(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ヤーンパッケージ
(51)【国際特許分類】
B65H 54/16 20060101AFI20220524BHJP
B65H 55/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B65H54/16
B65H55/00
(21)【出願番号】P 2019515112
(86)(22)【出願日】2018-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2018005790
(87)【国際公開番号】W WO2018198492
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2017088542
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 誠
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌範
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-083235(JP,A)
【文献】特開昭59-187572(JP,A)
【文献】特開2004-018207(JP,A)
【文献】特開2000-174055(JP,A)
【文献】仏国特許発明第02122775(FR,A5)
【文献】実開昭57-199247(JP,U)
【文献】特開平2-291367(JP,A)
【文献】特開昭64-28168(JP,A)
【文献】特開2007-290870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00
B65H 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンと、該ボビンに巻き取られたヤーンとからなる
ガラス繊維用ヤーンパッケージであって、
該ヤーンが該ボビンに接して巻き取られ円筒形状をとる第1の巻取部と、
該ヤーンが該第1の巻取部に接して巻き取られ、下部が円筒形状をとり、上部が円錐台形状をとり、始端部が該第1の巻取部の終端部に連続している第2の巻取部とを備え、
該第1の巻取部の下端の該ボビンの底部からの高さと、該第2の巻取部の下端の該ボビンの底部からの高さとが実質的に同一であり、
該第1の巻取部の全高に対する該第2の巻取部の全高の割合が96.0~99.9%の範囲であり、
該第1の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体もしくは一部の長さ単独又は、該第1の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体の長さと該第2の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体もしくは一部の長さとの合計の長さが2000mとなる際の該ボビンの表面被覆率が75%以上であることを特徴とする
ガラス繊維用ヤーンパッケージ。
【請求項2】
請求項1記載の
ガラス繊維用ヤーンパッケージにおいて、前記第2の巻取部の全高に対する該第2の巻取部の下部の前記円筒形状をとる部分の高さの割合が71.5~90.0%の範囲であることを特徴とする
ガラス繊維用ヤーンパッケージ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の
ガラス繊維用ヤーンパッケージにおいて、前記第2の巻取部の上部の前記円錐台形状をとる部分の円錐台形状部分割率が2.0~15.0の範囲であることを特徴とする
ガラス繊維用ヤーンパッケージ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の
ガラス繊維用ヤーンパッケージにおいて、前記
ガラス繊維用ヤーンパッケージに巻き取られる前記ヤーンの全糸長に対し、前記第1の巻取部に巻き取られる該ヤーンの糸長の割合が0.1~10.0%の範囲であることを特徴とする
ガラス繊維用ヤーンパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ヤーンパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボビンと、該ボビンに巻き取られたヤーンとからなるヤーンパッケージが知られている。前記ヤーンは例えばガラス繊維からなるヤーン(以下、ガラスヤーンと略記する)であり、ガラス繊維織物等の製造に用いられる。
【0003】
前記ガラスヤーンのヤーンパッケージとして、例えば、第1の巻取部と、第2の巻取部とを備えるヤーンパッケージが知られている(例えば、特許文献1参照)。前記第1の巻取部は、ボビンの芯部の表面をほぼ覆うように所定量のガラスヤーンが巻き取られて形成されている。また、前記第2の巻取部は、前記ガラスヤーンが連続して前記ボビンの芯部に所定量巻き取られて形成されている。
【0004】
また、前記ガラスヤーンのヤーンパッケージとして、前記第2の巻取部の下端から全高の30~70%の範囲の高さの部分を円筒形状とし、残りの高さの部分を円錐台形状としたヤーンパッケージが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-83235号公報
【文献】特開2004-18207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のヤーンパッケージでは、ヤーンを引き出して解舒する際に該ヤーンが切断する現象や、端部にほつれが発生する現象が発生したり、解舒されたヤーンを用いて製造される織物等の製品に毛羽が発生したりするという不都合がある。
【0007】
前記ヤーンが切断する現象は、「糸口無し」と呼ばれる。また、前記端部にほつれが発生する現象は「巻崩れ」と呼ばれる。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、糸口無しや巻崩れを防止し、さらに解舒されたヤーンを用いて製造される織物等の製品に毛羽が発生することを抑制することができるガラス繊維用ヤーンパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ヤーンパッケージは、ボビンと、該ボビンに巻き取られたヤーンとからなるヤーンパッケージであって、該ヤーンが該ボビンに接して巻き取られ円筒形状をとる第1の巻取部と、該ヤーンが該第1の巻取部に接して巻き取られ、下部が円筒形状をとり、上部が円錐台形状をとり、始端部が該第1の巻取部の終端部に連続している第2の巻取部とを備え、該第1の巻取部の下端の該ボビンの底部からの高さと、該第2の巻取部の下端の該ボビンの底部からの高さとが実質的に同一であり、該第1の巻取部の全高に対する該第2の巻取部の全高の割合が96.0~99.9%の範囲であり、該第1の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体もしくは一部の長さ単独又は、該第1の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体の長さと該第2の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体もしくは一部の長さとの合計の長さが2000mとなる際の該ボビンの表面被覆率が75%以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明のガラス繊維用ヤーンパッケージ(以下、ヤーンパッケージと略記する)は、前記第1の巻取部の下端の前記ボビンの底部からの高さと、前記第2の巻取部の下端の該ボビンの底部からの高さとが実質的に同一であり、該第1の巻取部の全高に対する該第2の巻取部の全高の割合が96.0~99.9%の範囲であることにより、解舒する際の巻崩れの発生を防止することができ、さらに解舒されたヤーンを用いて製造される織物等の製品に毛羽が発生することを抑制することができる。
【0011】
なお、本明細書において、前記「実質的に同一」とは、前記第1の巻取部の下端の前記ボビンの底部からの高さと、前記第2の巻取部の下端の該ボビンの底部からの高さとの差が0.1mm以内であることを意味する。
【0012】
前記第1の巻取部の全高に対する前記第2の巻取部の全高の割合が96.0%未満であるときには、解舒されたヤーンを用いて製造される織物等の製品に毛羽が発生することを抑制することができない。また、前記第1の巻取部の全高に対する前記第2の巻取部の全高の割合が99.9%を超えるときには、解舒する際の巻崩れの発生を防止することができない。
【0013】
また、本発明のヤーンパッケージは、前記第1の巻取部に巻き取られた前記ヤーンの全体もしくは一部の長さ単独又は、該第1の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体の長さと前記第2の巻取部に巻き取られた該ヤーンの全体もしくは一部の長さとの合計の長さが2000mとなる際の前記ボビンの表面被覆率が75%以上であることにより、解舒の際に糸口無しの発生を防止することができる。一方、前記ボビンの表面被覆率が75%未満であるときには、解舒の際に糸口無しの発生を防止することができない。
【0014】
また、本発明のヤーンパッケージは、前記第2の巻取部の全高に対する該第2の巻取部の下部の前記円筒形状をとる部分(以下、円筒形状部と略記することがある)の高さの割合が71.5~90.0%の範囲であることが好ましい。本発明のヤーンパッケージは、前記第2の巻取部の全高に対する該第2の巻取部の円筒形状部の高さの割合が前記範囲であることにより、優れた解舒性を得ることができ、解舒の際に糸口無しの発生を特に効果的に防止することができる。
【0015】
また、本発明のヤーンパッケージは、前記第2の巻取部の上部の前記円錐台形状をとる部分(以下、円錐台形状部と略記することがある)の円錐台形状部分割率が2.0~15.0の範囲であることが好ましい。本発明のヤーンパッケージは、前記円錐台形状部分割率が2.0%以上であることにより、解舒の際に糸口無しの発生を特に効果的に防止することができる。一方、前記円錐台形状部分割率が15.0%以下であることにより、巻崩れの発生を特に効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明のヤーンパッケージは、該ヤーンパッケージに巻き取られる前記ヤーンの全糸長に対し、前記第1の巻取部に巻き取られる該ヤーンの糸長の割合は、0.1~10.0%の範囲であることが好ましい。前記ヤーンパッケージに巻き取られる前記ヤーンの全糸長に対する前記第1の巻取部に巻き取られる該ヤーンの糸長の割合が前記範囲にあることにより、解舒の際に糸口無しの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のヤーンパッケージの構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のヤーンパッケージ1は、ボビン2と、ボビン2に巻き取られたヤーン3とからなる
。
【0020】
ヤーン3がガラスヤーンである場合には、モノフィラメントヤーンであってもよく、マルチフィラメントヤーンであってもよい。マルチフィラメントヤーンの場合、1つのガラスフィラメントの繊維径は3~30μmであり、10~1500本のガラスフィラメントが集束されてヤーンを形成している。前記ガラスヤーンの重量は、例えば、0.5~200tex(g/km)である。
【0021】
前記マルチフィラメントヤーンであるガラスヤーンは、溶融炉で溶融された溶融ガラスをブッシングのノズルから引き出して形成されたガラスフィラメントを複数本集束してガラスストランドとし、該ガラスストランドを巻き取りチューブに巻き取ってケーキとした後、該ケーキからボビンに該ストランドを巻き戻し、通常、0.2~1.5Zの撚りをかけることにより形成される。なお、ストランドの巻き戻しの際に撚りをかけない場合もあるし、0.2~1.5Sの撚りをかける場合もある。ここで、数値末尾の「Z」は、「Z撚り」(撚り方向が右ネジの方向に撚られていること)を意味し、数値末尾の「S」は「S撚り」(撚り方向が左ネジの方向に撚られていること)を意味する。
【0022】
ボビン2は、底部4と、底部4に立設された円筒状の芯部5と、芯部5の上端に設けられた頂部6とからなる。ボビン2は、例えば、底部4から頂部6までの高さが150~700mmであり、芯部5の直径が30~200mmのものを挙げることができる。
【0023】
ボビン2の素材としては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の樹脂を挙げることができる。ボビン2は、底部5又は頂部6にフランジを有しても、有さなくてもよく、ヤーン2が巻き取られる芯部5に、溝が設けられていてもよい。
【0024】
また、ヤーン3はボビン2の芯部5に接して巻き取られ円筒形状をとる第1の巻取部7と、第1の巻取部7に接して巻き取られた第2の巻取部8とからなる。本実施形態のヤーンパッケージ1を用いて織物を製造する場合、第2の巻取部8の終端からヤーンを解舒して用いられていく。第2の巻取部8を構成するヤーンが全て使用された後に、第1の巻取部7の終端からヤーンを解舒して織物製造に用いることが可能であるが、第1の巻取部7を構成するヤーンは織物製造に用いられない場合もある。
【0025】
第2の巻取部8は、下部が円筒形状をとる円筒形状部9となっており、上部が円錐台形状をとる円錐台形状部10となっている。また、第2の巻取部8の始端部は第1の巻取部7の終端部に連続しており、第1の巻取部7の下端のボビン2の底部4からの高さと、第2の巻取部8の下端のボビン2の底部4からの高さとは実質的に同一となっている。
【0026】
ヤーンパッケージ1では、第1の巻取部7の全高H1に対する第2の巻取部8の全高H2の割合((H2/H1)×100)が、96.0~99.9%の範囲であることにより、解舒する際の巻崩れの発生を防止することができ、さらに解舒されたヤーン3を用いて製造される織物等の製品に毛羽が発生することを抑制することができる。H1に対するH2の割合は、好ましくは98.0~99.8%の範囲であり、より好ましくは99.0~99.7%の範囲であり、さらに好ましくは99.2~99.6%の範囲である。
【0027】
第1の巻取部7の全高H1は、例えば、100~500mmであり、ボビン2の全高に対して、40~95%の範囲である。
【0028】
また、ヤーンパッケージ1では、第1の巻取部7に巻き取られたヤーン3の全体もしくは一部の長さ単独又は、第1の巻取部7に巻き取られたヤーン3の全体の長さと第2の巻取部8に巻き取られたヤーン3の全体もしくは一部の長さとの合計の長さが2000mとなる際のボビン2の表面被覆率(以下、ボビン表面被覆率と略記する)が75%以上であることにより、解舒の際に糸口無しの発生を防止することができる。ボビン表面被覆率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは92%以上であり、殊に好ましくは94%以上であり、最も好ましくは96%以上である。
【0029】
ボビン2の表面被覆率は、次のようにして求めることができる。まず、ボビン2の重量及びヤーン3の単位長さあたりの質量(例えば、テックス(g/km))を求めた上で、ヤーンパッケージ1の重量を測定しながら、第2の巻取部8の終端からヤーン3を解舒していき、ヤーンパッケージ1の重量が、ボビン2の重量及び2000mの長さに相当するヤーン3の重量の合計量になるまで、ヤーン3を解舒する。次いで、第1の巻取部7の上端から垂直下方向に30mmの点を中心とする10mm四方の四角形領域を画像処理装置で2値化し、前記領域全体の面積に対するヤーン3が巻き取られた部分の面積の割合を求めることによりボビン表面被覆率を求めることができる。前記画像処理装置による2値化は、例えば、ヤーン3が巻き取られている部分を白とし、ヤーン3が巻き取られていない部分を黒とすることにより行う。
【0030】
また、ヤーンパッケージ1において、第2の巻取部8の全高H2に対する第2の巻取部8の下部の円筒形状部9の高さh1の割合((h1/H2)×100が71.5~90.0%の範囲であることにより、優れた解舒性を得ることができ、解舒の際に糸口無しの発生を特に効果的に防止することができる。H2に対するh1の割合は、好ましくは75.0~90.0%の範囲であり、より好ましくは76.0~89.0%の範囲である。
【0031】
また、ヤーンパッケージ1において、第2の巻取部8の上部の円錐台形状部10の円錐台形状部分割率が2.0~15.0の範囲であり、好ましくは2.5~10.0の範囲であり、より好ましくは3.0~8.0の範囲であり、さらに好ましくは3.5~7.0の範囲にあることにより、解舒の際に糸口無しの発生及び巻崩れの発生を特に効果的に防止することができる。
【0032】
前記円錐台形状部分割率は、円錐台形状部10の高さ(mm)を、円錐台形状部階層数で除すことにより求めることができる。前記円錐台形状部階層数は、第2の巻取部8のヤーン3を解舒する際、リフト長が最も長い地点(円錐台形状部10の上端)に巻かれたヤーン3が解舒されるまでのターン数を数えることにより求めることができる。ここで、前記リフト長は、第2の巻取部8にヤーン3が巻かれる際のボビン2の底部4からの巻高さであり、巻高さが変わることにより円錐台形状部10が形成される。
【0033】
前記ターン数は、前記リフト長が最も短い地点からボビン2の底部4に向かってヤーン3が解舒され、ボビン2の底部4で折り返して、リフト長が2番目に短い地点でヤーン3が解舒されるまでを1ターン目とする。また、リフト長が2番目に短い地点からボビン2の底部4に向かってヤーン3が解舒され、ボビン2の底部4で折り返して、リフト長が3番目に短い地点でヤーン3が解舒されるまでを2ターン目とする。そして、この操作を繰り返すことによりターン数を数えることができる。
【0034】
また、ヤーンパッケージ1において、ヤーンを下端から上端方向に巻き取る際の巻き取りピッチ(上端方向巻き取りピッチ)は0.4~2.5mmの範囲とすることができ、ヤーンを上端から下端方向に巻き取る際の巻き取りピッチ(下端方向巻き取りピッチ)は1.0~3.5mmの範囲とすることができる。上端方向巻き取りピッチが0.6~2.2mmの範囲であり、かつ、下端方向巻き取りピッチが1.4~3.0mmの範囲であることが好ましく、上端方向巻き取りピッチが0.8~1.8mmの範囲であり、かつ、下端方向巻き取りピッチが1.8~2.8mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0035】
また、ヤーンパッケージ1において、ヤーンパッケージ1に巻き取られるヤーン3の全糸長に対し、第1の巻取部7に巻き取られるヤーン3の糸長の割合は、0.1~10.0%の範囲であることにより解舒の際に糸口無しの発生を防止することができる。また、ヤーンパッケージ1に巻き取られるヤーン3の全糸長に対し、第1の巻取部7に巻き取られるヤーン3の糸長の割合は、0.7~7.0%の範囲であることが、解舒の際に糸口無しの発生を特に効果的に防止することができるので好ましい。ヤーンパッケージ1に巻き取られるヤーン3の全糸長に対する第1の巻取部7に巻き取られるヤーン3の糸長の割合は、より好ましくは1.0~4.0%の範囲であり、さらに好ましくは1.1~3.0%の範囲であり、特に好ましくは1.2~2.0%の範囲であり、最も好ましくは、1.3~1.8%の範囲である。
【0036】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0037】
〔実施例1~7及び比較例1~3〕
本実施例及び比較例では、まず、ケーキからボビンに巻き戻されたストランドに撚りをかけながらボビン2の芯部5に接してヤーン3を巻き取ることにより第1の巻取部7を形成した。ヤーン3は、フィラメント径4.0μmのガラスフィラメントを50本集束して形成され、1.65texの重量を備えている。次に、ケーキから巻き戻されたストランドに撚りをかけながら第1の巻取部7に接してヤーン3を巻き取ることにより第2の巻取部8を形成した。
【0038】
このとき、第1の巻取部7の全高H1を218mm、第1の巻取部7及び第2の巻取部8における上端方向巻き取りピッチを0.9mm、第1の巻取部7及び第2の巻取部8における上端方向巻き取りピッチを2.5mmとし、第1の巻取部7に巻き取られたヤーン3の糸長L1、第2の巻取部8の全高H2、円筒形状部9の高さh1、円錐台形状部10の高さh2、円錐台形状部10の階層数、円錐台形状部分割率、第2の巻取部8に巻き取られたヤーン3の糸長L2を変量して、実施例1~7及び比較例1~3のヤーンパッケージ1を製造した。
【0039】
次に、実施例1~7及び比較例1~3のヤーンパッケージ1について、ボビン表面被覆率、第1の巻取部7の全高H1に対する第2の巻取部8の全高H2の割合(H2/H1)、ヤーン3の全糸長(L1+L2)に対する第1の巻取部7に巻き取られたヤーン3の糸長L1の割合(L1/(L1+L2))を求めた。
【0040】
次に、実施例1~7及び比較例1~3のヤーンパッケージ1について、糸口無し発生防止性能、織物毛羽発生防止性能、巻崩れ発生防止性能、解舒性を評価した。
【0041】
前記糸口無し発生防止性能は、1000本のヤーンパッケージ1について第2の巻取部8の終端からヤーン3を解舒した際に、ヤーンパッケージ1中の糸長(L1+L2)のうち、第1の巻取部7の始端から2000mの地点まで解舒するまでに糸口無しが発生する割合が0.3%以下の場合を「◎」(良)、0.3%を超え1.0%以下の場合を「○」(可)、1.0%を超える場合を「×」(不可)として評価した。
【0042】
前記織物毛羽発生防止性能は、ヤーンパッケージ1からヤーン3を解舒しながら、全長1000m、幅1300mm、織密度が経糸及び緯糸共に95本/25mmの織物を製造した際に、織物中の毛羽発生個数が3個以下の場合を「○」(可)、3個を超える場合を「×」(不可)として評価した。
【0043】
前記巻崩れ発生防止性能は、1000本のヤーンパッケージ1について、巻崩れが発生する確率が0.1%以下の場合を「◎」(良)、0.1%を超え0.3%以下の場合を「○」(可)、0.3%を超える場合を「×」(不可)として評価した。
【0044】
前記解舒性は、1000本のヤーンパッケージ1について、ヤーン3の解舒時に玉崩れ(ヤーン3がもつれて層となって解舒されてしまう現象)が発生する確率が0.1%以下の場合を「◎」(良)、0.1%を超える場合を「○」(可)として評価した。
【0045】
結果を表1(実施例1~5)及び表2(実施例6~7及び比較例1~3)に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
表1及び表2から、実施例1~7のヤーンパッケージ1では、糸口無し発生防止性能、織物毛羽発生防止性能、巻崩れ発生防止性能、解舒性のいずれの性能においても優れた性能を備えていることが明らかである。実施例1~7のヤーンパッケージ1では、第1の巻取部7の全高H1に対する第2の巻取部8の全高H2の割合(H2/H1)が96.0~99.9%の範囲であり、ボビン表面被覆率が75%以上である。
【0049】
一方、ボビン表面被覆率が75%未満の比較例1のヤーンパッケージ1では糸口無し発生防止性能が低いことが明らかである。また、第1の巻取部7の全高H1に対する第2の巻取部8の全高H2の割合(H2/H1)が96.0%未満である比較例2のヤーンパッケージ1では織物毛羽発生防止性能が低いことが明らかである。さらに、第1の巻取部7の全高H1に対する第2の巻取部8の全高H2の割合(H2/H1)が99.9%を超える比較例3のヤーンパッケージ1では巻崩れ発生防止性能が低いことが明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1…ヤーンパッケージ、 2…ボビン、 3…ヤーン、 4…底部、 7…第1の巻取部、 8…第2の巻取部、 9…円筒形状部、 10…円錐台形状部。