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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】回転アクチュエータ及びロボット
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20220524BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20220524BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H02K7/116
B25J19/00 A
F16D63/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018146311
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020022319
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮎澤 優
(72)【発明者】
【氏名】奥田 健
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189081(JP,A)
【文献】実開平05-094562(JP,U)
【文献】特開2003-056646(JP,A)
【文献】実開昭59-017195(JP,U)
【文献】国際公開第2017/169604(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0111253(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0145699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
B25J 19/00
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転アクチュエータであって、
ロータ及びステータを有するモータと、
前記ロータの回転軸に固定された回転部材と、
前記回転部材に対し前記回転軸の方向の一方側に配置された、前記ロータの回転軸に非固定の緩衝部材と、
停止している前記ロータの回転を規制するための回転規制機構と、を備え、
前記回転規制機構は、前記緩衝部材に対し前記一方側に配置された、前記ロータの回転軸に非固定の円環状の回転側規制部材と、前記回転側規制部材の外周面に周方向に沿って形成された複数の突起部の間に挿入されて前記周方向における前記回転側規制部材の移動を規制する規制部材と、前記規制部材を前記回転軸の方向に移動させるための駆動機構と、を有し、
前記緩衝部材は、前記回転部材と前記回転側規制部材の各々に当接し、
前記回転側規制部材に対し前記一方側に配置された、前記緩衝部材と前記回転側規制部材を前記回転部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記緩衝部材は、環状の部材であり、
前記回転軸の周囲に前記回転側規制部材と前記緩衝部材が形成されおり、
前記回転アクチュエータは、
前記回転側規制部材に対して前記一方側に配置された、前記付勢部材を保持する保持部材と、
前記回転軸の周囲に形成された前記回転軸に非固定の軸受と、を更に備え、
前記保持部材は、前記回転軸に非固定であり、且つ前記軸受によって支持されている回転アクチュエータ。
【請求項2】
請求項記載の回転アクチュエータであって、
前記保持部材は筒状であり
前記保持部材の前記回転側規制部材と対向する面には、前記回転軸を取り囲む環状の凹部が形成されており、
前記凹部に前記付勢部材が保持されている回転アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項記載の回転アクチュエータであって、
前記緩衝部材は、前記回転側規制部材に固定されている回転アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の回転アクチュエータであって、
前記回転軸の回転数を検出するためのエンコーダを備え、
前記回転軸の方向における前記回転部材の前記付勢部材側と反対側の面には、前記エンコーダの磁石が固定されている回転アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと、停止しているモータの回転を規制する回転規制機構と、を備えてロボットなどの産業用機械に搭載可能な回転アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の産業用ロボットとして、支持部材としてのベースと、関節部を介してベースに連結される第1アームと、関節部を介して第1アームの先端側に連結される第2アームと、関節部を介して第2アームの先端側に連結される手首部と、を備えるものがある。また、この種の産業用ロボットでは、関節部は、ロータ及びステータを有するモータと、モータに連結される減速機と、ロータの停止状態を維持するための安全ブレーキと、を備えて関節部自体が回転アクチュエータとして構成されている。
【0003】
そして、このような産業用ロボットに搭載される回転アクチュエータとして、モータと、停止しているモータの回転を規制する回転規制機構と、を備えるものが知られる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1の回転アクチュエータでは、回転規制機構は、モータのロータに固定される円盤状の回転側規制部材と、回転側規制部材と係合してその回転移動を規制するピン状の規制部材と、規制部材をロータの軸方向へ移動させる駆動機構と、を備えている。また、この回転側規制部材の周縁には、ロータの径方向外側へ突出する複数の突起部が設けられる。そして、規制部材の先端には、周方向で隣り合う突起部間に入り込んで回転側規制部材の回転移動を規制する円環状の規制部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-189081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の回転アクチュエータは、突起部と規制部とが係合(衝突)することでロータを停止させる構造である。このため、例えば、モータの回転中に、突起部の間に規制部が入り込んだ場合には、ロータが停止するまで規制部にそのまま回転力が伝わり衝撃力として過度に負担がかかる。それにより、回転側規制部材又は規制部材が破損又は変形したりしてガタなどが経時的に発生して、その性能が十分に発揮できない可能性があり、耐久性の点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ロータの回転を規制するための回転規制機構の耐久性を向上させることができる回転アクチュエータとこれを備えるロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
ロータ及びステータを有するモータと、
前記ロータの回転軸に固定された回転部材と、
前記回転部材に対し前記回転軸の方向の一方側に配置された、前記ロータの回転軸に非固定の緩衝部材と、
停止している前記ロータの回転を規制するための回転規制機構と、を備え、
前記回転規制機構は、前記緩衝部材に対し前記一方側に配置された、前記ロータの回転軸に非固定の円環状の回転側規制部材と、前記回転側規制部材の外周面に周方向に沿って形成された複数の突起部の間に挿入されて前記周方向における前記回転側規制部材の移動を規制する規制部材と、前記規制部材を前記回転軸の方向に移動させるための駆動機構と、を有し、
前記緩衝部材は、前記回転部材と前記回転側規制部材の各々に当接し、
前記回転側規制部材に対し前記一方側に配置された、前記緩衝部材と前記回転側規制部材を前記回転部材に向けて付勢する付勢部材と、を備える回転アクチュエータ。
【0009】
(1)の回転アクチュエータでは、ロータの回転軸に回転部材が固定され、この回転部材と回転側規制部材との間に緩衝部材が介挿された状態で、回転側規制部材と緩衝部材とがロータの回転軸に対し非固定に設けられるとともに回転部材に向けて付勢部材により付勢される。
そのため、通常動作時のロータの回転時、付勢部材の付勢力と緩衝部材の摩擦係数に従って、回転側規制部材と緩衝部材とはロータの回転軸と一体的に回転する。その一方、ロータの回転中に規制部材が回転側規制部材の隣り合う突起部間に入り込んだ場合には、回転側規制部材と緩衝部材とは規制部材により急停止する。しかし、このとき付勢部材の付勢力と緩衝部材の摩擦係数で決定される最大摩擦力が少なくとも回転部材に付加される。これにより、回転部材は回転側規制部材及び緩衝部材の両方を回転させようとしながらもその回転エネルギーが緩衝部材の摩擦力により消費され、結果的に回転部材は緩衝部材を介して緩やかに減速する。
【0010】
このように、ロータの回転中に規制部材が回転側規制部材の隣り合う突起部間に入り込む際、回転部材と回転側規制部材との間に介挿される緩衝部材の摩擦力により、回転側規制部材が回転部材から受ける力(回転エネルギー)の一部を逃がして規制部材との衝撃力を緩和することができる。従って、回転側規制部材又は規制部材の破損や変形などの発生を抑制して、回転規制機構の耐久性を向上させることができる。
【0011】
なお、緩衝部材は、その表面で摩擦力を発生できるものであれば特に限定されず、例えばゴム材や樹脂材などが例示される。また、付勢部材は、付勢力を発生するものであれば特に限定されず、例えば付勢力として弾性力を発生可能なバネやゴムなどが例示される。
【0012】
(2)
(1)記載の回転アクチュエータであって、
前記緩衝部材は、環状の部材であり、
前記回転軸の周囲に前記回転側規制部材と前記緩衝部材が形成されている回転アクチュエータ。
【0013】
(2)のように構成すると、回転部材に対し回転側規制部材と緩衝部材とを精度良く位置決めして、緩衝部材を回転部材の全周に亘って均等に当接させることができ。このため、摩擦力を均等に発生させて、回転部材を安定的に減速させることができる。
【0014】
(3)
(2)記載の回転アクチュエータであって、
前記回転側規制部材に対して前記一方側に配置された筒状の保持部材を備え、
前記保持部材の前記回転側規制部材と対向する面には、前記回転軸を取り囲む環状の凹部が形成されており、
前記凹部に前記付勢部材が保持されている回転アクチュエータ。
【0015】
(3)のように構成すると、環状の凹部がロータの回転軸と同軸に全周に亘って形成され、この環状の凹部に付勢部材が収納される。このため、緩衝部材と回転側規制部材を回転部材に向けて付勢する際、全周に亘って均等に付勢力を発生させることができる。これにより、摩擦力をより均等に発生させることができる。
【0016】
(4)
(3)記載の回転アクチュエータであって、
前記回転軸の周囲に形成された前記回転軸に非固定の軸受を更に備え、
前記保持部材は、前記回転軸に非固定であり、且つ前記軸受によって支持されている回転アクチュエータ。
【0017】
(4)のように構成すると、保持部材、付勢部材、回転側規制部材及び緩衝部材は、ロータの回転軸と非固定に回転自在に保持されるので、ロータの回転軸に対し異なる回転速度で回転可能であり、より緩やかに減速させることができる。
【0018】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータであって、
前記緩衝部材は、前記回転側規制部材に固定されている回転アクチュエータ。
【0019】
(5)のように構成すると、緩衝部材の位置決めを回転側規制部材とともに行うことができるので、組立を簡素化できる。
【0020】
(6)
(1)から(4)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータであって、
前記回転軸の回転数を検出するためのエンコーダを備え、
前記回転軸の方向における前記回転部材の前記付勢部材側と反対側の面には、前記エンコーダの磁石が固定されている回転アクチュエータ。
【0021】
(6)のように構成すると、剛性が低い磁石でも回転部材に取り付けて支持させることができる。また、回転部材を磁性体とすることでエンコーダの磁石の磁束漏れなどを抑制することができる。
【0022】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載の回転アクチュエータを備えるロボット。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ロータの回転中に、回転側規制部材の隣り合う突起部間に規制部材が入り込んだ場合に、回転部材と回転側規制部材との間に介挿される緩衝部材の摩擦力により、回転側規制部材が回転部材から受ける力の一部を逃がして、規制部材との衝撃力を緩和することができる。従って、回転側規制部材又は規制部材の破損や変形などの発生を抑制して、回転規制機構の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの正面図である。
図2】(A)は図1に示す産業用ロボットの斜視図であり、(B)は(A)に示す産業用ロボットが動作している様子を示す斜視図である。
図3図1に示す関節部の縦断面図である。
図4図3に示すG部の構成を説明するための拡大図であり、(A)は規制ピンが規制解除位置にある状態を示す拡大図であり、(B)は規制ピンが規制位置になる状態を示す拡大図である。
図5図3に示すセンサマグネット、回転部材、ブレーキラバー、座金及び保持部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態を説明する。
【0026】
(産業用ロボットの概略構成)
まず図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの構成についてその概略を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの正面図である。図2(A)は図1に示す産業用ロボットの斜視図であり、図2(B)は図2(A)に示す産業用ロボットが動作している様子を示す斜視図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本形態の産業用ロボット(以下「ロボット」ともいう)1は、所定の製品の組立や製造などに用いられる多関節ロボットであり、組立ラインや製造ラインに設置されて使用される。ロボット1は、複数の関節部2と、複数のアーム3と、を備えている。本形態では、ロボット1は、6個の関節部2と、2本のアーム3と、を備えている。
なお、以下の説明では、6個の関節部2のそれぞれを区別して表す場合、6個の関節部2のそれぞれを「第1関節部2A」、「第2関節部2B」、「第3関節部2C」、「第4関節部2D」、「第5関節部2E」及び「第6関節部2F」とする。また、以下の説明では、2本のアーム3のそれぞれを区別して表す場合、2本のアーム3のそれぞれを「第1アーム3A」及び「第2アーム3B」とする。
【0028】
また、ロボット1は、第1関節部2Aに相対回動可能に連結される支持部材4をさらに備えている。支持部材4は、フランジ部4aを有して鍔付きの円筒状に形成されている。支持部材4の内周側には、支持部材4の軸方向に貫通する貫通孔(図示省略)が形成されている。フランジ部4aは、円環状に形成されており、ロボット1のベースとして底面部分を構成している。また、アーム3は、細長い円筒状に形成されている。
【0029】
ロボット1では、第1関節部2Aと第2関節部2Bとが相対回動可能に連結され、第2関節部2Bと第1アーム3Aの基端とが固定されている。また、第1アーム3Aの先端と第3関節部2Cとが固定され、第3関節部2Cと第4関節部2Dとが相対回動可能に連結される。さらに、第4関節部2Dと第2アーム3Bの基端とが相対回動可能に連結され、第2アーム3Bの先端と第5関節部2Eとが固定され、第5関節部2Eと第6関節部2Fとが相対回動可能に連結されている。また、第6関節部2Fには、ハンドや工具などが相対回動可能に取付可能となっている。
【0030】
以下、関節部2の具体的な構成を説明する。なお、図1に示すように、本形態では、第1関節部2Aと第2関節部2Bと第3関節部2Cとが同じ大きさで形成され、第4関節部2Dと第5関節部2Eと第6関節部2Fとが同じ大きさで形成されている。また、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの大きさは、第4関節部2D、第5関節部2E及び第6関節部2Fの大きさよりも大きく設けられている。ただし、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cと、第4関節部2D、第5関節部2E及び第6関節部2Fとは、大きさが相違する点を除けば同様に構成されている。
【0031】
(関節部の構成)
次に、図3図5を参照して、関節部2の構成について具体的に説明する。図3は、図1に示す関節部2の縦断面図である。図4は、図3に示すG部の構成を説明するための拡大図であり、図4(A)は規制ピン(規制部材)32が規制解除位置にある状態を示す拡大図であり、図4(B)は規制ピン32が規制位置になる状態を示す拡大図である。図5は、図3に示すセンサマグネット(磁石)72、回転部材70、ブレーキラバー(緩衝部材)71、座金(波座金73,平座金74)及び保持部材75の分解斜視図である。
なお、以下の説明では、説明の便宜上、図3のZ1方向側を「上」側とし、その反対側であるZ2方向側を「下」側とする。また、図3のX1方向側を「左」側として、その反対側であるX2の方向側を「右」側とする。
【0032】
図3に示すように、関節部2は、モータ10と、モータ10に連結される減速機20と、モータ10の回転位置を検出するための位置検出機構60と、磁石としてのセンサマグネット72を含み、モータ10の回転軸12の回転数を検出するためのエンコーダ(不図示)と、モータ10、位置検出機構60及びエンコーダが電気的に接続される回路基板(不図示)と、モータ10と減速機20と位置検出機構60と回路基板とを収納するケース体80と、を含んで構成されており、関節部2自体が回転アクチュエータとして構成されている。
【0033】
モータ10は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空モータであり、中空状の回転軸12を備えている。また、モータ10は、ロータ11とステータ14と、を備えている。また、減速機20は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空減速機である。モータ10と減速機20とは上下方向で重なって配置されている。具体的には、モータ10が上側に配置され、減速機20が下側に配置されている。また、モータ10と減速機20とは同軸上に配置されている。
【0034】
本形態の減速機20は、中空波動歯車装置であり、剛性内歯歯車21と、可撓性外歯歯車22と、波動発生部23と、クロスローラベアリング26と、を備えている。波動発生部23は、モータ10の回転軸12に連結される中空状の入力軸24と、入力軸24の外周側に取り付けられるウエーブベアリング25と、を備えている。本形態では、剛性内歯歯車21が減速機20の出力軸となっている。
【0035】
また、関節部2は、停止しているロータ11の回転を規制する回転規制機構30と、モータ10の回転軸12及び減速機20の入力軸24の内周側に挿通される筒状の管状部材17と、剛性内歯歯車21に固定される出力側部材18と、をさらに備えている。
【0036】
モータ10は、前述したように、ロータ11とステータ14とを備えている。ロータ11は、回転軸12と、回転軸12に固定される駆動用磁石13と、を備えている。回転軸12は、上下方向に細長い略円筒状に形成されており、回転軸12の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、回転軸12の軸方向であるとともにロータ11の軸方向である。そして、駆動用磁石13は、円筒状に形成されている。駆動用磁石13の長さ(上下方向の長さ)は、回転軸12よりも短く設定されており、駆動用磁石13は回転軸12の下端側部分の外周面に固定されている。
【0037】
ステータ14は、全体として略円筒状に形成されており、駆動用磁石13の外周面を覆うように駆動用磁石13の外周側(径方向外側)に配置されている。回転軸12の上端側部分は、ステータ14の上端面よりも上側に突出している。このステータ14は、駆動用コイル(不図示)と、インシュレータを介して駆動用コイルが巻回される複数の突極を有するステータコア(不図示)と、を備えている。ステータコアの突極は、内周側に向かって突出するように形成されており、突極の先端面は、駆動用磁石13の外周面に対向している。モータ10は、ケース体80に固定されている。具体的には、ステータ14の外周面がケース体80に固定されている。
【0038】
図3図5に示すように、ロータ11の回転軸12の上端面には、平板状かつ略円環状の回転部材70が取り付けられている。回転部材70は、回転部材70の厚さ方向と上下方向とが一致するように回転軸12の上端面にボルト固定されており、位置検出機構60よりも上側に離間して配置されている。
【0039】
この回転部材70の回転軸12の方向(上下方向)の一方側である回転部材70の下側には、緩衝部材としてブレーキラバー71が配置されている。ブレーキラバー71は環状のゴム部材であり、ロータ11の回転軸12の周囲に形成されている。また、ブレーキラバー71は、ロータ11の回転軸12に非固定の状態で、回転部材70の下端面及び後述する回転側規制部材31の上端面に当接して支持されている。
【0040】
エンコーダのセンサマグネット72は、平板状かつ略円環状に形成されている。センサマグネット72は、ロータ11の回転軸12の上端面に、回転部材70を介してボルト固定される。すなわち、センサマグネット72は、回転部材70の上端面(回転軸12の方向における、後述する付勢部材としての波座金73と反対側の面)に当接して配置されている。
なお、本形態では、緩衝部材としてゴム製のブレーキラバー71を採用したが、これに限定されない。摩擦力が発生できるものであれば、種々のものを採用することができ、例えばレジンや合成樹脂製の部材なども用いることができる。
【0041】
図3に示すように、減速機20は、前述したように、剛性内歯歯車21と、可撓性外歯歯車22と、波動発生部23と、クロスローラベアリング26と、を備えている。剛性内歯歯車21は、扁平な略円筒状に形成されており、剛性内歯歯車21の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、減速機20の出力軸である剛性内歯歯車21の軸方向となっている。そして、剛性内歯歯車21は、クロスローラベアリング26の内輪26aに固定されている。クロスローラベアリング26の外輪26bは、ケース体80の下端側部分に固定されており、剛性内歯歯車21は、クロスローラベアリング26を介してケース体80の下端側部分に回転可能に保持されている。
【0042】
可撓性外歯歯車22は、上端にフランジ部22aを有して鍔付きの略筒状に形成されている。フランジ部22aは、略円環状に形成されており、フランジ部22aの外周側部分は、ケース体80に固定されている。すなわち、減速機20は、ケース体80に固定されている。また、剛性内歯歯車21は、減速機20の下端側部分を構成している。可撓性外歯歯車22のフランジ部22aは、減速機20の上端側部分を構成している。剛性内歯歯車21の内周面には、内歯が形成されている。可撓性外歯歯車22の下端側の外周面には、剛性内歯歯車21の内歯と噛み合う外歯が形成されている。
【0043】
波動発生部23は、前述したように、入力軸24とウエーブベアリング25とを備えている。入力軸24は、全体として上下方向に細長い筒状に形成されており、入力軸24の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、入力軸24の、下端側部分以外の部分は、細長い略円筒状に形成されている。入力軸24の下端側部分は、入力軸24の軸方向から見たときの内周面の形状が円形状に形成されており、入力軸24の軸方向から見たときの外周面の形状が楕円形状となる楕円部24aとなっている。
【0044】
波動発生部23の入力軸24の上端側部分は、モータ10の回転軸12の下端側部分の内周側に挿入されて固定されている。具体的には、入力軸24の上端側部分は、回転軸12の、駆動用磁石13が固定された部分の内周側に挿入されて固定されている。回転軸12と入力軸24とは同軸上に配置されている。また、入力軸24の上端側部分は、接着により回転軸12に固定されている。
【0045】
上下方向における入力軸24の中心部分は、ベアリング16に回転可能に支持されている。ベアリング16は、ボールベアリングである。このベアリング16は軸受保持部材15に取り付けられ、軸受保持部材15はケース体80に固定されている。すなわち、入力軸24は、軸受保持部材15を介してケース体80に取り付けられるベアリング16に回転可能に支持されている。軸受保持部材15は、円環状かつ平板状に形成されており、可撓性外歯歯車22のフランジ部22aと上下方向で重なるようにケース体80に固定されている。
【0046】
ウエーブベアリング25は、可撓性の内輪(不図示)及び外輪(不図示)を備えたボールベアリングである。このウエーブベアリング25は、楕円部24aの外周面に沿って配置されており、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車22の、外歯が形成される下端側部分は、ウエーブベアリング25を囲むようにウエーブベアリング25の外周側に配置されており、この部分は、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車22の外歯は、楕円状に撓む可撓性外歯歯車22の下端側部分の長軸方向の2か所で、剛性内歯歯車21の内歯と噛み合っている。
【0047】
出力側部材18は、フランジ部18aと筒部18bとを有して鍔付きの略円筒状に形成されている。この出力側部材18は、出力側部材18の軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、出力側部材18の内周側には、上下方向に貫通する貫通孔18cが形成されている。フランジ部18aは、平板状かつ円環状に形成されており、筒部18bの下端に繋がっている。フランジ部18aは、フランジ部18aの上面が剛性内歯歯車21の下面に接触するように剛性内歯歯車21に固定されている。また、フランジ部18aは、ケース体80の下端よりも下側に配置されており、ケース体80の外側に配置されている。
【0048】
筒部18bの上端側には、筒部18bの下端側部分よりも外径の小さい小径部18dが形成されており、筒部18bの上端側部分の外周側には、上下方向に直交する円環状の段差面18eが形成されている。小径部18dは、管状部材17の下端側部分の内周側に挿入されており、管状部材17の下端面は、段差面18eに対向している。また、貫通孔18cは、管状部材17の内周側に通じている。筒部18bの上端側部分は、減速機20の入力軸24の下端側部分の内周側に配置されている。筒部18bの外周面と入力軸24の下端側部分の内周面との間には、ベアリング19が配置されている。ベアリング19は、ボールベアリングである。
【0049】
管状部材17は、上下方向に細長い円筒状に形成されており、管状部材17の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。前述のように、管状部材17は、回転軸12及び入力軸24の内周側に挿通されている。管状部材17の上端面は、回転軸12の上端面よりも上側に配置され、管状部材17の下端面は、入力軸24の下端面よりも上側に配置されている。また、前述したように、管状部材17の下端側部分の内周側に出力側部材18の小径部18dが挿入されるとともに管状部材17の下端面が段差面18eに対向しており、管状部材17の下端側は、出力側部材18に保持されている。
【0050】
管状部材17の上端側は、保持部材50に保持されている。保持部材50は、支柱51に固定され、支柱51は、ケース体80に固定されている。すなわち、保持部材50は、支柱51を介してケース体80に固定されている。保持部材50は、管状部材17の上端側を保持する円筒状の保持部50aを備えている。保持部50aは、保持部50aの軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、保持部50aの内周側には、上下方向に貫通する貫通孔50bが形成されている。
【0051】
保持部50aの下端側には、保持部50aの上端側よりも内径の大きい大径部50cが形成されており、保持部50aの下端側部分の内周側には、上下方向に直交する円環状の段差面50dが形成されている。管状部材17の上端側は大径部50cの内周側に挿入されており、管状部材17の上端面は段差面50dに対向している。また、貫通孔50bは、管状部材17の内周側に通じている。
【0052】
位置検出機構60は、モータ10のステータ14の上側に配置されている。この位置検出機構60は、回転軸12の上端側に固定されるスリット板61と、センサ62と、を備えている。センサ62は、互いに対向するように配置される発光素子と受光素子とを備える透過型の光学式センサである。センサ62は、エンコーダホルダとしての固定部材35に固定されている。
【0053】
固定部材35は、ケース体80に固定されている。すなわち、センサ62は、固定部材35を介してケース体80に固定されている。位置検出機構60のスリット板61は、薄い平板状に形成されるとともに円環状に形成されている。スリット板61には、スリット板61の周方向に一定の間隔で複数のスリット孔(不図示)が形成されている。スリット板61は、スリット板61の周方向の一部分がセンサ62の発光素子と受光素子との間に配置されるようにモータ10の回転軸12に固定されている。
【0054】
ケース体80は、上下の両端が開口するケース本体81と、ケース本体81の上端側の開口を塞ぐカバー82と、を備えている。ケース本体81の下端側の開口は、減速機20により塞がれている。ケース本体81の側面には、上下方向に直交する方向で開口する開口部81aが形成されている。すなわち、ケース体80には、上下方向に直交する方向で開口する開口部81aが形成されている。開口部81aは、ケース本体81の側面部分を貫通するように形成されている。
【0055】
また、カバー82の上面部分には、後述する駆動機構40を構成する、ピン42が配置される貫通孔82aが形成されている。すなわち、ケース体80には、貫通孔82aが形成されている。貫通孔82aは、上下方向でカバー82の上面部分を貫通するように形成されており、貫通孔82aを介してケース体80の内部と外部とが連通している。また、貫通孔82aは、略丸孔状に形成されている。
【0056】
図3及び図4に示すように、回転規制機構30は、停止しているロータ11をその停止位置で保持するために設けられており、ケース体80に収容されている。この回転規制機構30は、平板状かつ略円環状の回転側規制部材31と、回転側規制部材31と係合してロータ11の周方向における回転側規制部材31の移動を規制する規制部材としての規制ピン32と、規制ピン32を上下方向へ案内するリニアブッシュ33と、規制ピン32を上側へ付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ34と、規制ピン32をロータ11の軸方向に沿って上下方向へ移動させる駆動機構40と、を有して構成される。
【0057】
図3に示すように、駆動機構40は、プランジャ41aを介して規制ピン32を下側へ移動させるソレノイド41と、ソレノイド41のプランジャ41aの上端部に取り付けられるピン42と、を有している。ソレノイド41は、ソレノイド41が通電状態となったときにソレノイド41のプランジャ41aが下側へ突出するようにケース体80に固定されている。プランジャ41aの上端部は、ソレノイド41の本体部41bよりも上側に突出している。本体部41bから上側へ突出しているプランジャ41aの上端部には、ピン42が固定されている。ピン42は、円柱状の軸部42aと、軸部42aの一端から径方向の外側へ広がる円環状のフランジ部42bと、を有して鍔付きの円柱状に形成されている。
【0058】
ピン42は、ピン42の軸方向と上下方向とが一致するように、かつ、フランジ部42bが下側に配置されるようにプランジャ41aの上端部に固定されている。また、ピン42は、プランジャ41aと同軸上に配置されている。ピン42の軸部42aは、ケース体80の貫通孔82aの中に配置されている。軸部42aの外径は、貫通孔82aの内径よりもわずかに小さく設定される。なお、ピン42のフランジ部42bの下面には、プランジャ41aの上端部が挿入されて固定されるための凹部が形成されている。
【0059】
回転側規制部材31は、回転側規制部材31の厚さ方向と上下方向とが一致するようにロータ11の回転軸12の周囲に形成されている。回転側規制部材31は、位置検出機構60の上側でかつブレーキラバー71の下側となる位置に、ブレーキラバー71に接着固定された状態で設けられている。すなわち、ブレーキラバー71は、回転側規制部材31の上端面に固定して配置されている。
【0060】
回転側規制部材31は、後述する保持部材75のフランジ部75aの上端面上に、ロータ11の回転軸12に対し非固定の状態で配置されている。このような構成により、回転側規制部材31は、保持部材75及びブレーキラバー71の端面によってロータ11の回転軸12に対し回転自在に挟持されている。
【0061】
図5に示すように、回転側規制部材31の外周面には、径方向の外側へ突出する複数の突起部31aが周方向に沿って一定の間隔で形成されている。本形態では、12個の突起部31aが、回転側規制部材31の中心に対して30°ピッチで形成されている。また、突起部31aは、上下方向から見たときの形状が略等脚台形状となるように形成されている。
なお、回転側規制部材31に形成される突起部31aの数は特に限定されておらず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。
【0062】
規制ピン32は、上端にフランジ部32aを有して鍔付きの円柱状に形成されており、規制ピン32の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。規制ピン32のフランジ部32aは、円環状に形成されており、上下方向から見たときのフランジ部32aの外形は、円形状となっている。規制ピン32は、規制ピン32の上側に配置されるプランジャ41aに固定されている。具体的には、規制ピン32は、プランジャ41aの下端部に固定されている。規制ピン32の下端面には、図4に示すように、上側に向かって窪む凹部32bが形成されており、凹部32bの中には、圧縮コイルバネ34の上端側部分が配置されている。
【0063】
規制ピン32は、上下方向から見たときに、回転側規制部材31の外周側に配置されている。具体的には、図4(B)、図5に示すように、例えば上下方向から見たときに、回転側規制部材31の複数の突起部31aの先端面を結ぶ仮想円よりも、フランジ部32aの一部が、回転側規制部材31の径方向の内側に位置するように、規制ピン32が配置されている。
【0064】
リニアブッシュ33は、上端にフランジ部33aを有して鍔付きの円筒状に形成されており、リニアブッシュ33の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。リニアブッシュ33の、フランジ部33aよりも下側の部分は、固定部材35の上面に形成される凹部35a(図4参照)の中に配置されている。凹部35aの底面には、圧縮コイルバネ34の下端側部分が配置される窪み35bが下側に向かって窪むように形成されている。リニアブッシュ33の内周側には、規制ピン32の、フランジ部32aよりも下側の部分が配置されている。
【0065】
金属製の波座金73は、回転側規制部材31の下側に、回転側規制部材31の下端面に当接した状態で配置されている。波座金73は、回転側規制部材31とブレーキラバー71を回転部材70に向けて付勢する付勢部材である。波座金73は、金属製の円環状の平座金74を介して、保持部材75に保持されている。
なお、本形態では、付勢部材として金属製の波座金73を採用したが、これに限定されない。付勢力を発生可能なものであれば種々の部品(例えば圧縮コイルバネ等)を用いることができる。
【0066】
保持部材75は、保持部材75の上端部にフランジ部75aを有して上下方向に延びる鍔付きの円筒状に形成されており、保持部材75の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。保持部材75は、ロータ11の回転軸12の外周側に所定の隙間を在して挿通され、回転側規制部材31に対して下側に配置される。また、保持部材75のフランジ部75aにおいてフランジ部75aの回転側規制部材31と対向する面、すなわちフランジ部75aの上端面には、ロータ11の回転軸12を取り囲む環状の凹部75bが形成されている。この凹部75bに、波座金73及び平座金74が収納されている。また、図3に示すように、保持部材75のフランジ部75aよりも下側部分は、ベアリング(軸受)76に回転可能に支持されている。
【0067】
ベアリング76はボールベアリングであり、固定部材35を介して、ケース体80に固定されている。また、ベアリング76は、ロータ11の回転軸12の周囲に形成されており、ロータ11の回転軸12に非固定の状態にて設置されている。すなわち、保持部材75は、ロータ11の回転軸12に対し非固定の状態で、ベアリング76を介して回転自在にケース体80に支持されている。
【0068】
本形態では、駆動機構40のソレノイド41は、モータ10の停止時に非通電状態となっており、モータ10の駆動時に通電状態となる。図4(B)に示すように、ソレノイド41が通電状態でないとき、回転規制機構30の圧縮コイルバネ34の付勢力により、回転側規制部材31の突起部31aの間に規制ピン32のフランジ部32aが配置されるように、規制ピン32が上昇している。そのため、回転側規制部材31の突起部31aと規制ピン32のフランジ部32aとの係合により、停止しているロータ11の回転が規制される。
【0069】
一方、ソレノイド41が通電状態となると、図4(A)に示すように、プランジャ41aが下側へ突出して、回転側規制部材31の突起部31aの間から規制ピン32のフランジ部32aが外れるまで、規制ピン32が下降する。そのため、ロータ11が回転可能となる。
【0070】
このように、駆動機構40は、回転側規制部材31の突起部31aの間に規制ピン32のフランジ部32aが配置される規制位置(図4(B)に示す位置)と、回転側規制部材31の突起部31aの間から規制ピン32のフランジ部32aが外れる規制解除位置(図4(A)に示す位置)との間で規制ピン32を移動させる。また、固定部材35に収納された回転規制機構30の圧縮コイルバネ34は、規制位置に向かって規制ピン32を付勢する。ソレノイド41は、規制位置にある規制ピン32を規制解除位置に向かって移動させる。
【0071】
本形態の規制ピン32のフランジ部32aは、回転側規制部材31の突起部31aの間に入り込んでロータ11の周方向における回転側規制部材31の移動を規制する規制部となっている。なお、規制ピン32が規制解除位置にあるときには、回転側規制部材31の外周側に配置される駆動機構40のプランジャ41aは、回転側規制部材31の突起部31aに接触しない位置に配置されている。
【0072】
上述した不図示の回路基板は、ガラスエポキシ基板などのリジッド基板であり、平板状に形成されている。この回路基板Bは、回路基板Bの厚さ方向と上下方向とが一致するようにケース体80に固定されている。また、回路基板Bは、ケース体80の上端側に固定されており、回転側規制部材31よりも上側に配置されている。管状部材17の上端は、回路基板Bの上面よりも上側に配置されている。
【0073】
この回路基板には、モータ10を駆動するためのモータ駆動回路や、回路基板Bに入力される信号を回路基板Bの外部へ出力するための信号伝達回路が実装されている。また、回路基板Bには、少なくとも2個のコネクタが実装されている。2個のコネクタのうちの一方のコネクタに接続される配線は、管状部材17の内周側を通過するように引き回された後、出力側部材18の貫通孔18cから引き出されている。他方のコネクタに接続される配線は、ケース体80の開口部81aから引き出されている。
【0074】
(関節部、アームの連結構造)
再度図2を参照して、本形態に係るロボット1の関節部2及びアーム3の連結構造について説明する。
上述したように、支持部材4と第1関節部2Aとが相対回動可能に連結され、第1関節部2Aと第2関節部2Bとが相対回動可能に連結されている。また、第2関節部2Bと第1アーム3Aの基端とが固定され、第1アーム3Aの先端と第3関節部2Cとが固定され、第3関節部2Cと第4関節部2Dとが相対回動可能に連結されている。また、第4関節部2Dと第2アーム3Bの基端とが相対回動可能に連結され、第2アーム3Bの先端と第5関節部2Eとが固定され、第5関節部2Eと第6関節部2Fとが相対回動可能に連結されている。具体的には、たとえば、図2(B)に示す動作をロボット1が行うことが可能となるように、以下のように、各関節部2及びアーム3が連結されている。
【0075】
なお、以下の説明では、第1関節部2Aの剛性内歯歯車21の軸方向を「第1関節部2Aの軸方向」とし、第2関節部2Bの剛性内歯歯車21の軸方向を「第2関節部2Bの軸方向」とする。また、第3関節部2Cの剛性内歯歯車21の軸方向を「第3関節部2Cの軸方向」とし、第4関節部2Dの剛性内歯歯車21の軸方向を「第4関節部2Dの軸方向」とする。また、第5関節部2Eの剛性内歯歯車21の軸方向を「第5関節部2Eの軸方向」とし、第6関節部2Fの剛性内歯歯車21の軸方向を「第6関節部2Fの軸方向」とする。
【0076】
まず、支持部材4と第1関節部2Aとは、第1関節部2Aのフランジ部18aに、支持部材4の、フランジ部4aが形成されていない側の端面が固定されることで連結されている。すなわち、第1関節部2Aの軸方向と支持部材4の軸方向とが一致するように支持部材4と第1関節部2Aとが連結されている。第1関節部2Aと第2関節部2Bとは、第1関節部2Aの軸方向と第2関節部2Bの軸方向とが直交するように連結されている。また、第2関節部2Bのフランジ部18aに、第1関節部2Aのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。
【0077】
第2関節部2Bと第1アーム3Aとは、第2関節部2Bの軸方向と第1アーム3Aの長手方向(軸方向)とが直交するように連結されている。また、第2関節部2Bのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第1アーム3Aの基端が固定されている。第1アーム3Aと第3関節部2Cとは、第1アーム3Aの長手方向と第3関節部2Cの軸方向とが直交するように連結されている。また、第3関節部2Cのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第1アーム3Aの先端が固定されている。
【0078】
第3関節部2Cと第4関節部2Dとは、第3関節部2Cの軸方向と第4関節部2Dの軸方向とが直交するように連結されている。また、第3関節部2Cのフランジ部18aに、第4関節部2Dのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。より具体的には、第4関節部2Dのケース本体81の開口部81aが形成された側面に固定される連結部材5を介して、第3関節部2Cのフランジ部18aに、第4関節部2Dのケース本体81の開口部81aが形成された側面が固定されている。連結部材5は、第3関節部2Cのフランジ部18aに固定されるフランジ部5aを備えて鍔付きの円筒状に形成されている。
【0079】
第4関節部2Dと第2アーム3Bとは、第4関節部2Dの軸方向と第2アーム3Bの長手方向とが一致するように連結されている。また、第4関節部2Dのフランジ部18aに第2アーム3Bの基端が固定されている。
なお、第2アーム3Bの基端には、第4関節部2Dのフランジ部18aに第2アーム3Bの基端を固定するためのフランジ部3aが形成されており、第4関節部2Dのフランジ部18aとフランジ部3aとが互いに固定されている。
【0080】
第2アーム3Bと第5関節部2Eとは、第2アーム3Bの長手方向と第5関節部2Eの軸方向とが直交するように連結されている。また、第5関節部2Eのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第2アーム3Bの先端が固定されている。第5関節部2Eと第6関節部2Fとは、第5関節部2Eの軸方向と第6関節部2Fの軸方向とが直交するように連結されている。また、第5関節部2Eのフランジ部18aに、第6関節部2Fのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。
【0081】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、関節部(回転アクチュエータ)2は、ロータ11及びステータ14を有するモータ10と、ロータ11の回転軸12に固定された回転部材70と、回転部材70に対し下側(回転軸12の方向の一方側)に配置された、ロータ11の回転軸12に非固定のブレーキラバー(緩衝部材)71と、停止しているロータ11の回転を規制するための回転規制機構30と、を備える。回転規制機構30は、ブレーキラバー71に対し下側(一方側)に配置された、ロータ11の回転軸12に非固定の円環状の回転側規制部材31と、回転側規制部材31の外周面に周方向に沿って形成された複数の突起部31aの間に挿入されて周方向における回転側規制部材31の移動を規制する規制ピン(規制部材)32と、規制ピン32を回転軸12の方向に移動させるための駆動機構40と、を有する。ブレーキラバー71は、回転部材70と回転側規制部材31の各々に当接する。回転側規制部材31とブレーキラバー71は、波座金73により回転部材70に向けて付勢される。
【0082】
すなわち、本形態の関節部2では、ロータ11の回転軸12に回転部材70を固定し、この回転部材70と回転側規制部材31との間にブレーキラバー71を介挿した状態で、回転側規制部材31とブレーキラバー71とをロータ11の回転軸12に対し非固定に設けるとともに回転部材70に向けて波座金73により付勢している。
【0083】
そのため、通常動作時のロータ11の回転時、波座金73の付勢力とブレーキラバー71の摩擦係数に従って、回転側規制部材31及びブレーキラバー71は、回転軸12に固定された回転部材70と一体的に回転する。その一方、ロータ11の回転中に、回転側規制部材31の隣り合う突起部31a間に規制ピン32が入り込んだ場合には、回転側規制部材31とブレーキラバー71は、回転軸12には非固定であるため、規制ピン32により急停止する。このとき、波座金73の付勢力と、ブレーキラバー71との間の摩擦係数とで決定される最大摩擦力が回転部材70に付加される。これにより、回転部材70は、回転側規制部材31及びブレーキラバー71の両方を回転させようとしながらもその回転エネルギーがブレーキラバー71の摩擦力により徐々に消費され、結果的に回転部材70はブレーキラバー71を介して緩やかに減速する。
【0084】
このように、ロータ11の回転中に、回転側規制部材31の隣り合う突起部31a間に規制ピン32が入り込む際、回転部材70と回転側規制部材31との間に介挿されるブレーキラバー71の摩擦力により、回転側規制部材31が回転部材70から受ける力(回転エネルギー)の一部を逃がして、規制ピン32との衝撃力を緩和することができる。従って、回転側規制部材31又は規制ピン32の破損や変形などの発生を抑制して、回転規制機構30の耐久性を向上させることができる。
【0085】
また、本形態では、ブレーキラバー(緩衝部材)71は、環状の部材であり、回転軸12の周囲に回転側規制部材31とブレーキラバー71が形成されている。そのため、回転部材70に対し、回転側規制部材31とブレーキラバー71とを精度良く位置決めすることができる。これにより、ブレーキラバー71を、回転部材70の全周に亘って均等に当接させることができるので、摩擦力を均等に発生させて、回転部材70を安定的に減速させることができる。
【0086】
また、本形態では、回転側規制部材31に対して下側(一方側)に配置された筒状の保持部材75を備え、保持部材75のフランジ部75aの上端面(回転側規制部材31と対向する面)には、回転軸12を取り囲む環状の凹部75bが形成されており、凹部75bに波座金(付勢部材)73が保持されている。
【0087】
このように、環状の凹部75bが、ロータ11の回転軸12と同軸に全周に亘って形成され、この環状の凹部75bに波座金73は収納されるので、ブレーキラバー71と回転側規制部材31を回転部材70に向けて付勢する際、全周に亘って均等に付勢力を発生させることができる。これにより、摩擦力をより均等に発生させることができる。
【0088】
また、本形態では、回転軸12の周囲に形成された回転軸12に非固定のベアリング(軸受)76を更に備え、保持部材75は、回転軸12に非固定であり、且つベアリング76によって支持されている。そのため、保持部材75、波座金73、回転側規制部材31及びブレーキラバー71は、ロータ11の回転軸12と非固定に回転自在に保持されるので、ロータ11の回転軸12に対し、異なる回転速度で回転可能である。このため、回転部材70をより緩やかに減速させることができる。
【0089】
また、本形態では、ブレーキラバー(緩衝部材)71は、回転側規制部材31に固定されている。そのため、ブレーキラバー71の位置決めを回転側規制部材31とともに行うことができるので、組立を簡素化できる。
【0090】
また、本形態では、回転軸12の回転数を検出するためのエンコーダを備え、回転軸12の方向における回転部材70の上端面には、このエンコーダのセンサマグネット72が固定されている。そのため、剛性が低いセンサマグネット72でも回転部材70に取り付けて支持させることができる。また、回転部材70を磁性体とすることで、エンコーダのセンサマグネット72の磁束漏れなどを抑制することができる。
【0091】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0092】
上述した形態では、回転規制機構30の圧縮コイルバネ34が規制ピン32を上側へ付勢し、ソレノイド41が規制ピン32を下側へ移動させているが、これに限定されない。例えば、圧縮コイルバネ34が規制ピン32を下側へ付勢し、ソレノイド41が規制ピン32を上側へ移動させてもよい。また、上述した形態では、回転規制機構30の圧縮コイルバネ34により規制ピン32が付勢されているが、これに限定されない。例えば、引張りコイルバネなどの他のバネ部材により規制ピン32が付勢されてもよい。
【0093】
上述した形態では、駆動機構40のプランジャ41aの上端部にピン42が固定されているが、これに限定されない。例えば、プランジャ41aの上端部にピン42が固定されていなくてもよい。この場合には、ソレノイド41の本体部41bよりも上側に突出するプランジャ41aの上端部の長さが長くなっており、プランジャ41aの上端部は、ケース体80の貫通孔82aの中に配置されている。また、規制ピン32が規制位置にあるとき、プランジャ41aの上端部はケース体80の外部に突出しており、ケース体80の外部に突出しているプランジャ41aの上端部がケース体80の内部に向かって押されると、規制位置にある規制ピン32が規制解除位置へ移動する。
【0094】
上述した形態では、剛性内歯歯車21が減速機20の出力軸となっているが、これに限定されない。例えば、可撓性外歯歯車22が減速機20の出力軸となっていてもよい。この場合、剛性内歯歯車21がケース体80及びクロスローラベアリング26の内輪26aに固定され、可撓性外歯歯車22がクロスローラベアリング26の外輪26b及び出力側部材18のフランジ部18aに固定される。また、上述した形態では、減速機20は、中空波動歯車装置であるが、これに限定されない。例えば、減速機20は、中空波動歯車装置以外の中空減速機であってもよい。また、減速機20は、中空減速機以外の減速機であってもよい。また、上述した形態では、モータ10は中空モータであるが、これに限定されない。例えば、モータ10は中空モータ以外のモータであってもよい。また、上述した形態では、モータ10はいわゆるインナーロータ型のモータであるが、これに限定されない。例えば、モータ10は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0095】
上述した形態では、ロボット1は、6個の関節部2を備えているが、これに限定されない。例えば、ロボット1が備える関節部2の数は5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。また、上述した形態では、ロボット1は2本のアーム3を備えているが、これに限定されない。例えば、ロボット1が備えるアーム3の数は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、上述した形態では、ロボット1の関節部2がモータ10及び減速機20などを有する回転アクチュエータによって構成されているが、これに限定されない。例えば、回転アクチュエータはロボット1の関節部2以外に使用されてもよい。またその他、回転アクチュエータはθステージ(回転ステージ)の駆動部などに使用されてもよい。また、上述した形態では、ロボット1は、産業用ロボットであるが、ロボット1は、様々な用途に適用可能である。例えば、ロボット1は、サービス用ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 産業用ロボット
10 モータ
11 ロータ
12 回転軸
30 回転規制機構
31 回転側規制部材
31a 突起部
32 規制ピン(規制部材)
40 駆動機構
41 ソレノイド
41a プランジャ
70 回転部材
71 ブレーキラバー(緩衝部材)
72 センサマグネット(磁石)
73 波座金(付勢部材)
74 平座金
75 保持部材
75a フランジ部
75b 凹部
76 ベアリング(軸受)
図1
図2
図3
図4
図5