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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ミスト用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20220524BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/37
A61K8/02
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018154844
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020029410
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】長島 友美
(72)【発明者】
【氏名】西堀 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227365(JP,A)
【文献】特開2017-105768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055743(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0112738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)で示されるエステルを化粧料の全量に対し95質量%~99.8質量%、および
【化1】
(Rは炭素数7~12のアルキル基を示し、Rは炭素数6~9のアルキル基を示す。)
(B)ヨウ素価が50~150である植物油を0.2質量%~5質量%含有する、ミスト用化粧料。
【請求項2】
ポンプ式スプレー容器に充填される、請求項1に記載のミスト用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー容器に充填し、噴霧してミストとして使用するのに適するミスト用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポンプスプレー容器などの化粧料用噴霧容器に液状の組成物を充填し、ミスト状に噴霧して使用されるミスト化粧料が知られている。ミスト状に噴霧される化粧料は、手で塗り伸ばすことなく、薄く均一に顔や髪全体に塗布できるという利点があることから、広く用いられている。
ミスト状に噴霧される化粧料として好適なミスト用化粧料としては、水性成分を主成分としたものが古くから用いられているが、水性成分のみを用いた保湿化粧料は、ミスト化は可能であるが、油分によるエモリエント効果や保湿効果を期待することができない。そこで、油剤と水性成分を併せ持つ乳化化粧料を利用することが考えられるが、乳液やクリーム等の油剤を多く含有する乳化化粧料は、粘性が高過ぎて、ミスト化が困難である。
【0003】
特許文献1には、アルキルグリコールを含有させて、高含有量の油相を有する水中油型のスプレー型日焼け止め製剤としたことが記載されている。しかし、油相の含有割合が大きい水中油型乳化組成物を安定化させるためには、一般的には、界面活性剤を増量したり、増粘剤によって組成物の粘性を上げることが必要であり、べたついた感触が強くなるとともに、スプレー噴霧型の製剤を提供することは極めて困難となる。
特許文献2に示されるように、油相として、シリコーンワックスを含む油状成分を用い、ポリオール、ヒドロキシ酸またはそれらの塩を含む水相および乳化剤により、油剤の含有量を低減させた化粧水に近い性状を有する粘性の低い乳化化粧料は、ミスト化が可能であるが、油剤によるエモリエント効果や保湿効果が不十分である。
この問題を解決するために、ミスト化粧料に、より多量の油性成分を配合する目的で、静置時に油層と水層に分離するが、振とうすることにより一時的に均一に乳化する多層型ミスト化粧料が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この化粧料は使用する際に振とうする手間が必要となり、さらに保湿効果にまだ改善の余地がある。
近年、より高い保湿効果を簡便に付与することのニーズが高まっており、油性成分を主成分とするミスト用化粧料が開発されている。特許文献4には、エステル油や揮発性炭化水素油を主成分とするスプレー式の化粧料が記載されており、ほどよい勢いで噴霧でき、噴霧した際に粒子の細かいミストが得られることが記載されている。しかし、使用感やミストの広がり具合にはまだ改善の余地があった。
このように、油剤を主成分とする場合でも、保湿効果やべたつきのなさ、さらにミストの粒子の細かさ、ミストの広がりといった要素を同時に満たすミスト用化粧料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-151901号公報
【文献】特表2006-513196号公報
【文献】特開2017-088569号公報
【文献】特開2015-168664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、肌なじみが良く、べたつかず、保湿感があり、噴霧した際のミストの粒子が細かく、ほどよい広がりを示すミストを形成し得るミスト用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記に示すエステルと植物油とを、特定範囲の含有量にて含有するミスト用化粧料とすることによって、上記課題を解決するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1](A)式(1)で示されるエステルを化粧料の全量に対し95質量%~99.8質量%、および
【0008】
【化1】
【0009】
(Rは炭素数7~12のアルキル基を示し、Rは炭素数6~9のアルキル基を示す。)
(B)ヨウ素価が50~150である植物油を0.2質量%~5質量%含有する、ミスト用化粧料。
[2]ポンプ式スプレー容器に充填される、[1]に記載のミスト用化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、肌なじみが良く、べたつかず、保湿感があり、噴霧した際のミストの粒子が細かく、ほどよい広がりを示すミストを形成し得るミスト用化粧料を提供することができる。
従って、本発明のミスト用化粧料は、スプレー容器に充填されて、ミスト化粧料として好適に使用することができ、特にポンプ式スプレー容器での使用に適する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ミスト用化粧料を提供する。
ここで、「ミスト用化粧料」とは、後述するスプレー容器に充填し、霧状に噴霧して使用するのに適する化粧料をいう。
本発明のミスト用化粧料は、(A)式(1)で示されるエステル、および(B)ヨウ素価が50~150である植物油を含有する。
【0012】
【化2】
【0013】
(Rは炭素数7~12のアルキル基を示し、Rは炭素数6~9のアルキル基を示す。)
【0014】
本発明のミスト用化粧料に(A)成分として含有されるエステルは、上記式(1)で示される。
式(1)中、Rで示される炭素数7~12のアルキル基としては、直鎖アルキル、分岐アルキルのいずれでもよく、たとえば、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル(sec-ヘプチル)、5-メチルヘキシル(イソヘプチル)、1,1-ジメチルペンチル、2-エチルペンチル、n-オクチル、1-メチルヘプチル(sec-オクチル)、6-メチルヘプチル(イソオクチル)、1,1-ジメチルヘキシル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、7-メチルオクチル(イソノニル)、2-エチルヘプチル、n-デシル、8-メチルノニル(イソデシル)、2-エチルオクチル、n-ウンデシル、10-メチルデシル(イソウンデシル)、n-ドデシル(n-ラウリル)、11-メチルウンデシル(イソラウリル)等が挙げられる。
本発明の目的には、炭素数7~8の直鎖アルキルまたは分岐アルキルが好ましく、炭素数7~8の分岐アルキルがより好ましく、炭素数8の分岐アルキルがさらに好ましく、イソオクチルが特に好ましい。
で示されるアルキル基の炭素数が7未満であると、ミストが広がり過ぎる傾向があり、12を超えると、ミストが広がりにくくなる傾向がある。
【0015】
式(1)中、Rで示される炭素数6~9のアルキル基としては、直鎖アルキル、分岐アルキルのいずれでもよく、たとえば、n-ヘキシル、1-メチルペンチル(sec-ヘキシル)、4-メチルペンチル(イソヘキシル)、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル(sec-ヘプチル)、5-メチルヘキシル(イソヘプチル)、1,1-ジメチルペンチル、2-エチルペンチル、n-オクチル、1-メチルヘプチル(sec-オクチル)、6-メチルヘプチル(イソオクチル)、1,1-ジメチルヘキシル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、7-メチルオクチル(イソノニル)、2-エチルヘプチル等が挙げられる。
本発明の目的には、炭素数8~9の直鎖アルキルまたは分岐アルキルが好ましく、炭素数8~9の分岐アルキルがより好ましく、イソノニルが特に好ましい。
で示されるアルキル基の炭素数が6未満であると、ミストが広がり過ぎる傾向があり、9を超えると、ミストが広がりにくくなる傾向がある。
【0016】
式(1)で示されるエステルとしては、オクタン酸ヘキシル、2-エチルへキサン酸2-エチルヘキシル、ノナン酸2-エチルヘキシル、ノナン酸ヘプチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、デカン酸(カプリン酸)イソヘキシル、ドデカン酸(ラウリン酸)ヘキシル、ドデカン酸オクチル(ラウリン酸カプリリル)、ドデカン酸(ラウリン酸)2-エチルヘキシル、トリデカン酸オクチル等が例示され、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、ドデカン酸(ラウリン酸)ヘキシルが好ましく、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2-エチルヘキシルがより好ましく、イソノナン酸イソノニルがさらに好ましい。
本発明のミスト用化粧料には、(A)成分である式(1)で示されるエステルは、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明のミスト用化粧料における(A)成分の含有量は、通常95質量%~99.8質量%であり、好ましくは97質量%~99.7質量%であり、より好ましくは99質量%~99.5質量%である。
(A)成分の含有量が95質量%未満では、べたつきを生じ、噴霧時のミスト粒子が粗くなる。また、(A)成分の含有量が99.8質量%を超えると、保湿感が不十分となり、噴霧されたミストが広がり過ぎる傾向がある。
【0018】
本発明のミスト用化粧料に(B)成分として含有される植物油は、植物に含有される脂質を抽出、精製したものであり、常温で液状のものである。本発明においては、ヨウ素価が50~150である植物油が用いられ、ヨウ素価が70~120である植物油が好ましく、80~110である植物油がより好ましい。かかる植物油は、構成脂肪酸として、オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸を多く含有する。
「ヨウ素価」は、油脂100gに付加することのできるヨウ素(I)のグラム数であり、日本工業規格(JIS) K0070-1992に準じた試験によって測定することができる。
ヨウ素価が50~150である植物油として、具体的には、ゴマ油、オレンジ種子油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、綿実油、アボカド油、オリーブ油、サザンカ油、ツバキ油、コーン油、ダイズ油、サフラワー油、ヒマワリ種子油、ヒマシ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、落花生油等が挙げられる。中でもオリーブ油、ブドウ種子油、コメ胚芽油、アボカド油、ゴマ油等が好ましく、オリーブ油がより好ましい。
ヨウ素価が50~150である植物油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の目的には、ヨウ素価が50~90である植物油と、100~150である植物油を併用することが好ましい。
【0019】
ヨウ素価が50未満の植物油を用いると、肌なじみが不十分であり、べたつく場合がある。一方、ヨウ素価が150を超える植物油を用いると、ミストの保湿感が十分に得られない場合があり、また経時安定性が悪くなる。
【0020】
本発明のミスト用化粧料における(B)成分の含有量は、通常0.2質量%~5質量%であり、好ましくは0.3質量%~2質量%であり、より好ましくは0.5質量%~1質量%である。
(B)成分の含有量が0.2質量%未満では、ミストの肌なじみおよび保湿感が不十分となり、噴霧されたミストが広がり過ぎる傾向がある。(B)成分の含有量が5質量%を超えると、ミストのべたつきが生じ、噴霧時のミスト粒子が粗くなり、噴霧されたミストの広がりが不十分となる傾向がある。
【0021】
本発明のミスト用化粧料には、化粧料や医薬品に常用されている他の油剤や添加剤を、本発明の特徴を損なわない範囲で、配合することも可能である。
かかる油剤としては、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、液状ラノリン、ホホバ油等のロウ;ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン等の環状シリコーン;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0022】
また、添加剤としては、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル等の親油性界面活性剤;水素添加大豆レシチン・コレステロール混合物、ミリストイルメチル-β-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル) 等の親油性の保湿剤;レチノール、パルミチン酸レチノール、β-カロテン、パルミチン酸アスコルビル、コレカルシフェロール等の油溶性ビタミン;パルミトイルグリシン、パルミトイルロイシン等の親油性の細胞賦活剤;パルミチン酸アスコルビルリン酸三ナトリウム、油溶性カミツレエキス、油溶性シラカバエキス等の親油性の抗しわ剤;油溶性甘草エキス、グラブリジン、コメヌカスフィンゴ糖脂質等の親油性の美白剤;油溶性キダチアロエ葉エキス、グリチルレチン酸ステアリル、油溶性シソ葉エキス等の親油性の抗炎症剤;油溶性ウンシュウミカン果皮エキス、ウンデシノイルグリシン等の親油性の抗ニキビ剤;トコフェロール、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール等の油溶性抗酸化剤;メトキシ桂皮酸エチルヘキシル、オキシベンゾン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤;安息香酸、イソプロピルメチルフェノール、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸ブチル等の油溶性抗菌剤;メントール、ハッカ油、バニリルブチルエーテル等の香料;アナトー色素、パプリカ色素等の油溶性天然色素;赤色225号、黄色204号、緑色202号等の油溶性タール色素等が挙げられる。
上記油剤および添加剤は、必要に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明のミスト用化粧料は、油性の液状の組成物として調製することができ、スプレー容器に充填し、噴霧して、ミスト化粧料として好適に使用することができる。
スプレー容器としては、ミスト化粧料として提供される製品に一般的に使用される容器を用いることができ、液化石油ガス等の噴射剤により噴霧するのに適するバルブの装着された耐圧容器、ポンプ式スプレー容器等が挙げられるが、携帯に便利で、簡便に良好なミストが得られる等の観点から、本発明のミスト用化粧料を充填するスプレー容器としては、ポンプ式容器を用いることが好ましい。
また、本発明のミスト用化粧料を定量的に噴出させ、一定量のミストを形成させるためには、ディスペンサー付きのスプレー容器を用いることが好ましい。
【0024】
本発明のミスト用化粧料は、上記した(A)成分に(B)成分を添加し、必要に応じて他の添加剤を加えて混合し、均一として調製することができる。前記混合工程は、液状化粧料の製造において一般的に使用される混合機や撹拌機を用いて行うことができる。
【0025】
本発明のミスト用化粧料は、肌なじみが良く、べたつかず、保湿感を有し、噴霧した際のミスト粒子が細かく、ほどよい広がりを示すミストを形成することができる。
従って、本発明のミスト用化粧料は、スプレー容器に充填されて、ミスト化粧料として好適に使用され、特にポンプ式スプレー容器での使用に適する。
【実施例
【0026】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
[実施例1~6、比較例1~5]ミスト用化粧料
表1および表2に示した処方に従い、(A)成分、(A)’成分、(B)成分および(B)’成分をビーカーに入れ、室温にて、マグネティックスターラーで均一になるまで撹拌して、実施例および比較例のミスト用化粧料を調製した。
(A)成分、(A)’成分、(B)成分および(B)’成分として用いた原料については、以下の通りである。
【0028】
(A)成分
(i)イソノナン酸イソノニル(製品名:サラコス99、日清オイリオグループ株式会社)
(ii)イソノナン酸エチルヘキシル(製品名:エマレックス(EMALEX) NIO-98、日本エマルジョン株式会社)
(iii)ラウリン酸ヘキシル(製品名:KAK HL、高級アルコール工業株式会社)
(A)’ 成分
(i)シクロペンタシロキサン(製品名:SH 245 FLUID、東レ・ダウコーニング株式会社)
(ii)パルミチン酸エチルヘキシル(製品名:サラコスP-8、日清オイリオグループ株式会社)
(B)成分
(i)ゴマ油(製品名:九鬼太白純正ごま油、九鬼産業株式会社、ヨウ素価=110)
(ii)ブドウ種子油(製品名:CROPURE GRAPESEED-LQ-(JP)、クローダジャパン株式会社、ヨウ素価=130)
(iii)コメ胚芽油(製品名:PRO-15、築野食品工業株式会社、ヨウ素価=105)
(iv)アボカド油(製品名:Refind Avocado Oil RBWD、香栄興業株式会社、ヨウ素価=105)
(v)オリーブ油(製品名:オリーブ油リファインド、DSP五協フード&ケミカル株式会社、ヨウ素価=80)
(B)’成分
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(製品名:パナセート810S、日油株式会社)
【0029】
実施例1~6および比較例1~5のミスト用化粧料を、スプレー容器(分注瓶(スプレー式)S-50(容量=50mL)、株式会社サンプラテック)に充填し、噴霧した際のミストについて、次の通り評価した。
評価項目は「肌なじみ」、「保湿感」、「べたつきのなさ」、「噴霧時のミスト粒子の細かさ」、「ミストの広がり」の5項目とし、以下に記載する方法および評価基準により評価した。
【0030】
(1)肌なじみ
専門パネラー(20才~60才)10名に、洗浄後、軽くタオルドライした腕に対して、スプレー容器に充填した各ミスト用化粧料を1プッシュ噴霧して塗布してもらい、肌なじみについて官能評価させ、以下の基準で点数化させた。
<評価基準>
3点:非常に肌なじみが良い
2点:肌なじみが良い
1点:やや肌なじみが悪い
0点:肌なじみが悪い
各ミスト用化粧料についての10名の評価点の合計値を求めて、各ミスト用化粧料の肌なじみについて、以下のように評価した。
◎:合計点が25点以上である;非常に肌なじみが良い化粧料である。
○:合計点が15点以上25点未満である;肌なじみが良い化粧料である。
△:合計点が5点以上15点未満である;やや肌なじみが悪い化粧料である。
×:合計点が5点未満である;肌なじみが悪い化粧料である。
本評価において、○または◎と評価されたものを合格とした。
【0031】
(2)保湿感
専門パネラー(20才~60才)10名に、洗浄後、軽くタオルドライした腕に対して、スプレー容器に充填した各ミスト用化粧料を1プッシュ噴霧して塗布してもらい、5分経過後に、保湿感について官能評価させ、以下の基準で点数化させた。
<評価基準>
3点:非常に保湿感が高い
2点:保湿感が高い
1点:やや保湿感が足りない
0点:保湿感が足りない
各ミスト用化粧料についての10名の評価点の合計値を求めて、各ミスト用化粧料の保湿感について、以下のように評価した。
◎:合計点が25点以上である;非常に保湿感が高い化粧料である。
○:合計点が15点以上25点未満である;保湿感が高い化粧料である。
△:合計点が5点以上15点未満である;やや保湿感が足りない化粧料である。
×:合計点が5点未満である;保湿感が足りない化粧料である。
本評価において、○または◎と評価されたものを合格とした。
【0032】
(3)べたつきのなさ
専門パネラー(20才~60才)10名に、洗浄後、軽くタオルドライした腕に対して、スプレー容器に充填した各ミスト用化粧料を1プッシュ噴霧して塗布してもらい、5分経過後に、べたつきのなさについて官能評価させ、以下の基準で点数化させた。
<評価基準>
3点:非常にべたつきがない
2点:べたつきがない
1点:ややべたつきがある
0点:べたつきがある
各ミスト用化粧料についての10名の評価点の合計値を求めて、各ミスト用化粧料のべたつきのなさについて、以下のように評価した。
◎:合計点が25点以上である;非常にべたつきがない化粧料である。
○:合計点が15点以上25点未満である;べたつきがない化粧料である。
△:合計点が5点以上15点未満である;ややべたつきがある化粧料である。
×:合計点が5点未満である;べたつきがある化粧料である。
本評価において、○または◎と評価されたものを合格とした。
【0033】
(4)ミスト粒子の細かさ
スプレー容器に充填した各ミスト用化粧料を、30cm離れたところから、ガラス板に向かって1プッシュ噴霧し、ミスト粒子の細かさを目視で以下の基準により評価した。
<評価基準>
○:ミスト粒子が細かい
△:細かいミスト粒子と粗いミスト粒子が混在している
×:ミスト粒子が粗い
本評価において、○と評価されたものを合格とした。
【0034】
(5)ミストの広がり
スプレー容器に充填した各ミスト用化粧料を、30cm離れたところから、キムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)に向かって2プッシュ噴霧し、キムタオル上に円状に広がった液滴の直径を測定し、ミストの広がりを以下の基準により評価した。
<評価基準>
◎:キムタオル上に円状に広がった液滴の直径が13cm以上17cm未満である
○:キムタオル上に円状に広がった液滴の直径が11cm以上13cm未満であるか、17cm以上19cm未満である
△:キムタオル上に円状に広がった液滴の直径が7.5cm以上11cm未満であるか、19cm以上22.5cm未満である
×:キムタオル上円状に広がった液滴の直径が7.5cm未満であるか、22.5cm以上である
本評価において、○または◎と評価されたものを合格とした。
【0035】
評価結果を表1および表2に併せて示した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1に示した通り、本発明の実施例1~6のミスト用化粧料を用いて形成されるミストは、いずれもすべての評価項目について合格と評価されており、肌なじみがよく、べたつかず、高い保湿感を有し、噴霧した際のミスト粒子が細かく、ほどよい広がりを有することが明らかとなった。
特に、(B)成分として、ヨウ素価が80であるオリーブ油と、ヨウ素価が130であるブドウ種子油とを併用した実施例6のミスト用化粧料を用いて形成されるミストは、肌なじみ、保湿感、べたつきのなさおよびミストの広がりについて、非常に良好であると評価された。
【0039】
これに対し、比較例1~5のミスト用化粧料を用いた場合には、すべての評価項目において合格であると評価されるミストは得られなかった。
すなわち、(B)成分を含有しない比較例1のミスト用化粧料を用いて形成されるミストは、肌なじみがやや悪く、保湿感がやや不足し、ミストがやや広がり過ぎると評価された。
(A)成分の含有量が95質量%より少なく、かつ(B)成分の含有量が5質量%を超える比較例2のミスト用化粧料を用いた場合は、形成されるミストにややべたつきが認められ、噴霧した際に粗いミスト粒子が混在し、ミストの広がりがやや不十分であると評価された。
(A)成分の代わりにシクロペンタシロキサンを含有する比較例3のミスト用化粧料を用いた場合は、形成されるミストの保湿感がやや不足し、ミストがやや広がり過ぎると評価された。
(A)成分の代わりにパルミチン酸エチルヘキシルを含有する比較例4のミスト用化粧料を用いた場合は、形成されるミストにややべたつきがあり、噴霧した際に粗いミスト粒子が混在し、ミストの広がりがやや不十分であると評価された。
(B)成分の代わりにトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含有する比較例5のミスト用化粧料を用いた場合は、形成されるミストの肌なじみがやや悪く、保湿感がやや不足し、ミストがやや広がり過ぎると評価された。
【0040】
下記に本発明のミスト用化粧料の処方例を示す。下記処方に従い、各成分を混合して均一とし、ミスト用化粧料を調製した。
調製したミスト用化粧料を、上記評価に用いたスプレー容器に充填し、噴霧したところ、良好なミストが得られ、本発明の効果が得られることが確認できた。
<処方例>
イソノナン酸イソノニル 96.0(質量%)
シクロペンタシロキサン 3.0
オリーブ油 0.4
ブドウ種子油 0.4
香料 0.2
合計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述したように、本発明により、肌なじみが良く、べたつかず、保湿感があり、噴霧した際のミスト粒子が細かく、ほどよい広がりを示すミストを形成し得るミスト用化粧料を提供することができる。
従って、本発明のミスト用化粧料は、スプレー容器に充填して、ミスト化粧料として好適に使用することができ、特にポンプ式スプレー容器での使用に適する。