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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】静電容量型微小機械加速度計
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20220524BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01P15/08 102E
G01P15/125 Z
G01P15/08 101B
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020101899
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021004875
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】20195563
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】紺野 彰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良隆
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッレ-ペッカ・リュトゥコネン
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-23613(JP,A)
【文献】特表2016-525212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型微小機械加速度計であって、
基板平面を規定する基板と、
ロータであり、ロータ回転軸を中心とした前記基板平面に対する前記ロータの回転を可能にする1つまたは複数のねじりばねを介して前記基板に取り付けられている、ロータと、
前記基板平面に対して固定されたステータと
を備え、
前記ロータは1つまたは複数のロータ電極を含み、前記ステータは1つまたは複数のステータ電極を含み、前記ロータ電極および前記ステータ電極は、前記ロータの回転が前記ロータ電極および前記ステータ電極の有効面積ならびに/または前記ロータ電極と前記ステータ電極との間の距離の変化を引き起こすように構成されており、
前記静電容量型微小機械加速度計は、前記ロータを前記基板に接続する1つまたは複数の減衰ばねをさらに備え、各減衰ばねは、前記1つまたは複数のねじりばねの前記基板平面に垂直な高さよりも小さい、前記基板平面に垂直な高さを有すること、および
前記減衰ばねは、前記ロータから前記静電容量型微小機械加速度計の内部に向かって延伸し、
前記ロータは、前記1つまたは複数のねじりばねおよびロータサスペンダを介して前記基板に接続され、前記ステータおよびロータサスペンダは前記基板上の共通のアンカー点に固定され、前記1つまたは複数の減衰ばねは、前記共通のアンカー点に接続される、または、前記ロータサスペンダを介して、前記共通のアンカー点に接続されることを特徴とする、静電容量型微小機械加速度計。
【請求項2】
1つまたは複数のさらなる減衰ばねが、前記ロータから前記静電容量型微小機械加速度計の外部まで延伸する、請求項1に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項3】
前記加速度計が、外部に延伸する2つの減衰ばねを備える、請求項2に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項4】
前記減衰ばねは、前記ロータ回転軸に平行に向けられる、請求項3に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項5】
前記減衰ばねは、前記ロータ回転軸に垂直に向けられる、請求項3に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項6】
前記微小機械加速度計は、外部に延伸する4つの減衰ばねを備え、前記減衰ばねのうちの2つが、前記ロータ回転軸に平行に向けられ、前記減衰ばねのうちの2つが、前記ロータ回転軸に垂直に向けられる、請求項2に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項7】
前記外部に延伸する1つまたは複数の減衰ばねが、前記ロータの遠位端から前記ロータ回転軸に接続されている、請求項2~6のいずれか一項に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項8】
前記ロータは、2つの長手方向ロータバーと1つの交差方向ロータバーとを備え、前記2つの長手方向ロータバーは前記ロータ回転軸から垂直方向外方に延伸し、前記交差方向ロータバーは前記ロータ回転軸に平行に、前記長手方向ロータバーの遠位端に配置され、前記1つまたは複数のロータ電極は、前記交差方向ロータバー上に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項9】
前記減衰ばねは、前記ロータ回転軸に平行な方向に、前記ロータから前記加速度計の内部に向かって延伸する、請求項1に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項10】
前記減衰ばねは、前記ロータ回転軸に垂直な方向に、前記ロータから前記加速度計の内部に向かって延伸する、請求項1に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項11】
前記加速度計は、4つの減衰ばねを備え、前記減衰ばねの第1の対が、前記ロータから内向きに延伸し、第2の対が、前記ロータから外部に延伸し、前記減衰ばねの前記第1の対および前記第2の対の一方は、前記ロータ回転軸に平行に向けられ、前記減衰ばねの前記第1の対および前記第2の対の他方は、前記ロータ回転軸に垂直に向けられる、請求項8~10のいずれか一項に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【請求項12】
前記1つまたは複数のロータ電極および前記1つまたは複数のステータ電極が、交互配置されたコームまたは平行板を形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の静電容量型微小機械加速度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電容量型加速度計に関し、加速度計が基板平面に垂直な加速度成分を伴う運動を受けるときに基板平面外に回転し得る可動ロータを備えた加速度センサに関する。このようなセンサは、基板平面内の加速度を測定して3軸加速度計を形成する他の2つのセンサと組み合わせることができる。このような加速度計は、電子安定性制御(ESP/ESC)、アンチロックブレーキ(ABS)、電動パーキングブレーキ(EPB)、ヒルスタートアシスタンス(HSA)、電子制御サスペンション(ECS)、ヘッドライトレベリングもしくはエアバッグ展開、またはナビゲーション用の慣性計測装置(IMU)の一部としてのジャイロスコープとの組み合わせなどの、自動車用途に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
3軸加速度計の各容量センサは、基板に対して不動であるステータと、基板に対して少なくとも部分的に可動であるロータとを備えることができる。本開示では、「ロータ」および「ステータ」という用語は両方とも、バーまたはビームなどの相互連結された微小機械構造を指す。当該構造および当該構造の相互接続は、基板、例えばシリコン基板をエッチングすることによって形成することができる。
【0003】
本開示において、「バー」および「ビーム」という用語は、例えば「ばね」と呼ばれ得るより柔軟な構造と比較して典型的には剛性である、例えばシリコン製の細長い構造を指す。剛性および柔軟性は相対的な用語である。ロータを構成するバーおよびビームにはある程度の柔軟性があるが、ロータが移動しても、バーおよびビームは依然として互いに対する相互の位置を良好な近似程度まで維持し、ロータが懸架されているばねのみが、運動に起因する大幅に柔軟な変形を受ける。
【0004】
ロータおよびステータは、典型的には、ロータとステータとの間の電気的測定を容易にするために、ロータおよびステータの相互連結構造の少なくとも一部に導電性電極領域を備える。
【0005】
3軸加速度計は、典型的には、X-Y平面とラベル付けされ得る基板平面を備える。ステータは、基板平面内の固定構造であり得る。加速度センサは、基板内の軸に沿った加速運動に応答して当該軸に沿った直線運動を受けるロータによって、基板平面内に実装することができる。ロータはシーソーとして実装されてもよく、結果、ロータは1つまたは複数のねじりばねに取り付けられ、ねじりばねによって規定される回転軸に平行でない加速運動に応答して、当該回転軸を中心とした回転運動を受ける。このようにして、ロータは、回転運動を受けると、基板平面外の方向に運動する。
【0006】
ロータがシーソーとして実装される場合、ロータの重心は、直線加速度に応答しなくなるため、回転軸と一致してはならない。したがって、シーソーロータは、少なくともある程度は不平衡のシーソーであるべきである。シーソーロータは、ロータのすべての部分が、第1の側と呼ばれる場合がある、回転軸の片側にあるように、完全に片側のシーソーとして実装することができる。より正確には、ロータ全体が平面の片側にあるように、回転軸と交差する平面を描くことが可能な場合、シーソーロータは片側にある。シーソーとして実装されるロータはまた、ロータの一部が第1の側と呼ばれる場合がある、軸の一方の側にあり、一部が第2の側と呼ばれる場合がある、反対の側にあるように、両側のものであってもよい。両側ロータの場合、ロータ全体が平面の片側にあるように、回転軸と交差する平面を描くことは可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第3409639号明細書
【文献】欧州特許第3014284号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、静電容量型微小機械加速度計に関し、特に、基板平面を規定する基板と、ロータであって、ロータ回転軸を中心とした基板平面に対するロータの回転を可能にする1つまたは複数のねじりばねを介して基板に取り付けられている、ロータと、基板平面に対して固定されたステータとを備える静電容量型微小機械加速度計に関する。
【0009】
ロータは1つまたは複数のロータ電極を含み、ステータは1つまたは複数のステータ電極を含み、ロータ電極およびステータ電極は、ロータの回転がロータ電極およびステータ電極の有効面積ならびに/またはロータ電極とステータ電極との間の距離の変化を引き起こすように構成される。
【0010】
静電容量型微小機械加速度計は、ロータを基板に接続する1つまたは複数の減衰ばねをさらに備え、各減衰ばねは、1つまたは複数のねじりばねの基板平面に垂直な高さよりも小さい、基板平面に垂直な高さを有する。減衰ばねは、X-Y平面、すなわち基板平面内のロータの動きを減衰させる。特に、凹型ばね、すなわち加速度計の他の構成要素の高さよりも小さい高さを有するばねを使用することによって、Z方向における、すなわち、基板/X-Y平面外のロータの動きに大きな影響を与えることなく、X-Y平面における減衰を行うことが可能になる。
【0011】
1つまたは複数の減衰ばねが、ロータから静電容量型微小機械加速度計の外部まで延伸することができる。
【0012】
加速度計は、外部に延伸する2つの減衰ばねを備えてもよい。
【0013】
減衰ばねは、ロータ回転軸に平行に向けられてもよく、またはロータ回転軸に垂直に向けられてもよい。
【0014】
微小機械加速度計は、外部に延伸する4つの減衰ばねを備えてもよい。減衰ばねのうちの2つが、ロータ回転軸に平行に向けられてもよく、減衰ばねのうちの2つが、ロータ回転軸に垂直に向けられてもよい。
【0015】
外部に延伸する1つまたは複数の減衰ばねが、ロータの遠位端からロータ回転軸に接続されてもよい。
【0016】
ロータは、2つの長手方向ロータバーと1つの交差方向ロータバーとを備えてもよく、2つの長手方向ロータバーはロータ回転軸から垂直方向外方に延伸し、交差方向ロータバーはロータ回転軸に平行に、長手方向ロータバーの遠位端に配置され、1つまたは複数のロータ電極は、交差方向ロータバー上に配置される。
【0017】
ロータは、1つまたは複数のねじりばねおよびロータサスペンダを介して基板に接続することができ、これにより、ステータおよびロータサスペンダは基板上の共通のアンカー点に固定され、1つまたは複数の減衰ばねは共通のアンカー点に接続される。
【0018】
減衰ばねは、ロータ回転軸に平行な方向に、ロータから外方に加速度計の内部に向かって延伸する。
【0019】
減衰ばねは、ロータ回転軸に垂直な方向に、ロータから外方に加速度計の内部に向かって延伸する。
【0020】
加速度計は、4つの減衰ばねを備えることができ、減衰ばねの第1の対は、ロータから内向きに延伸し、減衰ばねの第2の対は、ロータから外部に延伸する。減衰ばねの第1の対および第2の対の一方は、ロータ回転軸に平行に向けられてもよく、減衰ばねの第1の対および第2の対の他方は、ロータ回転軸に垂直に向けられてもよい。
【0021】
1つまたは複数のロータ電極および1つまたは複数のステータ電極は、交互配置されたコームまたは平行板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】静電容量型微小機械加速度計を示す概略図である。
図2図1に示した静電容量型微小機械加速度計を示す断面図である。
図3】寄生モードでの静電容量型微小機械加速度計のロータの動きを示す図である。
図4】本発明の静電容量型微小機械加速度計の第1の実施形態を示す概略図である。
図5図4に示した静電容量型微小機械加速度計を示す断面図である。
図6】本発明の静電容量型微小機械加速度計の第2の実施形態を示す概略図である。
図7】本発明の静電容量型微小機械加速度計の第3の実施形態を示す概略図である。
図8】本発明の静電容量型微小機械加速度計の第4の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、静電容量型微小機械加速度計を説明する。加速度計は、交差方向および長手方向(図1にはX軸およびY軸として示されている)に延伸する基板平面を規定する基板を含み、交差方向は長手方向に垂直である。加速度計は、基板平面に垂直な垂直軸(図2にはZ軸として示されている)に沿った加速度を測定する。加速度計は、基板に対して可動であるロータと、ロータサスペンダと、基板に対して不動である1つまたは複数のステータとを含む。ロータは1つまたは複数のロータ電極を含み、ステータ(複数可)は1つまたは複数のステータ電極を備える。
【0024】
ロータ電極およびステータ電極は、コンデンサを形成するように配置され、1つまたは複数のロータ電極は、コンデンサの一方のプレートを形成し、1つまたは複数のステータ電極は、コンデンサの他方のプレートを形成する。図1に示されるような好ましい実施形態では、ロータ電極131およびステータ電極161、171は、交互配置された歯として形成される。しかしながら、本発明は、MEMSデバイスの加速度が基板平面外のロータ電極の動きを測定することによって検出される、プレート電極などの他のタイプのロータ電極およびステータ電極を使用するMEMS加速度計に適用可能である。したがって、本発明はコーム電極に関して説明および図示されているが、本発明は他のタイプの電極とともに使用されてもよいことが諒解されよう。
【0025】
従来の静電容量の法則によれば、静電容量Cは、電極間の重なり合いの面積A、および、コンデンサプレート間の分離距離dに比例し、すなわち、以下のようになる。
【0026】
【数1】
【0027】
式中、εは、プレート間に配置された誘電体の誘電率である。ロータがステータと平行に、すなわち基板平面に平行に位置整合されている中立位置において、1つまたは複数のロータ電極および1つまたは複数のステータ電極は、大きい重なり合いの面積Aを有し、大きい静電容量Cを提供する。さらに、電極間の距離dが小さい。コーム電極コンデンサの場合、ロータが基板平面との平行外に回転すると、重なり合いの面積Aが減少し、距離dが増大し、結果、静電容量Cが減少する。プレート電極コンデンサの場合、距離dが増大し、同じく静電容量Cが減少する。ロータが動く範囲、したがって重なり合いの面積Aおよび/または距離dが変化する範囲は、Z方向のパッケージの加速度に正比例する、Z方向に加えられる力の成分に依存する。したがって、静電容量の変化の範囲はパッケージの加速度に依存し、したがって、静電容量の変化を測定することにより、パッケージのZ方向の加速度を決定することができる。したがって、加速度計は差動静電容量測定を実行するように構成され、このとき、差動静電容量測定を使用して、パッケージのZ方向の加速度を計算することができる。
【0028】
ロータステータシステムの静電容量の変化は、ロータの、基板平面との平行外の動きに依存するため、静電容量の当該変化は、「面外」モードとして参照される。ただし、上記のような加速度計は寄生「面内」モードの影響を受けやすく、パッケージの加速度に直接関係しない静電容量に望ましくない変化を引き起こす。例えば、ロータ電極151およびステータ電極161、171が交互配置されている図1に示される実施形態では、X-Y平面におけるロータ電極の動き、すなわち、Z成分のないロータの動きは、ロータ電極とステータ電極との間の距離dにさらなる変化を引き起こし、結果、測定されているZ軸加速度とは無関係であるように、静電容量Cが変化する。プレート電極コンデンサでは、X-Y平面内のロータ電極の動きにより、プレート間の重なり合いの面積Aが変化し、結果、Z軸加速度とは無関係であるように、静電容量Cが変化する。静電容量の当該寄生面内モードの変化は、加速度計が外部から駆動される振動にさらされる場合、特に振動が加速度計パッケージの固有周波数と一致する場合に、特に顕著である。寄生モードでのロータの望ましくない動きを図3に示し、図3を参照してさらに詳しく説明する。
【0029】
図1は、コーム電極を使用する静電容量型微小機械加速度計の実施形態を概略的に示す。本開示において、基板平面は、X-Y平面に対応する。本開示において、「基板」という用語は、センサを構成する微小機械構造が準備された本体を指す。構造が完成すると、基板の残りの部分は、加速度計を囲む支持体を形成する。基板は、例えば、シリコンウェハであってよい。センサを構成する微小機械構造は、エッチングおよびコーティング方法により基板から製造することができる。言い換えると、本開示では、「基板」という用語は、加速度計内の微小電気機械構造が製造される構造層(またはデバイス層)を形成する薄い基板を指す。当該基板は、典型的には、別個の非常に厚いハンドルウェハまたは支持ウェハからの構造的支持を必要とする。本開示では、基板平面、またはX-Y平面は、ロータが静止しているとき、すなわちロータがステータと位置合わせされた中立位置にあり、一般に加速度計の他の要素が形成されている基板の表面に平行であるとき、ロータと平行である。
【0030】
上記のように、垂直Z軸はX-Y平面に垂直であると規定される。図1に示されている微小機械構成要素の一部は、基板と同じ厚さであってもよく、他はそれより薄くてもよい。本開示では、基板は全厚において、X-Y平面を構成し、「上方」および「下方」という用語は、基板の表面からのZ座標の差を指す。言い換えると、図1に示されている基板平面の「上方」にある物体は、図1に示されている構成要素の上面よりも視点保持者の近くにあると解釈されてもよく、一方、基板平面の「下方」にある物体は、図1に示されている構成要素の底面よりも視点保持者から離れていると解釈されてもよい。図2は、基板平面内にある、デバイス構成要素/ロータ140上方の加速度計パッケージ210を示す。
【0031】
加速度計は、本開示では垂直軸として参照されることになり、基板平面に垂直である、Z軸の方向の加速度を測定するように構成されている。加速度計は、交差方向ロータバー130ならびに2つの長手方向ロータバー140および150から構成されるロータを備える。交差方向ロータバー130ならびに2つの長手方向ロータバー140および150はともに、基板平面上の他の構成要素を部分的に囲むことができるフレームを形成する。上記で簡潔に述べたように、ロータは、ロータ電極として機能するロータ電極フィンガ131のセットも含む。図1に概略的に示されているものよりも、フィンガの数ははるかに多くてもよく、フィンガ間の間隔ははるかに小さくてもよい。
【0032】
図1のセンサはまた、交差方向ステータバー160および170を備えた2つのステータと、ステータ電極として機能する対応するステータ電極フィンガ161および171のセットとをも備える。ロータ電極およびステータ電極はコーティングされてもよく、ロータ電極およびステータ電極は、基板の上面および/または底面から垂直に陥凹してもよい。図1に示すように、フレーム形状のロータは、ステータを部分的に囲むことができる。交差方向ステータバー160および170は、ステータアンカー点162および172において基板に固定される。「アンカー点」という用語は、本開示では、バーなどの物体が基板に堅固に取り付けられ得る領域を指す。
【0033】
ロータ電極およびステータ電極の位置および数、ならびに当該電極の形状および相互配置は、目的の測定用途に応じて、さまざまな方法で静電容量測定に最適化することができる。
【0034】
上述のように、ロータは、典型的には、ロータに取り付けられた1つまたは複数の交差方向ねじりばねを含むロータサスペンダに接続される。ねじりばねは、交差方向ロータ回転軸上に位置整合されている。ねじりばねの使用が本明細書において詳細に説明されているが、他のタイプのばねを使用して、ロータをロータサスペンダに接合することができることが諒解されよう。
【0035】
ロータサスペンダは、1つまたは複数のロータアンカー点に固定され得る。本開示では、「サスペンダ」という用語は、ねじりばねなどの少なくとも1つまたは複数のばねを含む構造を指す。1つまたは複数のばねがアンカー点に直接接続されていない場合、サスペンダ構造はまた、ロータアンカー点(複数可)からばねへと延伸するシーケンスで接続されたバーまたはビームを指す場合もある。ねじりばねが使用される場合、交差方向にあるねじりばねがねじられると、ロータが回転する。サスペンダ内の任意選択のバーまたはビームは、大幅な曲げまたはねじれを受けない。代わりに、任意選択のバーまたはビームは、ロータアンカー点がねじりばねからある特定の距離に配置されることを可能にするため、任意選択のバーまたはビームの主要な機能は変位である。
【0036】
本開示において、「ねじりばね」という用語は、ねじりばねを、当該ばねの長さ方向寸法を中心としたねじれの影響を受けやすくするアスペクト比を有するシリコン構造を指す。当該事例において、「交差方向」ねじりばねとは、長さ方向寸法が図1のX軸と平行であるばねを意味する。交差方向ねじりばねは、ねじれを可能にするためにY方向に狭くし、ただし、X-Y平面外の並進運動を防ぐために、垂直Z方向には厚くすることができる。代替的に、交差方向ねじりばねは、X-Y平面において蛇行した形状を有してもよく、Z方向において厚くてもよい。蛇行したばねは、例えば、必ずしもy軸の方向に狭くなることなく、x軸を中心としたねじれを可能にすることができる。
【0037】
図1のデバイスにおいて、ロータサスペンダは、ロータサスペンダバー180を備え、第1の交差方向ねじりばね191は、ロータサスペンダバー180の一端に取り付けられ、第2の交差方向ねじりばね193は、ロータサスペンダバー180の他端に取り付けられる。ロータサスペンダバー180は、ロータアンカー点182に固定される。ねじりばねをロータアンカー点からさらに変位させる必要がある場合は、固定されるサスペンダバーとねじりばねとの間に追加のサスペンダバーを追加することができる。当該追加のサスペンダバーは、交差方向または長手方向のいずれかに延伸し得る。
【0038】
交差方向ロータバー130ならびに第1の長手方向ロータバー140および第2の長手方向ロータバー150を備えるロータは、交差方向ねじりばね191および193が図1Aに示されている交差方向ロータ回転軸(RRA)を中心としてロータが旋回することを可能にしているため、「シーソー」と呼ばれる場合がある。当該軸は、ねじりばね191および193の位置によって決定される。2つのねじりばねは、ロータの回転または旋回を容易にするために、同じ軸上に位置整合される必要がある。
【0039】
上述のように、加速度計が垂直方向の加速運動を受けるとき、ロータは交差方向ロータ回転軸を中心として回転することができ、当該運動は、上述したロータ電極とステータ電極との間で行われる差動容量測定によって検出することができる。
【0040】
図1Aに示すロータは、交差方向ロータ回転軸(以下、RRAまたは交差方向RRAとして参照される場合がある)の両側に延伸しているため、両側シーソーとして特徴付けられることもあり得る。換言すると、各長手方向ロータバー140および150は、交差方向ロータ回転軸の第1の側から第2の側まで、交差方向ロータ回転軸にわたって延伸する。しかしながら、本発明は、両側シーソーロータに限定されず、実際に、片側ロータとともに使用されてもよい。
【0041】
ロータは、図1の断面A-Aを示す図2において、別の角度から示されている。図2は、第1の長手方向ロータバー140および加速度計パッケージ210を示し、パッケージ内面2111が基板平面に隣接している。長手方向ロータバー140は、RRAの両側に延伸する。言い換えると、ロータ140は、RRAから第1の方向および第2の方向の両方に延伸する。ロータはRRAを中心として回転する平面構造を形成しているため、当該2つの方向は正反対である。図140において、第1の長手方向ロータバーは基板平面内にある。第1の方向は正のY方向であり、第2の方向は負のY方向である。加速度計がZ軸の方向の加速度を経験すると、ロータはX-Y平面外に、RRAを中心として回転する。ねじりばね191および193の剛性は、用途固有の所望の加速によって適切な動きに達するように構成される。
【0042】
パッケージ210は、第1のセンサを越えて左右に延伸する。パッケージはすべての側において加速度計を囲んでいるが、センサから離れているパッケージの部分は、以下でより詳細に説明されているように、減衰ばねの潜在的なアンカー点として以外は、本開示には関係なく、図1に示されていない。パッケージとセンサとの間の空間は、典型的には不活性ガスで満たされた密閉空間である。
【0043】
図3は、ステータ302に対するX-Y平面におけるロータの運動中の、すなわち寄生モードにおけるロータ301の位置を示す。ロータ302の動きは、ロータ電極とステータ電極との間の距離の変化を引き起こし、付加的であり、Z方向のパッケージの加速に直接関係しない静電容量の変化をもたらし、加速度測定を不正確にする。例えば、X-Y平面におけるロータ301の動きは、X-Y方向におけるパッケージの加速によって引き起こされる可能性があり、パッケージがX-Y平面において固有周波数で振動するときに特に顕著である。当該動きは、上述の静電容量変化の寄生面内モードに起因して、デバイスの計算される加速度に重大な誤差をもたらす。
【0044】
同様に、プレート電極加速度計(図には示されていない)の場合、X-Y平面内のロータ電極の動きにより、ロータ電極とステータ電極との間の重なり合いの面積が減少し、パッケージのZ方向の加速とは無関係であるように、システムの静電容量が変化する。
【0045】
本発明の実施形態は、ロータ301を基板に接続する追加の減衰ばねを提供することにより、X-Y平面におけるロータ301の動きを低減する。減衰ばねは、図1および図2に示されるようなコーム電極加速度計に関して示され、説明されているが、同じ減衰ばねをプレート電極加速度計とともに使用することもできることが理解されよう。ただし、MEMS加速度計に追加のばねを含めることは簡単ではなく、ロータをハウジングに接続する減衰ばねを追加することによって、デバイスの通常モードも大幅に強固になる、すなわち、ロータのZ方向の動きが減少し、デバイスの感度が大幅に減少する。
【0046】
したがって、減衰ばねをデバイスに組み込むために、減衰ばねは、X-Y平面内のロータの動きを低減するのに十分な剛性をX-Y平面内で提供する必要があると同時に、大きな障害なくZ方向のロータの動きを許容するために、Z方向における剛性を大幅に低くすることを可能にする必要もある。この問題は、ロータおよび/またはステータなどのMEMS加速度計の他の構成要素よりもZ方向の高さが低い凹型減衰ばねを使用することによって克服することができる。ビームばねの場合、面外モードすなわちZ方向のばね定数がwh/lに比例することがわかり、ここで、wはX-Y平面のY方向におけるビームの幅であり、hはビームのZ方向の高さであり、lはX-Y平面のX方向におけるビームの長さである。したがって、Z方向におけるビームの高さを最小化することにより、Z方向におけるばね定数、すなわちばねの剛性は、幾何学的に減少する。対照的に、X方向におけるばねの剛性は、高さhに正比例する。したがって、X方向におけるばねの剛性は、Z方向における剛性よりも高さhの変化による影響が大幅に少ない。
【0047】
MEMS加速度計などのMEMSデバイスを製造する典型的なプロセスでは、基板がエッチングされて、ロータ、ステータおよびばねなどの微小機械構造が生成される。エッチングの前に、基板は支持ウェハ上に堆積され、基板平面に平行に、すなわちZ方向に垂直に並ぶ上面を有する。上面は、支持ウェハ上方のZ方向における基板の高さを規定する。エッチング中、基板上面の一部は、エッチャントに耐性のあるマスク材料によってエッチャントから保護される。エッチング後にマスクが除去されると、マスクされていた基板上面の部分は、エッチング前と同じ高さで基板上に残る。基板上方の高さが基板のマスクされていた部分よりも小さくなるようにエッチングされた基板の他の部分は、陥凹していると言える。微小機械構造の陥凹深さは、基板の上面から微小機械構造の上面までの垂直距離として規定される。
【0048】
高さが異なる要素を備える当該マルチレベル微小機械構造を製造する方法は、欧州特許出願公開第3409639号明細書に記載されており、当該特許文献の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0049】
図4は、本発明の加速度計の第1の実施形態の概略図を示す。上述のデバイスと共通して、ロータ401およびステータ402が示され、ロータ401は、ばね403を介してロータサスペンダ404に接続される。図4の加速度計は、基板上の減衰ばねアンカー点406にロータ401に接続する減衰ばね405をさらに含む。減衰ばね405をロータに追加することにより、振動によって引き起こされるX-Y平面における運動の振幅が減少する。
【0050】
図4に示すように、減衰ばね405は、ロータ電極の近くでロータ401に接続されている、すなわち、減衰ばね405は、回転軸RRAに対して遠位の長手方向ロータバーの端部において長手方向ロータバー14、15のいずれかに、または、交差方向ロータバー13の対向する両端に接続されている。減衰ばね405は、ロータから外向きに、すなわち加速度計パッケージの外部に向かって延伸し、ばねの長手方向軸がロータ回転軸に平行になるように基板に接続される。ロータ401はばね403を介してロータサスペンダ404に固定されているため、X-Y平面におけるロータ401の最大の動きは、ロータ回転軸RRAに対して遠位にあるロータの端部、すなわちロータ電極が配置されているロータ401の端部において発生する。フックの法則によれば、ばねを距離xだけ伸展するのに必要な力は、距離xに対して直線的に増加する。したがって、X-Y平面401におけるロータの最大変位が生じるロータ401の遠位端に位置する減衰ばね405を介して基板にロータ401を接続することにより、減衰ばね405の復元力が最大化され、したがって、ロータ401の運動に対するばねの減衰効果が最大化される。
【0051】
図5は、図4のB-B線に沿った断面を示している。図2に示される加速度計パッケージ210およびパッケージ内面211は、図5にも見られ、減衰ばね405が断面で示されている。図5からわかるように、減衰ばね405の高さhは、ロータ401の上面から陥凹している。
【0052】
しかしながら、ロータ401の遠位端は、Z方向におけるロータ401の最大変位が発生する場所でもあることが諒解されよう。したがって、ロータ401の遠位端に配置された減衰ばね405も、通常モード、すなわちZ方向におけるロータの動きに最大の影響を与える。したがって、図6に示す本発明の第2の実施形態では、減衰ばね605は、図4に示す実施形態よりもロータ回転軸RRAに近い位置においてロータ601に接合する。結果として、ロータ601の回転は、減衰ばね605のZ方向における変位をより小さくし、結果として、減衰ばね605の復元力がより小さくなり、したがって、小さい加速度に対する減衰ばねの感度が改善される。
【0053】
さらに、ロータ601から加速度計パッケージの外部に外向きに延伸する代わりに、図6の実施形態では、減衰ばね605がロータ601から加速度計パッケージの内部に内向きに延伸し、ロータ601を共通のアンカー点606に接続する。ステータ602およびロータサスペンダ604もまた、共通のアンカー点606に固定される。図4に示す実施形態のように、図6の実施形態では、ねじりばね603がロータ601をロータサスペンダ604に接合する。ロータサスペンダ604およびステータ602のための共通のアンカー点の使用は、例えば、開示が参照により本出願に組み込まれる欧州特許第3014284号明細書に記載されているように、当該技術分野において知られている。ロータサスペンダを基板に固定するためのアンカー点、およびステータを基板に固定するためのアンカー点は、本質的に同一の場所に配置されるか、または本質的に互いに隣接している。そのような固定は、機械的応力を引き起こして、ロータ電極およびステータ電極を同じように動かす。ロータ電極とステータ電極との位置関係が変わらない場合、センサ出力も変化しない。したがって、ロータ電極およびステータ電極の共通の運動による誤差を最小限に抑えることができる。ステータアンカー点およびロータアンカー点が基板に固定される領域が、「共通のアンカー点」として参照される。
【0054】
減衰ばね605を介してロータ601を共通のアンカー点606に接続することにより、例えば、加速度計パッケージの固有周波数における振動に起因する基板の変形によって、(正しい位置にある)ロータ601と減衰ばね605が基板に固定される点との間の相対距離が変化することはない。対照的に、図4の実施形態では、基板の変形により、減衰ばね405のアンカー点がロータ401の正しい位置に対して動き、結果、X-Y平面内のロータの運動が排除されるのではなく、引き起こされる。共通のアンカー点606への接続の代わりに、ロータ601は、減衰ばね605を介して、共通のアンカー点606に隣接して配置される追加のアンカー点に接続されてもよい。
【0055】
さらに、減衰ばね605は、ロータ601から共通のアンカー点606まで内向きに延伸しているため、減衰ばね605の長さは、図4の実施形態における外向きに延伸する減衰ばね405の場合のように、加速度計パッケージの全体のサイズを増大させることなく最大化される。上記で言及したように、Z方向の減衰ばねのばね定数はwh/lに比例し、ここで、wはX-Y平面におけるビームの幅であり、hはビームのZ方向の高さであり、lはX-Y平面におけるビームの長さである。したがって、X-Y平面における減衰ばね605の長さを増加させることにより、図6の実施形態は、Z方向における減衰ばね605のばね定数をさらに減少させ、結果、低加速度に対するデバイスの感度が増加する。
【0056】
図7は、X方向のロータの運動を低減する図4および図5のばねとは対照的に、Y方向のロータ701の運動を低減するために減衰ばね705が提供される本発明のさらなる実施形態を示す。図7の減衰ばね705は、ロータ701上の取り付け位置および減衰ばねの向きを除いて、図4のばね405に関して説明したのと同じ方法で構成される。図7のばね705は、XおよびY方向の両方におけるロータの動きを低減するために、図4または図5の減衰ばねとともに使用されてもよい。図7に示されるように、減衰ばね705は、アンカー点706に接続され、交差方向ロータバーから外方に、加速度計パッケージの外部に向かってY方向に延伸する。
【0057】
Y方向のロータの動きを低減するための代替の実施形態が図8に示されている。ロータ801は、減衰ばね805を介してロータサスペンダ804にロータサスペンダ804に接続されている。ロータサスペンダ804をロータ801に接続してロータ回転軸を中心としたロータの回転を可能にするねじりばね803とは対照的に、減衰ばね805は交差方向ロータバー(図1の130)に接続され、大幅に長くなっており、ロータをZ方向においてX-Y平面外に動かすことを可能にする。さらに、減衰ばね805をロータサスペンダ804に接続することにより、減衰ばねは、ロータサスペンダ804を介して共通のアンカー点806に接続される。したがって、図6の実施形態にあるように、例えば、加速度計パッケージの固有周波数における振動に起因する基板の変形によって、(正しい位置にある)ロータ801と減衰ばね805が基板に固定される点との間の相対距離が変化することはない。ここでも、図7の減衰ばね805は、XおよびY方向の両方におけるロータの動きを最小化するために、図4の減衰ばね405または図6の減衰ばね605と組み合わせて使用されてもよいことが諒解されよう。
【0058】
図4図6に示されている減衰ばねはビームとして示されているが、減衰ばねには他の形状が使用されてもよい。例えば、ばねの有効長を増加させる二股部分または蛇行部分を含む減衰ばねが使用されてもよく、結果、X方向またはY方向のばね定数への影響を少なくしながら、Z方向のばね定数が大幅に低減する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8