【0105】
第1カム部11及び第2カム部12は、上面視において、それぞれ第1溝部11cと第2溝部12cの成す角が略直角となるように配置される。第1カム部11及び第2カム部12は、同じ高さに形成され、第1縦壁部11a及び第2縦壁部12aの高さも同じである。第1縦壁部11a及び第2縦壁部12aは、第1ニュートラルスイッチ90及び第2ニュートラルスイッチ91よりも、十分に高い位置まで立ち上がっている。また、第1カム部11と第2カム部12との間には、切欠き13が形成されている。これにより、第1カム部11と第2カム部12との間に僅かな隙間が形成される。
【0106】
第1ニュートラルスイッチ90の検出部90aは、先端が出没自在のボールプランジャで構成される。検出部90aの先端は、第1カム面11bに常時当接している。軸回りに回転する第1カム面11bの外面形状に応じて検出部90aの先端位置が変化することにより、変速段のニュートラル状態を検出することが可能である。
図9では、第1カム部11がニュートラル状態を表している。
【0107】
このとき、第1ニュートラルスイッチ90は、検出部90aの先端が第1溝部11cに受容され、先端が第1カム面11bに押されないことにより、ニュートラル状態を検出する。また、
図9では、第1カム部11がニュートラル以外の所定の変速段にある非ニュートラル状態を二点鎖線で表している。このとき、第1ニュートラルスイッチ90は、検出部90aの先端が第1溝部11cから外れた位置となり第1カム面11bに押されることにより、非ニュートラル状態を検出する。
【0108】
第2ニュートラルスイッチ91の検出部91aは、非接触式の近接センサ(例えば磁気センサ)で構成される。検出部91aの先端は、第2カム面12bに接触せずに常時対向している。軸回りに回転する第1カム面11bの外面形状に応じて検出部91aの先端と第2カム面12bとの対向間隔が変化することにより、変速段のニュートラル状態を検出することが可能である。
図9では、第2カム部12がニュートラル状態であることを実線で表している。このとき、第2ニュートラルスイッチ91は、検出部91aの先端と第2溝部12cとの対向間隔が大きいことを検出することにより、ニュートラル状態を検出する。また、
図9では、第2カム部12がニュートラル以外の所定の変速段にある非ニュートラル状態を二点鎖線で表している。このとき、第2ニュートラルスイッチ91は、検出部91aの先端が第2溝部12cから外れた位置となり第2カム面12bとの対向間隔が小さいことを検出することにより、非ニュートラル状態を検出する。
【0109】
上記したように、本実施の形態では、第1ニュートラルスイッチ90をオイルが跳ね返り易い位置に配置し、それに対応して第1カム部11を配置している。このため、接触式の第1ニュートラルスイッチ90では、検出部90aと第1カム面11bとの間に積極的にオイルを供給することが可能である。特に、第1カム部11の真上には、ガイドプレート78が位置しており、
図9に示すように、上面視において、ガイドプレート78は、第1カム部11に重なるように配置される。このため、ガイドプレート78を介してオイルを効果的に第1カム部11に供給することが可能である。
【0110】
一方、第2ニュートラルスイッチ91をオイルが飛散し難い位置に配置し、それに対応して第2カム部12を配置している。このため、非接触式の第2ニュートラルスイッチ91では、検出部91aと第2カム面12bとの間にオイルが供給され難くなっている。
【0111】
特に
図9及び
図10に示すように、第2ニュートラルスイッチ91のシフトアンドセレクト軸70側には、所定の高さで立ち上がる第2縦壁部12aが位置している。更に、第2カム部12は、上面視で扇状を有し、第2ニュートラルスイッチ91の幅に対して十分に大きな左右幅を有している。このため、仮に第2ニュートラルスイッチ91側にオイルが飛散しても、第2縦壁部12aで当該オイルを遮ることが可能である。
【0112】
特に第2縦壁部12aの内周面12dは、筒状部10に沿って湾曲した円筒面である。このため、第2縦壁部12aに流れてきたオイルを当該内周面11dで第2ニュートラルスイッチ91から離れる方向(例えばオイルキャッチタンク25側)に流路を変更することが可能である(
図9の破線矢印参照)。これらにより、第2ニュートラルスイッチ91に対するオイル飛散を防止する効果が更に高められている。
【0113】
また、第1カム部11と第2カム部12とが同じ高さに位置するため、第1カム部11の第1縦壁部11aによっても第2ニュートラルスイッチ91に対するオイルの飛散を防止することが可能である。
【0114】
また、第1カム部11と第2カム部12とを一体的に形成したことで、それぞれを別々の部材で構成する場合に比べて検出後誤差を低減することが可能である。第1カム部11と第2カム部12とをそれぞれ別々に設けた場合、それぞれの取付誤差等によって、各ニュートラルスイッチの検出値に誤差が生じ得るためである。第1カム部11と第2カム部12とを一体化すれば、仮にシフトアンドセレクト軸70に対する中央カム部材76の取付誤差が生じても、第1カム部11及び第2カム部12の誤差も同じとなるため、検出精度に影響を与えることがない。
【0115】
また、第1カム部11にオイルが供給されることで、第1縦壁部11aの内側における第1カム部11の平坦面には、オイルが溜まり易くなっている。しかしながら、本実施の形態では、第1カム部11と第2カム部12との間に切欠き13を形成したことで、第1カム部11に溜まったオイルを、当該切欠き13を通じて下方に排出することが可能である。これによっても、第2ニュートラルスイッチ91に対するオイル供給防止の効果を高めることが可能である。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態では、複数のニュートラルスイッチをそれぞれ剛性の異なる側壁28に取り付け、その取付位置を入力軸3の軸受部分に近づけたことで、ニュートラルスイッチに対する振動を抑制して、ニュートラル状態の検出精度を向上させることが可能である。
【0117】
また、上記の実施形態では、カウンタ軸が2つ設けられる、いわゆる2軸式の変速機2を例にして説明したが、この構成に限定されない。変速機2は、カウンタ軸を1つのみ有する1軸式の変速機で構成されてもよい。
【0118】
また、上記の実施形態では、第2ニュートラルスイッチ91が非接触式のニュートラルスイッチで構成される場合について説明したが、この構成に限定されない。第2ニュートラルスイッチ91は、第1ニュートラルスイッチ90と同様に接触式のニュートラルスイッチで構成されてもよい。
【0119】
また、上記の実施形態では、隔壁23がライトケース21に形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。隔壁23は、レフトケース22に形成されてもよい。
【0120】
また、上記の実施形態では、第1カム部11とガイドプレート78とが上面視で重なる構成としたが、この構成に限定されない。第1ニュートラルスイッチ90の検出部90aとガイドプレート78とが上面視で重なってもよい。
【0121】
また、上記の実施形態では、膨出部29が2つ形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。膨出部29は、1つであっても3つ以上形成されてもよく、その個数や形状は適宜変更が可能である。
【0122】
また、上記の実施形態では、入力軸3の前方に各ニュートラルスイッチを配置する場合について説明したが、この構成に限定されない。他の軸(例えば第1カウンタ軸4)の前方に各ニュートラルスイッチを配置してもよい。
【0123】
また、複数の実施形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0124】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、本発明は、ニュートラルスイッチに対する振動を抑制して、ニュートラル状態の検出精度を向上させることができるという効果を有し、特に、車両用の手動変速機に有用である。
【符号の説明】
【0126】
1 :エンジン
2 :変速機
3 :入力軸
4 :第1カウンタ軸
5 :第2カウンタ軸
7 :シフト装置
10 :筒状部
11 :第1カム部
11a :第1縦壁部
11b :第1カム面
11c :第1溝部
12 :第2カム部
12a :第2縦壁部
12b :第2カム面
12c :第2溝部
12d :内周面
13 :切欠き
20 :変速機ケース
21 :ライトケース(第1ケース)
22 :レフトケース(第2ケース)
23 :隔壁
28 :側壁
28a :第1側壁
28b :第2側壁
28c :第3側壁
28d :第4側壁
28e :取付部
29 :膨出部
29a :第1膨出部
29b :第2膨出部
60 :ファイナルドリブンギヤ
70 :シフトアンドセレクト軸
90 :第1ニュートラルスイッチ
90a :検出部
91 :第2ニュートラルスイッチ
91a :検出部