(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】接点機構及びこれを使用した電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 1/06 20060101AFI20220524BHJP
H01H 50/38 20060101ALI20220524BHJP
H01H 50/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H01H1/06 M
H01H50/38 A
H01H50/00 D
(21)【出願番号】P 2018172909
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】足立 日出央
(72)【発明者】
【氏名】中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充哉
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035414(JP,A)
【文献】特開2011-204480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06
H01H 50/38
H01H 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点収納ケース内に、固定接点を有する一対の固定接触子と、前記一対の固定接触子の前記固定接点に接離可能な一対の可動接点を長手方向の両端側に設けた可動接触子と、前記接点収納ケースの外側に配置され、前記一対の固定接触子の前記固定接点及び前記可動接触子の前記一対の可動接点の間に発生したアークを引き延ばす一対のアーク消弧用永久磁石と、を備えた接点機構において、
前記一対の固定接触子は、前記可動接触子の長手方向の両端側で表裏面の一方の面に対向して配置され、前記可動接点に接離する前記固定接点を有する第1導電板部と、前記第1導電板部の端部から前記可動接触子の表裏方向に延在する第2導電板部と、前記第2導電板部から前記第1導電板部に対して平行に延在して前記可動接触子の表裏面の他方の面に対向して配置される第3導電板部と、を備えた側面から見てC字形状を有し、
前記一対のアーク消弧用永久磁石の中心を結ぶ線を永久磁石中心線とし、前記可動接触子の前記一対の可動接点を結ぶ線を可動接触子中心線とすると、前記可動接触子は、前記可動接触子中心線が前記永久磁石中心線に対して交差するように配置され、前記一対の固定接触子が前記可動接触子中心線に沿って配置されているとともに、
前記一対のアーク消弧用永久磁石の互いに対向する着磁面は、前記アークが前記永久磁石中心線を超えて引き延ばされる方向となる磁極に着磁されて
おり、
前記可動接触子の長手方向の両端部に、前記一対の可動接点をそれぞれ設けた第1可動接点部及び第2可動接点部が形成されており、
前記第1可動接点部及び前記第2可動接点部の延在方向が、前記一対の固定接触子の互いに平行に配置されている前記第1導電板部及び前記第2導電板部の延在方向に一致していることを特徴とする接点機構。
【請求項2】
前記一対の固定接触子は、前記第1導電板部および前記第3導電板部の間の開口部が前記永久磁石中心線側を向き、前記第1導電板部および前記第3導電板部が前記永久磁石中心線に対して直交して延在するように配置されていることを特徴とする請求項
1記載の接点機構。
【請求項3】
前記一対の固定接触子に、前記第1導電板部の端部から前記第3導電板部に対して逆方向の前記接点収納ケースの壁部に向うアークランナーが形成されていることを特徴とする請求項1
及び2記載の接点機構。
【請求項4】
前記接点収納ケースに、アーク消弧用ガスが封入されていることを特徴とする請求項1から
請求項3の何れか1項に記載の接点機構。
【請求項5】
前記接点収納ケースの外部に、前記一対の固定接触子にそれぞれに接続する一対の突出部が設けられ、前記一対の突出部に第1主端子板および第2主端子板が接続されており、
前記第1主端子板および前記第2主端子板には、前記可動接触子が前記一対の固定接触子に接触したときに流れる主電流の方向が等しくなるように互いに平行に配置された対向板部を設け、これら対向板部で前記可動接触子に流れる電流と交差する共通磁界を発生させるようにしたことを特徴とする請求項1から
請求項4の何れか1項に記載の接点機構。
【請求項6】
請求項1から
請求項5の何れか1項に記載の接点機構と、
前記接点機構の前記可動接触子の前記一対の可動接点を前記一対の固定接触子の前記固定接点に接離させる電磁石ユニットと、を備えたことを特徴とする電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路の開閉を行う接点機構及びこれを使用した電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流遮断時にアークが発生する電磁接触器に適用する接点機構として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。
特許文献1の接点機構は、固定接点を有する一対の固定接触子と、一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を長手方向の両端側に設けた可動接触子と、前記一対の固定接触子及び前記可動接触子を収納している絶縁材で形成した絶縁ケースと、一対の固定接点及び一対の可動接点の間で発生するアークを引き延ばすアーク消弧用永久磁石と、を備えている。
【0003】
可動接触子は、直方体形状とした絶縁ケースの短手方向の中央位置において長手方向に延在して配置された電導板であり、この可動接触子の長手方向の両端側には一対の可動接点が設けられている。
一対の固定接触子は、可動接触子の長手方向の両端側の表裏に対向する第1及び第2導電板部と、これら第1及び第2導電板部の端部から可動接触子の表裏方向に延在する第3導電板部と、を備えた側面から見てC字形状の導電板である。これら一対の固定接触子は、可動接触子の長手方向の両端側を挟み込むように配置され、可動接触子に対して通電時の電磁反発力に抗するローレンツ力を与えるようにし、過電流耐量性能の向上を図っている。
【0004】
また、アーク消弧用永久磁石は、絶縁ケースの長手方向の外側に対向配置されて互いの磁極面がS極となるように着磁された一対の永久磁石と、絶縁ケースの短手方向の外側に対向配置されて互いの磁極面がN極となるように着磁された一対の永久磁石が配置されている。
この接点機構によると、一対の固定接触子間に可動接触子が接触している投入状態から釈放状態とする際に、一対の固定接触子と可動接触子との間にアークが発生すると、互いに対向配置されているアーク消弧用永久磁石のN極からS極に向かう磁束が共に一対の固定接触子と可動接触子との間のアークが発生した位置に対して可動接触子の長手方向に横切ることになり、アークに対して可動接触子の長手方向と直交する方向のローレンツ力が作用する。これにより、発生したアークは、絶縁ケースの短手方向に設けたアーク消弧空間に向けて引き伸ばされて消弧するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の接点機構は、絶縁ケースの短手方向に設けられているアーク消弧空間が小さな空間であり、発生したアークを十分に引き伸ばすことができないので、消弧性能の面で課題がある。
また、特許文献1の接点機構は、電流の流れ方向を限定せずに無極性に対応した装置であり、絶縁ケースの長手方向及び短手方向に2対のアーク消弧用永久磁石を配置することで、電流の流れ方向が正方向である場合には、アークを絶縁ケースの一方の短手方向に設けたアーク消弧空間に向けて引き伸ばし、電流の流れ方向が逆方向である場合には、アークを絶縁ケースの他方の短手方向に設けたアーク消弧空間に向けて引き伸ばしている。このように、絶縁ケース内部の短手方向には、正逆両方向の電流の流れに対応したアーク消弧空間を設けなければならないので絶縁ケースが大型になる。そのため、小型化の要求に応えられないという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記特許文献1に記載された従来例の問題点に着目してなされたものであり、過電流耐量性能および消弧性能の向上を図りながら小型化を図ることができる接点機構及びこれを使用した電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る接点機構は、接点収納ケース内に、固定接点を有する一対の固定接触子と、一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を長手方向の両端側に設けた可動接触子と、接点収納ケースの外側に配置され、一対の固定接触子の固定接点及び可動接触子の一対の可動接点の間に発生したアークを引き延ばす一対のアーク消弧用永久磁石と、を備えた接点機構において、一対の固定接触子は、可動接触子の長手方向の両端側で表裏面の一方の面に対向して配置され、可動接点に接離する固定接点を有する第1導電板部と、第1導電板部の端部から可動接触子の表裏方向に延在する第2導電板部と、第2導電板部から第1導電板部に対して平行に延在して可動接触子の表裏面の他方の面に対向して配置される第3導電板部と、を備えた側面から見てC字形状を有している。そして、一対のアーク消弧用永久磁石の中心を結ぶ線を永久磁石中心線とし、可動接触子の一対の可動接点を結ぶ線を可動接触子中心線とすると、可動接触子は、可動接触子中心線が永久磁石中心線に対して交差するように配置され、一対の固定接触子が可動接触子中心線に沿って配置されているとともに、一対のアーク消弧用永久磁石の互いに対向する着磁面は、アークが永久磁石中心線を超えて引き延ばされる方向となる磁極に着磁されており、可動接触子の長手方向の両端部に、一対の可動接点をそれぞれ設けた第1可動接点部及び第2可動接点部が形成されており、第1可動接点部及び第2可動接点部の延在方向が、一対の固定接触子の互いに平行に配置されている第1導電板部及び第2導電板部の延在方向に一致している。
【0009】
また、本発明の一態様に係る電磁接触器は、前述した接点機構と、接点機構の可動接触子の一対の可動接点を一対の固定接触子の固定接点に接離させる電磁石ユニットと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接点機構及びこれを使用した電磁接触器によれば、過電流耐量性能および消弧性能の向上を図りながら小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る第1実施形態に係る電磁接触器を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態の電磁接触器の縦断面図である。
【
図3】第1実施形態の接点収納ケースを取り除いた状態で接点機構の構造を示した斜視図である。
【
図4】第1実施形態の接点機構の平面断面図である。
【
図5】第1および第2主端子板による磁界の発生状態を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る第2実施形態の接点収納ケースを取り除いた状態で接点機構の構造を示した斜視図である。
【
図7】第2実施形態の接点機構の平面断面図である。
【
図8】本発明に係る第3実施形態の接点収納ケースを取り除いた状態で接点機構の構造を示した斜視図である。
【
図9】第3実施形態の接点機構の平面断面図である。
【
図10】本発明に係る第4実施形態の接点収納ケースを取り除いた状態で接点機構の構造を示した斜視図である。
【
図11】第4実施形態の接点機構の平面断面図である。
【
図12】本発明に係る第5実施形態の接点収納ケースを取り除いた状態で接点機構の構造を示した斜視図である。
【
図13】本発明に係る第6実施形態の接点収納ケースを取り除いた状態で接点機構の構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の第1から第6実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
また、以下に示す第1~第6実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「底」、「前」、「後」、「長尺方向」、「短尺方向」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
以下に示す第1~第6実施形態の電磁接触器は、電流の流れ方向を限定した有極性の電磁接触器である。
【0014】
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態の電磁接触器1は、
図1に示すように、接点機構2と、接点機構2を駆動する電磁石ユニット20と、接点機構2の周囲に配置した第1,第2アーク消弧用永久磁石40,41と、接点機構2に固定されている第1主端子板43A及び第2主端子板43Bと、を備えている。
電磁石ユニット20は、
図2に示すように、側面から見て扁平なU字形状の磁気ヨーク28を有し、この磁気ヨーク28の底板部の中央部に固定プランジャ29が配置され、この固定プランジャ29の外側にスプール30が配置されている。このスプール30に励磁コイル34が巻装されている。
【0015】
磁気ヨーク28の開放端となる上端に固定した上部磁気ヨーク21には、中央部にスプール30の中央円筒部31に対向する貫通孔21aが形成されている。スプール30の中央円筒部31内に挿入された固定プランジャ29の上部には、有底筒状に形成されたキャップ35で覆われ、このキャップ35の開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部35aが上部磁気ヨーク21の下面にシール接合されている。これによって、キャップ35が上部磁気ヨーク21の貫通孔21aを介して連通される密封容器が形成される。キャップ35の内部には、可動プランジャ22が上下に摺動可能に挿入される。この可動プランジャ22には、上部磁気ヨーク21から上方に突出する上端部に半径方向外方に突出する周鍔部22aが形成されている。
【0016】
上部磁気ヨーク21の上面には、環状に形成された駆動用永久磁石37が可動プランジャ22の周鍔部22aを囲むように固定されている。この駆動用永久磁石37は上下方向すなわち厚み方向に例えば上端側をN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。駆動用永久磁石37の上端面には補助ヨーク39が固定されており、この補助ヨーク39の下面に、可動プランジャ22の周鍔部22aが接触している。
接点機構2は、
図2に示すように、ケース4に収納されている。ケース4は、金属製の角筒体5と、この角筒体5の上端を閉塞する例えばセラミックや合成樹脂材などの絶縁材料により形成した絶縁基板6とを備えている。
【0017】
角筒体5は、下部に形成したフランジ部7が、電磁石ユニット20の上部磁気ヨーク21にシール接合されて固定されている。絶縁基板6には、貫通孔9,10が所定間隔をあけて形成されている。
接点機構2は、絶縁基板6に導体部11,12を介して固定されている一対の固定接触子13,14(以下、第1固定接触子13、第2固定接触子14と称する)と、これら第1及び第2固定接触子13,14に接離可能に配置された可動接触子15と、を備えている。
【0018】
可動接触子15は、
図3及び
図4に示すように、導電性のある材料とした直線状に長尺な導電板であり、長手方向の中央部に貫通孔23が形成されており、長手方向の両端側の下面に、第1可動接点15a及び第2可動接点15bが形成されている。
可動接触子15の貫通孔23には、
図2に示すように、電磁石ユニット20の可動プランジャ22に固定された連結軸24が挿通されている。連結軸24の長手方向の中央部には外方に突出するフランジ部25が形成されており、このフランジ部25が可動接触子15の中央下部に当接している。連結軸24の上端にはCリング27が固定されており、このCリングと可動接触子15の中央上部との間の連結軸24の外周に接触スプリング26が配置され、可動接触子15に対して所定の付勢力を付与している。また、補助ヨーク39とフランジ部25の下部との間の連結軸24の外周にも復帰スプリング36が配置され、可動接触子15に対して所定の付勢力を付与している。
ケース4の角筒体5の内周面には、有底角筒状に形成された絶縁筒部18が配設されている。この絶縁筒部18は、絶縁性の例えば合成樹脂を成形することによって形成され、金属製の角筒体5に対するアークの影響を遮断する絶縁機能を有する。
【0019】
第1固定接触子13は、
図3に示すように、可動接触子15の第1可動接点15a側に配置されており、可動接触子15の第1可動接点15aに下側から対向し、第1固定接点13aを上面に設けた第1導電板部13bと、可動接触子15から離れた第1導電板部13bの端部から折り曲げられて上方に延在している第2導電板部13cと、第2導電板部13cの上端から折り曲げられて可動接触子15の上方に延在している第3導電板部13dと、を備えた側面から見てC字形状の部材である。
第2固定接触子14は、
図3に示すように、可動接触子15の第2可動接点15b側に配置されており、可動接触子15の第2可動接点15bに下側から対向し、第2固定接点14aを上面に設けた第1導電板部14bと、可動接触子15から離れた第1導電板部14bの端部から折り曲げられて上方に延在している第2導電板部14cと、第2導電板部14cの上端から折り曲げられて可動接触子15の上方に延在している第3導電板部14dと、を備えた側面から見てC字形状の部材である。
【0020】
可動接触子15は釈放状態で、長手方向の両端側に位置する可動接点15a,15bと、固定接触子13,14の固定接点13a,14aが、所定間隔を保って離間した状態となる。
可動接触子15の投入状態では、可動接点15a,15bが、固定接触子13,14の固定接点13a,14aに、接触スプリング26による所定の接触圧で接触するように設定されている。
密閉されたケース4には、アーク消弧ガスが封入されている。
【0021】
また、
図2及び
図4に示すように、ケース4の角筒体5の外側には、外周全域を覆うように金属製の矩形状の磁石支持体42が配置されており、この磁石支持体42は、電磁接触器1に設けた保持部材(不図示)で支持されている。
第1アーク消弧用永久磁石40は、可動接触子15の長手方向の一方の可動接点15a及び第1固定接触子13に角筒体5及び絶縁筒部18を介して対向するように磁石支持体42の長手方向の一側に固定されている。この第1アーク消弧用永久磁石40は、角筒体5に対向する磁極面がN極となるように着磁されている。
第2アーク消弧用永久磁石41は、可動接触子15の長手方向の他方の可動接点15b及び第2固定接触子14に角筒体5及び絶縁筒部18を介して対向するように磁石支持体42の長手方向の他側に固定されている。この第2アーク消弧用側永久磁石41は、角筒体5に対向する磁極面がS極となるように着磁されている。
【0022】
これにより、
図4に示すように、第1アーク消弧用永久磁石40のN極から出て第2アーク消弧用永久磁石41のS極に流れる磁束Φ1が、第1固定接触子13の第1固定接点13aと、第2固定接触子14の第2固定接点14aとを横切る。
ここで、
図4に示すように、絶縁筒部18の外側に配置されて磁石支持体42に固定されている第1アーク消弧用永久磁石40及び第2アーク消弧用永久磁石41の中心位置を結ぶ直線を永久磁石中心線MLとし、可動接触子15の第1可動接点15a及び第2可動接点15bを結ぶ直線を可動接触子中心線KL1とすると、可動接触子中心線KL1が永久磁石中心線MLに対して交差するように可動接触子15が配置されている。すなわち、可動接触子15は、平面視において長方形状の絶縁筒部18の対角線方向に延在して配置されている。
【0023】
第1固定接触子13は、
図4に示すように、永久磁石中心線MLに対して左側に寄った位置に、第1導電板部13b及び第3導電板部13dが永久磁石中心線MLに沿って延在し、第2導電板部13cが第1アーク消弧永久磁石40に対向するように配置されている。第2固定接触子14は、永久磁石中心線MLに対して右側に寄った位置に、第1導電板部14b及び第3導電板部14dが永久磁石中心線MLに沿って延在し、第2導電板部14cが第2アーク消弧永久磁石41に対向するように配置されている。
さらに、
図1に示すように、接点機構2の絶縁基板6から突出する導体部11,12に、第1主端子板43A及び第2主端子板43Bが固定ボルト44A、44Bで固定されている。
【0024】
第1主端子板43Aは、中間板部43Aaと、この中間板部43Aaの左端から前方に延長している取付板部43Abと、中間板部43Aaの右端から前方に延長している外部接続板部43Acと、で構成されている。そして、取付板部43Abに形成した挿通孔43Ab1に挿通した固定ボルト44Aのねじ部を、導体部11に形成したねじ孔にねじ込むことで、第1主端子板43Aが導体部11に固定されている。
第2主端子板43Bは、中間板部43Baと、この中間板部43Baの右端から後方に延長している取付板部43Bbと、中間板部43Baの左端から後方に延長している外部接続板部43Bcと、で構成されている。そして、取付板部43Bbに形成した挿通孔43Bb1に挿通した固定ボルト44Bのねじ部を、導体部12に形成したねじ孔にねじ込むことで、第2主端子板43Bが導体部12に固定されている。
【0025】
次に、第1実施形態の電磁接触器1の動作を説明する。
先ず、第1主端子板43Aの外部接続板部43Acに負荷を接続し、第2主端子板43Bの外部接続板部43Bcに大電流を供給する電力供給源を接続する。
このとき、電磁石ユニット20の励磁コイル34は非通電状態にあって、電磁石ユニット20で可動プランジャ22を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。
この釈放状態では、可動プランジャ22が復帰スプリング36によって、上部磁気ヨーク21から離れる上方向に付勢される。これと同時に、駆動用永久磁石37の磁力による吸引力が補助ヨーク39に作用し、可動プランジャ22の周鍔部22aが吸引される。このため、可動プランジャ22の周鍔部22aの上面が補助ヨーク39の下面に接触している。
【0026】
このとき、可動プランジャ22に連結軸24を介して連結されている接点機構2の可動接触子15の第1可動接点15aおよび第2可動接点15bが、第1固定接触子13の第1固定接点13a、第2固定接触子14の第2固定接点14aに対して上方に所定距離だけ離間している。これにより、第1固定接触子13および第2固定接触子14の間の電流路が遮断状態にあり、接点機構2が開極状態となっている。
この釈放状態から、電磁石ユニット20の励磁コイル34に通電すると、この電磁石ユニット20で励磁力が発生し、可動プランジャ22を復帰スプリング36の付勢力および駆動用永久磁石37の吸引力に抗して下方に押し下げる。この可動プランジャ22の下降が、周鍔部22aの下面が上部磁気ヨーク21の上面に当たることで停止する。
【0027】
このように、可動プランジャ22が下降することにより、可動プランジャ22に連結軸24を介して連結されている可動接触子15も下降し、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第2可動接点15bのそれぞれが、第1固定接触子13の第1固定接点13a及び第2固定接触子14の第2固定接点14aのそれぞれに対して接触スプリング26の接触圧で接触する。
このため、電力供給源の大電流が、第2主端子板43B、第2固定接触子14、可動接触子15、第1固定接触子13および第1主端子板43Aを通じて負荷に供給され、接点機構2が閉極状態となる。
【0028】
この閉極状態となると、第1固定接触子13および第2固定接触子14と可動接触子15とを流れる電流によって、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aと可動接触子15との間に、可動接触子15を開極方向に移動させる電磁反発力が発生する。
しかしながら、可動接触子15の第1可動接点15a側を流れる電流の方向と、側面から見てC字形状の第1固定接触子13の第3導電板部13dを流れる電流の方向とが逆方向となり、可動接触子15の第2可動接点15b側を流れる電流の方向と、側面から見てC字形状の第2固定接触子14の第3導電板部14dを流れる電流の方向とが逆方向となる。この作用により、可動接触子15に、電磁反発力に抗するローレンツ力が発生する。
【0029】
しかも、
図5に示すように、第2主端子板43Bの中間板部43Baに流れる入力側電流と、これに対向する第1主端子板43Aの中間板部43Aaに流れる出力側電流との方向が同一方向となる。これら中間板部43Baおよび43Aaに流れる電流の方向は、第1固定接触子13の第3導電板部13dおよび第2固定接触子14の第3導電板部14dに流れる電流の方向とも一致する。
このため、中間板部43Baおよび43Aa間では、双方に流れる電流による内側の磁界が打ち消されるが、外側の磁界は互いに結合されて、
図5に示すように中間板部43Aaおよび43Baを囲む反時計回りの共通の外部磁界MFが発生する。
【0030】
この外部磁界MFは可動接触子15を流れる電流に対して直交する方向となるとともに、可動接触子15の板面に沿って平行となる。
したがって、フレミング左手の法則により、可動接触子15を第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aに押し付けるローレンツ力を発生させることができる。
これにより、可動接触子15には、第1固定接触子13および第2固定接触子14による電磁反発力に抗するローレンツ力に加えて、第1主端子板43Aおよび第2主端子板43Bによる電磁反発力に抗するローレンツ力が作用するので、過電流耐量性能をより向上させることができる。
【0031】
次に、接点機構2の閉極状態から、負荷への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット20の励磁コイル34への通電を停止する。
励磁コイル34への通電を停止すると、電磁石ユニット20で可動プランジャ22を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ22が復帰スプリング36の付勢力によって上昇し、周鍔部22aが補助ヨーク39に近づくに従って駆動用永久磁石37の吸引力が増加する。
この可動プランジャ22が上昇することにより、連結軸24を介して連結された可動接触子15が上昇する。これに応じて接触スプリング26で接触圧を与えているときは、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第2可動接点15bのそれぞれが、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aのそれぞれに接触している。その後、接触スプリング26の接触圧がなくなった時点で、可動接触子15が第1固定接触子13および第2固定接触子14から上方に離間する開極状態となる。
【0032】
このような開極状態となると、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第2可動接点15bと、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続されることになる。
図4に示すように、可動接触子15の第1可動接点15aと、第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1アーク消弧用永久磁石40のN極から出て第2アーク消弧用永久磁石41のS極に流れる磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F1によって引き延ばされる。
【0033】
可動接触子15の第1可動接点15a及び第1固定接触子13は、永久磁石中心線MLに対して左側に寄った位置に配置されているので、ローレンツ力F1によってアークが引き延ばされる方向には、大きなアーク消弧空間S1が設けられている。これにより、アークは大きなアーク消弧空間S1に向けて十分に引き延ばされて消弧されていく。
また、可動接触子15の第2可動接点15bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1及び第2アーク消弧用永久磁石40,41で発生する磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F2によって引き延ばされる。そして、第2可動接点15b及び第2固定接触子14は、永久磁石中心線MLに対して右側に寄った位置に配置されているので、ローレンツ力F2によってアークが引き延ばされる方向には、大きなアーク消弧空間S2が設けられ、アークは大きなアーク消弧空間S2に向けて十分に引き延ばされて消弧されていく。
【0034】
以上のように発生したアークは、第1及び第2アーク消弧用永久磁石40,41で発生する磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生するローレンツ力F1,F2によって引き延ばされるとともに、接点機構2に封入されたアーク消弧用ガスによって冷却されて消弧される。
したがって、第1実施形態の電磁接触器1によると、第1及び第2アーク消弧用永久磁石40,41の中心位置を結ぶ永久磁石中心線MLに対して、可動接触子15の第1可動接点15a及び第2可動接点15bを結ぶ可動接触子中心線KL1が交差するように可動接触子15が配置されている。このため、可動接触子15の第1可動接点15aと、第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークは、永久磁石中心線MLを超えて大きなアーク消弧空間S1に十分に引き延ばされ、可動接触子15の第2可動接点15bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークは、永久磁石中心線MLを超えて大きなアーク消弧空間S2に十分に引き延ばされていくので、消弧性能を高めることができる。
【0035】
また、発生したアークは、密閉されたケース4に封入されているアーク消弧用ガスによって冷却されるので、さらに消弧性能を高めることができる。
また、接点機構2の閉極状態で、可動接触子15に対して、通電電流による開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を、側面から見てC字形状の第1固定接触子13および第2固定接触子14によって発生することができるとともに、第1主端子板43Aおよび第2主端子板43Bによっても発生することができる。したがって、閉極状態における可動接触子15の開極方向への電磁反発力に抗するローレンツ力を増大させることができる。このため、電磁接触器1の過電流耐量性能をより向上させることが可能となる。
さらに、第1実施形態は、接点機構2の周囲に一対の第1,第2アーク消弧用永久磁石40,41を配置して有極性の電磁接触器1としたので、装置の小型化を図ることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、
図6及び
図7は、本発明に係る電磁接触器を構成する第2実施形態の接点機構2の内部を示すものである。なお、
図1から
図5で示した構成と同一構成部分は、同一符号を付して説明は省略する。
第2実施形態の接点機構2は、第1固定接触子13及び第2固定接触子14と、第1及び第2固定接触子13,14に接離可能に配置された可動接触子50と、を備えている。
可動接触子50は、
図7に示すように、導電性の長尺板材であり、長手方向の中央部に貫通孔23が形成されている中間板部50aと、中間板部50aの長手方向の一端から中間板部50aに対して直交して延在している第1直交板部50bと、中間板部50aの長手方向の他端から第1直交板部50bに対して逆側の方向に中間板部50aに対して直交して延在している第2直交板部50cと、を備えている。
【0037】
第1直交板部50bの先端側の下面には第1可動接点51aが形成されており、第2直交板部50cの先端側の下面には第2可動接点51bが形成されている。
第1固定接触子13は、
図7に示すように、永久磁石中心線ML(第1アーク消弧用永久磁石40及び第2アーク消弧用永久磁石41の中心位置を結ぶ直線)に対して左側に寄った位置に、第1導電板部13b及び第3導電板部13dが永久磁石中心線MLに沿って延在し、第2導電板部13cが第1アーク消弧永久磁石40に対向するように配置されている。
【0038】
第2固定接触子14は、永久磁石中心線MLに対して右側に寄った位置に、第1導電板部14b及び第3導電板部14dが永久磁石中心線MLに沿って延在し、第2導電板部14cが第2アーク消弧永久磁石41に対向するように配置されている。
可動接触子50は、中間板部50aの貫通孔23に電磁石ユニット20の可動プランジャ22に固定された連結軸24が挿通されている。
そして、可動接触子50は、中間板部50aが永久磁石中心線MLに直交する方向に延在し、第1直交板部50bおよび第2直交板部50cが永久磁石中心線MLに沿う方向に延在して配置されている。
【0039】
これにより、可動接触子50の第1可動接点51a及び第2可動接点51bを結ぶ直線を可動接触子中心線KL2とすると、可動接触子中心線KL2が永久磁石中心線MLに対して交差するように可動接触子50が配置されている。
第2実施形態の電磁接触器1によると、接点機構2が閉極状態となると、第1固定接触子13および第2固定接触子14と可動接触子15とを流れる電流によって、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aと可動接触子50との間に、可動接触子15を開極方向に移動させる電磁反発力が発生する。
【0040】
ここで、第2実施形態の可動接触子50は、第1可動接点51aを形成している第1直交板部50bと、第1固定接触子13の第3導電板部13dとが永久磁石中心線MLに沿って平行に延在し、第2可動接点51bを形成している第2直交板部50cと、第2固定接触子14の第3導電板部14dとが永久磁石中心線MLに沿って平行に延在している。このため、互いに平行に延在する第1直交板部50bを流れる電流の方向と第1固定接触子13の第3導電板部13dを流れる電流の方向とが逆方向となり、互いに平行に延在する第2直交板部50cと第2固定接触子14の第3導電板部14dを流れる電流の方向とが逆方向となり、可動接触子50に対して電磁反発力に抗する大きなローレンツ力が発生する。
【0041】
したがって、第2実施形態の電磁接触器1は、接点機構2が閉極状態となるときに、可動接触子50には第1固定接触子13および第2固定接触子14による電磁反発力に抗する大きなローレンツ力が作用するので、過電流耐量性能をより向上させることができる。
一方、接点機構2が開極状態となると、可動接触子50の第1可動接点51aおよび第2可動接点51bと、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続される。
【0042】
図7に示すように、可動接触子50の第1可動接点51aと、第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1アーク消弧用永久磁石40のN極から出て第2アーク消弧用永久磁石41のS極に流れる磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F1によって引き延ばされる。
可動接触子50の第1可動接点51a及び第1固定接触子13は、永久磁石中心線MLに対して左側に寄った位置に配置されているので、ローレンツ力F1によってアークが引き延ばされる方向には、大きなアーク消弧空間S1が設けられている。これにより、アークは大きなアーク消弧空間S1に向けて十分に引き延ばされて消弧されていく。
【0043】
また、可動接触子50の第2可動接点51bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1及び第2アーク消弧用永久磁石40,41で発生する磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F2によって引き延ばされる。そして、第2可動接点51b及び第2固定接触子14は、永久磁石中心線MLに対して右側に寄った位置に配置されているので、ローレンツ力F2によってアークが引き延ばされる方向には、大きなアーク消弧空間S2が設けられ、アークは大きなアーク消弧空間S2に向けて十分に引き延ばされて消弧されていく。
【0044】
したがって、可動接触子50の第1可動接点51aと、第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークは、永久磁石中心線MLを超えて大きなアーク消弧空間S1に十分に引き延ばされ、可動接触子50の第2可動接点51bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークも、永久磁石中心線MLを超えて大きなアーク消弧空間S2に十分に引き延ばされていくので、消弧性能を高めることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、
図8及び
図9は、本発明に係る電磁接触器を構成する第3実施形態の接点機構2の内部を示すものである。なお、
図1から
図5で示した構成と同一構成部分は、同一符号を付して説明は省略する。
第3実施形態の接点機構2は、第1実施形態と同様に、永久磁石中心線MLに対して左側に寄った位置に配置されている第1固定接触子13と、永久磁石中心線MLに対して右側に寄った位置に配置されている第2固定接触子14と、第1及び第2固定接触子13,14に接離可能に配置された可動接触子15と、を備えている。
【0046】
そして、第1実施形態と同様に可動接触子15は、可動接触子15の第1可動接点15a及び第2可動接点15bを結ぶ直線を可動接触子中心線KL1が永久磁石中心線MLに対して交差するように配置されている。
ここで、第3実施形態の第1固定接触子13は、
図9に示すように、第1固定接点13aを上面に設けた第1導電板部13bと、第1導電板部13bの上方において平行な第3導電板部13dとが、永久磁石中心線MLに対して直交する方向に延在し、第1導電板部13b及び第3導電板部13dの間の開口部が右側を向くように配置され、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されている。
【0047】
また、第3実施形態の第2固定接触子14も、第1可動接点14aを上面に設けた第1導電板部14bと、第1導電板部14bの上方において平行に延在する第3導電板部14dとが、永久磁石中心線MLに対して直交する方向に延在し、第1導電板部14b及び第3導電板部14dの間の開口部が左側を向くように配置され、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されている。
第3実施形態の電磁接触器1によると、接点機構2が開極状態となると、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第2可動接点15bと、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続される。
【0048】
可動接触子15の第1可動接点15aと、第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1アーク消弧用永久磁石40のN極から出て第2アーク消弧用永久磁石41のS極に流れる磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F1によって引き延ばされる。
このとき、
図9に示すように、第1固定接触子13は、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されており、第1固定接触子13の第2導電板部13cは、第1アーク消弧用永久磁石40を遮る位置には配置されていない。したがって、第1可動接点15a及び第1固定接点13aの間に発生したアークを第1アーク消弧用永久磁石40に近づけることができ、アークに対して大きなローレンツ力F1を作用することができる。
【0049】
また、可動接触子15の第2可動接点15bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1及び第2アーク消弧用永久磁石40,41で発生する磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F2によって引き延ばされる。
このとき、第2固定接触子14は、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されており、第2固定接触子14の第2導電板部14cは、第2アーク消弧用永久磁石41を遮る位置には配置されていない。したがって、第2可動接点15b及び第2固定接点14aの間に発生したアークを第2アーク消弧用永久磁石41に近づけることができ、アークに対して大きなローレンツ力F2を作用することができる。
【0050】
したがって、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークと、可動接触子15の第2可動接点15bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークに大きなローレンツ力F1、F2が作用するので、永久磁石中心線MLを超えてアーク消弧空間S1,S2に十分に引き延ばされていき、消弧性能を高めることができる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、
図10及び
図11は、本発明に係る電磁接触器を構成する第4実施形態の接点機構2の内部を示すものである。なお、
図1から
図5で示した構成と同一構成部分は、同一符号を付して説明は省略する。
第4実施形態の接点機構2は、第1固定接触子13及び第2固定接触子14の配置を、第3実施形態と同様の配置としている。また、第1及び第2固定接触子13,14に接離可能に可動接触子52が配置されている。
【0052】
第3実施形態の第1固定接触子13は、第1固定接点13aを上面に設けた第1導電板部13bと、第1導電板部13bの上方において平行な第3導電板部13dとが、永久磁石中心線MLに対して直交する方向に延在し、第1導電板部13b及び第3導電板部13dの間の開口部が
図11の右側を向くように配置され、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されている。
また、第2固定接触子14は、第1可動接点14aを上面に設けた第1導電板部14bと、第1導電板部14bの上方において平行に延在する第3導電板部14dとが、永久磁石中心線MLに対して直交する方向に延在し、第1導電板部14b及び第3導電板部14dの間の開口部が
図11の左側を向くように配置され、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されている。
【0053】
第4実施形態の可動接触子52は、
図11に示すように、導電性の長尺板材であり、長手方向の中央部に貫通孔23が形成されている中間板部52aと、中間板部52aの長手方向の一端から中間板部52aに対して直交して延在している第1直交板部52bと、中間板部52aの長手方向の他端から第1直交板部52bに対して逆側の方向に中間板部52aに対して直交して延在している第2直交板部52cと、を備えている。
第1直交板部52bの先端側の下面には第1可動接点53aが形成されており、第2直交板部52cの先端側の下面には第2可動接点53bが形成されている。
【0054】
可動接触子52は、中間板部52aの貫通孔23に電磁石ユニット20の可動プランジャ22に固定された連結軸24が挿通されている。
そして、可動接触子52は、中間板部52aが永久磁石中心線MLに沿って延在し、第1直交板部52bおよび第2直交板部52cが永久磁石中心線MLに直交する方向に延在して配置されている。
これにより、可動接触子52の第1可動接点53a及び第2可動接点53bを結ぶ直線を可動接触子中心線KL3とすると、可動接触子中心線KL3が永久磁石中心線MLに対して交差するように可動接触子52が配置されている。
【0055】
第4実施形態の電磁接触器1によると、接点機構2が閉極状態となると、第1固定接触子13および第2固定接触子14と可動接触子52とを流れる電流によって、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aと可動接触子52との間に、可動接触子15を開極方向に移動させる電磁反発力が発生する。
第4実施形態の可動接触子52は、第1可動接点53aを形成している第1直交板部52bと、第1固定接触子13の第3導電板部13dとが永久磁石中心線MLに直交する方向に平行に延在し、第2可動接点53bを形成している第2直交板部52cと、第2固定接触子14の第3導電板部14dとが永久磁石中心線MLに直交する方向に平行に延在している。このため、互いに平行に延在する第1直交板部52bを流れる電流の方向と第1固定接触子13の第3導電板部13dを流れる電流の方向とが逆方向となり、互いに平行に延在する第2直交板部52cと第2固定接触子14の第3導電板部14dを流れる電流の方向とが逆方向となり、可動接触子52に対して電磁反発力に抗する大きなローレンツ力が発生する。
【0056】
したがって、第4実施形態の電磁接触器1は、接点機構2が閉極状態となるときに、可動接触子52には第1固定接触子13および第2固定接触子14による電磁反発力に抗する大きなローレンツ力が作用するので、過電流耐量性能をより向上させることができる。
また、接点機構2が開極状態となると、可動接触子52の第1可動接点53aおよび第2可動接点53bと、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続される。
【0057】
可動接触子15の第1可動接点15aと、第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1アーク消弧用永久磁石40のN極から出て第2アーク消弧用永久磁石41のS極に流れる磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F1によって引き延ばされる。
このとき、
図11に示すように、第1固定接触子13は、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されており、第1固定接触子13の第2導電板部13cは、第1アーク消弧用永久磁石40を遮る位置には配置されていない。このため、第1可動接点15a及び第1固定接点13aの間に発生したアークを第1アーク消弧用永久磁石40に近づけることができ、アークに対して大きなローレンツ力F1を作用することができる。
【0058】
また、可動接触子52の第2可動接点53bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークは、アークの電流の流れ方向と、第1及び第2アーク消弧用永久磁石40,41で発生する磁束Φ1との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力F2によって引き延ばされる。
このとき、第2固定接触子14は、永久磁石中心線MLに沿う方向から見てC字形状となるように配置されており、第2固定接触子14の第2導電板部14cは、第2アーク消弧用永久磁石41を遮る位置には配置されていない。したがって、第2可動接点15b及び第2固定接点14aの間に発生したアークを第2アーク消弧用永久磁石41に近づけることができ、アークに対して大きなローレンツ力F2を作用することができる。
【0059】
したがって、第4実施形態の電磁接触器1は、可動接触子52の第1可動接点53aおよび第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークと、可動接触子52の第2可動接点53bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークに大きなローレンツ力F1、F2が作用するので、永久磁石中心線MLを超えてアーク消弧空間S1,S2に十分に引き延ばされていき、消弧性能を高めることができる。
【0060】
(第5,6実施形態)
次に、
図12は、本発明に係る電磁接触器を構成する第5実施形態の接点機構2の内部を示すものである。なお、
図12及び
図13において、
図1から
図5で示した構成と同一構成部分は同一符号を付して説明は省略する。
この第5実施形態は、
図8及び
図9で示した第3実施形態の第1固定接触子13及び第2固定接触子14を変形した構造である。
第5実施形態の第1固定接触子13は、第1固定接点13aを上面に設けた第1導電板部13bの端部から折り曲げられ下方に延在するアークランナー13eが形成されている。このアークランナー13eの下端は、
図12では示していないが、電磁石ユニット20の上部磁気ヨーク21を覆っている絶縁筒部18(
図2参照)の底部に向けて延在している。
【0061】
第5実施形態の第2固定接触子14も、第2固定接点14aを上面に設けた第1導電板部14bの端部から折り曲げられ下方に延在するアークランナー14eが形成されている。このアークランナー14eの下端も、絶縁筒部18の底部に向けて延在している。
第5実施形態の電磁接触器1によると、接点機構2が開極状態となると、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第2可動接点15bと、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続される。
【0062】
第1固定接点13aで発生したアークは、第1導電板部13bからアークランナー13eに移動し、絶縁筒部18の底部に誘導されていく。また、第2固定接点14aで発生したアークも、第1導電板部14bからアークランナー14eに移動し、絶縁筒部18の底部に誘導されていく。このように、第1固定接点13aおよび第2固定接点14aで発生したアークは引き延ばされていくので、分断・冷却されやすくなる。
したがって、第5実施形態の電磁接触器1は、可動接触子15の第1可動接点15aおよび第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークと、可動接触子15の第2可動接点15bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークに大きなローレンツ力F1、F2が作用するので、永久磁石中心線MLを超えてアーク消弧空間S1,S2に十分に引き延ばされていくとともに、第1固定接触子13にアークランナー13eを設け、第2固定接触子14にアークランナー14eを設けてアークを絶縁筒部18の底部に誘導することで、消弧性能をさらに高めることができる。
【0063】
さらに、
図13は、本発明に係る電磁接触器を構成する第6実施形態の接点機構2の内部を示すものである。
この第6実施形態は、
図10及び
図11で示した第4実施形態の接点機構2に、
図12で示したアークランナー13eを備えた第1固定接触子13と、アークランナー14eを備えた第2固定接触子14とを使用したものである。
第6実施形態の電磁接触器1によると、接点機構2が開極状態となると、可動接触子52の第1可動接点53aおよび第2可動接点53bと、第1固定接触子13の第1固定接点13aおよび第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続される。
【0064】
第1固定接点13aで発生したアークは、第1導電板部13bからアークランナー13eに移動し、絶縁筒部18の底部に誘導されていく。また、第2固定接点14aで発生したアークも、第1導電板部14bからアークランナー14eに移動し、絶縁筒部18の底部に誘導されていく。このように、第1固定接点13aおよび第2固定接点14aで発生したアークは引き延ばされていくので、分断・冷却されやすくなる。
したがって、第6実施形態の電磁接触器1も、可動接触子52の第1可動接点53aおよび第1固定接触子13の第1固定接点13aの間に発生したアークと、可動接触子52の第2可動接点53bと、第2固定接触子14の第1固定接点14aの間に発生したアークに大きなローレンツ力F1、F2が作用するので、永久磁石中心線MLを超えてアーク消弧空間S1,S2に十分に引き延ばされていくとともに、第1固定接触子13にアークランナー13eを設け、第2固定接触子14にアークランナー14eを設けてアークを絶縁筒部18の底部に誘導することで、消弧性能をさらに高めることができる。
【0065】
なお、本発明に記載されている接点収納ケースが、絶縁基板6および絶縁筒部18に対応し、本発明に記載されている第1可動接点部が、第2実施形態の第1直交板部50bと第4実施形態の第1直交板部52bに対応し、本発明に記載されている第2可動接点部が、第2実施形態の第2直交板部50cと第4実施形態の第2直交板部52cに対応している。また、本発明に記載されている対向板部が、第1主端子板43Aの中間板部43Aaおよび第2主端子板43Bの中間板部43Baに対応している。さらに、本発明に記載されている一対の突出部が、導体部11,12に対応している。
【符号の説明】
【0066】
1 電磁接触器
2 接点機構
4 ケース
5 角筒体
6 絶縁基板
7 フランジ部
9,10 貫通孔
11,12 導体部
13 第1固定接触子
13a 第1固定接点
13b 第1導電板部
13c 第2導電板部
13d 第3導電板部
13e アークランナー
14 第2固定接触子
14a 第2固定接点
14b 第1導電板部
14c 第2導電板部
14d 第3導電板部
14e アークランナー
15 可動接触子
15a 第1可動接点
15b 第2可動接点
18 絶縁筒部
20 電磁石ユニット
21 上部磁気ヨーク
21a 貫通孔
22 可動プランジャ
22a 周鍔部
23 貫通孔
24 連結軸
25 フランジ部
26 接触スプリング
27 Cリング
28 磁気ヨーク
29 固定プランジャ
30 スプール
31 中央円筒部
34 励磁コイル
35 キャップ
35a フランジ部
36 復帰スプリング
37 駆動用永久磁石
39 補助ヨーク
40 第1アーク消弧用永久磁石
41 第2アーク消弧用永久磁石
42 磁石支持体
43A 第1主端子板
43Aa 中間板部
43Ab 取付板部
43Ac 外部接続板部
43Ab1 挿通孔
43B 第2主端子板
43Ba 中間板部
43Bb 取付板部
43Bc 外部接続板部
43Bb1 挿通孔
44A、44B 固定ボルト
50 可動接触子
50a 中間板部
50b 第1直交板部
50c 第2直交板部
51a 第1可動接点
51b 第2可動接点
52 可動接触子
52a 中間板部
52b 第1直交板部
52c 第2直交板部
53a 第1可動接点
53b 第2可動接点
KL1,KL2、KL3 可動接触子中心線
ML 永久磁石中心線
MF 共通磁界
Φ1 磁束