(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】駐車支援装置および該方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
B60W30/06
(21)【出願番号】P 2018200145
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】宮原 陽洋
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 晴樹
【審査官】岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0093662(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0222252(US,A1)
【文献】国際公開第2015/033859(WO,A1)
【文献】実開平06-030809(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に制御信号を送信する通信端末を用い、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる駐車支援装置であって、
前記移動の際に進行方向における乗越え段差の有無を検出する段差検出部と、
前記段差検出部で段差有りを検出した場合に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する移動停止部と、
前記移動停止部で前記移動を停止した後に、前記通信端末から前記制御信号を受信した場合に、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開する移動再開部と、
前記車両を移動させるための動力を生成する動力部と、
前記動力部で生成された動力を、入り切り可能に駆動輪に伝達する動力伝達部とを備え、
前記移動停止部は、前記動力部で生成された動力の伝達を切るように前記動力伝達部を制御することで、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる、
駐車支援装置。
【請求項2】
前記所定の距離は、前記乗越え段差の検出位置から、前記移動の開始位置と前記乗越え段差の検出位置との間の位置までの距離である、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記移動再開部は、前記移動の停止前に前記動力部により生成された動力よりも大きな動力で、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開する、
請求項1
または請求項
2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記乗越え段差を乗り越えできたか否かを判定する乗越え可否判定部をさらに備え、
前記移動再開部は、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開した後に、前記乗越え可否判定部によって前記乗越え段差を乗り越えできないと判定された場合、前記移動を、再度、停止する、
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
車両に制御信号を送信する通信端末を用い、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる駐車支援方法であって、
前記移動の際に進行方向における乗越え段差の有無を検出する段差検出工程と、
前記段差検出工程で段差有りを検出した場合に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する移動停止工程と、
前記移動停止工程で前記移動を停止した後に、前記通信端末から前記制御信号を受信した場合に、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開する移動再開工程とを備え、
前記移動停止工程は、前記車両を移動させるための動力を生成する動力部で生成された動力の伝達を切るように、前記動力部で生成された動力を入り切り可能に駆動輪に伝達する動力伝達部を制御することで、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる、
駐車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車の際に車両を所定のスペースに誘導する駐車支援装置および駐車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車の際に車両を所定のスペースに誘導する技術が知られており、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されたハイブリッド車両の制御装置は、走行駆動力を発生する駆動源として少なくとも機能する回転電機と、前記走行駆動力を補う動力を発生する内燃機関と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、シフトレバーのポジションを検出するシフトポジション検出手段と、前記ハイブリッド車両の進行方向側で車輪に隣接する段差を検出する段差検出手段と、前記シフトポジション検出手段によって走行駆動用の特定のシフトポジションが選択されていることが検出され、前記内燃機関が始動しておらず、前記段差検出手段によって段差が検出されたことを条件として、前記内燃機関を始動させるように制御する内燃機関始動制御手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動駐車で路面の段差に当たって前記段差を乗り越える際に、前記段差の大きさや前記車両の大きな重量等から、出力トルクの不足で前記段差を乗り越え難い場合が生じ得る。前記特許文献1に開示されたハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関を始動することで出力トルクの不足を補う技術であるが、本発明では、これとは別の手段を提供するものである。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、助走を利用することで段差をより乗り越え易くできる駐車支援装置および駐車支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる駐車支援装置は、車両に制御信号を送信する通信端末を用い、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる駐車支援装置であって、前記移動の際に進行方向における乗越え段差の有無を検出する段差検出部と、前記段差検出部で段差有りを検出した場合に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する移動停止部と、前記移動停止部で前記移動を停止した後に、前記通信端末から前記制御信号を受信した場合に、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開する移動再開部と、前記車両を移動させるための動力を生成する動力部と、前記動力部で生成された動力を、入り切り可能に駆動輪に伝達する動力伝達部とを備え、前記移動停止部は、前記動力部で生成された動力の伝達を切るように前記動力伝達部を制御することで、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。
【0007】
このような駐車支援装置は、段差有りを検出した場合に、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する。このため、上記駐車支援装置は、前記移動を再開した場合、前記乗越え段差に当たる前に、前記所定の距離だけ助走を利用でき、障害物の段差をより乗り越え易くできる。上記駐車支援装置は、前記動力部で生成された動力の伝達を切るように前記動力伝達部を制御するので、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる際に、車両が乗越え段差に当たった場合に生じる反力を活用でき、その分、省エネルギー化できる。
【0008】
他の一態様では、上述の駐車支援装置において、前記所定の距離は、前記乗越え段差の検出位置から、前記移動の開始位置と前記乗越え段差の検出位置との間の位置までの距離である。
【0009】
前記移動の開始位置より、乗越え段差の検出位置から離間する方向に、何らかの物体が存在している場合が有り得る。上記駐車支援装置は、前記所定の距離が前記乗越え段差の検出位置から、前記移動の開始位置と前記乗越え段差の検出位置との間の位置までの距離であるので、上記場合に、車両が前記物体に衝突してしまうことを回避できる。
【0012】
好ましくは、上述の駐車支援装置において、前記車両の傾斜を検出する傾斜検出部と、前記車両を移動させるための動力を生成する動力部とをさらに備え、前記移動停止部は、前記傾斜検出部によって前記車両が前記進行方向に向かって降下する傾斜を検出した場合、前記動力部により生成される動力を用いることで、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。このような駐車支援装置は、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる際に、動力部により生成される動力を用いるので、前記進行方向に向かって降下する傾斜を持つ路面でも、より確実に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させることができる。
【0013】
他の一態様では、これら上述の駐車支援装置において、前記車両を移動させるための動力を生成する動力部をさらに備え、前記移動再開部は、前記移動の停止前に前記動力部により生成された動力よりも大きな動力で、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開する。
【0014】
このような駐車支援装置は、前記移動の停止前に動力部により生成された動力よりも大きな動力で、乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開するので、前記乗越え段差をより乗り越え易くなる。
【0015】
他の一態様では、これら上述の駐車支援装置において、前記乗越え段差を乗り越えできたか否かを判定する乗越え可否判定部をさらに備え、前記移動再開部は、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開した後に、前記乗越え可否判定部によって前記乗越え段差を乗り越えできないと判定された場合、前記移動を、再度、停止する。
【0016】
このような駐車支援装置は、前記移動の再開後に、乗越え段差を乗り越えることができないと判定された場合、前記移動を、再度、停止するので、前記再度の停止をせずに乗越え段差の乗り越えを続けた場合に生じ得る、例えば車両に与えるダメージ等の不都合を回避できる。
【0017】
本発明の他の一態様にかかる駐車支援方法は、車両に制御信号を送信する通信端末を用い、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる方法であって、前記移動の際に進行方向における乗越え段差の有無を検出する段差検出工程と、前記段差検出工程で段差有りを検出した場合に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する移動停止工程と、前記移動停止工程で前記移動を停止した後に、前記通信端末から前記制御信号を受信した場合に、前記乗越え段差を乗り越えるように前記移動を再開する移動再開工程とを備え、前記移動停止工程は、前記車両を移動させるための動力を生成する動力部で生成された動力の伝達を切るように、前記動力部で生成された動力を入り切り可能に駆動輪に伝達する動力伝達部を制御することで、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。
【0018】
このような駐車支援方法は、段差有りを検出した場合に、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する。このため、上記駐車支援方法は、前記移動を再開した場合、前記乗越え段差に当たる前に、前記所定の距離だけ助走を利用でき、障害物の乗越え段差をより乗り越え易くできる。上記駐車支援方法は、前記動力部で生成された動力の伝達を切るように前記動力伝達部を制御するので、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる際に、車両が乗越え段差に当たった場合に生じる反力を活用でき、その分、省エネルギー化できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる駐車支援装置および駐車支援方法は、助走を利用することで障害物をより乗り越え易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態における駐車支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】前記駐車支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】駐車動作において、前記駐車動作の開始の際における車両の様子を説明するための図である。
【
図4】路面が略水平である場合での駐車動作において、前記駐車動作の開始から前記段差を乗り越えるまでの車両の様子を説明するための図である。
【
図5】路面が進行方向に向かって降下している場合での駐車動作において、前記駐車動作の開始から前記段差を乗り越えるまでの車両の様子を説明するための図である。
【
図6】
図4または
図5に示す場合において、車両の移動状況および制動部の作動状況を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0022】
実施形態における駐車支援装置は、車両に制御信号を送信する通信端末を用い、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる装置であって、前記移動の際に進行方向における段差(乗越え段差)の有無を検出する段差検出部と、前記段差検出部で段差有りを検出した場合に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する移動停止部と、前記移動停止部で前記移動を停止した後に、前記通信端末から前記制御信号を受信した場合に、前記段差(乗越え段差)を乗り越えるように前記移動を再開する移動再開部とを備える。以下、より具体的に説明する。なお、下記では、乗越え段差を段差と略記する。
【0023】
図1は、実施形態における駐車支援装置の構成を示すブロック図である。実施形態における駐車支援装置PSは、例えば、
図1に示すように、制御処理部1と、通信部5と、記憶部6とを備え、さらに、本実施形態では、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる駐車動作の制御に当たって前記車両の周囲の状況や前記車両の状態を認識するために、ソナー7(7-1~7-4)と、カメラ8(8-1、8-2)と、車輪速センサ9と、傾斜センサ10とを備え、前記駐車動作を実現するために、動力部2aと、動力伝達部2bと、制動部3と、操舵部4とを備える。
【0024】
ソナー7は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、車両周囲の比較的近傍な検知範囲(例えば1.5m以内や1m以内等)において、物体の有無を検知し、車両から前記検知した物体までの距離を測定する装置である。ソナー7は、その結果(検知結果や測定結果)を制御処理部1へ出力する。ソナー7は、例えば、アクティブ超音波ソナーであり、車両の4つの各コーナーに配設される4個の第1ないし第4ソナー7-1~7-4を備える。前記アクティブ超音波ソナーは、一例では、超音波の送信波を送信し、前記送信波の反射波を受信する圧電素子、ならびに、前記検知範囲内での反射波を前記圧電素子で受信したか否かによって物体の有無を検知し、前記物体を検知した場合に、送信波の送信タイミングとその反射波の受信タイミングとの時間差および超音波の音速から前記物体までの距離を求める信号処理部等を備える。前記送信波の強度は、前記検知範囲に応じて適宜に設定される。
【0025】
カメラ8は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って画像を生成する装置である。本実施形態では、前後方向に移動して所定のスペースに車両を停止させるので、カメラ8は、例えば、車両における前方および後方それぞれの各画像を生成するために、2個の前方カメラ8-1および後方カメラ8-2を備える。前方カメラ8-1および後方カメラ8-2は、それぞれ、路面を含むように、車両の前方および後方それぞれを撮像するように、車両に搭載される。前方カメラ8-1は、例えば、車両内において、フロントガラス近傍の天井面(ルーフ内側面)に、路面を含むように、車両の前方を撮像するように、その撮影方向(光軸方向)を斜め下方に向けて配設される。これによって前方カメラ8-1は、前方の画像(前方画像)を生成し、この生成した前方画像を制御処理部1へ出力する。後方カメラ8-2は、例えば、車両の後端部に、路面を含むように、車両の後方を撮像するように、その撮影方向を斜め下方に向けて配設される。これによって後方カメラ8-2は、後方の画像(後方画像)を生成し、この生成した後方画像を制御処理部1へ出力する。一例では、カメラ8は、被写体の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記被写体の光学像を電気的な信号に変換するエリアイメージセンサ、および、エリアイメージセンサの出力を画像処理することで前記被写体の画像を表すデータである画像データを生成する画像処理部等を備えるデジタルカメラである。
【0026】
なお、車両の周囲の状況を認識するためのこれらソナー7およびカメラ8は、一例であって、これらに限定されるものではなく、例えば、互いに代替してソナー7およびカメラ8のいずれか一方であってあって良く、あるいは、他の装置、例えばレーダや距離画像センサ等が用いられても良い。
【0027】
車輪速センサ9は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って車輪の回転速度(車輪速)を測定する装置である。車輪速センサ9は、例えば、ロータリエンコーダおよびその周辺回路を備え、単位時間当たりの、車輪(車軸)における回転の変位量から車輪速を測定する。車輪速センサ9は、その測定した車輪速を制御処理部1へ出力する。
【0028】
傾斜センサ10は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、水平面に対する車両の傾き(傾斜角度)を測定する装置である。傾斜センサ10によって車両の傾きを測定することで、間接的に、路面の傾きが測定される。傾斜センサ10は、例えば、力学的な慣性(例えばコリオリ力等)あるいは光学的な干渉(例えばサニャック効果等)を利用したジャイロセンサおよびその周辺回路を備えて構成される。傾斜センサ10は、その測定した車両の傾きを制御処理部1へ出力する。
【0029】
動力部2aは、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って車両を駆動(移動)する動力を生成する装置である。動力部2aは、例えば、エンジン、モータおよびこれらのハイブリッド装置等の原動機およびその付属機器を備えて構成される。動力伝達部2bは、動力部2aが生成した動力を、入り切り可能に(断接可能に)駆動輪に伝達する機構であり、制御処理部1に接続され制御処理部1の制御に従って車両の進行方向の切り換え、動力伝達の入り切り(動力伝達の断接)およびギア比の切り換えを行うトランスミッションを含む。動力部2aが生成した動力は、動力伝達部2bを介して駆動輪に伝達され、駆動輪を回転させる。
【0030】
制動部3は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って車両に制動力を与え、車両を減速する装置である。制動部3は、車両を減速した結果、停止させることもでき、車両の停止中に制動力を与え続けた結果、車両の停止を維持することもできる。制動部3は、例えば、ディスクブレーキおよび回生ブレーキ等のブレーキ装置およびその付属機器を備えて構成される。なお、制動部3は、いわゆるパーキングブレーキ装置の機能を含む。
【0031】
操舵部4は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って車両の操舵を行う装置である。操舵部4は、車両の操舵輪の方向を変えるステアリング装置およびその付属機器を備えて構成される。
【0032】
動力部2aおよび制動部3それぞれを制御することで、車両の加速度が調整され、車輪速および車両の速度(車速)が調整される。動力伝達部2bの前記トランスミッションを制御することで、車両の進行方向(前進、後退)が調整される。操舵部4を制御することで、車両の走行方向が調整される。そして、動力伝達部2bの前記トランスミッションを、動力伝達を切るように(動力伝達が断となるように)、すなわち、ニュートラルとなるように制御することで、駆動輪がフリーとなり、外力の作用によって車両が移動可能となる。
【0033】
通信部5は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って所定の通信端末RT(
図3A参照)と通信を行う装置である。
【0034】
通信端末RTは、例えば、車両のドアの施解錠を行うキーフォブRT等である。本実施形態では、通信端末RTの一例のキーフォブRTは、施錠スイッチ、解錠スイッチ、通信アンテナ、通信部5と前記通信アンテナを介して例えば制御信号等の所定の通信信号を送受する通信回路およびその周辺回路を備えて構成され、前記施錠スイッチおよび解錠スイッチそれぞれの各入力操作に応じて前記ドアの施解錠を行うための制御信号(施解錠制御信号)を送信する。そして、本実施形態では、キーフォブRTは、さらに、駐車スイッチを備え、その前記通信回路は、前記駐車スイッチの第1入力操作(例えば1度押し操作等)によって、前後方向に移動して所定のスペースに前記車両を停止させる駐車動作の開始を指示するための制御信号(駐車開始制御信号)を通信部5に前記通信アンテナを介して送信し、前記第1入力操作と異なる、前記駐車スイッチの第2入力操作(例えば連続2度押し操作等)によって、後述のように段差の検出によって停止した移動の再開を指示するための制御信号(再開制御信号)を通信部5に前記通信アンテナを介して送信する。なお、上述では、前記駐車スイッチに対する互いに異なる第1および第2入力操作によって駐車開始制御信号および再開制御信号が送信されたが、これに限定されるものではなく、例えば、1回目の前記駐車スイッチの入力操作で駐車開始制御信号が送信され、この駐車開始制御信号の送信から所定の時間以内の2回目の前記駐車スイッチの入力操作で再開制御信号が送信されて良く、また例えば、2個の駐車開始制御信号用の第1駐車スイッチと、再開制御信号用の第2駐車スイッチとがキーフォブRTに備えられても良い。
【0035】
記憶部6は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、駐車支援装置PSの各部2a、2b、3~10を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、前後方向に移動して所定のスペースに車両を停止させる駐車処理プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記駐車処理プログラムには、前記所定のスペース中に停車位置を設定し(求め)、前後方向に車両を移動することで前記設定した停車位置まで予め設定された車速で車両を誘導する走行制御プログラムや、前記移動の際に進行方向(前記前後方向に沿う方向、前進方向または後退方向)における段差の有無を検出する段差検出プログラムや、前記段差検出プログラムで段差有りを検出した場合に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する移動停止プログラムや、前記移動停止プログラムで前記移動を停止した後に、通信端末(上述の例ではキーフォブ)RTから制御信号(上述の例では再開制御信号)を受信した場合に、前記段差を乗り越えるように前記移動を再開する移動再開プログラムや、前記段差を乗り越えできたか否かを判定する乗越え可否判定プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、各検出や各判定に用いられる各種の閾値等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。記憶部6は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部6は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0036】
制御処理部1は、駐車支援装置PSの各部2a、2b、3~10を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、ユーザの駐車操作を支援するために、前後方向に移動して所定のスペースに車両を停止させる駐車動作を制御するための回路である。制御処理部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11および駐車処理部12を機能的に備える。
【0037】
制御部11は、駐車支援装置PSの各部2a、2b、3~10を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、駐車支援装置PSの全体制御を司るものである。
【0038】
駐車処理部12は、前後方向に移動して所定のスペースに車両を停止させるものである。駐車処理部12は、走行制御部121、段差検出部122、移動停止部123、乗越え可否判定部124および移動再開部125を機能的に備える。
【0039】
走行制御部121は、所定のスペース中に停車位置を設定し(求め)、前後方向に車両を移動することで前記設定した停車位置まで予め設定された所定の車速で車両を誘導するものである。例えば、走行制御部121は、進行方向に配置されたカメラ8(例えば、後退で前記スペースに停車する場合には後方カメラ8-2、前進で前記スペースに停車する場合には前方カメラ8-1)で生成された画像からスペースを抽出し、この抽出したスペースにおける進行方向の終端(終端線や壁面等)やスペースに設置された車止め(輪止め)等を抽出し、この抽出した終端や車止め等から、車両の車長に基づいて予め設定された所定の長さだけ離れた位置を停車位置として設定する。前記スペースの抽出は、例えば、前記画像から、スペースを区画する境界線を、エッジ検出やハフ変換等の画像処理によって抽出することで実行される。また、ソナー7の結果が利用されても良い。そして、走行制御部121は、進行方向に向かうように動力伝達部2bの前記トランスミッションを制御し、前後方向に沿う進行方向となるように操舵部4を制御し、前記予め設定された所定の車速となるように動力部2aを制御し(必要に応じて制動部3も制御される)、前記停止位置に車両が停止するように制動部3および動力部2aを制御する。なお、前記前後方向の移動には、微調整の微小な操舵が伴っても良い。
【0040】
前記駐車動作の開始の際における進行方向は、例えば、ユーザの操作によるシフトレバー(セレクタレバー、セレクター)の位置を参照することによって決定される。また例えば、後退が前記駐車動作の開始の際における進行方向としてデフォルトで設定されても良い。
【0041】
段差検出部122は、前記移動の際に進行方向における段差の有無を検出するものである。例えば、段差検出部122は、車輪速センサ9で測定された車輪速に基づいて段差の有無を検出する。より具体的には、車両が段差に当たると車輪速が低下するので、段差検出部122は、車輪速センサ9で測定された車輪速が予め設定された閾値(第1段差判定閾値)以下となったか否かを判定することによって段差の有無を判定して検出する。また例えば、車輪にかかるトルクに基づいて前記段差の有無を検出する。より具体的には、車両が段差に当たると車輪にかかるトルクが増加するので、駐車支援装置PSは、車輪(車軸)にかかるトルクを測定するトルクセンサを備え、段差検出部122は、車輪(車軸)にかかるトルクが、前記予め設定された車速で車両を移動させる場合のトルク以上で予め設定された閾値(第2段差判定閾値)以上となったか否かを判定することによって段差の有無を判定して検出する。また、カメラ8の画像やソナー7の結果が利用されても良い。
【0042】
移動停止部123は、段差検出部122で段差有りを検出した場合に、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止するものである。より具体的には、移動停止部123は、動力部2aで生成された動力の伝達を切るように動力伝達部2bを制御することで、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。あるいは、移動停止部123は、動力部2aにより生成される動力を用いることで、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。より詳しくは、移動停止部123は、前記段差有りを検出した際に傾斜センサ10で測定された車両の傾き(路面の傾き)に基づいて、動力伝達部2bによる動力伝達を切るか、動力部2aにより生成される動力を用いるかのいずれかを選択し、この選択結果に応じて進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。前記段差有りを検出した際に傾斜センサ10で測定された車両の傾きが略水平である場合および進行方向とは逆方向に向かって降下している場合には、移動停止部123は、動力伝達部2bによる動力伝達を切ることで、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させ、一方、前記車両の傾きが進行方向に向かって降下している場合には、移動停止部123は、動力部2aにより生成される動力を用いることで、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる。一例では、車両の傾きが進行方向に向かって降下しているか否かを判定するための閾値(傾斜判定閾値)が予め適宜に設定され、前記段差有りを検出した際に傾斜センサ10で測定された車両の傾きが前記傾斜判定閾値を超えている場合には、移動停止部123は、前記車両の傾きが略水平である場合および進行方向とは逆方向に向かって降下している場合と判定し、前記車両の傾きが前記傾斜判定閾値以下である場合には、移動停止部123は、前記車両の傾きが進行方向に向かって降下している場合と判定する。この動力伝達部2bによる動力伝達を切る場合では、例えば、移動停止部123は、段差検出部122で段差有りを検出した場合に、所定の距離だけ車両を移動させるために、前記動力伝達を切るためにニュートラルとなるように動力伝達部2bの前記トランスミッションを制御し、段差によって車輪が弾性反発する際の反力で所定の距離だけ車両を移動させ、前記所定の距離だけ車両が移動すると、制動部3を制御することで前記移動を停止する。一方、この動力部2aにより生成される動力を用いる場合では、例えば、移動停止部123は、段差検出部122で段差有りを検出した場合に、この段差有りを検出した際の進行方向とは逆方向が新たな進行方向となるように、動力伝達部2bの前記トランスミッションを制御し、所定の距離だけ車両が移動するように動力部2aを制御し、前記所定の距離だけ車両が移動すると、制動部3を制御することで前記移動を停止する。前記移動の停止に際し、移動停止部123は、動力部2aによる動力の生成を停止し、制動部3により前記移動を停止し、かつ、前記停止を維持して良いが、本実施形態では、移動停止部123は、動力部2aによる動力の生成を停止せずに、制動部3により前記移動を停止し、かつ、前記停止を維持する。前記所定の距離は、段差を乗り越えるための助走に用いられる長さであり、段差の検出位置から、前記移動の開始位置と前記段差の検出位置との間の位置までの距離で予め適宜に設定される。前記所定の距離は、例えば、前記助走の観点から、5cm、10cm、15cm等に設定される。車両の移動距離は、車輪速センサ9で測定される車輪(車軸)における回転の変位量から測定できる。なお、前記車両の傾きが進行方向に向かって降下している場合では、助走の際に、車両に重力加速度が作用するので、前記車両の傾きが進行方向に向かって降下している場合における前記所定の距離は、前記車両の傾きが略水平である場合および進行方向とは逆方向に向かって降下している場合における前記所定の距離に較べて短くても良い。
【0043】
乗越え可否判定部124は、段差を乗り越えできたか否かを判定するものである。より具体的には、本実施形態では、車輪速センサ9が車輪(車軸)における回転の変位量を測定しているので、乗越え可否判定部124は、この変位量および車輪速(または車輪にかかるトルク)に基づいて前記段差を乗り越えできたか否かを判定する。より詳しくは、例えば車両の仕様等に応じて乗り越えて良い段差の高さ(例えば6cm、8cm、10cm等)が予め適宜に設定され、この設定された段差の高さを越えるために必要な車輪における回転の変位量に基づいて適宜に閾値(乗越え可否変位閾値)が設定される。ここで、車輪における回転の変位量が同じでも、車輪の半径が異なると移動距離が異なるので、前記乗越え可否閾値の設定の際には車輪の半径が考慮される。そして、乗越え可否判定部124は、移動再開部125による前記移動の再開から、車輪速センサ9で測定された車輪における回転の変位量が乗越え可否閾値以上となったか否かを判定し、前記回転の変位量が乗越え可否閾値以上となった場合に、車輪速センサ9で測定された車輪速が前記第1段差判定閾値以下であるか否かを判定することによって(あるいは、車輪にかかるトルクが前記第2段差判定閾値以上であるか否かを判定することによって)、前記段差を乗り越えできたか否かを判定する。前記回転の変位量が乗越え可否閾値以上となった場合に、車輪速センサ9で測定された車輪速が前記第1段差判定閾値以下である場合(あるいは、車輪にかかるトルクが前記第2段差判定閾値以上である場合)には、乗越え可否判定部124は、前記段差を乗り越えできないと判定する。一方、前記回転の変位量が乗越え可否閾値以上となった場合に、車輪速センサ9で測定された車輪速が前記第1段差判定閾値以下ではない場合(あるいは、車輪にかかるトルクが前記第2段差判定閾値以上ではない場合)には、乗越え可否判定部124は、前記段差を乗り越えできたと判定する。
【0044】
移動再開部125は、移動停止部123で前記移動を停止した後に、通信端末(上述の例ではキーフォブ)RTから制御信号(上述の例では再開制御信号)を受信した場合に、段差を乗り越えるように前記移動を再開するものである。そして、本実施形態では、移動再開部125は、段差を乗り越えるように前記移動を再開した後に、乗越え可否判定部124によって前記段差を乗り越えできないと判定された場合、前記移動を、再度、停止する。
【0045】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図2は、前記駐車支援装置の動作を示すフローチャートである。
図3は、駐車動作において、前記駐車動作の開始の際における車両の様子を説明するための図である。
図3Aは、上方から見た場合の図であり、
図3Bは、側方から見た場合の図である。
図4は、路面が略水平である場合での駐車動作において、前記駐車動作の開始から前記段差を乗り越えるまでの車両の様子を説明するための図である。
図5は、路面が進行方向に向かって降下している場合での駐車動作において、前記駐車動作の開始から前記段差を乗り越えるまでの車両の様子を説明するための図である。なお、
図5の各図には、路面の傾斜を分かり易くするために、破線で水平面が表されている。
図4Aおよび
図5Aは、前記駐車動作を開始して後退の進行方向で移動している車両VCの様子を示し、
図4Bおよび
図5Bは、前記後退の進行方向で段差STに当たった車両VCの様子を示し、
図4Cおよび
図5Cは、段差STに当たった後に、助走のために所定の距離だけ前進した車両VCの様子を示し、
図4Dおよび
図5Dは、段差STを乗り越えた車両VCの様子を示す。
図6は、
図4または
図5に示す場合において、車両の移動状況および制動部の作動状況を表すタイムチャートである。
図6Aは、前記駐車動作の際における車両VCの移動状況を表すタイムチャートであり、
図6Bは、前記駐車動作の際における制動部3の作動状況を表すタイムチャートである。
【0046】
このような駐車支援装置PSは、車両VCが稼働を始めると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部1には、制御部11および駐車処理部12が機能的に構成され、駐車処理部12には、走行制御部121、段差検出部122、移動停止部123、乗越え可否判定部124および移動再開部125が機能的に構成される。
【0047】
まず、ユーザUSは、
図3Aおよび
図3Bに示すように、空いているスペースSPを探し、前後方向に移動して前記空いているスペースSPに車両VCが停止できるように、車両VCを移動して前記空いているスペースSPの出入口前で停止し、シフトレバーを後退(バック、B)の位置にセットし、降車する。このように前記空いているスペースSPに車両VCを停止する前に降車するので、前記空いているスペースSPの横に他の車両が停止している場合でも、ユーザUSは、前記他の車両を気遣うことなく降車できる。特に、同乗者が比較的低年齢の子どもである場合に、前記観点から安心して前記子どもを降車させることができ、好ましく、また荷物を下ろす場合に、前記観点から安易に荷物を下ろすことができ、好ましい。そして、ユーザUSは、前後方向に移動してスペースSPに車両VCを停止させる駐車動作の開始を車両VCの駐車支援装置PSに指示するために、通信端末RTを入力操作する。上述の例では、ユーザUSは、キーフォブRTの駐車スイッチを1度押す第1入力操作を行う。以下、この動作説明では「通信端末RT」に代え、その一例である「キーフォブRT」を用いて説明する。キーフォブRTは、前記駐車スイッチから前記第1入力操作を受け付けると、前記駐車開始制御信号を送信する。
【0048】
図2において、キーフォブRTから通信部5を介して前記駐車開始制御信号を受信することによって、駐車開始の指示を受信すると(S11)、例えば
図4Aおよび
図5Aに示すように、車両VCは、駐車の移動を開始して移動する(S12)。より具体的には、制御処理部1は、駐車処理部12の走行制御部121によって、スペースSP中に上述のように停止位置を設定し、前後方向、
図3ないし
図5に示す例では後退で車両を移動することでこの設定した停車位置まで所定の車速で車両を誘導する。
【0049】
次に、制御処理部1は、駐車処理部12の走行制御部121によって、車両VCが前記停止位置に到達することによって駐車の移動が終了したか否かを判定する(S13)。例えば、走行制御部121は、車輪速センサ9で測定された回転の変位量に基づいて、駐車の移動を開始した開始位置から前記停止位置までの距離(駐車必要移動距離)を車両VCが移動(走行)したか否かによって、前記駐車の移動が終了したか否かを判定する。また例えば、カメラ8(この例では後方カメラ8-2)で生成された画像から、前記停止位置に車両VCが到達したか否かを判定することによって、前記駐車の移動が終了したか否かを判定する。この判定の結果、車両VCが前記停止位置に到達している場合(Yes)には、走行制御部121は、前記駐車の移動を終了し、パーキングブレーキがかかるように制動部3を制御し、本駐車動作を終了する。すなわち、スペースSPに段差STが存在しなければ、このように駐車動作が終了される。一方、前記判定の結果、車両VCが前記停止位置に到達していない場合(No)には、制御処理部1は、次に、駐車処理部12の段差検出部122によって、処理S14を実行する。
【0050】
この処理S14では、段差検出部122は、前記駐車の移動の際に進行方向、この例では後退の進行方向における段差の有無を判定する。より具体的には、本実施形態では、段差検出部122は、車輪速センサ9で測定された車輪速が前記第1段差判定閾値以下となったか否かを判定する。この判定の結果、前記車輪速が前記第1段差判定閾値以下となった場合に段差有りと判定し(Yes)、制御処理部1は、次に、駐車処理部12の移動停止部123によって、処理S15を実行する。一方、前記判定の結果、前記車輪速が前記第1段差判定閾値以下ではない場合に段差無しと判定し(No)、制御処理部1は、処理を処理S13に戻す。
【0051】
したがって、前記駐車の移動を開始すると、前記駐車の移動が終了するか、あるいは、前記段差が検出されるかまで、処理S13と処理S14とが繰り返し実行され、前記駐車の移動が終了すると、本駐車動作が終了される一方で、前記段差が検出されると、処理S15が実行される。
図3ないし
図5に示す例では、スペースSPに段差STが在るので、前記駐車の移動中に、
図4Bおよび
図5Bに示すように、車両VCが段差STに当たり、処理S14の次に処理S15が実行される。
【0052】
この処理S15では、移動停止部123は、路面の傾きを判定するために、傾斜センサ10で測定された車両VCの傾きを判定する。より具体的には、本実施形態では、移動停止部123は、前記段差有りを検出した際に傾斜センサ10で測定された車両VCの傾きと前記傾斜判定閾値とを比較し、その比較の結果、前記車両VCの傾きが前記傾斜判定閾値を超えている場合には、移動停止部123は、前記車両VCの傾きが略水平である場合および進行方向とは逆方向に向かって降下している場合と判定し(No)、次に、処理S16および処理S18を順次に実行し、一方、前記比較の結果、前記車両VCの傾きが前記傾斜判定閾値以下である場合には、移動停止部123は、前記車両VCの傾きが進行方向に向かって降下している場合と判定し(Yes)、次に、処理S17および処理S18を順次に実行する。したがって、
図4に示す例では、処理S16および処理S18が順次に実行される一方、
図5に示す例では、処理S17および処理S18が順次に実行される。
【0053】
この処理S16では、移動停止部123は、動力部2aで生成された動力の伝達を切るように動力伝達部2bを制御することで、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両VCを移動させる。より具体的には、例えば、移動停止部123は、段差検出部122で段差有りを検出した場合に、
図4Cに示すように、ニュートラルとなるように動力伝達部2bの前記トランスミッションを制御し、段差STによって車輪が弾性反発する際の反力で所定の距離LGだけ車両VCを移動させ、前記距離LGだけ車両VCが移動すると、制動部3を制御することで前記移動を停止する。
【0054】
前記処理S17では、移動停止部123は、動力部2aにより生成される動力を用いることで、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両VCを移動させる。より具体的には、例えば、移動停止部123は、段差検出部122で段差有りを検出した場合に、この段差有りを検出した際の進行方向とは逆方向が新たな進行方向となるように、動力伝達部2bの前記トランスミッションを制御し、
図5Cに示すように、所定の距離LGだけ車両VCが移動するように動力部2aを制御し、前記距離LGだけ車両VCが移動すると、制動部3を制御することで前記移動を停止する。
【0055】
ここで、この駐車の移動の停止では、上述したように、移動停止部123は、動力部2aによる動力の生成を停止せずに、制動部3により前記移動を停止し、かつ、前記停止を維持する。
【0056】
前記処理S16の実行後または前記処理S17の実行後に実行される処理S18では、移動再開部125は、キーフォブRTから通信部5を介して前記再開制御信号を受信したか否かを判定することによって、前記移動を再開する指示を受信したか否かを判定する。この判定の結果、前記再開制御信号の受信によって前記移動を再開する指示を受信した場合(Yes)には、移動再開部125は、次に、処理S19を実行し、一方、前記再開制御信号の未受信によって前記移動を再開する指示を受信していない場合(No)には、移動再開部125は、処理を処理S18に戻す。したがって、制御処理部は、移動再開部125によって、前記移動を再開する指示を受信するまで、処理S18を繰り返し実行する。
【0057】
ユーザUSは、前記駐車の移動中に、前記移動の停止を認識すると、前記駐車の移動を再開させるために、キーフォブRTを入力操作する。上述の例では、ユーザUSは、キーフォブRTの駐車スイッチを連続2度押す第2入力操作を行う。キーフォブRTは、前記駐車スイッチから前記第2入力操作を受け付けると、前記再開制御信号を送信する。
【0058】
キーフォブRTから通信部5を介して前記再開制御信号を受信することによって、前記移動を再開する指示を受信すると、上述のように、処理S18の次に処理S19が実行される。この処理S19では、移動再開部125は、前記段差を乗り越えるように前記駐車の移動を再開して移動する。
【0059】
処理S19の次に、制御処理部1は、駐車処理部12の乗越え可否判定部124によって、前記段差を乗り越えできたか否かを判定する。この判定の結果、前記段差を乗り越えできたと判定した場合(Yes)には、制御処理部1は、次に、走行制御部121によって、処理S21を実行し、一方、前記段差を乗り越えできないと判定した場合(No)には、制御処理部1は、次に、移動再開部125によって、処理S22を実行する。
【0060】
この処理S21では、上述の処理S13と同様に、走行制御部121は、車両VCが前記停止位置に到達することによって前記駐車の移動が終了したか否かを判定する(S13)。この判定の結果、車両VCが前記停止位置に到達している場合(Yes)には、走行制御部121は、前記駐車の移動を終了し、パーキングブレーキがかかるように制動部3を制御し、本駐車動作を終了する。一方、前記判定の結果、車両VCが前記停止位置に到達していない場合(No)には、制御処理部1は、次に、駐車処理部12の段差検出部122によって、処理S14を実行する。したがって、前記移動の再開後に、別の段差があれば、上述と同様に各処理が実行される。
【0061】
前記処理S22では、移動再開部125は、前記移動を、再度、停止し、所定のエラー処理を実行し、本駐車動作を終了する。前記所定のエラー処理は、例えば、警告音やアナウンス等によって、前記段差を乗り越えることができないことをユーザUSに報知する処理等である。
【0062】
段差STを乗り越えできる場合には、
図4Cおよび
図5Cに示す車両VCは、
図4Dおよび
図5Dに示すように、助走をつけて段差STを乗り越えてスペースSPに駐車される。
【0063】
このような各処理による駐車動作において、車両VCの移動状況と制動部3の作動状況との関係では、車両VCが段差STに当たる場合、キーフォブRTから駐車開始の指示が受信され、前記駐車の移動が開始されると、車両VCは、上述の例では、
図4A、
図5Aおよび
図6Aに示すように、後退で移動し、
図4Bおよび
図5Bに示すように、経過時間T1で車両VCが段差STに当たって、
図6Aに示すように、後退の移動が段差STで阻害され、経過時間T2で段差検出部122によって段差有りが判定され、
図4C、
図5C、
図6Aおよび
図6Bに示すように、反力または動力によって後退とは逆方向の前進で所定の距離LGだけ車両VCを移動させた後の経過時間T3で制動部3による制動力が働き、前記駐車の移動が停止される。そして、キーフォブRTから移動再開の指示が受信されると、
図6Bに示すように、経過時間T4で制動部3による制動力が解消されて、
図6Aに示すように、車両VCが後退で移動を再開し、
図4Dおよび
図5Dに示すように、車両VCが段差STを乗り越えて後退で移動し、車両VCが前記停止位置に到達すると、
図6Aおよび
図6Bに示すように、経過時間T5で制動部3により制動力が働いて後退の移動が停止され、制動部3によりパーキングブレーキがかけられる。なお、移動再開部125は、前記移動の停止前に動力部2aにより生成された動力と同じ大きさの動力で、段差STを乗り越えるように前記移動を再開して良いが、段差STをより乗り越え易くするために、移動再開部125は、前記移動の停止前に動力部2aにより生成された動力よりも大きな動力で、段差STを乗り越えるように前記移動を再開しても良い。
【0064】
以上説明したように、実施形態における駐車支援装置PSおよびこれに実装された駐車支援方法は、段差有りを検出した場合に、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させた後に、前記移動を停止する。このため、上記駐車支援装置PSおよび駐車支援方法は、前記移動を再開した場合、前記段差に当たる前に、前記所定の距離だけ助走を利用でき、障害物の段差をより乗り越え易くできる。
【0065】
前記移動の開始位置より、段差の検出位置から離間する方向に、何らかの物体が存在している場合が有り得る。上記駐車支援装置PSおよび駐車支援方法は、前記所定の距離が前記段差の検出位置から、前記移動の開始位置と前記段差の検出位置との間の位置までの距離であるので、上記場合に、車両が前記物体に衝突してしまうことを回避できる。
【0066】
上記駐車支援装置PSおよび駐車支援方法は、動力部2aで生成された動力の伝達を切るように動力伝達部2bを制御するので、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる際に、車両が段差に当たった場合に生じる反力を活用でき、その分、省エネルギー化できる。
【0067】
上記駐車支援装置PSおよび駐車支援方法は、進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させる際に、動力部2aにより生成される動力を用いるので、前記進行方向に向かって降下する傾斜を持つ路面でも、より確実に、前記進行方向とは逆方向に所定の距離だけ車両を移動させることができる。
【0068】
上記駐車支援装置PSおよび駐車支援方法は、前記移動の再開後に、段差を乗り越えることができないと判定された場合、前記移動を、再度、停止するので、前記再度の停止をせずに前記段差の乗り越えを続けた場合に生じ得る、例えば車両に与えるダメージ等の不都合を回避できる。
【0069】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0070】
VC 車両
PS 駐車支援装置
ST 段差
SP スペース
1 制御処理部
2a 動力部
2b 動力伝達部
3 制動部
4 操舵部
5 通信部
6 記憶部
7(7-1~7-4) ソナー
8(8-1、8-2) 撮像装置
9 車輪速センサ
10 傾斜センサ
11 制御部
12 駐車処理部
121 走行制御部
122 段差検出部
123 移動停止部
124 乗越え可否判定部
125 移動再開部