(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220524BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/14 303
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2019523458
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2018020289
(87)【国際公開番号】W WO2018225553
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017113966
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱野 光
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124191(JP,A)
【文献】特開2015-071289(JP,A)
【文献】特開2012-011678(JP,A)
【文献】特開2009-241316(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005031646(DE,A1)
【文献】特表2011-520671(JP,A)
【文献】特開2015-147374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/288499(US,A1)
【文献】国際公開第00/38928(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2889139(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを射出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々に連通し、インクが貯留され
る複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の各々に対応して設けられ、前記圧力室内のインクに圧力を加える複数の圧力発生手段と、
前記複数の圧力室の各々から分岐して設けられ、当該複数の圧力室内のインクを排出可能な複数の個別インク排出路と、
前記複数の個別インク排出路が連結された共通インク排出路と、を備え、
ヘッドチップの相対する2つの外表面に沿った方向に前記複数のノズル及び前記複数の圧力室が列を成し、当該列が前記外表面に垂直な方向に並んで複数設けられ、
前記2つの外表面に沿った方向に、前記共通インク排出路が延設され、
前記共通インク排出路は、前記列を介さず前記外表面の一方に近接する両最外領域及び前記2つの外表面の間の中央領域のうちいずれか一方又は双方の領域のみに配置され、
前記列は、前記圧力室と、インク流路から隔絶された空気室とが交互に配置されて構成され、
前記個別インク排出路は、前記ノズルの軸方向に見て前記空気室に重なるように配置されているインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記個別インク排出路は、前記複数の圧力室の各々に少なくとも二つ設けられている請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
インクを射出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々に連通し、インクが貯留される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の各々に対応して設けられ、前記圧力室内のインクに圧力を加える複数の圧力発生手段と、
前記複数の圧力室の各々から分岐して設けられ、当該複数の圧力室内のインクを排出可能な複数の個別インク排出路と、
前記複数の個別インク排出路が連結された共通インク排出路と、を備え、
ヘッドチップの相対する2つの外表面に沿った方向に前記複数のノズル及び前記複数の圧力室が列を成し、当該列が前記外表面に垂直な方向に並んで複数設けられ、
前記2つの外表面に沿った方向に、前記共通インク排出路が延設され、
前記共通インク排出路は、前記列を介さず前記外表面の一方に近接する両最外領域及び前記2つの外表面の間の中央領域のうちいずれか一方又は双方の領域のみに配置され、
前記個別インク排出路は、前記複数の圧力室の各々に少なくとも二つ設けられているインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記両最外領域の双方に前記共通インク排出路が配置されている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記中央領域に前記共通インク排出路が配置されている請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
インクを射出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々に連通し、インクが貯留される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の各々に対応して設けられ、前記圧力室内のインクに圧力を加える複数の圧力発生手段と、
前記複数の圧力室の各々から分岐して設けられ、当該複数の圧力室内のインクを排出可能な複数の個別インク排出路と、
前記複数の個別インク排出路が連結された共通インク排出路と、を備え、
ヘッドチップの相対する2つの外表面に沿った方向に前記複数のノズル及び前記複数の圧力室が列を成し、当該列が前記外表面に垂直な方向に並んで複数設けられ、
前記2つの外表面に沿った方向に、前記共通インク排出路が延設され、
前記共通インク排出路は、前記列を介さず前記外表面の一方に近接する両最外領域及び前記2つの外表面の間の中央領域のみに配置されているインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記列は、前記圧力室と、インク流路から隔絶された空気室とが交互に配置されて構成され、
前記個別インク排出路は、前記ノズルの軸方向に見て前記空気室に重なるように配置されている請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記個別インク排出路は、前記複数の圧力室の各々に少なくとも二つ設けられている請求項6又は請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記中央領域に前記共通インク排出路
が、前記列を間に介さずに2本配置されている請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記中央領域に前記共通インク排出路
が1本のみ配置されている
請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記列は、3列以上設けられている請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記列は、偶数列設けられている請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
一の列に属し、互いに隣り合う2つの前記圧力室の間を通って設けられた前記個別インク排出路により、一の前記共通インク排出路と、前記一の列を介して当該一の共通インク排出路の逆側に配置された他の列に属する前記圧力室とが連結されている請求項1から請求項12ま
でのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
前記ヘッドチップは、前記複数のノズルが設けられたノズル基板と、前記複数の個別インク排出路が設けられた流路スペーサー基板と、前記複数の圧力室が設けられた圧力室基板と、が順に積層されて構成されている請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドと、
前記圧力室から前記個別インク排出路への循環流を発生させるためのインクの供給手段と、
を備えるインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドに設けられた複数のノズルから、圧力室内に貯留するインクを射出して記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。
このようなインクジェット記録装置では、インクジェットヘッド内に発生した気泡や混入した異物等によって、ノズルが詰まり、射出不良等の問題が生じる場合がある。また、インクの種類によっては、長時間使用しないままにしておくと、インク粒子の沈降等によってノズル付近のインク粘度が高まり、安定したインクの射出性能が得難い場合がある。
【0003】
そこで、ヘッド内に、圧力室のインクを循環可能な流路を備え、ヘッド内の気泡や異物等をインクとともにヘッドの外部に排出できるインクジェットヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、特許文献1には、ヘッド内部に、各圧力室からのインクを排出可能な個別インク排出路と、複数の個別インク排出路が合流する共通インク排出路と、を備えたインクジェットヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図16に示すようにヘッドチップ1内には、ノズル111と、ノズル111の上方に配置される圧力室131と、圧力室131から延びる個別インク排出路121と、各個別インク排出路121が合流する共通インク排出路133(第1共通インク排出路134)とが設けられる。
図示するヘッドチップ1の外表面DSは、ヘッドチップ1の長手方向に沿った外表面であり、外表面DSに沿ってノズル111及びこれに接続する圧力室131が列(R1,R2)を成す。外表面DSから垂直に内部へ侵入した際の中心面DCまでの間に、ノズル111及びこれに接続する圧力室131の列が例えば図示するように2列構成される。
共通インク排出路133は、外表面DSに沿った方向に列を成す複数の圧力室131からの各個別インク排出路121の合流を受けるために、外表面DSに沿った方向に延設されている。
このようなヘッドチップ1において外表面DSから中心面DCまでを、外表面DSから垂直に内部への深さ方向に図示するように領域D11-D15に分けて説明する。
領域D11-D15に亘って熱的条件は均一ではない。共通インク排出路133は、比較的多くのインクが流通するため冷却効果や断熱効果があるからである。例えば、外表面DSの外に高熱源がある場合の温度分布TDを図中に示す。温度分布TDは濃いほど高温であることを示す。領域D11は、外表面DSまでの間に共通インク排出路133が無いため、外の熱が伝わりやすく高温化する。これに対し領域D13は、外表面DSまでの間に共通インク排出路133が1本あるため、領域D11に比較して熱が伝わりにくく比較的低温である。
したがって、領域D11にある圧力室131のインク温度は比較的高く、領域D13にある圧力室131のインク温度は比較的低くなり、外部に放熱する場合はその逆となり、いずれにしても射出するインクの温度が不均一となるから画質に影響し得るという問題があった。
なお、
図16にあっては、外表面DSから中心面DCまでの片側領域のみを示すが、反対側の外表面から中心面DCまでの領域に対称的に構成されることが通常である。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、ヘッドチップ内の各圧力室の温度の不均衡を緩和することができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のために、請求項1に記載の発明は、インクジェットヘッドであって、
インクを射出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々に連通し、インクが貯留される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の各々に対応して設けられ、前記圧力室内のインクに圧力を加える複数の圧力発生手段と、
前記複数の圧力室の各々から分岐して設けられ、当該複数の圧力室内のインクを排出可能な複数の個別インク排出路と、
前記複数の個別インク排出路が連結された共通インク排出路と、を備え、
ヘッドチップの相対する2つの外表面に沿った方向に前記複数のノズル及び前記複数の圧力室が列を成し、当該列が前記外表面に垂直な方向に並んで複数設けられ、
前記2つの外表面に沿った方向に、前記共通インク排出路が延設され、
前記共通インク排出路は、前記列を介さず前記外表面の一方に近接する両最外領域及び前記2つの外表面の間の中央領域のうちいずれか一方又は双方の領域のみに配置され、
前記列は、前記圧力室と、インク流路から隔絶された空気室とが交互に配置されて構成され、
前記個別インク排出路は、前記ノズルの軸方向に見て前記空気室に重なるように配置されている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記個別インク排出路は、前記複数の圧力室の各々に少なくとも二つ設けられている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、インクジェットヘッドであって、
インクを射出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々に連通し、インクが貯留される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の各々に対応して設けられ、前記圧力室内のインクに圧力を加える複数の圧力発生手段と、
前記複数の圧力室の各々から分岐して設けられ、当該複数の圧力室内のインクを排出可能な複数の個別インク排出路と、
前記複数の個別インク排出路が連結された共通インク排出路と、を備え、
ヘッドチップの相対する2つの外表面に沿った方向に前記複数のノズル及び前記複数の圧力室が列を成し、当該列が前記外表面に垂直な方向に並んで複数設けられ、
前記2つの外表面に沿った方向に、前記共通インク排出路が延設され、
前記共通インク排出路は、前記列を介さず前記外表面の一方に近接する両最外領域及び前記2つの外表面の間の中央領域のうちいずれか一方又は双方の領域のみに配置され、
前記個別インク排出路は、前記複数の圧力室の各々に少なくとも二つ設けられている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記両最外領域の双方に前記共通インク排出路が配置されている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記中央領域に前記共通インク排出路が配置されている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、インクジェットヘッドであって、
インクを射出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々に連通し、インクが貯留される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の各々に対応して設けられ、前記圧力室内のインクに圧力を加える複数の圧力発生手段と、
前記複数の圧力室の各々から分岐して設けられ、当該複数の圧力室内のインクを排出可能な複数の個別インク排出路と、
前記複数の個別インク排出路が連結された共通インク排出路と、を備え、
ヘッドチップの相対する2つの外表面に沿った方向に前記複数のノズル及び前記複数の圧力室が列を成し、当該列が前記外表面に垂直な方向に並んで複数設けられ、
前記2つの外表面に沿った方向に、前記共通インク排出路が延設され、
前記共通インク排出路は、前記列を介さず前記外表面の一方に近接する両最外領域及び前記2つの外表面の間の中央領域のみに配置されている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記列は、前記圧力室と、インク流路から隔絶された空気室とが交互に配置されて構成され、
前記個別インク排出路は、前記ノズルの軸方向に見て前記空気室に重なるように配置されている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記個別インク排出路は、前記複数の圧力室の各々に少なくとも二つ設けられている。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記中央領域に前記共通インク排出路が、前記列を間に介さずに2本配置されている。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記中央領域に前記共通インク排出路が1本のみ配置されている。
【0017】
・請求項11に記載の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記列は、3列以上設けられている。
・請求項12に記載の発明は、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記列は、偶数列設けられている。
・請求項13に記載の発明は、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
一の列に属し、互いに隣り合う2つの前記圧力室の間を通って設けられた前記個別インク排出路により、一の前記共通インク排出路と、前記一の列を介して当該一の共通インク排出路の逆側に配置された他の列に属する前記圧力室とが連結されている。
・請求項14に記載の発明は、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記ヘッドチップは、前記複数のノズルが設けられたノズル基板と、前記複数の個別インク排出路が設けられた流路スペーサー基板と、前記複数の圧力室が設けられた圧力室基板と、が順に積層されて構成されている。
・請求項15に記載の発明は、インクジェット記録装置であって、
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドと、
前記圧力室から前記個別インク排出路への循環流を発生させるためのインクの供給手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヘッドチップ内の各圧力室の温度の不均衡を緩和することができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図9A】IXA-IXAで切断したときのヘッドチップの断面図
【
図9B】IXB-IXBで切断したときのヘッドチップの断面図
【
図10A】XA-XBで切断したときのヘッドチップの断面図
【
図10B】XA-XBで切断したときのヘッドチップの断面図
【
図12】ヘッドチップ内の各要素の一例の配置を平面的に示す模式図
【
図13】ヘッドチップ内の各要素の他の一例の配置を平面的に示す模式図
【
図14】ヘッドチップ内の各要素の他の一例の配置を平面的に示す模式図
【
図15】ヘッドチップ内の各要素の他の一例の配置を平面的に示す模式図
【
図16】比較例のヘッドチップ内の各要素の配置を平面的に示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、本明細書では、説明の便宜上、インクジェットヘッド100のノズル111の配列方向である印字幅方向を左右方向とし、ノズル111の下側で記録媒体の搬送される方向を前後方向とし、左右方向と前後方向の直交する方向を上下方向として説明する。また、図面の流路中の矢印は、インクの流れる方向を指す。
【0021】
[インクジェット記録装置]
インクジェット記録装置200は、
図1に示すように、給紙部210と、画像記録部220と、排紙部230と、インクの供給手段としてのインク循環系8(
図11参照)等を備える。インクジェット記録装置200は、給紙部210に格納された記録媒体Mを画像記録部220に搬送し、画像記録部220で記録媒体Mに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Mを排紙部230に搬送する。
【0022】
給紙部210は、記録媒体Mを格納する給紙トレー211と、給紙トレー211から画像記録部220に記録媒体Mを搬送して供給する媒体供給部212とを有する。媒体供給部212は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Mを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Mを給紙トレー211から画像記録部220へ搬送する。
【0023】
画像記録部220は、搬送ドラム221と、受け渡しユニット222と、加熱部223と、ヘッドユニット224と、定着部225と、デリバリー部226等を有する。
【0024】
搬送ドラム221は、円柱面をなしており、その外周面が記録媒体Mを載置させる搬送面となっている。搬送ドラム221は、その搬送面上に記録媒体Mを保持した状態で
図1中の矢印の向きに回転することによって、記録媒体Mを搬送面に沿って搬送する。また、搬送ドラム221は、爪部及び吸気部(図示省略)を備え、爪部により記録媒体Mの端部を押さえ、かつ吸気部により記録媒体Mを搬送面に吸い寄せることで、搬送面上に記録媒体Mを保持している。
【0025】
受け渡しユニット222は、給紙部210の媒体供給部212と搬送ドラム221との間の位置に設けられ、媒体供給部212から搬送された記録媒体Mの一端をスイングアーム部222aで保持して取り上げ、受け渡しドラム222bを介して搬送ドラム221に引き渡す。
【0026】
加熱部223は、受け渡しドラム222bの配置位置とヘッドユニット224の配置位置との間に設けられ、搬送ドラム221により搬送される記録媒体Mが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Mを加熱する。加熱部223は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部(図示省略)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電してヒーターを発熱させる。
【0027】
ヘッドユニット224は、画像データに基づいて、記録媒体Mが保持された搬送ドラム221の回転に応じた適切なタイミングで記録媒体Mに対してインクを射出して画像を形成する。ヘッドユニット224は、インク射出面が搬送ドラム221に対向して所定の距離を置いて配置される。本実施形態のインクジェット記録装置200では、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する四つのヘッドユニット224が、記録媒体Mの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0028】
ヘッドユニット224は、例えば、
図2に示すように、前後方向に隣接する一対のインクジェットヘッド100の組が、前後方向について異なる位置に千鳥状に配置されている。また、ヘッドユニット224は、画像の記録時には搬送ドラム221の回転軸に対する位置が固定されて用いられる。即ち、インクジェット記録装置200は、ラインヘッドを用いた1パス描画方式の画像記録を行うインクジェット記録装置200である。
【0029】
定着部225は、搬送ドラム221のX方向の幅に亘って配置された発光部を有し、搬送ドラム221に載置された記録媒体Mに対して当該発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して記録媒体M上に射出されたインクを硬化させて定着させる。定着部225の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット224の配置位置の下流側かつデリバリー部226の受け渡しドラム226aの配置位置の上流側に搬送面と対向して配置される。
【0030】
デリバリー部226は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ226bと、記録媒体Mを搬送ドラム221からベルトループ226bに受け渡す円筒状の受け渡しドラム226aとを有し、受け渡しドラム226aにより搬送ドラム221からベルトループ226b上に受け渡された記録媒体Mをベルトループ226bにより搬送して排紙部230に送出する。
【0031】
排紙部230は、デリバリー部226により画像記録部220から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレー231を有する。
【0032】
[インクジェットヘッド]
本実施形態のインクジェットヘッド100は、
図3A、
図3B及び
図4等に示すように、ヘッドチップ1と、ヘッドチップ1が配設された配線基板2と、配線基板2とフレキシブル基板3を介して接続された駆動回路基板4と、ヘッドチップ1内の圧力室131に供給するインクを貯留するマニホールド5と、内側にマニホールド5が収納された筐体6と、筐体6の底面開口を塞ぐように取り付けられたキャップ受板7と、筐体6に取り付けられたカバー部材9等を備えている。
なお、
図3Aでは、マニホールド5の図示を省略しており、
図3B及び
図4では、カバー部材9の図示を省略している。
また、本実施形態では、ヘッドチップ1のノズル111の列数が4列である例を基本に説明する。
【0033】
ヘッドチップ1は、左右方向に長尺な略四角柱状の部材であり、圧力室基板13と、流路スペーサー基板12と、ノズル基板11とが順に積層されて構成されている(
図5~11)。
【0034】
圧力室基板13には、圧力室131、空気室132及び共通インク排出路133等が設けられている(
図5、
図6A及び
図6B等参照)。
圧力室131と空気室132は左右方向に交互に配置されるように多数設けられ、前後方向に4列で設けられている。
圧力室131は、略矩形状の断面を有し上下方向に沿って形成されており、圧力室基板13の上面に入口を有し、下面に出口を有している。また、圧力室131は、上方向の端部でインク貯留部51に連通しており、圧力室131には当該インク貯留部51からインクが供給され、圧力室131内部にはノズル111から射出するためのインクを貯留する。また、圧力室131は、圧力室基板13と流路スペーサー基板12とに跨がって、同一面積の略矩形状の断面を有するように上下方向に沿って形成されており、下方向の端部でノズル111に連通している(
図9A、
図9B等参照)。
【0035】
空気室132は、圧力室131よりもやや大きい略矩形状の断面を有し上下方向に沿って圧力室131と平行になるように形成されている。また、空気室132は、圧力室131とは異なり、インク貯留部51には連通されておらず、空気室132内にインクが流れ込まないようになっている。また、空気室132は、ノズル111にも連通されていない(
図9A、
図9B等参照)。
【0036】
圧力室131と空気室132とは、圧電材料によって形成された圧力発生手段としての隔壁136により隔てられて形成されている(
図10A参照)。隔壁136には図示しない駆動電極が設けられており、当該駆動電極に電圧が印加されると、隣接する圧力室131間の隔壁136部分がシェアモード型の変位を繰り返すことで、圧力室131内のインクに圧力が加えられる。なお、
図5~10等に示す圧力室131では、片側にしか隔壁136を有しない左右方向の端部に位置する圧力室131は使用しておらず、それ以外の両側に隔壁136を有する圧力室131を使用している。
【0037】
なお、空気室132を設けずに圧力室131のみで形成してもよいが、上述したとおり、圧力室131と空気室132とを交互に設けることが好ましい。これにより、圧力室131同士が隣接しないようできるため、一の圧力室131に隣接する隔壁136が変形した際に、他の圧力室131に影響しないようにできる。
【0038】
共通インク排出路133は、第1共通インク排出路134と第2共通インク排出路135とが連結して構成されている(
図5及び
図6B等参照)。
第1共通インク排出路134は、圧力室基板13の下面側に、圧力室131及び空気室132が設けられた部分を避けるようにして、ヘッドチップ1の前側、後側、及びそれらの中央部に、3列並んで左右方向に沿って設けられている。また、第1共通インク排出路134の下面側には、流路スペーサー基板12に設けられた個別インク排出路121が複数連結しており、それら個別インク排出路121(第2個別インク排出路123)から流れてくるインクが第1共通インク排出路134で合流できるようになっている(
図6B、
図7A及び
図9A)。また、第1共通インク排出路134は、右端部付近で、ヘッドチップ1外にインクを排出可能な第2共通インク排出路135に連結している。したがって、第1共通インク排出路134は、個別インク排出路121(第2個別インク排出路123)から流れてきたインクが、当該第2共通インク排出路135に向かって流れる流路となっている。
【0039】
第2共通インク排出路135は、圧力室131と同様に、上下方向に沿って形成されている。また、第2共通インク排出路135は、圧力室基板13の下面側は第1共通インク排出路134に連通し、上面側は排出用液室57に連通しており、第1共通インク排出路134から流れてきたインクを上側(ノズル基板11側とは反対側)に向かって、ヘッドチップ1の外部に排出するための流路となっている。また、第2共通インク排出路135は、ヘッドチップ1の右端部付近に設けられ、第1共通インク排出路134に連通している。また、第2共通インク排出路135は、個々の圧力室131よりも大きな容積を有するように設けることによって、インクの排出効率を高めることができる。
【0040】
流路スペーサー基板12には、圧力室131と、当該圧力室131から分岐して設けられている個別インク排出路121とが形成されている(
図5、
図7A、
図7B、
図9A及び
図9B等参照)。
圧力室131は、流路スペーサー基板12と圧力室基板13とを跨がって、同一面積の略矩形状の断面を有するように上下方向に沿って形成されている。
【0041】
個別インク排出路121は、一端部が圧力室131と連結し、他端部が第1共通インク排出路134に連結しており、圧力室131のインクを第1共通インク排出路134に排出する流路となっている。
個別インク排出路121は、気泡や異物等をインクとともに排出しやすくする観点から、圧力室131の各々に少なくとも二つ設けられていることが好ましい。また、個別インク排出路121は、例えば、
図9A及び
図9Bに示すように、圧力室131の前方向と後方向にそれぞれ一つずつ、計二つ設けることが、気泡や異物等をインクとともに排出しやすくする効果を得ることができ、かつ製造効率も高いため好ましい。
【0042】
個別インク排出路121は、第1個別インク排出路122と、第2個別インク排出路123とが連結されて構成されている。第1個別インク排出路122は、一端が圧力室131に連結され、流路スペーサー基板12の下面側部分において前後方向に延設されている。第2個別インク排出路123は、第1個別インク排出路122の他端に連結され、上方向に延設され、第1共通インク排出路134に連結されている。
【0043】
以上説明したノズル111と、圧力室131と、空気室132と、個別インク排出路121と、共通インク排出路133(第1共通インク排出路134)のノズル111の軸方向に見た配置につき、
図12から
図15の模式図を参照して説明する。ヘッドチップ1内の各圧力室の温度の不均衡を緩和することを目的とした配置である。
【0044】
図12に示すヘッドチップ1にあっては、ヘッドチップ1の相対する2つの外表面DS,DSに沿った方向(左右方向)に複数のノズル111及び複数の圧力室131が列(以下「チャネル列」という)を成し、チャネル列が外表面DSに垂直な方向(前後方向)に並んで4列(R1からR4とする)設けられている。
また、2つの外表面DS,DSに沿った方向(左右方向)に、第1共通インク排出路134が延設されている。
ヘッドチップ1において一方の外表面DSから他方の外表面DSまでを、外表面DSから垂直に内部への深さ方向に図示するように領域D1-D7に分けて説明する。
第1共通インク排出路134は、いずれのチャネル列R1-R4をも介さず外表面DSの一方に近接する両最外領域(D1+D2,D6+D7)及び2つの外表面DS,DSの間の中央領域D4の双方に配置され、これらの領域のみに配置されている。
すなわち、第1共通インク排出路134は領域D2,D4,D6に配置され、領域D1,D7は、外表面DSまでの外壁部であり、領域D2と中央領域D4の間の領域D3には、2列のチャネル列R1,R2が配置されており、領域D6と中央領域D4の間の領域D5には、2列のチャネル列R3,R4が配置されている。チャネル列R1-R4の列数が3以上かつ偶数である。偶数列とすることで、中心面DCを通る第1共通インク排出路134を配置するとともに、中心面DCの両側に同数のチャネル列を配置することができ、熱的条件を均一化できる。
【0045】
一の列に属し、互いに隣り合う2つの圧力室131,131の間を通って設けられた個別インク排出路121により、一の第1共通インク排出路134と、前記一の列を介して当該一の第1共通インク排出路134の逆側に配置された他の列に属する圧力室131とが連結されている。
例えば、前記一の列を、チャネル列R1として説明する。チャネル列R1に属し、互いに隣り合う2つの圧力室131,131の間を通って設けられた個別インク排出路121により、領域D2に配置された第1共通インク排出路134と、チャネル列R2に属する圧力室131とが連結されている。
前記一の列を、チャネル列R2として説明する。チャネル列R2に属し、互いに隣り合う2つの圧力室131,131の間を通って設けられた個別インク排出路121により、領域D4に配置された第1共通インク排出路134と、チャネル列R1に属する圧力室131とが連結されている。
領域D5についても同様である。
かかる構造により、各チャネル列R1-R4の圧力室131は、前後方向の双方に個別インク排出路121を延ばし両側の第1共通インク排出路134,134に連結することができる。これにより、インクの循環性を高めるとともに、ヘッドチップ1内の温度の不均衡を緩和することができる。
【0046】
チャネル列は、上述したように圧力室131と、インク流路から隔絶された空気室132とが交互に配置されて構成されている。
図12に示すように個別インク排出路121は、ノズル111の軸方向(上下方向)に見て空気室132に重なるように配置されている。これにより、熱伝導性を向上する。
【0047】
以上の構造のヘッドチップ1によれば、領域D3内の温度の不均衡は緩和され、領域D5内の温度の不均衡も緩和されるとともに、領域D3と領域D5の温度の不均衡も緩和される。
例えば、外表面DSの外に高熱源がある場合の温度分布TDを図中に示す。温度分布TDは濃いほど高温であることを示す。領域D1,D7は、外表面DSまでの間に第1共通インク排出路134が無いため、外の熱が伝わりやすく高温化する。領域D3,D5は、外表面DSまでの間に共通インク排出路133が1本あるため、領域D1に比較して熱が伝わりにくく比較的低温であるが、外表面DSまでの間の共通インク排出路133の本数という熱的条件が同一であるため、領域D3,D5内の温度は均一化する。外部に放熱する場合はその逆となり、領域D3,D5より領域D1,D7が低温になるが、領域D3,D5内の温度が均一化することは変わりない。
したがって、すべてのチャネル列R1-R4に属する圧力室131のインク温度の不均衡は緩和され、射出するインクの温度が均一となるから画質に影響し得る熱問題の一つを解消することができる。
【0048】
図13から
図15は、
図12に示した構造に対する変形例である。
図13に、1つの圧力室131から延びる個別インク排出路121を1本とし、近い第1共通インク排出路134に連結した構造を示す。かかるヘッドチップ1の構造であっても、外表面DSまでの間の共通インク排出路133の本数という熱的条件が同一であるため、チャネル列R1-R4のある領域D3,D5内の温度は均一化する。
【0049】
図14に、中央領域D4に第1共通インク排出路134を、チャネル列を間に介さずに2本配置した構造を、
図15に、中央領域D4に共通インク排出路133を配置しない構造を示す。中央領域D4の共通インク排出路の有無、本数は、外表面DSまでの間の共通インク排出路133の本数という熱的条件に影響しないため、チャネル列R1-R4のある領域D3,D5内の温度は均一化する。
図14に示すヘッドチップ1において、中央領域D4の2本の第1共通インク排出路134,134間にチャネル列を配置しないのは、そこにチャネル列を配置してしまうと、そのチャネル列と他のチャネル列とで外表面DSまでの間の共通インク排出路133の本数という熱的条件が異なってしまうからである。
【0050】
以上、
図12から
図15を参照して説明したように、ヘッドチップ1内の各圧力室131の温度の不均衡を緩和することができる。
【0051】
なお、本実施形態の第1個別インク排出路122は、ノズル基板11と隣接する流路スペーサー基板12の下面側部分に設けられていることとしたが、これに限られない。例えば、第1個別インク排出路122を、ノズル基板11と流路スペーサー基板12の両方に跨るように設けてもよいし、ノズル基板11にのみ設けてもよいし、流路スペーサー基板12の底面よりも少し上側に設けてノズル基板11に隣接しないように設けてもよい。
【0052】
ヘッドチップ1の上面には、
図4に示すように、配線基板2が配設され、配線基板2の前後方向に沿った両縁部に、駆動回路基板4と接続された二つのフレキシブル基板3が配設されている。
【0053】
配線基板2は、左右方向に長尺な略矩形板状に形成されており、その略中央部に開口部22を有している。配線基板2の左右方向及び前後方向の各幅は、ヘッドチップ1よりもそれぞれ大きく形成されている。
【0054】
開口部22は、左右方向に長尺な略矩形状に形成されており、配線基板2にヘッドチップ1が取り付けられた状態においては、ヘッドチップ1における各圧力室131の入口と、第2共通インク排出路135の出口とを上側に露出させるようになっている。
【0055】
フレキシブル基板3は、駆動回路基板4と配線基板2の電極部とを電気的に接続させており、駆動回路基板4からの信号をフレキシブル基板3を介してヘッドチップ1内の隔壁136に設けられた駆動電極に印加できるようになっている。
【0056】
また、配線基板2の外縁部には、マニホールド5の下端部が接着により取り付け固定されている。すなわち、マニホールド5は、ヘッドチップ1の圧力室131の入口側(上側)に配置され、配線基板2を介してヘッドチップ1と連結されている。
【0057】
マニホールド5は、樹脂により成形されてなる部材であり、ヘッドチップ1の圧力室131の上部に設けられ、圧力室131に導入されるインクを貯留するものである。具体的には、
図3B等に示すように、マニホールド5は、左右方向に長尺に形成されており、インク貯留部51を構成する中空状の本体部52と、インク流路を構成する第1~第4インクポート53~56とを備えている。また、インク貯留部51は、インク中のゴミを除去するためのフィルターFによって、上側の第1液室51aと下側の第2液室51bの二つ区画されている。
【0058】
第1インクポート53は、第1液室51aの右側上端部に連通されており、インク貯留部51へのインクの導入に用いられる。また、第1インクポート53の先端部には、第1ジョイント81aが外挿されている。
第2インクポート54は、第1液室51aの左側上端部に連通されており、第1液室51a内の気泡を除去するために用いられる。また、第2インクポート54の先端部には、第2ジョイント81bが外挿されている。
第3インクポート55は、第2液室51bの左側上端部に連通されており、第2液室51b内の気泡を除去するために用いられる。また、第3インクポート55の先端部には、第3ジョイント82aが外挿されている。
第4インクポート56は、ヘッドチップ1の第2共通インク排出路135に連通する排出用液室57に連通されており、ヘッドチップ1から排出されたインクが、第4インクポート56を通して、インクジェットヘッド100の外部に排出される。
【0059】
筐体6は、例えば、アルミニウムを材料としてダイキャスト法により成形されてなる部材であり、左右方向に長尺に形成されている。また、筐体6は、その内側にヘッドチップ1、配線基板2及びフレキシブル基板3が取り付けられたマニホールド5を収納可能に形成されてなり、当該筐体6の底面が開放されている。また、筐体6の左右方向の両端部には、当該筐体6をプリンタ本体側に取り付けるための取付用孔68がそれぞれ形成されている。
【0060】
キャップ受板7は、その略中央部に左右方向に長尺なノズル用開口部71が形成されており、ノズル基板11がノズル用開口部71を介して露出するようにして、筐体6の底面開口を塞ぐように取り付けられている。
【0061】
[インク循環系]
インク循環系8は、インクジェットヘッド100内の圧力室131から個別インク排出路121へのインクの循環流を発生させるためのインクの供給手段である。インク循環系8は、供給用サブタンク81、循環用サブタンク82及びメインタンク83等によって構成されている(
図11)。
【0062】
供給用サブタンク81は、マニホールド5のインク貯留部51に供給するためのインクが充填されており、インク流路84によって第1インクポート53に接続されている。
循環用サブタンク82は、マニホールド5の排出用液室57から排出されたインクが充填されており、インク流路85によって第4インクポート56に接続されている。
また、供給用サブタンク81と循環用サブタンク82は、ヘッドチップ1のノズル面(以下、「位置基準面」ともいう。)に対して、上下方向(重力方向)に異なる位置に設けられている。これによって、当該位置基準面と供給用サブタンク81の水頭差による圧力P1と、当該位置基準面と循環用サブタンク82との水頭差による圧力P2が生じている。
また、供給用サブタンク81と循環用サブタンク82は、インク流路86で接続されている。そして、ポンプ88によって加えられた圧力によって、循環用サブタンク82から供給用サブタンク81にインクを戻すことができる。
【0063】
メインタンク83は、供給用サブタンク81に供給するためのインクが充填されており、インク流路87によって供給用サブタンク81に接続されている。そして、ポンプ89によって加えられた圧力によって、メインタンク83から供給用サブタンク81にインクを供給することができる。
【0064】
また、各サブタンク内のインク充填量と、各サブタンクの上下方向(重力方向)の位置とを適宜変更することによって、圧力P1及び圧力P2を調整することができる。そして、圧力P1及び圧力P2の圧力差によって、適宜の循環流速で、インクジェットヘッド100内のインクを循環できる。これにより、ヘッドチップ1内に発生した気泡や異物等を除去し、ノズル111の詰まりや、射出不良等を抑制することができる。
【0065】
なお、インク循環系8の一例として、水頭差によってインクの循環を制御する方法を説明したが、インクの循環流を発生できる構成であれば、当然適宜変更可能である。
【0066】
[その他]
以上で説明した本発明の実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。すなわち、本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0067】
例えば、本実施形態の第1個別インク排出路122として、流路壁の一つをノズル基板11によって形成した例を示したが、これに限られない。
【0068】
また、本実施形態のヘッドチップ1として、ノズル基板11、流路スペーサー基板12及び圧力室基板13が順に積層された例を示したが、これに限られず、ノズル基板11及び圧力室基板13の二層構成であってもよい。この場合は、ノズル基板11及び圧力室基板13の少なくとも一方に、個別インク排出路121を設けることとすればよい。
【0069】
また、本実施形態のインクジェットヘッド100として、シェアモード型の例を示したが、圧力室131内のインクに圧力が加えられる手段が設けられていればよく、これに限られない。
【0070】
また、本実施形態のインクジェット記録装置200の描画方式として、ラインヘッドを用いた1パス描画方式の例を示したが、これに限られず、例えば、スキャン方式であってもよい。
【0071】
また、本実施形態のインク循環系8として、ヘッドチップ1内部のインクを循環させる例を示したが、第2共通インク排出路135のインクを循環させずに吐き捨てる構成としてもよく、循環又は吐き捨てかを選択できる構成としてもよい。
【0072】
また、本実施形態のヘッドチップ1として、圧力室131及び第2共通インク排出路135がヘッドチップ1の上下面で開口するストレートタイプである例を示したが、これに限られない。例えば、ヘッドチップ1の前後左右方向のいずれかの側面で開口する構成でもよく、流路の途中でインクの流れる方向が変わる屈曲部を有する構成でもよい。
【0073】
図12から
図15に示したヘッドチップ1にあっては、中心面DCに対して片側2列で計4列のチャネル列を配置したが、これに限られず、中心面DCに対して片側3列以上のチャネル列を配置してもよい。
【0074】
図12から
図15に示したヘッドチップ1にあっては、偶数列のチャネル列を配置したが、これに限られず、3列以上の奇数のチャネル列を配置してもよい。列例えば、
図15に示したヘッドチップ1において、中央領域D4にチャネル列を一列配置するとともに、その両側に同数のチャネル列を配置してもよい。この場合も、外表面DSまでの間の共通インク排出路133の本数という熱的条件が同一である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ヘッドチップ
8 インク循環系(インクの供給手段)
11 ノズル基板
111 ノズル
12 流路スペーサー基板
121 個別インク排出路
122 第1個別インク排出路
123 第2個別インク排出路
13 圧力室基板
131 圧力室
132 空気室
133 共通インク排出路
134 第1共通インク排出路
135 第2共通インク排出路
136 隔壁(圧力発生手段)
100 インクジェットヘッド
200 インクジェット記録装置