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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/77 20150101AFI20220524BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E05F15/77
B60R16/02 660B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018131357
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020007840
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】彭 志遠
(72)【発明者】
【氏名】川島 直樹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194997(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/068403(WO,A1)
【文献】特開2008-115630(JP,A)
【文献】特開2009-200841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0189098(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013010819(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/77
E05B 49/00
E05B 77/00-85/28
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のユーザが携帯する携帯情報処理端末を用いた車両制御システムであって、
前記携帯情報処理端末は、
前記ユーザの発話を集音するマイクと、
前記発話の内容の音声認識結果であるコマンド情報を前記車両に送信する送信部と、を備え、
前記車両は、
前記携帯情報処理端末から送信された前記コマンド情報を受信する受信部と、
前記携帯情報処理端末と前記車両との距離を検知する距離検知部と、
前記距離検知部により前記携帯情報処理端末と前記車両との距離が所定距離以下となったことが検知された場合、前記車両の各部を前記コマンド情報に対応する状態に制御する車両制御部と、を備え
前記車両制御部は、前記コマンド情報の内容に基づいて前記所定距離を変更する、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
車両のユーザが携帯する携帯情報処理端末を用いた車両制御システムであって、
前記携帯情報処理端末は、
前記ユーザの発話を集音し、音声データに変換するマイクと、
前記音声データを音声認識する音声認識部と、
前記発話の内容の音声認識結果であるコマンド情報を前記車両に送信する送信部と、を備え、
前記車両は、
前記携帯情報処理端末から送信された前記コマンド情報を受信する受信部と、
前記携帯情報処理端末と前記車両との距離を検知する距離検知部と、
前記距離検知部により前記携帯情報処理端末と前記車両との距離が所定距離以下となったことが検知された場合、前記車両の各部を前記コマンド情報に対応する状態に制御する車両制御部と、を備える、
ことを特徴とする車両制御システム
【請求項3】
前記送信部および前記受信部は、前記携帯情報処理端末と前記車両との距離が所定の通信可能距離以下となった場合にデータの送受信が可能となる近距離無線通信装置である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記車両周辺の環境情報を取得する環境情報取得部を更に備え、
前記車両制御部は、前記環境情報に基づいて前記所定距離を変更する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記コマンド情報が前記車両の所定のドアの開放指示であった場合、
前記距離検知部は、前記所定のドアと前記携帯情報処理端末との距離を検知し、
前記車両制御部は、前記所定のドアと前記携帯情報処理端末との距離が前記所定距離以下となった場合に前記所定のドアを開放する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にマイクを設け、ユーザの発話を音声認識することにより、ドア開閉などの指示を受け付ける技術が開発されている。
例えば、下記特許文献1において、スマートキーシステムは、スマート制御部、モーションセンサ、ドアロック/アンロックモータ、ドア開閉モータ、トランク開閉モータ、及び携帯キーを備える。スマート制御部によりIDコードの受理認証がされ、かつ、スマート制御部及びモーションセンサによりユーザの意思が推認されることを条件として、ボデー制御部がドアロック/アンロックモータを駆動し、ドア開閉モータあるいはトランク開閉モータを駆動する。同文献におけるユーザの意思の推認方法として、車載機器内にマイクロホンを設置し、ユーザの音声(発話)を音声認識する方法が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-172367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両が置かれている環境は、ユーザ以外の人物の発話や雑音などが発生している場合があり、ユーザの意思を確実に把握することが困難な可能性がある。
また、ユーザの音声をマイクが拾える程度に近づいてからでなければ車両に対する指示を行うことができず、指示の内容によっては不便を生じる場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、発話によって確実かつ柔軟に車両への指示を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる車両制御システムは、車両のユーザが携帯する携帯情報処理端末を用いた車両制御システムであって、前記携帯情報処理端末は、前記ユーザの発話を集音するマイクと、前記発話の内容の音声認識結果であるコマンド情報を前記車両に送信する送信部と、を備え、前記車両は、前記携帯情報処理端末から送信された前記コマンド情報を受信する受信部と、前記携帯情報処理端末と前記車両との距離を検知する距離検知部と、前記距離検知部により前記携帯情報処理端末と前記車両との距離が所定距離以下となったことが検知された場合、前記車両の各部を前記コマンド情報に対応する状態に制御する車両制御部と、を備え、前記車両制御部は、前記コマンド情報の内容に基づいて前記所定距離を変更する、ことを特徴とする。
上述の目的を達成するため、請求項2の発明にかかる車両制御システムは、車両のユーザが携帯する携帯情報処理端末を用いた車両制御システムであって、前記携帯情報処理端末は、前記ユーザの発話を集音し、音声データに変換するマイクと、前記音声データを音声認識する音声認識部と、前記発話の内容の音声認識結果であるコマンド情報を前記車両に送信する送信部と、を備え、前記車両は、前記携帯情報処理端末から送信された前記コマンド情報を受信する受信部と、前記携帯情報処理端末と前記車両との距離を検知する距離検知部と、前記距離検知部により前記携帯情報処理端末と前記車両との距離が所定距離以下となったことが検知された場合、前記車両の各部を前記コマンド情報に対応する状態に制御する車両制御部と、を備える、ことを特徴とする。
請求項の発明にかかる車両制御システムは、前記送信部および前記受信部は、前記携帯情報処理端末と前記車両との距離が所定の通信可能距離以下となった場合にデータの送受信が可能となる近距離無線通信装置である、ことを特徴とする。
請求項の発明にかかる車両制御システムは、前記車両周辺の環境情報を取得する環境情報取得部を更に備え、前記車両制御部は、前記環境情報に基づいて前記所定距離を変更する、ことを特徴とする
請求項5の発明にかかる車両制御システムは、前記コマンド情報が前記車両の所定のドアの開放指示であった場合、前記距離検知部は、前記所定のドアと前記携帯情報処理端末との距離を検知し、前記車両制御部は、前記所定のドアと前記携帯情報処理端末との距離が前記所定距離以下となった場合に前記所定のドアを開放する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、携帯情報処理端末と車両との距離に関わらずユーザからのコマンドを受け付けるとともに、上記距離が所定距離以下となった際にコマンドを実行する。よって、ユーザがコマンドを発話するタイミングの自由度を向上させることができる。また、ユーザが車両に近づいてからコマンドを実行するので、コマンドがドアや窓の開閉の場合においては盗難等、コマンドがエアコンやライトの点灯の場合においては消費電力の増大等を防止することができる。また、ユーザが携帯する携帯情報処理端末のマイクに対して指示の発話を行うので、車両に搭載されたマイクに対して指示の発話を行う場合と比較して、周囲の人の発話や雑音などによる誤認識の可能性を低減する上で有利となる。車両周辺の環境やコマンド情報の内容に基づいて所定距離を変更するので、より適切なタイミングでコマンドを実行することができ、利便性を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、携帯情報処理端末と車両との距離に関わらずユーザからのコマンドを受け付けるとともに、上記距離が所定距離以下となった際にコマンドを実行する。よって、ユーザがコマンドを発話するタイミングの自由度を向上させることができる。また、ユーザが車両に近づいてからコマンドを実行するので、コマンドがドアや窓の開閉の場合においては盗難等、コマンドがエアコンやライトの点灯の場合においては消費電力の増大等を防止することができる。また、ユーザが携帯する携帯情報処理端末のマイクに対して指示の発話を行うので、車両に搭載されたマイクに対して指示の発話を行う場合と比較して、周囲の人の発話や雑音などによる誤認識の可能性を低減する上で有利となる。
請求項の発明によれば、携帯情報処理端末と車両は、近距離無線通信によりコマンド情報の送受信を行うので、広域ネットワークを利用することなくデータを送受信することができ、通信コストや消費電力を低減する上で有利となる。
請求項4の発明によれば、車両周辺の環境やコマンド情報の内容に基づいて所定距離を変更するので、より適切なタイミングでコマンドを実行することができ、利便性を向上させることができる。
請求項5の発明によれば、所定のドアの開放指示を受けた場合、所定のドアと携帯情報処理端末との距離が所定距離以下となった場合に所定のドアを開放するので、ユーザの乗車タイミングにより近いタイミングでドアを開放することができ、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる車両制御システム10の構成を示すブロック図である。
図2】コマンド実行距離と通信可能距離との関係を模式的に示す説明図である。
図3】リアゲートGを基準点とした場合のコマンド実行距離を模式的に示す説明図である。
図4】携帯情報処理端末20の処理を示すフローチャートである。
図5】車両30の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる車両制御システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる車両制御システム10の構成を示すブロック図である。
車両制御システム10は、車両30のユーザが携帯する携帯情報処理端末20を用いて車両30の各部を遠隔制御するためのシステムである。
携帯情報処理端末20は、例えばスマートホンなどの小型情報処理端末であり、ユーザが車両30を離れる際にも起動状態(即時に使用可能な状態)で所持している。携帯情報処理端末20には、例えば車両30の遠隔制御用アプリケーションがインストールされており、ユーザの発話(車両30への指示)を常時受け付け可能な状態にある。
【0009】
携帯情報処理端末20は、マイク(マイクロホン)200、音声認識部202、広域ネットワーク通信部204、コマンド発行部206、近距離無線通信部208を備える。
マイク200は、ユーザの発話(空気の振動)を集音し、電気信号(音声データ)に変換する。なお、マイク200を指向性マイクとし、ユーザ以外の発話や雑音などを誤検知しないようにしてもよい。
【0010】
音声認識部202は、例えば言語モデル、音響モデル、発音辞書等を有し、ユーザの発話の内容を音声認識する。音声認識部202による音声認識結果は、テキストデータ(第1のテキストデータ)として出力される。
なお、音声認識部202で声紋認証を行い、今回集音された音声がユーザ本人による発話でない場合には、指示を受け付けないようにしてもよい。
【0011】
広域ネットワーク通信部204は、通信キャリアが提供する通信網や公衆無線LAN等を介してインターネット等の広域ネットワークに接続する。
広域ネットワーク通信部204は、ユーザの発話の音声データを音声認識サーバ40に送信し、音声認識結果のテキストデータ(第2のテキストデータ)を受信する。
音声認識サーバ40は、例えば言語モデル、音響モデル、発音辞書等を有する。
【0012】
コマンド発行部206は、音声認識部202の音声認識結果である第1のテキストデータと、音声認識サーバ40の音声認識結果である第2のテキストデータとを比較し、車両30側へ送信する指示内容(コマンド情報)を決定する。コマンド発行部206は、例えば第1のテキストデータと第2のテキストデータとが同一の場合は、そのまま同テキストデータを車両30に送信するコマンド情報として採用し、両者が異なっている場合は、より確度が高い方のテキストデータ(または両者から類推される他のテキストデータ)を車両30に送信するコマンド情報として採用する。
このように、同一の音声データを音声認識部202と音声認識サーバ40とで音声認識するのは、音声認識の精度をより向上させるためである。なお、音声認識部202または音声認識サーバ40のいずれか一方のみで音声認識を行い、その結果をコマンド情報として採用してもよいことは無論である。
【0013】
近距離無線通信部208は、請求項における送信部に対応し、ユーザの発話の内容の音声認識結果であるコマンド情報を車両30に送信する。
近距離無線通信部208および車両30の近距離無線通信部300は、携帯情報処理端末20と車両30との距離(より厳密には近距離無線通信部208,300同士の距離)が所定の通信可能距離以下となった場合にデータの送受信が可能となる。
近距離無線通信部208,300は、例えばBluetооth(登録商標)などの通信規格を用いており、通信可能距離は例えば10数メートル程度である。
近距離無線通信部208,300は、互いの距離が通信可能距離より離れている場合には通信ができないが、互いの距離が通信可能距離以内になると認証処理を行い、認証が成立した場合にはデータの送受信を行う。
【0014】
つぎに、車両30の構成について説明する。
車両30は、近距離無線通信部300、距離検知部302、環境情報取得部303、車両制御部304を備える。
近距離無線通信部300は、請求項における受信部に対応し、携帯情報処理端末20から送信されたコマンド情報を受信する。上述のように、近距離無線通信部300は、携帯情報処理端末20と車両30との距離が所定の通信可能距離以内となった場合に、近距離無線通信部208との間でデータの送受信が可能となる。
なお、携帯情報処理端末20と車両30間の通信は、広域ネットワークを用いて行ってもよい。
【0015】
距離検知部302は、携帯情報処理端末20と車両30との距離を検知する。本実施の形態では、近距離無線通信部208,300間の通信強度に基づいて携帯情報処理端末20と車両30との距離を検知する。
なお、距離のみならず、車両30に対する携帯情報処理端末20の位置を検知したい場合は、例えば近距離無線通信部300を複数(例えば車両30の前方側と後方側の2箇所等)に設け、それぞれの近距離無線通信部300における通信強度に基づいて三角測量的に位置を算出することが可能である。
また、距離検知部302は、例えば携帯情報処理端末20および車両30にそれぞれ搭載されているGPS受信器(図示なし)により検知されたそれぞれの位置情報(緯度経度)を取得し、携帯情報処理端末20と車両30との距離を検知してもよい。
【0016】
環境情報取得部303は、車両周辺の環境情報を取得する。車両周辺の環境とは、例えば人の多さ、明るさ、天候、時刻などである。
環境情報取得部303は、例えば車両30に搭載されたナビゲーション装置(図示なし)と連携し、車両30の現在位置情報(緯度経度)および地図情報を用いて車両周辺の環境情報を取得する。また、例えば車載カメラ(図示なし)の画像に基づいて車両周辺の環境情報を推定してもよい。
【0017】
車両制御部304は、距離検知部302により携帯情報処理端末20と車両30との距離が所定距離(以下、「コマンド実行距離」という)以下となったことが検知された場合、車両各部306をコマンド情報に対応する状態に制御する。
車両各部306とは、例えばドア(前後左右の昇降口やリアゲート)3062、窓3064、ライト(ヘッドランプやテールランプなどの車外灯、車内灯など)3066、ブザー3068、エアコン3070などである。なお、例えば電動車におけるモータやガソリン車におけるエンジン等の車両駆動機構を車両制御部304で制御可能としてもよい。
例えばユーザからのコマンドが「リアゲートを開けて」だった場合、車両制御部304は、携帯情報処理端末20と車両30との距離がコマンド実行距離以下となったタイミングでリアゲートを開放させる。
【0018】
図2は、コマンド実行距離と通信可能距離との関係を模式的に示す説明図である。
図2では、車両30の代表点P0を中心に、半径DCの範囲が通信可能距離、半径DE(≦DC、図2の例ではDE<DC)の範囲がコマンド実行距離となっている。
ユーザU(携帯情報処理端末20)が車両30から通信可能距離DCよりも離れた位置P1にいる場合、近距離無線通信部208,300は通信することができない。よって、この位置でユーザUが発話を行っても、コマンド情報は送受信できず、携帯情報処理端末20側で保留状態となっている。
ユーザU(携帯情報処理端末20)が通信可能距離DC以下となるまで車両30に近づくと(例えば位置P2まで移動すると)、近距離無線通信部208,300が通信可能となり、認証処理後コマンド情報が車両30へと送信される。なお、ユーザU(携帯情報処理端末20)が通信可能距離DC以下の範囲でコマンドの発話を行った場合、コマンド情報は即座に車両30側に送信される。
【0019】
コマンド情報を受信した車両30では、距離検知部302により、例えば近距離無線通信部208,300間の通信強度等に基づいて、携帯情報処理端末20との距離を検知する。
携帯情報処理端末20との距離がコマンド実行距離DEを超えている(例えば位置P2にいる)場合、車両制御部304は受信したコマンドを実行せずに待機する。
一方、携帯情報処理端末20との距離がコマンド実行距離DE以内(例えば位置P3にいる)となった場合、車両制御部304は受信したコマンドを実行する。なお、ユーザU(携帯情報処理端末20)がコマンド実行距離DE以下の範囲でコマンドの発話を行った場合、コマンド情報は即座に車両30側に送信され、かつ即座に実行される。
【0020】
コマンド実行距離DEは固定値であってもよいが、本実施の形態では、車両制御部304にコマンド実行距離決定部3040(図1参照)を設け、コマンド実行距離DEを可変としている。
コマンド実行距離決定部3040は、例えばコマンド情報の内容(コマンド内容)または車両周辺の環境情報の少なくともいずれかに基づいてコマンド実行距離DEを変更する。
【0021】
コマンド内容に基づくコマンド実行距離DEの変更例を挙げると、例えばライト3066の点灯を指示するコマンドの場合、安全性等の懸念点は特にないため、標準的なコマンド実行距離DE(例えば1mなど)を採用する。
一方、例えばドア3062や窓3064の開放を指示するコマンドの場合、ユーザが遠方にいるうちにコマンドを実行してしまうと盗難等の恐れがあるため、上記標準的なコマンド実行距離DEよりもコマンド実行距離DEを短くする。
また、例えばエアコン3070の稼働開始を指示するコマンドの場合、ユーザが車両30に到着するまでの間になるべく長時間エアコン3070を稼働させて、車内を設定温度に近づけるのが好ましい。このため、上記標準的なコマンド実行距離DEよりもコマンド実行距離DEを長くする。
【0022】
車両周辺の環境情報に基づくコマンド実行距離DEの変更例を挙げると、例えば車両30が人の多い場所(商業施設の駐車場や都市部のパーキングメータなど)に位置する場合には、人の少ない場所(田舎の温泉施設など)に位置する場合と比較してコマンド実行距離DEを短くする。これは、例えばコマンドがドア3062や窓3064の開放を指示する内容である場合に盗難等を防止するため、また無人の車両30が稼働することによる周囲の人の警戒感を低減するためである。
また、車両30の周辺が暗い場合、例えばコマンドがドア3062や窓3064の開放を指示する内容である場合にはコマンド実行距離DEを短くして盗難等を防止するとともに、例えばライト3066の点灯を指示するコマンドの場合にはコマンド実行距離DEを長くして車両周辺が早期に明るくなるようにする。
【0023】
また、例えばコマンドの内容が所定のドアの開放指示であった場合、図2に示すような車両30の代表点P0からの距離ではなく、当該所定のドアから携帯情報処理端末20までの距離を検知し、その距離がコマンド実行距離DE以下となった場合に所定のドアを開放するようにしてもよい。
図3を参照して説明すると、例えばユーザUがリアゲートGの開放を指示した場合、車両30の代表点P0からの距離ではなく、リアゲートGの代表点PGから携帯情報処理端末20までの距離を計測する。この場合、例えば上述のように近距離無線通信部300を複数に設け、それぞれの近距離無線通信部300における通信強度に基づいて三角測量的に携帯情報処理端末20の位置を算出する。
例えば通常通り車両30の代表点P0を基準とした場合、ユーザUが車両30の後方から近付いた際には、代表点P0からユーザU(携帯情報処理端末20)までの距離D1+D2がコマンド実行距離DE以下となった時に、ユーザUが車両30の前方から近付いた際には、代表点P0からユーザUまでの距離D3がコマンド実行距離DE以下となった時に、それぞれリアゲートGが開放される。
一方、リアゲートGの代表点PGを基準とした場合、ユーザUが車両30の後方から近付いた際には、代表点PGからユーザUまでの距離D1がコマンド実行距離DE以下となった時に、ユーザUが車両30の前方から近付いた際には、代表点PGからユーザUまでの距離D3+D2がコマンド実行距離DE以下となった時に、それぞれリアゲートGが開放される。
このようにすることで、ユーザの乗車タイミングにより近いタイミングでドアを開放することができ、利便性を向上させることができる。
【0024】
つぎに、車両制御システム10の処理について説明する。
図4は、携帯情報処理端末20の処理を示すフローチャートである。
携帯情報処理端末20に対してユーザが発話すると(ステップS400:Yes)、マイク200で発話が音声データに変換され、音声認識部202で発話内容の音声認識が行われる(ステップS402)。また、広域ネットワーク通信部204を介して音声認識サーバ40に音声データが送信されるとともに、音声認識サーバ40による音声認識結果を受信する(ステップS404)。
コマンド発行部206は、音声認識部202の音声認識結果と音声認識サーバ40の音声認識結果とを比較し、車両30側へ送信するコマンド情報を決定する(ステップS406)。
携帯情報処理端末20と車両30との間の距離、すなわち近距離無線通信部208,300間の距離が通信可能距離より離れている場合は(ステップS408:Noのループ)、通信ができないため、携帯情報処理端末20側でコマンド情報を保留状態とする。
また、携帯情報処理端末20と車両30との間の距離が通信可能距離以下の場合(ステップS408:Yes)、近距離無線通信部208は、車両30側の近距離無線通信部300にコマンド情報を送信する(ステップS410)。
【0025】
図5は、車両30の処理を示すフローチャートである。
携帯情報処理端末20からコマンド情報を受信すると(ステップS500:Yes)、コマンド実行距離決定部3040により、コマンド情報の内容や車両周辺の環境情報に基づいてコマンド実行距離DEを決定する(ステップS502)。なお、コマンド実行距離DEは固定値であってもよく、この場合はステップS502を省略する。
つぎに、距離検知部302により携帯情報処理端末20と車両30との距離、すなわち近距離無線通信部208,300を検知する。携帯情報処理端末20と車両30との距離がコマンド実行距離以下となるまでは(ステップS504:Noのループ)、車両制御部304はコマンドの実行を待機する。
そして、携帯情報処理端末20と車両30との距離がコマンド実行距離以下となると(ステップS504:Yes)、車両制御部304はコマンドの内容に従って車両各部306を制御する、すなわちコマンドを実行する(ステップS506)。
【0026】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両制御システム10によれば、携帯情報処理端末20と車両30との距離に関わらずユーザからのコマンドを受け付けるとともに、上記距離がコマンド実行距離以下となった際にコマンドを実行する。よって、ユーザがコマンドを発話するタイミングの自由度を向上させることができる。
また、車両制御システム10は、ユーザが車両30に近づいてからコマンドを実行するので、コマンドがドア3062や窓3064の開閉の場合においては盗難等、コマンドがエアコン3070やライト3066の点灯の場合においては消費電力の増大等を防止することができる。
また、車両制御システム10は、ユーザが携帯する携帯情報処理端末20のマイクに対して指示の発話を行うので、車両30に搭載されたマイクに対して指示の発話を行う場合と比較して、周囲の人の発話や雑音などによる誤認識の可能性を低減する上で有利となる。
また、車両制御システム10は、携帯情報処理端末20と車両30が近距離無線通信によりコマンド情報の送受信を行うので、広域ネットワークを利用することなくデータを送受信することができ、通信コストや消費電力を低減する上で有利となる。
また、車両制御システム10において、車両周辺の環境やコマンド情報の内容に基づいてコマンド実行距離を変更するようにすれば、より適切なタイミングでコマンドを実行することができ、利便性を向上させることができる。
また、車両制御システム10において、所定のドアの開放指示を受けた場合、所定のドアと携帯情報処理端末20との距離がコマンド実行距離以下となった場合に所定のドアを開放するようにすれば、ユーザの乗車タイミングにより近いタイミングでドアを開放することができ、利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 車両制御システム
20 携帯情報処理端末
200 マイク
202 音声認識部
204 広域ネットワーク通信部
206 コマンド発行部
208 近距離無線通信部
30 車両
300 近距離無線通信部
302 距離検知部
303 環境情報取得部
304 車両制御部
3040 コマンド実行距離決定部
306 車両各部
40 音声認識サーバ
図1
図2
図3
図4
図5