(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】乗物用シートサイドカバー
(51)【国際特許分類】
B60N 3/00 20060101AFI20220524BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B60N3/00 Z
B60N2/56
(21)【出願番号】P 2018115941
(22)【出願日】2018-06-19
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成倫
(72)【発明者】
【氏名】貞松 太樹
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104321(JP,A)
【文献】特開2011-31778(JP,A)
【文献】特開2018-79906(JP,A)
【文献】特開2013-86539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/00
B60N 2/56
A47C 7/74
B60K 11/00-08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のシートの下側に設けられ、バッテリーを冷却する空気を乗物室内側から吸気してダクトへ導く構成を備えた乗物用シートサイドカバーであって、
上下方向に立設した立壁部と、
前記立壁部の下端部から前記立壁部と交わる方向に延出した延出部と、を有し、
前記立壁部は、乗物室内側に開口した第1開口部を有し、
前記延出部は、
前記第1開口部よりも下方に位置し、乗物室内側に開口した第2開口部を有
し、
当該乗物シートサイドカバーの乗物室外側に設けられ前記交わる方向に延在したスカッフプレートに取り付けられ、
前記延出部の上面は、前記スカッフプレートと同一平面を成しており、
前記第2開口部は、前記延出部の前記上面の前端から立ち下がった延出端面に形成されていることを特徴とする乗物用シートサイドカバー。
【請求項2】
前記立壁部は、前記シートの横側から前側に向かって湾曲した構成を成し、
前記第1開口部は、前記立壁部において、前記前側に配されていることを特徴とする請求項
1に記載の乗物用シートサイドカバー。
【請求項3】
前記第1開口部及び前記第2開口部から吸気する前記空気を、前記ダクトへ導くための一つの排出口を有するインレットダクトが取り付けられ、
前記排出口にフィルターが設けられていることを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の乗物用シートサイドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートサイドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートサイドカバーとして、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の乗物用シートサイドカバーは、車両の車体後部に配置された車両用バッテリーの冷却構造であって、 前記バッテリーと接続され、車室内の空気を冷却風として前記バッテリーに供給する吸気ダクトと、 前記吸気ダクトに前記冷却風を流通させる冷却ファンと、を備え、前記吸気ダクトに前記車室内の空気を取り込むための開口部が、後部座席のシートクッション取付部の前面から側面にかけて形成される構造を備えている。そしてこのような構成により、開口部が、乗員の耳の位置から離れ、且つ目立たない位置に配置されているので、乗員に不快感を与えることがなく商品性が向上する、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、ユーザーが後部座席のシートクッションにカバーを掛けると、後部座席の下方に位置するシートクッション取付部(シートサイドカバー)までカバーが垂れて、開口部が覆われてしまうことがある。その場合、冷却ファンが当該開口部から十分に空気を吸い込むことができなくなり、バッテリーの冷却効率が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、空気を効率よく吸気できる乗物用シートサイドカバーを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗物のシートの下側に設けられ、バッテリーを冷却する空気を乗物室内側から吸気してダクトへ導く構成を備えた乗物用シートサイドカバーであって、上下方向に立設した立壁部と、前記立壁部の下端部から前記立壁部と交わる方向に延出した延出部と、を有し、前記立壁部は、乗物室内側に開口した第1開口部を有し、前記延出部は、前記第1開口部よりも下方に位置し、乗物室内側に開口した第2開口部を有することを特徴とする。
【0007】
このような乗物用シートサイドカバーによると、延出部は、立壁部の下端部から立壁部と交わる方向に延出しているので、ユーザーがシートにカバーを掛けたとしても、カバーの下端部が延出部の上面で止まる。すると、第1開口部が当該カバーで覆われてしまったとしても、延出部に形成された第2開口部から空気を取り込むことができる。
【0008】
また、上記構成において、前記第2開口部は、前記延出部の延出端面に形成されているものとすることができる。このような乗物用シートサイドカバーによると、シートに掛けられたカバーが延出部の上面で止まり、弛んだとしても、延出部の延出端面に形成された第2開口部が当該カバーで覆われることがない。また、ユーザーが誤って物を落としたとしても、その物が第2開口部を通り抜けにくい。
【0009】
また、上記構成において、前記立壁部は、前記シートの横側から前側に向かって湾曲した構成を成し、前記第1開口部は、前記立壁部において、前記前側に配されているものとすることができる。シートの横側(乗物室外側)にはドアトリムが位置していることがある。その場合、開口部がドアトリムに近いと、圧力損失が大きくなり、効率よく空気を吸気することができない。しかし、上記のような乗物用シートサイドカバーによると、第1開口部は、前側に向かって湾曲した立壁部の前側に配されて、ドアトリムから離れるので、圧力損失が小さくなり、空気を効率よく吸気することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記第1開口部及び前記第2開口部から吸気する前記空気を、前記ダクトへ導くための一つの排出口を有するインレットダクトが取り付けられ、前記排出口にフィルターが設けられているものとすることができる。このような乗物用シートサイドカバーによると、第1開口部と第2開口部から吸気した空気をバッテリーへ導くために、当該二つの開口部に対し二つの別部材を設ける必要が無く、一つの部材(インレットダクト)で空気を流通させることができる。そして、一つの排出口に導かれた空気は、フィルターでろ過されるので、開口部の数に合わせてフィルターを複数設ける必要が無い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気を効率よく吸気できる乗物用シートサイドカバーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】シートサイドカバーを示す断面図(
図2のA-A線断面)
【
図5】実施形態2に係る右側のシートサイドカバーを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1から
図4によって説明する。なお、矢印方向Lを車両進行方向における左方、矢印方向Rを同右方、矢印方向FRを前方、矢印方向RRを後方、矢印方向Tを上方、矢印方向Bを下方、矢印方向INを車室内側、矢印方向OUTを車室外側として説明する。
【0014】
図1は、車両(乗物)の車室後側に設けられた後部座席(シート)1を示す斜視図である。後部座席1は、床面を形成するフロアパネル7の後側において、その上面に取り付けられており、乗員が着座することが可能である。また、後部座席1は、上下方向に立設し、上側がやや後方に傾いたシートバック10と、シートバック10の下端部から前方に延在し、上下方向に所定の厚みを有するシートクッション11と、を備える。
【0015】
シートクッション11は、乗員が着座する座面部13と、座面部13の周端から立ち下がって上下方向に立設する立壁面を形成する立壁面部(立壁)14とを有する。立壁面部14は、横側(車室外側)15から前側16に向かって湾曲した形状を成す。シートクッション11の車室外側には、スカッフプレート8が前後方向に延在している。
【0016】
シートクッション11の下側には、バッテリーを冷却する空気を車室内側から吸気してダクトへ導くための構成を備えたシートサイドカバー(乗物用シートサイドカバー)20が左右に一つずつ設けられている。シートサイドカバー20は、車室外側の端部がスカッフプレート8に、前側の端部がフロアパネル7にそれぞれ当接している。尚、左側のシートサイドカバー20は、右側のシートサイドカバー20と左右対称の構成、形状等であるため、以降は右側のシートサイドカバー20について説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、シートサイドカバー20は、上下方向に立設した立壁部21を有する。立壁部21は、シートクッション11の立壁面部14の一部を成しており(つまりシートクッション11の立壁と連なっている)、当該立壁面部14に倣うように、その横側15から前側16に向かって湾曲した形状となっている。
【0018】
また、シートサイドカバー20は、立壁部21の下端部から前方(立壁部21と交わる方向)に延出した延出部22を有している。延出部22は、上方に指向した三角形状の上面23と、上面23の前側端部から立ち下がり、前方に指向した延出端面24と、を有している。延出端面24は、上下方向に立設しており、車室内側に向かうほど立壁部21の壁面に近づく形状となっている。延出端面24の上下方向の高さは、立壁部21の上下方向の高さよりも低く、スカッフプレート8の上下方向の高さと同一である。
【0019】
また、延出部22は、車室外側かつ前側の端部において、スカッフプレート8に取り付けるための取付片部26を備えている。延出部22(延出端面24)とスカッフプレート8の高さは同一に揃えられているので、延出部22の上面23は、スカッフプレート8と同一平面を成す。これにより、意匠性が向上し、乗員が足を引っ掛ける等の不具合が生じにくいものとなっている。また、乗員がシート1にカバーを掛けたとしても、当該カバーが延出部22の上面23及びスカッフプレート8で止まりやすくなる。
【0020】
立壁部21は、シートクッション11の立壁面部14の前側16において前方(車室内側)に開口した第1開口部31を有している。第1開口部31は、正面視正方形状を成しており、その開口は、格子状のグリル51によって縦横に仕切られている。尚、第1開口部31は、シートクッション11の横側(車室外側)15には配されていない。
【0021】
延出部22は、延出端面24において前方(車室内側)に開口した第2開口部32を有する。第2開口部32は、第1開口部31よりも下方に位置しており、第1開口部31よりも左右方向の幅が大きく、上下方向の高さが低い正面視長方形状を成している。その開口は、第1開口部31と同様に、格子状のグリル52によって縦横に仕切られている。そして、第2開口部32は、車室内側からスカッフプレート8の近傍に至るまで延設されている。また、第2開口部32は、車両後方にやや窪んでいる。これにより、乗員が第2開口部32の開口から内部を視認しづらくなるので、意匠性の低下を防ぐことができる。
【0022】
図3及び
図4に示すように、シートサイドカバー20の裏面(後側の面)には、第1開口部31及び第2開口部32から吸気する空気を、ダクト60へ導くための一つの排出口43を有するインレットダクト40が取り付けられている。インレットダクト40は、正面視四角形状の本体部41と、本体部41の下端部から、車室外側かつ前方に延出した延在部42と、を有する。第1開口部31の後方には、本体部41が位置し、第2開口部32の後方には、延在部42が位置している。本体部41の中央には、正面視正方形状の排出口43が設けられている。そして、排出口43には、空気をろ過するためのフィルター50が取り付けられている。
【0023】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、車両(乗物)の後部座席(シート)1の下側に設けられ、バッテリーを冷却する空気を乗物室内側から吸気してダクト60へ導く構成を備えたシートサイドカバー(乗物用シートサイドカバー)20であって、後部座席1の立壁面部(立壁)14の一部を成し、上下方向に立設した立壁部21と、立壁部21の下端部から立壁部21と交わる方向に延出した延出部22と、を有し、立壁部21は、車室内側に開口した第1開口部31を有し、延出部22は、第1開口部31よりも下方に位置し、車室内側に開口した第2開口部32を有する。
【0024】
このようなシートサイドカバー20によると、延出部22は、立壁部21の下端部から立壁部21と交わる方向に延出しているので、ユーザーが後部座席1にカバーを掛けたとしても、カバーの下端部が延出部22の上面23で止まる。すると、第1開口部31が当該カバーで覆われてしまったとしても、延出部22に形成された第2開口部32から空気を取り込むことができる。
【0025】
また、本実施形態では、第2開口部32は、延出部22の延出端面24に形成されている。このようなシートサイドカバー20によると、後部座席1に掛けられたカバーが延出部22の上面23で止まり、弛んだとしても、延出部22の延出端面24に形成された第2開口部32が当該カバーで覆われることがない。また、ユーザーが誤って物を落としたとしても、その物が第2開口部32を通り抜けにくい。
【0026】
また、本実施形態では、立壁部21は、後部座席1の横側15から前側16に向かって湾曲した構成を成し、第1開口部31は、立壁部21において、前側16に配されている。後部座席1の横側15にはドアトリムが位置していることがある。その場合、開口部がドアトリムに近いと、圧力損失が大きくなり、効率よく空気を吸気することができない。しかし、上記のようなシートサイドカバー20によると、第1開口部31は、前側16に向かって湾曲した立壁部21の前側16に配されて、ドアトリムから離れるので、圧力損失が小さくなり、空気を効率よく吸気することができる。
【0027】
また、本実施形態では、第1開口部31及び第2開口部32から吸気する空気を、ダクト60へ導くための一つの排出口43を有するインレットダクト40が取り付けられ、排出口43にフィルター50が設けられている。このようなシートサイドカバー20によると、第1開口部31と第2開口部32から吸気した空気をバッテリーへ導くために、当該二つの開口部31,32に対し二つの別部材を設ける必要が無く、一つの部材(インレットダクト40)で空気を流通させることができる。そして、一つの排出口43に導かれた空気は、フィルター50でろ過されるので、開口部の数に合わせてフィルター50を複数設ける必要が無い。
【0028】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図5によって説明する。本実施形態では、実施形態1とは延出部の構成が異なる乗物用シートサイドカバー220を例示する。なお、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0029】
シートサイドカバー220は、立壁部21の下端部から前方かつ車室外側(立壁部21と交わる方向)に延出した延出部222を有している。延出部222は、上方に指向した円弧状の上面223と、上面223の周端部から立ち下がった面であり、前方かつ車室外側に指向した延出端面224と、を有している。
【0030】
延出端面224は、上下方向に立設しており、立壁部21に倣うように湾曲した形状となっている。また、延出部222は、延出端面224において前方かつ車室外側に開口した第2開口部232を有する。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】
(1)上記実施形態以外にも、第2開口部が形成される部分は適宜変更可能である。上記実施形態では、第2開口部は、延出部の延出端面に形成されているが、これに限られない。例えば、第2開口部は、延出部の上面に形成されていてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態以外にも、開口部の形状は適宜変更可能である。上記実施形態では、開口部は、正方形状や長方形状としたが、これに限られない。例えば、開口部は、楕円形状や台形状であってもよい。
【0034】
(3)上記実施形態以外にも、本発明の乗物用シートサイドカバーを採用するシートは適宜変更可能である。上記実施形態では、乗物用シートサイドカバーを採用するシートは、後部座席としたが、これに限られない。例えば、乗物用シートサイドカバーを採用するシートは、フロントシートやセカンドシートであってもよい。
【0035】
(4)上記実施形態以外にも、延出部の延出する方向は適宜変更可能である。上記実施形態では、延出部の延出する方向は、立壁部に交わる方向である前方としたが、これに限られない。例えば、延出部の延出する方向は、立壁部から前方かつ上方に傾いた方向でもよい。さらには、乗物用シートサイドカバーは、鉛直方向に立設した立壁部と、当該立壁部から水平方向に延出した延出部と、を有する構成であってもよい。
【0036】
(5)上記実施形態で例示した乗物用シートサイドカバーは、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記乗物用シートサイドカバーを適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…後部座席(シート)、7…フロアパネル、8…スカッフプレート、10…シートバック、11…シートクッション、20,220…シートサイドカバー(乗物用シートサイドカバー)、21…立壁部、22,222…延出部、23,223…上面、24,224…延出端面、31…第1開口部、32,232…第2開口部、40…インレットダクト、43…排出口、50…フィルター、51,52…グリル、60…ダクト