(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】フードロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/24 20140101AFI20220524BHJP
B62D 25/12 20060101ALI20220524BHJP
E05B 85/24 20140101ALI20220524BHJP
E05C 3/24 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E05B83/24 A
B62D25/12 N
E05B85/24
E05C3/24
(21)【出願番号】P 2019109674
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久美子
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-9393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0066461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B62D 25/12
E05C 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されており、前記車体に対して開閉されるフードに設けられたストライカが前記フードの閉動作に応じて進入するストライカ溝を有するベースプレートと、
前記ストライカ溝の全閉位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを全閉状態に保持するプライマリラッチと、
前記ストライカ溝の前記全閉位置よりも開口側の半開位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを半開状態に保持するセカンダリラッチと、
を備え、
前記セカンダリラッチは、
前記ベースプレートに対して回動可能であり、回動に応じて、前記ストライカを係止する係止部を前記ストライカ溝に進出させ又は前記ストライカ溝から後退させる鋼製のラッチ本体と、
前記係止部が前記ストライカ溝から後退するアンラッチ方向に前記ラッチ本体を回動させる操作が入力される樹脂製のハンドルと、
を有し、
前記ラッチ本体は、
前記係止部が前記ストライカ溝から後退している場合に、前記半開位置を越えて前記全閉位置に移動する前記ストライカと係合し、前記ストライカによって前記アンラッチ方向とは逆のラッチ方向に押圧される強制噛み合い部と、
前記強制噛み合い部に隣設されており、前記ハンドルが装
着される装着部と、
を有
し、
前記ハンドルは、前記装着部に接続される接続部を有し、
前記装着部は、前記セカンダリラッチの回動軸の径方向に延在しており、
前記接続部は、前記セカンダリラッチの回動軸の径方向から前記装着部に接続されるフードロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のフードロック装置であって
、
前記接続部は、
前記装着部が差し込まれるスロットと、
前記スロットの内側に突出する凸部が設けられた弾性片と、
を有し、
前記装着部は、前記凸部が嵌合する凹部を有するフードロック装置。
【請求項3】
車体に固定されており、前記車体に対して開閉されるフードに設けられたストライカが前記フードの閉動作に応じて進入するストライカ溝を有するベースプレートと、
前記ストライカ溝の全閉位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを全閉状態に保持するプライマリラッチと、
前記ストライカ溝の前記全閉位置よりも開口側の半開位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを半開状態に保持するセカンダリラッチと、
を備え、
前記セカンダリラッチは、
前記ベースプレートに対して回動可能であり、回動に応じて、前記ストライカを係止する係止部を前記ストライカ溝に進出させ又は前記ストライカ溝から後退させる鋼製のラッチ本体と、
前記係止部が前記ストライカ溝から後退するアンラッチ方向に前記ラッチ本体を回動させる操作が入力される樹脂製のハンドルと、
を有し、
前記ラッチ本体は、
前記係止部が前記ストライカ溝から後退している場合に、前記半開位置を越えて前記全閉位置に移動する前記ストライカと係合し、前記ストライカによって前記アンラッチ方向とは逆のラッチ方向に押圧される強制噛み合い部と、
前記強制噛み合い部に隣設されており、前記ハンドルが装着される装着部と、
を有し、
前記ハンドルは、
前記ベースプレートに沿って前記装着部に接続される接続部と、
前記接続部から前記ベースプレートと交差する方向に延びる柄と、
前記柄の先端部に設けられている操作入力部と、
を有し、
前記接続部には、前記ベースプレートに向けて突出する突出部が設けられているフードロック装置。
【請求項4】
請求項3記載のフードロック装置であって、
前記ハンドルは、前記柄と反対側で前記接続部から延出する第1延出部を有し、
前記第1延出部は、前記装着部の前記ベースプレート側に沿って、前記接続部と前記装着部との接続方向に延びているフードロック装置。
【請求項5】
請求項3記載のフードロック装置であって、
前記ハンドルは、前記柄と反対側で前記接続部から延出する第2延出部を有し、
前記第2延出部は、前記装着部の前記ベースプレート側とは反対側に沿って、前記接続部と前記装着部との接続方向に延びているフードロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フードロック装置は、自動車等の車両に用いられ、フードに設けられたストライカを係止することによってフードを保持するものである。この種のフードロック装置として、フードを全閉状態に保持するプライマリラッチと、フードを半開状態に保持するセカンダリラッチとを備えるフードロック装置が知られている。セカンダリラッチは、プライマリラッチによるフードの保持が車両走行時に誤って解除された場合に、フードが全開されることを阻止する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セカンダリラッチには解除ハンドルが設けられ、解除ハンドルは、半開状態のフードと車体との間に生じる隙間を通して操作される。したがって、解除ハンドルの形状は車種(車両のタイプ、大きさ等)によって異なる。しかし、フードロック装置の製造コストを削減する観点から、セカンダリラッチの統一化が望まれる。
【0005】
特許文献1に記載されたフードロック装置では、フードを半開状態に保持するロックレーバ(セカンダリラッチ)は、ストライカを係止するフックを有するレバー部と、操作部とを備える。レバー部と操作部とは、どちらも合成樹脂からなり、互いに別の部材によって構成されている。車種ごとに異なる操作部がレバー部に装着され、レバー部は複数の車種に共通して用いられる。しかし、レバー部と操作部とが互いに別の部材によって構成される場合に、フードが開閉される度に、衝撃がレバー部及び操作部の接続部に繰り返し作用し、接続部の破損が懸念される。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、耐久性に優れるフードロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様のフードロック装置は、車体に固定されており、前記車体に対して開閉されるフードに設けられたストライカが前記フードの閉動作に応じて進入するストライカ溝を有するベースプレートと、前記ストライカ溝の全閉位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを全閉状態に保持するプライマリラッチと、前記ストライカ溝の前記全閉位置よりも開口側の半開位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを半開状態に保持するセカンダリラッチと、を備え、前記セカンダリラッチは、前記ベースプレートに対して回動可能であり、回動に応じて、前記ストライカを係止する係止部を前記ストライカ溝に進出させ又は前記ストライカ溝から後退させる鋼製のラッチ本体と、前記係止部が前記ストライカ溝から後退するアンラッチ方向に前記ラッチ本体を回動させる操作が入力される樹脂製のハンドルと、を有し、前記ラッチ本体は、前記係止部が前記ストライカ溝から後退している場合に、前記半開位置を越えて前記全閉位置に移動する前記ストライカと係合し、前記ストライカによって前記アンラッチ方向とは逆のラッチ方向に押圧される強制噛み合い部と、前記強制噛み合い部に隣設されており、前記ハンドルが着脱可能に装着される装着部と、を有し、前記ハンドルは、前記装着部に接続される接続部を有し、前記装着部は、前記セカンダリラッチの回動軸の径方向に延在しており、前記接続部は、前記セカンダリラッチの回動軸の径方向から前記装着部に接続される。
本発明の第2態様のフードロック装置は、車体に固定されており、前記車体に対して開閉されるフードに設けられたストライカが前記フードの閉動作に応じて進入するストライカ溝を有するベースプレートと、前記ストライカ溝の全閉位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを全閉状態に保持するプライマリラッチと、前記ストライカ溝の前記全閉位置よりも開口側の半開位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを半開状態に保持するセカンダリラッチと、を備え、前記セカンダリラッチは、前記ベースプレートに対して回動可能であり、回動に応じて、前記ストライカを係止する係止部を前記ストライカ溝に進出させ又は前記ストライカ溝から後退させる鋼製のラッチ本体と、前記係止部が前記ストライカ溝から後退するアンラッチ方向に前記ラッチ本体を回動させる操作が入力される樹脂製のハンドルと、を有し、前記ラッチ本体は、前記係止部が前記ストライカ溝から後退している場合に、前記半開位置を越えて前記全閉位置に移動する前記ストライカと係合し、前記ストライカによって前記アンラッチ方向とは逆のラッチ方向に押圧される強制噛み合い部と、前記強制噛み合い部に隣設されており、前記ハンドルが着脱可能に装着される装着部と、を有し、前記ハンドルは、前記ベースプレートに沿って前記装着部に接続される接続部と、前記接続部から前記ベースプレートと交差する方向に延びる柄と、前記柄の先端部に設けられている操作入力部と、を有し、前記接続部には、前記ベースプレートに向けて突出する突出部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐久性に優れ、コストの低減が可能なフードロック装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、フードロック装置の一例の正面図である。
【
図3】
図1のフードロック装置のセカンダリラッチの正面図である。
【
図4】
図3のセカンダリラッチのIV-IV断面図である。
【
図5】
図3のセカンダリラッチに発生するモーメントの模式図である。
【
図6】
図3のセカンダリラッチに発生するモーメントの模式図である。
【
図7】
図3のセカンダリラッチの変形例の正面図である。
【
図8】
図7のセカンダリラッチに発生するモーメントの模式図である。
【
図9】
図7のセカンダリラッチに発生するモーメントの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2は、本発明の実施形態を説明するための、フードロック装置の一例を示す。
【0011】
フードロック装置1は、例えば車両のエンジンルームに設置され、エンジンルームのフードに設けられたストライカSを係止することによってフードを保持する。このフードロック装置1は、ベースプレート2と、プライマリラッチ3と、ラチェット4と、セカンダリラッチ5とを備える。
【0012】
ベースプレート2は、板状の本体部20と、車体に固定される左右一対の固定部21とを有する。本体部20にはストライカ溝22が設けられており、ストライカSは、フードの閉動作に応じてストライカ溝22に進入し、また、フードの開動作に応じてストライカ溝22から脱出する。
【0013】
プライマリラッチ3は、ベースプレート2の本体部20の第1面側に配置されている。プライマリラッチ3は、本体部20に立設されたラッチ軸30によって回動可能に支持されており、
図1において実線で示されるプライマリラッチ位置と、
図1において一点鎖線で示されるプライマリアンラッチ位置との間で回動される。そして、プライマリラッチ3は、コイルばね31及びトーションばね32により、プライマリアンラッチ位置に向けて矢印A方向に付勢されている。
【0014】
プライマリラッチ3は、ストライカSを係止する係止溝33を有する。プライマリラッチ3がプライマリアンラッチ位置に置かれている場合に、係止溝33の開口はベースプレート2のストライカ溝22と重なっている。この場合に、ストライカSは、ストライカ溝22及び係止溝33に進入可能であり、また、ストライカ溝22及び係止溝33から脱出可能である。
【0015】
係止溝33はストライカ溝22と交差する方向に延びており、ストライカ溝22及び係止溝33に進入したストライカSは、係止溝33の一方の側壁を押圧しつつストライカ溝22の奥部に向けて移動する。ストライカSによって押圧されたプライマリラッチ3は、プライマリラッチ位置に向けて回動される。プライマリラッチ3がプライマリラッチ位置に向けて回動されることにより、係止溝33の開口がストライカ溝22の一方の側壁によって閉じられる。ストライカSは、ストライカ溝22の両側壁及び係止溝33の両側壁によって四方を拘束される。
【0016】
プライマリラッチ位置に置かれたプライマリラッチ3は、ラチェット4と係合することにより、コイルばね31及びトーションばね32の付勢に抗してプライマリラッチ位置に保持される。係止溝33の開口端部には、ラチェット4と係合する係合部34が設けられている。
【0017】
ラチェット4は、ベースプレート2の本体部20の第1面側に配置されている。ラチェット4は、本体部20に立設されたラチェット軸40によって回動可能に支持されており、
図1において実線で示されるロック位置と、
図1において二点鎖線で示されるアンロック位置との間で回動される。そして、ラチェット4は、コイルばね41により、ロック位置に向けて矢印B方向に付勢されている。
【0018】
ラチェット4は、プライマリラッチ3の係合部34と係合する係合部42を有する。プライマリラッチ3がプライマリラッチ位置に達した際に、コイルばね41によって付勢されたラチェット4が自動的にロック位置に向けて回動され、ロック位置に置かれたラチェット4は、係合部42を係合部34に係合させる。係合部34と係合部42とが係合することにより、プライマリラッチ3のプライマリアンラッチ位置に向けた回動が阻止され、プライマリラッチ3がプライマリラッチ位置に保持される。ストライカSは、ストライカ溝22の両側壁及び係止溝33の両側壁によって四方を拘束され、ストライカ溝22の奥部における全閉位置に係止される。これにより、フードが全閉状態に保持される。
【0019】
ラチェット4は、図示しないワイヤを介して車両の室内に設けられるフードレバーに連結されており、フードレバーの操作に応じてアンロック位置に向けて回動される。ラチェット4がアンロック位置に向けて回動されると、係合部32と係合部41との係合が解除される。コイルばね31及びトーションばね32によって付勢されているプライマリラッチ3は、プライマリアンラッチ位置に向けて回動され、回動される際にストライカSをストライカ溝22の開口側に押し上げる。これにより、フードがポップアップされる。
【0020】
セカンダリラッチ5は、ベースプレート2の本体部20の第2面側に配置されている。セカンダリラッチ5は、鋼製のラッチ本体50と、樹脂製のハンドル51とを備える。ラッチ本体50は、本体部20に立設されたセカンダリラッチ軸52によって回動可能に支持されており、
図2において実線で示されるセカンダリラッチ位置と、
図2において一点鎖線で示されるセカンダリアンラッチ位置との間で回動される。そして、セカンダリラッチ5は、トーションばね53により、セカンダリラッチ位置に向けて矢印C方向に付勢されている。ハンドル51は、ラッチ本体50に装着されており、ラッチ本体50と一体に回動される。
【0021】
ラッチ本体50は、ストライカSを係止するフック部(係止部)54を有する。ラッチ本体50がセカンダリラッチ位置に置かれる場合に、フック部54は、ストライカ溝22の開口に進出する。一方、ラッチ本体50がセカンダリアンラッチ位置に置かれる場合には、フック部54は、ストライカ溝22の開口から後退する。トーションばね53によって付勢されたラッチ本体50は、基本的にセカンダリラッチ位置に置かれており、フック部54は、基本的にストライカ溝22の開口に進出している。
【0022】
ストライカSがフードの閉動作に応じてストライカ溝22に進入する以前に、ストライカSはフック部54の外面に当接する。フック部54の外面はストライカSの移動方向に対して傾いており、ラッチ本体50は、ストライカSによって押圧され、アンラッチ方向(セカンダリラッチ位置からセカンダリアンラッチ位置に向かう方向)に回動される。これにより、フック部54がストライカ溝22の開口から後退し、ストライカSがストライカ溝22に進入可能となる。そして、ストライカSがストライカ溝22に進入すると、トーションばね53によって付勢されたラッチ本体50は、ラッチ方向(セカンダリアンラッチ位置からセカンダリラッチ位置に向かう方向)に回動され、再びセカンダリラッチ位置に置かれる。この後、フードがポップアップされると、ストライカ溝22の開口側に押し上げられるストライカSが、ストライカ溝22の開口に進出しているフック部54の内面に当接し、ストライカ溝22の開口部における半開位置に係止される。これにより、フードが半開状態に保持される。
【0023】
ラッチ本体50は、強制噛み合い部55をさらに有する。ラッチ本体50がセカンダリアンラッチ位置に固着されてしまった場合に、強制噛み合い部55は、フードの閉動作に応じてラッチ本体50をラッチ方向に強制的に回動させる。強制噛み合い部55は、フック部54とは逆に、ラッチ本体50がセカンダリアンラッチ位置に置かれる場合にストライカ溝22の中間部に進出し、ラッチ本体50がセカンダリアンラッチ位置に置かれる場合にストライカ溝22の中間部から後退する。
【0024】
ラッチ本体50がセカンダリアンラッチ位置に置かれているものとして、フードの閉動作に応じてストライカ溝22に進入したストライカSは、ストライカ溝22の中間部に進出している強制噛み合い部55を押圧しつつストライカ溝22の奥部に向けて移動する。ストライカSによって押圧されたラッチ本体50は、ラッチ方向に回動される。これにより、フック部54がストライカ溝22の開口に進出する。この後、フードがポップアップされると、フードはラッチ本体50によって半開状態に保持される。
【0025】
ハンドル51には、ラッチ本体50をアンラッチ方向に回動させる操作が入力される。フードが半開状態に保持されている状態でハンドル51が操作され、ラッチ本体50がアンラッチ方向に回動されると、フック部54がストライカ溝22の開口から後退し、フック部54とストライカSとの係合が解除される。これにより、フードが全開可能となる。ハンドル51は、ラッチ本体50の装着部56に装着されており、装着部56は、ベースプレート2の本体部20に沿って、強制噛み合い部55から舌片状に延びている。ハンドル51は、ラッチ本体50の装着部56に接続される接続部60を有する。
【0026】
フードが閉じられる際に、フードの閉速度が過大であると、ラッチ本体50は、ストライカSとフック部54との当接に基づいてアンラッチ方向に回動され、直後に、トーションばね53ではなく、ストライカSと強制噛み合い部55との当接に基づいてラッチ方向に強制的に回動される。ストライカSと強制噛み合い部55とが当接した瞬間、ラッチ本体50及びハンドル51の回動方向はアンラッチ方向からラッチ方向に反転され、ハンドル51の接続部60に衝撃が作用する。
【0027】
ここで、ハンドル51の回動方向がアンラッチ方向からラッチ方向に反転される際の回転運動は、ストライカSと当接した強制噛み合い部55を中心とする回転運動と見做すことができる。ハンドル51の運動エネルギーは、強制噛み合い部55からの距離に関連し、接続部60が接続されている装着部56は、強制噛み合い部55に隣設されている。したがって、ハンドル51の回動方向を反転させるために必要な運動エネルギーが可及的に小さくなり、接続部60に作用する衝撃が緩和される。これにより、フードロック装置1の耐久性が高まる。
【0028】
【0029】
ハンドル51は、接続部60から延びる柄61を有する。
【0030】
接続部60は、舌片状の装着部56が差し込まれるスロット62を有する。装着部56は、ベースプレート2の本体部20に沿って延びており、したがって、接続部60は、本体部20に沿って装着部56に接続される。スロット62を囲む壁部のうちベースプレート2の本体部20に対向して配置される壁部63には、弾性片64が設けられている。弾性片64は、略V字状の切り込みによって区分された壁部63の一部であり、弾性片64の基端部は壁部63に接続されている。弾性片64の先端部には、スロット62の内側に突出する凸部65が設けられており、スロット62に差し込まれる装着部56には、凹部57が設けられている。装着部56がスロット62に差し込まれ、凸部65と凹部57とが嵌合することにより、接続部60は装着部56に固定的に接続される。
【0031】
柄61は、接続部60に対して略直角に折れており、したがって、ベースプレート2の本体部20と交差する方向に延びている。柄61の先端部には操作入力部67が設けられており、操作入力部67は、フードロック装置1がエンジンルームに設置された状態で下方に向く入力面を有する。なお、柄61の延在方向、長さ等の形状、操作入力部67の入力面の向きは、フードロック装置1が適用される車種に応じて適宜設定される。
【0032】
図5及び
図6に示すように、接続部60と操作入力部67とが柄61を介して離れていることに起因して、操作入力部67に入力される操作力Fのうち軸線Xに垂直な成分Faは、軸線Xを中心とする捩じりモーメントMaを発生させる。また、操作力Fのうち軸線Xに平行な成分Fbは、曲げモーメントMbを発生させる。捩じりモーメントMa及び曲げモーメントMbは、接続部60が破損する要因となり得る。ここで、軸線Xは、嵌合した凸部65及び凹部57を通り、装着部56と接続部60との接続方向に延びる線である。捩じりモーメントMa及び曲げモーメントMbに対して、ハンドル51は、突出部70と、第1延出部71とを有する。
【0033】
突出部70は、接続部60の壁部63(
図3、
図4参照)に設けられており、ベースプレート2の本体部20に向けて突出している。接続部60の壁部63とベースプレート2の本体部20との間隔が突出部70によって狭くなっている。捩じりモーメントMaに起因して軸線Xを中心とする捩じれが接続部60に生じた場合に、突出部70はベースプレート2の本体部20に当接する。これにより、接続部60の捩じれが軽減され、接続部60の破損が抑制される。なお、複数の突出部70が壁部63に設けられてもよい。
【0034】
第1延出部71は、柄61とは反対側で接続部60から延出しており、ラッチ本体50の装着部56のベースプレート2側に沿って、装着部56と接続部60との接続方向に延びている。曲げモーメントMbに起因して、接続部60の柄61側がベースプレート2に向けて沈み込む曲げが接続部60に生じた場合に、第1延出部71が装着部56に当接する。これにより、接続部60の曲げが軽減され、接続部60の破損が抑制される。
【0035】
【0036】
図7に示すハンドル151は、ラッチ本体50の装着部56に接続される接続部160と、接続部160から延びる柄161とを有する。接続部160は、
図3及び
図4に示したハンドル51の接続部60と同様に構成されており、装着部56が差し込まれるスロットと、弾性片164とを有し、弾性片164の先端部には、装着部56の凹部57に嵌合する凸部が設けられている。
【0037】
柄161は、接続部160に対して略直角に折れており、したがって、ベースプレート2の本体部20と交差する方向に延びている。柄161の先端部には操作入力部167が設けられており、操作入力部167は、フードロック装置1がエンジンルームに設置された状態で側方に向く入力面を有する。
【0038】
図8及び
図9に示すように、接続部160と操作入力部167とが柄161を介して離れていることに起因して、操作入力部167に入力される操作力Fのうち軸線Xに垂直な成分Faは、軸線Xを中心とする捩じりモーメントMaを発生させ、操作力Fのうち軸線Xに平行な成分Fcは、曲げモーメントMcを発生させる。捩じりモーメントMa及び曲げモーメントMcに対して、ハンドル151は、突出部170と、第2延出部171とを有する。
【0039】
突出部170は、接続部160の壁部163(
図7参照)に設けられており、ベースプレート2の本体部20に向けて突出している。接続部160の壁部163とベースプレート2の本体部20との間隔が突出部170によって狭くなっている。捩じりモーメントMaに起因して軸線Xを中心とする捩じれが接続部160に生じた場合に、突出部170はベースプレート2の本体部20に当接する。これにより、接続部160の捩じれが軽減され、接続部160の破損が抑制される。
【0040】
第2延出部171は、柄161とは反対側で接続部160から延出しており、ラッチ本体50の装着部56のベースプレート2側とは反対側に沿って、装着部56と接続部160との接続方向に延びている。曲げモーメントMcに起因して、接続部160の柄161側がベースプレート2から浮き上がる曲げが接続部160に生じた場合に、第2延出部171が装着部56に当接する。これにより、接続部160の曲げが軽減され、接続部160の破損が抑制される。
【0041】
本例では、装着部56には、装着部56と接続部160との接続方向に延びるビード58が設けられており、ビード58は、装着部56のベースプレート2側とは反対側に凸となっている。この場合に、第2延出部171の先端部は、好ましくは二股に分かれて形成され、ビード58を跨いで装着部56に当接する。
【0042】
以上、説明したとおり、本明細書に開示されたフードロック装置は、車体に固定されており、前記車体に対して開閉されるフードに設けられたストライカが前記フードの閉動作に応じて進入するストライカ溝を有するベースプレートと、前記ストライカ溝の全閉位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを全閉状態に保持するプライマリラッチと、前記ストライカ溝の前記全閉位置よりも開口側の半開位置に前記ストライカを係止することにより、前記フードを半開状態に保持するセカンダリラッチと、を備え、前記セカンダリラッチは、前記ベースプレートに対して回動可能であり、回動に応じて、前記ストライカを係止する係止部を前記ストライカ溝に進出させ又は前記ストライカ溝から後退させる鋼製のラッチ本体と、前記係止部が前記ストライカ溝から後退するアンラッチ方向に前記ラッチ本体を回動させる操作が入力される樹脂製のハンドルと、を有し、前記ラッチ本体は、前記係止部が前記ストライカ溝から後退している場合に、前記半開位置を越えて前記全閉位置に移動する前記ストライカと係合し、前記ストライカによって前記アンラッチ方向とは逆のラッチ方向に押圧される強制噛み合い部と、前記強制噛み合い部に隣設されており、前記ハンドルが装着される装着部と、を有する。
【0043】
また、本明細書に開示されたフードロック装置は、前記ハンドルが、前記装着部に接続される接続部を有し、前記接続部は、前記装着部が差し込まれるスロットと、前記スロットの内側に突出する凸部が設けられた弾性片と、を有し、前記装着部は、前記凸部が嵌合する凹部を有する。
【0044】
また、本明細書に開示されたフードロック装置は、前記ハンドルが、前記ベースプレートに沿って前記装着部に接続される接続部と、前記接続部から前記ベースプレートと交差する方向に延びる柄と、前記柄の先端部に設けられている操作入力部と、を有し、前記接続部には、前記ベースプレートに向けて突出する突出部が設けられている。
【0045】
また、本明細書に開示されたフードロック装置は、前記ハンドルが、前記柄と反対側で前記接続部から延出する第1延出部を有し、前記第1延出部は、前記装着部の前記ベースプレート側に沿って、前記接続部と前記装着部との接続方向に延びている。
【0046】
また、本明細書に開示されたフードロック装置は、前記ハンドルが、前記柄と反対側で前記接続部から延出する第2延出部を有し、前記第2延出部は、前記装着部の前記ベースプレート側とは反対側に沿って、前記接続部と前記装着部との接続方向に延びている。
【符号の説明】
【0047】
1 フードロック装置
2 ベースプレート
3 プライマリラッチ
4 ラチェット
5 セカンダリラッチ
20 本体部
21 固定部
22 ストライカ溝
30 ラッチ軸
31 係止溝
32 係合部
33 係止溝
34 係合部
40 ラチェット軸
41 係合部
42 係合部
50 ラッチ本体
51 ハンドル
52 セカンダリラッチ軸
54 フック部(係止部)
55 強制噛み合い部
56 装着部
57 凹部
58 ビード
60 接続部
61 柄
62 スロット
63 壁部
64 弾性片
65 凸部
67 操作入力部
70 突出部
71 第1延出部
151 ハンドル
160 接続部
161 柄
163 壁部
167 操作入力部
170 突出部
171 第2延出部
S ストライカ