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特許7078061光走査装置、光走査装置の制御方法、および光走査装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】光走査装置、光走査装置の制御方法、および光走査装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20220524BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20220524BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S7/481 Z
G02B26/12
G01S7/481 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019560036
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2018031799
(87)【国際公開番号】W WO2019123722
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017246651
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輔
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-062398(JP,A)
【文献】特開2003-295311(JP,A)
【文献】特開2011-085577(JP,A)
【文献】特開2014-109686(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010197(WO,A1)
【文献】特開2017-227569(JP,A)
【文献】特開2016-070974(JP,A)
【文献】特開平11-084006(JP,A)
【文献】特開2017-054020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
G02B 26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状のレーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させて測定空間内で走査するための少なくとも1つのミラー面を有するポリゴンミラーと、
前記測定空間内の物体から反射した光を受光するフォトダイオードと、
前記ポリゴンミラーを回転させるモーターと、
前記モーターの回転角を検出するモーターエンコーダーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、
前記モーターエンコーダーと前記ポリゴンミラー回転角検出部との信号から得られる前記モーターと前記ポリゴンミラーの回転位相差に応じて、前記レーザー光の発光タイミングを制御する制御部と、
を有する、光走査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ミラー面に対応したレーザー光の発光開始時において、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信してから所定期間経過後、前記モーターエンコーダーからの信号に同期させて前記レーザー光を発光させるように、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記レーザー光を前記ミラー面に反射させて走査している間において、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信すると同時に前記レーザー光を発光させるように、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記モーターエンコーダーの分解能は、前記ポリゴンミラーによって走査される前記レーザー光の走査分解能と同じか、または当該走査分解能より小さく、
前記ポリゴンミラー回転角検出部の分解能は前記モーターエンコーダーの分解能より小さい、請求項1~3のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記レーザー光の発光間隔があらかじめ決められた所定間隔以下にならないようにする、請求項1~4のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記ポリゴンミラー回転角検出部は、
フォトインタラプターと、
前記ポリゴンミラーに設けられ、前記ポリゴンミラーの回転よって前記フォトインタラプターの光を遮光するピンと、を有する、請求項1~5のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項7】
パルス状のレーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させて測定空間内で走査するための少なくとも1つのミラー面を有するポリゴンミラーと、
前記測定空間内の物体から反射した光を受光するフォトダイオードと、
前記ポリゴンミラーを回転させるモーターと、
前記モーターの回転角を検出するモーターエンコーダーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、を有する光走査装置の制御方法であって、
前記モーターエンコーダーと前記ポリゴンミラー回転角検出部との信号から得られる前記モーターと前記ポリゴンミラーの回転位相差に応じて、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、光走査装置の制御方法。
【請求項8】
前記ミラー面に対応したレーザー光の発光開始時においては、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信後、所定期間経過後、前記モーターエンコーダーからの信号に同期させてレーザー光を発光させるように前記レーザー光の発光タイミングを制御する、請求項7に記載の光走査装置の制御方法。
【請求項9】
前記レーザー光を前記ミラー面に反射させて走査している間においては、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信すると同時にレーザー光を発光させるように前記レーザー光の発光タイミングを制御する、請求項7または8に記載の光走査装置の制御方法。
【請求項10】
前記モーターエンコーダーの分解能は、前記ポリゴンミラーによって走査される前記レーザー光の走査分解能と同じか、または当該走査分解能より小さく、
前記ポリゴンミラー回転角検出部の分解能は前記モーターエンコーダーの分解能より小さい、請求項7~9のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法。
【請求項11】
前記レーザー光の発光間隔があらかじめ決められた所定間隔以下にならないようにする、請求項7~10のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法。
【請求項12】
前記ポリゴンミラー回転角検出部は、
フォトインタラプターと、
前記ポリゴンミラーに設けられ、前記ポリゴンミラーの回転よって前記フォトインタラプターの光を遮光するピンを有する、請求項7~11のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法をコンピューターに実行させるための、光走査装置の制御プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、光走査装置の制御方法、および光走査装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光走査装置は、レーザー光を測定空間へ向けて発射し、その発射から反射光の受光までの時間などから測定空間内の物体までの距離を測定する。
【0003】
従来、このような光走査装置では、光走査手段としてポリゴンミラーを備え、回転するポリゴンミラーにレーザー光を反射させて測定空間を走査し、物体からの反射光をフォトダイオードなどの受光手段で受光している。
【0004】
光走査装置はパルス発光の周期を一定にしているので、光走査装置内のポリゴンミラーを一定速度で回転させれば、基本的には、光ビームの走査開始の基準位置から走査角を求めることができる。
【0005】
従来の光走査装置の中には、レーザー光を道路の路面に対して垂直な扇状の平面となるように走査して、路面および道路上の移動体からの反射を受光することで移動体を検知する装置がある。このような光走査装置では、レーザー光を照射開始してからレーザー光が路面に対して垂直になると想定される時間を基にして走査角を算出している。
【0006】
光走査装置では、設置の際、あるいは設置後の経時変化等によって、光走査装置が傾いてしまうことがある。そうなると、本来レーザー光が路面に対して垂直になると想定される時間では、レーザー光が路面に対して垂直にならず、求められた走査角に誤差が生じてしまう。
【0007】
従来、このような走査角の誤差を補正するために、光ビームの走査開始の基準位置を検出する走査開始検出手段を備える一方、路面上に光ビームの光走査方向に沿う一部が他の部分に比べて反射光量あるいは投受光時間が異なるように差別化する差別化手段を置いて、差別化手段からの反射光を受光手段で受光して得られる受光信号と、走査開始検出手段からの走査開始検出信号とに基づいて光ビームの走査角を補正している(特開平10-253910号公報)。
【発明の概要】
【0008】
ところで、光走査装置は、自動車などの移動体に設置した場合においては、突発的な振動が装置に加わることがある。このような場合、光走査装置は、加わった振動によってポリゴンミラーの回転が乱れて、走査角に誤差が生じ、レーザー光の発射方向にむらができてしまうことがある。
【0009】
しかしながら、従来の技術は、走査角の補正を行っているものの、道路の路面上に反射光量を差別化する差別化手段を置いて、この差別化手段からの反射光を基に補正を行っている。このため従来の技術では、差別化手段からの反射光を検出しなければ補正ができないので、突発的に装置に加わる振動によって発生した走査角の誤差については即座に補正することができない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、振動が加わって走査角に誤差が生じた場合でも、即座にその誤差を補正することができる光走査装置を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、振動が加わって走査角に誤差が生じた場合でも、即座にその誤差を補正することができる光走査装置の制御方法を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、振動が加わって走査角に誤差が生じた場合でも、即座にその誤差を補正することができる光走査装置の制御プログラムを提供することである。
【0013】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0014】
(1)パルス状のレーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させて測定空間内で走査するための少なくとも1つのミラー面を有するポリゴンミラーと、
前記測定空間内の物体から反射した光を受光するフォトダイオードと、
前記ポリゴンミラーを回転させるモーターと、
前記モーターの回転角を検出するモーターエンコーダーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、
前記モーターエンコーダーと前記ポリゴンミラー回転角検出部との信号から得られる前記モーターと前記ポリゴンミラーの回転位相差に応じて、前記レーザー光の発光タイミングを制御する制御部と、
を有する、光走査装置。
【0015】
(2)前記制御部は、前記ミラー面に対応したレーザー光の発光開始時において、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信してから所定期間経過後、前記モーターエンコーダーからの信号に同期させて前記レーザー光を発光させるように、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、上記(1)に記載の光走査装置。
【0016】
(3)前記制御部は、前記レーザー光を前記ミラー面に反射させて走査している間において、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信すると同時に前記レーザー光を発光させるように、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、上記(1)または(2)に記載の光走査装置。
【0017】
(4)前記モーターエンコーダーの分解能は、前記ポリゴンミラーによって走査される前記レーザー光の走査分解能と同じか、または当該走査分解能より小さく、
前記ポリゴンミラー回転角検出部の分解能は前記モーターエンコーダーの分解能より小さい、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の光走査装置。
【0018】
(5)前記制御部は、前記レーザー光の発光間隔があらかじめ決められた所定間隔以下にならないようにする、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の光走査装置。
【0019】
(6)前記ポリゴンミラー回転角検出部は、
フォトインタラプターと、
前記ポリゴンミラーに設けられ、前記ポリゴンミラーの回転よって前記フォトインタラプターの光を遮光するピンと、を有する、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の光走査装置。
【0020】
(7)パルス状のレーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させて測定空間内で走査するための少なくとも1つのミラー面を有するポリゴンミラーと、
前記測定空間内の物体から反射した光を受光するフォトダイオードと、
前記ポリゴンミラーを回転させるモーターと、
前記モーターの回転角を検出するモーターエンコーダーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、を有する光走査装置の制御方法であって、
前記モーターエンコーダーと前記ポリゴンミラー回転角検出部との信号から得られる前記モーターと前記ポリゴンミラーの回転位相差に応じて、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、光走査装置の制御方法。
【0021】
(8)前記ミラー面に対応したレーザー光の発光開始時においては、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信後、所定期間経過後、前記モーターエンコーダーからの信号に同期させてレーザー光を発光させるように前記レーザー光の発光タイミングを制御する、上記(7)に記載の光走査装置の制御方法。
【0022】
(9)前記レーザー光を前記ミラー面に反射させて走査している間においては、
前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号を受信すると同時にレーザー光を発光させるように、前記レーザー光の発光タイミングを制御する、上記(7)または(8)に記載の光走査装置の制御方法。
【0023】
(10)前記モーターエンコーダーの分解能は、前記ポリゴンミラーによって走査される前記レーザー光の走査分解能と同じか、または当該走査分解能より小さく、
前記ポリゴンミラー回転角検出部の分解能は前記モーターエンコーダーの分解能より小さい、上記(7)~(9)のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法。
【0024】
(11)前記レーザー光の発光間隔があらかじめ決められた所定間隔以下にならないようにする、上記(7)~(10)のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法。
【0025】
(12)前記ポリゴンミラー回転角検出部は、
フォトインタラプターと、
前記ポリゴンミラーに設けられ、前記ポリゴンミラーの回転よって前記フォトインタラプターの光を遮光するピンを有する、上記(7)~(11)のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法。
【0026】
(13)上記(7)~(12)のいずれか1つに記載の光走査装置の制御方法をコンピューターに実行させるための、光走査装置の制御プログラム。
【0027】
(14)上記(13)に記載の制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る光走査装置を示す断面図である。
図2】制御部の構成を示すブロック図である。
図3】ポリゴンミラーの正面図である。
図4】ポリゴンミラーを底面方向から見た斜視図である。
図5】ポリゴンミラーの断面図である。
図6】物体検出原理について説明する説明図である。
図7】モーターの回転速度制御を説明するための論理ブロック図である。
図8】位相PI制御のタイミングチャートである。
図9】各ミラー面における発光開始時の発光タイミングの制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
図10】パルス発光開始後における発光タイミングの制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0030】
本実施形態の光走査装置は、ポリゴンミラーにレーザー光を反射させて測定空間内を二次元的に走査する一方、物体などからの反射光を再びポリゴンミラーに反射させてフォトダイオードへ導く。これにより、測定空間を向いた複数の方向に関する情報を得ることができる。得られた情報は距離画像と称し、レーザー光の送受部から見た物体の方向と、その物体までの距離という情報を有する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る光走査装置を示す断面図である。
【0032】
光走査装置10は、投受光ユニット11、および制御部12を備え、筐体57に収容されている。
【0033】
投受光ユニット11は、半導体レーザー51、コリメートレンズ52、ポリゴンミラー53、レンズ54、フォトダイオード55、およびモーター56を有する。
【0034】
後述するように(図2~5参照)、モーター56には、モーター56の回転角度を検出するモーターエンコーダー61が設けられている。ポリゴンミラー53には、ポリゴンミラー53の回転角度を検出するポリゴンミラー回転角検出部71が設けられている。
【0035】
制御部12は、半導体レーザー51の発光からフォトダイオード55の受光までの時間差に応じて距離情報(距離値)を求める。得られた距離情報から、測定空間内の物体までの距離値の分布を示す複数の画素で構成される距離画像が生成される。距離画像は測距点群データまたは距離マップとも称される。また、制御部12は、後述するように、投受光ユニット11を構成するモーター56の回転制御およびレーザー光の発光タイミングも制御している。
【0036】
図2は、制御部12の構成を示すブロック図である。
【0037】
制御部12は、コンピューターであり、演算装置であるCPU121、ワークエリアや一時記憶に用いられるRAM122、基本プログラムを記憶しているROM123、および必要に応じて設けられ、プログラムやパラメーターデータなどを記憶する不揮発性メモリ124を有し、互いにバス120によって接続されている。制御部12のこのような構成は、周知のコンピューターと同様であるので詳細な説明は省略するが、後述する制御方法を行うためのプログラムがCPU121により実行されることで、各制御が行われる。なお、コンピューターとしての制御部12の構成は、たとえば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路によって構成されていてもよい。
【0038】
制御部12には、バス120を通じて(直接または外部機器接続のためのインターフェースを介して)投受光ユニット11が接続されている。
【0039】
また、制御部12は、モーターエンコーダー61およびポリゴンミラー回転角検出部71からの信号によりモーター56の回転速度を制御している。また、制御部12は、モーターエンコーダー61およびポリゴンミラー回転角検出部71からの信号から得られるモーター56とポリゴンミラー53の回転位相差に応じて、半導体レーザー51が発するレーザー光の発光タイミングを制御している(詳細後述)。
【0040】
半導体レーザー51は、レーザー光源であり、パルス状のレーザー光を出射する。コリメートレンズ52は、半導体レーザー51からの発散光を平行光に変換する。ポリゴンミラー53は、コリメートレンズ52で平行とされたレーザー光を、回転するミラー面(後述)により測定空間に向かって走査投光するとともに、物体からの反射光を反射させる。レンズ54は、ポリゴンミラー53で反射された物体からの反射光を集光する。フォトダイオード55は、レンズ54により集光された光を受光し、Z方向に並んだ複数の画素を有する。モーター56はポリゴンミラー53を回転駆動する。
【0041】
半導体レーザー51とコリメートレンズ52とで出射部501を構成し、レンズ54とフォトダイオード55とで受光部502を構成する。出射部501、受光部502の光軸は、ポリゴンミラー回転軸530に対して直交していることが好ましい。
【0042】
ボックス状の筐体57は、車両100の一部に固定されている。筐体57は、上壁57aと、これに対向する下壁57bと、上壁57aと下壁57bとを連結する側壁57cとを有する。側壁57cの一部に開口57dが形成され、開口57dには透明板58が取り付けられている。
【0043】
ポリゴンミラー53は、少なくとも1つのミラー面を有する。本実施形態では8面のミラー面を有している。ポリゴンミラー53は、筐体57に固定されたモーター56のモーター軸56aに連結され、回転駆動される。本実施形態では、たとえば、モーター軸56aの軸線(回転軸線)が鉛直方向であるZ方向に延在しており、Z方向に直交するX方向およびY方向よりなるXY平面が水平面となっているが、モーター軸56aの軸線を鉛直方向に対して傾けても良い。
【0044】
ポリゴンミラー53およびモーター56の詳細を説明する。図3はポリゴンミラー53の正面図、図4はポリゴンミラー53を底面方向から見た斜視図、および図5はポリゴンミラー53の断面図である。
【0045】
ポリゴンミラー53は、2つの四角錐を逆向きに接合して一体化した形状を有している。したがって、対になって向き合う方向に傾いたミラー面を4対有している。一対のミラー面としては、第1ミラー面M1と第2ミラー面M2、第3ミラー面M3と第4ミラー面M4(図1で図示されない面)、第5ミラー面M5と第6ミラー面M6、第7ミラー面M7と第8ミラー面M8(図1で図示されない面)である。第1ミラー面M1、第3ミラー面M3、第5ミラー面M5、第7ミラー面M7は、互いにポリゴンミラー回転軸530に対する傾斜角αが異なる。同様に第2ミラー面M2、第4ミラー面M4、第6ミラー面M6、第8ミラー面M8は、互いにポリゴンミラー回転軸530に対する傾斜角βが異なる。傾斜角は各ミラー面の延長線と、この延長線がポリゴンミラー回転軸530と交わる部分のなす角αおよびβである。図1においては、第1ミラー面M1の傾斜角αと第2ミラー面M2の傾斜角βを示したが、他のミラー面においても同様である(ただし傾斜角そのものは既に説明したとおりミラー面ごとに異なる)。なお、各ミラー面を総称または区別しないで記す場合はミラー面Mとする。
【0046】
これら各ミラー面Mは、ポリゴンミラー53の形状をした樹脂素材(たとえばPC(ポリカーボネート))の表面に、反射膜を蒸着することにより形成されている。
【0047】
ポリゴンミラー53の底面部分は、各ミラー面Mを保持するためのリング部材75が設けられている。ポリゴンミラー53の中央部(2つの四角錐の接合部分)にモーター軸56aと接続される支持部材76が設けられている。ポリゴンミラー53の内部は中空である。
【0048】
リング部材75には、一定間隔でピン72が設けられている。一方、筐体57内部にはピン72が通過する位置にフォトインタラプター73が固定されている。ピン72とフォトインタラプター73によりポリゴンミラー回転角検出部71を構成している。ピン72とフォトインタラプター73は、ポリゴンミラー53が回転することで、ピン72がフォトインタラプター73の切り欠き74内を通過する位置関係にある。フォトインタラプター73は、周知のように切り欠き74内に発光器と受光器(不図示)を有していて、発光器からの光が受光器へ照射されている。フォトインタラプター73は、ピン72が切り欠き74を通過して光が遮られることでパルス信号を出力する。このパルス信号は、制御部12へ出力される。
【0049】
このピン72の位置は、図示するように、リング部材75上であり、これはポリゴンミラー53の底面の外周に相当する位置である。このようなポリゴンミラー53の底面の外周にピン72を設けたことで、回転軸の近くに取り付けるよりも、ポリゴンミラー53の速度の変化をとらえやすくなる。
【0050】
モーター56には、モーターエンコーダー61が取り付けられている。モーターエンコーダー61は、パルスエンコーダー、ロータリーエンコーダーなどと称されており、モーター56の回転に合わせて一定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。このパルス信号は、制御部12へ出力される。
【0051】
ポリゴンミラー53の回転によって走査される際に発射されるレーザー光の回数を走査分解能という。モーターエンコーダー61の分解能は、走査分解能と同じか、またはそれより小さいことが好ましい。たとえば、走査分解能がミラー1面当たり923分割とした場合(ポリゴンミラー1回転では3692分割)、モーターエンコーダー61を同じ分解能とするために、本実施形態ではモーターエンコーダー61の1回転の分解能を5536分割とした。分解能は、すなわちパルス数と同じであり、走査分解能が923分割であればレーザー光を923パルス測定空間に走査投光するものとなり、エンコーダー61の分解能が5536分割であれば1回転で5536パルス出力するものとなる。
【0052】
上記の例では、モーターエンコーダー61の分解能(5536パルス)が1回転当たり、ミラー4面分の走査分解能(3692パルス)より多いのは、回転方向に隣接するミラー面の接続部分では、レーザー光を発射しない一方、モーターエンコーダー61ではその部分でも角度を示すためのパルスを出力するからである。
【0053】
一方、ポリゴンミラー回転角検出部71の分解能は、モーターエンコーダー61の分解能より小さくてよい。ポリゴンミラー回転角検出部71の分解能は、ピン72の数によって決まる。つまりポリゴンミラー回転角検出部71の分解能は、ポリゴンミラー53が1回転する間に、ピン72がフォトインタラプター73を横切ることで出力されるパルス数となる。上記の走査分解能の場合、ポリゴンミラー回転角検出部71の分解能は、たとえば、16分割(16パルス)とする。この場合、ピン72の数は16個である。もちろんこの値は、さらに多くてもよいが、あまり多くすると1回転当たりの補正処理(詳細後述)の回数が多くなりすぎて、処理が追い付かなくなる可能性があるので、補正処理ができる範囲の分解能(ピン72の数)とする。
【0054】
次に、光走査装置10の物体検出原理について説明する。図6は物体検出原理について説明する説明図であり、ポリゴンミラー53の回転に応じて、出射するレーザースポット光600で光走査装置10の測定空間内を走査する状態を示している。
【0055】
図1において半導体レーザー51からパルス状に間欠的に出射された発散光は、コリメートレンズ52で平行光に変換され、回転するポリゴンミラー53の第1ミラー面M1に入射する。その後、第1ミラー面M1で反射され、さらに第2ミラー面M2で反射した後、透明板58を透過して外部の測定空間に向けて、たとえば、図6に示すように、縦長の矩形断面を持つレーザースポット光600(ハッチングで示す)として走査投光される。なお、出射されたレーザースポット光600が物体601や602で反射し、反射光として戻ってくる方向を投受光方向という。同一の投受光方向に進行するレーザースポット光は、同一の画素で検出される。図において物体601は車両であり、物体602は人である。もちろんこれら以外の建物や構造物なども物体として検知される。
【0056】
ここで、ポリゴンミラー53の各ミラー面は、既に説明したように、ポリゴンミラー回転軸530に対する傾斜角が異なっている。まず、1番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2にて反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の一番上の領域Ln1を水平方向に左から右へと走査される(図6の状態)。次に、2番対の第3ミラー面M3と第4ミラー面M4で反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の上から2番目の領域Ln2を水平方向に左から右へと走査される。次に、3番対の第5ミラー面M5と第6ミラー面M6で反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の上から1番目の領域Ln3を水平方向に左から右へと走査される。次に、4番対の第7ミラー面M7と第8ミラー面M8で反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の最も下の領域Ln4を水平方向に左から右へと走査される。
【0057】
このようにして光走査装置10が測定可能な測定空間全体の1回の走査が完了する。この領域Ln1~Ln4の走査により得られた画像を組み合わせて、1つのフレームFLが得られる。そして、ポリゴンミラー53が1回転した後、再び1番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2に戻り、以降は測定空間の一番上の領域Ln1から最も下の領域Ln4までの走査を繰り返し、次のフレームFLが得られる。
【0058】
図1において、走査投光されたレーザー光のうち物体に当たって反射したレーザー光の一部は、再び透明板58を透過して筐体57内のポリゴンミラー53の第2ミラー面M2に入射し、ここで反射され、さらに第1ミラー面M1で反射されて、レンズ54により集光され、それぞれフォトダイオード55の受光面で画素ごとに検知される。このとき、制御部12が半導体レーザー51の発光タイミングとフォトダイオード55の受光タイミングとの時間差に応じて距離情報を求める。これにより測定空間内の全領域で物体の検出を行って、画素ごとに距離情報を持つ距離画像としてのフレームFLを得ることができる。なお、かかる距離画像は、不図示のネットワーク等を介して遠方のモニターに送信されて表示されたり、不揮発性メモリ124に記憶されたりする。また、得られた距離画像を背景差分法による物体検出のために背景画像データとして記憶してもよい。
【0059】
次に、制御について説明する。
【0060】
図7は、モーター56の回転速度制御を説明するための論理ブロック図である。図8は、位相PI(proportional-integral)制御のタイミングチャートである。
【0061】
モーター56の回転制御は、モーターエンコーダー61からの信号(図中、エンコーダー信号と記した)で算出できるモーター回転速度を速度指令と比較して速度PI制御を行いつつ、図8に示すように、ポリゴンミラー回転角検出部71の信号と、速度指令に合わせて制御部12で生成される位相指令(基準信号)とを比較して位相PI制御を行う。これにより、低速でも回転安定性を高めることができる。
【0062】
次に、レーザー光の発光制御を説明する。
【0063】
ポリゴンミラー53は、既に説明したようにポリカーボネートなどを用いた樹脂素材を使用していて、しかも内部が中空である。このようなポリゴンミラー53は、軽量化に向いている。しかし、突発的な振動で、軸ブレやねじれ変形を起こしやすい。ポリゴンミラー53は、軸ブレやねじれ変形を起こすと回転速度が変化して、レーザー光を測定空間に走査する際の走査角に誤差が生じてしまう。
【0064】
ポリゴンミラー53のような回転体の振動耐性を上げるためには、高速に回転させてフライホイール効果を大きく発生させることが考えられる。しかし、光走査装置10ではポリゴンミラー53を高速回転させると受光データの処理が追い付かない問題が発生したり、レーザー光のパルス発光間隔が目に障害を与えない光強度の安全基準を超えるほど短くなったりしてしまうおそれがある。このため、ポリゴンミラー53の回転速度は300~3000rpm程度の低速回転にする必要がある。このようなことから、ポリゴンミラー53を高速回転できないため、振動が加わると回転速度に変化が生じて走査角に誤差が生じやすいのである。
【0065】
本実施形態では、このような振動起因の走査角の誤差を即座(リアルタイム)に補正するために、モーターエンコーダー61とポリゴンミラー回転角検出部71とからのパルス信号を用いて、パルス状のレーザー光の発光タイミングを制御することとした。
【0066】
レーザー光の発光タイミングの制御は、各ミラー面における発光開始時と、パルス発光開始後レーザー光をミラー面に反射させて走査している間(以下パルス発光開始後という)で異なる。
【0067】
各ミラー面における発光開始時の発光タイミングの制御方法を説明する。図9は、各ミラー面における発光開始時の発光タイミングの制御方法を説明するためのタイミングチャートである。図9においては、横軸をモーター軸の回転角度として、モーターエンコーダー61の信号、ポリゴンミラー回転角検出部71の信号、およびレーザー発光タイミングの信号について示した。レーザー発光タイミングの信号は、制御部12から半導体レーザー51へ出力され、半導体レーザー51は、このタイミング信号に合わせて点消灯する。
【0068】
また、図9においては、回転安定状態、ポリゴン遅延状態、およびポリゴン先行状態の3つの状態を示している。図示した発光開始パルスは、各ミラー面Mにおける発光開始時点を示すパルスである。この発光開始パルスは、モーターエンコーダー61が出力している回転角基準を示すパルス(たとえば他のパルスよりパルス幅が広いパルス)から、各ミラー面Mごとに所定のパルス数をカウントした位置のパルスである。この所定のパルス数は、あらかじめ制御部12に記憶しておいて使用する。上述した走査分解能923パルスの例では、モーターエンコーダー61の分解能である5536パルスを4分割して各ミラー対ごとに指定することになる。そうすると所定のパルス数は、一対のミラー面M1およびM2に対する発光開始パルスを1パルス目とした場合、ミラー面M3およびM4に対する発光開始パルスは1385パルス目、ミラー面M5およびM6に対する発光開始パルスは2769パルス目、ミラー面M7およびM8に対する発光開始パルスは4153パルス目となる。一方、各ミラー面Mごとのレーザー発光の終了は、たとえばパルス状のレーザー光をあらかじめ決められた回数(上記の例では923パルス)となるまで発光させたら終了とする。なお、このようなパルス数はあくまでも例示であり、ミラー面の大きさや走査分解能などに応じて決定されるものであって、本発明はこれらパルス数を用いることに限定されるものではない。
【0069】
図9を参照して説明する。回転安定状態は、モーターエンコーダー61の発光開始パルスとポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが一致している状態である。この状態の場合、制御部12は、発光開始パルス受信と同時にポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信する。そしてポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信から、モーターエンコーダー61のパルスのカウントを開始して2パルス目をカウントすると同時に発光を開始させる。その後、制御部12は、モーターエンコーダー61のパルスに同期させて発光させる。この回転安定状態においては、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが検出された後からレーザー光発光までの回転角A0は補正なし(回転位相差なし)となる。
【0070】
なお、本明細書において、上記「同時」とは、制御部12などの回路遅延分の差があっても同時と見做す。
【0071】
ポリゴン遅延状態は、モーターエンコーダー61の発光開始パルスに対して、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが回転位相差ph1分遅れている状態である。この状態では、制御部12はモーターエンコーダー61の回転開始パルスを受信後、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信することになり、その差を回転位相差ph1として検出する。そして、制御部12は、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信してから、モーターエンコーダー61のパルスのカウントを開始して2パルス目をカウントすると同時に発光を開始させる。その後、制御部12は、レーザー光をモーターエンコーダー61のパルスに同期させて発光させる。この場合、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが検出された後からレーザー光発光までの回転角がA1となって、回転位相差ph1が補正されることになる。
【0072】
ポリゴン先行状態は、モーターエンコーダー61の発光開始パルスに対して、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが回転位相差ph2分進んでいる状態である。この状態では、制御部12は、レーザー光を発光させていない状態で(または回転方向のミラー面接合部に相当する間において)、モーターエンコーダー61の回転開始パルスを検出する前に、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信する。その後、モーターエンコーダー61の回転開始パルスを受信する。つまり、モーターエンコーダー61の回転開始パルスを検出する前に、ミラー面は走査開始位置まで先行して回転しているのである。これらパルスの差が回転位相差ph2となる。このようなポリゴン先行状態においては、制御部12は、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信してから、モーターエンコーダー61のパルスのカウントを開始して2パルス目をカウントすると同時に発光を開始させる。その後、制御部12は、モーターエンコーダー61のパルスに同期させて発光させる。これにより、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが検出された後からレーザー光発光までの回転角がA2となって、回転位相差ph2に応じた補正が行われることになる。
【0073】
このように各ミラー面におけるレーザー発光開始においては、レーザー光の発光タイミングは、ポリゴンミラー53の回転がモーター56の回転に対して遅延していても、先行していても、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信してから、モーターエンコーダー61のパルスのカウントを開始して、2パルス目をカウントすると同時に発光させている。これにより、ポリゴンミラー53の回転速度が振動によって変化したとしても、その分を補正してレーザー光の発光を開始させることができる。したがって、振動で起こるレーザー光の走査角の誤差をリアルタイムで補正することができる。しかも、回転安定状態、ポリゴン遅延状態、およびポリゴン先行状態のいずれの状態でも、同じ制御により各ミラー面Mごとのレーザー光の発光開始のタイミングを補正することができる。
【0074】
ここでは、ポリゴンミラー回転角検出部71からのパルスが検出された後の最初の発光を、モーターエンコーダー61からのパルスをカウントして、2パルス目をカウントすると同時に発光させている(この2パルスカウントする期間を所定期間とする)。これは、1のミラー面から次のミラー面に移る期間後、最初の発光で確実に補正できるようにするためである。この所定期間は、2パルスに限定されず、1のミラー面から次のミラー面に移る期間で補正できるようなタイミングであればよく、ポリゴンミラー回転角検出部71からのパルスが検出された後、最初に検出されたモーターエンコーダー61のパルスから同期させてもよいし、2パルス以上カウントしてから同期させてもよい。ただし、所定期間が長すぎると、次のミラー面による走査開始が遅くなるので、そのような遅延が発生しないように設定する。
【0075】
次に、パルス発光開始後、レーザー光を反射させて走査している間における発光タイミングの制御方法を説明する。図10は、パルス発光開始後における発光タイミングの制御方法を説明するためのタイミングチャートである。図10においても図9同様に、横軸をモーター軸の回転角度として、モーターエンコーダー61の信号、ポリゴンミラー回転角検出部71の信号、およびレーザー発光タイミングの信号について示した。また、ここでは回転安定状態、ポリゴン遅延状態A、および別のタイミングとなるポリゴン遅延状態Bの3つの状態を示している。ここでパルス発光開始後の発光では、モーター56の回転に対してポリゴンミラー53の回転が先行している状態(ポリゴン先行状態)であっても、検出されるポリゴンミラー回転角検出部71からのパルスは、その前に検出されたモーターエンコーダー61のパルスの後に受信することになる。このためポリゴン先行状態は考慮する必要はなく、制御部12がモーターエンコーダー61のパルスを受信後、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信したなら、それら受信したモーターエンコーダー61のパルスとポリゴンミラー回転角検出部71のパルスの角度差が回転位相差ということになる。
【0076】
また、ここで例示した処理においては、回転位相差として検出された角度の間には、さらに細かい角度を検出する信号がない。このため、位相差の間の細かい角度は対応する時間を用いて制御する。もちろん位相差として検出された角度の間に、さらに細かい角度を検出する信号がある場合は、それを利用してもよい。
【0077】
パルス発光開始後における発光タイミングの制御は、基本的には、回転安定状態もポリゴン遅延状態AおよびBのいずれでも同じである。すなわち、制御部12は、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信すると同時にレーザーを発光させる。このとき、回転位相差が検出されれば制御部12内で記憶される。その後は、モーターエンコーダー61の各パルスと同期をとりつつ、各パルスから回転位相差分だけ遅らせて発光させる。モーターエンコーダー61の各パルスと同期をとりつつ、各パルスから回転位相差分だけ遅らせて発光させるためには、たとえば、制御部12内のRAM122などに、検出した回転位相差を時間として記憶しておき、その時間分、制御部12の内部クロック(コンピューター動作ためのクロック)によりカウントして遅らせる。
【0078】
したがって、回転安定状態の場合は、回転位相差は0であるので、そのままモーターエンコーダー61の各パルスに合わせて発光させる。ポリゴン遅延状態Aの場合は、モーターエンコーダー61の各パルスと同期をとりつつ、各パルスから回転位相差ph3分遅らせて発光させる。
【0079】
ポリゴン遅延状態Bにおいては、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスを受信すると同時にレーザーを発光させると、その前の発光との時間間隔が極めて短いものとなる。このような場合、制御部12は発光を禁止することとした。
【0080】
この発光禁止は安全基準を考慮したもので、安全基準よりも時間間隔が短くなる場合に発光禁止としたのである。安全基準は、IEC 60825-1およびJIS C6802(国内規格、IEC 60825-1に準拠)により、人体(目や皮膚)への影響を考慮してレーザー製品の放出レベルをクラス分けした規格として決められている。これらの規格では、基準時間内の許容エネルギーが規定されていて、ある時間内に複数パルスが存在する場合はそれらを合わせて1つのパルスと見做して計算される。したがって、複数のパルスが極めて短い時間間隔で連続発光する場合、1パルスのエネルギーを少なくするか、パルスの発光間隔を長くする必要がある。本実施形態では連続発光により安全基準を満たさなくなるようなエネルギーとなる場合に、レーザーの発光間隔を開けることとした。このために、本実施形態は、発光時間間隔があらかじめ決められた所定間隔以下となる場合にレーザー発光を禁止する。この所定時間は既に説明したように、安全基準を満たすレーザー強度となるように決められるものである。
【0081】
制御部12は、ポリゴン遅延状態Bにおいては禁止された発光(すなわち、ポリゴンミラー回転角検出部71のパルスが検出されると同時)の後は、モーターエンコーダー61の各パルスと同期をとりつつ、各パルスから回転位相差ph4分遅らせて発光させる。
【0082】
これによりパルス発光開始後においても、回転安定状態、ポリゴン遅延状態(ポリゴン先行状態も同じ)のいずれであっても、リアルタイムで走査角の補正が行われる。しかも、しかも、パルスの発光間隔を人体に障害を与えない安全基準以下にすることができる。
【0083】
本実施形態によれば以下の効果を奏する。
【0084】
モーター56の回転制御を、モーターエンコーダー61とポリゴンミラー53の回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部71の信号により制御することとした。特に、モーターエンコーダー61は、モーター軸56aに直結しているため、ポリゴンミラー53の軸ブレやねじれ変形の影響を受けずモーター56の制御性が良い。一方、ポリゴンミラー回転角検出部71はポリゴンミラー53に配置するので、ポリゴンミラー53の軸ブレやねじれ変形が起きた場合に、それらの変化を確実に検出することができる。
【0085】
そして、制御部12がモーターエンコーダー61とポリゴンミラー回転角検出部71の信号から得られるモーター56とポリゴンミラー53との回転位相差に応じてレーザー光の発光タイミングを制御することとした。このため、この回転位相差によって発生する走査角の誤差を即座に(リアルタイムで)補正することができる。
【0086】
また、レーザー光の発光間隔が安全基準を満たさなくなるような場合には、その分の発光を禁止することとした。このため補正された発光タイミングであっても、安全にレーザー光を測定空間に走査投光することができる。
【0087】
本実施形態の光走査装置10は、たとえば、測定空間に存在する物体(対象物)までの距離を3次元測定するレーザーレーダーに好適である。レーザーレーダーは、LiDER(Light Detection and Ranging、またはLaser Imaging Detection and Ranging)と称されることもある。
【0088】
本発明に係る光走査装置の制御プログラムは、専用のハードウェア回路によって実現することも可能である。また、この制御プログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM(Read Only Memory)などのコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供したり、記録媒体によらず、インターネットなどのネットワークを介してオンラインで提供したりすることも可能である。この場合、この制御プログラムは、通常、記憶部を構成する磁気ディスク装置等に記憶される。また、この制御プログラムは、単独のアプリケーションソフトウェアとして提供したり、一機能として別のソフトウェアに組み込んで提供したりすることも可能である。
【0089】
以上本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0090】
10 光走査装置、
11 投受光ユニット、
12 制御部、
51 半導体レーザー、
53 ポリゴンミラー、
55 フォトダイオード、
56 モーター、
56a モーター軸、
61 モーターエンコーダー、
71 ポリゴンミラー回転角検出部、
72 ピン、
73 フォトインタラプター、
75 リング部材、
120 バス、
530 ポリゴンミラー回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10