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特許7077947シロキサン樹脂組成物、それを用いた接着剤、表示装置、半導体装置および照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】シロキサン樹脂組成物、それを用いた接着剤、表示装置、半導体装置および照明装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20220524BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20220524BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20220524BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220524BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220524BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220524BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20220524BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20220524BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C08F290/14
C09J183/06
C09J183/07
H05B33/14 A
H05B33/04
H01L27/32
G03F7/075 511
C08L83/07
C08G77/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018533701
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023623
(87)【国際公開番号】W WO2019026458
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017149878
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 英祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 美智子
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 充史
(72)【発明者】
【氏名】鴨川 政雄
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-39056(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156520(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/
C08G77/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造、下記一般式(2)で表される構造および下記一般式(3)で表される構造を含むシロキサン樹脂(A)、不飽和二重結合を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含有し、
前記シロキサン樹脂(A)において、一般式(1)中のXが、オクテニル基、グリシジルオキシペンチル基、グリシジルオキシヘキシル基、グリシジルオキシヘプチル基、グリシジルオキシオクチル基、グリシジルオキシノニル基、グリシジルオキシデシル基のいずれかであるシロキサン樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)~(3)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、シロキサン結合を有する基または炭素数1~30の1価の有機基を表す。Xはグリシジル基、オキセタニル基、ビニル基のいずれかを有する炭素数が8以上の1価の有機基を表す。Yは(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基を表す。Zはカルボキシル基を有する1価の有機基を表す。a、bおよびcはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。a~cが2以上の場合、複数のR、R、R、X、YおよびZはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
さらに、光酸発生剤(E)を含有する請求項1記載のシロキサン樹脂組成物。
【請求項3】
前記シロキサン樹脂(A)において、R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合が10~80モル%である請求項1または2に記載のシロキサン樹脂組成物。
【請求項4】
前記シロキサン樹脂(A)において、a、bおよびcの総和に対するaの割合が10~60%、bの割合が20~60%、cの割合が5~35%である請求項1~3のいずれか一項に記載のシロキサン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のシロキサン樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のシロキサン樹脂組成物を硬化させてなる、膜厚が10~200μmである硬化物。
【請求項7】
液晶セル、有機ELセル、ミニLEDセル、および、マイクロLEDセルからなる群から選ばれる少なくとも一つ、および、基板、請求項に記載の硬化物、を有する表示装置。
【請求項8】
請求項に記載の硬化物を有する半導体装置。
【請求項9】
請求項に記載の硬化物を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン樹脂組成物とそれを用いた接着剤とそれを有する表示装置、半導体装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ型表示装置、光学デバイス半導体装置、LED照明装置をはじめ、多くの電子機器の組立てに接着剤が使用されている。ディスプレイ型表示装置の構成部材であるカバーレンズ、タッチパネルセンサー、ディスプレイモジュールなどの貼合せには、液状タイプやフィルムタイプの光学接着剤が一般的に使用されており、接着力の強いアクリル系樹脂を主成分とする光学接着剤が広く使用されている。近年の電子機器の小型化に伴い、これらの光学接着剤には、高い接着性と微細パターン加工性が求められている。
【0003】
優れた接着性を有する光学接着剤として、例えば、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシル基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、および、ポリエーテル骨格を有し、かつ少なくとも1つの末端に反応性シリル基を有するポリエーテル化合物を含有する組成物からなる光学フィルム用粘着剤組成物(例えば、特許文献1参照)や、一分子中にアルケニル基を2つ有するオルガノシロキサン、一分子中にヒドロシリル基を2つ有するオルガノシロキサン、1分子中にアルケニル基とヒドロシリル基を合わせて3つ以上有する架橋剤およびヒドロシリル化触媒を含有するシリコーン系硬化性組成物からなる光学接着剤(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-255172号公報
【文献】特開2012-62424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~2に記載の技術は、接着性に優れるものの、微細パターン加工性が不十分であり、特にミクロンサイズの微細加工が困難である課題があった。そこで本発明は、接着性および微細パターン加工性に優れるシロキサン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、特定の化学構造を有するシロキサン樹脂を用いることにより、接着性および微細パターン加工性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、上記目的を達成するため、本発明は主として以下の構成を採用する。
下記一般式(1)で表される構造、下記一般式(2)で表される構造および下記一般式(3)で表される構造を含むシロキサン樹脂(A)、不飽和二重結合を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含有するシロキサン樹脂組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
一般式(1)~(3)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、シロキサン結合を有する基または炭素数1~30の1価の有機基を表す。Xはアルケニル基、アルキニル基、窒素原子と炭素-酸素不飽和結合とを有する1価の有機基または環式エーテル結合を有する1価の有機基を表す。Yは光ラジカル重合性基(ただし、アルケニル基およびアルキニル基を除く)を有する1価の有機基を表す。Zはアルカリ可溶性基を有する1価の有機基を表す。a、bおよびcはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。a~cが2以上の場合、複数のR、R、R、X、YおよびZはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシロキサン樹脂組成物は、接着性および微細パターン加工性に優れる。本発明のシロキサン樹脂組成物により、接着性に優れた微細パターンの硬化物を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシロキサン樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される構造、前記一般式(2)で表される構造および前記一般式(3)で表される構造を含むシロキサン樹脂(A)、不飽和二重結合を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含有する。シロキサン樹脂(A)中に前記一般式(1)で表される構造を含むことにより、接着性を発現し、複数の被着体を接着することができる。また、シロキサン樹脂(A)中に前記一般式(2)で表される構造を含むことにより、光硬化性を発現し、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性を向上させることができる。さらに、シロキサン樹脂(A)中に前記一般式(3)で表される構造を含むことにより、アルカリ現像液への溶解性を付与し、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性を向上させることができる。不飽和二重結合を有する化合物(B)は、光硬化性を発現し、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性を向上させる作用を有する。光重合開始剤(C)は、光硬化性を付与し、フォトリソグラフィ法による微細パターン形成を可能とする作用を有する。溶剤(D)は、シロキサン樹脂組成物を溶解して流動性を付与し、塗布性を向上させる作用を有する。
【0012】
本発明のシロキサン樹脂組成物において、シロキサン樹脂(A)とは、主鎖骨格にシロキサン結合を有する重合体を指す。主鎖骨格にシロキサン結合を有するシロキサン樹脂(A)は、シロキサン樹脂組成物を接着剤として用いる場合のリワーク性(貼り合わせ後、一度剥離して再度貼り合わせる場合の作業性)と耐候耐熱性に優れる。本発明におけるシロキサン樹脂(A)は下記一般式(1)で表される構造、下記一般式(2)で表される構造および下記一般式(3)で表される構造を含むことを特徴とする。
【0013】
【化2】
【0014】
一般式(1)~(3)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、シロキサン結合を有する基または炭素数1~30の1価の有機基を表す。炭素数1~30の1価の有機基としては、例えば、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、フェニル基などの炭素数6~30のアリーレン基、フェノキシ基などの炭素数6~30のアリールオキシ基などが挙げられる。これらの基において、水素の少なくとも一部は置換されていてもよい。これらの中でも、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基が好ましい。
【0015】
「炭素数1~30のアルキル基」としては、シロキサン樹脂の重合反応性を安定化させる観点から、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基がより好ましい。また、「炭素数1~30のアルコキシ基」としては、シロキサン樹脂の重合反応を速やかに進行させる観点から、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基がより好ましい。
【0016】
一般式(1)~(3)中、a、bおよびcはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。a~cが2以上の場合、複数のR、R、R、X、YおよびZはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。接着性および微細パターン加工性をより向上させる観点から、a~cはそれぞれ2以上が好ましく、5以上がより好ましい。一方、シロキサン樹脂(A)のアルカリ現像液への溶解性を向上させて微細パターン加工性をより向上させる観点から、a~cは300以下が好ましく、200以下がより好ましい。
【0017】
一般式(1)中、Xはアルケニル基、アルキニル基、窒素原子と炭素-酸素不飽和結合とを有する1価の有機基または環式エーテル結合を有する1価の有機基を表す。
【0018】
「アルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。「アルキニル基」としては、例えば、アセチレン基などが挙げられる。
【0019】
「窒素原子と炭素-酸素不飽和結合とを有する1価の有機基」としては、例えば、ウレア基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基などが挙げられる。
【0020】
「環状エーテル結合を有する1価の有機基」としては、例えば、グリシジル基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0021】
一般式(1)におけるXは、接着性をより向上させる観点から、ビニル基、環状エーテル結合を有する1価の有機基が好ましい。また、一般式(1)におけるXの炭素数は8以上が好ましい。Xの炭素数が8以上であると、シロキサン樹脂組成物の硬化物を屈曲させても破断し難く、硬化物の柔軟性を向上させることができる。また、シロキサン骨格に柔軟性が増すことで、クラック耐性をより向上することができる。
【0022】
一般式(2)中、Yは光ラジカル重合性基(ただし、アルケニル基およびアルキニル基を除く)を有する1価の有機基を表す。「光ラジカル重合性基」としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基などが挙げられる。これらの中でも、微細パターン加工性をより向上させる観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0023】
一般式(3)中、Zはアルカリ可溶性基を有する1価の有機基を表す。「アルカリ可溶性基」としては、例えば、カルボキシル基、チオール基、フェノール性水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性をより向上させる観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0024】
なお、シロキサン樹脂(A)が、X、YおよびZからなる群より選ばれる少なくとも2種の基を有する構造を有する場合、その構造は、一般式(1)~(3)のいずれかで表される構造のうち、該当する構造全てに当てはまるものとする。
【0025】
シロキサン樹脂(A)は、一般式(1)で表される構造、一般式(2)で表される構造および一般式(3)で表される構造を有するオルガノシラン化合物の加水分解・縮合物が好ましい。さらに他のオルガノシラン化合物との加水分解・縮合物であってもよい。シロキサン樹脂(A)は、これらのオルガノシラン化合物のブロック共重合体に限定されず、ランダム共重合体でもよい。
【0026】
一般式(1)で表される構造を有するオルガノシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルメチルジ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリスメトキシエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルエトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、ペンテニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘプテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシランなどのビニル基含有オルガノシラン化合物類や、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ(メトキシエトキシ)シラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルメチルジ(メトキシエトキシ)シラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルトリ(メトキシエトキシ)シラン、スチリルメチルジメトキシシラン、スチリルメチルジエトキシシラン、スチリルメチルジ(メトキシエトキシ)シランなどのアリル基含有オルガノシラン化合物類などのアルケニル基含有オルガノシラン化合物類;〔ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-イル〕トリエトキシシラン、(ブタ-3-イン-1-イルオキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン、tert-ブチルジメチル(2-プロピニロキシ)シラン、〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕カルバミン酸プロパルギルなどのアルキニル基含有オルガノシラン化合物類;ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどの窒素原子および炭素-酸素不飽和結合含有オルガノシラン化合物類;グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシブチルトリメトキシシラン、グリシジルオキシペンチルトリメトキシシラン、グリシジルオキシヘキシルトリメトキシシラン、グリシジルオキシヘプチルトリメトキシシラン、グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、グリシジルオキシノニルトリメトキシシラン、グリシジルオキシデシルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン2-(3,4-グリシジルオキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、オキセタニルトリメトキシシラン、オキセタニルトリエトキシシランなどの環状エーテル結合含有オルガノシラン化合物類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0027】
本発明における一般式(1)で表される構造を有するオルガノシラン化合物として、例として、ビニルトリメトキシシランの場合に一般式(1)を具体的に説明すると、aは1、Xはビニル基(-CH=CH)、Rはメトキシ基(-OCH)、紙面の右の結合はメチル基(-CH)、同じく左の結合はメトキシ基(-OCH)となる。以下の一般式(2)で表される構造を有するオルガノシラン化合物、一般式(3)で表される構造を有するオルガノシラン化合物も同様である。
【0028】
一般式(2)で表される構造を有するオルガノシラン化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロイルエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルエチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルトリ(メトキシエトキシ)シラン、(メタ)アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルプロピルジフェニルメトキシシラン、ジ(メタ)アクリロイルプロピルジメトキシシラン、トリ(メタ)アクリロイルプロピルメトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基含有オルガノシラン化合物類;トリメトキシシリルマレイミド、トリエトキシシリルマレイミドなどのマレイミド基含有オルガノシラン化合物類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0029】
一般式(3)で表される構造を有するオルガノシラン化合物としては、例えば、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリフェノキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリメトキシシリルプロピルフタル酸無水物、トリメトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物などのカルボキシル基含有オルガノシラン化合物類;メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのチオール基含有オルガノシラン化合物類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0030】
他のオルガノシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シラノール変性シロキサン、ヒドロシラン変性シロキサンなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0031】
シロキサン樹脂(A)において、R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合は、1~80モル%が好ましい。R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合が1モル%以上であると、シロキサン樹脂組成物の硬化物を屈曲させても破断し難く、硬化物の柔軟性を向上させることができる。また、シロキサン骨格に柔軟性が増すことから、クラック耐性をより向上させることができる。R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合は、10モル%以上がより好ましい。一方、R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合が80モル%以下であると、シロキサン樹脂組成物の光硬化性および熱硬化性を向上させ、接着性と微細パターン加工性をより向上させることができる。R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合は、70モル%以下がより好ましい。
【0032】
シロキサン樹脂(A)におけるR、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合は、例えば、シロキサン樹脂(A)に対して、核磁気共鳴装置(例えば、ブルカーアナリティク社製「AVANCE III HD」)を用いてシロキサン樹脂の29Si-核磁気共鳴スペクトルを測定し、炭素数1~30の炭化水素基が結合したSiのピーク面積とその他のSiのピーク面積の比を算出することにより求めることができる。また、シロキサン樹脂(A)に対して13C-核磁気共鳴装置を用いてシロキサン樹脂の13C-核磁気共鳴スペクトルを、シロキサン樹脂(A)の重クロロホルム溶液に対して、H-核磁気共鳴装置を用いてシロキサン樹脂のH-核磁気共鳴スペクトルを測定することで、炭化水素基の炭素数を求めることができる。
【0033】
シロキサン樹脂(A)において、a、bおよびcの総和に対するaの割合は、3~65%が好ましい。a、bおよびcの総和に対するaの割合が3%以上であると、接着性をより向上させることができる。a、bおよびcの総和に対するaの割合は、10%以上がより好ましい。一方、a、bおよびcの総和に対するaの割合が65%以下であると、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性をより向上させることができる。a、bおよびcの総和に対するaの割合は60%以下がより好ましい。
【0034】
シロキサン樹脂(A)において、a、bおよびcの総和に対するbの割合は、20~60%が好ましい。a、bおよびcの総和に対するbの割合が20%以上であると、ラジカル重合による架橋反応を十分に進行させることができ、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性をより向上させることができる。bの割合は、35%以上がより好ましい。一方、a、bおよびcの総和に対するbの割合が60%以下であると、より高精細なパターンを得ることができる。
【0035】
シロキサン樹脂(A)において、a、bおよびcの総和に対するcの割合は、5~35%が好ましい。a、bおよびcの総和に対するcの割合が5%以上であると、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性をより向上させることができる。一方、a、bおよびcの総和に対するcの割合が35%以下であると、現像後の膜減り率を減少することができる。
【0036】
シロキサン樹脂(A)におけるa、bおよびcの総和に対するa、b、cのそれぞれの割合は、例えば、以下の方法により算出することができる。まず、前記方法によりシロキサン樹脂の29Si-核磁気共鳴スペクトルを測定し、X、YまたはZが結合したSiのピーク面積とその他のSiのピーク面積の比を算出する。一方、シロキサン樹脂(A)の重クロロホルム溶液に対して、核磁気共鳴装置を用いてシロキサン樹脂(A)のH-核磁気共鳴スペクトルを測定し、X、YまたはZ由来のピーク面積と、シラノール基を除くその他のピーク面積との比から、シロキサン樹脂(A)中におけるX、YまたはZの含有割合を算出する。前述の29Si-核磁気共鳴スペクトルの結果と合わせて求めたXの含有量からaの割合を、Yの含有量からbの割合を、Zの含有量からcの割合を求め、その総和に対するa、b、cそれぞれの割合を算出することができる。
【0037】
シロキサン樹脂(A)が一般式(1)で表される構造、一般式(2)で表される構造および一般式(3)で表される構造を有するオルガノシラン化合物と、他のオルガノシラン化合物との加水分解・縮合物である場合、他のオルガノシラン化合物の量は、所望の特性を損なわない範囲で適宜設定することができる。a、bおよびcの総和(100%)に対して合計20%以下が好適である。
【0038】
シロキサン樹脂(A)の重量平均分子量は特に制限されないが、10,000以上70,000以下が好ましい。ここで、シロキサン樹脂(A)の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値を言う。
【0039】
シロキサン樹脂(A)は、一般式(1)で表される構造、一般式(2)で表される構造および一般式(3)で表される構造を有するオルガノシラン化合物および必要に応じて他のオルガノシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。例えば、オルガノシラン化合物を加水分解した後、得られるシラノール化合物を溶剤の存在下または無溶剤で縮合反応させることによって得ることができる。
【0040】
加水分解反応の各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して適宜設定することができる。例えば、溶剤中、オルガノシラン化合物に酸触媒または塩基触媒、および水を1~180分間かけて添加した後、室温~150℃で1~300分間反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。
【0041】
加水分解反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒としては、蟻酸、酢酸またはりん酸を含む酸性水溶液が好ましい。
【0042】
オルガノシラン化合物の加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、反応液をそのまま50℃以上、溶剤の沸点以下で1~100時間加熱し、縮合反応を行うことが好ましい。また、シロキサン樹脂(A)の重合度を上げるために、再加熱または塩基触媒添加を行ってもよい。
【0043】
オルガノシラン化合物の加水分解反応およびシラノール化合物の縮合反応に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、シロキサン樹脂組成物の塗布性を向上させる観点から、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが好ましく用いられる。
【0044】
加水分解反応によって溶剤が生成する場合には、無溶剤で加水分解させることも可能である。反応終了後に、さらに溶剤を添加することにより、樹脂組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、目的に応じて加水分解後に、生成アルコールなどを加熱および/または減圧下にて適量を留出、除去し、その後好適な溶剤を添加してもよい。
【0045】
また、加水分解反応に用いる水は、イオン交換水が好ましい。
【0046】
本発明のシロキサン樹脂組成物におけるシロキサン樹脂(A)の含有量は、溶剤(D)を除く全固形分中20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。シロキサン樹脂(A)の含有量が20質量%以上であると、接着性、リワーク性、耐候耐熱性をより向上させることができる。一方、シロキサン樹脂(A)の含有量は、溶剤(D)を除く全固形分中98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。シロキサン樹脂(A)の含有量が98質量%以下であると、微細パターン加工性をより向上させることができる。
【0047】
本発明のシロキサン樹脂組成物において、不飽和二重結合を有する化合物(B)とは、炭素―炭素二重結合を一つ以上有するモノマーまたはオリゴマーをいう。不飽和二重結合を有する化合物(B)の重量平均分子量は特に制限されないが、10,000以下が好ましい。
【0048】
不飽和二重結合を有する化合物(B)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ナフチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA-プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、1-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、グリシジルアクリレート、ウレタンアクリレート等のアクリル酸エステル、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートまたはこれらモノマーの芳香環の水素原子の1~5個を塩素もしくは臭素原子に置換したモノマー、これらアクリレートをメタクリレートに換えたものや、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α-メチルスチレン、塩素化α-メチルスチレン、臭素化α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、2-(1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,3-ジオキシ-2H-イソインドール-2-イル)エチル-2-プロペナート、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、N-ビニルフタルイミド、N-アリルフタルイミド、1H-ピロレ-2,5-ジオン,1-(3-ブテニル)-3,4-ジメチル、1H-ピロレ-2,5-ジオン,3,4-ジメチル-1-(3-メチル-3-ブテニル)、2-[2-(2,5-ジヒドロ-3,4-ジメチル-2,5-ジオキソ-1H-ピロル-1-イル)エトキシ]エチルメタクリレート、6-(2,3-ジメチルマレイミド)ヘキシルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、トリメタクリルイソシアヌレート、トリビニルイソシアヌレート、ジアリルエチルマレイミドイソシアヌレート、ジアリル-N-アリルアセチルアミドイソシアヌレート、ジグリシジルアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、ジアリルプロピルフタルイミドイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルプロピネートイソシアヌレート、トリスグリシジルペンチルイソシアヌレート、トリスグリシジルオクチルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの化合物において、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、マレイミド基、アリル基が混在していても構わない。
【0049】
本発明のシロキサン樹脂組成物における不飽和二重結合を有する化合物(B)の含有量は、溶剤(D)を除く全固形分中1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。不飽和二重結合を有する化合物(B)の含有量が1質量%以上であると、感度をより向上させ、フォトリソグラフィ法による微細パターン加工性をより向上させることができる。一方、不飽和二重結合を有する化合物(B)の含有量は、溶剤(D)を除く全固形分中60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。不飽和二重結合を有する化合物(B)の含有量が60質量%以下であると、微細パターン加工性をより向上させることができる。
【0050】
本発明のシロキサン樹脂組成物において、光重合開始剤(C)としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光増感剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0051】
光重合開始剤(C)としては、例えば、オキシムエステル化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、ケトン化合物、ベンゾイン化合物、アシルオキシム化合物、メタロセン化合物、チオキサントン化合物、アミン化合物、ケトン化合物、クマリン化合物、アントラセン化合物、アゾ化合物、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホンなどの光ラジカル重合開始剤;オニウム塩、トリアジン化合物、ホウ素化合物などの光カチオン重合開始剤;エオシンまたはメチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸またはトリエタノールアミン等の還元剤との組み合わせなどが挙げられる。
【0052】
本発明のシロキサン樹脂組成物における光重合開始剤(C)の含有量は、溶剤(D)を除く全固形分中0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量%以上であると、シロキサン樹脂組成物を露光した部分の硬化密度を向上させ、現像後の残膜率を向上させることができる。一方、光重合開始剤(C)の含有量は、溶剤(D)を除く全固形分中20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が20質量%以下であると、感度を容易に調整することができ、微細パターン加工性をより向上させることができる。
【0053】
本発明のシロキサン樹脂組成物において、溶剤(D)としては、前記シロキサン樹脂(A)、不飽和二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を溶解可能な有機溶剤が好ましい。例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0054】
本発明のシロキサン樹脂組成物における溶剤(D)の含有量は、10~80質量%が好ましい。
【0055】
本発明のシロキサン樹脂組成物は、光酸発生剤を含有することが好ましい。光酸発生剤とは、露光時に結合開裂を起こして酸を発生する化合物を指し、露光波長365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)またはこれらの混合線の照射によって酸を発生する化合物が好ましい。酸はシラノールの脱水縮合を促進する触媒として機能する。また、シロキサン樹脂組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、酸は環状エーテル基の重合触媒として機能する。露光後に酸が存在することにより、未反応のシラノール基の縮合および/または環状エーテル基の重合が促進され、現像後の膜減り率を減少する効果がある。発生させる酸としては、パーフルオロアルキルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の強酸が好ましい。
【0056】
光酸発生剤としては、例えば、SI-100、SI-101、SI-105、SI-106、SI-109、PI-105、PI-106、PI-109、NAI-100、NAI-1002、NAI-1003、NAI-1004、NAI-101、NAI-105、NAI-106、NAI-109、NDI-101、NDI-105、NDI-106、NDI-109、PAI-01、PAI-101、PAI-106、PAI-1001(いずれも商品名、みどり化学(株)製)、SP-077、SP-082(いずれも商品名、(株)ADEKA製)、TPS-PFBS(商品名、東洋合成工業(株)製)、CGI-MDT、CGI-NIT(いずれも商品名、チバジャパン(株)製)、WPAG-281、WPAG-336、WPAG-339、WPAG-342、WPAG-344、WPAG-350、WPAG-370、WPAG-372、WPAG-449、WPAG-469、WPAG-505、WPAG-506(いずれも商品名、和光純薬工業(株)製)が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、CGI-MDTが好ましい。
【0057】
シロキサン樹脂組成物中における光酸発生剤の含有量は、膜減り率の減少と現像性の観点から、固形分中0.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以下が好ましい。
【0058】
本発明のシロキサン樹脂組成物は、その所望の特性を損なわない範囲(通常、全固形分中合計で5質量%以下)で、前記(A)~(D)成分以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、分子内に不飽和二重結合を有しない化合物、可塑剤、レベリング剤、熱酸発生剤、硬化剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。
【0059】
本発明のシロキサン樹脂組成物の25℃における粘度は、1~1000mPa・sが好ましい。25℃における粘度が1mPa・s以上であると、塗布膜厚の均一性に優れる。一方、25℃における粘度が1000mPa・s以下であると、吐出型塗布装置による塗布が可能であり、大面積を短時間で塗布することができるなど塗布性に優れる。25℃における粘度は100mPa・s以下がより好ましい。ここで、本発明のシロキサン樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業(株)製「TV25型粘度計」)を用いて、温度25℃、回転数20rpmの条件で1分間保持した後の粘度を測定することにより求めることができる。本発明のシロキサン樹脂組成物の25℃における粘度を上記範囲とする手段としては、例えば、シロキサン樹脂組成物の溶剤(D)含有量や、シロキサン樹脂(A)の重量平均分子量を、前述の好ましい範囲にする方法などが挙げられる。
【0060】
本発明のシロキサン樹脂組成物は、前述の(A)~(D)成分および必要に応じてその他の成分を混合することにより得ることができる。これらの各成分を、撹拌機を用いて混合溶解することが好ましい。撹拌機としては、例えば、シェイカーやミキサーなどの撹拌振とう器などが挙げられる。
【0061】
次に、本発明の接着剤について説明する。本発明の接着剤は、前述のシロキサン樹脂組成物からなり、かかる接着剤を介して、複数の被着体を貼り合せて固定することができる。ここで、本発明における接着とは、接着剤を媒介とし、化学的結合、物理的結合および/または機械的結合によって複数の被着体の面が結合した状態をいう。本発明の接着剤により、特殊な加工装置を用いずとも硬化物の膜厚、パターン線幅およびパターン間隔をミクロンサイズで微細加工することができ、小型電子機器の組み立て工程における製造タクトの短縮や微細化に寄与することができる。
【0062】
本発明のシロキサン樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。本発明のシロキサン樹脂組成物は、柔軟な骨格を有するシロキサン樹脂からなるため、硬化物の膜厚は10μm~200μmの厚膜形成が可能である。かかる硬化物は、接着剤として好適に用いることができる。シロキサン樹脂組成物をパターン加工して硬化物(接着剤)を得る方法について、以下に例を挙げて説明する。
【0063】
本発明のシロキサン樹脂組成物を、基板上に塗布し、乾燥し、露光し、現像することにより、接着性を有する微細パターンを形成することが好ましい。ここで、基板は、被着体の一方である。
【0064】
基板としては、例えば、ガラス基板、シリコンウエハー、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板、加飾層形成基板、絶縁層形成基板、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などが挙げられる。
【0065】
基板上にシロキサン樹脂組成物を塗布する塗布方法としては、例えば、グラビア印刷、スピンコート、スリットコート、バーコート、スプレー塗布、スクリーン印刷などが挙げられる。
【0066】
得られた塗布膜を乾燥することにより、溶剤を揮発除去することが好ましい。乾燥方法としては、加熱乾燥、真空乾燥、赤外線乾燥などが挙げられる。加熱乾燥装置としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線照射装置等が挙げられる。加熱温度は、60~120℃が好ましい。乾燥温度が60℃以上であると、溶剤を十分に揮発除去することができる。一方、乾燥温度が120℃以下であると、シロキサン樹脂組成物の熱架橋を抑制し、非露光部の残渣を低減することができる。加熱時間は、1分間~60分間が好ましい。
【0067】
乾燥工程により得られた乾燥膜を、露光および現像することが好ましい。露光方法としては、フォトマスクを介して露光する方法が一般的であるが、フォトマスクを用いずに、レーザー光等で直接描画する方法を用いても構わない。露光装置としては、例えば、ステッパー露光機、アライナー露光機などが挙げられる。露光に使用される活性光線としては、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光等が挙げられ、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが挙げられ、超高圧水銀灯が好ましい。
【0068】
露光後の膜を、現像液を用いて現像し、非露光部を溶解除去することにより、所望の微細パターンを形成する。現像液としては、アルカリ現像液、有機現像液が挙げられる。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの水溶液が挙げられる。これらに界面活性剤を添加しても構わない。有機現像液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の極性溶媒が挙げられる。これら極性溶媒に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどを添加しても構わない。
【0069】
現像方法としては、例えば、露光後の膜を積層した基板を静置または回転させながら現像液を塗布膜面にスプレーする方法、露光後の膜を積層した基板を現像液中に浸漬する方法、露光後の膜を積層した基板を現像液中に浸漬しながら超音波を射する方法などが挙げられる。
【0070】
現像により得られたパターンに対して、リンス液によるリンス処理を施しても構わない。リンス液としては、例えば、水、アルコール類の水溶液、エステル類の水溶液などが挙げられる。アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。エステル類としては、例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0071】
前記方法により基板上に接着性を有する微細パターンを形成した後、他方の被着体を重ねて加熱することにより、一方の被着体である基板と、他方の被着体とが接着固定される。加熱条件としては、例えば、50℃~200℃、1分間~60分間が好ましい。
【0072】
本発明のシロキサン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、表示装置、半導体装置、照明装置の組み立てに好適に用いられる。例えば、表示装置の組み立てにおいては、液晶セル、有機EL、ミニLEDセル、および、マイクロLEDセルからなる群から選ばれる少なくとも一つと基板とを貼り合わせる接着剤として、本発明のシロキサン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物が用いられる。ミニLEDセルとは、縦横の長さが100μm~10mm程度であるLEDを多数並べたセルのことを指す。マイクロLEDセルとは、縦横の長さが100μm未満であるLEDを多数並べたセルのことを指す。また、イメージセンサー用半導体装置の組立てにおいては、セラミックパッケージと光学コート付きガラスリッドとを貼り合わせる接着剤として、本発明のシロキサン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物が用いられる。さらに、LED照明装置の組立てにおいては、LED素子とリードフレーム基板とを貼り合わせる接着剤として、本発明のシロキサン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物を好適に用いることができる。
【0073】
一例として、本発明のシロキサン樹脂組成物からなる接着剤を用いたディスプレイ型表示装置の製造方法の一例を以下に説明する。
【0074】
まず、液晶セル等の表示パネルとバックライト照明などの構成部品を、本発明のシロキサン樹脂組成物からなる接着剤を介して接着し、組み立てた後、駆動回路を組み込む。ディスプレイ型表示装置には、例えば、拡散板、導光板、アンチグレア層、インデックスマッチング層、反射防止層、保護絶縁層、レンズアレイシート、バックライト照明、タッチセンサーモジュールなどの各種部品を、必要に応じ適宜な位置に1層または2層以上配置してもよい。
【実施例
【0075】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例および比較例で用いた材料および評価方法は以下の通りである。
【0076】
<シロキサン樹脂(A)の原料>
オルガノシラン化合物(a-X1):ビニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(a-X2):オクテニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(a-X3):オキセタニルトリメトキシシラン(東亞合成(株)製)
オルガノシラン化合物(a-X4):3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(a-X5):グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(a-X6):3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(a-X7):3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(b-Y1):3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(b-Y2):3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(b-Y3):3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(b-Y4):3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(c-Z1):3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(c-Z2):3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(d-1):メチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
オルガノシラン化合物(d-2):ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
オルガノシラン化合物(d-3):メチルフェニルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
オルガノシラン化合物(d-4)シラノール変性シロキサンオリゴマーX-21-5841(商品名、信越化学工業(株)製)
オルガノシラン化合物:(d-5):ヒドロシラン変性シロキサンオリゴマーTSL9586(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製)
重合禁止剤:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(東京化成工業(株)製)
重合触媒:りん酸(東京化成工業(株)製)
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)(東京化成工業(株)製)。
【0077】
<シロキサン樹脂組成物の原料>
不飽和二重結合を有する化合物(B):イソブチルアクリレート(東京化成工業(株)製)
光重合開始剤(C):ジフェニルケトン(東京化成工業(株)製)
溶剤(D):PGMEA(東京化成工業(株)製)
レベリング剤:“BYK”(登録商標)-333(ビックケミージャパン(株)製)
各実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
【0078】
(1)粘度
各実施例および比較例により得られたシロキサン樹脂組成物について、E型粘度計を用いて、温度25℃、回転数20rpmの条件で1分間保持した後の粘度を測定した。
【0079】
(2)塗布性
各実施例および比較例により得られたシロキサン樹脂組成物の塗布工程における塗布不良の有無から、下記基準により塗布性を評価した。ただし、塗布不良とは、ノズル目詰まり、膜厚不均一、塗布欠陥の少なくともいずれかが生じている状態をいう。
塗布不良なし:A
塗布不良あり:B。
【0080】
(3)微細パターン加工性
各実施例および比較例より得られたパターン幅/パターン間隔(以下、「L/S」)が異なる2種類の接着パターン付きフィルムを、光学顕微鏡を用いて倍率50倍に拡大観察し、パターン形成不良の有無を観察し、下記基準によりパターン加工性を評価した。ただし、パターン形成不良とは、PETフィルムからのパターン剥離、パターン間の残渣の少なくともいずれかが生じている状態をいう。
基材面内にパターン形成不良なし:A
基材面内にパターン形成不良あり:B。
【0081】
(4)接着性
各実施例および比較例より得られた接着パターン付きフィルム上にガラス基板(OA-10G、日本電気硝子(株)製)を重ね、貼り合せた後、ホットプレートを用いて120℃、30分間加熱し、ガラス基板付きフィルムを製造した。このガラス基板付きフィルムを幅25mm、長さ100mmに裁断し、引張り試験機(EZ-SX、(株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90度、剥離速度300mm/minで引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定した。
【0082】
(5)硬化物の柔軟性
各実施例および比較例より得られた接着剤付きフィルム上にPETフィルムを重ね、貼り合せた後、ホットプレートを用いて120℃、30分間加熱し、硬化物付きフィルムを製造した。この硬化物付きフィルムを幅10mm、長さ100mmに裁断し、硬化物面が対向するように耐久試験機(DLDMLH-FU、ユアサシステム機器(株)製)にセットし、曲げR半径5mmの条件で面状体U字折り返し試験を行った。この試験を100回、500回、1000回、および5000回繰り返した後、光学顕微鏡を用いて硬化物を倍率50倍にて拡大観察し、破損の有無を観察し、下記基準により硬化物の柔軟性を評価した。ただし、硬化物の破損とは、クラック、破断、基材と被着体の剥がれの少なくともいずれかが生じている状態をいう。
硬化物に破損なし:A
硬化物に破損あり:B。
【0083】
(6)クラック耐性
各実施例および比較例により得られたシロキサン樹脂組成物を、10cm角の無アルカリガラス基板上に、キュア後の膜厚が10μm、30μmとなるようにそれぞれ塗布し、ホットプレート(SCW-636)を用いて、温度100℃で3分間プリベークし、プリベーク膜を形成した。その後、パラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製「PLA-501F(商品名)」)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、マスクを介さずに、プリベーク膜を露光量300mJ/cmの露光量で露光した。その後、自動現像装置(滝沢産業(株)製「AD-2000(商品名)」)を用いて、濃度0.045重量%の水酸化カリウム水溶液により60秒間シャワー現像し、次いで水により30秒間リンスした。さらに、オーブン(商品名IHPS-222、エスペック(株)製)を用いて、空気中、温度200℃で30分間キュアし、硬化物を作製した。作製した硬化物を目視観察し、下記基準によりクラックの発生有無を評価した。ただし、1つでもクラックが確認された場合には、その膜厚におけるクラック耐性はないと判断した。
硬化物にクラック発生なし:A
硬化物にクラック発生あり:B。
【0084】
(7)現像膜減り
各実施例および比較例により得られたシロキサン樹脂組成物を、シリコンウエハー基板上に塗布し、前述の(6)クラック耐性の評価方法と同様にプリベーク、露光、現像を行った。プリベーク後と現像後に膜厚を測定し、下記式により現像膜減りを評価した。
現像膜減り(%)=((プリベーク後の膜厚)-(現像後の膜厚))×100/(プリベーク後の膜厚)。
【0085】
合成例1
ガラスフラスコに、表1記載のオルガノシラン化合物(a-X1)、オルガノシラン化合物(b-Y1)、オルガノシラン化合物(c-Z1)を総量が1モルとなるよう表1記載のモル%相当の質量で採取し、重合禁止剤を0.21g、溶剤を205.47g添加して、40℃で30分間撹拌した。その後、オルガノシラン化合物の総重量100質量%に対して1質量%のりん酸の水溶液を10分間かけて添加し、添加後30分間撹拌した後、70℃で30分間撹拌した。副生成物のメタノール、水を留去しながら、120℃で3時間撹拌し、シロキサン樹脂(A)に相当するシロキサン樹脂A1のPGMEA溶液を得た。
【0086】
得られたシロキサン樹脂A1の29Si-核磁気共鳴スペクトルおよびH-核磁気共鳴スペクトルを測定し、R、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合と、a、bおよびcの総和に対するa、b、cの割合をそれぞれ求めた。得られたシロキサン樹脂A1について、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いて展開速度0.4ml/分の条件でGPCにより重量平均分子量を測定したところ、ポリスチレン換算値で20,000であった。これらの結果を表1に示す。
【0087】
合成例2~27
シロキサン樹脂を構成するオルガノシラン化合物の種類と質量、重合時間を表1~2に記載の通りに変更したこと以外は合成例1と同様の方法により、シロキサン樹脂(A)に相当するシロキサン樹脂A2~A24およびシロキサン樹脂(A)に相当しないシロキサン樹脂A’25~27をそれぞれ合成した。合成例1と同様にしてR、RおよびRの総モル数に対する炭素数1~30の炭化水素基の割合、a、bおよびcの総和に対するa、b、cそれぞれの割合、重量平均分子量を測定した結果を表1~2に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2-1】
【0090】
【表2-2】
【0091】
実施例1
バイアル瓶に、合成例1により得られたシロキサン樹脂A1を固形分濃度換算で80質量%、不飽和二重結合を有する化合物(B)を19質量%、光重合開始剤(C)を0.9質量%、レベリング剤を0.1質量%となるように採取したのち、全固形分濃度が40質量%になるように溶剤(D)を添加して、室温で30分間撹拌し、シロキサン樹脂組成物S1を製造した。このシロキサン樹脂組成物の粘度を前記方法により評価したところ、10mPa・sであった。
【0092】
スリットダイコーター(マルチユニットコーター、東レエンジニアリング(株)製)を用いて、PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)S-10;東レ(株)製)上に、シロキサン樹脂組成物S1をスリットコート法により塗布し、塗布膜を得た。塗布性について前記方法により評価したところ、Aであった。
【0093】
得られた塗布膜を100℃のホットプレートで3分間乾燥して、乾燥後膜厚10μmの乾燥膜付きフィルムP1を得た。同様の操作を繰り返し、乾燥膜付きフィルムP1を複数枚用意した。乾燥膜付きフィルムP1に、L/Sが100/100μm、20μm/20μmの2種類のパターンが描画されている露光マスクを介して、いずれも21mW/cmの出力の超高圧水銀灯により照射量300mJ/cmの条件で露光(波長365nm換算)し、パターン露光フィルムP1を得た。また、露光マスクを介さずに露光し、全面露光フィルムP1を得た。その後、0.045質量%水酸化カリウム水溶液を現像液として、パターン露光フィルムP1を非露光部が全て溶解する時間までシャワー現像し、接着パターン付きフィルムP1を得た。同じ現像時間で全面露光フィルムP1を現像し、接着剤付きフィルムP1を得た。接着パターン付きフィルムP1の微細パターン加工性について前記方法により評価したところ、L/S=100/100μm、L/S=20μm/20μmともにAであった。接着パターン付きフィルムP1の接着性について前記方法により評価したところ、2N/25mmであった。接着剤付きフィルムP1の硬化物の柔軟性について前記方法により評価したところ、屈曲試験100回はAであったが、500回はBであった。
【0094】
実施例2~24および比較例1~3
シロキサン樹脂を表3~4に記載の通りに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、シロキサン樹脂組成物S2~S24およびS28~30をそれぞれ製造した。シロキサン樹脂組成物S1を表3~4に記載のシロキサン樹脂組成物S2~S24およびS28~30に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着パターン付きフィルムP2~24およびP28~30および接着剤付きフィルムP2~24およびP28~30を得た。前記方法により評価した結果を表3~4に示す。
【0095】
実施例25
バイアル瓶に、合成例24により得られたシロキサン樹脂A24を固形分濃度換算で78.5質量%、不飽和二重結合を有する化合物(B)を19質量%、光重合開始剤(C)を0.9質量%、光酸発生剤(E)を1.5質量%、レベリング剤を0.1質量%となるように採取したのち、全固形分濃度が40質量%になるように溶剤(D)を添加して、室温で30分間撹拌し、シロキサン樹脂組成物S25を製造した。このシロキサン樹脂組成物の粘度を前記方法により評価したところ、10mPa・sであった。シロキサン樹脂組成物S1をS25に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着パターン付きフィルムP25および接着剤付きフィルムP25を得た。前記方法により評価した結果を表4に示す。
【0096】
実施例26
バイアル瓶に、合成例24により得られたシロキサン樹脂A24を固形分濃度換算で79.7質量%、不飽和二重結合を有する化合物(B)を19質量%、光重合開始剤(C)を0.9質量%、光酸発生剤(E)を0.3質量%、レベリング剤を0.1質量%となるように採取したのち、全固形分濃度が40質量%になるように溶剤(D)を添加して、室温で30分間撹拌し、シロキサン樹脂組成物S26を製造した。このシロキサン樹脂組成物の粘度を前記方法により評価したところ、10mPa・sであった。シロキサン樹脂組成物S1をS26に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着パターン付きフィルムP26および接着剤付きフィルムP26を得た。前記方法により評価した結果を表3~4に示す。
【0097】
実施例27
バイアル瓶に、合成例24により得られたシロキサン樹脂A24を固形分濃度換算で77.5質量%、不飽和二重結合を有する化合物(B)を19質量%、光重合開始剤(C)を0.9質量%、光酸発生剤(E)を2.5質量%、レベリング剤を0.1質量%となるように採取したのち、全固形分濃度が40質量%になるように溶剤(D)を添加して、室温で30分間撹拌し、シロキサン樹脂組成物S27を製造した。このシロキサン樹脂組成物の粘度を前記方法により評価したところ、10mPa・sであった。シロキサン樹脂組成物S1をS27に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着パターン付きフィルムP27および接着剤付きフィルムP27を得た。前記方法により評価した結果を表3~4に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4-1】
【0100】
【表4-2】
【0101】
実施例28 ディスプレイ型表示装置の作製
シリコーン処理を施したPETフィルム(“ルミラー”(登録商標)S-10;東レ(株)製)上に、乾燥後膜厚が10μmになるようにシロキサン樹脂組成物S18をスリットコート法により塗布し、塗布膜付きフィルムを得た。塗布膜付きフィルムを100℃のホットプレートで3分間乾燥して、乾燥膜付きフィルムを得た。乾燥膜付きフィルムに開口部が136mm×72mmのパターンが100μm間隔で複数個描画されている露光マスクを介して、21mW/cmの出力の超高圧水銀灯により照射量300mJ/cmの露光(波長365nm換算)し、パターン露光フィルムを得た。その後、0.045質量%水酸化カリウム水溶液を現像液として、パターン露光フィルムを非露光部が全て溶解する時間までシャワー現像し、接着パターン付きフィルムを得た。得られた接着パターン付きフィルムをスリッターで個片に裁断し、接着パターン付きフィルム個片を得た。接着パターン付きフィルム個片を偏光板(SEG;日東電工(株)製)、位相差フィルム(SN2;日東電工(株)製)にそれぞれ転写した後、真空ラミネーターを用いて80℃、0.2MPaの条件で液晶セル(Model6.1”;エーユーオプトロニクス製)の両面にそれぞれを貼り合わせてディスプレイ型表示装置を製造した。このディスプレイ型表示装置を環境試験機(エスペック(株)製「PR-1J」)を用いて、85℃85%RH条件下で500時間恒温高湿処理した後、接着パターンの発泡、浮き、剥がれなどの接着不良および外観不良を、目視により観察したところ、いずれの不良もなかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のシロキサン樹脂組成物、接着剤は、表示装置、半導体装置または照明装置などの各種電子機器の組み立て工程における接着剤として好適に用いられる。