IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社カドコ−ポレ−ションの特許一覧 ▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧 ▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧 ▶ 東レ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社小松製作所の特許一覧 ▶ 帝人株式会社の特許一覧 ▶ 富士重工業株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 共和工業株式会社の特許一覧 ▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図1
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図2
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図3
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図4
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図5
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図6
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図7
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図8
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図9
  • 特許-熱可塑性樹脂材の製造装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20220524BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20220524BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/58
B29C43/52
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017236125
(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公開番号】P2019104108
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-12-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発のうち熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・応用加工技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180169
【氏名又は名称】株式会社KADO
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312016780
【氏名又は名称】共和工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平脇 聡志
(72)【発明者】
【氏名】松本 佳晃
(72)【発明者】
【氏名】畠中 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】日下 高至
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 泰成
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-048223(JP,A)
【文献】特開2014-51035(JP,A)
【文献】特開2009-88222(JP,A)
【文献】特開2012-121680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む基材を所定形状に成形する金型と、
前記金型内に前記基材を配置する搬送機構と、を有し、
前記搬送機構は、
前記基材の状態を検出する検出機構と、
前記金型及び前記搬送機構の動作を制御する制御手段と、
前記検出機構によって前記基材の状態が検出される際に、前記基材が載置される載置台と、
を備え
前記検出機構は、
前記載置台に載置された前記基材の重心位置を検出する重心検出機構を備え、
前記重心検出機構は、前記基材の撮像画像に基づいて重心位置を検出することを特徴とする熱可塑性樹脂材の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂材の製造装置であって、
前記搬送機構は、前記基材を把持する把持部を有し、
前記把持部は、前記基材の温度を調整する第1温度調整手段を備えていることを特徴とする熱可塑性樹脂材の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂材の製造装置であって、
前記検出機構によってさらに前記基材の温度を検出し、
前記載置台は、前記基材の第2温度調整手段を有していることを特徴とする熱可塑性樹脂材の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱可塑性樹脂材の製造装置であって、
前記検出機構は、前記基材の撮像画像に基づいて前記載置台に載置された前記基材の表面温度を計測する温度検出機構を備えていることを特徴とする熱可塑性樹脂材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂を含む一次成形体が配置された所定の金型内に、溶融した熱可塑性樹脂を二次的に射出する複合熱可塑性樹脂材の製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このよう複合化された熱可塑性樹脂材によれば、例えば、剛性、不燃性、耐食性、耐衝撃性、意匠性などの種々の機能性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-216078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の熱可塑性樹脂材の製造装置(例えば、特許文献1参照)においては、複合化される樹脂同士の金型内での流動性が良好に維持されなければ高品質の熱可塑性樹脂材を得ることができない。
よって、このような熱可塑性樹脂材の製造装置においては、基材の金型投入までの時間が、より短縮され、基材の温度を下げることなく基材を金型に投入することができるものが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、基材の金型投入までの時間が、より短縮され、基材の温度を下げることなく基材を金型に投入することができる熱可塑性樹脂材の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の熱可塑性樹脂材の製造装置は、熱可塑性樹脂を含む基材を所定形状に成形する金型と、前記金型内に前記基材を配置する搬送機構と、を有し、前記搬送機構は、前記基材の状態を検出する検出機構と、前記金型及び前記搬送機構の動作を制御する制御手段と、前記検出機構によって前記基材の状態が検出される際に、前記基材が載置される載置台と、を備え、前記検出機構は、前記載置台に載置された前記基材の重心位置を検出する重心検出機構を備え、前記重心検出機構は、前記基材の撮像画像に基づいて重心位置を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基材の金型投入までの時間が、より短縮され、基材の温度を下げることなく基材を金型に投入することができる熱可塑性樹脂材の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法で得られる熱可塑性樹脂材の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂材の製造装置の構成説明図である。
図3図2の製造装置を構成するマテリアルハンドリングロボットのハンド部の構成説明図である。
図4図2の製造装置を構成する制御手段のブロック図である。
図5図2の製造装置が熱可塑性樹脂材をプレス成形するまでの動作を説明するフロー図である。
図6】(a)から(c)は、補助基材のプリフォーム工程におけるハンド部の動作説明図である。
図7図2の製造装置のタイムチャートである。
図8】参考例としての製造装置が熱可塑性樹脂材をプレス成形するまでの動作を説明するフロー図である。
図9】変形例に係るハンド部の構成説明図である。
図10】変形例に係るハンド部の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂材の製造装置について詳細に説明する。以下では、この製造装置で得られる熱可塑性樹脂材について説明した後に、製造装置について説明する。
【0010】
≪熱可塑性樹脂材≫
本実施形態での熱可塑性樹脂材は、車両構成部材として使用するものを想定している。この車両構成部材としては、例えば、パネル部材や、サイドシル、センタピラー、フロアクロスメンバなどの主要骨格部材が挙げられる。ただし、本実施形態での熱可塑性樹脂材の用途は、このような車両構成部材に限定されるものではない。この熱可塑性樹脂材は、船舶、航空機のような車両以外の移動体の構成部材のほか、例えば建築物、各種機器装置などの構成部材にも適用することができる。
【0011】
図1は、本実施形態の製造方法で得られる熱可塑性樹脂材10の部分断面図である。
図1に示すように、熱可塑性樹脂材10は、主基材11と補助基材12との一体成形体である。なお、主基材11は、特許請求の範囲にいう「基材」に相当する。
本実施形態での主基材11(基材)は、熱可塑性樹脂を含んで構成されている。この主基材11は、熱可塑性樹脂材10の造形を行うものである。つまり、この主基材11は、後記する熱可塑性樹脂材10の成形時において、金型内で流動することで、補助基材12と一体になって熱可塑性樹脂材10の略外形を補助基材12とともに構成する。
【0012】
主基材11は、熱可塑性樹脂を含んでいればよく、熱可塑性樹脂単独で構成することができるし、熱可塑性樹脂に加えて充填材を含めることもできる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶性樹脂;ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテルなどの非結晶樹脂が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0013】
充填材としては、繊維が望ましい。繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、繊維材としては、炭素繊維が望ましく、繊維長が20mm以下の短繊維はさらに望ましい。この炭素繊維としては、PAN系、ピッチ系のいずれでも構わない。
【0014】
主基材11に充填材を含む場合の当該充填材の含有率は、熱可塑性樹脂材10の用途に応じて適宜に設定することができる。また、車両用構成部材への応用を想定した炭素繊維を含む主基材11は、炭素繊維の体積分率(Vf)で20%以上、60%以下が望ましい。なお、後記するように補助基材12に炭素繊維を含む場合には、熱可塑性樹脂材10の全体における炭素繊維の体積分率(Vf)で20%以上、60%以下となるように設定されることが望ましい。この炭素繊維の体積分率(Vf)は、JIS K 7035(2014年)に規定される繊維体積含有率(Vf)と同義である。
【0015】
本実施形態での補助基材12は、熱可塑性樹脂材10が車両構成部材として使用された場合に、車両構成部材の表面側を形成するものである。
この補助基材12は、後に詳しく説明するように、金型31(図2参照)のキャビティに沿って配置される。補助基材12は、シート状を呈しており、金型追従性に富んでいる。
【0016】
補助基材12は、熱可塑性樹脂材10の表面側にあって熱可塑性樹脂材10に付加価値を付与する。具体的には補助基材12は、熱可塑性樹脂材10の前記した用途に応じて、熱可塑性樹脂材10の表面側に、剛性、不燃性、耐食性、耐衝撃性、意匠性などの機能性を付与する。
【0017】
本実施形態での補助基材12としては、例えば、熱可塑性樹脂含有シートを想定しているがこれに限定されるものではなく、金属フィルムなどの他の素材からなるものであってもよい。
車両用構成部材への応用を想定した補助基材12としては、繊維を含む熱可塑性樹脂含有シートが望ましい。これらの熱可塑性樹脂と繊維とは、主基材11に使用される前記のものを使用することができる。特に、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む補助基材12はさらに望ましい。
また、主基材11に使用される熱可塑性樹脂と、補助基材12に使用される熱可塑性樹脂とは、同種であることが望ましい。つまり、主基材11に例えばポリアミド樹脂が使用される場合には、補助基材12にもポリアミド樹脂が使用されることが望ましい。
【0018】
このような補助基材12における炭素繊維の含有率は、前記のように、熱可塑性樹脂材10の全体における炭素繊維の体積分率(Vf)が20%以上、60%以下となるように設定されることが望ましい。
【0019】
また、車両用構成部材への応用を想定した補助基材12は、衝突荷重に対する強度、剛性などを熱可塑性樹脂材10の表面側に付与するために、主基材11よりも炭素繊維の体積分率(Vf)を高く設定することが望ましい。
【0020】
具体的には、主基材11における炭素繊維の体積分率(Vf)に対する補助基材12における炭素繊維の体積分率(Vf)の比(Vf/Vf)は、1を超え、2.5以下の範囲に設定することが望ましい。
本実施形態での熱可塑性樹脂材10は、このような比に設定されることで、衝突荷重を想定した強度、剛性などを一段と高めることができるとともに、後記する成形時における金型内での熱可塑性樹脂の流動性をさらに良好に維持することができる。
【0021】
また、補助基材12における炭素繊維の体積分率(Vf)を主基材11における炭素繊維の体積分率(Vf)よりも高く設定することで、補助基材12における主基材11側の表面粗度を高くし、主基材11側の熱可塑性樹脂によるアンカー効果(界面における接合強度向上)を期待することもできる。
この場合、前記の比(Vf/Vf)は、1.3以上が望ましい。
【0022】
≪熱可塑性樹脂材の製造装置≫
次に、熱可塑性樹脂材10(図1参照)の製造装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る製造装置20の構成説明図である。図3は、図2の製造装置20を構成するマテリアルハンドリングロボット40のハンド部43の構成説明図である。
【0023】
図2に示すように、製造装置20は、主基材11の供給装置50と、主基材11の載置台52と、補助基材12の供給装置59と、プレス装置30と、マテリアルハンドリングロボット40とを備えている。
【0024】
<主基材の供給装置>
供給装置50は、主基材11の混練押出機53と、主基材11の保温炉51と、で主に構成されている。
混練押出機53は、投入された主基材11を構成するマトリックスとしての熱可塑性樹脂Rと充填材Fとを所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点以上)のもとに混練し、この混練により可塑化した主基材11を押出すように構成されている。
ちなみに、本実施形態での混練押出機53、例えば、熱可塑性樹脂ペレットの二軸スクリュー型溶融混練機と、炭素繊維ロービングから繰り出される長炭素繊維の細断機とを組み合わせたLFT-D(Long Fiber Thermoplastic-Direct)押出機を想定しているが、これに限定されるものではない。
【0025】
保温炉51としては、混練押出機53から押し出された主基材11を、後記する金型31内での配置位置に応じて予め設定された長さに裁断する裁断部(図示省略)と、裁断された主基材11を混練押出機53の押出口から離れる方向に送り出すコンベヤ(図示省略)と、このコンベヤによって送り出される主基材11を所定温度以上に保温するヒータ(図示省略)と、を備えている。ちなみに、保温炉51での主基材11は、このヒータによって、可塑化が維持される温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点程度)に保温される。
【0026】
<載置台>
載置台52は、保温炉51から送り出された主基材11を載置するテーブル部52aと、光学センサ52bと、ヒータ52cと、を備えている。
光学センサ52bは、載置台52に載置された主基材11を検出して、後記する制御手段60に主基材11の検出信号を出力するようになっている。
【0027】
ヒータ52cは、載置された主基材11が、後記する第1のマテリアルハンドリングロボット40Aによって搬送されるまでの間、この主基材11を所定温度に維持する。このヒータ52cは、特許請求の範囲にいう「第2温度調整手段」に相当する。ちなみに、第1温度調整手段に相当するヒータ47(図3参照)は、後記するように、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aのハンド部43(図3参照)に配置されている。
【0028】
ヒータ52cにて設定される前記の所定温度は、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aによる搬送が可能なように主基材11が形状保持性を有する程度に設定される。
そして、この所定温度は、主基材11が金型31に搬送されて成形される際に、主基材11に含まれる熱可塑性樹脂の流動性が損なわれない程度に設定される。具体的なこの所定温度としては、使用する熱可塑性樹脂に応じて適宜に設定することができるが、熱可塑性樹脂の融点を超える温度に設定することが望ましい。
この載置台52のヒータ52cは、後記するように、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aに配置された制御手段60によって制御されている。
【0029】
なお、図示しないが、本実施形態でのテーブル部52aは、その上面がメッシュ状に(枡目を形成するように)、交差する複数のリブが立設されている。つまりテーブル部52aと主基材11との接触面積が低減される。これにより、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aにて主基材11を搬送する際に、テーブル部52aに対する主基材11の離反性が良好となる。また、テーブル部52aの上面には、テフロン(登録商標)などの離型層を形成することもできる。
【0030】
<補助基材の供給装置>
補助基材12の供給装置59は、補助基材12の収納部54と、補助基材12の加熱炉55と、収納部54から取り出した補助基材12を加熱炉55に移動させる図示しないリフトと、を備えている。
本実施形態での補助基材12は、縦横の長さが所定の長さに切り揃えられた平面視で矩形の板状のものを想定している。
収納部54では、ストック治具54aによって、複数の補助基材12が上下方向に揃えられて配置されている。つまり、本実施形態での収納部54に配置された各補助基材12は、後記する第2のマテリアルハンドリングロボット40Bの稼働範囲において、予め定められた座標に位置決めされている。
【0031】
加熱炉55は、収納部54の上方に重ねられて配置されている。収納部54からリフト(図示省略)によって加熱炉55内に配置された補助基材12は、所定温度に加熱されて可塑化する。この所定温度は、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bによる搬送が可能なように補助基材12が形状保持性を有する程度に設定される。
そして、この所定温度は、補助基材12が金型31に搬送されて成形される際に、補助基材12に含まれる熱可塑性樹脂の流動性が損なわれない程度に設定される。
具体的なこの所定温度としては、使用する熱可塑性樹脂に応じて適宜に設定することができるが、熱可塑性樹脂の融点を超える温度に設定することが望ましい。
ちなみに、加熱炉55の温度制御は、後記する制御手段60によって行うことができるし、加熱炉55の有する個別の温度調節装置によって行うこともできる。
【0032】
<プレス装置>
プレス装置30は、上型31aと下型31bとからなる金型31と、下型31bを支持するベース32と、下型31bの上方で上型31aを支持するとともに、下型31bに対して上型31aを上下移動させる昇降部(図示省略)と、を主に備えている。
金型31には、上型31aと下型31bとが上下方向に相互に重ね合わせられた内側にキャビティが形成される。昇降部によってベース32上の下型31bに向けて上型31aが所定圧で押圧されることで、キャビティ内に配置された成形材料(主基材11及び補助基材12)がプレス成形される。
【0033】
<マテリアルハンドリングロボット>
マテリアルハンドリングロボット40は、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aと、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bとで構成されている。
なお、本実施形態での第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、特許請求の範囲にいう「搬送機構」に相当する。
【0034】
第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、主基材11(基材)を載置台52から金型31に向けて搬送するように構成されている。
第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、補助基材12を加熱炉55から金型31に向けて搬送するように構成されている。また、本実施形態での第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、金型31で成形された熱可塑性樹脂材10(図1参照)を金型31から取り出すように構成されている。
【0035】
第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、後に詳しく説明する検出機構としての撮像カメラ56と制御手段60とを備えている点で、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bと相違している。言い換えれば、本実施形態での第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、撮像カメラ56と制御手段60とを備えていない点で第1のマテリアルハンドリングロボット40Aと相違している。しかしながら、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、後記する変形例で示すように、これらの撮像カメラ56と制御手段60とを有する構成とすることもできる。
【0036】
また、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、図示しないが、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aと異なって、金型31から熱可塑性樹脂材10(図1参照)を取り出す際に熱可塑性樹脂材10を吸い付けて保持する吸引保持部を有している。
【0037】
以下において、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aと第2のマテリアルハンドリングロボット40Bとを特に区別する必要がない場合には、単にマテリアルハンドリングロボット40として説明する。
【0038】
図2に示すように、マテリアルハンドリングロボット40は、支持部41と、アーム部42と、ハンド部43と、アクチュエータ(図示省略)と、を主に備えている。
このマテリアルハンドリングロボット40は、ハンド部43がアーム部42を介して支持部41周りで三次元的に移動するように構成されている。アクチュエータ(図示省略)は、エアシリンダ、ギヤ、カムなどの公知の要素で構成され、ハンド部43を前記のように三次元的に移動させる。なお、図2中、符号60は、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aの支持部41に配置された、後に詳しく説明する制御手段である。
【0039】
図3は、図2の製造装置20を構成するマテリアルハンドリングロボット40のハンド部43の構成説明図である。
なお、図3においては、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aと第2のマテリアルハンドリングロボット40Bとの共通部分を説明する目的で、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aにのみ備える撮像カメラ56(図2参照)は、作図の便宜上、仮想線(二点鎖線)にて記載している。
【0040】
図3に示すように、ハンド部43は、本体部44と、プッシャ45(押圧機構)と、保持部46と、ヒータ47と、を備えている。
ハンド部43は、特許請求の範囲にいう「把持部」に相当し、ヒータ47は、「第1温度調整手段」に相当する。
【0041】
本実施形態での本体部44は、薄い直方体で形成され、ハンド部43の略外形をなしている。本体部44の厚さ方向の一端面の略中央に取付部48は設けられている。この取付部48は、本体部44をアーム部42(図2参照)の先端に取り付けるものである。なお、本実施形態での本体部44は、所定のアクチュエータ(図示省略)によって、アーム部42(図2参照)に対する取付角度が変更可能となっている。
なお、後記する製造方法において、主基材11(図1参照)及び補助基材12(図1参照)のそれぞれは、本体部44の厚さ方向の他端面44a(取付部48が設けられる一端面と反対の面。以下、単に「本体部44の他端面44a」と称することがある)側に配置される。
【0042】
プッシャ45は、ロッド部材45aと、アクチュエータ45bとを備えている。
ロッド部材45aは、本体部44を厚さ方向に貫くように配置されている。このロッド部材45aは、アクチュエータ45bを介して本体部44に取り付けられている。
ロッド部材45aは、このアクチュエータ45bによって、本体部44の厚さ方向に移動可能となっている。
【0043】
図3に示すように、基準位置のロッド部材45aは、本体部44の他端面44a側から突出していない。また、ロッド部材45aは、アクチュエータ45bを駆動することによって、本体部44の他端面44aから外側(図3の紙面下側)に突出する。
突出したロッド部材45aは、後記するように補助基材12(図1参照)を下型31bに向けて押圧する。
ちなみに、本実施形態での本体部44は、1つのプッシャ45を有するものを想定しているが、2つ以上のプッシャ45を有する構成とすることもできる。
【0044】
保持部46は、一対のニードル部材46aと、ニードル部材46aごとに設けられるアクチュエータ46bとで構成されている。本実施形態での本体部44には、2組の保持部46が設けられている。
【0045】
一対のニードル部材46aは、本体部44を厚さ方向に貫くように配置されている。さらに具体的には、一対のニードル部材46aは、互いの軸線Ax同士が、本体部44の他端面44a側で交差するように配置されている。軸線Axが交差する側のニードル部材46aの先端部は、鋭利に尖っている。
【0046】
ニードル部材46aは、アクチュエータ46bを介して本体部44に取り付けられている。
各ニードル部材46aは、アクチュエータ46bによって、軸線Ax方向に移動可能となっている。
【0047】
図3に示すように、基準位置のニードル部材46aは、本体部44の他端面44aから突出していない。また、ニードル部材46aは、アクチュエータ46bを駆動することによって、本体部44の他端面44aから外側(図3の紙面下側)に突出する。
【0048】
突出したニードル部材46aは、主基材11(図1参照)又は補助基材12(図1参照)を突き刺す。これにより保持部46は、本体部44の他端面44a側に主基材11又は補助基材12を保持する。
ちなみに、本実施形態での本体部44は、前記のように2組の保持部46を有するものを想定しているが、3組以上の保持部46を有する構成とすることもできる。
【0049】
また、保持部46は、主基材11又は補助基材12を本体部44の他端面44a側に保持できれば前記の構成に限定されない。保持部46は、主基材11又は補助基材12の形態に応じて適宜に変更することができ、クランプ機構、吸引機構などを有する他の保持部に変更することもできる。
【0050】
ヒータ47(第1温度調整手段)は、本体部44に内蔵されている。このヒータ47は、本体部44の他端面44a側に配置された主基材11(図1参照)又は補助基材12(図1参照)を保温する。
本実施形態でのヒータ47としては、温風ヒータを想定しているが、これに限定されるものではなく、電熱ヒータ、赤外線ヒータ、これら種々の組み合わせからなるものなどを使用することもできる。
【0051】
<検出機構及び制御手段>
次に、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aの検出機構としての撮像カメラ56(図2参照)について説明する。
この撮像カメラ56は、載置台52上の主基材11(基材)の状態を非接触で検出する。具体的には、主基材11(図2参照)の温度及び重心位置を撮像画像に基づいて検出する。
【0052】
この撮像カメラ56は、後記するように、通常光検出部56a(図4参照)と、赤外線検出部56b(図4参照)とを有して構成されている。なお、通常光検出部56aは、特許請求の範囲にいう「重心検出機構」に相当する。また、赤外線検出部56bは、特許請求の範囲にいう「温度検出機構」に相当する。
本実施形態での撮像カメラ56は、ハンド部43の主基材11に対向する面、つまり前記の他端面44a(図3参照)の適所に配置されている。
【0053】
次に、制御手段60(図2参照)について説明する。
この制御手段60は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)などで構成することができる。
【0054】
図4は、制御手段60のブロック図である。図4中、符号57の第1MHRのアクチュエータは、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図2参照)におけるアクチュエータ(図示省略)を意味する。
【0055】
図4に示すように、本実施形態での制御手段60は、画像処理部61と、操作量計算部62と、操作量出力部63と、を有している。
【0056】
画像処理部61は、重心検出部61aと、温度検出部61bとで主に構成されている。
重心検出部61aは、撮像カメラ56の通常光検出部56a(例えば、CCDカメラ)で撮像された主基材11の平面形状の撮像画像に基づいて、主基材11の平面形状内に規定される重心位置を検出する。
主基材11の重心座標を検出する方法は、特に制限はなく公知の方法を採用することができる。本実施形態での重心座標を検出する方法は、例えば、撮像画像中に占める主基材11の面積に基づいて重心座標を検出する方法、撮像画像中の主基材11の輪郭に基づいて重心座標を検出する方法などのように、直接画像分析法が望ましい。
この重心検出部61aによって、主基材11の位置座標、つまり重心座標が出力される。
【0057】
温度検出部61bは、撮像カメラ56の赤外線検出部56b(例えば、赤外線カメラ)で撮像された主基材11の撮像画像に基づいて、主基材11の温度を検出する。ちなみに、本実施形態での赤外線検出部56bは、ゲルマニウムレンズ光学系と、冷却素子(例えば、ペルチェ素子)とを有するものを想定している。
この温度検出部61bによって、載置台52(図2参照)上の主基材11の表面温度が検出され、出力される。
【0058】
操作量計算部62は、受取補正量計算部62aと、温度補正量計算部62bと、で主に構成されている。
受取補正量計算部62aは、重心検出部61aから出力された主基材11の重心座標に基づいて、ハンド部43の変位量(補正量)を計算する。
つまり、受取補正量計算部62aは、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図2参照)のハンド部43(図2参照)の現在位置(座標)から、ハンド部43が主基材11を受け取る主基材11の重心座標に至るまでのハンド部43の変位量(受取補正量)を計算し、出力する。
【0059】
温度補正量計算部62bは、温度検出部61bから出力された主基材11の表面温度に基づいて、載置台52上の主基材11の目的温度に至るまでの温度補正量を計算し、出力する。
この主基材11の目的温度は、前記したように、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図2参照)による搬送が可能な程度に主基材11の形状が保持され、主基材11が金型31(図2参照)に搬送されて成形される際に、主基材11に含まれる熱可塑性樹脂の流動性が損なわれない程度に設定することができる。
【0060】
操作量出力部63は、受取座標値出力部63aと、温度補正値出力部63bと、で主に構成されている。
受取座標値出力部63aは、受取補正量計算部62aから出力された前記のハンド部43の変位量(受取補正量)に基づいて、ハンド部43が主基材11を受け取るための変位指令、つまり受取座標値を第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図4中、第1MHRで示す)のアクチュエータ57に出力する。第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、この変位指令に基づいて、主基材11の重心座標に移動し、この重心座標を中心にして主基材11を把持する。
【0061】
温度補正値出力部63bは、温度補正量計算部62bから出力された前記の温度補正量に基づいて、主基材11が目的温度に至るための昇温指令、つまり温度補正値を載置台52のヒータ52cに出力する。ヒータ52cは、これに備えるインバータ(図示省略)を介してこの昇温指令に基づく電力を入力し、主基材11を目的温度となるように加熱する。主基材11は、目的温度に設定される。
【0062】
≪熱可塑性樹脂材の製造装置の動作≫
次に、熱可塑性樹脂材10(図1参照)の製造装置20(図2参照)の動作について説明する。
図5は、本実施形態の製造装置20が熱可塑性樹脂材10をプレス成形するまでの動作を説明するフロー図である。
【0063】
本実施形態の製造装置20(図2参照)においては、図5に示すように、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図5中、第1MHRで示す)の制御手段60(図2参照)が、光学センサ52b(図2参照)により、載置台52(図2参照)に主基材11(図2参照)があることの確認を条件に(ステップS101参照)、主基材11及び補助基材12の取出指令を出力する(ステップS102参照)。
【0064】
この指令により、図2に示すように、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図5中、第1MHRで示す)は、載置台52の上方に移動する。ちなみに、この移動は、予め設定された載置台52の位置座標に基づいて、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aのアクチュエータ(図示省略)が行う。
【0065】
次いで、図2に示すように、載置台52の上方に位置した第1のマテリアルハンドリングロボット40Aの撮像カメラ56は、主基材11を撮像する(図5のステップS103参照)。
【0066】
また、この指令により、図2に示すように、第2のマテリアルハンドリングロボット40B(図5中、第2MHRで示す)は、加熱炉55の上方に移動する。ちなみに、この移動は、予め設定された加熱炉55の位置座標に基づいて、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bのアクチュエータ(図示省略)が行う。
そして、第2のマテリアルハンドリングロボット40B(図2参照)は、加熱炉55(図2参照)から補助基材12(図2参照)を取り出す(図5のステップS108)。
次いで、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、取り出した補助基材12を金型31(図2参照)内に投入する(図5のステップS109参照)。
【0067】
ここで参照する図6(a)から(c)は、金型31(図2参照)内に投入された補助基材12(図1参照)に対して行われるプリフォーム工程におけるハンド部43(図3参照)の動作説明図である。
【0068】
図6(a)に示すように、プリフォーム工程におけるハンド部43は、金型31(下型31b)の所定の位置に補助基材12を移動させる。
この際、保持部46のニードル部材46aは、前記のように、補助基材12を突き刺して本体部44の他端面44aに保持している。プッシャ45のロッド部材45aは、前記の基準位置にあって他端面44aから突き出していない。
【0069】
次に、このプリフォーム工程では、図6(b)に示すように、保持部46のニードル部材46aは、本体部44内に後退することで補助基材12を保持部46から解放する。そして、プッシャ45のロッド部材45aは、他端面44aから突き出すことで、補助基材12を金型31(下型31b)側に向けて押圧する。これにより、補助基材12は、本体部44の他端面44a側から離脱して金型31の下型31bに移行する。
【0070】
そして、図6(c)に示すように、プッシャ45のロッド部材45aは、補助基材12を下型31bに押圧するように駆動する。この際、ハンド部43は、アクチュエータ(図示を省略)及びアーム部42によってキャビィティ内壁面に沿って移動しながら、ロッド部材45aを進退させて補助基材12を下型31bに複数回押し付ける。ロッド部材45aの先端は、キャビィティ内壁面に形成される入り隅や凹部に補助基材12が入り込んで密着するように補助基材12を押圧する。これにより補助基材12は、下型31bのキャビティ形成面に沿うように追従変形してプリフォーム工程は終了する。
【0071】
再び図5に戻って、制御手段60(図4参照)の重心検出部61a(図4参照)は、ステップS104において、主基材11の撮像画像に基づいて、前記のように主基材11の位置座標(重心座標)を出力する(ステップS104参照)。
そして、制御手段60(図4参照)の受取補正量計算部62a(図4参照)は、前記のように主基材11の受取補正量を計算する(ステップS105参照)。受取補正量計算部62aは、計算した受取補正量を、制御手段60(図4参照)の受取座標値出力部63a(図4参照)に出力する。
【0072】
次に、制御手段60(図4参照)の受取座標値出力部63a(図4参照)は、前記のように、受取補正量計算部62a(図4参照)から出力された受取補正量に基づいて主基材11の受取座標値を出力する(ステップS106参照)。
そして、この受取座標値を入力した第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図5中、第1MHRで示す)のアクチュエータ57(図4参照)は、前記のように、主基材11の重心座標に移動し、この重心座標を中心にして主基材11を把持する。これにより第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、主基材11を受け取る(ステップS107参照)。
【0073】
次に、制御手段60(図4参照)は、金型31内への補助基材12の投入が完了していることを条件に(ステップS110参照)、補助基材12が配置された金型31内に主基材11を投入するように、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図5中、第1MHRで示す)のアクチュエータ57(図4参照)に指令する(ステップS111参照)。
【0074】
そして、制御手段60(図4参照)は、金型31内への主基材11の投入完了を条件に(ステップS112参照)、プレス装置30に対してプレス作動指令を出力する(ステップS113参照)。
プレス装置30は、この作動指令によってプレス動作を行う(ステップS114参照)。これにより金型31内に熱可塑性樹脂材10が形成されて、製造装置20の動作のサブルーチンが終了する。
【0075】
次に参照する図7は、製造装置20(図2参照)のタイムチャートである。
図7中、「主基材の供給装置」は、図2の「主基材11の供給装置50」に対応する。図7中、「載置台のヒータ」は、図2の「載置台52のヒータ52c」に対応する。図7中、「第1MHR」は、図2の「第1のマテリアルハンドリングロボット40A」に対応する。図7中、「第2MHR」は、図2の「第2のマテリアルハンドリングロボット40B」に対応する。図7中、「補助基材の加熱炉」は、図2の「補助基材12の加熱炉55」に対応する。図7中、「プレス装置」は、図2の「プレス装置30」に対応する。なお、このタイムチャートは、図7の左側から右側方向に時間が経過するように記載されている。この図7について図2を参照しながら説明する。
【0076】
図2に示すように、主基材11の供給装置50は、熱可塑性樹脂Rと充填材Fとを所定温度のもとに混練し、保温炉51を介して載置台52上に主基材11が供給される。この主基材供給工程は、図7中、実線矢印A1で示されている。
【0077】
次に、載置台52のヒータ52cは、主基材11が前記の所定温度を維持するように加熱する。この主基材温度維持工程は、図7中、実線矢印A2で示されている。この主基材温度維持工程A2は、図4に示す制御手段60(温度検出部61b、温度補正量計算部62b及び温度補正値出力部63b)が、撮像カメラ56(赤外線検出部56b)による主基材11の撮像画像に基づいて、図2に示す載置台52のヒータ52cの加熱温度を制御することによって実行される。
【0078】
その一方で、図2に示す加熱炉55は、補助基材12を前記の所定温度に加熱する。この補助基材加熱工程は、図7中、実線矢印A3aで示されている。
そして、図2に示す第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、加熱炉55の補助基材12を金型31に搬送してチャージする。この補助基材金型チャージ工程は、図7中、実線矢印A4aで示されている。なお、搬送中の補助基材12の温度は、図3に示すハンド部43のヒータ47で所定温度に維持されている。
【0079】
次に、図2に示す第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、載置台52上の主基材11を、補助基材12がチャージされた金型31に搬送する。この主基材搬送工程は、図7中、実線矢印A3bで示されている。
なお、この主基材搬送工程A3bにおける主基材11は、図3に示すハンド部43のヒータ47で所定温度に維持されている。
【0080】
そして、図2に示す第1のマテリアルハンドリングロボット40Aは、この主基材11を、金型31にチャージする。この主基材金型チャージ工程は、図7中、実線矢印A4bで示されている。
また、本実施形態では、この主基材金型チャージ工程において、温風ヒータからなるヒータ47の風量を増加させることが望ましい。これにより金型31内での主基材11の温度の最適化をより確実に実行することができる。
【0081】
次に、プレス装置30は、金型31にチャージされた補助基材12及び主基材11を所定の温度及び圧力のもとに所定時間、プレスを行う。このプレス工程A5(図7参照)により熱可塑性樹脂材10(図1参照)が完成する。
そして、本実施形態では、型開きされた後、図7に示すように、第2のマテリアルハンドリングロボット40B(第2MHR)によって、熱可塑性樹脂材10の搬出工程A6が実行されて、製造工程の1サイクル目が終了する。
【0082】
そして、本実施形態の製造装置20では、図7に示すように、この1サイクル目に続いて、主基材供給工程B1、主基材温度維持工程B2、補助基材加熱工程B3a、補助基材金型チャージ工程B4a、主基材搬送工程B3b、主基材金型チャージ工程B4b、プレス工程B5、及び搬出工程B6からなる、次のサイクルが繰り返されて実行される。
【0083】
≪作用効果≫
次に、本実施形態の製造装置20が奏する作用効果について説明する。
本実施形態の製造装置20は、金型31に主基材11を供給する第1のマテリアルハンドリングロボット40A(搬送装置)に、主基材11の状態を検出する撮像カメラ56(検出機構)と、金型31の動作や前記の各種機構を制御する制御手段60とを備えている。
【0084】
このような製造装置20によれば、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(搬送装置)が各製造工程におけるパラメータを統括的に監視し、司令塔として制御する。これにより製造装置20は、例えば製造装置外に制御機構を有するものと比べて金型31への主基材11の投入までの時間を短縮することができる。
【0085】
次に比較のために、参考例としての製造装置の動作について説明する。
図8は、参考例としての製造装置が熱可塑性樹脂材10をプレス成形するまでの動作を説明するフロー図である。
この参考例の製造装置は、図示しないが、本実施形態の製造装置20と異なって、制御手段60(図4参照)を製造装置外に有するものを想定している。この参考例の製造装置は、制御手段60の配置以外は概ね本実施形態の製造装置20と同様に構成されている。
【0086】
図8に示すように、参考例の製造装置は、連続運転が開始すると、制御装置(以下、外部PLC(Programmable Logic Controller)と称する)は、光学センサ52b(図2参照)により、載置台52に主基材11があることの確認を条件に(ステップS201参照)、主基材11(図2参照)及び補助基材12の取出指令を出力する(ステップS202参照)。
【0087】
次いで、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図8中、第1MHRで示す)の撮像カメラ56(図2参照)は、主基材11(図2参照)を撮像する(ステップS203参照)。
また、第2のマテリアルハンドリングロボット40B(図8中、第2MHRで示す)は、加熱炉55(図2参照)から補助基材12(図2参照)を取り出す(図8のステップS208参照)。
また、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bは、取り出した補助基材12を金型31(図2参照)内に投入する(ステップS209参照)。
【0088】
一方、ステップS203で撮像された主基材11(図2参照)の撮像画像データは外部PLCに出力される。これにより外部PLCは、主基材11の前記の位置座標を計算し、出力する(ステップS204参照)。
そして、外部PLCは、主基材11の前記の受取補正量を計算する(ステップS205参照)。
【0089】
次に、外部PLCは、この受取補正量に基づいて主基材11の前記の受取座標値を計算し、これを第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図8中、第1MHRで示す)のアクチュエータ57(図4参照)に出力する(ステップS206参照)。
そして、この受取座標値を入力した第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図8中、第1MHRで示す)のアクチュエータ57(図4参照)は、主基材11を把持することでこれを受け取る(ステップS207参照)。
【0090】
次に、外部PLCは、金型31(図2参照)内への補助基材12(図2参照)の投入が完了していることを条件に(ステップS210参照)、補助基材12が配置された金型31内に主基材11を投入するように、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図8中、第1MHRで示す)のアクチュエータ57(図4参照)に指令する(ステップS211参照)。
【0091】
そして、外部PLCは、金型31内への主基材11の投入完了を条件に(ステップS212参照)、プレス装置30に対してプレス作動指令を出力する(ステップS213参照)。
プレス装置30は、この作動指令によってプレス動作を行う(ステップS214参照)。これにより金型31内に熱可塑性樹脂材10が形成されて、参考例の製造装置の動作のサブルーチンが終了する。
【0092】
以上のように、外部PLCで制御される参考例の製造装置では、外部PLCと、第1のマテリアルハンドリングロボット40A及びプレス装置30(金型31)との信号のやり取りが複雑化する。これに対して、本実施形態の製造装置20では、図5に示したように、これらの信号のやり取りが簡素化される。
【0093】
具体的には、図8に示す外部PLCを有する参考例の製造装置においては、外部PLCと第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図8中、第1MHR)との間で、3回の信号のやり取りが発生する。つまり図8に示すように、ステップS202からステップS203を介してステップS204、ステップS206からステップS207を介してステップS210、及びステップS210からステップS211を介してステップS212の信号のやり取りが発生する。
【0094】
これに対して、図5に示す本実施形態の製造装置20においては、参考例で実行される信号のやり取りに対応する、ステップS102からステップS103を介してステップS104、ステップS106からステップS107を介してステップS110、及びステップS110からステップS111を介してステップS112の信号のやり取りの全てが第1のマテリアルハンドリングロボット40A(図5中、第1MHR)内で行われる。
【0095】
これにより本実施形態の製造装置20では、信号のやり取りの時間削減によって、金型31への主基材11の投入までの時間が短縮される。その結果、金型31への主基材11の投入までの時間が短縮される。これにより本実施形態の製造装置20は、主基材11の温度を下げることなく主基材11を金型31に投入することができる。したがって、製造装置20によれば、金型31での成形時に主基材11の流動性が良好に維持され、高品質の熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)を得ることができる。
また、本実施形態の製造装置20によれば、このような信号のやり取りの回数の削減によって、信号のエラー、バグ、システムの不安定などのネガティブな事象の発生を回避することができる。
【0096】
また、本実施形態では、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(搬送機構)が主基材11を把持するハンド部43(把持部)を有し、ハンド部43は、主基材11の温度を調整するヒータ47(第1温度調整手段)を備えている。
このような製造装置20によれば、ハンド部43のヒータ47により、搬送中の主基材11の温度が低下することがない。
したがって、製造装置20によれば、金型31での成形時に主基材11の流動性が良好に維持され、高品質の熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)を得ることができる。
また、このような製造装置20によれば、ハンド部43のヒータ47により、前後工程の時間のバッファを設けることができ、熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)の高効率な生産が可能となる。
【0097】
また、本実施形態では、載置台52が、主基材11(基材)の第2温度調整手段としてのヒータ52cを有している。
このような製造装置20では、載置台52上で、撮像カメラ56が主基材11の状態を検出している際に、ヒータ52cが主基材11の温度を維持する。また、ヒータ52cは、主基材11の状態の検出結果に応じて、主基材11の温度を変化させることができる。
これにより製造装置20は、最適な状態で主基材11を金型31内に投入することができる。
したがって、製造装置20によれば、金型31での成形時に主基材11の流動性が良好に維持され、高品質の熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態では、検出機構としての撮像カメラ56が、主基材11の表面温度を検出する赤外線検出部56b(温度検出機構)を備えている。
このような製造装置20によれば、主基材11の表面温度を確認することで、金型31内での主基材11の流動を良好に維持することができる。
したがって、製造装置20によれば、金型31での成形時に主基材11の流動性が良好に維持され、高品質の熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)を得ることができる。
【0099】
また、本実施形態では、検出機構としての撮像カメラ56が、主基材11の重心位置を検出する通常光検出部56a(重心検出機構)を備えている。
このような製造装置20によれば、供給装置50から順番に送り出される複数の主基材11は、重心位置にばらつきを生じる場合ある。
本実施形態の製造装置20は、主基材11の重心位置を確認することで、金型31内での流動が良好になるよう金型31への主基材11の投入位置を調整することができる。
また、製造装置20は、通常光検出部56a(重心検出機構)によって、例えば機械学習のような長時間のプログラム調整が必要なものと異なって、簡素な構成でリアルタイムで主基材11の重心を検出することができ、熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)の生産性に優れる。
【0100】
また、本実施形態によれば、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(搬送機構)の制御手段60によって、製造装置20全体を統括することで、主基材11及び補助基材12のそれぞれの供給装置50,59、プレス装置30などの設備を個別に導入配置した場合であっても、各設備の同期が可能となる。
これにより現場での設備配置のレイアウトの自由度が向上する。
また、この製造装置20は、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(搬送機構)の制御手段60によって、製造装置20全体を統括することで、シーケンスプログラムの簡略化と、電気信号の応答時間を最小にすることができる。これにより製造装置20は、熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)の成形サイクルを短縮することができる。
【0101】
また、この製造装置20によれば、主基材11の製造に必要となる時間を短縮できることができるので、全体の成形サイクルを短くすることができ、生産性を向上させることができる。つまり、この製造装置20によれば、出来高を増加させることができる。
【0102】
また、この製造装置20によれば、保温炉51から順次に送り出される主基材11は、第1のマテリアルハンドリングロボット40A(搬送機構)によって効率よく金型31に搬送され、保温炉51における過加熱による樹脂劣化が抑制される。これにより製造装置20は、高品質の熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)を得ることができる。つまり、この製造装置20によれば、熱可塑性樹脂材10(樹脂成形部品)の板厚低減などによる軽量化、材料費低減などを図ることができる。
【0103】
≪他の実施形態≫
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。
次に参照する図9及び図10は、変形例に係るハンド部43A,43Bの構成説明図である。なお、前記実施形態でのハンド部43(図3参照)と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0104】
図9に示すように、変形例に係るハンド部43Aは、本体部44の側面部から他端面44a側を角筒状に覆うように延びるシュラウド58を備えている。このシュラウド58は、例えば、シリコーンなどの弾性樹脂シートで形成されるものが望ましい。
このようなシュラウド58によれば、保持部46で他端面44a側に保持された主基材11又は補助基材12(図2参照)をハンド部43Aが搬送する際に、主基材11又は補助基材12からの放熱を抑制する。
【0105】
図10に示すように、変形例に係るハンド部43Bは、本体部44の他端面44aに対向するように、加熱部材7を有している。
この加熱部材7は、本体部44と略同じ平面形状を有する薄い直方体に形成されている。そして、加熱部材7には、ヒータ47が内蔵されている。
加熱部材7の一側面には、本体部44の側面に向かって延びるL字状のアーム72が設けられている。このアーム72の先端は、本体部44の側面に設けられたアクチュエータ73の回動軸74に取り付けられている。
【0106】
このようなハンド部43Bによれば、本体部44と加熱部材7との間に、主基材11又は補助基材12が配置されることによって、搬送時における主基材11又は補助基材12の所定温度の維持がより確実に行われる。
また、主基材11又は補助基材12を本体部44が受け取る際、又は本体部44が主基材11又は補助基材12を開放する際(金型31にチャージする際)には、加熱部材7が回動軸74周りに回動して開くようになっている。
なお、図10中、符号75は、加熱部材7の側面部から他端面44a側を角筒状に覆うように延びるシュラウドである。このシュラウド75は、本体部44に設けることができるし、加熱部材7と本体部44の両方に設けることもできる。
【0107】
また、前記実施形態では、撮像カメラ56と制御手段60とは、第1のマテリアルハンドリングロボット40Aにのみ配置する構成としたが、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bに設けることもできる。
【0108】
また、前記実施形態では、収納部54からの加熱炉55への補助基材12の移動は、図示しないリフトによるものを想定しているが、第2のマテリアルハンドリングロボット40Bが行う構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0109】
10 熱可塑性樹脂材
11 主基材(基材)
12 補助基材
20 製造装置
30 プレス装置
31 金型
31a 上型
31b 下型
32 ベース
40 マテリアルハンドリングロボット
40A マテリアルハンドリングロボット(搬送機構)
40B マテリアルハンドリングロボット
41 支持部
42 アーム部
43 ハンド部(把持部)
43A ハンド部
43B ハンド部
45 プッシャ
45a ロッド部材
45b アクチュエータ
46 保持部
46a ニードル部材
46b アクチュエータ
47 ヒータ(第1温度調整手段)
48 取付部
50 主基材の供給装置
51 保温炉
52 載置台
52b 光学センサ
52c ヒータ(第2温度調整手段)
53 混練押出機
54 収納部
54a ストック治具
55 加熱炉
56 撮像カメラ(検出機構)
56a 通常光検出部(重心検出機構)
56b 赤外線検出部(温度検出機構)
57 アクチュエータ
59 補助基材の供給装置
60 制御手段
61 画像処理部
61a 重心検出部
61b 温度検出部
62 操作量計算部
62a 受取補正量計算部
62b 温度補正量計算部
63 操作量出力部
63a 受取座標値出力部
63b 温度補正値出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10