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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】液化ガス燃料船
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20220524BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220524BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20220524BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20220524BHJP
   B63J 2/08 20060101ALI20220524BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20220524BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B63B11/04 A
B63B25/16 D
B63B25/16 101Z
B63H21/14
B63H21/38 B
B63H21/38 C
B63J2/08 B
B63J2/08 C
F02B43/00 A
F02M21/02 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017094279
(22)【出願日】2017-05-10
(65)【公開番号】P2018188073
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 寿
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏始
(72)【発明者】
【氏名】船越 弘睦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴士
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-121401(JP,A)
【文献】特開2013-210148(JP,A)
【文献】特開2012-076561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191499(US,A1)
【文献】特表2009-541140(JP,A)
【文献】Nick Savvides 他,STVANGERFJORD:LNG ferry for Norway,SIGNIFICANT SHIPS OF 2013,英国,The Royal Institution of Naval Architects,2013年,第100~101頁及び図面
【文献】LNG study Visit onboard MS Stavangerfjord & to Norway,Maritime Development center of Europe,2013年,第1~32頁及び図面
【文献】Tim Knaggs 他,BERNHARD SCHULTE:9100m3 LPG tanker delivered by STX Busan,SIGNIFICANT SHIPS OF 2007,英国,The Royal Institution of Naval Architects,2007年,第22,24頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 11/04
B63B 25/16
B63H 21/14
B63H 21/38
B63J 2/08
F02B 43/00
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、
液化ガス燃料を貯留する液化ガス燃料タンクと、
前記液体燃料および前記液化ガス燃料の混焼により運転可能なエンジンと、
前記エンジンに前記液体燃料および/または前記液化ガス燃料を所望の割合で供給する燃料供給手段とを備え、
前記液体燃料タンクが船側および/または船底に沿って配置され
前記液化ガス燃料タンクが、半径rの円筒形状を呈し、前記液体燃料タンクの少なくとも1つが、前記液化ガス燃料タンクの外殻から前記半径r分離れた位置よりも内側であって、かつ前記液化ガス燃料タンクと船側外板との間の空間に位置する
ことを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項2】
液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、
液化ガス燃料を貯留する液化ガス燃料タンクと、
前記液体燃料および前記液化ガス燃料の混焼により運転可能なエンジンと、
前記エンジンに前記液体燃料および/または前記液化ガス燃料を所望の割合で供給する燃料供給手段とを備え、
前記液体燃料タンクが船側および/または船底に沿って配置され、
前記液化ガス燃料タンクが円筒形状を呈し、前記液化ガス燃料タンクに対面する前記液体燃料タンクの側壁が、前記液化ガス燃料タンクの円筒面に沿った傾斜面を有する
ことを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項3】
液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、
液化ガス燃料を貯留する液化ガス燃料タンクと、
前記液体燃料および前記液化ガス燃料の混焼により運転可能なエンジンと、
前記エンジンに前記液体燃料および/または前記液化ガス燃料を所望の割合で供給する燃料供給手段とを備え、
前記液体燃料タンクが船側および/または船底に沿って配置され、
前記液体燃料の硫黄分濃度をS1[%]、比重をγ1、前記液化ガス燃料の硫黄分濃度をS2[%]、比重をγ2、排出目標とする硫黄分濃度をS[%]とするとき、前記液体燃料タンクの容積と前記液化ガス燃料タンクの容積比が((S-S2)/γ1):((S1-S)/γ2)である
ことを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項4】
液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、
液化ガス燃料を貯留する液化ガス燃料タンクと、
前記液体燃料および前記液化ガス燃料の混焼により運転可能なエンジンと、
前記エンジンに前記液体燃料および/または前記液化ガス燃料を所望の割合で供給する燃料供給手段とを備え、
前記液体燃料タンクが船側および/または船底に沿って配置され、
前記液化ガス燃料タンクの容積と前記液体燃料タンクの容積の比率が2~13の範囲にある
ことを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項5】
前記液化ガス燃料タンクが船幅方向に少なくとも一対設けられ、前記液体燃料タンクの少なくとも1つが、前記一対の液化ガス燃料タンクの間に配置されることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項6】
前記液体燃料タンクが、前記液化ガス燃料タンクの支持構造が設置されるデッキよりも上方に位置することを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項7】
前記液体燃料タンクが、前記液化ガス燃料タンクの中心よりも下方に位置することを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項8】
前記液体燃料タンクの一部が、前記液化ガス燃料タンクの前端から後端までの一部に隣接することを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項9】
前記液体燃料が燃料油であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを主機関などの燃料として使用する液化ガス燃料船に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、船舶に関しても国際海事機関によりSOx排出規制が海域毎に段階的に進められている。SOxの排出量は燃料油の硫黄分濃度に比例するためSOx排出規制は、燃料油の硫黄分濃度(質量パーセント(%))により規制され、例えば、2015年1月1日から排出規制海域(ECA)に指定された海域での燃料油の硫黄分濃度の規制値は0.1%であり、同排出規制海域外の一般海域での規制値は3.5%である。このような海域毎のSOx排出規制への対応としては、主機関に2元燃料焚きディーゼルエンジンを採用し、海域毎に主機関の燃料を硫黄分濃度は高いが積載効率が高い重油と、硫黄分濃度が低いが積載効率が低い天然ガスとの間で切り換えることで、輸送効率や運航コストを維持することが考えられる。
【0003】
しかし、2020年または2025年以降には、一般海域(全海域)の燃料油の硫黄分濃度の規制値も0.5%にまで強化されるため、燃料の切り換えでは対応ができない。将来においては硫黄分を含まない燃料油、あるいは硫黄分濃度が規定値以下の燃料油を主機関や発電機関などの燃料とする必要があり、硫黄分を含まないLNG、液化エタン、LPGなどの液化ガス燃料や、メタノール、エタノールなどの代替燃料、または低硫黄燃料油を使用しなければならない。低硫黄燃料油は価格が高く供給量も不足する可能性があるため、硫黄分を含まないLNG、液化エタン、LPGなどの液化ガス燃料やメタノール、エタノールなどの代替燃料の利用が検討されている。
【0004】
一方、液化ガス燃料を貯蔵するには、タンク内を低温・高圧に維持する必要があるため、液化ガス燃料タンクには、耐圧、熱伸縮、防熱等の対策を施した特殊材料を用いた円筒形状の自立タンクが用いられる。そのため、液化ガス燃料タンクは、従来の燃料油タンクのように船体構造の隙間に配置することができず、従来貨物区画として利用していた空間が液化ガス燃料タンクによって占有され、貨物の積載能力が著しく低下する。特にLNG等は、比重が小さいため大きな容積の燃料タンクが必要になり貨物空間はさらに狭くなる。このような問題に対して、液化ガス燃料タンクをエンジンルームの上方の暴露甲板に配置する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-508916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、液化ガス燃料船が自動車運搬船やRO-RO船や客船の場合、エンジンルームの上部は貨物空間として利用しており、またその他の船種でも、エンジンルーム上方の暴露甲板上に居住区やエンジンケーシングがあり、燃料タンク設置スペースとして利用できる面積は限られる。そのため依然暴露甲板下に液化ガス燃料タンクのための広い空間を確保する必要があり、貨物区画を十分に確保できるとは言えない。また、液体燃料(例えば燃料油)と液化ガス燃料を混焼する場合、液体燃料と液化ガス燃料の両方のタンクを配置する必要があり、貨物区画はさらに減少する。
【0007】
本発明は、液化ガス燃料と液体燃料の両方を搭載して混焼させ、燃料油等の液体燃料を単独で燃焼させる場合よりもSOx排出量を低減しつつ、広い貨物区画を確保できる液化ガス燃料船を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液化ガス燃料船は、液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、液化ガス燃料を貯留する液化ガス燃料タンクと、液体燃料および液化ガス燃料の混焼により運転可能なエンジンと、エンジンに液体燃料および/または液化ガス燃料を所望の割合で供給する燃料供給手段とを備え、液体燃料タンクが船側および/または船底に沿って配置されることを特徴としている。
【0009】
液化ガス燃料タンクは、半径rの円筒形状を呈し、液体燃料タンクの少なくとも1つが、液化ガス燃料タンクの外殻から半径r分離れた位置よりも内側であって、かつ液化ガス燃料タンクと船側外板との間の空間に位置することが好ましい。
【0010】
例えば、液化ガス燃料タンクは船幅方向に少なくとも一対設けられ、液体燃料タンクの少なくとも1つが、一対の液化ガス燃料タンクの間に配置される。液体燃料タンクは、例えば液化ガス燃料タンクの支持構造が設置されるデッキよりも上方に位置する。また、液体燃料タンクは、例えば液化ガス燃料タンクの中心よりも下方に位置する。液体燃料タンクの一部は、例えば液化ガス燃料タンクの前端から後端までの一部に隣接する。
【0011】
液化ガス燃料タンクは円筒形状を呈し、液化ガス燃料タンクに対面する液体燃料タンクの側壁が、液化ガス燃料タンクの円筒面に沿った傾斜面を有する。液体燃料は、例えば燃料油である。
【0012】
また、液体燃料の硫黄分濃度をS1[%]、比重をγ1、液化ガス燃料の硫黄分濃度をS2[%]、比重をγ2、排出目標とする硫黄分濃度をS[%]とするとき、液体燃料タンクの容積と液化ガス燃料タンクの容積比が((S-S2)/γ1):((S1-S)/γ2)であることが好ましい。また、液化ガス燃料タンクの容積と液体燃料タンクの容積の比率(液化ガス燃料タンク容積/液体燃料タンク容積)が、2~13の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液化ガス燃料と液体燃料の両方を搭載して混焼させ、燃料油等の液体燃料を単独で燃焼させる場合よりもSOx排出量を低減しつつ、広い貨物区画を確保できる液化ガス燃料船を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である液化ガス燃料船の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の液化ガス燃料船の側面図(a)、横断面図(b)、平面図(c)である。
図3図2(b)の拡大図である。
図4図3の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である液化ガス燃料船の燃料供給システムの構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施形態の液化ガス燃料船10(図2参照)は、例えば主機関12に2元燃料焚きディーゼルエンジンを採用する自動車運搬船やコンテナ船、RO-RO船、貨物船、客船など暴露甲板下の閉鎖区画に積荷や人員を配置するスペースを広く設けた船舶である。主機関12の燃料には、第1燃料として燃料油(例えば、軽油、A~C重油など)などの液体燃料(常温で液体の燃料)、第2燃料として液化ガス(LNG、液化エタン、LPGなど)などの液化ガス燃料が用いられ、燃料供給システム11を通して液体燃料および/または液化ガス燃料が主機関12へと供給される。
【0017】
燃料油は、燃料油タンク(第1燃料タンク)14に蓄えられ、燃料油タンク14内に貯蔵される燃料油は、燃料供給ポンプ16により燃料油ヒータ18へと送出され、燃料油ヒータ18において温められた後、燃料油噴射バルブ20から主機関12の各気筒内に所定のタイミングで噴射される。一方、液化ガス燃料は、液化ガス燃料タンク(第2燃料タンク)22に蓄えられ、液化ガス燃料タンク22内の液化ガスは、ガス燃料供給システム24において加圧・気化され、ガスバルブトレイン26を介して、ガス燃料噴射バルブ28から主機関12の各気筒内へと所定のタイミングで噴射される。
【0018】
燃料油噴射バルブ20およびガス燃料噴射バルブ28の燃料噴射時間は、燃料供給制御部30により制御され、これにより主機関12への燃料油および液化ガス燃料の供給量X、Y[kg/h]がそれぞれ制御される。すなわち、燃料供給制御部30は、主機関要求値Z[kJ/h]と、燃料油の硫黄分濃度S1[%]、発熱量A[kJ/kg]と、液化ガス燃料の硫黄分濃度S2[%]、発熱量B[kJ/kg]と、目標硫黄分濃度S[%]とに基づき、燃料供給量X、Yをそれぞれ算出し、同値に基づいて燃料油噴射バルブ20およびガス燃料噴射バルブ28の燃料噴射時間を制御する。なお、ここでの硫黄分濃度は質量パーセントである。
【0019】
ここで、燃料油の硫黄分濃度S1[%]、発熱量A[kJ/kg]と液化ガス燃料の硫黄分濃度S2[%]、発熱量B[kJ/kg]は、各燃料購入時に入手される値であり、目標硫黄分濃度S[%]は、海域毎の規制値等により設定される値である。これらの値は、例えば主機関運転前に燃料供給制御部30に設定される。また、主機関要求値Z[kJ/h]は、主機関制御における主機関12の出力から決定される値であり、例えば主機関12の制御部から入力される。
【0020】
主機関12の出力は、燃料油により供給される単位時間当たりの熱量:A[kJ/kg]・X[kg/h]と、液化ガス燃料により供給される単位時間当たりの熱量:B[kJ/kg]・Y[kg/h]の和になる。したがって、両燃料の供給により主機関要求値Z[kJ/h]を満たすには、燃料油の供給量Xおよび液化ガス燃料の供給量Yは、次の(1)式を満たす必要がある。
Z=A・X+B・Y (1)
【0021】
また、主機関要求値Z[kJ/h]に対応する出力において、規制値である目標硫黄分濃度S[%]を満たすには、燃料油の供給量Xおよび液化ガス燃料の供給量Yが、次の(2)式を満たす必要がある。
S≧(混合燃料硫黄分質量)/(混合燃料全質量)
≧(S1・X+S2・Y)/(X+Y) (2)
【0022】
ここでS2<S<S1とすると、(1)、(2)式から、
X≦Z・(S-S2)/(B・(S1-S)+A・(S-S2)) (3)
Y≧Z・(S1-S)/(B・(S1-S)+A・(S-S2)) (4)
となる。
【0023】
例えば(3)、(4)式において等号が成り立つとき、すなわち硫黄分濃度を規制値ぎりぎりに設定する場合、燃料油と液化ガス燃料の供給量比X:Yは、
X:Y=S-S2:S1-S
となる。また、このときに必要な燃料油と液化ガス燃料の容積比V1:V2は、
V1:V2=((S-S2)/γ1):((S1-S)/γ2) (5)
となる。ここでγ1は燃料油の比重、γ2は液化ガス燃料の比重である。
燃料油タンクと液化ガス燃料タンクの容積比を(5)式にすると、両タンク容積は、両燃料にとって過不足のない最適な割合となる。
【0024】
例えば、(5)式を用いると、目標硫黄分濃度を0.5%とする場合、燃料油タンクと液化ガス燃料タンクの最適な容積割合は次の通りとなる。重油(密度約980kg/m、硫黄分濃度3.5%)が積載可能な燃料油タンクとLNG燃料(密度約450kg/m、硫黄分濃度0%)が積載可能な液化ガス燃料タンクの最適な容積比は約1:13となる。また、重油(密度約900kg/m、硫黄分濃度1.0%)が積載可能なタンクとLNG燃料(密度約450kg/m、硫黄分濃度0%)が積載可能な液化ガス燃料タンクの最適な容積比は約1:2となる。これらのことから「液化ガス燃料タンク容積」と「燃料油タンク容積の比率(液化ガス燃料タンク容積/燃料油タンク容積)は、概ね2~13の範囲にあることが好ましい。
【0025】
次に図2を参照して、燃料油タンク14および液化ガス燃料タンク22の配置およびその容積について説明する。なお図2は、液化ガス燃料船10の側面図(図2(a))、横断面図(図2(b))、平面図(図2(c))である。図2(b)は、液化ガス燃料タンク22の略中心を通る図2(a)のI-I横断面図、図2(c)は液化ガス燃料タンク22の略中心を通る図2(a)のII-II断面の平面図である。なお、図2(b)の拡大図を図3に示す。また、図4に変形例を示す。
【0026】
図2では、液化ガス燃料船10として自動車運搬船を例に説明を行なう。図2に示されるように、自動車運搬船10では、船尾部のフリーボードデッキ32の下方に、主機関12が設置された機関室34が設けられ、フリーボードデッキ32よりも上方の船体区画36A、36B、および液化ガス燃料タンク22の前方の船体区画36Cは、略全て自動車搭載区画36として使用される。また船体の最上部の船首側に居住区画38が配置される。なお機関室34には、主機関12の他にも、燃料油および/または液化ガスを燃料として消費する発電機関やボイラなどの設備が配置される。
【0027】
液化ガス燃料タンク22は、例えば機関室34に隣接する船首側の区画40に配置され、図3では、船体に対して左右対称に配置されている。各液化ガス燃料タンク22には、例えば半径rの円筒タンクが採用される。一方、燃料油タンク14(141、142)は、液化ガス燃料タンク22と船側外板に沿って設けられたボイドスペース(あるいはコファダム)42との間の空間、または、図4の変形例に示されるように一対の液化ガス燃料タンク22の間の空間に配置される。すなわち、図3のように船体の左右に配置される燃料油タンク141は、ビルジ近傍の両船側に沿って左右の液化ガス燃料タンク22の斜め下に配置され、図4のように船体中央に配置される燃料油タンク142は、船底に沿って液化ガス燃料タンク22の間に配置される。なお、図3の燃料油タンク141、図4の燃料油タンク142の両者を共に設ける構成とすることもできる。
【0028】
図3に示されるように、左右の燃料油タンク141は、液化ガス燃料タンク22の外殻から半径r分離れた位置よりも内側にあって、かつ液化ガス燃料タンク22と船側外板との間の空間に位置することが望ましい。また、図3図4に示されるように、左右および中央の燃料油タンク141、142は、共に液化ガス燃料タンク22の支持構造44が設置されるデッキよりも上方に位置するとともに、液化ガス燃料タンク22の中心よりも下方に位置することが望ましい。更に、燃料油タンク14の一部は、液化ガス燃料タンク22の前端から後端までの一部に隣接する。また、液化ガス燃料タンク22に対面する燃料油タンク14の側壁を液化ガス燃料タンク22の円筒面に沿った傾斜面とすることで燃料油タンク141、142の容積を拡大し、スペースを更に有効利用することができる。
【0029】
例えば、重油(HFO)(発熱量40.6MJ/kg、密度約980kg/m、硫黄分濃度3.5%)のみを燃料としたこれまで往復航海において約4,000mの重油を必要としていた場合、これを全て液化ガス燃料であるLNG燃料(発熱量50MJ/kg、密度約450kg/m、硫黄分濃度0%)に置き換えると、約7,100m(4000[m]×40.6[MJ/kg]/50[MJ/kg]×980[kg/m]/450[kg/m])のタンク容量が必要になる。しかし、本実施形態のように、燃料油と液化ガス燃料を混焼する場合、例えば燃料油として重油(DO)(発熱量42.7MJ/kg、密度約980kg/m、硫黄分濃度1.0%)を採用し、これを上記LNG燃料(発熱量50MJ/kg、密度約450kg/m、硫黄分濃度0%)と略1:1の割合で混焼すると排出硫黄分濃度は0.5%以下となり、このとき燃料油タンク14に必要な容積は約1,900m、液化ガス燃料タンク22に必要な容積は約3,800mとなる。
【0030】
これにより、燃料油タンク14は、重油のみを使用する従来の約4,000mから約1,900mと半分以下となり、液化ガス燃料タンク22も、LNGのみを使用する場合の約7,100mから約3,800mへと半分程度となる。また燃料油タンク14と液化ガス燃料タンク22を合せた燃料タンクの容積も、約5,700m(=約1,900m+約3,800m)と、LNGのみを使用する場合よりも約1,400m小さくなる。
【0031】
すなわち、燃料にLNGのみを使用する場合には、図2の液化ガス燃料タンク22に比べ倍程度のタンク容量が必要となるため、液化ガス燃料タンク22の船首側に更に一対の円筒液化ガス燃料タンクを配置するとともに、液化ガス燃料タンク22に対応する船尾側の円筒タンクの径も大きくする必要がある(船首側は船尾側に比べ船幅が狭く船尾側ほど径の大きなタンクを設置できない)。図2において、区画36B、36Cは、液化ガスのみを燃料とした場合に、増加する液化ガス燃料タンクにより貨物区画に使用できなくなる区画を示す。
【0032】
図2の例では、燃料油と液化ガス燃料の混焼を採用することにより、液化ガス燃料タンクの容積を半分以下とすることで、船尾側にのみ液化ガス燃料タンク22を配置し、液化ガス燃料タンクの前方の船体区画36Cを自動車搭載区画(貨物区画)として確保し、更に、液化燃料タンク22の径を小さくすることで、タンク上方の船体区画36Bも自動車搭載区画(貨物区画)として確保している。また、本実施形態では、重油のみを燃料としていた従来船舶に比べ燃料油タンクの容積も半減しているため、液化ガス燃料タンク22のためのスペースも簡単に確保できる。そして燃料油は、常温で液体であるため、燃料油タンク14の形状や配置に制限がなく、船体と同一材料で構成できるので、船体内の空いているスペースに配置することができるので、より広い貨物区画の確保が容易にできる。
【0033】
以上のように、本実施形態の液化ガス燃料船では、容積効率が相対的に高く硫黄分濃度が高い液体燃料と、容積効率が相対的に低く硫黄分濃度が低い液化ガス燃料を混焼して使用することで、SOx排出規制値以下に排出硫黄分濃度を抑えながらも、貨物区画を広く確保することができる。
【0034】
また、液体燃料の供給量と、液化ガス燃料の供給量を制御することで、主機関要求値に合わせることができ、更に、液体燃料と液化ガス燃料を混焼することで合計硫黄部濃度を規定(目標)値以下にすることができる。また、本実施形態によれば、円筒形の液化ガス燃料タンクと船体構造の間に、液体燃料タンクを液化ガス燃料タンクに沿って配置することで、空きスペースをできるだけ少なくすることができる。更に本実施形態では、前述のSOx排出規制が始まるまでの間は、燃料油タンクに積載した燃料油のみを使用することもできる。
【0035】
なお、本実施形態では第2燃料である液化ガス燃料としてLNG燃料を例に説明したが、これに代えてメタノールやエタノール等の代替燃料を第2燃料として用いてもよい。また、本実施形態では1種類の液体燃料、1種類の液化ガス燃料を利用したが、それぞれに対して2種以上の燃料を採用することもでき、3種以上の燃料の中の一部の複数種類を同時選択的に使用する構成とすることもできる。例えば低硫黄燃料油、高硫黄燃料油の両方を積載するなどすることで、より価格の安い燃料を優先して使用することも可能である。
【0036】
また、本発明では、燃料油噴射バルブやガス燃料噴射バルブなどの燃料噴射装置の動作を燃料供給制御部で自動制御したが、各燃料噴射装置の制御パラメータを表示器等の出力装置に出力し、同出力を参照した作業員が各燃料噴射装置の制御パラメータを設定する構成や、計算にて得られた燃料割合に応じてエンジンの制御装置に燃料油もしくは液化ガス燃料の燃料割合を入力する構成とすることもできる。
【0037】
本実施形態では、液化ガス燃料タンクを円筒タンクとして説明したが、タンクは円筒に限定されるものではなく、また多筒タンクであってもよい。また液化ガス燃料タンクを機関室から離れて配置することもでき、その場合、液化ガス燃料タンクと機関室との間に燃料油タンクや貨物区画を配置してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 液化ガス燃料船
11 燃料供給システム
12 主機関
14 燃料油タンク(第1燃料タンク)
16 燃料供給ポンプ
20 燃料油噴射バルブ
22 液化ガス燃料タンク(第2燃料タンク)
24 ガス燃料供給システム
26 ガスバルブトレイン
28 ガス燃料噴射バルブ
30 燃料供給制御部
32 フリーボードデッキ
34 機関室
36 自動車搭載区画(貨物区画)
38 居住区
42 ボイドスペース(あるいはコファダム)
図1
図2
図3
図4