(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】構造体の解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20220524BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20220524BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20220524BHJP
E04B 1/82 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
H01F41/00 B
H01F27/02 Z
E04B1/82 Z
(21)【出願番号】P 2018126707
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】前西 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】能勢 隆義
【審査官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-102548(JP,A)
【文献】特開2012-077558(JP,A)
【文献】特開2007-063780(JP,A)
【文献】特開2011-021406(JP,A)
【文献】実開昭54-154511(JP,U)
【文献】特開2012-225156(JP,A)
【文献】特開平07-161549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E04B 1/82
E04G 21/32
H01F 41/00
H01F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原設置位置において、内壁の少なくとも一部に除去対象物を有する収容空間内に被収容物を収容した構造体の解体方法であって、
前記構造体だけを他所に移設する移設工程と、
前記他所において前記構造体から前記除去対象物を除去する除去工程と、
前記除去工程を行った後の前記構造体を解体する解体工程と、
を有することを特徴とする構造体の解体方法。
【請求項2】
前記構造体は、複数の区画部材を有し、前記区画部材同士を組み付けることによって前記収容空間を区画するものであり、
前記移設工程は、
前記構造体を複数の前記区画部材に解体する移設時解体工程と、
前記移設時解体工程によって得た複数の前記区画部材を前記他所において組み立てる組立工程と、を有し、
前記解体工程では、前記構造体を複数の前記区画部材に解体することを特徴とする請求項1に記載の構造体の解体方法。
【請求項3】
前記区画部材は、周縁に継手を備えた板材であり、
一の区画部材が備える前記継手と、当該一の区画部材に隣接する他の区画部材が備える前記継手とを、着脱可能な締結部材によって締結することを特徴とする請求項2に記載の構造体の解体方法。
【請求項4】
前記構造体は、側面に作業者用の出入口と、当該出入口を開閉する扉と、を備えており、
前記移設工程よりも後であって前記除去工程よりも前に、前記出入口に連通するクリーンルームを当該出入口の外側空間に設置するクリーンルーム設置工程を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の構造体の解体方法。
【請求項5】
前記構造体には、当該構造体の厚さ方向を貫通する開口部が形成されており、
前記移設工程よりも後であって前記除去工程よりも前に、前記移設工程によって移設した前記構造体の前記収容空間内に集塵装置を設置するとともに、当該集塵装置から延びる排気ダクトを前記構造体の前記開口部に接続する設置工程を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の構造体の解体方法。
【請求項6】
前記被収容物は、交流の電圧を変換する変圧器本体であり、
前記構造体は、前記変圧器本体から生じる音を抑制する防音タンクであり、
前記除去対象物は、アスベストであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の構造体の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器本体(被収容物)から生じる音を抑制するために、変圧器本体を収容する防音タンク(構造体)を備え、防音タンクの内壁に吸音材としてのアスベスト層(除去対象物)を設けた変圧器が知られている。このような変圧器を解体する場合には、防音タンクの解体時にアスベストの飛散を抑制する必要がある。
変圧器を設置現場で解体する方法として、特許文献1には、トレイとフードを用いて変圧器を取り囲む隔離室を形成し、当該隔離室の中で変圧器を解体する技術が開示されている。
防音タンクの解体作業に特許文献1の技術を適用することにより、アスベストの飛散を抑制しつつ防音タンクを解体できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法を適用する場合、防音タンクよりも一回り大きなサイズのトレイ及びフードを準備しなければならない。さらに、トレイ及びフードを設置可能な広さの作業スペースを確保しなければならない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、解体に使用する設備を簡素化すること、及び解体作業に必要なスペースを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、原設置位置において、内壁の少なくとも一部に除去対象物を有する収容空間内に被収容物を収容した構造体の解体方法であって、前記構造体だけを他所に移設する移設工程と、前記他所において前記構造体から前記除去対象物を除去する除去工程と、前記除去工程を行った後の前記構造体を解体する解体工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、構造物の解体に必要な設備の低減を図ること、及び解体作業に必要なスペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)は、原設置位置のコンクリート基礎に設置された変圧器の全体構成を説明する斜視図である。(B)は、防音タンクの内壁に設けたアスベスト層を説明する部分拡大図である。
【
図2】変圧器本体、及び防音タンクを説明する斜視図である。
【
図3】防音タンクから取り外した蓋部材を説明する斜視図である。
【
図4】防音タンクから取り外した第1側面部材を移設先のコンクリート基礎の上において仮支えした状態を説明する斜視図である。
【
図5】第1側面部材と第2側面部材とを組み付けた状態を説明する斜視図である。
【
図6】蓋部材の側面部材への組み付けを説明する斜視図である。
【
図7】防音タンクの目張りを説明する斜視図である。
【
図8】防音タンクに負圧集塵装置、及びダクトを設置した状態を説明する斜視図である。
【
図9】クリーンルームを設置した状態を説明する斜視図である。
【
図11】変形例における防音タンクの移設を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<変圧器1の全体構成>
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(A)は、原設置位置のコンクリート基礎CF1に設置された変圧器1の全体構成を説明する斜視図である。
図1に例示する変圧器1は、変換前の交流が入力される高圧ブッシング2と、高圧ブッシング2と電気的に接続され、高圧ブッシング2から入力された交流の電圧を下げる油入式の変圧器本体3(被収容物)と、変圧器本体3と電気的に接続され、変圧器本体3が降圧した交流を出力する低圧ブッシング4と、変圧器本体3の収容空間SPを区画するとともに、高圧ブッシング2及び低圧ブッシング4が取り付けられた防音タンク5(構造体)と、変圧器本体3とラジエータ用配管6を介して接続され、変圧器本体3から流入した高温の油を冷却し、冷却後の油を変圧器本体3へ送出するラジエータ7と、を有している。
変圧器1は、コンクリート基礎CF1(原設置位置)に設置されている。従って、変圧器本体3、防音タンク5、及びラジエータ7は、アンカーボルト及びナットの組8等を用いて、コンクリート基礎CF1に固定されている。
【0009】
<防音タンク5について>
本実施形態において、防音タンク5が区画する変圧器本体3の収容空間SPは、平面視が長方形の直方体形状をなしている。
図1(B)の部分拡大図にも示すように、収容空間SPの内壁には、変圧器本体3から発生する音を抑制するため、吸音材としてアスベスト層11(除去対象物)を設けている。アスベスト層11は、例えば、アスベストを防音タンク5の内壁に吹き付けることによって設ける。
図1(A)に示すように、防音タンク5は、収容空間SPの側面を区画する板状の側面部材12(第1の区画部材)と、収容空間SPの天井面を区画する板状の蓋部材13(第2の区画部材)とを有する。側面部材12は、周縁にフランジ12a、12b(継手)を備えた板材であり、平面視で長方形の長辺側に位置する一対の第1側面部材12A、12Aと、平面視で長方形の短辺側に位置する一対の第2側面部材12B、12Bと、を有する。蓋部材13は、長方形状をした板状部材によって作製されており、蓋部材13の周縁部13aは、側面部材12のフランジ12aと対向する継手である。
【0010】
互いに当接する第1側面部材12Aのフランジ12aと第2側面部材12Bのフランジ12aとは、ボルトとナットの組14(締結部材)によって着脱可能に締結されている。同様に、蓋部材13の周縁部13aと各側面部材12の上端に位置するフランジ12aも、ボルトとナットの組14によって着脱可能に締結されている。
また、第1側面部材12A及び第2側面部材12Bの下端に設けたフランジ12bは、アンカーボルト及びナットの組8によってコンクリート基礎CF1に締結されている。
ラジエータ7と対向する第1側面部材12Aには、第1側面部材12Aの厚さ方向を貫通し、ラジエータ用配管6が挿入される配管用開口部15を設けている。具体的には、上側のラジエータ用配管6Aが挿入される上側の配管用開口部15Aと、下側のラジエータ用配管6Bが挿入される下側の配管用開口部15Bとを設けている。
第2側面部材12Bの一方には、作業者用の出入口16と、当該出入口16を開閉する扉17とを設けている。従って、作業者は、出入口16を通じて防音タンク5の内外を行き来することができる。
【0011】
<防音タンク5の解体について>
既設の変圧器1は、新たな変圧器の設置に伴って解体、及び除却される。既設の変圧器1の解体に伴って、当該変圧器1が備える防音タンク5も解体される。防音タンク5を解体する場合には、防音タンク5に設けたアスベスト層11からアスベストが飛散する不都合を抑制する必要がある。
本実施形態は、防音タンク5の解体時において、防音タンク5そのものをアスベストの隔離室として利用し、アスベストの飛散を抑制している点に特徴を有している。すなわち、本実施形態における防音タンク5の解体方法は、変圧器本体3(被収容物)をコンクリート基礎CF1(原設置位置)に残したまま、防音タンク5(構造体)だけを移設先のコンクリート基礎CF2(他所)に移設する移設工程と、移設工程によって移設した防音タンク5からアスベスト(除去対象物)を除去する除去工程と、除去工程を行った後の防音タンク5を複数の側面部材12及び蓋部材13に解体する解体工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、移設工程では、防音タンク5を複数の側面部材12及び蓋部材13(区画部材)に解体する移設時解体工程と、移設時解体工程によって得た複数の側面部材12及び蓋部材13を、移設先のコンクリート基礎CF2(他所)において組み立てる組立工程と、を有し、解体工程では、防音タンク5を複数の側面部材12及び蓋部材13に解体することを特徴とする。
【0013】
本実施形態の解体方法によれば、防音タンク5そのものをアスベストの隔離室として利用しているので、防音タンク5を覆う部材(フードやトレイ等)が不要となり、防音タンク5の解体に必要な設備の低減を図ることができる。また、解体作業の省スペース化を図ることができる。以下、防音タンク5の解体手順について詳細に説明する。
【0014】
<解体手順について>
防音タンク5の解体は、変圧器1の解体に伴って行われる。従って、変圧器1の解体を説明することにより、防音タンク5の解体についても説明する。
変圧器1の解体にあたり、
図1(A)に示す変圧器本体3、及びラジエータ7から、冷却用の油を排出する。油の排出は、例えば、変圧器本体3の底部、及びラジエータ7の底部のそれぞれに設けたドレーン管と、各ドレーン管の途中に設けたドレーンバルブとを用いて行う。具体的には、閉状態とされていたドレーンバルブを開放することにより、変圧器本体3やラジエータ7に貯留された油を、ドレーン管を通じて外部に排出する。
次に、変圧器1から、高圧ブッシング2、低圧ブッシング4、ラジエータ7、及びラジエータ用配管6を取り外す。これにより、
図2に示すように、変圧器本体3と、この変圧器本体3を収容している防音タンク5とがコンクリート基礎CF1の上に残る。なお、取り外した高圧ブッシング2、低圧ブッシング4、ラジエータ7、及びラジエータ用配管6については、除却される。
【0015】
次に、防音タンク5から蓋部材13を取り外す。本実施形態において、蓋部材13と側面部材12とはボルトとナットの組14によって着脱可能に締結されている。このため、ボルトとナットを緩めることにより、蓋部材13を容易に取り外すことができる。
図3に示すように、取り外した蓋部材13は、仮置き場に仮置きする。仮置き場は、防音タンク5の移設先であるコンクリート基礎CF2(
図4参照)とは異なる場所に設けられる。
図1(B)の拡大図で説明したように、蓋部材13における収容空間SPの内壁にはアスベスト層11を設けていることから、蓋部材13を養生シート18の上に仮置きするなどして、アスベスト層11からアスベストが飛散しないようにする。また、蓋部材13が備える高圧ブッシング2用の開口部13b、及び低圧ブッシング4用の開口部13cには、アスベスト層11とは反対側の表面からシート19(例えば、プラスチックシート)を目張りして、各開口部13b、13cを塞いでおく。
【0016】
次に、蓋部材13を取り外した後の防音タンク5から第1側面部材12Aを取り外す。第1側面部材12Aは、ボルトとナットの組8、14を緩めることによって容易に取り外すことができる。
図4に示すように、取り外した第1側面部材12Aは、移設先のコンクリート基礎CF2(他所)に運搬し、コンクリート基礎CF2の上において仮支えする。なお、コンクリート基礎CF2の表面には、第1側面部材12Aを移動するよりも前にビニールシートVSを敷設しておく。
仮支えに使用する支え部材21は、第1側面部材12Aを仮支えできれば制限はないが、梯子や脚立など、作業者が登れるものが好ましい。これは、後述する蓋部材13の取り付け時において、作業が容易になるためである。
次に、
図5に示すように、防音タンク5から第2側面部材12Bを取り外してコンクリート基礎CF2へ移動する。第2側面部材12Bは、コンクリート基礎CF2の上において支え部材21によって仮支えをし、先に移動した第1側面部材12Aに組み付ける。本実施形態では、ボルトとナットの組14によって第1側面部材12Aのフランジ12aと第2側面部材12Bのフランジ12aとを締結する。
各側面部材12A、12Bをコンクリート基礎CF2に移設することにより、コンクリート基礎CF1の上には変圧器本体3が残置される。変圧器本体3は、コンクリート基礎CF1の上で解体された後に搬出される。なお、変圧器本体3は、解体することなく搬出してもよい。
【0017】
図6に示すように、全ての側面部材12A、12Bをコンクリート基礎CF2にて組み付けた後、蓋部材13を仮置き場から移動して側面部材12の上端に組み付ける。蓋部材13の側面部材12への組み付けも、ボルトとナットの組14によって行う。前述したように、支え部材21として、梯子や脚立を使用している場合には、作業者が支え部材21に乗った状態で蓋部材13を側面部材12に締結できる。これにより、ボルトとナットの組14による締結作業が容易になる。
以上の作業を行うことにより、移設先のコンクリート基礎CF2において防音タンク5の組み立てが完了する。
【0018】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の移設工程は、防音タンク5(構造体)を蓋部材13及び側面部材12(複数の区画部材)に解体する移設時解体工程と、移設時解体工程によって得た複数の蓋部材13及び側面部材12を移設先のコンクリート基礎CF2(他所)において組み立てる組立工程と、を有している。
【0019】
次に、
図7に示すように、移設後の防音タンク5が備える配管用開口部15に目張りをする。本実施形態では、上側の配管用開口部15Aにシート22(例えば、プラスチックシート)を目張りする。また、蓋部材13及び側面部材12の組み付け箇所に隙間があれば、シートを目張りするなどして塞ぐ。なお、下側の配管用開口部15Bにはシートを目張りしない。
【0020】
次に、
図8に示すように、各側面部材12A、12Bの下端の外表面に沿ってビニールシートVSの周縁部分VS’を立ち上げ、養生テープ等を用いて各側面部材12A、12Bに仮止めする。さらに、防音タンク5の収容空間SP内に負圧集塵装置23を設置し、負圧集塵装置23と下側の配管用開口部15Bとの間をダクト24で接続する(設置工程)。これにより、防音タンク5の収容空間SPが外側空間から隔離され、負圧集塵装置23の動作に伴って防音タンク5の収容空間SPが大気圧よりも多少低い負圧に保たれる。その結果、防音タンク5の収容空間SPからの外側空間へのアスベストの飛散が抑制される。
次に、
図9に示すように、防音タンク5の扉17(出入口16)に連通するクリーンルーム25を防音タンク5の外側空間に設置する(クリーンルーム設置工程)。クリーンルーム25は、前室、洗浄室、及び更衣室を備えており、アスベストの外側空間への飛散を抑制する。
【0021】
次に、
図10に示すように、除去工程を行い、防音タンク5(側面部材12、蓋部材13)の内壁に形成されたアスベスト層11を当該内壁から除去する。除去工程では、負圧集塵装置23を動作させて防音タンク5の収容空間SPを負圧にする。次に、
図10の上部に示すように、スプレーノズル26から液体状の粉塵飛散抑制剤27をアスベスト層11に吹き付け、アスベスト層11を十分に湿潤化する。次に、スクレーパー(ケレン棒)28などを使用して、湿潤化したアスベスト層11を掻き落とす。残ったアスベスト層11については、粉塵飛散抑制剤27を再度吹き付けて湿潤化し、ワイヤーブラシなどを使用して取り除く。除去したアスベストは、適宜、プラスチック袋の中に入れて密封し、その後、防音タンク5の収容空間SPから排出する。さらに、アスベスト層11を取り除いた後の防音タンク5の内壁に対して、スプレーノズル26から粉塵飛散抑制剤27を散布し、アスベストの飛散を抑制する。
アスベスト層11を取り除いた後、解体工程を行う。解体工程では、アスベスト層11を取り除いた防音タンク5(構造体)を、複数の側面部材12及び蓋部材13(区画部材)に解体する。解体工程は、上述した手順と逆の手順で行う。簡単に説明すると、最初にクリーンルーム25を撤去し、その後、負圧集塵装置23及びダクト24を防音タンク5から搬出する。次に、防音タンク5から蓋部材13を取り外し、側面部材12を分解する。これらの蓋部材13及び側面部材12は除却する。
【0022】
以上の手順に即して変圧器1を解体することにより、防音タンク5を覆う部材(フードやトレイ等)が不要となって、防音タンク5の解体に必要な設備の低減を図ることができ、解体作業に必要なスペースを小さくすることができる。
【0023】
<変形例>
前述の実施形態では、コンクリート基礎CF1に設置された防音タンク5を解体し、コンクリート基礎CF2(他所)において組み立てたが、この方法に限定されるものではない。
例えば、大型クレーンで吊り下げ可能な大きさの防音タンクであれば、解体せずに移設してもよい。例えば、
図11に示すように、高圧ブッシング、低圧ブッシングなどを防音タンク5’から取り外した後の移設工程において、大型クレーンCRを使用して防音タンク5’をワイヤWで吊り下げ、コンクリート基礎CF2(他所)に移設してもよい。
なお、変形例の方法においても、コンクリート基礎CF1には変圧器本体3’が残置される。残置された変圧器本体3’は、解体することなく搬出してもよいし、コンクリート基礎CF1にて解体した後に搬出してもよい。
【0024】
前述の実施形態では、変圧器本体3と、変圧器本体3の収容空間SPを区画し、収容空間SPの内壁にアスベスト層11を有する防音タンク5と、を有する変圧器1を例に挙げて説明したが、本発明は変圧器1に限定されるものではない。本発明は、収容空間内に被収容物を収容し、内壁の少なくとも一部に除去対象物を有する構造体を有する各種の物品に適用できる。
前述の実施形態では、防音タンク5を構成する蓋部材13と側面部材12とが、ボルトとナットの組14(締結部材)によって着脱可能に締結されていたが、この構成に限定されるものではない。蓋部材13と側面部材12とは、リベットで組み付けてもよいし、溶接にて接合されていてもよい。
前述の実施形態では、防音タンク5が、1つの蓋部材13と、4つの側面部材12とによって構成されていたが、蓋部材13及び側面部材12の数は、実施形態の例に限られない。
【0025】
前述の実施形態では、除去対象物としてアスベストを例示したが、除去対象物はアスベストに限定されない。例えば、除去対象物は、ロックウールやグラスウール等の繊維系材料であってもよいし、発泡樹脂等の樹脂系材料であってもよい。
前述の実施形態では、除去対象物がアスベストであったため、防音タンク5の出入口16に連通してクリーンルーム25を設置したが、除去対象物の種類によってはクリーンルーム25を設置しなくてもよい。
前述の実施形態では、除去対象物がアスベストであったため、防音タンク5の収容空間SP内に負圧集塵装置23とダクト24とを設置したが、除去対象物の種類によっては負圧集塵装置23等を設置しなくてもよい。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0026】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
請求項1に係る本発明は、原設置位置において、内壁の少なくとも一部に除去対象物(アスベスト)を有する収容空間(収容空間SP)内に被収容物(変圧器本体3)を収容した構造体(防音タンク5)の解体方法であって、構造体だけを他所に移設する移設工程と、他所において構造体から除去対象物を除去する除去工程と、除去工程を行った後の構造体を解体する解体工程と、を有することを特徴とする。
請求項1に係る本発明によれば、構造体を除去対象物の隔離室として利用しているので、構造体を覆う部材(フードやトレイ等)が不要となり、構造体の解体に必要な設備の低減を図ることができる。また、解体作業の省スペース化を図ることができる。
【0027】
請求項2に係る本発明は、構造体は、複数の区画部材(側面部材12、及び蓋部材13)を有し、区画部材同士を組み付けることによって収容空間を区画するものであり、移設工程は、構造体を複数の区画部材に解体する移設時解体工程と、移設時解体工程によって得た複数の区画部材を他所において組み立てる組立工程と、を有し、解体工程では、構造体を複数の区画部材に解体することを特徴とする。
請求項2に係る本発明によれば、全体をクレーンで吊り下げることが困難な大型の構造体であっても解体することができる。
【0028】
請求項3に係る本発明は、区画部材は、周縁に継手を備えた板材であり、一の区画部材が備える継手と、当該一の区画部材に隣接する他の区画部材が備える継手とを、着脱可能な締結部材(ボルトとナットの組14)によって締結する、ことを特徴とする。
請求項3に係る本発明によれば、締結部材の着脱によって構造体を容易に解体したり、容易に組み立てたりすることができ、移設時解体工程、組立工程、及び解体工程の作業性を向上させることができる。
【0029】
請求項4に係る本発明は、構造体は、側面(側面部材12)に作業者用の出入口(出入口16)と、当該出入口を開閉する扉(扉17)と、を備えており、移設工程よりも後であって除去工程よりも前に、出入口に連通するクリーンルーム(クリーンルーム25)を、当該出入口の外側空間に設置するクリーンルーム設置工程を、さらに有することを特徴とする。
請求項4に係る本発明によれば、クリーンルーム設置工程によってクリーンルームを設置することにより、除去工程において除去対象物が外側空間に漏れ出す不都合を抑制できる。
【0030】
請求項5に係る本発明は、構造体には、当該構造体の厚さ方向を貫通する開口部(下側の配管用開口部15B)が形成されており、移設工程よりも後であって除去工程よりも前に、移設工程によって移設した構造体の収容空間内に集塵装置(負圧集塵装置23)を設置するとともに、当該集塵装置から延びる排気ダクト(ダクト24)を構造体の開口部(下側の配管用開口部15B)に接続する設置工程を、さらに有することを特徴とする。
請求項5に係る本発明によれば、設置工程によって収容空間内に集塵装置を設置することにより、除去工程において除去対象物が外側空間に漏れ出す不都合を抑制できる。
【0031】
請求項6に係る本発明は、被収容物は、交流の電圧を変換する変圧器本体(変圧器本体3)であり、構造体は、変圧器本体から生じる音を抑制する防音タンク(防音タンク5)であり、除去対象物は、アスベストであることを特徴とする。
請求項6に係る本発明によれば、変圧器本体と、変圧器本体を収容する防音タンクとを備える変圧器の解体において、解体に必要な設備の低減を図ることができる。また、解体作業の省スペース化を図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…変圧器、3…変圧器本体、5…防音タンク、6…ラジエータ用配管、7…ラジエータ、11…アスベスト層、12…側面部材、12a…フランジ、13…蓋部材、14…ボルトとナットの組、15…配管用開口部、16…出入口、17…扉、23…負圧集塵装置、24…ダクト、25…クリーンルーム、27…粉塵飛散抑制剤、SP…収容空間