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特許7078183制御方法、管理装置、プログラム及び電力システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】制御方法、管理装置、プログラム及び電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220524BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220524BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220524BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H02J13/00 311A
H02J13/00 311R
H02J3/46
H02J3/38 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021556323
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043395
【審査請求日】2021-09-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】立岩 健二
(72)【発明者】
【氏名】八巻 康一郎
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004476(JP,A)
【文献】特開2019-153032(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147155(WO,A1)
【文献】特開2020-076654(JP,A)
【文献】特開2018-057251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/46
H02J 3/38
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得し、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定し、
前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得し、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定し、
決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項2】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得し、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定し、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得し、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定し、
決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項3】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得し、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定し、
前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定し、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項4】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得し、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定し、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定し、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項5】
前記供給過剰箇所に位置する需要家施設の内、該需要家施設への供給電圧が一定値以下の需要家施設を、前記演算装置を配置すべき箇所とする前記配置情報を出力する
請求項又はに記載の制御方法。
【請求項6】
前記演算装置は、前記供給電力を受電する変電設備に配置されており、
前記変電設備に配置された前記演算装置への電力の供給を制御する制御装置に、前記余剰電力を前記演算装置に供給すべき旨の制御情報を出力する
請求項1~のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記電力系統は、再生可能エネルギーを利用した発電設備が連系された電力系統であり、
前記発電設備からの前記余剰電力が前記演算装置に供給されるように制御する
請求項1~のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記演算装置は、前記発電設備に配置されており、
前記発電設備からの供給電力の出力を制御する制御装置に、前記余剰電力を前記演算装置に供給させる制御情報を出力する
請求項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記余剰電力が、前記演算装置及びエネルギー貯蔵装置に配分されるように制御する
請求項1~のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記余剰電力を前記演算装置に供給する場合に、前記余剰電力の売電要求を、前記演算装置の所有者から前記余剰電力の買電要求を受け付ける仲介装置に出力し、
前記仲介装置から、前記余剰電力の売買を成立させるか否かを判定した判定結果を取得し、
売買を成立させる旨の判定結果を取得した場合、前記余剰電力が前記演算装置に供給されるように制御する
請求項1~のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定する判定部と、
前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御する制御部と
を備え、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記制御部は、前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得する時価情報取得部と、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定する決定部とを更に備え、
前記制御部は、決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
管理装置。
【請求項12】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定する判定部と、
前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御する制御部と、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定する推定部と、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する出力部と
を備える管理装置。
【請求項13】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定する判定部と、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御する制御部と
を備え、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記制御部は、前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得する時価情報取得部と、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定する決定部とを更に備え、
前記制御部は、決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
管理装置。
【請求項14】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定する判定部と、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御する制御部と、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定する推定部と、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する出力部と
を備える管理装置。
【請求項15】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得し、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定し、
前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得し、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定し、
決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項16】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得し、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定し、
前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定し、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項17】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得し、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定し、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得し、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定し、
決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項18】
電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得し、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定し、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御し、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定し、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項19】
電力系統における電力の送配電を管理する管理装置と、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置とを有する電力システムであって、
前記管理装置は、
前記電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定する判定部と、
前記系統容量を超過すると判定した場合、前記系統容量を超過する余剰電力が前記演算装置に供給されるように制御する制御部と
を備え、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記制御部は、前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得する時価情報取得部と、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定する決定部とを更に備え、
前記制御部は、決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
ことを特徴とする電力システム。
【請求項20】
電力系統における電力の送配電を管理する管理装置と、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置とを有する電力システムであって、
前記管理装置は、
前記電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定する判定部と、
前記系統容量を超過すると判定した場合、前記系統容量を超過する余剰電力が前記演算装置に供給されるように制御する制御部と、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定する推定部と、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する出力部と
を備えることを特徴とする電力システム。
【請求項21】
電力系統における電力の送配電を管理する管理装置と、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置とを有する電力システムであって、
前記管理装置は、
前記電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定する判定部と、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御する制御部と
を備え、
前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、
前記制御部は、前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、
前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得する時価情報取得部と、
前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定する決定部とを更に備え、
前記制御部は、決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する
ことを特徴とする電力システム。
【請求項22】
電力系統における電力の送配電を管理する管理装置と、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置とを有する電力システムであって、
前記管理装置は、
前記電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統における需要電力を示す需要情報とを取得する取得部と、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記電力系統に逆潮流が発生するか否かを判定する判定部と、
逆潮流が発生すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記需要電力を超過する余剰電力が供給されるように制御する制御部と、
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記余剰電力が発生する供給過剰箇所を推定する推定部と、
前記供給過剰箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する出力部と
を備えることを特徴とする電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、管理装置、プログラム及び電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーを利用した発電設備の普及等に伴い、電力系統の過負荷が問題となっている。例えば再生可能エネルギーを利用した発電設備が電力系統に多数連系された場合、出力抑制や送電系統の増強を行う必要が生じ、需要家のコスト負担が増加することや増強工事が完了するまで再エネ連系が待機する必要が生じるなど、問題が起きている。
【0003】
上記の問題に伴い、電力の送配電を安定化させるためのシステムが提案されている。 例えば特許文献1では、電力供給側から電力消費を促すデマンド・レスポンス(上げDR)が通知された場合に、電力需要家側のコンピュータを起動して供給電力を消費させるコンピュータシステム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6522820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、電力供給側からのデマンド・レスポンスに応じて需要家側で電力を消費する点は記載されているものの、どのようなタイミングで電力消費を行うか、具体的に記載されていない。
【0006】
一つの側面では、余剰電力を好適に利用することができる制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの側面に係る制御方法は、電力系統に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統の系統容量を示す系統情報とを取得し、前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定し、前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御し、前記分散型コンピューティングシステムは、所定の演算タスクを複数のコンピュータが一部ずつ実行するシステムであって、ブロックチェーンネットワークを利用して一のコンピュータが他のコンピュータに前記演算タスクの実行を要求すると共に、前記一のコンピュータから前記他のコンピュータへの報酬の支払いを仮想通貨により行うシステムであり、更に、第2の仮想通貨のマイニングを行うブロックチェーンネットワークであり、前記他のコンピュータに相当する、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置と、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置とに前記余剰電力が供給されるように制御し、前記仮想通貨及び前記第2の仮想通貨の時価情報を取得し、前記時価情報に基づき、前記第2の仮想通貨のマイニングを行う前記演算装置と、前記演算タスクの一部を実行する前記演算装置とに夫々供給される前記余剰電力の配分を決定し、決定した配分で前記演算装置に前記余剰電力が供給されるように制御する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、余剰電力を好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電力システムの構成例を示す模式図である。
図2】サーバの構成例を示す模式図である。
図3】発電設備DB、需給DB、系統DB、マイニングマシンDB、蓄電装置DB、及び電力価格DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図4A】実施の形態1の概要を示す説明図である。
図4B】実施の形態1の概要を示す説明図である。
図5】端末が表示するレポート画面の一例を示す説明図である。
図6】電力供給制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】レポート表示処理に関する手順の一例を示すフローチャートである。
図8】変形例1に係る発電設備の構成例を示す模式図である。
図9】変形例2に係る需要家施設の構成例を示す模式図である。
図10】実施の形態2の概要を示す説明図である。
図11】実施の形態2に係るサーバが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態3の概要を示す説明図である。
図13】実施の形態3に係るサーバが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態4に係る電力システムの構成例を示す模式図である。
図15】実施の形態4に係るサーバの構成例を示すブロック図である。
図16】コンピュータDBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図17】実施の形態4の概要を示す説明図である。
図18】実施の形態4に係る電力システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図19】変形例3に係る電力システムの構成例を示す模式図である。
図20】実施の形態5に係る電力システムの構成例を示す模式図である。
図21】仲介サーバが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、電力システムの構成例を示す模式図である。本実施の形態では、商用電源系統である系統Sに連系され、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電設備Gから供給される余剰電力を、仮想通貨(第1仮想通貨)のマイニングを行うマイニングマシン4(第1演算装置)に供給する電力システムについて説明する。電力システムは、管理装置1、端末2、制御装置31、マイニングマシン4、蓄電装置5等を含む。管理装置1は、ネットワークNを介して系統Sを構成する各種装置と通信可能に構成されている。
【0011】
管理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信を行う情報処理装置であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ等である。本実施の形態において管理装置1はサーバコンピュータであるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。サーバ1は、系統Sを管理する送配電事業者(電力会社)のサーバコンピュータであり、広域の上位系統(基幹系統)S1から各地域(例えば各都道府県)の下位系統S2まで含む、系統Sにおける電力の送配電を制御する中央制御装置として機能する。
【0012】
端末2は、本システムの管理者(電力会社)が操作する端末装置であり、サーバ1のクライアント端末として機能するパーソナルコンピュータ等である。
【0013】
系統Sは、変電所T、発電設備G、需要家施設C、電源Pを含む。変電所Tは、変圧器等を有する変電設備であり、例えば配電用変電所である。なお、変電所Tは超高圧変電所、一次変電所、二次変電所(中間変電所)等であってもよい。変電所Tは、上位系統S1、下位系統S2を介して電源Pから送電された電力を降圧し、需要家施設Cに供給する。図1に示すように、変電所Tは発電設備Gからの送電電力を受電可能に構成されている。
【0014】
発電設備Gは、再生可能エネルギー等を利用して発電を行う発電設備であり、例えば太陽光発電設備である。なお、発電設備Gの発電方式は再生可能エネルギーを利用したものであればよく、例えば風力発電所、水力発電所、地熱発電所等であってもよい。また、発電設備Gは、例えば小口需要家が設置した自家発電用の小規模設備であってもよく、あるいは所定の発電事業者が売電用に設置した大規模設備であってもよい。発電設備Gは、自装置で発電した電力を系統Sに供給可能に接続され、電力会社への売電を行う。
【0015】
なお、発電設備Gの接続(連系)箇所は特に限定されず、例えば図1に示すように、下位系統S2の送配電網に接続されてもよく、また、上位系統S1と下位系統S2の間の送配電網に接続されてもよい。
【0016】
マイニングマシン4は、分散型コンピューティングシステムであるブロックチェーンネットワークを構成するコンピュータ(ノード)であり、当該ネットワークにマイナーとして参加するコンピュータである。マイニングマシン4は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の高速演算プロセッサを備え、ビットコイン(登録商標)、イーサリアム(登録商標)等の仮想通貨のマイニングに係る演算を行う。仮想通貨は、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳に取引の履歴が記録される暗号資産であって、ネットワークN上に分散配置された各ノード(マイナー)が取引内容を検証することにより、取引の履歴が改竄困難に実現されたデジタルデータである。なお、マイニングマシン4がマイニングを行う仮想通貨の種類は特に限定されない。また、図1では便宜上、マイニングマシン4を一台のみ図示してあるが、実際には複数台のマイニングマシン4、4、4…が接続されている。
【0017】
例えば変電所Tには、多数のマイニングマシン4がコンテナ等に収容され、配置されている。なお、図1でマイニングマシン4は変電所Tの低電圧側に接続されているが、高電圧側に接続されてもよい。
【0018】
また、マイニングマシン4と併設する形で、変電所Tには蓄電装置5が配置されている。なお、図1では蓄電装置5が一つのみ図示されているが、実際には複数の蓄電装置5、5、5…が接続されている。蓄電装置5もマイニングマシン4と同様に、コンテナ等に多数収容され、変電所Tに配置されている。
【0019】
制御装置31は、マイニングマシン4及び蓄電装置5への電力供給を制御するコントローラである。サーバ1は、制御装置31を制御するための制御情報をネットワークNを介して送信し、マイニングマシン4及び蓄電装置5への電力供給を遠隔制御する。
【0020】
なお、本実施の形態においてマイニングマシン4及び蓄電装置5は変電所Tに配置されているものとして説明するが、マイニングマシン4及び蓄電装置5の配置箇所は変電所Tに限定されず、後述する変形例1、2のように、再生可能エネルギーによる発電を行う発電設備G、あるいは需要家施設Cにマイニングマシン4及び蓄電装置5を配置してもよい。
【0021】
本実施の形態においてサーバ1は、発電設備Gを含む各種電源から供給される電力が、送配電可能な上限値を表す所定の出力抑制値を超過するか否かを判定する。具体的には後述の如く、サーバ1は、系統Sに供給される電力が系統Sの系統容量を超過するか否か、及び/又は系統Sに逆潮流が発生するか否かを判定する。系統容量を超過すると判定した場合、又は逆潮流が発生すると判定した場合、サーバ1は、超過分の余剰電力をマイニングマシン4が供給されるように制御する。すなわち、サーバ1は、供給過剰の状態を解消するように、マイニングマシン4による需要を創出する。具体的には後述の如く、サーバ1は、変電所Tに設置された制御装置31を介してマイニングマシン4及び/又は蓄電装置5への電力供給を制御し、各装置にマイニング及び/又は蓄電を行わせる。
【0022】
なお、本実施の形態ではクラウド上のサーバ1(管理装置)がローカルの制御装置31を遠隔制御するものとするが、制御装置31が主体となって一連の判定、供給制御等の処理を行ってもよい。また、一台の装置(中央制御装置)が主体となって処理を実行するのではなく、複数の機器が連携して一連の処理を分散処理してもよい。
【0023】
また、本実施の形態では蓄電装置5(蓄電池)に余剰電力を供給して蓄電を行わせるものとして説明するが、サーバ1は、燃料電池、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES;Compressed Air Energy Storage)システム、溶融塩蓄熱システムなどに余剰電力を供給してもよい。すなわち、サーバ1は、所定のエネルギー貯蔵装置に余剰電力を供給可能であればよく、当該装置は蓄電装置5に限定されない。
【0024】
なお、本実施の形態ではマイニングマシン4以外の余剰電力の供給先としてエネルギー貯蔵装置を挙げるが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば、アルカリ水電解装置に余剰電力を供給してもよい。アルカリ水電解装置は水素を製造する装置で、製造した水素を燃料電池等に供給する。この場合でも余剰電力を好適に消費することができる。
【0025】
また、本実施の形態では発電設備Gからの電力の売電先が送配電事業者(電力会社)であるものとして説明するが、売電先は送配電事業者に限定されず、例えば小売電気事業者、需要家、あるいはP2P(Peer to Peer)で結び付く個人などであってもよい。また、本システムの管理者は送配電事業者以外に、例えば仮想発電所(VPP;Virtual Power Plant)の運営者、再生可能エネルギー発電事業者などであってもよい。すなわち、管理者は送配電事業者である必要はなく、また、システム管理者と売電先とは異なっていてもよい。
【0026】
図2は、サーバ1の構成例を示す模式図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、補助記憶部14を有する。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。
【0027】
補助記憶部14は、ハードディスク、大容量メモリ等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラム、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部14は、発電設備DB141、需給DB142、系統DB143、マイニングマシンDB144、蓄電装置DB145、及び電力価格DB146を記憶している。発電設備DB141は、各発電設備Gの情報を格納するデータベースである。需給DB142は、電力の需要情報及び供給情報を格納するデータベースである。系統DB143は、系統Sに関する系統情報を格納するデータベースである。マイニングマシンDB144は、各マイニングマシン4の情報を格納するデータベースである。蓄電装置DB145は、各蓄電装置5の情報を格納するデータベースである。電力価格DB146は、電力取引市場における電力価格(例えば日本卸電力取引所における卸電力価格)のデータを格納するデータベースである。
【0028】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0029】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムを読み取って実行するようにしても良い。あるいはサーバ1は、半導体メモリ1bからプログラムを読み込んでも良い。
【0030】
図3は、発電設備DB141、需給DB142、系統DB143、マイニングマシンDB144、蓄電装置DB145、及び電力価格DB146のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
発電設備DB141は、発電設備ID列、種類列、接続列、発電量列を含む。発電設備ID列は、各発電設備Gを識別するための発電設備IDを記憶している。種類列、接続列、及び発電量列はそれぞれ、発電設備IDと対応付けて、発電設備Gの種類(発電方式)、系統Sにおける発電設備Gの接続(連系)箇所、及び発電設備Gの発電量を記憶している。
【0031】
需給DB142は、電力系統列、日時列、需要値列、供給値列を含む。電力系統列は、系統Sを地域毎に分類した各電力系統の系統名を記憶している。日時列、需要値列、及び供給値列はそれぞれ、系統名と対応付けて、日時、当該日時における電力需要値、及び供給値を記憶している。
【0032】
系統DB143は、電力系統列、送電線/変電所列、運用容量列、空容量列を含む。電力系統列は、系統Sを地域毎に分類した各電力系統の系統名を記憶している。送電線/変電所列、運用容量列、及び空容量列はそれぞれ、系統名と対応付けて、電力系統を構成する送電線又は変電所T、当該送電線又は変電所Tの運用容量、及び空き容量を記憶している。
【0033】
マイニングマシンDB144は、マシンID列、接続列、消費電力列、演算列、採掘列を含む。マシンID列は、各マイニングマシン4を識別するためのマシンIDを記憶している。接続列、消費電力列、演算列、及び採掘列はそれぞれ、マシンIDと対応付けて、系統Sにおけるマイニングマシン4の接続(配置)箇所、マイニングマシン4の単位時間当たりの消費電力、単位時間当たりの演算量、及びマイニングの実行履歴を記憶している。例えば採掘列には、マイニングを実行した日付と対応付けて、マイニングされた仮想通貨の種類、及び採掘量が記憶されている。
【0034】
蓄電装置DB145は、蓄電装置ID列、接続列、定格容量列、残容量列を含む。蓄電装置ID列は、各蓄電装置5を識別するための蓄電装置IDを記憶している。接続列、定格容量列、及び残容量列はそれぞれ、蓄電装置IDと対応付けて、系統Sにおける蓄電装置5の接続(配置)箇所、蓄電装置5の定格容量、及び現在蓄電可能な残容量を記憶している。
【0035】
電力価格DB146は、時間帯列、価格列を含む。時間帯列は、電力取引市場において取引が行われた時間帯を記憶している。価格列は、時間帯と対応付けて、卸電力の取引価格を記憶している。
【0036】
図4A、Bは、実施の形態1の概要を示す説明図である。図4Aでは、電力の需要値及び供給値の日内変動を示すグラフを図示している。図4Bでは、系統容量に関する概念図を図示している。図4A、Bに基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0037】
図4Aでは一例として、発電設備Gが太陽光発電を行うものとして図示してある。当然ながら、太陽光発電は日中行われるものであり、日中の供給電力が増加する。系統Sに多数の発電設備G、4、4…が接続されている場合、日中、各発電設備Gからの供給電力が過多となり、系統Sに逆潮流が発生する恐れがある。これに対応するため、送配電事業者は火力発電所等における発電量を制御し、供給電力が需要電力と均衡するように制御している。しかしながら、送配電事業者側での供給制限で均衡が取れない場合、各発電設備Gに出力抑制を要請しなければならず、問題となっている。
【0038】
また、図4Bに示すように、系統Sで送配電可能な系統容量が不足し、新規の発電設備Gを系統Sに連系できないという問題も顕在化している。系統Sを構成する各送電線、あるいは変電所T等の送配電設備には送電可能な定格容量が定められており、例えば日本では、定格容量の半分以内で送電を行うよう規定されている。しかしながら、多数の発電設備G、G、G…が連系されることにより、系統容量が不足し、新規参入者が系統Sへの連系を行えない地域もある。
【0039】
そこで本実施の形態では、上記の逆潮流、あるいは系統容量の問題に対応するため、超過分の余剰電力をマイニングマシン4に供給する。具体的には以下のように、蓄電装置5も併用しながら、余剰電力をマイニングマシン4に供給して消費させる。
【0040】
例えばサーバ1は、ネットワークNを介して、系統Sを構成する電源P、送電線、変電所T、需要家施設C等の各箇所に設置された電力計(不図示)から、系統Sの各箇所における供給電力を示す供給情報、及び需要電力を示す需要情報を継続的に取得し、需給DB142に記憶している。また、サーバ1は、ネットワークNを介して再生可能エネルギーの発電施設4からも電力の供給情報を継続的に取得し、発電施設DB141に記憶している。
【0041】
サーバ1は、需給DB142に記憶されている供給情報及び需要情報を参照して、供給電力が需要電力を超過するか否か、すなわち逆潮流が発生するか否かを判定する。例えばサーバ1は、系統Sにおける過去の供給電力及び需要電力の実績値から各パラメータの日内変動を予測し、供給電力が需要電力を超過する供給過剰箇所、及び需要電力を超過する時間帯等を推定する。なお、供給電力及び需要電力の日内変動を予測する場合、サーバ1は、気象情報(気温、天候等)なども参照しながら各パラメータを予測してもよい。また、サーバ1は逆潮流が発生するか否かを判定可能であればよく、系統Sの各箇所(例えば変電所T)に在る逆潮流防止用の保護装置での検出結果から逆潮流が発生するか否かを判定してもよい。
【0042】
また、サーバ1は、需給DB142に記憶されている供給情報と、系統DB143に記憶されている系統容量とを参照して、供給電力が系統Sの系統容量を超過するか否かを判定する。例えばサーバ1は、過去の供給情報から供給電力の日内変動を予測し、系統Sを構成する各送電線、変電所T等の各箇所における系統容量と供給電力の予測値とを比較して、供給電力が系統容量を超過する供給過剰箇所、時間帯等を推定する。なお、この場合も上記と同様に、気象情報等も参照しながら供給電力の日内変動を予測してよい。
【0043】
上述の如く、サーバ1は、系統Sに逆潮流が発生するか否か、又は供給電力が系統容量を超過するか否かを判定する。なお、サーバ1は、2つの判定のいずれかのみを行うようにしてもよい。逆潮流が発生すると判定した場合、又は系統容量を超過すると判定した場合、サーバ1は、超過分の余剰電力(供給電力と、需要電力又は系統容量との差分)を消費するように、マイニングマシン4に電力を供給する。
【0044】
例えばサーバ1は、マイニングマシンDB144を参照して、供給過剰箇所に対応する変電所Tに配置されたマイニングマシン4、4、4…を特定する。サーバ1は、各マイニングマシン4の消費電力値を参照して、上記の余剰電力を複数のマイニングマシン4、4、4…で消費するように、各マイニングマシン4に供給する電力供給量の配分を決定する。
【0045】
本実施の形態ではさらに、マイニングマシン4だけでなく蓄電装置5を併用し、マイニングマシン4及び蓄電装置5に余剰電力を配分して供給する。余剰電力の配分方法は特に限定されないが、例えばサーバ1は、余剰電力をマイニングマシン4、4、4…に優先的に供給し、変電所Tに配置された全てのマイニングマシン4に供給しても余剰電力を消費できない場合、さらに蓄電装置5、5、5…に供給するように配分する。
【0046】
なお、上記の供給方法(配分方法)は一例であって、例えば蓄電装置5に優先的に供給するようにしてもよい。また、例えばサーバ1は、仮想通貨の現在の時価(仮想通貨取引所等における単位数量当たりの取引価格)を示す時価情報、あるいはマイニングの難易度(Difficulty)等を参照してマイニングによる収益の期待値を計算し、余剰電力の供給配分を決定してもよい。
【0047】
また、例えばサーバ1は、仮想通貨の時価情報、マイニングの難易度等以外に、電力価格に基づいて余剰電力の供給配分を決定してもよい。例えばサーバ1は、電力取引市場における各時間帯の卸電力価格を電力価格DB146に格納しておき、当該卸電力価格を参照して、蓄電装置5に蓄電した電力の放電時における価格を予測し、余剰電力の供給配分を決定する。上記のように、サーバ1は、仮想通貨の時価情報、及び電力価格の時価情報に基づき、マイニングマシン4及び蓄電装置5への余剰電力の供給配分を決定してもよい。
【0048】
上述の如く、サーバ1はマイニングマシン4及び/又は蓄電装置5に供給する電力供給量の配分を決定し、当該配分で各マイニングマシン4及び/又は蓄電装置5に余剰電力を供給されるように、制御装置31に制御情報を出力して遠隔制御する。マイニングマシン4及び蓄電装置5はそれぞれ、余剰電力の供給を受けて、仮想通貨のマイニングに係る演算処理、及び蓄電を行う。
【0049】
なお、マイニングマシン4は、マイニングされた仮想通貨に対し、当該仮想通貨が再生可能エネルギー等の非化石エネルギーに由来してマイニングされたことを証明するデータを付与すると好適である。当該データは、日本の非化石証書に相当するデータである。非化石証書は、世界の多数の企業が加盟する国際イニシアティブ「RE100」で認定されており、日本では非化石証書の取引市場も創設されている。
【0050】
マイニングマシン4は、非化石証書に相当するデータを、マイニングされた仮想通貨に付与してもよい。具体的な付与手段は特に限定されないが、例えばマイニングのアルゴリズム自体を変更してもよく、あるいは非化石証書を発行する認証サーバを信頼できる第三者(Third Party)として本システムに追加し、認証サーバがマイニングマシン4からマイニングされた仮想通貨のハッシュ値を受信して非化石証書に相当するデータを返信するようにしてもよい。マイニングマシン4は、非化石証書に相当するデータを仮想通貨のトランザクションに追加し、ブロードキャストしてもよい。
【0051】
なお、上記では仮想通貨に付与するデータとして非化石証書に相当するデータを付与したが、例えばグリーン電力証書(再生可能エネルギーによって得られた環境的価値を取引可能な証書にしたもの)など、非化石証書に類似する証書のデータを付与してもよい。すなわち、マイニングマシン4は、余剰電力のエネルギー源の環境的価値を証明するデータを付与可能であればよく、そのデータ内容は非化石証書と呼ばれるものに限定されない。
【0052】
サーバ1は制御装置31を介して、各マイニングマシン4におけるマイニングの実行履歴、及び各蓄電装置5における蓄電履歴に関するデータを逐次取得し、マイニングマシンDB144及び蓄電装置DB145に記憶しておく。サーバ1はマイニングマシンDB144及び蓄電装置DB145に各々記憶されているマイニングマシン4の実行履歴及び蓄電装置5の蓄電履歴を参照しながら、以降も余剰電力を各装置に供給していく。
【0053】
図5は、端末2が表示するレポート画面の一例を示す説明図である。図5では、マイニングマシン4によるマイニングの実行履歴を示すレポート画面の一例を図示している。例えばサーバ1は、端末2からの要求に応じてマイニングの実行履歴を出力し、図5の画面を端末2に表示させる。
【0054】
例えばサーバ1は、地域指定欄51への操作入力に応じて、マイニング結果の表示対象とする電力系統(上位系統S1、又は下位系統S2)の指定入力を受け付ける。電力系統の指定入力を受け付けた場合、サーバ1は、指定された電力系統に接続されている各マイニングマシン4の実行履歴(例えば前日の実行履歴)を示すレポート画面を生成して端末2に出力する。
【0055】
例えばレポート画面は、需給グラフ52、マイニンググラフ53、及び一覧表54を含む。需給グラフ52は、指定された電力系統における電力の需要値及び供給値の日内変動と、卸電力価格の日内変動とを示すグラフである。マイニンググラフ53は、当該系統に配置されたマイニングマシン4、4、4…におけるマイニングの演算量の総和、及び仮想通貨の採掘量の総和それぞれの日内変動を示すグラフである。一覧表54は、個々のマイニングマシン4のデータ(例えばマイニングの実行履歴、マイニングマシン4が系統Sに接続されている接続箇所等)を一覧で示す表である。
【0056】
サーバ1は、需給DB142、電力価格DB146を参照して指定された電力系統の需給グラフ52を生成すると共に、マイニングマシンDB144を参照してマイニンググラフ53及び一覧表54を生成し、端末2に出力する。端末2は、需給グラフ52、マイニンググラフ53、及び一覧表54を示すレポート画面を表示し、指定された電力系統における電力の需給履歴、取引価格の履歴と、マイニングの実行履歴とを対比可能なように管理者に提示する。これにより管理者(電力会社)は、各地域(電力系統)におけるマイニングの実行履歴を容易に把握することができると共に、電力需給、卸電力価格との関係を容易に把握することができる。
【0057】
図6は、電力供給制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。図6に基づき、サーバ1が実行する電力供給制御処理の内容について説明する。
サーバ1の制御部11は、系統Sに供給される供給電力であって、再生可能エネルギーを利用した発電設備Gからの供給電力を含む、各種電源からの供給電力を示す供給情報を取得する(ステップS11)。制御部11は系統DB143を参照して、供給電力が系統Sの系統容量を超過するか否かを判定する(ステップS12)。
【0058】
系統容量を超過しないと判定した場合(S12:NO)、制御部11は、各需要家施設Cで消費される需要電力を示す需要情報を取得する(ステップS13)。制御部11は、供給情報及び需要情報を参照して、逆潮流が発生するか否かを判定する(ステップS14)。逆潮流が発生しないと判定した場合(S14:NO)、制御部11は一連の処理を終了する。
【0059】
供給電力が系統容量を超過すると判定した場合(S12:YES)、又は逆潮流が発生すると判定した場合(S14:YES)、制御部11は、超過分の余剰電力を算出する(ステップS15)。制御部11は、余剰電力を消費するように、マイニングマシン4及び/又は蓄電装置5(エネルギー貯蔵装置)に供給する電力供給量の配分を決定する(ステップS16)。この場合に制御部11は、例えば仮想通貨の時価情報、及び卸電力価格の時価情報を参照して配分を決定してもよい。制御部11は、決定した配分でマイニングマシン4及び/又は蓄電装置5に余剰電力を供給するように、制御装置31を介して供給電力を制御する(ステップS17)。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0060】
図7は、レポート表示処理に関する手順の一例を示すフローチャートである。図7に基づき、マイニングの実行履歴を示すレポート画面を端末2に表示させる際の処理内容を説明する。
サーバ1の制御部11は端末2から、マイニング履歴を表示させる電力系統(上位系統S1又は下位系統S2)の指定入力を受け付ける(ステップS31)。制御部11は、指定された電力系統について、当該系統に接続された各マイニングマシン4でのマイニングの実行履歴、当該系統における電力の需給履歴等のデータを各データベースから読み出す(ステップS32)。
【0061】
制御部11は、指定された電力系統におけるマイニングの実行履歴と、当該系統における電力の需給履歴とを示すレポート画面を生成する(ステップS33)。例えば制御部11は、図5に例示したように、電力の需給値、卸電力価格と仮想通貨のマイニング量とを時系列で示すグラフを表示すると共に、マイニングマシン4毎の実行履歴を一覧で示すレポート画面を生成する。制御部11は、生成したレポート画面を端末2に出力し(ステップS34)、一連の処理を終了する。
【0062】
なお、本実施の形態では再生可能エネルギーを利用した発電設備Gの連系に伴う系統Sの過負荷発生を前提に説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。余剰電力をマイニングマシン4に供給することで、例えば原子力発電所など、新たな固定電源(電源P)の連系に起因する過負荷発生への対策とすることもできる。すなわち、系統Sに発電設備Gが連系されている構成は必須ではなく、再生可能エネルギーを利用した発電設備Gが連系されていなくともよい。
【0063】
以上より、本実施の形態1によれば、供給電力が系統容量を超過するか否か、及び/又は系統Sに逆潮流が発生するか否かを判定し、余剰電力がマイニングマシン4に供給されるように制御する。余剰電力をマイニングにより消費することで、例えば系統Sの過負荷に伴う設備損壊等を防止することができる。また、例えば離島や、電力消費が少ない地方などにおいて、余剰電力を好適に消費することができる。このように、余剰電力が発生するか否かを好適に判断することができると共に、余剰電力を好適に利用することができる。
【0064】
また、本実施の形態1によれば、発電設備Gからの供給電力を受電する変電所Tにマイニングマシン4を配置することで、より好適に余剰電力を消費させることができる。
【0065】
また、本実施の形態1によれば、蓄電装置5(エネルギー貯蔵装置)を併用することで、より好適に余剰電力を消費させることができる。
【0066】
(変形例1)
実施の形態1では、マイニングマシン4を変電所T、つまり送配電事業者側の設備に配置する形態について説明した。しかしながら、マイニングマシン4を個々の発電設備Gに配置し、発電設備G毎にマイニングを行うようにしてもよい。本変形例では、マイニングマシン4(及び蓄電装置5)を発電設備Gに配置する形態について説明する。
【0067】
図8は、変形例1に係る発電設備Gの構成例を示す模式図である。変形例1に係る発電設備Gは、制御装置32、発電モジュール41、PCS( Power Conditioning Subsystem)42、マイニングマシン4、蓄電装置5等を有する。制御装置32は、発電設備Gからの供給電力の出力を制御するコントローラであり、ネットワークNに接続されている。発電モジュール41は太陽光パネル等を含むモジュールであり、太陽光を利用した発電を行う。PCS42は、発電モジュール41が発電した電力のDC/AC変換を行う変換器であり、不図示の配電盤等を介して系統Sの送電線に接続されている。
【0068】
マイニングマシン4及び蓄電装置5はPCS42に接続されており、発電モジュール41から発電電力を系統Sに出力可能に構成されている。制御装置32は、サーバ1からの制御情報に従ってPCS42を制御し、発電モジュール41が発電した電力を送電線に供給するか、あるいはマイニングマシン4及び/又は蓄電装置5に供給する。
【0069】
サーバ1は実施の形態1と同じく、供給電力が系統容量を超過するか否か、及び/又は逆潮流が発生するか否かを判定する。系統容量を超過すると判定した場合、又は逆潮流が発生すると判定した場合、サーバ1は、発電設備Gの制御装置32を介してPCS42を制御し、マイニングマシン4及び/又は蓄電装置5への電力供給を行う。これにより、系統Sに出力される電力を抑制し、供給過剰となる事態を防止する。
【0070】
なお、上記では特段説明しなかったが、PCS42は発電モジュール41で発電した電力のDC/AC変換を行わず、直流電力をそのままマイニングマシン4に供給すると好適である。直流電力をそのままマイニングマシン4に供給することで、効率的に再生可能エネルギーを活用することができる。
【0071】
マイニングマシン4及び蓄電装置5の配置が異なる以外は実施の形態1とほぼ同じであるため、変形例1ではフローチャートその他の詳細な説明は省略する。
【0072】
(変形例2)
本変形例では、マイニングマシン4(及び蓄電装置5)を需要家施設Cに配置する形態について説明する。
【0073】
図9は、変形例2に係る需要家施設Cの構成例を示す模式図である。変形例2に係る需要家施設Cは、制御装置33、マイニングマシン4、蓄電装置5等を有する。制御装置33は、マイニングマシン4及び蓄電装置5に供給される電力を制御するコントローラであり、例えばネットワークNを介してサーバ1と通信可能に構成されている。
【0074】
マイニングマシン4を設置する需要家は特に限定されないが、好適には、当該需要家は仮想通貨のマイニングを事業として行うマイニング事業者である。マイニング事業者は多数のマイニングマシン4を需要家施設Cに設置し、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等の事業者端末9を介してマイニングマシン4を制御し、マイニングを行っている。
【0075】
サーバ1は実施の形態1と同じく、供給電力が系統容量を超過するか否か、及び/又は逆潮流が発生するか否かを判定する。系統容量を超過すると判定した場合、又は逆潮流が発生すると判定した場合、サーバ1は、マイニング事業者に協力を要請し、マイニングマシン4に余剰電力を供給して消費させる。すなわち、サーバ1は、需要家施設Cの制御装置33を介して供給電力を制御し、マイニングマシン4及び/又は蓄電装置5に余剰電力を供給させる。このように、送配電事業者、再生可能エネルギー発電事業者とも異なる第三者に余剰電力を消費させるようにしてもよい。
【0076】
マイニングマシン4及び蓄電装置5の配置が異なる以外は実施の形態1とほぼ同じであるため、変形例2ではフローチャートその他の詳細な説明は省略する。
【0077】
(実施の形態2)
本実施の形態では、系統Sにおいて供給電力が過剰となる供給過剰箇所にマイニングマシン4を配置するように、マイニングマシン4の最適配置(配置情報)を管理者に提案する形態について述べる。なお、実施の形態1と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
図10は、実施の形態2の概要を示す説明図である。図10では、系統Sの送配電網が分岐している様子を概念的に図示している。図10に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0079】
系統Sは上位系統S1から下位系統S2に至るまで、階層的かつ複雑に送配電網が構成されている。本実施の形態でサーバ1は、供給電力が系統容量を超過する、又は逆潮流が発生することにより、供給過剰状態になると想定される系統Sの供給過剰箇所を推定し、当該箇所にマイニングマシン4(及び蓄電装置5)を配置するように管理者(送配電事業者)に提案する。
【0080】
サーバ1は、需給DB142に記憶されている過去の供給情報及び需要情報、系統DB143に記憶されている系統Sの各箇所の系統容量等を参照して、供給電力が過剰となる供給過剰箇所を推定する。例えばサーバ1は実施の形態1と同じく、供給電力及び需要電力の予測値を算出して、各箇所において逆潮流が発生するか否かを判定する。また、サーバ1は、供給電力の予測値を系統容量と比較して、供給電力が系統容量を超過するか否かを判定する。これによりサーバ1は、図10において太線で示すように、系統Sにおける供給過剰箇所を推定する。
【0081】
供給過剰箇所が推定された場合、サーバ1は、当該箇所で発生する余剰電力を算出し、算出した余剰電力を消費可能なように、当該箇所に配置すべきマイニングマシン4の台数等を決定する。なお、実施の形態1と同様に、マイニングマシン4に加えて蓄電装置5も接続するように決定してもよい。サーバ1は、決定したマイニングマシン4の配置箇所及び台数を示す配置情報を端末2に通知し、表示させる。例えばサーバ1は、マイニングマシン4を接続すべき箇所及び台数を示す系統Sの結線図等を表示させて、マイニングマシン4の最適配置を管理者に提示する。
【0082】
この場合にサーバ1は、マイニングマシン4の具体的な配置箇所の候補として、上記で推定した供給過剰箇所に位置する需要家施設Cの内、当該需要家施設Cへの供給電圧が一定値(例えば200V)以下の需要家施設Cにマイニングマシン4を配置するよう管理者に提示してもよい。
【0083】
ここで想定される需要家施設Cは、廃校となった学校校舎等のように使われなくなった施設であり、マイニングマシン4を配置可能であり、かつ、送電網から供給される電圧が一定値以下に降圧された施設である。余剰電力を消費するためには多数のマイニングマシン4を設置する必要があるが、廃校校舎等であれば多数のマイニングマシン4を設置することができる。一方で、一般に流通しているマイニングマシン4は大規模な製造用機械などとは異なり、高い電圧に耐えられるように設計されていないことが多い。従って、供給電圧を一定値以下に降圧する分電盤がない施設(例えば廃工場)などは、マイニングマシン4を配置する施設は適さない。
【0084】
そこでサーバ1は、マイニングマシン4を多数配置可能であり、かつ、送電網から供給される電圧が一定値以下に降圧された需要家施設Cを、マイニングマシン4を配置すべき箇所とする配置情報を管理者に提示(出力)する。例えばサーバ1は、系統Sと対応付けて、上記の条件を満たす需要家施設Cの情報を不図示のデータベース(廃校校舎のリスト等)を記憶しておき、当該データベースから供給過剰箇所に位置する需要家施設Cを選択して通知する。これにより、マイニングマシン4の配置箇所を好適に選定することができる。
【0085】
なお、本実施の形態では一例として、マイニングマシン4の配置箇所として需要家施設Cを挙げたが、図10に示すように、変電所Tを配置箇所の候補として選択してもよい。あるいはサーバ1は、発電設備Gを配置箇所の候補として選択してもよい。このように、サーバ1は、マイニングマシン4を配置すべき箇所を選択して提示可能であればよく、マイニングマシン4の配置箇所は需要家施設Cに限定されない。
【0086】
図11は、実施の形態2に係るサーバ1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
サーバ1の制御部11は、需給DB142、系統DB143等の各データベースから、系統Sにおける過去の電力供給値を示す供給情報、過去の需要値を示す需要情報、系統Sを構成する各送電線、変電所T等の系統容量などのデータを読み出す(ステップS201)。制御部11は、取得した各種データに基づき、系統Sにおいて供給電力が上限値を超過する供給過剰箇所を推定する(ステップS202)。
【0087】
制御部11は、推定された供給過剰箇所における超過分の供給電力(余剰電力)を算出し、算出した供給電力を消費可能なように、マイニングマシン4(及び蓄電装置5)の配置箇所及び台数を決定する(ステップS203)。制御部11は、決定したマイニングマシン4の配置箇所及び台数を示す配置情報を端末2に出力し(ステップS204)、一連の処理を終了する。
【0088】
以上より、本実施の形態2によれば、マイニングマシン4の最適配置を管理者に提示することができる。
【0089】
(実施の形態3)
本実施の形態では、マイニングした仮想通貨を、発電設備Gにより系統Sに電力を供給する供給者(需要家、発電事業者等)と、系統Sを管理する管理者(電力会社等)との間で分配する形態について説明する。
【0090】
図12は、実施の形態3の概要を示す説明図である。図12では、マイニングした仮想通貨を供給者及び管理者に分配する様子を概念的に図示している。図12に基づき、実施の形態3の概要を説明する。
【0091】
実施の形態1で説明したように、サーバ1は発電施設4からの供給電力(余剰電力)をマイニングマシン4に供給し、マイニングを行わせる。この場合に、管理者(電力会社)は法定通貨等による決済を行って供給者から買電を行うようにしてもよいが、本実施の形態では、供給電力の買取額をマイニングした仮想通貨の一部で支払い、残りの利益相当額の仮想通貨を管理者が得るようにする。
【0092】
上述の処理をブロックチェーン上で実現するために、サーバ1は、マイニングした仮想通貨を管理者及び供給者の間で分配するためのスマートコントラクトを生成し、トランザクションの検証を行うブロックチェーンの各ノードに出力(ブロードキャスト)しておく。スマートコントラクトは、当事者が事前に取り決めた契約条件に従って契約を自動的に執行するプログラムである。サーバ1は、供給者との間で契約内容を事前合意してスマートコントラクト(例えばイーサリアムの場合はコントラクトアカウント)を生成し、各ノードにブロードキャストしてブロックチェーンに記録しておく。
【0093】
例えばサーバ1は供給者との間で、管理者が供給者から電力を買い取る際の、単位数量当たりの電力の買取額を事前に取り決めておく。また、サーバ1は実施の形態1と同様に、供給電力(の予測値)が上限値を超過するか否かを判定し、発電設備Gからマイニングマシン4に供給する余剰電力の供給量等を決定する。そしてサーバ1は、取り決めてある単位数量当たりの買取額に基づき、上記で決定した供給量の余剰電力を買い取る際の買取額を算出する。サーバ1は、当該買取額に従い、マイニングされる仮想通貨を分配するスマートコントラクトを生成する。
【0094】
例えばサーバ1は、ブロックチェーンの各ノードに、上記の買取額と、マイニングされた仮想通貨の数量とを比較してマイニングによる利益が発生したか否かを判定し、利益が発生した場合は買取額に相当する数量の仮想通貨を供給者に送金し、利益額に相当する数量の仮想通貨を管理者に送金する処理を実行させるスマートコントラクトを生成する。なお、この場合に各ノードが仮想通貨を法定通貨に換算するためのレート情報が必要になるが、例えば信頼できる外部API(第三者)からレート情報を参照する、あるいは複数のユーザが合意してレート情報を逐次更新する別のスマートコントラクト(データフィールドコントラクト)をブロックチェーンに用意して参照するなど、種々の方法が考えられる。
【0095】
サーバ1は、上記で生成したスマートコントラクトをブロックチェーンの各ノードにブロードキャストする。ブロックチェーンの各ノードは当該スマートコントラクトを検証し、問題なければブロックチェーンに記録する。
【0096】
その後、サーバ1は余剰電力をマイニングマシン4に供給し、マイニングを実行させる。そしてサーバ1は、マイニングされた仮想通貨を上記のスマートコントラクトに送金するトランザクションを生成してブロードキャストする。当該トランザクションを取得した各ノードは、予め記録されているスマートコントラクトを呼び出して実行し、マイニングされた仮想通貨の法定通貨換算額を算出し、上記の買取額と比較して利益が発生したか否かを判定する。そして各ノードは、スマートコントラクトに従って買取額相当の仮想通貨を供給者に送金し、利益額相当の仮想通貨を管理者に送金するトランザクションを生成してブロックチェーンに記録する。
【0097】
なお、上記では特段説明しなかったが、マイニングした仮想通貨の価値が買取額未満となり、利益が発生しない可能性もある。この場合、例えばマイニングされた仮想通貨を全て供給者に送金し、不足分の金額に相当する仮想通貨を管理者のウォレットから補填(送金)するなど、スマートコントラクトの契約条件として種々の対応が考えられる。
【0098】
図13は、実施の形態3に係るサーバ1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、実施の形態1の処理に従って供給電力が上限値を超過するものと判定し、発電設備Gからの余剰電力をマイニングマシン4に供給してマイニングを行わせる場合に、以下の処理を実行する。
制御部11は、供給者との間で事前に取り決めた単位数量当たりの電力の買取額と、発電設備Gからマイニングマシン4に供給される余剰電力の供給量とに基づき、余剰電力の買取額を算出する(ステップS301)。制御部11は、算出した買取額に基づき、マイニングされる仮想通貨を供給者との間で分配するためのスマートコントラクトを生成し、ブロックチェーンの各ノードに出力する(ステップS302)。例えば制御部11は、マイニングした仮想通貨の内、供給者(発電設備G)からの供給電力に相当する数量の仮想通貨を供給者に送金し、残りの仮想通貨を管理者に送金するスマートコントラクトを生成する。制御部11は、当該スマートコントラクトを各ノードにブロードキャストして検証(マイニング)させ、ブロックチェーンに記録する。
【0099】
制御部11は、余剰電力をマイニングマシン4に供給し、マイニングを実行させる(ステップS303)。制御部11は、マイニングした仮想通貨を、ステップS302で生成したスマートコントラクトに送金するトランザクションを生成して各ノードに出力する(ステップS304)。当該トランザクションを取得した各ノードは、ステップS302でブロックチェーンに記録されたスマートコントラクトを呼び出して実行し、マイニングされた仮想通貨を管理者及び供給者に分配して送金するトランザクションを生成する。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0100】
以上より、本実施の形態3によれば、改竄困難なブロックチェーン上で利益分配が可能となり、一連のシステムを好適に運用することができる。
【0101】
(実施の形態4)
実施の形態1では分散型コンピューティングシステムの一例としてブロックチェーンネットワークを挙げ、仮想通貨(第1仮想通貨)のマイニングを行うマイニングマシン4(第1演算装置)に余剰電力を供給する形態について説明した。本実施の形態では、マイニングとは異なる演算タスクであって、任意の利用者が要求(依頼)する演算タスク(例えばゲノム解析、機械学習等)を多数のノードコンピュータが分散して実行するブロックチェーンネットワークを分散型コンピューティングシステムの一例に挙げ、当該ネットワークを構成するノードコンピュータ(第2演算装置)に余剰電力を供給する形態について説明する。
【0102】
図14は、実施の形態4に係る電力システムの構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る電力システムは、汎用コンピュータ6、利用者端末7を備える。本実施の形態では、利用者端末7から要求された演算タスクを多数の汎用コンピュータ6が実行する分散型コンピューティングシステムを一例に挙げ、当該汎用コンピュータ6に余剰電力を供給する。
【0103】
汎用コンピュータ6は、CPU、GPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算処理装置を備えるコンピュータであり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末等である。なお、汎用コンピュータ6に相当する演算装置は、CPU等の演算処理装置を備えるコンピュータであればよく、例えばゲーム機などの特定目的のコンピュータであってもよい。汎用コンピュータ6は、マイニングマシン4に代えて変電所Tに設置され、送電網から電力の供給を受けることが可能となっている。なお、図14では単一の汎用コンピュータ6を図示しているが、実際には複数の汎用コンピュータ6が設置されているものとして説明する。また、汎用コンピュータ6はネットワークNに通信接続されているものとして説明する。
【0104】
利用者端末7は、汎用コンピュータ6に演算タスクを要求(依頼)する利用者の端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータである。利用者端末7は、汎用コンピュータ6を含むネットワークNに接続された多数のコンピュータに、演算タスクの実行を要求する。演算タスクの内容は特に限定されないが、例えばゲノム解析、機械学習など、大規模な演算処理が必要なタスクが想定される。各コンピュータは、利用者端末7から要求された演算タスクを一部ずつ実行し、演算結果を利用者端末7に出力する。
【0105】
図15は、実施の形態4に係るサーバ1の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係るサーバ1の補助記憶部14は、マイニングマシンDB144に代えて、コンピュータDB147を記憶している。コンピュータDB147は、変電所Tに設置された汎用コンピュータ6の情報を格納するデータベースである。
【0106】
図16は、コンピュータDB147のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。コンピュータDB147は、コンピュータID列、接続列、消費電力列、タスク列、実行履歴列を含む。コンピュータID列は、各汎用コンピュータ6を識別するためのコンピュータIDを記憶している。接続列、消費電力列、タスク列、及び実行履歴列はそれぞれ、コンピュータIDと対応付けて、系統Sにおける汎用コンピュータ6の接続(配置)箇所、汎用コンピュータ6の単位時間当たりの消費電力、要求(依頼)を受けている演算タスクに関するタスク情報、及びマイニングの実行履歴を記憶している。タスク列には、例えば演算タスクのタスク名、実行期限、タスク完了に伴い利用者から支払われる報酬等の情報が格納されている。実行履歴列には、例えば演算タスクの実行日と対応付けて演算結果(例えば汎用コンピュータ6が実行した演算タスクの割合)が記憶されている。
【0107】
図17は、実施の形態4の概要を示す説明図である。図17に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0108】
上述の如く、汎用コンピュータ6は利用者端末7からの要求を受けて、所定の演算タスクの一部を実行する。具体的には、汎用コンピュータ6及び利用者端末7は、所定の仮想通貨(第2仮想通貨)に係るブロックチェーンネットワークを構成するノードとして機能し、汎用コンピュータ6は、P2Pの通信で利用者端末7からの演算タスクの実行要求を取得する。汎用コンピュータ6は、利用者端末7から要求された演算タスクの一部を実行し、ブロックチェーンネットワークを介して演算結果を利用者端末7に出力する。そして汎用コンピュータ6は、当該ブロックチェーンネットワークで実装された仮想通貨により、演算結果の報酬の支払いを受ける。なお、ここで言う「報酬」はマイニングの報酬ではないので注意されたい。
【0109】
上記のブロックチェーンネットワークは、例えばイーサリアム系の仮想通貨を活用した分散コンピューティングプラットフォーム(golem、sonm等)であり、任意の利用者が要求する演算タスクを、複数のノードコンピュータが分散して実行するネットワークである。なお、当該仮想通貨はイーサリアム系の仮想通貨に限定されず、ビットコイン、あるいは他のアルトコインであってもよく、本システム独自の仮想通貨であってもよい。当該ブロックチェーンネットワークは、分散型コンピューティングを実現するためのプラットフォームとして機能し、演算タスクの要求、合意、報酬の支払いを自律的に行う。
【0110】
なお、本実施の形態に係る仮想通貨(第2仮想通貨)は、実施の形態1に係るマイニングマシン4がマイニングする仮想通貨(第1仮想通貨)と同一であってもよく、異なっていてもよい。また、汎用コンピュータ6(及び利用者端末7)は仮想通貨のマイニングを行ってもよく、行わなくともよい。
【0111】
利用者端末7は、所定の演算タスクのデータをブロックチェーンネットワークにブロードキャスト(出力)し、当該ネットワークに参加する任意のコンピュータに演算タスクの実行を要求する。汎用コンピュータ6は、利用者端末7から要求された演算タスクを請け負う場合、利用者端末7との間でスマートコントラクトを生成する。当該スマートコントラクトは、例えば実行対象とする演算タスクの内容、当該タスクの実行期限、支払われる報酬などを規定するコントラクトである。例えば利用者端末7は、報酬とする仮想通貨をデポジットしたスマートコントラクト付きのUTXOを生成し、汎用コンピュータ6が当該UTXOに電子署名を入力することでコントラクトを生成する。利用者端末7は、汎用コンピュータ6を含む各ノードコンピュータとの間でスマートコントラクトを生成し、各ノードコンピュータに演算タスクを一部ずつ割り当てる。
【0112】
汎用コンピュータ6は、利用者端末7から請け負った演算タスクの一部を実行する。この場合に汎用コンピュータ6は、実施の形態1に係るマイニングマシン4と同様に、余剰電力の供給を受けて演算を実行する。すなわち、サーバ1は、系統Sに供給される供給電力に関する供給情報に基づき、系統Sの系統容量を超過するか否か、及び/又は逆潮流が発生するか否かを判定する。系統容量を超過すると判定した場合、又は逆潮流が発生すると判定した場合、サーバ1は、制御装置31を制御して汎用コンピュータ6に余剰電力を供給する。なお、この場合にサーバ1は実施の形態1と同様に、仮想通貨の時価情報、及び卸電力価格の時価情報を参照して、汎用コンピュータ6及び蓄電装置5に供給する電力量の配分を決定してもよい。
【0113】
自装置に割り当てられた演算タスクの一部の演算が完了した場合、汎用コンピュータ6は、ブロックチェーンネットワークを介して利用者端末7に演算結果を出力する。汎用コンピュータ6から演算結果を取得した場合、利用者端末7は仮想通貨により報酬を支払う。例えば利用者端末7は、上記で仮想通貨をデポジットしたUTXOに電子署名を入力し、汎用コンピュータ6が仮想通貨を取得可能とする。
【0114】
上述の如く、余剰電力の供給を受ける演算装置は仮想通貨のマイニングを行うマイニングマシン4に限定されず、マイニングとは異なる任意の演算タスクを分散して実行する汎用コンピュータ6であってもよい。
【0115】
なお、上記ではブロックチェーンを利用した自立分散型のシステムを一例に説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、中央集権型のシステムであってもよい。すなわち、システム全体を管理するサーバコンピュータ(例えばサーバ1)が利用者端末7から演算タスクの要求を受け付けて複数の汎用コンピュータ6に一部ずつタスクを割り当てるようにしてもよい。このように、複数の汎用コンピュータ6が演算タスクを一部ずつ実行可能であればよく、ブロックチェーンを利用したシステムでなくともよい。
【0116】
図18は、実施の形態4に係る電力システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。図18に基づき、本実施の形態に係る電力システムが実行する処理内容について説明する。
汎用コンピュータ6は、利用者端末7から演算タスクの実行要求を受け付ける(ステップS401)。具体的には、汎用コンピュータ6はブロックチェーンネットワークを構成するノードコンピュータであり、ブロックチェーンネットワークを介して利用者端末7から演算タスクの実行要求を取得する。汎用コンピュータ6は、利用者端末7から要求された演算タスクに関するタスク情報をサーバ1に送信する(ステップS402)。サーバ1は、汎用コンピュータ6から送信されたタスク情報をコンピュータDB147に記憶する(ステップS403)。
【0117】
サーバ1は、系統Sに供給される供給電力に関する供給情報を取得する(ステップS404)。制御部11は系統DB143を参照して、供給電力が系統Sの系統容量を超過するか否かを判定する(ステップS405)。
【0118】
系統容量を超過しないと判定した場合(S405:NO)、制御部11は、各需要家施設Cで消費される需要電力を示す需要情報を取得する(ステップS406)。制御部11は、供給情報及び需要情報を参照して、逆潮流が発生するか否かを判定する(ステップS07)。逆潮流が発生しないと判定した場合(S407:NO)、制御部11は一連の処理を終了する。
【0119】
供給電力が系統容量を超過すると判定した場合(S405:YES)、又は逆潮流が発生すると判定した場合(S407:YES)、制御部11は、超過分の余剰電力を算出する(ステップS408)。制御部11は、余剰電力を消費するように、汎用コンピュータ6及び/又は蓄電装置5に供給する供給電力量の配分を決定する(ステップS408)。制御部11は、決定した配分で汎用コンピュータ6及び/又は蓄電装置5に余剰電力を供給するように、制御装置31を介して供給電力を制御し(ステップS410)、一連の処理を終了する。余剰電力の供給を受けた場合、汎用コンピュータ6は、利用者端末7から要求された演算タスクの一部の演算を実行し(ステップS411)、一連の処理を終了する。
【0120】
以上より、本実施の形態4によれば、所定の演算タスクを実行する分散型コンピューティングシステムの汎用コンピュータ6に余剰電力を供給することで、余剰電力を好適に消費することができる。
【0121】
また、本実施の形態4によれば、ブロックチェーンを利用した自律分散型のシステムとすることで、演算タスクの要求、合意、報酬の支払い等を自律的に行うことができる。
【0122】
(変形例3)
実施の形態1ではマイニングマシン4に、実施の形態4では汎用コンピュータ6に余剰電力を供給する形態について説明した。本変形例では、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6に余剰電力を配分して供給する形態について説明する。
【0123】
図19は、変形例3に係る電力システムの構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る電力システムは、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6(並びに蓄電装置5)が併設された構成を有する。なお、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6は同一箇所に設置されている必要はなく、異なる連係箇所に設置されていてもよい。本変形例においてサーバ1は、供給電力が系統Sの系統容量を超過した場合、及び/又は逆潮流が発生した場合、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6(並びに蓄電装置5)に余剰電力を配分して供給する。
【0124】
具体的な余剰電力の供給方法(配分方法)は特に限定されないが、例えばサーバ1は、マイニングマシン4でマイニングする仮想通貨(以下では「第1仮想通貨」と呼ぶ)の時価情報と、汎用コンピュータ6での演算タスクにより得られる仮想通貨(以下では「第2仮想通貨」と呼ぶ)の時価情報とに基づき、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6に供給する電力の配分を決定する。
【0125】
例えばサーバ1は、マイニングマシン4でマイニングする第1仮想通貨の現時点の時価(仮想通貨の取引所等で取引される単位数量当たりの価格)と、単位時間当たりのマイニングの期待数量とを乗算して、マイニングによって得られる収益の期待値を算出する。また、サーバ1は、第2仮想通貨の現時点の時価と、演算タスクを要求(依頼)した利用者から支払われる報酬(第2仮想通貨の数量)とを乗算して、演算タスクの実行により得られる収益の期待値を算出する。サーバ1は、両期待値に応じて供給電力の配分を決定する。
【0126】
なお、上記では第1仮想通貨及び第2仮想通貨の時価情報に基づいて余剰電力の供給配分を決定したが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えばサーバ1は、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6それぞれの単位時間当たりの消費電力に基づき、例えば余剰電力が大きい場合は比較的消費電力が大きい方の演算装置(例えばマイニングマシン4)に、余剰電力が小さい場合は比較的消費電力が小さい方の演算装置(例えば汎用コンピュータ6)に優先的に配分するようにしてもよい。また、例えばサーバ1は、利用者から要求(依頼)された演算タスクの実行期限が近い場合は汎用コンピュータ6に優先的に配分するなどしてもよい。このように、時価情報に基づく余剰電力の配分は一例であって、他の情報に基づいて配分を決定してもよい。
【0127】
上記の点以外は実施の形態1、4と同じなので、本変形例ではフローチャート等の詳細な説明は省略する。
【0128】
以上より、本変形例3によれば、マイニングマシン4及び汎用コンピュータ6を併用し、余剰電力を利用したマイニングと、マイニングと異なる演算タスクとを同時に行うことができる。
【0129】
(実施の形態5)
実施の形態1~4では、送配電事業者が主体となって余剰電力に基づくマイニング等を行う形態について説明した。本実施の形態では、電力系統を管理する送配電事業者と、マイニングマシン4等の演算装置を所有する所有者(好適にはマイニング事業者)とが別々である場合において、仲介者が両者の取引を仲介する形態について説明する。
【0130】
図20は、実施の形態5に係る電力システムの構成例を示す模式図である。図20に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0131】
本実施の形態においてマイニングマシン4は、変形例2で説明した形で、需要家施設Cに設置されている。好適には、需要家施設Cの需要家はマイニング事業者であり、需要家施設Cには多数のマイニングマシン4が設置されている。
【0132】
また、本実施の形態に係る電力システムは、仲介サーバ8を有する。仲介サーバ8は、送配電事業者とマイニング事業者(マイニングマシン4の所有者)との間の電力取引を仲介する仲介者のサーバコンピュータであり、送配電事業者からの余剰電力の売電要求と、マイニング事業者からの買電要求とを受け付け、電力の売買取引を成立させるサーバコンピュータである。仲介者は、例えば日本卸電力取引所のような仲介事業者であるが、送配電事業者(電力会社等)が兼ねていてもよく、特に限定されない。
【0133】
本実施の形態においてサーバ1は、実施の形態1と同様に、供給電力が系統容量を超過するか否か、及び/又は逆潮流が発生するか否かを判定することで、余剰電力をマイニングマシン4に供給するか否かを判定する。ここでサーバ1は、余剰電力をマイニングマシン4に供給する場合に、余剰電力の売電を要求する売電要求を仲介サーバ8に出力する。売電要求は、電力売却のオファーであり、電力の売却価格のほか、売電量(余剰電力の供給量)、電力を供給する時間帯等の情報を含む。
【0134】
これに対し、マイニング事業者に係る事業者端末9は、仲介サーバ8に対し、余剰電力の買電を要求する買電要求を出力する。買電要求は、電力購入のオファーであり、電力の買取価格のほか、買電量(供給量)、電力の供給を受ける時間帯等の情報を含む。仲介サーバ8は、マイニングマシン4を系統Sに連系したマイニング事業者から買電要求を事前に受け付け、不図示のデータベースに記憶してある。
【0135】
送配電事業者のサーバ1から余剰電力の売電要求を取得した場合、仲介サーバ8は、事前に受け付けた買電要求と当該売電要求をマッチングし、余剰電力の売買を成立させるか否かを判定する。例えば仲介サーバ8は、余剰電力の買取価格及び売却価格が一致するか否かを判定する。また、仲介サーバ8は、余剰電力の供給量(買電量及び売電量)、供給時間帯等が一致するか否かを判定してもよい。
【0136】
余剰電力の売買を成立させると判定した場合、仲介サーバ8は判定結果をサーバ1及び事業者端末9に通知する。この場合、サーバ1は、売買が成立した相手方(マイニング事業者)のマイニングマシン4に余剰電力が供給されるように制御する。具体的には、サーバ1は、ネットワークNを介して制御装置33に制御情報を出力し、余剰電力の供給を系統Sから受けてマイニングを実行するように制御する。
【0137】
上述の如く、送配電事業者とマイニングマシン4の所有者とが異なる場合において、両者から余剰電力売買に係るオファーを受け付けて取引させるようにしてもよい。これにより、余剰電力に基づく新たな電力市場を創出することができる。
【0138】
なお、本実施の形態では演算装置がマイニングマシン4であるものとして説明したが、実施の形態4のように、分散コンピューティングに係る演算タスクを実行する汎用コンピュータ6であってもよい。
【0139】
図21は、仲介サーバ8が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。図21に基づき、仲介サーバ8が実行する処理内容について説明する。
仲介サーバ8は、余剰電力の買取価格、買電量、時間帯等を示す買電要求を、マイニングマシン4を所有するマイニング事業者の事業者端末9から取得する(ステップS501)。仲介サーバ8は、取得した買電要求の情報を記憶する(ステップS502)。
【0140】
仲介サーバ8は、系統Sにおける電力の送配電を管理するサーバ1(送配電事業者)から、余剰電力の売却価格、売電量、時間帯等を示す売電要求を取得する(ステップS503)。上述の如く、サーバ1は、系統Sにおける供給電力が系統容量を超過すると判定した場合、又は逆潮流が発生すると判定した場合、売電要求を出力する。仲介サーバ8は、当該売電要求を受け付ける。
【0141】
仲介サーバ8は、ステップS502で記憶した買電要求と、ステップS503で取得した売電要求とをマッチングし、余剰電力の売買を成立させるか否かを判定する(ステップS504)。例えば仲介サーバ8は、余剰電力の買取価格及び売却価格のほか、双方が要求する供給量(買電量及び売電量)、時間帯等に基づいて売買を成立させるか否かを判定する。売買を成立させると判定した場合(S504:YES)、仲介サーバ8は、取引が成立した旨をサーバ1及び事業者端末9に通知する(ステップS505)。この場合、事業者端末9は制御装置33を介して、余剰電力分のマイニングをマイニングマシン4に実行させる。ステップS505の処理を実行後、又はステップS504でNOの場合、仲介サーバ8は一連の処理を終了する。
【0142】
以上より、本実施の形態5によれば、余剰電力を好適に消費できると共に、余剰電力の売買を好適に行うことができる。
【0143】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
1 サーバ
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
141 発電設備DB
142 需給DB
143 系統DB
144 マイニングマシンDB
145 蓄電装置DB
146 電力価格DB
147 コンピュータDB
2 端末
31、32、33 制御装置
4 マイニングマシン(第1演算装置)
5 蓄電装置
6 汎用コンピュータ(第2演算装置)
7 利用者端末
8 仲介サーバ
9 事業者端末
S 系統
S1 上位系統
S2 下位系統
T 変電所
G 発電設備
C 需要家施設
P 電源
【要約】
制御方法は、電力系統(S)に供給される供給電力を示す供給情報と、前記電力系統(S)の系統容量を示す系統情報とを取得し、前記供給情報及び系統情報に基づき、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定し、前記系統容量を超過すると判定した場合、所定の分散型コンピューティングシステムを構成する演算装置(4)に、前記系統容量を超過する余剰電力が供給されるように制御する処理をコンピュータが実行する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
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