(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20220524BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/38
(21)【出願番号】P 2018554868
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2017039749
(87)【国際公開番号】W WO2018105282
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2016239335
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 和起
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-101684(JP,A)
【文献】特開2010-012769(JP,A)
【文献】特開2003-300271(JP,A)
【文献】特開2012-096551(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006125(WO,A1)
【文献】特開2016-097596(JP,A)
【文献】特公昭47-030640(JP,B1)
【文献】特開2004-277484(JP,A)
【文献】特開2004-026880(JP,A)
【文献】特開2012-076291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/00
B32B 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機蒸着層を有する基材フィルムと、樹脂硬化層とを有するガスバリア性フィルムであって、
前記ガスバリア性フィルムは前記基材フィルムの前記無機蒸着層側の面に前記樹脂硬化層を有し、
前記樹脂硬化層がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び
板状、鱗片状、又は柱状の非球状無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)との反応生成物であり、
該非球状無機粒子の平均粒径が1~
800nmである、ガスバリア性フィルム。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とする、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記(A)成分がメタキシリレンジアミンである、請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記(B)成分がアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記非球状無機粒子の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し0.5~10.0質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記非球状無機粒子が板状又は鱗片状の無機粒子である、請求項1~5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記非球状無機粒子を構成する無機物がシリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記無機蒸着層を構成する無機物がケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂硬化剤が前記(A)と(B)と、さらに下記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物である、請求項1~8のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
(C)R
3-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種(R
3は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。)
(D)環状カーボネート
(E)炭素数2~20のモノエポキシ化合物
【請求項10】
前記無機蒸着層と前記樹脂硬化層とが隣接している、請求項1~9のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項11】
前記基材フィルムが片面のみに無機蒸着層を有し、前記樹脂硬化層を1層のみ有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項12】
光学フィルムである、請求項1~11のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記非球状無機粒子の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し1.5~7.5質量部である、請求項1~12のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項14】
前記(B)成分がアクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~13のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対する前記エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数の比(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数)が0.2~3.0の範囲である、請求項1~14のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂層とを有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品、精密電子部品等に用いられる包装材料には、内容物の変質を防止するために高い酸素バリア性や水蒸気バリア性が求められる。
一般に熱可塑性プラスチックフィルムの酸素バリア性はそれほど高いものではないことから、当該フィルムにガスバリア性を付与する手段として、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)層やポリビニルアルコール(PVA)層などの各種ガスバリア層を形成する方法、又は、アルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)などの無機物を蒸着する方法が検討されてきた。
【0003】
ガスバリア層としてPVDC層を形成したフィルムは、透明でかつ良好なバリア性を発揮する。しかし、一般廃棄物として焼却される際に酸性ガス等の有機物質を発生するため、環境への配慮の点から他材料への移行が望まれている。PVA層を形成したフィルムは低湿度下においては優れたガスバリア性を発揮するが、吸湿性が高く、相対湿度が70%程度以上になるとガスバリア性が急激に低下するという問題がある。
【0004】
熱可塑性プラスチックフィルムにアルミナやシリカなどの無機物を蒸着した無機蒸着フィルムは透明でかつ良好なガスバリア性を有しており、上記の問題も生じない。しかしながら無機蒸着フィルムを屈曲させると、無機蒸着層にクラックが発生して著しくガスバリア性が低下するという問題がある。
【0005】
無機物が蒸着された層を含むガスバリア性フィルム又はガスバリア性積層体の耐屈曲性を改善する方法として、所定のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化物からなる層を形成する方法が提案されている(特許文献1~3)。
【0006】
一方、特許文献4,5では、高いガスバリア性や接着性を有するエポキシ樹脂組成物として、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと、所定の構造の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との反応生成物であるエポキシ硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物が提案されている。
また特許文献6では、塗膜のべたつきをなくすための高温で長時間の加熱乾燥処理を必要とせず、効率よく巻き取ることが可能で生産性に優れるガスバリア性コートフィルムとして、可撓性ポリマーフィルム層、紙層及び金属箔層からなる群より選ばれる少なくとも1層と、少なくとも1つのガスバリア層を含み、該ガスバリア層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と微粒子を含むエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたコート層であり、該エポキシ樹脂硬化剤がメタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンと、所定の構造の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との反応生成物であり、該微粒子の平均粒子径が0.01~5μmの範囲であり、該微粒子の含有量(エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との合計質量を基準とする)が0.01~5質量%の範囲であるガスバリア性コートフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-300271号公報
【文献】特開2005-28835号公報
【文献】特開2009-101684号公報
【文献】国際公開第2013/161480号
【文献】国際公開第2013/161481号
【文献】特開2016-97596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら近年、従来よりも初期ガスバリア性及び耐屈曲性をさらに向上させたガスバリア性フィルムが望まれている。
加えて、ガスバリア性フィルムは前述した包装材料分野だけでなく、光学フィルム分野においても注目されている。例えば、量子ドット(QD)ディスプレイに搭載されている量子ドットや有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイに搭載されている有機EL素子は水分によって劣化しやすいため、ガスバリア性フィルムを量子ドットや有機EL素子の保護フィルムとして用いることも有効であると考えられる。この用途におけるガスバリア性フィルムには高い水蒸気バリア性が求められる。また当該フィルムは画像表示装置に用いられる光学フィルムでもあるため、画像表示性能を妨げないよう、高い透明性を有していることが好ましい。
【0009】
本発明の課題は、無機蒸着層を有する従来のガスバリア性フィルムのガスバリア性をさらに向上させるとともに、耐屈曲性にも優れるガスバリア性フィルム及び積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、無機蒸着層を有する基材フィルムと、特定のエポキシ樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化層とを有する所定の層構成のガスバリア性フィルムが本発明の課題を解決できることを見出した。
本発明は下記に関する。
【0011】
[1]無機蒸着層を有する基材フィルムと、樹脂硬化層とを有するガスバリア性フィルムであって、
前記ガスバリア性フィルムは前記基材フィルムの前記無機蒸着層側の面に前記樹脂硬化層を有し、前記樹脂硬化層がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び非球状無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)との反応生成物である、ガスバリア性フィルム。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
[2]前記エポキシ樹脂がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として含む、上記[1]に記載のガスバリア性フィルム。
[3]前記(A)成分がメタキシリレンジアミンである、上記[1]又は[2]に記載のガスバリア性フィルム。
[4]前記(B)成分がアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[5]前記エポキシ樹脂組成物中の前記非球状無機粒子の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し0.5~10.0質量部である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[6]前記非球状無機粒子が板状又は鱗片状の無機粒子である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[7]前記非球状無機粒子を構成する無機物がシリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[8]前記無機蒸着層を構成する無機物がケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[9]前記エポキシ樹脂硬化剤が前記(A)と(B)と、さらに下記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物である、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
(C)R
3-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種(R
3は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。)
(D)環状カーボネート
(E)炭素数2~20のモノエポキシ化合物
[10]前記無機蒸着層と前記樹脂硬化層とが隣接している、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[11]前記基材フィルムが片面のみに無機蒸着層を有し、前記樹脂硬化層を1層のみ有する、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[12]光学フィルムである、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
[13]上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂層とを有する積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスバリア性フィルム及び積層体はガスバリア性、耐屈曲性に優れるため、包装材料用途に好適である。また、特に水蒸気バリア性及び透明性が高いガスバリア性フィルム及び積層体は、例えば量子ドットディスプレイにおける量子ドットの保護フィルムや有機ELディスプレイにおける有機EL素子の保護フィルム等、画像表示装置用の光学フィルムとしても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、無機蒸着層を有する基材フィルム(以下、単に「基材フィルム」ともいう)と、樹脂硬化層とを有し、該ガスバリア性フィルムは該基材フィルムの該無機蒸着層側の面に該樹脂硬化層を有し、該樹脂硬化層がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び非球状無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)との反応生成物であることを特徴とする。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化2】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
本発明のガスバリア性フィルムは上記構成を有することにより、ガスバリア性が高く、無機蒸着層を有していても耐屈曲性に優れるフィルムとなる。当該ガスバリア性フィルムは前記基材フィルムと、少なくとも1層の前記樹脂硬化層とを有していればよい。以下、本発明のガスバリア性フィルムを構成する材料について説明する。
【0015】
<基材フィルム>
本発明のガスバリア性フィルムを構成する基材フィルムは、ベースフィルムと、少なくとも1層の無機蒸着層とから構成されるフィルムである。基材フィルムは少なくとも一方の面に無機蒸着層を有していればよいが、ガスバリア性フィルムの耐屈曲性や生産性の観点から、当該基材フィルムは片面のみに無機蒸着層を有していることが好ましい。
【0016】
(ベースフィルム)
基材フィルムを構成するベースフィルムとしては、透明プラスチックフィルムが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシレンアジパミド(N-MXD6)等のポリアミド系フィルム;ポリイミド系フィルム;ポリ乳酸等の生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明性、強度及び耐熱性の点から、ベースフィルムとしてはポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、及びポリイミド系フィルムからなる群から選ばれるフィルムが好ましく、ポリエステル系フィルムがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがさらに好ましい。
上記フィルムは一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。
【0017】
(無機蒸着層)
無機蒸着層は、ガスバリア性フィルムにガスバリア性を付与するために設けられる。無機蒸着層は厚みが薄くても高いガスバリア性を発現することができ、透明性も良好である。
無機蒸着層を構成する無機物は、蒸着法によりベースフィルム上にガスバリア性の薄膜を形成しうる無機物であれば特に制限はないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、ジルコニウム、炭素、又はこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸窒化物等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の点からはケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ケイ素酸化物がより好ましい。上記無機物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
無機蒸着層の厚みは、高いガスバリア性を得る観点から、好ましくは5nm以上である。また、透明性及び耐屈曲性の観点からは、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。上記厚みは、無機蒸着層の1層あたりの厚みである。
【0018】
無機蒸着層の形成方法は特に制限されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、あるいはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法等の公知の方法が挙げられる。
【0019】
上記ベースフィルムと少なくとも1層の無機蒸着層とから構成される基材フィルムの厚みは、ガスバリア性や強度の点から、好ましくは5~300μm、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは8~50μm、よりさらに好ましくは10~40μmである。
【0020】
<樹脂硬化層>
本発明のガスバリア性フィルムが有する樹脂硬化層は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び非球状無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、該エポキシ樹脂硬化剤は下記の(A)と(B)との反応生成物である。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化3】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
本発明のガスバリア性フィルムは、前記基材フィルムの前記無機蒸着層側の面に上記所定のエポキシ樹脂組成物の硬化物である樹脂硬化層を有する構成である。そして該樹脂硬化層が非球状無機粒子を含むと、無機蒸着層を有する従来のガスバリア性フィルムと比較して初期のガスバリア性及び耐屈曲性が飛躍的に向上する。ガスバリア性が向上する理由については定かではないが、以下のように推察される。
前記基材フィルムの無機蒸着層側の面に非球状無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物を塗工した際に、無機蒸着層表面の凹凸や微細な隙間を非球状無機粒子が埋めることができる。そして、この状態で硬化させた樹脂硬化層を有することでガスバリア性が飛躍的に向上すると考えられる。このガスバリア性向上効果は、無機蒸着層を有する基材フィルムと、樹脂硬化層とがそれぞれに有するガスバリア性とを足し合わせた値よりも飛躍的に高くなる。基材フィルムの無機蒸着層側の反対面に前記樹脂硬化層を有する構成のフィルムであると、本発明の構成を有するガスバリア性フィルムと比較してガスバリア性向上効果が得られにくくなる。
本明細書において「非球状」とは、球状(略真円球状)以外の三次元形状を意味し、例えば、板状、鱗片状、柱状、鎖状、繊維状等が挙げられる。
また、前記基材フィルムの無機蒸着層側の面に前記所定の樹脂硬化層を有すると耐屈曲性向上効果にも優れ、屈曲試験後にも高いガスバリア性を保持できる。通常、樹脂硬化層に非球状無機粒子のような硬い粒子を含有させるとガスバリア性フィルムの耐屈曲性が低下すると予想されるところ、予想に反してフィルムの耐屈曲性向上効果が得られることを本発明者らは見出したものである。
以下、樹脂硬化層形成用のエポキシ樹脂組成物に含まれる成分について説明する。
【0021】
(エポキシ樹脂)
前記エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香環又は脂環式構造を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
当該エポキシ樹脂の具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂が挙げられる。柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記のエポキシ樹脂を適切な割合で2種以上混合して用いることもできる。
上記の中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性向上の観点から、エポキシ樹脂としてはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、及びビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものがより好ましい。
なお、本明細書において「主成分」とは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含みうることを意味し、好ましくは全体の50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%を意味する。
【0022】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0023】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対しエピハロヒドリンを水酸化ナトリウムなどのアルカリ存在下、20~140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50~120℃、アミン類の場合は20~70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂を得る場合は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンが用いられる。
【0024】
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、好ましくは100~4,000であり、200~1,000であることがより好ましく、200~500であることがさらに好ましい。
【0025】
(エポキシ樹脂硬化剤)
前記エポキシ樹脂硬化剤は、下記の(A)と(B)との反応生成物である。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化4】
(式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
当該硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化層)はガスバリア性に優れるものとなる。
【0026】
前記(A)成分はガスバリア性の観点から用いられ、ガスバリア性の点からメタキシリレンジアミンが好ましい。(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類を混合して用いてもよい。
【0027】
前記(B)成分は前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ガスバリア性の観点から、式(1)におけるR1は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
また、ガスバリア性の観点から、式(1)におけるR2は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
【0028】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば当該不飽和カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、良好な反応性を得る観点から当該アルキル炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
【0029】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、α-プロピルアクリル酸、α-イソプロピルアクリル酸、α-n-ブチルアクリル酸、α-t-ブチルアクリル酸、α-ペンチルアクリル酸、α-フェニルアクリル酸、α-ベンジルアクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、4-メチル-2-ペンテン酸、2-ヘプテン酸、4-メチル-2-ヘキセン酸、5-メチル-2-ヘキセン酸、4,4-ジメチル-2-ペンテン酸、4-フェニル-2-ブテン酸、桂皮酸、o-メチル桂皮酸、m-メチル桂皮酸、p-メチル桂皮酸、2-オクテン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物等が挙げられる。
上記の中でも、良好なガスバリア性を得る観点から、前記(B)成分はアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、アクリル酸のアルキルエステルがよりさらに好ましく、アクリル酸メチルがよりさらに好ましい。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記(A)成分と前記(B)成分との反応は、前記(B)成分として不飽和カルボン酸、エステル、アミドを使用する場合には、0~100℃、より好ましくは0~70℃の条件下で(A)と(B)とを混合し、100~300℃、好ましくは130~250℃の条件下でマイケル付加反応及び脱水、脱アルコール、脱アミンによるアミド基形成反応を行うことにより実施される。
この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらに脱水剤、脱アルコール剤として、亜リン酸エステル類などの触媒を添加することもできる。
【0031】
一方、前記(B)成分として不飽和カルボン酸の酸無水物、酸塩化物を使用する場合には、0~150℃、好ましくは0~100℃の条件下で混合後、マイケル付加反応及びアミド基形成反応を行うことにより実施される。この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらにピリジン、ピコリン、ルチジン、トリアルキルアミンなどの3級アミンを添加することもできる。
【0032】
前記(A)成分と前記(B)成分との反応により形成されるアミド基部位は高い凝集力を有しているため、当該(A)と(B)との反応生成物であるエポキシ樹脂硬化剤を用いて形成される樹脂硬化層は、高いガスバリア性と良好な接着性とを有する。
【0033】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]は、0.3~1.0の範囲であることが好ましい。上記反応モル比が0.3以上であれば、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成し、高いレベルのガスバリア性及び接着性が発現する。一方、上記反応モル比が1.0以下の範囲であれば、後述するエポキシ樹脂中のエポキシ基との反応に必要なアミノ基の量が十分であり、耐熱性に優れ、有機溶剤や水に対する溶解性にも優れる。
得られるエポキシ樹脂硬化物の高いガスバリア性、優れた塗膜性能を特に考慮する場合には、前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]が0.6~1.0の範囲であることがより好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂硬化剤は、前記(A)と(B)と、さらに下記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物であってもよい。
(C)R3-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種(R3は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。)
(D)環状カーボネート
(E)炭素数2~20のモノエポキシ化合物
【0035】
前記(C)成分である、R3-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体は、必要に応じてエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との反応性を低下させ、作業性を改善する観点から用いられる。
R3は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R3は、好ましくは炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基である。
またR3-COOHで表される一価のカルボン酸の誘導体としては、例えば当該カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。当該カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、当該アルキル炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
前記(C)成分としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸等の一価のカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。
前記(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記(D)成分である環状カーボネートは、エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との反応性を低下させ作業性を改善する観点から、必要に応じて用いられるものであり、前記(A)成分との反応性の観点から、六員環以下の環状カーボネートであることが好ましい。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メトキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オンなどが挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びグリセリンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記(D)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記(E)成分であるモノエポキシ化合物は、炭素数2~20のモノエポキシ化合物であり、エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との反応性を低下させ作業性を改善する観点から、必要に応じて用いられる。ガスバリア性の観点から、炭素数2~10のモノエポキシ化合物であることが好ましく、下記式(2)で示される化合物であることがより好ましい。
【0038】
【化5】
(式(2)中、R
4は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、又はR
5-O-CH
2-を表し、R
5はフェニル基又はベンジル基を表す。)
前記式(2)で示されるモノエポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、及びベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。前記(E)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
エポキシ樹脂硬化剤に前記(C)、(D)又は(E)成分を用いる場合には、前記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれるいずれか1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
なお、エポキシ樹脂硬化剤は、前記(A)~(E)成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分と反応させた反応生成物であってもよい。ここでいう他の成分としては、例えば芳香族ジカルボン酸又はその誘導体などが挙げられる。
但し、該「他の成分」の使用量は、エポキシ樹脂硬化剤を構成する反応成分の合計量の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
前記(A)及び(B)と、さらに前記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物は、前記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、前記(B)成分と併用して、ポリアミンである前記(A)成分と反応させて得られる。該反応は、前記(B)~(E)成分を任意の順序で添加して前記(A)成分と反応させてもよく、前記(B)~(E)成分を混合して前記(A)成分と反応させてもよい。
前記(A)成分と前記(C)成分との反応は、前記(A)成分と(B)成分との反応と同様の条件で行うことができる。前記(C)成分を用いる場合には、前記(B)及び(C)成分を混合して前記(A)成分と反応させてもよく、初めに前記(A)成分と(B)成分とを反応させてから前記(C)成分を反応させてもよい。
一方、前記(D)及び/又は(E)成分を用いる場合には、初めに前記(A)成分と(B)成分とを反応させてから、前記(D)及び/又は(E)成分と反応させることが好ましい。
前記(A)成分と前記(D)及び/又は(E)成分との反応は、25~200℃の条件下で(A)と(D)及び/又は(E)とを混合し、30~180℃、好ましくは40~170℃の条件下で付加反応を行うことにより実施される。また、必要に応じナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどの触媒を使用することができる。
上記反応の際には、反応を促進するために、必要に応じて(D)及び/又は(E)を溶融させるか、もしくは非反応性の溶剤で希釈して使用することもできる。
【0042】
エポキシ樹脂硬化剤が、前記(A)及び(B)と、さらに前記(C)、(D)及び(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の反応生成物である場合にも、前記(A)成分に対する前記(B)成分と反応モル比[(B)/(A)]は、前記と同様の理由で0.3~1.0の範囲であることが好ましく、0.6~1.0の範囲であることがより好ましい。一方、前記(A)成分に対する、前記(C)、(D)及び(E)成分の反応モル比[{(C)+(D)+(E)}/(A)]は、0.05~3.1の範囲であることが好ましく、0.07~2.5の範囲であることがより好ましく、0.1~2.0の範囲であることがより好ましい。
ただし、ガスバリア性及び塗工性の観点から、前記(A)成分に対する、前記(B)~(E)成分の反応モル比[{(B)+(C)+(D)+(E)}/(A)]は、0.35~2.5の範囲であることが好ましく、0.35~2.0の範囲であることがより好ましい。
【0043】
(非球状無機粒子)
非球状無機粒子は、無機蒸着層と樹脂硬化層とを有するガスバリア性フィルムにおいて、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上させるために用いられる。非球状無機粒子の形状は、球状(略真円球状)以外の三次元形状であればよく、例えば、板状、鱗片状、柱状、鎖状、繊維状等が挙げられる。板状、鱗片状の無機粒子は複数積層されて層状になっていてもよい。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性向上の観点からは、板状、鱗片状、柱状、又は鎖状の無機粒子が好ましく、板状、鱗片状、又は柱状の無機粒子がより好ましく、板状又は鱗片状の無機粒子がさらに好ましい。
【0044】
非球状無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、雲母(マイカ)、タルク、アルミニウム、ベントナイト、スメクタイト等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上させる観点からはシリカ、アルミナ、及び雲母からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、シリカがさらに好ましい。
上記非球状無機粒子は、エポキシ樹脂組成物への分散性を高め、得られる樹脂硬化層及びガスバリア性フィルムの透明性を向上させることを目的として、必要に応じ表面処理されていてもよい。中でも、非球状無機粒子は有機系材料でコーティングされていることが好ましく、ガスバリア性及び耐屈曲性、透明性を向上させる観点からは有機系材料でコーティングされたシリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。ガスバリア性及び耐屈曲性の観点からは、有機系材料でコーティングされたシリカがさらに好ましく、透明性の観点からは、有機系材料でコーティングされたアルミナがさらに好ましい。
【0045】
非球状無機粒子の平均粒径は、好ましくは1~2,000nm、より好ましくは1~1,500nm、さらに好ましくは1~1,000nm、よりさらに好ましくは1~800nm、よりさらに好ましくは1~500nm、よりさらに好ましくは5~300nm、よりさらに好ましくは5~200nm、よりさらに好ましくは5~100nm、よりさらに好ましくは8~70nmの範囲である。当該平均粒径が1nm以上であれば無機粒子の調製が容易であり、2,000nm以下であればガスバリア性、耐屈曲性、及び透明性がいずれも良好になる。なお、当該平均粒径は一次粒子の平均粒径である。
【0046】
非球状無機粒子が板状、鱗片状、柱状、又は繊維状である場合、非球状無機粒子のアスペクト比は好ましくは2~700、より好ましくは3~500である。当該アスペクト比が2以上であると良好なガスバリア性が発現しやすい。非球状無機粒子の平均粒径及びアスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、3箇所以上の測定値の平均から求められる。なお、樹脂硬化層中に存在する非球状無機粒子の平均粒径及びアスペクト比については、例えばガスバリア性フィルムをエポキシ樹脂で包埋した後、イオンミリング装置を用いてフィルム断面のイオンミリングを行って断面観察用試料を作製し、得られた試料の樹脂硬化層部分の断面を上記と同様の方法で観察、測定することにより求めることができる。
非球状無機粒子の平均粒径が100nm未満であって上記方法による平均粒径の測定が困難である場合は、当該平均粒径は例えばBET法により測定することもできる。
【0047】
非球状無機粒子の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
非球状無機粒子の調製しやすさ、エポキシ樹脂組成物への配合容易性並びに分散性の観点から、本発明においては非球状無機粒子の分散液を調製し、該分散液をエポキシ樹脂組成物に配合することが好ましい。非球状無機粒子分散液の分散媒には特に制限はなく、水又は有機溶剤のいずれも用いることができる。有機溶剤としては非球状無機粒子の分散性の観点から極性溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール等のプロトン性極性溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
非球状無機粒子の分散性の観点からは、分散媒は水及びプロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、粒子の分散性、並びに分散液とエポキシ樹脂組成物との混和性の観点からはプロトン性極性溶剤がより好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0048】
(エポキシ樹脂組成物の配合及び調製)
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂反応物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数の比(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数)が0.2~12.0の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.4~10.0の範囲、さらに好ましくは0.6~8.0の範囲である。なお、基材フィルムと樹脂硬化層とを有する本発明のガスバリア性フィルムに、さらに熱可塑性樹脂層を積層して後述する積層体とする場合には、上記(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数)の値が大きい方が、樹脂硬化層とこれに隣接する層との層間接着性が良好になるため好ましい。この観点からは、エポキシ樹脂組成物中の上記(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数)は、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.5以上である。
【0049】
エポキシ樹脂組成物中の前記非球状無機粒子の含有量は、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し、好ましくは0.5~10.0質量部、より好ましくは1.0~8.0質量部、さらに好ましくは1.5~7.5質量部、よりさらに好ましくは3.0~7.0質量部である。エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の含有量がエポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し0.5質量部以上であれば、これを用いて得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性及び耐屈曲性向上効果が良好である。また、当該含有量が10.0質量部以下であると得られるガスバリア性フィルムの透明性も良好になる。
【0050】
本発明の効果を得る観点から、エポキシ樹脂組成物の固形分中のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び非球状無機粒子の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上であり、上限は100質量%である。「エポキシ樹脂組成物の固形分」とは、エポキシ樹脂組成物中の水及び有機溶剤を除いた成分を意味する。
エポキシ樹脂組成物に用いられる有機溶剤としては非反応性溶剤が好ましい。その具体例としては、非球状無機粒子の分散液に用いる分散媒として例示した極性溶剤の他、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン等を用いることができる。
【0051】
エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて熱硬化性樹脂、湿潤剤、粘着付与剤、カップリング剤、消泡剤、硬化促進剤、防錆添加剤、顔料、酸素捕捉剤等の添加剤を配合してもよい。エポキシ樹脂組成物中のこれら添加剤の合計含有量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001~15.0質量部である。
【0052】
エポキシ樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、非球状無機粒子の分散液、及び必要に応じ用いられる添加剤並びに溶剤をそれぞれ所定量配合した後、公知の方法及び装置を用いて攪拌、混合することにより調製できる。各成分を混合する順序は特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の分散性を良好にするためには、まず非球状無機粒子の分散液と溶剤成分とを混合し、次いで、エポキシ樹脂硬化剤又はその溶液、並びにエポキシ樹脂の順に添加して混合することが好ましい。非球状無機粒子が含まれる液中の固形分濃度を低い状態から徐々に高くしていくことにより、非球状無機粒子の分散性が良好な状態で維持されるためである。
【0053】
本発明のガスバリア性フィルムにおける樹脂硬化層は上記エポキシ樹脂組成物の硬化物である。エポキシ樹脂組成物の硬化方法は特に制限されず、その硬化物を得るのに十分なエポキシ樹脂組成物の濃度及び温度において公知の方法により行われる。硬化温度は、例えば10~140℃の範囲で選択できる。
【0054】
樹脂硬化層の厚みは、ガスバリア性及び耐屈曲性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、よりさらに好ましくは1.0μm以上である。また、ガスバリア性フィルムの透明性の観点からは、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下、よりさらに好ましくは5.0μm以下、よりさらに好ましくは3.5μm以下である。上記厚みは、樹脂硬化層の1層あたりの厚みである。
【0055】
樹脂硬化層単独での23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は、好ましくは1.0cc・mm/m2・day・atm以下、より好ましくは0.5cc・mm/m2・day・atm以下、さらに好ましくは0.3cc・mm/m2・day・atm以下、よりさらに好ましくは0.1cc・mm/m2・day・atm以下である。樹脂硬化層の酸素透過係数は、具体的には実施例に記載の方法で求められる。
【0056】
<ガスバリア性フィルムの層構成>
本発明のガスバリア性フィルムは、無機蒸着層を有する前記基材フィルムと、少なくとも1層の前記樹脂硬化層とを有し、かつ、該基材フィルムの無機蒸着層側の面に該樹脂硬化層を有する構成であればよい。本発明の効果を得る観点からは、本発明のガスバリア性フィルムは前記基材フィルムが片面のみに無機蒸着層を有し、樹脂硬化層を1層のみ有する構成が好ましい。また、無機蒸着層と樹脂硬化層とは隣接していることが好ましい。
ガスバリア性フィルムの好ましい層構成として、例えば
図1の構成が挙げられる。
図1は本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す断面模式図であり、ガスバリア性フィルム100は、片面に無機蒸着層12を有する基材フィルム1と、その無機蒸着層12側の面に樹脂硬化層2が設けられた構成である。基材フィルム1は、ベースフィルム11の片面に無機蒸着層12が形成されたものである。
図1においては、無機蒸着層12と樹脂硬化層2とが隣接している。また
図1に示すように、本発明のガスバリア性フィルムは基材フィルム以外のフィルムを有さないことが好ましい。
但し本発明のガスバリア性フィルムは
図1の層構成のものに限定されず、例えば樹脂硬化層を2層以上有してもよい。また、例えば
図1のガスバリア性フィルムにおいて、基材フィルム1と樹脂硬化層2との間、又は、樹脂硬化層2の上面(基材フィルム1と隣接していない面)側に、プライマー層や保護層等を有する構成でもよい。
【0057】
<ガスバリア性フィルムの製造方法>
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば
図1の構成のガスバリア性フィルムの製造方法としては、ベースフィルムの片面に無機蒸着層が形成された基材フィルムの無機蒸着層側の面に、樹脂硬化層形成用の前記エポキシ樹脂組成物を所望の厚みとなるよう塗布し、次いでエポキシ樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化層を形成する方法が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物を塗布する際の塗布方法としては、例えば、バーコート、メイヤーバーコート、エアナイフコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、マイクログラビアコート、マイクロリバースグラビアコート、ダイコート、スロットダイコート、バキュームダイコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、はけ塗り等が挙げられる。これらの中でもバーコート、ロールコート又はスプレーコートが好ましく、工業的にはグラビアコート、リバースグラビアコート、マイクログラビアコート、又はマイクロリバースグラビアコートが好ましい。
エポキシ樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて溶剤を揮発させる工程(乾燥工程)を行う。乾燥工程における条件は適宜選択できるが、例えば、乾燥温度60~180℃、乾燥時間5~180秒の条件で行うことができる。
乾燥工程を行った後、エポキシ樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化層を形成する。硬化温度は、例えば10~140℃の範囲で選択でき、好ましくは10~80℃の範囲である。また硬化時間は、例えば0.5~200時間の範囲で選択でき、好ましくは2~100時間の範囲である。
【0058】
<ガスバリア性フィルムの特性>
本発明のガスバリア性フィルムは優れたガスバリア性を有する。例えば、ガスバリア性フィルムの23℃、相対湿度60%における酸素透過率は、好ましくは0.3cc/m2・day・atm以下、より好ましくは0.2cc/m2・day・atm以下、さらに好ましくは0.1cc/m2・day・atm以下、よりさらに好ましくは0.05cc/m2・day・atm以下、よりさらに好ましくは0.03cc/m2・day・atm以下である。
また、ガスバリア性フィルムの23℃、相対湿度60%における水蒸気透過率は、好ましくは0.50g/m2・day以下、より好ましくは0.30g/m2・day以下、さらに好ましくは0.15g/m2・day以下、よりさらに好ましくは0.10g/m2・day以下、よりさらに好ましくは0.07g/m2・day以下である。
ガスバリア性フィルムの酸素透過率及び水蒸気透過率は、具体的には実施例に記載の方法で求められる。
【0059】
本発明のガスバリア性フィルムは、着色が少なくかつ高い透明性を有することが好ましい。特に量子ドットディスプレイにおける量子ドットの保護フィルムや有機ELディスプレイにおける有機EL素子の保護フィルム等、画像表示装置用の光学フィルムとして用いる場合は、低着色で高透明性であることが求められる。
上記観点から、本発明のガスバリア性フィルムのYI値は、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。YI値は、JIS K7373:2006に準拠して測定することができる。
本発明のガスバリア性フィルムを光学フィルムに用いる場合、そのHazeは、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、よりさらに好ましくは3%以下である。Hazeは、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。
また本発明のガスバリア性フィルムを光学フィルムに用いる場合、その全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定することができる。
【0060】
[積層体]
本発明の積層体は、前述した本発明のガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂層とを有するものである。その好ましい構成としては例えば、本発明のガスバリア性フィルムにおける樹脂硬化層側の面(
図1のガスバリア性フィルム100における樹脂硬化層2側の面(上面))、又はその反対面(
図1のガスバリア性フィルム100におけるベースフィルム11側の面(下面))に熱可塑性樹脂層を積層した構成が挙げられる。
当該積層体は、ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂層との間にさらにプライマー層やインキ層、接着剤層、表面保護層、蒸着層等の任意の層が積層されていてもよい。また本発明の積層体は、本発明のガスバリア性フィルム、及び熱可塑性樹脂層を、それぞれ2層以上有していてもよい。
【0061】
熱可塑性樹脂層としては、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。当該熱可塑性樹脂フィルムとしては、前記基材フィルムを構成するベースフィルムにおいて例示した透明プラスチックフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの表面には火炎処理やコロナ放電処理などの表面処理が施されていてもよい。また熱可塑性樹脂フィルムとして、紫外線吸収剤や着色剤等を含むフィルムや、表面にプライマー層、インキ層、表面保護層、蒸着層等を有するフィルムを用いることもできる。
熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは10~300μm、より好ましくは10~100μmである。
【0062】
本発明の積層体の好ましい層構成としては、例えば、前記ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが直接積層された構成や、前記ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成等が挙げられる。中でも、ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成が好ましい。
ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成である場合、ガスバリア性フィルムにおける樹脂硬化層側の面と熱可塑性樹脂フィルムとを対向させて積層することが好ましい。この場合、積層体の層構成は
図2に示す構成となる。
図2は本発明の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
図2において、積層体200はガスバリア性フィルム100における樹脂硬化層2側の面と熱可塑性樹脂フィルム3とを対向させて、接着剤層4を介して積層したものであり、ベースフィルム11、無機蒸着層12、樹脂硬化層2、接着剤層4、及び熱可塑性樹脂フィルム3がこの順に積層された構成である。
【0063】
積層体の製造方法については特に制限されない。例えば、ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが直接積層された積層体の製造方法としては、ガスバリア性フィルムを構成する基材フィルムの無機蒸着層側の面に前述したエポキシ樹脂組成物を塗布した後、直ちにその塗布面に熱可塑性樹脂フィルムをニップロール等により貼り合わせ、次いで、前述の方法でエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。この場合、樹脂硬化層を構成するエポキシ樹脂組成物が、ガスバリア性フィルムにおける基材フィルムと上記熱可塑性樹脂フィルムとを接着させる役割も果たす。
ガスバリア性フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された積層体の製造方法としては、前述の方法で製造したガスバリア性フィルムの片面、又は、熱可塑性樹脂フィルムの片面に接着剤層を構成する接着剤を塗布し、次いで他方のフィルムを貼付して積層する方法が挙げられる。
接着剤層を構成する接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等の公知の接着剤を用いることができる。また接着剤層の厚みは特に限定されないが、接着性と透明性とを両立させる観点からは、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは1~20μm、さらに好ましくは2~20μmである。
【0064】
<用途>
本発明のガスバリア性フィルム及び積層体は、ガスバリア性及び耐屈曲性に優れるため、食品、医薬品、化粧品、精密電子部品等を保護するための包装材料用途に好適である。包装材料として使用する場合には、本発明のガスバリア性フィルム及び積層体をそのまま包装材料として用いてもよく、他の層やフィルムをさらに積層して用いてもよい。
また、特に水蒸気バリア性及び透明性が高いガスバリア性フィルム及び積層体は、例えば量子ドットディスプレイにおける量子ドットの保護フィルムや有機ELディスプレイにおける有機EL素子の保護フィルム等、画像表示装置用の光学フィルムとしても好適である。当該保護フィルムとしての態様は、例えば、有機EL素子の保護フィルムであれば、有機EL表示装置において、有機EL素子の形成面であってかつ表示装置の観察者側となる面に本発明のガスバリア性フィルムを設ける態様が挙げられる。
【実施例】
【0065】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
本実施例における測定及び評価は以下の方法で行った。
【0066】
<樹脂硬化層の厚み>
多層膜厚測定装置(グンゼ(株)製「DC-8200」)を用いて測定した。
【0067】
<YI>
JIS K7373:2006に準拠し、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業(株)製「COH400」)を用いて測定した。
【0068】
<Haze>
JIS K7136:2000に準拠し、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業(株)製「COH400」)を用いて測定した。
【0069】
<全光線透過率>
JIS K7361-1:1997に準拠し、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業(株)製「COH400」)を用いて測定した。
【0070】
<フィルムの酸素透過率(cc/m2・day・atm)>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製「OX-TRAN2/21」)を使用して、23℃、相対湿度60%の条件下で酸素透過率を測定した。
【0071】
<樹脂硬化層の酸素透過係数(cc・mm/m2・day・atm)>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製「OX-TRAN2/21」)を使用して、各製造例で得られたエポキシ樹脂組成物を基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚み:12μm)にバーコーターを用いて塗布した。該エポキシ樹脂組成物を90℃で10秒間加熱して乾燥させ、さらに40℃で2日加熱して硬化させて、基材と樹脂硬化層とからなる積層フィルムを作製した。この積層フィルムと、基材そのものの酸素透過率を23℃、相対湿度60%の条件下で前記方法により測定し、樹脂硬化層の酸素透過係数を以下の式を用いて計算した。
1/R1=1/R2+DFT/P
ここで、
R1=積層フィルムの酸素透過率(cc/m2・day・atm)
R2=基材の酸素透過率(cc/m2・day・atm)
DFT=樹脂硬化層の厚み(mm)
P=樹脂硬化層の酸素透過係数(cc・mm/m2・day・atm)
【0072】
<樹脂硬化層の酸素透過率(cc/m2・day・atm)>
樹脂硬化層の酸素透過率は、樹脂硬化層の酸素透過係数に樹脂硬化層の厚みを乗じた値とした。
【0073】
<フィルムの水蒸気透過率(g/m2・day)>
水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 1/50」)を用いて、40℃、相対湿度90%の条件下で継続して測定し、24時間後の測定値を水蒸気透過率とした。
【0074】
<フィルムの屈曲試験>
各例で得られたフィルムに対し、ゲルボフレックステスター(理学工業(株)製)を用いて360度のひねりを50回加えた(屈曲試験50回)。屈曲試験前後のフィルムの酸素透過率及び水蒸気透過率を前記方法で測定した。
【0075】
<ラミネート強度(g/15mm)>
JIS K6854-3:1999に指定されている方法に従い、T型剥離試験により300mm/minの剥離速度でラミネート強度を測定した。
【0076】
[ガスバリア性フィルムの作製及び評価]
製造例1(エポキシ樹脂硬化剤Aの製造)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持した。固形分濃度が65%になるように、相当量のエタノールを1.5時間かけて滴下し、エポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0077】
製造例2(エポキシ樹脂硬化剤Bの製造)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.88molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持した。100℃まで冷却し、固形分濃度が65質量%になるように、相当量のエタノールを加え65℃に冷却した。ここに溶融したエチレンカーボネート0.27molを30分かけて滴下し、65℃で5時間保持して、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0078】
製造例3(エポキシ樹脂硬化剤Cの製造)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンと0.93molのクロトン酸メチルを仕込み、窒素気流下100℃で4時間攪拌した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持した。固形分濃度が65質量%になるように、相当量のエタノールを1.5時間かけて滴下し、エポキシ樹脂硬化剤Cを得た。
【0079】
製造例A(エポキシ樹脂組成物Aの製造)
希釈溶剤であるメタノール9.01g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された板状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-A2EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Aを製造した。
(積層フィルム及び樹脂硬化層の評価)
得られたエポキシ樹脂組成物Aを、基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚み:12μm)にバーコーターNo.8を使用して塗布した。該エポキシ樹脂組成物を90℃で10秒間加熱して乾燥させ、さらに40℃で2日加熱して硬化させて、基材と樹脂硬化層とからなる積層フィルムを作製した。樹脂硬化層の厚みは3.1μmであった。この積層フィルムを用いて、前記方法で積層フィルムのYI、Haze、全光線透過率、酸素透過率、並びに樹脂硬化層の酸素透過係数及び酸素透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
製造例B
希釈溶剤であるメタノール8.65g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された板状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-A2EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例2で得られたエポキシ樹脂硬化剤B11.93gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)2.75g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Bを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Bを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
製造例C
希釈溶剤であるメタノール9.79g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された板状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-A2EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例3で得られたエポキシ樹脂硬化剤C11.09gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.30g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Cを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Cを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
製造例D
希釈溶剤であるメタノール9.01g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Dを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Dを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
製造例E
希釈溶剤であるメタノール11.84g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)2.10gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Eを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Eを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
製造例F
希釈溶剤であるメタノール8.09g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A13.55gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)1.69g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=3.00)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Fを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Fを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
製造例G
希釈溶剤であるメタノール7.76g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A14.49gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)1.0g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=5.00)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Gを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Gを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
製造例H
希釈溶剤であるメタノール8.65g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例2で得られたエポキシ樹脂硬化剤B11.93gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)2.75g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Hを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Hを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
製造例I
希釈溶剤であるメタノール9.79g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例3で得られたエポキシ樹脂硬化剤C11.09gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.30g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Iを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Iを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
製造例J
希釈溶剤であるメタノール10.76g及び酢酸エチル1.95g、並びに、鱗片状シリカ粒子の分散液(AGCエスアイテック(株)製「サンラブリーLFS HN-050」、水分散液、固形分濃度:15質量%、平均粒径:500nm)3.50gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Jを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Jを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
製造例K
希釈溶剤であるメタノール10.97g及び酢酸エチル1.95g、並びに、鱗片状シリカ粒子の分散液(AGCエスアイテック(株)製「サンラブリーLFS HN-150」、水分散液、固形分濃度:16質量%、平均粒径:1500nm)3.28gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Kを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Kを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
製造例L
板状の親油性膨潤性雲母(片倉コープアグリ(株)製「ソマシフMEE/C25」)をメタノールに分散させて固形分濃度5質量%の分散液を調製した。ここに、希釈溶剤であるメタノール3.76g及び酢酸エチル1.95gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Lを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Lを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
製造例M
希釈溶剤であるメタノール10.76g及び酢酸エチル1.95g、並びに、鎖状シリカ粒子の分散液(日産化学工業(株)製「IPA-ST-UP」、イソプロピルアルコール分散液、固形分濃度:15質量%、平均粒径:12nm)3.50gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物Mを製造した。
得られたエポキシ樹脂組成物Mを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
比較製造例A
板状アルミナ粒子の分散液を配合せず、かつメタノールの添加量を13.73gに変更したこと以外は製造例Aと同様の方法で比較エポキシ樹脂組成物Aを製造した。得られた比較エポキシ樹脂組成物Aを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
比較製造例B
希釈溶剤であるメタノール12.51g及び酢酸エチル1.95g、並びに、球状シリカ粒子の分散液(メタノール分散シリカゾル、固形分濃度:30質量%、平均粒径:12nm)1.75gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、比較エポキシ樹脂組成物Bを製造した。
得られた比較エポキシ樹脂組成物Bを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
比較製造例C
希釈溶剤であるメタノール13.73g及び酢酸エチル1.95g、並びに、真球状の有機粒子である架橋アクリル粒子(JXエネルギー(株)製「ENEOSユニパウダー0220C」、平均粒径:2μm)0.525gを加え、よく撹拌して有機粒子を分散させた。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤A10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、比較エポキシ樹脂組成物Cを製造した。
得られた比較エポキシ樹脂組成物Cを用いて、製造例Aと同様に積層フィルムを作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
参考例
基材として用いたPETフィルム単独でのYI、Haze、全光線透過率、酸素透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
【0097】
実施例1
基材フィルムとして、PETの片面にケイ素酸化物(シリカ)が蒸着されたシリカ蒸着PET(三菱樹脂(株)製「テックバリアL」、厚み:12μm)を用いた。このシリカ蒸着面に、製造例Aで得られたエポキシ樹脂組成物AをバーコーターNo.8を使用して塗布し、90℃で10秒乾燥させ、さらに40℃で2日加熱して硬化させ、厚み3.2μmの樹脂硬化層を有するガスバリア性フィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、前記方法で各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0098】
実施例2~13
使用するエポキシ樹脂組成物及び樹脂硬化層の厚みを表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
比較例1
実施例1~13で使用した基材フィルムであるシリカ蒸着PETを用いて、前記方法で各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
比較例2~4
使用するエポキシ樹脂組成物及び樹脂硬化層の厚みを表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0101】
【0102】
表1における「樹脂硬化層の酸素透過係数」の値によれば、樹脂硬化層単独での酸素透過係数としては、粒子を含有しない比較製造例A、及び、粒子が非球状無機粒子でない比較製造例B~Cと同程度のものが製造例にも含まれる。
しかしながら表2に示すように、基材フィルムの無機蒸着層側の面に樹脂硬化層が形成されたガスバリア性フィルムにおけるバリア性は、樹脂硬化層単独のバリア性と傾向が異なっている。非球状無機粒子を含有する所定の樹脂硬化層を有する実施例1~13のガスバリア性フィルムは初期バリア性及び耐屈曲性試験後のバリア性が良好であり、特に水蒸気バリア性については初期及び耐屈曲性試験後ともに比較例のガスバリア性フィルムよりも良好な結果を示した。実施例1,4,10~13のガスバリア性フィルムは初期バリア性が飛躍的に向上し、かつ、耐屈曲性試験後のバリア性も良好であった。また、特に実施例1~9のガスバリア性フィルムはHaze値が低く透明性が良好であり、実施例10,11のガスバリア性フィルムは初期の酸素バリア性が良好であった。
【0103】
実施例14
使用する基材フィルムを、PETの片面にアルミニウム酸化物(アルミナ)が蒸着されたアルミナ蒸着PET(東レフィルム加工(株)製「バリアロックス1011HG(コート無し)」、厚み:12μm)に変更し、及び樹脂硬化層の厚みを表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0104】
実施例15
使用する基材フィルムを、PETの片面にシリカ及びアルミナが蒸着された二元蒸着PET(東洋紡(株)製「エコシアールVE100」、厚み:12μm)に変更し、及び樹脂硬化層の厚みを表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0105】
実施例16
使用するエポキシ樹脂組成物及び樹脂硬化層の厚みを表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例14と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0106】
実施例17
使用するエポキシ樹脂組成物及び樹脂硬化層の厚みを表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例15と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0107】
比較例5
実施例14及び16で使用した基材フィルムであるアルミナ蒸着PETを用いて、前記方法で各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0108】
比較例6
実施例15及び17で使用した基材フィルムである二元蒸着PETを用いて、前記方法で各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0109】
【0110】
[積層体の作製及び層間接着性評価]
製造例1’(エポキシ樹脂硬化剤A’の製造)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持した。固形分濃度が62.2質量%になるように、相当量のエタノールを1.5時間かけて滴下し、さらに、シランカップリング剤である3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学(株)製「KBE-903」)を2.8質量%添加して、エポキシ樹脂硬化剤A’を得た。
【0111】
製造例D’(エポキシ樹脂組成物D’の製造)
希釈溶剤であるメタノール9.01g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1’で得られたエポキシ樹脂硬化剤A’10.92gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD-X)3.40g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.20)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物D’を製造した。
【0112】
製造例F’(エポキシ樹脂組成物F’の製造)
希釈溶剤であるメタノール9.01g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1’で得られたエポキシ樹脂硬化剤A’13.55gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD-X)1.69g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=3.00)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物F’を製造した。
【0113】
製造例G’(エポキシ樹脂組成物G’の製造)
希釈溶剤であるメタノール9.01g及び酢酸エチル1.95g、並びに、有機系コーティングが施された柱状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-TS1EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%)5.25gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1’で得られたエポキシ樹脂硬化剤A’14.49gを加えて撹拌し、さらにエポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD-X)1.08g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=5.00)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物G’を製造した。
【0114】
実施例18
基材フィルムとして、PETの片面にアルミニウム酸化物(アルミナ)が蒸着されたアルミナ蒸着PET(東レフィルム加工(株)製「バリアロックス1011HG(コート無し)」、厚み:12μm)を用いた。このアルミナ蒸着面に、製造例D’で得られたエポキシ樹脂組成物D’をバーコーターNo.4を使用して塗布し、120℃で30秒間加熱して乾燥させ、さらに40℃で2日加熱して硬化させて、基材フィルムと樹脂硬化層とを有するガスバリア性フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムの樹脂硬化層上に、ウレタン系接着剤として、ポリエステル系樹脂成分(東洋モートン(株)製「AD-502」)を15質量部、ポリイソシアネート成分(東洋モートン(株)製「CAT-RT85」)1.05質量部含む酢酸エチル溶液(固形分濃度:20質量%)をバーコーターNo.12を使用して塗布し、85℃で10秒乾燥させた後、厚み50μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製「P1146」)をニップロールにより貼り合わせ、40℃で2日間エージングすることにより積層体を得た。
得られた積層体を用いて前記方法でラミネート強度を測定し、層間接着性を評価した。結果を表4に示す。
【0115】
実施例19~20
使用するエポキシ樹脂組成物を表4に示すとおりに変更したこと以外は、実施例18と同様の方法で積層体を作製し、ラミネート強度を測定した。結果を表4に示す。
【0116】
【0117】
表4に示すように、本発明の積層体は層間接着性も良好である。特に実施例19及び20の積層体は層間接着性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のガスバリア性フィルム及び積層体はガスバリア性、耐屈曲性に優れるため、包装材料用途に好適である。また、特に水蒸気バリア性及び透明性が高いガスバリア性フィルムは、例えば量子ドットディスプレイにおける量子ドットの保護フィルムや有機ELディスプレイにおける有機EL素子の保護フィルム等、画像表示装置用の光学フィルムとしても好適である。
【符号の説明】
【0119】
100 ガスバリア性フィルム
1 基材フィルム
11 ベースフィルム
12 無機蒸着層
2 樹脂硬化層
3 熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層)
4 接着剤層
200 積層体