(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】回路部材の接合構造、回路部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20220524BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H05K1/14 H
H05K1/14 C
H05K3/28 B
(21)【出願番号】P 2020525737
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024036
(87)【国際公開番号】W WO2019244869
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018116219
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018162259
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸成 大祐
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034224(JP,A)
【文献】特開2017-175018(JP,A)
【文献】特開2003-249603(JP,A)
【文献】特開平11-055066(JP,A)
【文献】特開2010-045330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1実装用電極が形成された第1主面を有する第1回路部材と、
第2実装用電極が形成された第2主面を有する第2回路部材と、
前記第1実装用電極と前記第2実装用電極とを接合する導電性接合材と、
前記第1回路部材の端部と前記第2回路部材の端部とを接合する絶縁性接合材と、
を備え、
前記第1回路部材は、
前記第1主面に、前記第1実装用電極から離間した第1凹部を備え、
前記絶縁性接合材の少なくとも一部は、前記第1凹部に収容され、
前記第1回路部材と前記第2回路部材とは基板状であり、可撓性を有する、
回路部材の接合構造。
【請求項2】
第1実装用電極が形成された第1主面を有する第1回路部材と、
第2実装用電極が形成された第2主面を有する第2回路部材と、
前記第1実装用電極と前記第2実装用電極とを接合する導電性接合材と、
前記第1回路部材の端部と前記第2回路部材の端部とを接合する絶縁性接合材と、
を備え、
前記第1回路部材は、
前記第1主面に、前記第1実装用電極から離間した第1凹部を備え、
前記絶縁性接合材の少なくとも一部は、前記第1凹部に収容され、
前記第1回路部
材は、平面視において、
前記第2回路部材と重ならない領域を有
し、
前記第2回路部材は、平面視において、前記第1回路部材と重ならない領域を有する、
回路部材の接合構造。
【請求項3】
前記絶縁性接合材の少なくとも一部は、前記導電性接合材に接触していない、
請求項1又は請求項2に記載の回路部材の接合構造。
【請求項4】
前記絶縁性接合材は、前記導電性接合材に接触していない、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項5】
前記第1主面には、前記第1実装用電極の少なくとも一部を露出する第1開口を有する第1保護層を備え、
前記第1凹部の深さは、前記第1開口の深さ以上である、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項6】
前記第1凹部の底面の面積は、前記第1開口の底面の面積よりも大きい、
請求項5のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項7】
前記第1実装用電極と前記第1開口とは、複数あり、
前記第1開口と前記第1凹部との距離は、前記複数の第1開口の各間隔における最も短い間隔もよりも長い、
請求項5または請求項6に記載の回路部材の接合構造。
【請求項8】
前記第1開口の面積は、前記第1実装用電極の面積よりも大きく、
第1開口内に前記第1実装用電極が配置されている、
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項9】
前記第1回路部材は、曲げ部を有し、前記第1凹部は前記第1実装用電極よりも前記曲げ部近くに配置されている、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項10】
前記第1凹部に繋がり、平面視において、少なくとも一部が前記第2回路部材に重ならない第1流入口を備える、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項11】
前記第1凹部は、複数であり、
前記複数の第1凹部は、前記第1実装用電極を挟んで配置されている、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項12】
前記複数の第1凹部が並ぶ方向は、前記第1回路部材と前記第2回路部材との接合に対して剥離の応力が加わる方向に応じて決定されている、
請求項10に記載の回路部材の接合構造。
【請求項13】
前記複数の第1凹部の内の1つに繋がり、平面視において、少なくとも一部が前記第2回路部材に重ならない第1流入口を備え、
前記第1実装用電極は複数あり、
前記第1流入口が繋がる第1凹部と、前記第1流入口が繋がらない第1凹部とは、複数の前記第1実装用電極の間に配置された補助用凹部によって繋がっている、
請求項11または請求項12に記載の回路部材の接合構造。
【請求項14】
前記第1流入口の幅は、前記第1凹部の幅よりも小さい、
請求項10または請求項13に記載の回路部材の接合構造。
【請求項15】
前記第1実装用電極は、複数あり、
複数の前記第1実装用電極が配列される実装領域には、前記第1凹部が形成されていない、
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項16】
前記導電性接合材の融点は、前記絶縁性接合材の硬化温度よりも高い、
請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項17】
前記導電性接合材の主材料は、はんだであり、
前記絶縁性接合材の主材料は、エポキシ樹脂である、
請求項16に記載の回路部材の接合構造。
【請求項18】
前記絶縁性接合材のヤング率は、前記第1回路部材のヤング率よりも高い、
請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項19】
前記第1凹部は、前記第1回路部材の側面に達している、
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項20】
前記絶縁性接合材は、前記第1回路部材の側面および前記第2回路部材の側面まで広がっている、
請求項19に記載の回路部材の接合構造。
【請求項21】
前記第2回路部材は、
前記第2主面に、前記第2実装用電極から離間した凹部を備え、
前記絶縁性接合材の少なくとも一部は、前記第2主面の第2凹部に収容されている、
請求項1乃至請求項20のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項22】
前記第1主面の凹部と前記第2主面の凹部とは、少なくとも一部が対向している、
請求項21に記載の回路部材の接合構造。
【請求項23】
前記第2凹部に繋がり、平面視において、少なくとも一部が前記第1回路部材に重ならない第2流入口を備える、
請求項21または請求項22に記載の回路部材の接合構造。
【請求項24】
前記第2流入口の幅は、前記第2凹部の幅よりも小さい、
請求項23に記載の回路部材の接合構造。
【請求項25】
前記第2凹部は、前記第2回路部材の側面に達している、
請求項21乃至請求項24のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項26】
前記第1回路部材は、前記第1主面が物理的に湾曲する部分を有する、
請求項1乃至請求項25のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項27】
前記第2回路部材は、前記第2主面が物理的に湾曲する部分を有する、
請求項1乃至請求項26のいずれかに記載の回路部材の接合構造。
【請求項28】
第1回路部材の第1主面に形成された第1実装用電極の上に、導電性接合材を形成する工程と、
前記第1主面において、前記第1実装用電極から離間した位置に配置された第1凹部に、絶縁性接合材を形成する工程と、
第2主面に第2実装用電極および第2凹部が形成された第2回路部材と前記第1回路部材とを、前記第1主面と前記第2主面とが対向するように配置する工程と、
前記第1回路部材と前記第2回路部材が配置された状態で、前記第1回路部材と前記第2回路部材とを挟みこみ、加熱、加圧を行う工程と、
を有し、
前記第1回路部材と前記第2回路部材とは基板状であり、可撓性を有する、回路部材の接合方法。
【請求項29】
第1回路部材の第1主面に形成された第1実装用電極の上に、導電性接合材を形成する工程と、
前記第1主面において、前記第1実装用電極から離間した位置に配置された第1凹部に、絶縁性接合材を形成する工程と、
第2主面に第2実装用電極および第2凹部が形成された第2回路部材と前記第1回路部材とを、前記第1主面と前記第2主面とが対向するように配置する工程と、
前記第1回路部材と前記第2回路部材が配置された状態で、前記第1回路部材と前記第2回路部材とを挟みこみ、加熱、加圧を行う工程と、
を有し、
前記第1回路部
材は、平面視において、
前記第2回路部材と重ならない領域を有
し、
前記第2回路部材は、平面視において、前記第1回路部材と重ならない領域を有する、回路部材の接合方法。
【請求項30】
第1回路部材の第1主面に形成された第1実装用電極の上に、導電性接合材を形成する工程と、
第2主面に第2実装用電極および第2凹部が形成された第2回路部材と前記第1回路部材とを、前記第1主面と前記第2主面とが対向するように配置する工程と、
前記第1回路部材と前記第2回路部材が配置された状態で、前記第1回路部材と前記第2回路部材とを挟みこみ、第1の加熱、加圧を行う工程と、
前記第1主面において、前記第1実装用電極から離間した位置に配置された第1凹部と、前記第2凹部とに、絶縁性接合材を形成する工程と、
前記絶縁性接合材の形成後に、第2の加熱、加圧を行う工程と、
を有し、
前記第1回路部材と前記第2回路部材とは基板状であり、可撓性を有する、回路部材の接合方法。
【請求項31】
第1回路部材の第1主面に形成された第1実装用電極の上に、導電性接合材を形成する工程と、
第2主面に第2実装用電極および第2凹部が形成された第2回路部材と前記第1回路部材とを、前記第1主面と前記第2主面とが対向するように配置する工程と、
前記第1回路部材と前記第2回路部材が配置された状態で、前記第1回路部材と前記第2回路部材とを挟みこみ、第1の加熱、加圧を行う工程と、
前記第1主面において、前記第1実装用電極から離間した位置に配置された第1凹部と、前記第2凹部とに、絶縁性接合材を形成する工程と、
前記絶縁性接合材の形成後に、第2の加熱、加圧を行う工程と、
を有し、
前記第1回路部
材は、平面視において、
前記第2回路部材と重ならない領域を有
し、
前記第2回路部材は、平面視において、前記第1回路部材と重ならない領域を有する、回路部材の接合方法。
【請求項32】
前記第2凹部に繋がり、前記第1回路部材に重ならない部分を有する流入口から、前記絶縁性接合材を注入する、
請求項30又は請求項31に記載の回路部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回路部材を電気的に接続しながら物理的に接合する接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、素子と導体パターンとを導電性バンプを用いて接合する構成が記載されている。特許文献1の構成では、導電性バンプによる接合面積が、素子と導体パターンとの対向面積と比較して極めて小さい。このため、素子と導体パターンの接合強度を高めるため、素子と導体パターンとの間に、絶縁性のアンダーフィル樹脂が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における絶縁性のアンダーフィル樹脂および導電性バンプを用いる接合態様と同様に、絶縁性接合材と導電性接合材との両方を、接合すべき複数の回路部材間に配置する場合、物理的な接合および電気的な接続の信頼性が低いことがある。特に、接合部に応力が加わる場合に、信頼性が低くなり易い。
【0005】
したがって、本発明の目的は、複数の回路部材を、電気的に確実に接続しながら、物理的な接合の信頼性を確保できる回路部材の接合構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回路部材の接合構造は、第1実装用電極が形成された第1主面を有する第1回路部材と、第2実装用電極が形成された第2主面を有する第2回路部材と、第1実装用電極と第2実装用電極とを接合する導電性接合材と、第1回路部材の端部と第2回路部材の端部とを接合する絶縁性接合材と、を備える。第1回路部材は、第1主面に、第1実装用電極から離間した第1凹部を備え、絶縁性接合材の少なくとも一部は、第1凹部に収容されている。
【0007】
この構成では、絶縁性接合材が、第1主面と第2主面との間の物理的な接合を実現しながら、第1主面と第2主面の間において、不要に広がりすぎることが抑制される。これにより、第1回路部材と第2回路部材との接合の信頼を確保しながら、絶縁性接合材が導電性接合材の接合に悪影響を与えることが抑制される。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数の回路部材を電気的な接続の信頼性、および、複数の回路部材の物理的な接合の信頼性を高く確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る回路部材10,20の接合構造を示す側面断面図である。
【
図2】
図2(A)は、回路部材10における接合部分の構成を示す平面図であり、
図2(B)は、その側面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る回路部材10,20の接合構造を用いた信号伝送部材の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、信号伝送部材1の配置の一態様を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る回路部材10,20の第1の接合方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)は、第1の接合方法における所定の工程での状態を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る回路部材10,20の第2の接合方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)、
図8(D)、
図8(E)は、第2の接合方法における所定の工程での状態を示す図である。
【
図9】
図9は、回路部材10Aにおける接合部分の構成を示す平面図である。
【
図10】
図10(A)、
図10(B)は、回路部材10B,10B1における接合部分の構成を示す平面図である。
【
図11】
図11(A)は、回路部材10Cにおける接合部分の構成を示す平面図であり、
図11(B)は、その側面断面図である。
【
図12】
図12は、派生例である回路部材10,20の接合構造を示す側面断面図である。
【
図13】
図13は、回路部材10D,20Dにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【
図14】
図14は、回路部材10Dにおける接合部分の構成を示す平面図である。
【
図16】
図16は、回路部材10F,20Fにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【
図17】
図17は、回路部材10G,20Gにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【
図18】
図18は、回路部材10H,20Hにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【
図19】
図19は、回路部材10Iにおける接合部分の構成を示す平面図である。
【
図20】
図20(A)は、回路部材10Jにおける接合部分の構成を示す平面図であり、
図20(B)は、絶縁性接合材40の広がり状態を示す平面図である。
【
図21】
図21(A)は、回路部材10Kにおける接合部分の構成を示す平面図であり、
図21(B)は、その側面断面図である。
【
図22】
図22は、回路部材10Lの接合部側の一部を示す平面分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る回路部材の接合構造および回路部材の接合方法について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る回路部材10,20の接合構造を示す側面断面図である。
図2(A)は、回路部材10における接合部分の構成を示す平面図であり、
図2(B)は、その側面断面図である。
【0011】
図1に示すように、回路部材の接合構造は、回路部材10、および、回路部材20を備える。また、回路部材10,20の接合構造は、導電性接合材30、および、絶縁性接合材40を備える。回路部材10が本発明の「第1回路部材」に対応し、回路部材20が本発明の「第2回路部材」に対応する。
【0012】
回路部材10および回路部材20は、例えば、回路基板である。回路部材10と回路部材20とが接合されることによって、1個の別の回路部材を実現することが可能になる。例えば、それぞれが長手方向を有する回路部材10と回路部材20とを繋げることによって、回路部材10および回路部材20のそれぞれ1個ずつよりも長い回路部材を実現することが可能になる。
【0013】
(回路基板の接合部分の構造)
回路部材10および回路部材20は、互いに接合される部分の構造は略同じであるので、以下では、
図2(A)、
図2(B)を用いて、回路部材10の構成を説明する。
【0014】
回路部材10は、平板状の基板11を備える。基板11は、
図1、
図2(A)、
図2(B)に示すように、一方向(X方向)に長く、これに直交し、厚み方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)に短い形状である。基板11は、X方向およびY方向に平行で、互いに対向する主面111と主面112とを有する。基板11は、X方向における一方の端部に端面10E1を有する。また、基板11は、端面10E1と反対側の他方の端部に端面10E2を有する(
図3参照)。基板11は、Y方向における一方の端部に端面10E3を有し、Y方向における他方の端部に端面10E4を有する。
【0015】
基板11は、それぞれが絶縁性材料を主体する複数の樹脂層からなる。複数の樹脂層は、可撓性を有する。絶縁性材料としては、例えば、液晶ポリマが用いられる。複数の樹脂層には、例えば、
図1、
図2(B)に示すような信号用電極S11、信号用電極S12やグランド用電極等の所定の電極パターンが形成されている。複数の樹脂層は、積層されて、加熱圧着されている。複数の樹脂層が可撓性を有し、電極パターンが薄く形成されていることにより、基板11は、可撓性を有する。
【0016】
基板11の主面111には、複数の実装用電極13が形成されている。
図1、
図2(B)に示すように、複数の実装用電極13は、基板11の内部に形成された信号用電極S11、および、信号用電極S12に、層間接続電極V11、および、層間接続電極V12のそれぞれを用いて接続されている。
【0017】
複数の実装用電極13は、平面視した形状が矩形である。複数の実装用電極13は、平面視において、所定の配置パターンで配置されている。例えば、
図2(A)に示すように、複数の実装用電極13は、X方向とY方向の直交二軸とする二次元の配列で、それぞれに、所定距離で離間して配置されている。これら複数の実装用電極13における各開口部(後述の保護層12に設けられた開口部)の外縁を結ぶ枠状の領域(
図2(A)における点線で囲まれる領域)が実装領域Re13となる。実装領域Re13は、端面10E1から離れており、端面10E3および端面10E4からも離れている。
【0018】
基板11の主面111には、保護層12が形成されている。保護層12は、耐熱性、耐久性、および、絶縁性を有し、所定の厚みを有する。保護層12が当接する回路部材10の主面111に当接する面に対して反対側の表面113が、本発明の「第1主面」に対応する。同様に、基板21において、保護層22が当接する回路部材20の主面211に当接する面に対して反対側の表面213が、本発明の「第2主面」に対応する。
【0019】
保護層12には、複数の開口部が設けられている。保護層12の開口部とは、保護層12が部分的に存在しない領域である。複数の開口部の一部は、複数の実装用電極13の中央部を外部に露出し、複数の実装用電極13の端部を覆うように、形成されている。
【0020】
また、複数の開口部における複数の実装用電極13に重ならない開口部は、基板11の主面111を外部に露出するように、形成されている。この主面111を外部に露出する開口部によって、回路部材10は、保護層12の表面113から凹む凹部121,122を有する。これら、凹部121,122が、本発明の「第1凹部」に対応する。この際、回路部材10の延びる方向において、端面10E1と凹部121との距離は、端面10E2と凹部122との距離よりも短い。同様に、基板21が有する、凹部221,222は本発明の「第2凹部」に相当する。
【0021】
凹部121は、実装領域Re13と端面10E1との間に形成されている。凹部121と複数の実装用電極13とは重なっていない。凹部121は、平面視して矩形であり、端面10E1に略平行な壁面121E1および壁面121E2を有し、端面10E3および端面10E4に略平行な壁面121E3および壁面121E4を有する。壁面121E1は、凹部121における端面10E1側の壁面であり、壁面121E2は、凹部121における複数の実装用電極13側の壁面である。壁面121E3は、凹部121における端面10E3側の壁面であり、壁面121E4は、凹部121における端面10E4側の壁面である。
【0022】
凹部121と実装領域Re13との距離L1は、複数の実装用電極13の間隔における最も短い間隔よりも長い。なお、距離L1は、より具体的には、複数の実装用電極13における凹部121に最も近い実装用電極13の開口部の凹部121側の端面と、凹部121の壁面121E2との距離である。
【0023】
また、Y方向において、凹部121の壁面121E3は、実装領域Re13の端面10E3側の端部よりも、端面10E3に近い。同様に、Y方向において、凹部121の壁面121E4は、実装領域Re13の端面10E4側の端部よりも、端面10E4に近い。
【0024】
凹部121の面積は、実装用電極13の開口部の面積よりも大きい。凹部121の深さD121は、実装用電極13の表面側の開口部の深さD13よりも大きい。
【0025】
凹部122は、実装領域Re13を基準として、端面10E1と反対側に形成されている。凹部122と複数の実装用電極13とは重なっていない。凹部122は、平面視して矩形であり、端面10E1に略平行な壁面122E1、壁面122E2、および端面10E3、端面10E4に略平行な壁面122E3、壁面122E4を有する。壁面122E1は、凹部122における端面10E1側(複数の実装用電極13側)の壁面であり、壁面122E2は、凹部122における壁面122E1と対向する壁面である。壁面122E3は、凹部122における端面10E3側の壁面であり、壁面122E4は、凹部122における端面10E4側の壁面である。
【0026】
凹部122と実装領域Re13との距離L2は、複数の実装用電極13の間隔における最も短い間隔よりも長い。なお、距離L2は、より具体的には、複数の実装用電極13における凹部122に最も近い実装用電極13の開口部の凹部122側の端面と、凹部122の壁面122E1との距離である。
【0027】
また、Y方向において、凹部122の壁面122E3は、実装領域Re13の端面10E3側の端部よりも、端面10E3に近い。同様に、Y方向において、凹部122の壁面122E4は、実装領域Re13の端面10E4側の端部よりも、端面10E4に近い。
【0028】
凹部122の面積は、実装用電極13の開口部の面積よりも大きい。凹部122の深さD122は、実装用電極13の表面側の開口部の深さD13よりも大きい。
【0029】
回路部材20は、基板21、保護層22、複数の実装用電極23、および、凹部221,222を備える。基板21は、回路部材10の基板11と同様の構成からなる。基板21は、X方向における一方の端部に端面20E1を有する。また、基板21は、端面20E1と反対側の他方の端部に端面20E2を有する(
図3参照)。また、基板21は、基板11の主面111に対応する主面211を有し、主面112に対応する主面212を有する。また、基板21は、基板11の表面113に対応する表面213を有する。
【0030】
保護層22は、回路部材10の保護層22と同様の構成からなる。複数の実装用電極23は、回路部材10の複数の実装用電極13と同様の構成からなる。凹部221は、回路部材10の凹部121と同様の構成からなり、凹部222は、回路部材10の凹部122と同様の構成からなる。この際、回路部材20の延びる方向において、端面20E1と凹部221との距離は、端面20E2と凹部222との距離よりも短い。
【0031】
(接合構造)
図1に示すように、回路部材10と回路部材20とは、保護層12の表面113(回路部材10の主面の一部に相当)と保護層22の表面213(回路部材20の主面の一部に相当)とが対向するように配置されている。より具体的には、次の関係になるように、回路部材10と回路部材20とが配置されている。
図1に示すように、回路部材10と回路部材20とは、延びる方向(長手方向)において、部分的に重なっている。すなわち、回路部材10の延びる方向(
図1であればX方向)において、回路部材20の端面20E1が、回路部材10の端面10E1と端面10E2との間に配置されるように、回路部材10と回路部材20とは、部分的に重なっている。保護層12の表面113と保護層22の表面213とが少なくとも部分的に当接するか、表面113と表面213とが近接している。この近接距離は、回路部材10および回路部材20の厚みよりも十分に小さい。
【0032】
回路部材10の複数の実装用電極13と回路部材20の複数の実装用電極23とは、1対1で互いに対向している。回路部材10の凹部121と回路部材20の凹部222とは対向している。回路部材10の凹部122と回路部材20の凹部221とは対向している。
【0033】
導電性接合材30および絶縁性接合材40は、回路部材10と回路部材20との間に、挟まれるように配置されている。
【0034】
より具体的には、導電性接合材30は、実装用電極13と実装用電極23との間に配置され、実装用電極13と実装用電極23の両方に、当接して、接合している。言い換えれば、導電性接合材30は、実装用電極13の表面側の開口部と実装用電極23の表面側の開口部とを充填するように配置されている。導電性接合材30には、代表的には、はんだが用いられる。
【0035】
絶縁性接合材40は、凹部121と凹部222とによって囲まれる空間内、および、凹部122と凹部221とによって囲まれる空間内に配置されている。絶縁性接合材40は、凹部121の底(基板11の主面111の一部)と凹部222の底(回路部材20の主面211の一部)との略全面に当接し、接合している。同様に、絶縁性接合材40は、凹部122の底(基板11の主面111の一部)と凹部221の底(回路部材20の主面211の一部)との略全面に当接し、接合している。
【0036】
より具体的には、絶縁性接合材40は回路部材10の端部と回路部材20の端部とを接合している。また、
図1における端部は、回路部材10の主面111と回路部材20の主面211とが接合されている例を示した。しかしながら、これに限らず、後述するように回路部材10(回路部材20)の主面111(主面211)と、回路部材20(回路部材10)の主面213(主面113)が当接していてもよい。また、回路部材10の主面113と回路部材20の主面213が当接していてもよい。
【0037】
さらに、絶縁性接合材40は、凹部121と凹部222とによって囲まれる空間から所定量はみ出しており、この部分において保護層12の表面113と保護層22の表面213とに当接し、接合している。また、絶縁性接合材40は、凹部122と凹部221とによって囲まれる空間から所定量はみ出しており、この部分において保護層12の表面113と保護層22の表面213とに当接し、接合している。なお、絶縁性接合材40は、導電性接合材30に接触していないことが好ましい。
【0038】
絶縁性接合材40は、絶縁性を有する樹脂材料からなり、例えば、エポキシ樹脂を主材料として、必要に応じてフィラー等が混練されている。絶縁性接合材40は、熱硬化性であることが好ましく、加熱された状態(例えば、導電性接合材30が溶融する温度)において導電性接合材30よりも粘性が高いことが好ましい。
【0039】
なお、凹部121、凹部122、凹部221、および、凹部222の形状は、平面視において矩形に限るものではない。例えば、略矩形、楕円形、長円形等であってもよく、実装領域Re13から遠い側の壁面を中央が膨らむ曲面で形成することも可能である。
【0040】
また、上述の説明では、保護層12を用いて、凹部121、凹部122、凹部221、および、凹部222を形成する態様を示した。しかしながら、基板11の主面111に配置され、基板11と同様の材料からなり、基板11と一体に形成されるカバー層を、保護層12に代用して、凹部121、凹部122、凹部221、および、凹部222を形成してもよい。
【0041】
(接合構造を利用した部材の構成)
上述の構成からなる回路部材10と回路部材20との接合構造を用いることにより、例えば、次に示す信号伝送部材を実現できる。
図3は、本発明の実施形態に係る回路部材の接合構造を用いた信号伝送部材の一例を示す斜視図である。
図4は、信号伝送部材の配置の一態様を示す斜視図である。
【0042】
図3に示すように、信号伝送部材1は、回路部材10と回路部材20とを備える。回路部材10と回路部材20とは、回路部材10の端部と回路部材20の端部で接合し、接合部ReJを有する。回路部材10における接合部ReJは、端面10E1の近傍である。回路部材20における接合部ReJは、端面20E1の近傍である。接合部ReJの構造は、上述の接合構造を採用している。
【0043】
回路部材10における端面10E1と反対側の端面10E2の近傍には、外部接続用のコネクタ81が実装されている。コネクタ81は、上述の信号用電極S11、および、信号用電極S12に接続されている。
【0044】
回路部材20における端面20E1と反対側の端面20E2の近傍には、外部接続用のコネクタ82が実装されている。コネクタ82は、上述の信号用電極S21、および、信号用電極S22に接続されている。
【0045】
回路部材10の延びる方向の途中位置には、屈曲部C10を有する。回路部材20の延びる方向の途中位置には、屈曲部C20を有する。屈曲部C10および屈曲部C20は、外力を加えなくても形状的に屈曲している。
【0046】
このような形状では、信号伝送部材1を一括で形成しようとすると、形状が複雑なため、製造時のマザーシートに対する取れ数が制限されてしまう。しかしながら、信号伝送部材1よりも形状が単純な回路部材10と回路部材20とに分けることで、製造時のマザーシートに対する取れ数を増加させることが可能になる。
【0047】
そして、回路部材10と回路部材20との接合部ReJが、上述の実施形態に示す構造を有することによって、回路部材10と回路部材20との電気的、物理的な接合の信頼性は高くなる。より具体的には、接合部ReJにおける、絶縁性接合材40を導電性接合材30よりも屈曲部C10,C20に近い位置に配置することで、導電性接合材30の接合面に応力が伝わることが抑制される。したがって、信号伝送部材1を一括で形成する構造と略同等の接合信頼性を確保することが可能になる。
【0048】
なお、信号伝送部材1は、単に、信号を伝送するだけではなく、途中に、フィルタ等を形成していてもよい。
【0049】
そして、このような信号伝送部材1は、
図4に示すように、用いられることがある。
図4に示すように、信号伝送部材1のコネクタ81は、回路基板801の主面に実装されたコネクタ811に装着されている。信号伝送部材1のコネクタ82(図示を省略)は、回路基板802の主面に実装されたコネクタ(図示を省略)に装着されている。
【0050】
回路基板801の主面と回路基板802の主面とは直交している。このため、信号伝送部材1では、コネクタ81の実装のために、回路部材10の延びる方向の途中位置に、湾曲部CR1が形成される。また、コネクタ(図示を省略)の実装のために、回路部材20の延びる方向の途中位置に、湾曲部CR2が形成される。湾曲部CR1および湾曲部CR2は、外力によって湾曲する部分である。
【0051】
この場合、回路部材10および回路部材20には、湾曲によって応力が加わる。この応力により、接合部ReJには、回路部材10と回路部材20とを引き剥がす方向の応力が加わる。このため、導電性接合材30と実装用電極13および実装用電極23との接合面を破断、もしくは、導電性接合材30自身を破断するように作用してしまう。しかしながら、上述のように絶縁性接合材40を用いることによって、この破断を抑制できる。したがって、信頼性の高い信号伝送部材1を実現できる。
【0052】
なお、絶縁性接合材40のヤング率を、回路部材10および回路部材20のヤング率よりも高くするとよい。この場合、上述の応力をさらに抑制できる。すなわち、外部からの応力は、絶縁性接合材40によって抑制され、導電性接合材30と実装用電極13および実装用電極23との接合面に、応力が伝わることが抑制される。
【0053】
(接合方法)
次に、上述の接合構成を実現する接合方法について、図を参照して説明する。
【0054】
(第1の接合方法)
図5は、本発明の実施形態に係る回路部材の第1の接合方法を示すフローチャートである。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)は、第1の接合方法における所定の工程での状態を示す図である。
【0055】
まず、回路部材10を用意し、実装用電極13上の開口部に、導電性接合材30であるはんだをプリコートする(S101)。この際、はんだは、回路部材10の主面(ここでは、保護層12の表面113)から外方へ突出する高さでプリコートされている。
【0056】
次に、回路部材10の凹部121および凹部122に、絶縁性接合材40を塗布する(S102)。この際、絶縁性接合材40は、回路部材10の主面から外方へ吐出する高さで塗布されている。この絶縁性接合材40の塗布量は、凹部121と凹部222とを合わせた空間の体積、および、凹部122と凹部221とを合わせた空間の体積よりも多い。さらには、絶縁性接合材40の塗布量は、凹部121と凹部222とを合わせた空間の体積、および、凹部122と凹部221とを合わせた空間の体積よりも多く、この範囲においてできる限り少ないことが好ましい。これにより、
図6(A)に示すように、回路部材10に、導電性接合材30および絶縁性接合材40が配置された状態が実現される。
【0057】
次に、回路部材10に対して、回路部材20を位置合わせして配置する(S103)。この際、
図6(B)に示すように、実装用電極13と実装用電極23とが対向し、凹部121と凹部222とが対向し、凹部122と凹部221とが対向するように、回路部材20は、回路部材10に対して配置される。
【0058】
次に、回路部材10と回路部材20とが位置合わせされた状態で、加熱プレス(加熱、加圧)を行う(S104)。より具体的には、
図6(B)に示すように、回路部材10の主面112に、加熱プレス用の台座基板901を当接させる。また、回路部材20の主面212に、加熱プレス用部材902を当接させる。そして、台座基板901および加熱プレス用部材902の少なくとも一方を加熱し、加熱プレス用部材902を台座基板901側に押し込む。なお、例えば、導電性接合材30として融点が約130℃から約210℃のはんだを用い、絶縁性接合材40として硬化温度が約150℃から約200℃のエポキシ樹脂を用いることができる。加熱プレスの温度は、導電性接合材30の融点および絶縁性接合材40の硬化温度のいずれか高い方の温度に対して、約20℃から約60℃高い温度にするとよい。
【0059】
これにより、回路部材10の主面(ここでは保護層12の表面113)と回路部材20の主面(ここでは保護層22の表面213)とは、略0の距離で近接または当接する。この加圧によって、絶縁性接合材40は、広がる。そして、加熱によって、絶縁性接合材40は硬化する。これにより、回路部材10と回路部材20とが物理的に接合される。
図6(B)において、回路部材10の端部と回路部材20の端部とが接合される例を示した。この際、上述のように、絶縁性接合材40を、凹部122、凹部221による空間の体積、および、凹部121、凹部222による空間の体積よりも多く塗布する。これにより、
図6(C)に示すように、絶縁性接合材40は、凹部122と凹部221との間、凹部121と凹部222との間以外に、保護層12の表面113と保護層22の表面213との間の領域にも広がる。したがって、接合面積が大きくなり、接合強度が向上する。
【0060】
また、加熱によって、導電性接合材30は、溶融して、実装用電極13および実装用電極23に密着する。その後、加熱プレスを解除すると、導電性接合材30は固まり、実装用電極13と実装用電極23とが、物理的および電気的に接合される。
【0061】
このような製造方法では、上述のように、絶縁性接合材40が広がる。上述のように、凹部121、凹部122、凹部221、および、凹部222を備えることによって、絶縁性接合材40の広がる大きさを抑制できる。したがって、絶縁性接合材40が、導電性接合材30による接合を阻害することを抑制できる。特に、
図1に示すように、絶縁性接合材40が導電性接合材30に接触していないことによって、外部応力による絶縁性接合材40と導電性接合材30との界面の破断を抑制できる。
【0062】
なお、上述の加熱プレスは、加圧と加熱が同時でもよく、加圧から加熱の順であってもよく、加熱から加圧の順であってもよい。
【0063】
また、この製造方法を用いる場合、絶縁性接合材40が凹部121、凹部122、凹部221、および、凹部222からはみ出しても、導電性接合材30に接触しないようにすることで、絶縁性接合材40と導電性接合材30との界面での破断を発生させず、信頼性の高い接合構造を実現できる。また、絶縁性接合材40を凹部121、凹部122、凹部221、および、凹部222からはみ出させることで、接合強度を向上できる。
【0064】
(第2の接合方法)
図7は、本発明の実施形態に係る回路部材の第2の接合方法を示すフローチャートである。
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)、
図8(D)、
図8(E)は、第2の接合方法における所定の工程での状態を示す図である。
【0065】
まず、回路部材10を用意し、
図8(A)に示すように、実装用電極13上の開口部に、導電性接合材30であるはんだをプリコートする(S201)。この際、はんだは、回路部材10の主面(ここでは保護層12の表面113)から外方へ突出する高さでプリコートされている。
【0066】
次に、回路部材10に対して、回路部材20を位置合わせして配置する(S202)。この際、
図8(B)に示すように、実装用電極13と実装用電極23とが対向し、凹部121と凹部222とが対向し、凹部122と凹部221とが対向するように、回路部材20は、回路部材10に対して配置される。
【0067】
次に、回路部材10と回路部材20とが位置合わせされた状態で、導電性接合材30用の加熱を行う(S203)。導電性接合材30用の加熱は、例えば、リフロー、オーブン、ホットバーによる加熱である。これにより、実装用電極13と実装用電極23とは、導電性接合材30を介して、物理的および電気的に接合される。なお、導電性接合材30として融点が約130℃から約210℃のはんだを用いた場合には、加熱の最高温度は、約240℃にするとよい。
【0068】
次に、
図8(C)に示すように、回路部材10と回路部材20との隙間、および、凹部121と凹部222との間、および、凹部122と凹部221との間に、端面10E1側および端面20E1側から、絶縁性接合材40を注入する(S204)。
【0069】
次に、絶縁性接合材40用の加熱プレス(加熱、加圧)を行う(S205)。より具体的には、
図8(D)に示すように、回路部材10の主面112に、加熱プレス用の台座基板901を当接させる。また、回路部材20の主面212に、加熱プレス用部材902を当接させる。この状態で、台座基板901および加熱プレス用部材902の少なくとも一方を加熱し、加熱プレス用部材902を台座基板901側に押し込む。なお、絶縁性接合材40用の加熱温度は、約140℃とし、約15分間加熱するとよい。
【0070】
これにより、回路部材10の主面(ここでは保護層12の表面113)と回路部材20の主面(ここでは保護層22の表面213)とは、略0の距離で近接または当接する。そして、加熱によって、絶縁性接合材40は硬化する。これにより、回路部材10と回路部材20とが物理的に接合される。
【0071】
この際、上述のように、絶縁性接合材40を、凹部122、凹部221による空間の体積、および、凹部121、凹部222による空間の体積よりも多く、端面10E1および端面20E1から凹部121、凹部122、凹部221、凹部222に注入する。これにより、
図8(E)に示すように、絶縁性接合材40は、凹部122と凹部221との間、凹部121と凹部222との間以外に、保護層12の表面113と保護層22の表面213との間の領域にも広がる。特に、端面10E1および端面20E1に近い側に大きく広がる。したがって、接合面積が大きくなり、接合強度が向上する。
【0072】
以上のような構成によって、回路部材10と回路部材20との接合構造は、次に示す各種の作用効果を奏する。
【0073】
回路部材10に凹部121、凹部122を備え、回路部材20に凹部221、凹部222を備え、絶縁性接合材40を、これら凹部121、凹部122、凹部221、凹部222に溜めるように配置する。これにより、絶縁性接合材40を多く使用しても、絶縁性接合材40が導電性接合材30と実装用電極23との界面に入り込むことを抑制できる。したがって、絶縁性接合材40による回路部材10と回路部材20との物理的な接合の強度、信頼性を高く維持しながら、導電性接合材30による実装用電極13と実装用電極23との電気的、物理的な接合を確実に実現できる。
【0074】
特に、上述の例では、絶縁性接合材40が導電性接合材30に接触していない。これにより、絶縁性接合材40と導電性接合材30との間に隙間部ができるため、隙間部が応力を吸収し、上述の電気的、物理的な接合を確保しながら、外部応力によって絶縁性接合材40と導電性接合材30との界面が破断することを抑制できる。特に、上述の
図4に示すような外力による湾曲部を有する態様で、接合部に、比較的大きな破断の応力が加わる。しかしながら、絶縁性接合材40が導電性接合材30に接触していないことによって、この捻れの応力による絶縁性接合材40と導電性接合材30との界面の破断は、生じない。したがって、導電性接合材30による実装用電極13と実装用電極23との接合部の破断を抑制でき、さらに信頼性が向上する。
【0075】
上述のように、凹部121の深さD121、および、凹部122の深さD122は、実装用電極13の表面側の開口部の深さD13以上である。また、凹部121および凹部122の面積は、複数の実装用電極13の開口部における最も大きな開口部の面積よりも大きい。
【0076】
また、複数の実装用電極13の開口部における凹部121に最も近い開口部と凹部121との距離は、複数の実装用電極13の開口部の間隔における最も短い間隔と比較して、長い。また、複数の実装用電極13の開口部における凹部122に最も近い開口部と凹部122との距離は、複数の実装用電極13の開口部の間隔における最も短い間隔と比較して、長い。これらの構成によって、絶縁性接合材40が、実装用電極13の表面に流れることを抑制できる。
【0077】
同様に、凹部221の深さ、および、凹部222の深さは、実装用電極23の表面側の開口部の深さ以上である。また、凹部221および凹部222の面積は、複数の実装用電極23の開口部における最も大きな開口部の面積よりも大きい。また、複数の実装用電極23の開口部における凹部221に最も近い開口部と凹部221との距離は、複数の実装用電極23の開口部の間隔における最も長い間隔と比較して、長い。また、複数の実装用電極23の開口部における凹部222に最も近い開口部と凹部222との距離は、複数の実装用電極23の開口部の間隔における最も長い間隔と比較して、長い。
【0078】
このような構成によって、絶縁性接合材40が、実装用電極23の表面に流れることを抑制できる。
【0079】
また、凹部121と凹部222とが対向することによって、凹部121と凹部222との間に配置される絶縁性接合材40の厚みを厚くできる。これにより、回路部材10と回路部材20との接合強度を向上できる。同様に、凹部122と凹部221とが対向することによって、凹部122と凹部221との間に配置される絶縁性接合材40の厚みを厚くできる。これにより、回路部材10と回路部材20との接合強度を向上できる。なお、凹部121と凹部222とは、全面で対向することが好ましいが、少なくとも一部が対向していればよい。同様に、凹部121と凹部222とは、全面で対向することが好ましいが、少なくとも一部が対向していればよい。
【0080】
また、
図1、
図2(A)、
図2(B)に示すように、X方向において、すなわち、平面視において、凹部121と凹部122とは、実装用電極13を挟むように配置されている。同様に、凹部221と凹部222とは、実装用電極23を挟むように配置されている。これにより、導電性接合材30による回路部材10と回路部材20との接合部分は、絶縁性接合材40による回路部材10と回路部材20との接合部分に挟みこまれる。したがって、回路部材10における端面10E1と反対側の端部と、回路部材20における端面20E1と反対側の端部とを、厚み方向(Z方向)において逆方向に引っぱる応力が生じても、絶縁性接合材40によって、当該応力が導電性接合材30に直接加わることを抑制できる。よって、導電性接合材30による回路部材10と回路部材20との接合部分の破断を抑制でき、信頼性が向上する。
【0081】
絶縁性接合材40は、熱硬化性であり、導電性接合材30よりも粘性が高い。これにより、加熱プレス時に、絶縁性接合材40が実装用電極13および実装用電極23の表面に流れることを抑制できる。
【0082】
絶縁性接合材40の線膨張係数と導電性接合材30の線膨張係数とが略同じである。これにより、加熱プレスをした際に、線膨張係数の差による基板11と基板21との反り等によって、導電性接合材30を用いた接合部分の破断することを抑制できる。この場合、上述のように、導電性接合材30をはんだとし、絶縁性接合材40を、エポキシ樹脂を主材料とすることで、入手容易な材料で、絶縁性接合材40の線膨張係数と導電性接合材30の線膨張係数とを略同じにできる。
【0083】
また、回路部材10および回路部材20は、可撓性を有する。この場合、回路部材10および回路部材20を、後述のように物理的に曲げて使用することが考えられる。しかしながら、上述の構成を有することによって、曲げによる応力が導電性接合材30による接合部分に直接加わることを抑制できる。したがって、信頼性が高い、回路部材の接合構成を実現できる。
【0084】
また、導電性接合材30の融点が絶縁性接合材の硬化温度よりも高いことによって、導電性接合材30の不要な濡れ広がりを抑制できる。
【0085】
また、回路部材10と回路部材20とは、接合部を除くと、平面視において対向していない。このような場合、セルフアライメントによって実装用電極13と実装用電極23とを対向させる効果が生じ難い。しかしながら、上述の構成を用いることによって、絶縁性接合材40によって、実装用電極13と実装用電極23とが対向して配置され、導電性接合材30による接合を実現し易い。
【0086】
また、凹部121の壁面121E3は、実装領域Re13の端面10E3側の端部よりも、端面10E3に近い。同様に、Y方向において、凹部121の壁面121E4は、実装領域Re13の端面10E4側の端部よりも、端面10E4に近い。凹部122、凹部221、および、凹部222も同様の構造を有する。このような構成によって、上述の
図4に示すような回路部材10と回路部材20とを引き剥がす方向の応力が加わっても、実装領域の幅方向(
図2のY方向)の全域が保護されるので、実装用電極13および実装用電極23に加わる応力を、さらに抑制できる。
【0087】
上述の第1の接合方法を用いることによって、上述の接合構造を、簡素な工程で実現できる。また、上述の第2の接合方法を用いることによって、絶縁性接合材40の接合面積を大きくし易く、接合強度を向上する構造を容易に実現できる。
【0088】
なお、上述の説明では、回路部材10と回路部材20の両方に凹部を形成する態様を示した。しかしながら、回路部材10と回路部材20の少なくとも一方に凹部が形成されており、他方には凹部が形成されていなくてもよい。ただし、回路部材10と回路部材20との両方の凹部を設ける方が、絶縁性接合材40が導電性接合材30に接触することを、さらに抑制できる。また、回路部材10と回路部材20との両方の凹部を設ける方が、接合面積を増加でき、接合強度が向上する。
【0089】
また、上述の説明では、回路部材10において、実装用電極13が配置される実装領域Re13を挟むように、凹部121と凹部122とが形成されている。しかしながら、凹部121または凹部122のいずれか一方が配置されていれば、接合強度の向上を実現できる。これは、回路部材20に対しても同様である。ただし、凹部121および凹部122の両方、凹部221および凹部222の両方を備える方が、X方向の両側からの応力を抑制でき、より良い。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図9は、回路部材における接合部分の構成を示す平面図である。
【0091】
図9に示すように、第2の実施形態に係る回路部材の接合構造における回路部材10Aは、凹部121A、および、凹部122Aを備える点で、第1の実施形態に係る回路部材10と異なる。回路部材10Aの他の構成は、回路部材10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、図示を省略している(外形のみを
図9に図示)が、回路部材20Aも、回路部材10Aと同様の構成である。
【0092】
凹部121Aは、保護層12のY方向の全域に亘っている。同様に、凹部122Aは、保護層12のY方向の全域に亘っている。そして、回路部材10Aと回路部材20Aとの配置位置の関係は、第1の実施形態に係る回路部材10と回路部材20との配置位置の関係と同様である。
【0093】
このような構成であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、この構成では、回路部材10Aの側面と、これに接合される回路部材の側面に、絶縁性接合材40が広がる。したがって、回路部材10Aと、これに接合される回路部材とは、側面においても絶縁性接合材40で接合される。これにより、接合部の接合強度は、さらに向上する。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図10(A)、
図10(B)は、回路部材10B,10B1における接合部分の構成を示す平面図である。
【0095】
図10(A)に示すように、第3の実施形態に係る回路部材の接合構造における回路部材10Bは、凹部120を備える点で、第1の実施形態に係る回路部材10と異なる。回路部材10Bの他の構成は、回路部材10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、図示を省略している(外形のみを
図10(A)に図示)が、回路部材20Bも、回路部材10Bと同様の構成である。
【0096】
凹部120は、実装領域Re13を囲む形状である。すなわち、凹部120は、内端壁面120E5を有し、内端壁面120E5に囲まれる領域に、複数の実装用電極13が配置されている。そして、回路部材10Bと回路部材20Bとの配置位置の関係は、第1の実施形態に係る回路部材10と回路部材20との配置位置の関係と同様である。
【0097】
このような構成とすることによって、回路部材10Bに対して、どのような方向から応力が加わっても、凹部120に配置された絶縁性接合材40によって、実装用電極13による接合部分に応力が直接加わることを抑制できる。これにより、接合信頼性は、さらに向上する。なお、
図10(A)に示すように、実装領域Re13に凹部を備えないことによって、導電性接合材30と絶縁性接合材40との接触を抑制できる。これにより、上述の導電性接合材30と絶縁性接合材40との界面の破断による信頼性の低下が抑制される。
【0098】
図10(B)に示すように、第3の実施形態に係る回路部材の接合構造における回路部材10B1は、凹部120Bを備える点で、
図10(A)の回路部材10Bと異なる。回路部材10B1の他の構成は、回路部材10Bと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、図示を省略している(外形のみを
図10(B)に図示)が、回路部材20B1も、回路部材10B1と同様の構成である。
【0099】
凹部120Bは、凹部120に対して、さらに補助用凹部1200を有する。補助用凹部1200は、端面10E1に平行に延びる形状であり、複数の実装用電極13の間を通っている。そして、回路部材10B1と回路部材20B1との配置位置の関係は、第1の実施形態に係る回路部材10と回路部材20との配置位置の関係と同様である。
【0100】
このような構成とすることによって、回路部材10B1に対していずれの方向の応力が加わっても、回路部材10Bと同様に、実装用電極13による接合部分に応力が直接加わることを抑制できる。これにより、接合信頼性は、さらに向上する。また、補助用凹部1200を有することによって、絶縁性接合材40が実装用電極13と導電性接合材30との界面に流れることを抑制できる。
【0101】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図11(A)は、回路部材10Cにおける接合部分の構成を示す平面図であり、
図11(B)は、その側面断面図である。
【0102】
図11(A)、
図11(B)に示すように、第4の実施形態に係る回路部材10Cは、第1の実施形態に係る回路部材10に対して、凹部121C、凹部122C、および、補助用凹部123Cを備える点で異なる。回路部材10Cの他の構成は、回路部材10Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、凹部121Cは、凹部121Aと同様であり、凹部122Cは、凹部122Aと同様である。また、以下の変更点は、回路部材20に対しても同様に適用できる。
【0103】
複数の補助用凹部123Cは、複数の実装用電極13毎に形成されている。複数の実装用電極13のそれぞれは、補助用凹部123Cの内部に配置される。この構成は、実装用電極13を内包する開口部(本発明の「第1開口」に対応する。)を保護層12に対して形成することによって、実現可能である。
【0104】
このような構成では、実装用電極13における導電性接合材30の接合面積を大きくできる。これにより、回路部材の接合構造における電気的、物理的な接合の信頼性が向上する。また、補助用凹部123Cによって、絶縁性接合材40が実装用電極13と導電性接合材30との界面に達することを、さらに確実に抑制できる。これにより、回路部材の接合構造における電気的、物理的な接合の信頼性がさらに向上する。
【0105】
なお、上述の各実施形態では、凹部の底に電極を有さない構成を示したが、
図12に示すように、凹部の底に電極を備えていてもよい。
図12は、派生例である回路部材の接合構造を示す側面断面図である。
【0106】
図12に示すように、回路部材10は、電極1300を備える。電極1300は、例えば、信号用電極S11,S22等に対して電気的に独立する電極で形成することも可能であり、グランド電極の一部で形成することも可能である。電極1300は、凹部121の底および凹部122の底に形成されている。電極1300の厚みは、実装用電極13の厚み以下である。回路部材20は、電極2300を備える。電極2300は、凹部221の底および凹部222の底に形成されている。電極2300の厚みは、実装用電極23の厚み以下である。このような構成でも、上述の作用効果を有することができる。
【0107】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図13は、回路部材における接合部分の構成を示す側面断面図である。
図14は、回路部材における接合部分の構成を示す平面図である。
【0108】
図13、
図14に示すように、第5の実施形態に係る回路部材10Dは、第1の実施形態に係る回路部材10に対して、流入口1220を備える点、凹部121を備えない点で異なる。第5の実施形態に係る回路部材20Dは、第1の実施形態に係る回路部材20に対して、流入口2220を備える点、凹部221を備えない点で異なる。なお、回路部材10Dは、凹部121を備えていてもよく、回路部材20Dは、凹部221を備えていてもよい。また、凹部122Dは、凹部122と同じであり、凹部222Dは、凹部222と同じである。回路部材10Dにおける他の構成は、回路部材10と同様であり、回路部材20Dにおける他の構成は、回路部材20と同様であり、これら同様の箇所の説明は省略する。
【0109】
流入口1220は、回路部材10Dの主面(ここでは、保護層12の表面113)から回路部材10Dの厚み方向に凹む凹部によって構成されている。流入口1220は、本発明の「第1流入口」に対応する。具体的には、回路部材10Dにおける主面の保護層12を除去することによって、流入口1220は、形成されている。なお、凹部122Dも、同様に、回路部材10Dにおける主面の保護層12を除去することによって形成されている。例えば、凹部122Dおよび流入口1220は、凹部122Dおよび流入口1220が繋がる形状のパターンを用いて、保護層12をエッチングすることによって、実現される。
【0110】
流入口1220は、凹部122Dにおける実装用電極13群の側と反対側に配置されており、凹部122Dに繋がっている。
【0111】
流入口1220は、平面視において矩形であり、流入口1220のY方向(回路部材10Dの短手方向)の長さ(幅)は、凹部122DのY方向の長さ(幅)よりも短い。また、流入口1220は、Y方向に沿った凹部122Dの略中央位置を含むように配置されている。
【0112】
さらに、回路部材10Dの実装用電極13と回路部材20Dの実装用電極23とを重ねた状態において、流入口1220の一部は、回路部材20Dに重ならない。言い換えれば、平面視において、流入口1220の一部と、回路部材20Dの端面20E1とは、重なっている。
【0113】
流入口2220は、回路部材20Dの主面(ここでは保護層22の表面213)から回路部材20Dの厚み方向に凹む凹部によって構成されている。流入口2220は、本発明の「第2流入口」に対応する。具体的には、回路部材20Dにおける主面の保護層22を除去することによって、流入口2220は、形成されている。なお、凹部222Dも、同様に、回路部材20Dにおける主面の保護層22を除去することによって形成されている。例えば、凹部222Dおよび流入口2220は、凹部222Dおよび流入口2220が繋がる形状のパターンを用いて、保護層22をエッチングすることによって、実現される。
【0114】
流入口2220は、凹部222Dにおける実装用電極23群側と反対側に配置されており、凹部222Dに繋がっている。
【0115】
流入口2220は、平面視において矩形であり、流入口2220のY方向(回路部材20Dの短手方向)の長さ(幅)は、凹部222DのY方向の長さ(幅)よりも短い。また、流入口2220は、Y方向に沿った凹部222Dの略中央位置を含むように配置されている。
【0116】
さらに、回路部材10Dの実装用電極13と回路部材20Dの実装用電極23とを重ねた状態において、流入口2220の一部は、回路部材10Dに重ならない。言い換えれば、平面視において、流入口2220の一部と、回路部材10Dの端面10E1とは、重なっている。
【0117】
このような構成では、上述の第2の接合方法を採用する場合、流入口1220を介して、凹部122Dに、絶縁性接合材40を容易に注入できる。同様に、流入口2220を介して、凹部222Dに、絶縁性接合材40を容易に注入できる。
【0118】
さらに、流入口1220における回路部材20Dと重なる部分、および、流入口2220における回路部材10Dと重なる部分には、絶縁性接合材40が注入される。これにより、接合面積が増加し、接合強度は向上する。また、さらに、
図13に示すように、この構成では、回路部材10Dの端面10E1および回路部材20Dの端面20E1にも、絶縁性接合材40が回り込む。したがって、接合面積は、さらに増加し、接合強度は、さらに向上する。
【0119】
また、回路部材10Dに対して、保護層12の除去だけで、凹部122Dおよび流入口1220を形成できる。したがって、凹部122Dおよび流入口1220の形成が容易である。同様に、回路部材20Dに対して、保護層22を除去するだけで、凹部222Dおよび流入口2220を形成できる。したがって、凹部222Dおよび流入口2220の形成が容易である。
【0120】
このような構造を用いることで、次に示す接合方法を適用できる。
【0121】
(第3の接合方法)
図15(A)、
図15(B)、
図15(C)、
図15(D)は、第3の接合方法における所定の工程での状態を示す図である。
【0122】
まず、回路部材10Dを用意し、
図15(A)に示すように、実装用電極13上の開口部に、導電性接合材30であるはんだをプリコートする。この際、はんだは、回路部材10Dの主面(ここでは、保護層12の表面113)から外方へ突出する高さでプリコートされている。
【0123】
次に、回路部材10Dに対して、回路部材20Dを位置合わせして配置する。この際、
図15(B)に示すように、実装用電極13と実装用電極23とが対向するように、回路部材20Dは、回路部材10Dに対して配置される。さらに、凹部122Dが回路部材20Dと重なり、且つ、流入口1220の少なくとも一部が回路部材20Dに重ならず、凹部222Dが回路部材10Dと重なり、且つ、流入口2220の少なくとも一部が回路部材10Dに重ならないように、回路部材20Dと回路部材10Dとは、配置される。
【0124】
次に、回路部材10Dと回路部材20Dとが位置合わせされた状態で、導電性接合材30用の加熱を行う。導電性接合材30用の加熱は、例えば、リフロー、オーブン、ホットバーによる加熱である。これにより、実装用電極13と実装用電極23とは、導電性接合材30を介して、物理的および電気的に接合される。なお、導電性接合材30として融点が約130℃から約210℃のはんだを用いた場合には、加熱の最高温度は、約240℃にするとよい。
【0125】
次に、
図15(C)に示すように、回路部材10Dと回路部材20Dとの隙間、および、凹部122Dと回路部材20Dとの間、および、凹部222Dと回路部材10Dとの間、流入口1220および流入口2220から、絶縁性接合材40を注入する。
【0126】
次に、絶縁性接合材40用の加熱プレス(加熱、加圧)を行う。より具体的には、
図15(D)に示すように、回路部材10Dの主面112に、加熱プレス用の台座基板901を当接させる。また、回路部材20Dの主面212に、加熱プレス用部材902を当接させる。この状態で、台座基板901および加熱プレス用部材902の少なくとも一方を加熱し、加熱プレス用部材902を台座基板901側に押し込む。なお、絶縁性接合材40用の加熱温度は、約140℃とし、約15分間加熱するとよい。
【0127】
これにより、回路部材10の主面(ここでは保護層12の表面113)と回路部材20の主面(ここでは保護層12の表面213)とは、略0の距離で近接または当接する。そして、加熱によって、絶縁性接合材40は硬化する。これにより、回路部材10と回路部材20とが物理的に接合される。
【0128】
そして、流入口1220および流入口2220が備えられていることによって、回路部材10Dと回路部材20Dとが略0の距離で近接または当接していても、凹部222Dと回路部材10Dとの間、流入口1220および流入口2220との間に、絶縁性接合材40を容易に流入できる。
【0129】
また、接合時に、絶縁性接合材40が流入口1220および流入口2220に逆流して、流入口1220および流入口2220に充填されることがある。しかしながら、流入口1220の一部が回路部材20Dに重なり、流入口2220の一部が回路部材10Dに重なっているので、この流入口1220および流入口2220に充填された絶縁性接合材40は、回路部材10Dと回路部材20Dとの接合に寄与し、接合面積を増やすことができる。
【0130】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図16は、回路部材10F,20Fにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【0131】
図16に示すように、第6の実施形態に係る回路部材10Fは、第5の実施形態に係る回路部材10Dに対して、主面111にグランド電極130を備える点で異なる。第6の実施形態に係る回路部材20Fは、第5の実施形態に係る回路部材20Dに対して、主面211にグランド電極230を備える点で異なる。なお、凹部122Fは、凹部122Dと同じであり、凹部222Fは、凹部222Dと同じである。回路部材10Fにおける他の構成は、回路部材10Dと同様であり、回路部材20Fにおける他の構成は、回路部材20Dと同様であり、これら同様の箇所の説明は省略する。
【0132】
図16に示すように、回路部材10Fは、グランド電極130を備える。グランド電極130は、主面111における実装用電極13の形成領域を除く略全面に形成されている。グランド電極130と実装用電極13とは、物理的、電気的に分離されている。
【0133】
このような構成おいて、凹部122Fおよび流入口1220は、グランド電極130の表面を覆う保護層12を部分的に除去することによって実現される。
【0134】
また、
図16に示すように、回路部材20Fは、グランド電極230を備える。グランド電極230は、主面211における実装用電極23の形成領域を除く略全面に形成されている。グランド電極230と実装用電極23とは、物理的、電気的に分離されている。
【0135】
このような構成おいて、凹部222Fおよび流入口2220は、グランド電極230の表面を覆う保護層22を除去することによって実現される。
【0136】
このような構成では、グランド電極130およびグランド電極230が存在することによって、接合部分の剛性を高くできる。したがって、実装用電極13と実装用電極23との接合部への応力が伝わり難く、この部分の接合の信頼性は向上する。
【0137】
また、この構成では、回路部材10Fにおいて、流入口1220のY方向の長さが凹部122FのY方向の長さよりも短い。この場合、絶縁性接合材40を注入する前の状態において、グランド電極130が外部に直接露出する面積を、小さくできる。これにより、グランド電極130の酸化等の不要な反応を抑制でき、信頼性は向上する。
【0138】
同様に、この構成では、回路部材20Fにおいて、流入口2220のY方向の長さが凹部222FのY方向の長さよりも短い。この場合、絶縁性接合材40を注入する前の状態において、グランド電極230が外部に直接露出する面積を、小さくできる。これにより、グランド電極230の酸化等の不要な反応を抑制でき、信頼性は向上する。
【0139】
また、この構成では、絶縁性接合材40がグランド電極130およびグランド電極230に当接する。したがって、金属との接合性の高い材料を絶縁性接合材40に用いることで、絶縁性接合材40による接合強度は向上し、回路部材10Fと回路部材20Fとの電気的および物理的な接続の信頼性は向上する。
【0140】
また、この構成では、グランド電極130と信号用電極S11とが重なる領域が部分的に無くなることを抑制でき、信号用電極S11を含む伝送線路のインピーダンスを安定して実現でき、且つ、信号用電極S11のノイズに対する耐性を向上できる。同様に、グランド電極230と信号用電極S22とが重なる領域が部分的に無くなることを抑制でき、信号用電極S22を含む伝送線路のインピーダンスを安定して実現でき、且つ、信号用電極S22のノイズに対する耐性を向上できる。
【0141】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図17は、回路部材10G,20Gにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【0142】
図17に示すように、第7の実施形態に係る回路部材10Gは、第6の実施形態に係る回路部材10Fに対して、凹部122Gおよび流入口1220Gの形状において異なる。第7の実施形態に係る回路部材20Gは、第6の実施形態に係る回路部材20Fに対して、凹部222Gおよび流入口2220Gの形状で異なる。回路部材10Gにおける他の構成は、回路部材10Fと同様であり、回路部材20Gにおける他の構成は、回路部材20Fと同様であり、これら同様の箇所の説明は省略する。
【0143】
図17に示すように、凹部122Gおよび流入口1220Gは、保護層12およびグランド電極130を除去することによって形成されている。言い換えれば、凹部122Gおよび流入口1220Gの深さは、保護層12の厚みとグランド電極130の厚みとを加算した値と同じである。なお、平面視における、凹部122Gの形状は凹部122Fと同じであり、流入口1220Gの形状は、流入口1220と同じである。
【0144】
また、凹部222Gおよび流入口2220Gは、保護層22およびグランド電極230を除去することによって形成されている。言い換えれば、凹部222Gおよび流入口2220Gの深さは、保護層22の厚みとグランド電極230の厚みとを加算した値と同じである。なお、平面視における、凹部222Gの形状は凹部222Fと同じであり、流入口2220Gの形状は、流入口2220と同じである。
【0145】
このような構成では、凹部122Gおよび流入口1220Gの深さ、凹部222Gおよび流入口2220Gの深さを大きくできる。また、この構成では、凹部122Gおよび流入口1220Gのグランド電極130が無いので、凹部122Gおよび流入口1220Gにおけるグランド電極と他の電極との不要な容量性結合を防止できる。同様に、この構成では、凹部222Gおよび流入口2220Gのグランド電極230が無いので、凹部222Gおよび流入口2220Gにおけるグランド電極と他の電極との不要に容量性結合を防止できる。
【0146】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図18は、回路部材10H,20Hにおける接合部分の構成を示す側面断面図である。
【0147】
図18に示すように、第8の実施形態に係る回路部材10Hは、第5の実施形態に係る回路部材10Dに対して、凹部122Hおよび流入口1220Hの形状において異なる。
【0148】
第8の実施形態に係る回路部材20Hは、第5の実施形態に係る回路部材20Dに対して、凹部222Hおよび流入口2220Hの形状において異なる。回路部材10Hにおける他の構成は、回路部材10Dと同様であり、回路部材20Hにおける他の構成は、回路部材20Dと同様であり、これら同様の箇所の説明は省略する。
【0149】
図18に示すように、凹部122Hおよび流入口1220Hは、保護層12、および、基板11における主面111から所定の深さ分を除去することによって形成されている。言い換えれば、凹部122Hおよび流入口1220Hの深さは、保護層12の厚みよりも大きい。なお、平面視における、凹部122Hの形状は凹部122Dと同じであり、流入口1220Hの形状は、流入口1220と同じである。
【0150】
図18に示すように、凹部222Hおよび流入口2220Hは、保護層22、および、基板21における主面211から所定の深さ分を除去することによって形成されている。言い換えれば、凹部222Hおよび流入口2220Hの深さは、保護層22の厚みよりも大きい。なお、平面視における、凹部222Hの形状は凹部222Dと同じであり、流入口2220Hの形状は、流入口2220と同じである。
【0151】
このような構成では、凹部122Hおよび流入口1220Hの深さ、凹部222Hおよび流入口2220Hの深さを、さらに大きくできる。
【0152】
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図19は、回路部材10Iにおける接合部分の構成を示す平面図である。
【0153】
図19に示すように、第9の実施形態に係る回路部材10Iは、第5の実施形態に係る回路部材10Dに対して、凹部121Iおよび補助用凹部123Iを備える点で異なる。第9の実施形態に係る回路部材20Iは、第5の実施形態に係る回路部材20Dに対して、凹部221Iおよび補助用凹部223Iを備える点で異なる。なお、凹部122Iは、凹部122Dと同じであり、凹部222Iは、凹部222Dと同じである。回路部材10Iの他の構成は、回路部材10Dと同様であり、回路部材20Iの他の構成は、回路部材20Dと同様であり、これら同様の箇所の説明は省略する。
【0154】
凹部121Iは、回路部材10Iにおける、端面10E1と実装領域Re13との間に形成されている。すなわち、凹部121Iは、第1の実施形態に係る凹部121と同様の位置に形成されている。そして、凹部121Iは、凹部121と同様の形状である。
【0155】
補助用凹部123Iは、X方向(回路部材10Iの長手方向)に沿って延びる形状である。補助用凹部123Iは、複数の実装用電極13の間を通るように形成されている。補助用凹部123Iの一方端は、凹部122Iに繋がっており、他方端は、凹部121Iに繋がっている。
【0156】
凹部221Iは、回路部材20Iにおける、端面20E1と実装用電極23(
図1参照。
図18では図示を省略している。)の配置領域(実装領域Re13に重なる領域)との間に形成されている。すなわち、凹部221Iは、第1の実施形態に係る凹部221と同様の位置に形成されている。そして、凹部221Iは、凹部221と同様の形状である。
【0157】
補助用凹部223Iは、X方向(回路部材20Iの長手方向)に沿って延びる形状である。補助用凹部223Iは、複数の実装用電極23の間を通るように形成されている。補助用凹部223Iの一方端は、凹部222Iに繋がっており、他方端は、凹部221Iに繋がっている。
【0158】
このような構成では、X方向における、複数の実装用電極13の配置領域(実装領域Re13)、および、複数の実装用電極23の配置領域の両側に絶縁性接合材40が配置される。さらに、複数の実装用電極13の間、および、複数の実装用電極23の間にも、絶縁性接合材40が配置される。
【0159】
これにより、回路部材10Iと回路部材20Iとの接合強度は、さらに向上し、回路部材10Iと回路部材20Iとの電気的および物理的な接続の信頼性はさらに向上する。また、補助用凹部223Iが無い構成と比較して、複数の実装用電極13の間、および、複数の実装用電極23の間にも、絶縁性接合材40を容易に流し込むことができる。
【0160】
(第10の実施形態)
次に、本発明の第10の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図20(A)は、回路部材10Jにおける接合部分の構成を示す平面図であり、
図20(B)は、絶縁性接合材40の広がり状態を示す平面図である。
【0161】
図20(A)、
図20(B)に示すように、第10の実施形態に係る回路部材10Jは、第5の実施形態に係る回路部材10Dに対して、凹部122Jの形状において異なる。また、第10の実施形態に係る回路部材20Jは、第5の実施形態に係る回路部材20Dに対して、凹部222Jの形状において異なる。回路部材10Jの他の構成は、回路部材10Dと同様であり、回路部材20Jの他の構成は、回路部材20Dと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0162】
回路部材10Jの凹部122Jは、保護層12のY方向(幅方向)の全域に亘っている。同様に、回路部材20Jの凹部222Jは、保護層22のY方向(幅方向)の全域に亘っている。
【0163】
このような構成では、
図20(B)に示すように、絶縁性接合材40は、回路部材10Jの側面(端面10E3、端面10E4)および回路部材20Jの側面(端面20E3、端面20E4)にも広がる。したがって、回路部材10Jと回路部材20Jとは、側面においても絶縁性接合材40で接合される。これにより、接合部の接合強度は、さらに向上する。
【0164】
(第11の実施形態)
次に、本発明の第11の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図21(A)は、回路部材10Kにおける接合部分の構成を示す平面図であり、
図21(B)は、その側面断面図である。
【0165】
図21(A)、
図21(B)に示すように、第11の実施形態に係る回路部材10Kは、第5の実施形態に係る回路部材10Dに対して、凹部121Kを備える点、回路部材10Kと回路部材20Kとの配置の位置関係において異なる。なお、凹部122Kは、凹部122Dと同様である。回路部材10Kの他の構成は、回路部材10Dと同様であるので説明は省略する。
【0166】
回路部材20Kは、絶縁性接合材40が入る凹部を有さない。凹部を除く回路部材20Kの基本的な構成は、回路部材20Dと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0167】
回路部材10Kの凹部121Kは、実装領域Re13と端面10E1との間に配置されている。凹部121Kは、平面において矩形であり、凹部122Kと同様の深さを有する。流入口1210は、凹部121Kにおける端面10E1側に配置されており、凹部121Kに繋がっている。流入口1210は、凹部121Kと略同じ深さである。流入口1210のY方向の長さは、凹部121KのY方向の長さよりも短い。
【0168】
言い換えれば、凹部121Kと流入口1210とからなる凹みは、凹部122Kと流入口1220とからなる凹みを、平面視において反転した形状である。そして、凹部121Kと流入口1210とからなる凹みと、凹部122Kと流入口1220とからなる凹みとの間に、実装領域Re13が配置されている。
【0169】
回路部材10Kは、長手方向がX方向に平行になり、短手方向がY方向に平行になるように、配置されている。回路部材20Kは、長手方向がY方向に平行になり、短手方向がX方向に平行になるように配置されている。
【0170】
回路部材10Kと回路部材20Kとは、実装用電極13と実装用電極23とが平面視において重なるように配置されている。
【0171】
この際、平面視において、回路部材20Kは、凹部121Kの全面および凹部122Kの全面に重なり、流入口1210における凹部121K側の一部、および、流入口1220における凹部122K側の一部に重なるように、配置されている。言い換えれば、回路部材20Kは、流入口1210における凹部121K側と反対側の一部、および、流入口1220における凹部122K側と反対側の一部に重ならないように、配置されている。
【0172】
絶縁性接合材40は、流入口1210を介して凹部121Kに注入され、流入口1220を介して凹部122Kに注入される。そして、絶縁性接合材40は、回路部材10Kと回路部材20Kとを接合する。
【0173】
このような構成では、実装領域Re13を挟む凹部121Kおよび凹部122Kに対して、いずれも回路部材20K側から絶縁性接合材40を注入することができる。これにより、簡素な工程で、高い接合強度を有する構造を実現できる。すなわち、回路部材10Kと回路部材20Kとを重ね合わせた部材に対して、途中で上下を反転させることなく、1回の工程で絶縁性接合材40を注入できる。
【0174】
(第12の実施形態)
次に、本発明の第12の実施形態に係る回路部材の接合構造について、図を参照して説明する。
図22は、回路部材10Lの接合部側の一部を示す平面分解図である。
図23は、
図22におけるA-A断面図である。
【0175】
第12の実施形態に係る回路部材10Lは、第5の実施形態に係る回路部材10Dに対して、実装用電極13Aおよび実装用電極13Bの配置、信号用電極S11A、信号用電極S11Bの形状において、異なる。回路部材10Lの基本的な構造は、回路部材10Dと同様であり、説明は省略する。また、回路部材10Lと回路部材20Lとの接合の基本的な構造は、第5の実施形態における回路部材10Dと回路部材20Dとの接合構造と同様であり、説明は省略する。
【0176】
回路部材10Lは、絶縁性樹脂層Ly1、絶縁性樹脂層Ly2、および、絶縁性樹脂層Ly3を積層してなる。この積層体が、回路部材10Dの基板11に相当する。積層体の表面および裏面には、保護層12が形成されている。
【0177】
絶縁性樹脂層Ly1の表面には、実装用電極13A、実装用電極13B、および、グランド電極130が形成されている。実装用電極13Aおよび実装用電極13Bは、平面視において矩形であり、絶縁性樹脂層Ly1における端面10E1の近傍に形成されている。グランド電極130は、実装用電極13Aおよび実装用電極13Bの形成領域を除く、絶縁性樹脂層Ly1の表面の略全面に形成されており、実装用電極13Aおよび実装用電極13Bから分離されている。
【0178】
グランド電極130には、電極の非形成部122L1および電極の非形成部1221が設けられている。電極の非形成部122L1および電極の非形成部1221は繋がっている。
【0179】
絶縁性樹脂層Ly1の表面の保護層12には、それぞれが保護層の非形成部からなる、複数の実装用電極用の開口123L、および、複数のグランド用の開口124Lが設けられている。また、絶縁性樹脂層Ly1の表面の保護層12には、保護層の非形成部122L2および保護層の非形成部1222が設けられている。保護層の非形成部122L2および保護層の非形成部1222は、繋がっている。
【0180】
平面視において、保護層の非形成部122L2は、電極の非形成部122L1と重なっており、この構造によって、凹部122Lが形成される。また、平面視において、保護層の非形成部1222は、電極の非形成部1221と重なっており、この構造によって、凹部122Lに繋がる流入口が形成される。
【0181】
平面視において、実装用電極13A、および、実装用電極13Bは、それぞれに、実装用電極用の開口123Lの内部に配置されている。複数のグランド用の開口124Lは、実装用電極用の開口123Lを囲むように配置されている。
【0182】
絶縁性樹脂層Ly2の裏面には、信号用電極S11A、信号用電極S11B、および、グランド電極130が形成されている。信号用電極S11Aおよび信号用電極S11Bは、絶縁性樹脂層Ly2の延びる方向に沿って延びる形状である。この際、信号用電極S11Aおよび信号用電極S11Bは、平面視において、凹部122L、および、凹部122Lに繋がる流入口に重ならないように、屈曲部を有する。グランド電極130は、信号用電極S11Aおよび信号用電極S11Bの形成領域を除く、絶縁性樹脂層Ly2の裏面の略全面に形成されており、信号用電極S11Aおよび信号用電極S11Bから分離されている。絶縁性樹脂層Ly2の裏面に形成されたグランド電極130と、絶縁性樹脂層Ly1の表面に形成されたグランド電極130とは、複数の層間接続電極140によって接続されている。
【0183】
絶縁性樹脂層Ly3の裏面の全面には、グランド電極130が形成されている。絶縁性樹脂層Ly3の裏面に形成されたグランド電極130と、絶縁性樹脂層Ly2の裏面に形成されたグランド電極130とは、複数の層間接続電極140によって接続されている。
【0184】
このように、平面視において、信号用電極S11および信号用電極S12Sと、凹部122L、および、凹部122Lに繋がる流入口とが重ならないことによって、信号用電極S11を含むストリップラインの特性インピーダンスを安定にし、信号用電極S12を含むストリップラインのインピーダンスを安定にできる。また、この構成では、外部からのノイズが乗り易い信号用電極S11Aおよび信号用電極S11Bに対して、外部からのノイズが乗り難く、伝送特性がよくなる。
【符号の説明】
【0185】
1:信号伝送部材
10、10A、10B、10B1、10C、10F、10G、10H、10I、10J、10K、10L、20、20D、20F、20G、20H、20I、20J、20K、20L:回路部材
10E1、10E2、10E3、10E4、20E1、20E2、20E3、20E4:回路部材の端面
11、21:基板
13、13A、13B、23:実装用電極
12、22:保護層
30:導電性接合材
40:絶縁性接合材
81、82:コネクタ
111、112、211、212:基板の主面
113、213:回路部材の主面(保護層の表面)
120、120B、120B1、121、121A、121C、121I、121K、122、122A、122C、122D、122F、122G、122H、122I、122J、122K、122L、221、221I、222、222D、222F、222G、222H、222I、222J:凹部
120E5:内端壁面
121E1、121E2、122E1、122E2:壁面
122L1、122L2、1221、1222:電極の非形成部
123C、123I、223I:補助用凹部
123L、124L:開口
130、230:グランド電極
140:層間接続電極
801、802:回路基板
811:コネクタ
901:台座基板
902:加熱プレス用部材
1200:補助用凹部
1210、1220、1220G、1220H、2220、2220G、2220H:流入口
1300、2300:電極
C10、C20:屈曲部
CR1、CR2:湾曲部
Re13:実装領域
ReJ:接合部
S11、S12、S21、S22:信号用電極