IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松山株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図1
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図2
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図3
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図4
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図5
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図6
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図7
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図8
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図9
  • 特許-農作業機用作業支援システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】農作業機用作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20220524BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20220524BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A01B35/00 B
A01B69/00 301
A01B63/10 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018167635
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020039267
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 健一
(72)【発明者】
【氏名】大村 英昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂喜
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108653(JP,A)
【文献】特開2017-173969(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017367(WO,A1)
【文献】特開2009-153432(JP,A)
【文献】特開2004-254522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00
A01B 69/00
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機に適用する農作業機用作業支援システムにおいて、
前記農作業機に装着するカメラユニットと、演算部とを備え、
前記カメラユニットは、作業進行方向の前方及び作業進行方向の後方を撮影可能であり、
前記演算部は、前記カメラユニットで撮影された画像に対して、撮影範囲に対して一定の位置となる作業の基準線と、前記カメラユニットで撮影された画像内で特定の位置に設定された目標である前方の基準点及び後方の基準点の位置とが一致しているか否かを算出することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記カメラユニットは、作業進行方向の前方に向けた前方カメラと、作業進行方向の後方に向けた後方カメラを備えると共に、前記前方カメラの撮影範囲の左右の中心と、前記後方カメラの撮影範囲の左右の中心は、一直線上にあるとともに、前記作業の基準線と一致していることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記カメラユニットは、一体に構成されていることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
表示部を備え、前記演算部は、前記カメラユニットで撮影した画像と、前記作業の基準線と、前記設定された基準点とを前記表示部に表示させることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記表示部には、前方を撮影した画像の下に、後方を撮影した画像が撮影の上下方向に対して上下逆に表示され、前記作業の基準線は前記2つの画像上に上下方向に1つの直線で表示されることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記農作業機の一部に、前記作業の基準線に相当する位置に印が設けられ、前記カメラユニットで撮影された画像に、前記印が映り込んでいることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記演算部は、画像処理により前記基準点を判別して決定することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
設定入力部を備え、前記基準点は前記設定入力部の操作により設定可能であることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項9】
請求項4を引用する又は請求項5を引用する請求項8に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記表示部と前記設定入力部は、表示画面上の表示を触れることで信号が入力されるタッチパネルにより一体に構成されることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記農作業機にアクチュエータを備え、前記アクチュエータは、前記作業の基準線と、前記2つの基準点と、を一致させる方向に制御されることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記農作業機は、耕耘部とディスク部を備える畦塗り機であり、前記カメラユニットは前記トラクタの中心側における前記ディスク部の内側端部の上部に設けられていることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記農作業機は、耕耘作業を行うロータリーであり、前記カメラユニットは、耕耘幅の両端部の上部に、それぞれ設けられることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機用作業支援システムに関し、特に、トラクタに装着する農作業機に対してより正確な農作業を可能とする農作業機用作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに装着する農作業機では、作業者が農作業機の作業位置および方向を目視で確認しながら、トラクタ及び農作業機の操作を行って調整をしていた。このとき、農作業機の大きさが大きい場合や、農作業を行う作業部の位置によっては、死角となるため、作業者から目視確認しにくい場合があった。さらに、農作業機の操作を適切に行うことができずに高精度な作業が困難な場合や、運転技術の正確さが不足しているため作業効率が低下する場合もあった。
【0003】
このため、特許文献1では、前処理体の前側に、位置方位センサを設けて、この位置方位センサにより、元畦の位置を検出し、元畦に対して所望の新畦が形成されるように畦塗り機の位置及び方位を自動制御する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、カメラで撮影された画像において予め定めた目標点と最新の画像における目標点に対応する位置のズレを検出して、このズレを修正するようにオフセットアクチュエータを作動させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-254522号公報
【文献】特開2017-108653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、元畦に沿った制御となるため、元畦が曲がっている場合には、新畦も曲がる可能性があり、直線的に作業することが困難であった。
【0007】
さらに、特許文献2では、目標点を基準に行うことで正確な農作業が可能であるが、後方の基準点は考慮してなかった。ここで、後方の基準点も考慮すれば、さらに正確な農作業を行える余地がある。
【0008】
この他に測位衛星の信号を利用した測位システムを搭載して、トラクタの走行位置をガイドする方法も考えられるが、現状では、正確な農作業に対しては測位精度が不十分であり、精度の向上が求められる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタに装着する農作業機に対してより正確な農作業を可能とするための農作業機用作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、トラクタに装着して農作業を行う農作業機に適用する農作業機用作業支援システムにおいて、前記農作業機に装着するカメラユニットと、演算部とを備え、前記カメラユニットは、作業進行方向の前方及び作業進行方向の後方を撮影可能であり、前記演算部は、前記カメラユニットで撮影された画像に対して、撮影範囲に対して一定の位置となる作業の基準線と、前記カメラユニットで撮影された画像内で特定の位置に設定された目標である前方の基準点及び後方の基準点の位置とが一致しているか否かを算出することを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記カメラユニットは、作業進行方向の前方に向けた前方カメラと、作業進行方向の後方に向けた後方カメラを備えると共に、前記前方カメラの撮影範囲の左右の中心と、前記後方カメラの撮影範囲の左右の中心は、一直線上にあるとともに、前記作業の基準線と一致していることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記カメラユニットは、一体に構成されていることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、表示部を備え、前記演算部は、前記カメラユニットで撮影した画像と、前記作業の基準線と、前記設定された基準点とを前記表示部に表示させることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記表示部には、前方を撮影した画像の下に、後方を撮影した画像が撮影の上下方向に対して上下逆に表示され、前記作業の基準線は前記2つの画像上に上下方向に1つの直線で表示されることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記農作業機の一部に、前記作業の基準線に相当する位置に印が設けられ、前記カメラユニットで撮影された画像に、前記印が映り込んでいることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記演算部は、画像処理により前記基準点を判別して決定することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、設定入力部を備え、前記基準点は前記設定入力部の操作により入力可能であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記表示部と前記設定入力部は、表示画面上の表示を触れることで信号が入力されるタッチパネルにより一体に構成されることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記農作業機アクチュエータを備え、前記アクチュエータは、前記作業の基準線と、前記2つの基準点と、を一致させる方向に制御されることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記農作業機は、耕耘部とディスク部を備える畦塗り機であり、前記カメラユニットは前記トラクタの中心側における前記ディスク部の内側端部の上部に設けられていることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記農作業機は、耕耘作業を行うロータリーであり、前記カメラユニットは、耕耘幅の両端部の上部に、それぞれ設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、農作業機用作業支援システムにおいて、トラクタに装着する農作業機に対してより正確な農作業を可能とすることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の農作業機用作業支援システムにおけるブロック図の例を示す。
図2】本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態の平面図を示す。
図3】本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態における前進作業時の例を示す図である。
図4】本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態における表示の例を示す図であり、(a)は基準点が基準線からずれた状態を示し、(b)は基準点が基準線と一致している状態を示す。
図5】本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態における操作部の例を示す図である。
図6】本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態におけるバック作業時の例を示す図である。
図7】本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態の変形例における表示の例を示す図であり、(a)は基準点が基準線からずれた状態を示し、(b)は基準点が基準線と一致している状態を示す。
図8】本発明の農作業機用作業支援システムの第2の実施形態の平面図を示す。
図9】本発明の農作業機用作業支援システムの第2の実施形態における作業時の例を示す図である。
図10】本発明の農作業機用作業支援システムの第2の実施形態における表示の例を示す図であり、(a)は基準点が基準線からずれた状態を示し、(b)は基準点が基準線と一致している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の農作業機用作業支援システムにおけるブロック図の例を示す。本発明に適用する農作業機は、トラクタに本体を装着して農作業を行うものである。そして、より正確な農作業を可能とするための農作業機用作業支援システムを備えている。ここで、農作業機用作業支援システムは、演算部11、制御部12、記憶部13、カメラユニット16、設定入力部17、表示部18を備えている。さらに、記憶部13に加えて、あるいは、記憶部13に代えて、情報入出力部14と外部記憶媒体15を備えていてもよい。また、アクチュエータを制御する場合は、出力部19、アクチュエータ20を備えている。このとき、状態検知部21を必要に応じて設けることができる。これらの配置場所は、後述するようにその目的に応じてふさわしい場所に設置される。そして、演算部11、制御部12は、制御システム部10として一体に構成されている。なお、演算部11と制御部12は別々に構成してもよい。
【0019】
演算部11は、カメラユニット16からの情報、設定入力部17で入力された情報、状態検知部21を設ける場合は状態検知部21からの情報、記憶部13又は外部記憶媒体15からの情報等に基づき作業支援システムに必要な演算処理を行う。特に、作業の基準線、基準点のそれぞれの位置や、相互の位置関係等の位置の状態を算出する。この演算に基づき表示部18に結果を表示させる。また、アクチュエータ20を備える場合はこれを制御するための演算を行う。また、記憶部13又は外部記憶媒体15に必要な情報を記録させる。演算部11での具体的な演算内容は後述する。また、演算部11は、カメラユニット16で撮影した映像を表示部18に表示させるための処理も行う。
【0020】
制御部12は、表示部18に表示させるための指令や記憶部13又は外部記憶媒体15に情報を記録させるための指令もだす。また、演算部11での演算結果に基づき出力部19へ動作指令をだしてアクチュエータ20を制御する。
【0021】
記憶部13は、演算部11の演算処理に必要な情報を記録しておき、さらに、演算部11の演算処理による結果を記録しておく記憶装置である。例えば、HDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)等を適用できる。記憶部13は、演算部11や制御部12(制御システム部10)と一体に構成してもよい。
【0022】
情報入出力部14は、演算部11で処理した情報を外部記憶媒体15に記録させるための手段である。また、外部記憶媒体15から情報をとり出し、演算部11に情報を送信することもできる。なお、情報は無線通信で入出力してもよい。
【0023】
外部記憶媒体15は、演算部11の演算処理による結果を記録しておく記憶媒体であり、情報入出力部14に対して着脱可能であり、作業者が単体で持ち運ぶことができる。外部記憶媒体15は、例えば、SDメモリーカードやUSBメモリ(USBフラッシュメモリ)等を適用できる。また、演算部11の演算処理に必要な情報を記録しておくこともできる。
【0024】
カメラユニット16は、少なくとも、作業方向の前方に向けた前方カメラと、作業方向に対して後ろ側に向けた後方カメラの2台が組み込まれたユニットである。カメラユニット16は農作業機の本体に作業支援のための適切な位置に設置される。そして、前方カメラの撮影範囲の左右中心と、後方カメラの撮影範囲の左右中心は一致していることがよりよい。このことで、後述する基準線の決定や、基準線に対するずれの演算が行い易くなる。カメラユニット16によるカメラは、一般的な受光タイプを適用でき、単位時間当たり所定のフレーム数をとらえて映像として撮影できるビデオカメラが適用できる。具体的には、例えば、レンズで集められた光を撮像素子(CCDやCMOS)上に結像させ、光を電気信号に変換して、その情報がデジタル情報として演算部11に送られる。なお、カメラユニット16によるカメラは、一般的な受光タイプの他、光源を備えているものでもよく、可視光のみでなく赤外線を感知できるものでもよい。さらに、カメラユニット16によるカメラは、横方向をとらえるカメラを追加することもできる。また、カメラユニット16は垂直方向を回転軸として角度を変えられる構成としてもよい。
【0025】
設定入力部17は、必要な設定を行うための入力手段である。例えば、カメラユニット16からのカメラの画像に基づき演算部11での演算のために必要な情報を入力する。設定入力部17の構成は、例えば、表示画面上の表示に触れることで信号が入力されるタッチパネル、もしくは、押しボタンスイッチやトグルスイッチ等のスイッチ類等を適用できる。設定入力部17は、作業者が操作し易いように、トラクタの運転席近傍に配置できるようにするとよい。そして、設定入力部17から演算部11へ操作の信号が送信される。ここで、設定入力部17と演算部11とは有線による送受信のシステムであってもよく、無線による送受信のシステムでもよい。
【0026】
表示部18は、カメラユニット16からのカメラの画像や、演算部11の処理による情報を表示する手段である。表示部18は、液晶、有機EL、LED等の各種の表示手段により情報を表示させる。表示部18は、作業者が確認し易いように、トラクタの運転席近傍に配置できるようにするとよい。ここで、表示部18と演算部11とは有線による送受信のシステムであってもよく、無線による送受信のシステムでもよい。また、表示部18は設定入力部17と一体に形成することもできる。このとき、タッチパネルによる表示として、表示と設定操作を同じ画面上で行うようにしてもよい。表示の具体例については後述する。
【0027】
出力部19は、制御部12からの動作指令に基づきアクチュエータ20を作動させる。
【0028】
アクチュエータ20は、農作業機の本体の一部を必要に応じて可動させるためのアクチュエータである。アクチュエータ20としては、例えば、油圧シリンダや電動油圧シリンダ等のシリンダやモータ等である。特に、農作業機の本体の一部である農作業を行う作業部の位置を移動させるアクチュエータに対して、制御をすることで後述するような作業支援が可能となる。
【0029】
状態検知部21は、アクチュエータ20又はアクチュエータ20により作動する農作業機の一部分の現在の状態を検知する手段である。例えば、ストロークセンサ、回転センサ等、各種センサを用いて状態を検知してもよい。また、アクチュエータ20の電流又は電圧値から現在の状態を検知してもよい。状態検知部21の情報はアクチュエータ20の正確な制御のために用いることもできる。
【0030】
ここで、演算部11及び制御部12(制御システム部10)は、トラクタに装着する農作業機の本体側に設置することができる。また、これらは、設定入力部17が有線接続の場合は、設定入力部17と一体又は設定入力部17の近傍に設置してもよい。記憶部13も同様である。演算部11及び制御部12は、CPU等の電子デバイス等を適用できる。また、情報入出力部14、外部記憶媒体15は、演算部11及び制御部12(制御システム部10)と一体に構成することも可能である。また、情報入出力部14、外部記憶媒体15を、設定入力部17や表示部18側に設けることも可能である。
【0031】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態の平面図を示す。第1の実施形態では、農作業機が畦塗り作業を行う畦塗り機30に適用する例を示す。なお、図2の上が前側(畦塗り作業の前進方向)、下が後ろ側を示し、図2の左右方向が横方向を示す。なお、トラクタ1は図示を簡略化している。
【0032】
畦塗り機30は、装着部32がトラクタ1の後部に装着される。中間フレーム33の一端側は装着部32に対して回動可能に接続されており、中間フレーム33の他端側は回動機構34をともない作業部35と接続されている。作業部35は、前側が耕耘部37でその後ろにディスク部38が設けられている。トラクタ1からのPTO動力は、図示を省略した伝動機構を介して作業部35へ送られる。作業部35は、耕耘部37の爪37a等の回転により、旧畦の土をディスク部38へ送り、そしてディスク部38の回転により新たな畦形状に整形する構成である。耕耘部37は、複数の爪37aの上部は耕耘部カバー37bで覆われている。また、ディスク部38では、畦の法面を固める円錐状の法面ディスク38bと、畦の上面を固める円筒状の上面ローラ38aとで構成される。ここで、左右方向のトラクタ1の中心側におけるディスク部38の端部38c(ディスク部38の内側端部)は、畦の法面の下端部に位置する。
【0033】
制御ボックス40は、装着部32に取り付けられており、図1で示した演算部11、制御部12、記憶部13や、必要に応じて情報入出力部14、外部記憶媒体15などを格納することができる。
【0034】
カメラユニット45は、図1のカメラユニット16に相当し、ディスク部38の端部38cの上部に設置されている。具体的には、ディスク部38の上部を覆うディスクカバー39上に取り付けられている。そして、カメラユニット45は、作業方向の前方に向けた前方カメラ46と、作業方向に対して後ろ側に向けた後方カメラ47の2つのカメラによる構成である。これらは、撮影範囲の左右方向の中心ラインが一致しており、一体に構成されている。これらの一体構成は、工場において一体に形成にすることで、後のキャリブレーションをすることなしに、撮影の左右の中心ラインが一致した正確な構成とすることができる。そして、カメラユニット45は、ディスク部38の端部38cの前後方向のラインが、ちょうど、前方カメラ46及び後方カメラ47の左右方向の撮影範囲の中心と一致するように配置されている。また、前方カメラ46及び後方カメラ47の画角を同じにすることで、後述する画面表示で分かり易く表示させることができる。
【0035】
さらに、前方カメラ46の撮影範囲の左右の中心上に前側印48が畦塗り機30の一部に形成されている。具体的には、前側印48は耕耘部カバー37bの上部前側に形成され、前方カメラ46に耕耘部カバー37bの一部と共に前側印48が映るように前方カメラ46の画角や角度が設定される。さらに、後方カメラ47の撮影範囲の左右の中心上に後ろ側印49が畦塗り機30の一部に形成されている。具体的には、後ろ側印49はディスクカバー39の後ろ側に形成され、後方カメラ47にディスクカバー39の一部と共に後ろ側印49が映るように後方カメラ47の画角や角度が設定される。このようにすることで、前方カメラ46の左右の中心と、後方カメラ47の左右の中心がどこにあるかを分かり易くすることができる。
【0036】
また、畦塗り機30は、第1シリンダ41及び第2シリンダ42が設けられている。第1シリンダ41の伸縮により、作業部35のオフセット量(トラクタ1に対する横方向の位置)を調整することができる。また、図2の前進作業状態から第1シリンダ41を十分に縮ませることにより作業部35を中央にオフセット移動することができ、格納状態とすることができる。さらに、格納状態から第2シリンダ42を伸ばすことにより作業部35を回動させてバック作業によるリターン作業を可能としている。この状態は後述する図6のバック作業状態となる。第1シリンダ41及び第2シリンダ42は、図1のアクチュエータ20に相当している。
【0037】
トラクタ1の運転席5近傍には、タブレット60と操作ボックス70を配置可能となっている。上記カメラユニット45によるカメラの画像はタブレット60により表示させることができる。上記第1シリンダ41及び第2シリンダ42の操作や、設定の操作は、操作ボックス70又はタブレット60により可能である。ここで、図1の表示部18は、タブレット60が相当して、図1の設定入力部17は、操作ボックス70又はタブレット60が相当する。
【0038】
図3は、本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態における前進作業時の例を示す図である。
【0039】
圃場50には、通常は4辺の畦51を有している。そして、畦51は、上側の面は地面に平行な上面51aと、上面51aから圃場50側に向けて下がる傾斜面により形成される法面51bとで形成される。法面51bの下端部51cは圃場50側に位置している。ここで、上面51aはディスク部38の上面ローラ38aで、法面51bはディスク部38の法面ディスク38bで形成されるようになっている。
【0040】
図3に示すように、トラクタ1に装着された畦塗り機30は、作業部35がトラクタ1の横幅よりも右側にはみ出しており、横側の辺の畦51に相当する横畦52の位置に一致するように配置される。図3の状態からトラクタ1を前進させることで、旧畦に対して横畦52を新たに形成していくことができる。一方、横畦52の前方では、前方の辺の畦51に相当する前畦53と交差する。このときの法面51bの下端部51c同士の交点は前方角部57となる。また、横畦52の後方では、後方の辺の畦51に相当する後ろ畦54と交差する。このときの法面51bの下端部51c同士交点は後方角部58となる。
【0041】
カメラユニット45は、撮影範囲の左右の中心がディスク部38の端部38cの前後と一致している。このため、正確な位置での畦塗り作業の場合は、カメラユニット45の撮影範囲の左右の中心が法面51bの下端部51cのラインとも一致するようになる。図3では、前方カメラ46は、前方にある前方角部57へ向けて撮影しており、正確な位置での畦塗り作業の場合は、左右の中心に前方角部57が位置するようになる。また、後方カメラ47は、後方にある後方角部58へ向けて撮影しており、正確な位置での畦塗り作業の場合は、左右の中心に後方角部58が位置するようになる。
【0042】
図4は、本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態における表示の例を示す図であり、(a)は基準点が基準線からずれた状態を示し、(b)は基準点が基準線と一致している状態を示す。
【0043】
ここでの表示は、タブレット60による例を示している。タブレット60の表示画面61には、長手方向を上下方向とした場合、上下方向の中心より上側に前方カメラ画面62、下側に後方カメラ画面63が表示されている。これらを区別する分割線64は、上下方向の中心で左右方向に延びている。前方カメラ画面62には、前方カメラ46により撮影された映像が表示される。また、後方カメラ画面63には、後方カメラ47により撮影された映像が表示されるが、このとき、後方カメラ47により撮影された画像は撮影の上下方向に対して上下が逆転して表示される。ここで、前方カメラ46により、畦塗り機30による成形前の旧畦の映像が表示され、後方カメラ47により、畦塗り機30により成形された新畦の映像が表示されることになる。このとき、前方カメラ画面62及び後方カメラ画面63には、畦塗り機30の機体の一部が表示される。このことで、距離感や位置をつかみやすくなる。具体的には、前方カメラ画面62には耕耘部カバー37bの一部及び前側印48が映り込み、後方カメラ画面63にはディスクカバー39の一部及び後ろ側印49が映り込んでいる。
【0044】
また、表示画面61の左右の中心、すなわち、前方カメラ画面62及び後方カメラ画面63の左右の中心には、上下に延びる基準線65が表示されている。基準線65は、画面(撮影範囲)に対して常に同じ位置になり、前方カメラ46及び後方カメラ47の撮影範囲の左右の中心を示すことになる。また、基準線65は、ディスク部38の端部38cの位置で前後方向に延びるラインとなり、作業の基準線となる。なお、前側印48及び後ろ側印49は、基準線65上に位置している。さらに、表示画面61上に圃場内の特定の位置に相当する基準点を設定することができる。前方カメラ画面62には前方の第1基準点66が設定され、後方カメラ画面63には、後方の第2基準点67が設定される。設定の方法については後述する。ここでは、第1基準点66が図3で示した前方角部57と一致しており、第2基準点67が図3で示した後方角部58と一致している。これらを結ぶ線は、目標とする畦51の下端部51cのラインとなる。
【0045】
図4(a)の状態は、基準線65と、第1基準点66及び第2基準点67の位置がずれた状態を示している。この状態は、図3とは異なり、ディスク部38の端部38cと目標とする畦51の下端部51cのラインが一致しておらず、圃場50側へ作業部35がずれている状態を示している。このため、正確な位置で畦が形成されていない状態を示している。なお、表示画面61では、ずれの度合いに応じて、画面全体や特定の箇所の色をかえたりして、分かり易い表示としてもよい。
【0046】
図4(b)の状態は、基準線65と、第1基準点66及び第2基準点67の位置が一致している状態を示している。この状態は、図3と同様に、ディスク部38の端部38cと目標とする畦51の下端部51cのラインが一致している。このため、この状態では、正確な位置で畦が形成されていることを示している。
【0047】
図5は、本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態における操作ボックスの例を示す図である。
【0048】
操作ボックス70は、遠隔で操作や入力が可能な操作部である。ここでは無線による例を示しており、畦塗り機30の制御ボックス40に設置された演算部11や制御部12(制御システム部10)と無線により情報の送受信が可能となっている。上部に操作スイッチ部71を備え、下部に設定スイッチ部72を備えている。これらのスイッチは例えば、押しボタンスイッチを適用できる。
【0049】
操作スイッチ部71は、電源スイッチ71a、入るスイッチ71b、出るスイッチ71c、浅スイッチ71d、深スイッチ71e、前作業スイッチ71f、格納スイッチ71g、後作業スイッチ71h、散水スイッチ71iを備えている。電源スイッチ71aは電源のON、OFFを行うスイッチである。入るスイッチ71bは、畦の作業部35の位置をトラクタ1側に移動して調節するためのスイッチである。出るスイッチ71cは、畦の作業部35の位置を畦51側に移動して調節するためのスイッチである。浅スイッチ71dは、耕耘部37の深さを浅くするためのスイッチである。深スイッチ71eは、耕耘部37の深さを深くするためのスイッチである。前作業スイッチ71fは、畦塗り機30を前進作業状態とするためのスイッチである。格納スイッチ71gは、畦塗り機30を格納状態とするためのスイッチである。後作業スイッチ71hは、畦塗り機30をバック作業状態とするためのスイッチである。散水スイッチ71iは、散水装置を備えている場合にこれをON、OFFするためのスイッチである。
【0050】
設定スイッチ部72は、設定スイッチ72a、決定スイッチ72b、表示切換スイッチ72c、戻るスイッチ72d、上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hを備えている。
【0051】
設定スイッチ72aは、タブレット60の表示画面61において設定画面にするためのスイッチである。例えば、これを押すと、図4で示した、第1基準点66及び第2基準点67を設定するモードになる等である。
【0052】
決定スイッチ72bは、表示画面61において設定画面で選択したものを決定するためのスイッチである。例えば、これを押すと、図4で示したような、第1基準点66及び第2基準点67の設定を決定するためのスイッチである。
【0053】
表示切換スイッチ72cは、表示画面61において異なる画面に切り替えるためのスイッチである。例えば、これを押すと、図4で示した画面から他の画面に切り替わる等である。他の画面の例としては、耕耘部の深さの情報、作業部のオフセット量の情報、現在の作業速度の情報、姿勢の角度の情報等を示す画面である。なお、複数のカメラユニット16を備える場合は、表示切換スイッチ72cにより特定のカメラユニット45に対する画像に切り換えるようにしてもよい。
【0054】
戻るスイッチ72dは、表示画面61において前の画面に戻るためのスイッチである。
【0055】
上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hは、表示画面61において、目的の位置を、現在の位置からそれぞれ上下左右方向に移動させるためのスイッチである。例えば、これらを押している間は、図4で示したような、第1基準点66及び第2基準点67の位置を各方向に移動させることができる。
【0056】
図5に示したように操作ボックス70単体で図1の設定入力部17を構成することにより、防水性を高め農作業機の操作がやりやすい形状及び操作スイッチの配置とすることができる。一方、操作ボックス70の上述した各スイッチは、タブレット60に表示させるようにしてもよい。この場合、タブレット60は、タッチパネルで構成されることにより、図1で示した表示部18だけでなく設定入力部17の機能も一体に果たすことになる。このことで、設定入力部17を省略することができる。
【0057】
次に図2~5に示した第1の実施形態に基づき、実際の作業について説明する。
【0058】
まず、作業者はトラクタ1に畦塗り機30を装着させて、図3に示すように圃場50内に畦塗り機30を移動させる。圃場50内では、図5に示した操作ボックス70の前作業スイッチ71fを押して、図2や3の前進作業状態とする。そして、トラクタ1を操作して、後方角部58付近で、横畦52に沿って畦塗り機30を配置させる。このとき、カメラユニット45は、前方カメラ46で作業部35の前方を撮影し、後方カメラ47で作業部35の後方を撮影する。撮影した画像は、リアルタイムで、タブレット60へ送られる。タブレット60では、撮影した現在の画像が、図4で示したように表示される。このときの処理は、図1で示した、演算部11、制御部12を介して行われる。
【0059】
次に、第1基準点66及び第2基準点67を設定する。この設定は、カメラユニット45で撮影した画像に基づき、演算部11が前方角部57及び後方角部58を認識して設定することができる。このとき、前方カメラ46による画像に対する画像処理で、前方角部57を第1基準点66として判別する。また、後方カメラ47による画像に対する画像処理で、後方角部58を第2基準点67として判別する。このときの判別は、例えば、画素毎の輝度や色域判定等の画像処理により自動で特定することができる。そして、演算部11は、タブレット60の前方カメラ画面62に第1基準点66を、後方カメラ画面63に第2基準点67を実際の撮影画像上に表示させる。作業者はこの位置でよければ、操作ボックス70の決定スイッチ72bを押す等して、各基準点を確定させる。また、作業者が各基準点の位置を修正したいときは、操作ボックス70の上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hで位置を修正して、決定スイッチ72bで決定することで修正が可能である。
【0060】
一方、演算部11による画像処理で、前方角部57又は後方角部58を判別できずに、第1基準点66又は第2基準点67を判別できない場合は、そのことの表示を表示画面61に表示させて、作業者が手動により設定するようにする。作業者は、判別できていない基準点の位置を、操作ボックス70の上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hで位置を決めて、決定スイッチ72bで決定することにより手動で設定可能となる。
【0061】
次に、畦塗り作業を開始する。最初は、畦塗り機30の位置を合わせているため、第1基準点66及び第2基準点67は基準線65と一致しており、図4(b)の状態となる。この状態から、トラクタ1を前進させて畦塗り作業をしていく。トラクタ1を前進させていくと、前方カメラ46及び後方カメラ47でとらえた、前方カメラ画面62及び後方カメラ画面63の現在の画像は変化していく。しかし、演算部11は画像処理により、画像内で対応する第1基準点66及び第2基準点67は、常に設定された特定の同じ位置となるように算出される。すなわち前方角部57、後方角部58は、常に第1基準点66、第2基準点67となるように処理される。
【0062】
そして、図3で示した畦塗り機30が、横畦52から離れていくと、図4(a)の状態になる。この状態では、第1基準点66及び第2基準点67は、基準線65に対して右側にずれていることを示している。演算部11では、このことを認識して、第1シリンダ41を制御して、作業部35のオフセット量を調整する。具体的には、図4(b)の状態となるまで作業部35を横畦52に近づけるように第1シリンダ41を伸ばしていく。このことで、正確な畦塗り位置に調整することができる。すなわち、演算部11では、基準線65に対する第1基準点66及び第2基準点67のずれを算出して、基準線65と、第1基準点66及び第2基準点67を一致させる方向に第1シリンダ41の伸縮量を算出して、制御部12で第1シリンダ41を制御することを行う。
【0063】
また、第1シリンダ41を制御しない構成も適用できる。作業者がタブレット60の表示画面61で、第1基準点66及び第2基準点67と、基準線65とのずれを認識した場合、図5の操作ボックス70の入るスイッチ71b及び出るスイッチ71cによりオフセット量を調整することができる。具体的には、図4(a)の状態となった場合、出るスイッチ71cを押して、作業部35を図4(b)の状態になるまで横畦52に近づけるようにすることで調節することができる。
【0064】
また、第1シリンダ41を用いない固定式の場合は、畦に対するトラクタ1の走行の案内を出すことで作業支援することができる。このとき、第1基準点66及び第2基準点67と、基準線65のずれに応じて、タブレット60の表示画面61に、ずれを直す方向の走行案内を表示させる。例えば、タブレット60の表示画面61に、「畦側に移動して下さい」等の案内を行う等である。これにより作業者は、トラクタ1の操作により畦塗り機の位置を正しい方向に変更することができる。
【0065】
また、トラクタ1が自動走行可能な場合は、演算部11からトラクタ1側へ情報を提供することができる。すなわち、第1基準点66及び第2基準点67と、基準線65のずれの度合いを算出して、これらが一致するためにトラクタ1にどの程度移動させればよいかの情報を提供することで、トラクタ1が走行を補正し、正確な畦塗り作業が可能となる。さらに、トラクタ1が備える表示部に演算部11からの上述したずれに関する情報を表示させてもよい。
【0066】
なお、前方カメラ46や後方カメラ47で撮影した画像や、第1基準点66、第2基準点67、基準線65のそれぞれの位置や相互の位置関係等の情報は、記憶部13や外部記憶媒体15に記録させることができる。外部記憶媒体15であれば作業者が取り出して確認することが可能となる。
【0067】
このような作業支援システムの構成をともない、畦塗り機30が畦塗り作業を続けることで、目標の前後の2つの基準点間(第1基準点66及び第2基準点67)に対して、正確な畦塗り作業をすることができる。また、後方カメラ画面63では、後方カメラ47により塗り終わりの新畦が映し出されるため、畦塗り作業の状態を知ることができる。
【0068】
図6は、本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態におけるバック作業時の例を示す図である。
【0069】
図4の状態から前進作業を続けるとトラクタ1の先端は、前畦53に達する。このとき、少なくともトラクタ1の長さ分は畦塗り機30が畦塗り作業が続けることができない。このため、作業者は、図5に示した操作ボックス70の後作業スイッチ71hを操作して、第1シリンダ41及び第2シリンダ42を作動させて、バック作業状態とする。その状態が図6である。図6に示すように前進作業時に横畦52で塗り残した部分についてトラクタ1をバック(後進)させながら作業を行う。
【0070】
このとき、作業部35の前進する方向に対する向きは、前から耕耘部37、ディスク部38となり、前進作業時と同じである。このため、カメラユニット45がとらえる映像の関係も、前進作業時と同じである。すなわち、前方カメラ46で前方角部57をとらえて、後方カメラ47で後方角部58をとらえる。このとき、制御ボックス40内の演算部11は、画像処理により、図4に示した前進作業と同様の第1基準点66、第2基準点67を画像内で判別していき、基準線65に対する状態を算出しタブレット60の表示画面61に表示させる。さらに、前進作業時と同様に、それらに基づく第1シリンダ41等の制御を行うことができる。このことで、前進作業時と同じ基準点に基づく、作業が行われるため、正確な畦塗り作業が継続される。
【0071】
なお、第1の実施形態において、カメラユニット45は、垂直軸を回転軸として回動させて角度を変えられる構成としてもよい。畦塗り機30は、機体に力がかかり斜めのまま前進走行する場合もある。このため、カメラユニット45の角度を変えられることで、より正確な作業支援が可能となる。この場合、演算部11で第1基準点66に対する第2基準点67の左右方向の位置のずれを検知して、カメラユニット45を回動させるアクチュエータ等を用いて自動で角度を変えられるようにすることもできる。
【0072】
(第1の実施形態の変形例)
図7は、本発明の農作業機用作業支援システムの第1の実施形態の変形例における表示の例を示す図であり、(a)は基準点が基準線からずれた状態を示し、(b)は基準点が基準線と一致している状態を示す。
【0073】
第1の実施形態の変形例では、図2~6で説明した第1の実施形態に対して異なる点を説明する。
【0074】
ここでは、カメラユニット45に、前方カメラ46と後方カメラ47に加えて、横畦52側を撮影する側方カメラを追加する。そして、演算部11では、画像処理により、これら3つのカメラの画像を用いて、畦塗り機30を上から見たような構成の表示とする。その図を示したのが図7である。タブレット60の表示画面61には、上側に前方カメラ画面81が表示され、横側(畦側)に側方カメラ画面82が表示され、下側に後方カメラ画面83が表示される。前方カメラ画面81と側方カメラ画面82の間は、右斜め上方向に沿った第1分割線84により区別される。側方カメラ画面82と後方カメラ画面83の間は、右斜め下方向に沿った第2分割線85により区別される。そして、これらの間は画像がつながっているように処理が行われている。また、対応する位置に作業機表示86がなされ、畦塗り機30を上から見た図が表示される。また、前方カメラ画面81は、前方角部57まで表示される画像になるように画像処理が行わる。また、側方カメラ画面82は、側方カメラにより撮影された画像に対して90°回転したような画像になるように画像処理が行われる。また、後方カメラ画面83は、後方カメラ47により撮影された画像は上下を逆転するようにして後方角部58まで表示される画像になるように画像処理が行われる。
【0075】
図7(a)は、基準線65と、第1基準点66及び第2基準点67の位置がずれた状態を示している。図7(a)は、図4(a)に相当する状態を、3つのカメラにより、上から見たような画像となるように処理されて示されている。
【0076】
図7(b)は、基準線65と、第1基準点66及び第2基準点67の位置が一致している状態を示している。図7(b)は、図4(b)に相当する状態を、3つのカメラにより、上から見たような画像となるように処理されて示されている。
【0077】
このように第1の実施形態の変形例では、タブレット60の表示画面61に上から見たような画面を示すことで、現在の状態を作業者に分かり易く表示させることができる。
【0078】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の農作業機用作業支援システムの第2の実施形態の平面図を示す。第2の実施形態では、耕耘作業を行うロータリー100に適用する例を示す。なお、図8の上が前側で進行方向となり、下が後ろ側を示し、図8の左右方向が横方向を示す。なお、トラクタ1は図示を簡略化している。なお第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。
【0079】
ロータリー100は、装着部101がトラクタ1の後部に装着される。入力軸を備えるミッションケース102は、左側に左フレームパイプ103が、右側に右フレームパイプ104が接続されている。左フレームパイプ103の左側にはチェーンケース105が備えられ、右フレームパイプ104の右側にはブラケット106が備えられている。さらに、ミッションケース102、左フレームパイプ103、右フレームパイプ104の下側は、耕耘部カバー108となっている。耕耘部カバー108は、耕耘軸に備えられた複数の耕耘爪で構成される耕耘部の上部を覆っている。均平板109は耕耘部カバー108の後ろ側で耕耘部の後ろを覆うように耕耘部カバー108に対して回動可能に接続されている。トラクタ1からのPTO動力は、入力軸からミッションケース102内のギア、左フレームパイプ103内の軸、チェーンケース105内のチェーン等を介して耕耘部カバー108の下側の耕耘軸へ伝達され、耕耘軸を回転させて耕耘作業を行う。
【0080】
制御ボックス110は、右フレームパイプ104に取り付けられており、図1で示した演算部11、制御部12、記憶部13や、必要に応じて情報入出力部14、外部記憶媒体15などを格納することができる。
【0081】
カメラユニット115は、図1のカメラユニット16に相当し、ロータリー100の左右の端部付近で、耕耘幅の端部付近に相当する位置の上部にそれぞれ設置されている。具体的には、左フレームパイプ103の左端近傍の上部と、右フレームパイプ104の右端近傍の上部に取り付けられている。そして、カメラユニット115は、作業方向の前方に向けた前方カメラ116と、作業方向に対して後ろ側に向けた後方カメラ117の2つのカメラによる構成である。これらは、撮影範囲の左右方向の中心ラインが一致しており、一体に構成されている。これらの一体構成は、工場において一体に形成することで、後のキャリブレーションをすることなしに、撮影の左右の中心ラインが一致した正確な構成とすることができる。そして、カメラユニット115は、ロータリー100の耕耘部の耕耘幅の端部の前後方向のラインと、前方カメラ116及び後方カメラ117の左右方向の撮影範囲の中心と一致するように配置されている。もしくは、前方カメラ116及び後方カメラ117の左右方向の撮影範囲の中心は、ロータリー100の耕耘部の耕耘幅よりもわずかに内側(例えば、30cm以内程度)に配置してもよい。
【0082】
さらに、左右のそれぞれの前方カメラ116の撮影範囲の左右の中心上に前側印118がロータリー100の一部に形成されている。具体的には、前側印118は耕耘部カバー108の前側にそれぞれ形成され、前方カメラ116に耕耘部カバー108の一部と共に前側印118が映るように前方カメラ116の画角や角度が設定される。さらに、左右のそれぞれの後方カメラ117の撮影範囲の左右の中心上に後ろ側印119がロータリー100の一部に形成されている。具体的には、後ろ側印119は均平板109の後ろ側付近に形成され、後方カメラ117に均平板109の一部と共に後ろ側印119が映るように後方カメラ117の画角や角度が設定される。このようにすることで、前方カメラ116の左右の中心と、後方カメラ117の左右の中心がどこにあるかを分かり易くすることができる。
【0083】
トラクタ1の運転席5近傍には、タブレット60と操作ボックス70’を配置可能となっている。上記カメラユニット115によるカメラの画像はタブレット60により表示させることができる。設定の操作は、操作ボックス70’又はタブレット60により可能である。ここで、図1の表示部18は、タブレット60が相当して、図1の設定入力部17は、操作ボックス70’又はタブレット60が相当する。なお、第2の実施形態におけるタブレット60の表示例については後述する。また、操作ボックス70’は、図5で説明した操作ボックス70に準じて構成することができる。具体的には、操作スイッチ部71は、ロータリー100に対応した操作スイッチの構成とする。また、設定スイッチ部72は、図5と同じスイッチ構成で後述する第2の実施形態の作業支援システムの設定を行うことができる。
【0084】
図9は、本発明の農作業機用作業支援システムの第2の実施形態における作業時の例を示す図である。
【0085】
圃場120において、トラクタ1に装着したロータリー100を前進させて耕耘作業を行う。そして、圃場120の際まできたらトラクタ1を180°ターンさせて横隣りの未耕耘エリアを耕耘していき、さらに反対側の際まできたら、トラクタ1を180°ターンさせて横隣りの未耕耘エリアを耕耘させていく。このようにして、トラクタ1を往復させながら耕耘作業を行い、圃場120全体の耕耘を行っていくことができる。なお、圃場120は畦201、202、203に囲まれており、畦に接する部分が圃場120の際となる。そして、通常は、畦201、202、203に対して、畦から所定距離だけ枕地301、302、303分を残して耕耘作業を行う。すなわち、枕地301、302、303は耕耘しない部分となる。図9では、横側の圃場の畦201側から作業を行っており、畦202から畦203へ向けて耕耘作業を行って、一回ターンをして、そこから畦202へ向けて耕耘作業を継続している状態を示している。ここで、枕地302と耕耘終了エリア125の境目を耕耘際122とし、枕地303と耕耘終了エリア125、126の境目を耕耘際123とする。
【0086】
このとき、基準点は圃場内の特定の位置に相当しており、第1基準点131は、右横隣の耕耘終了エリア125と前側の未耕耘エリア127の境目のラインPと、前方の耕耘際122との交点を示している。また、第2基準点132は、右横隣の耕耘終了エリア125と前側の未耕耘エリア127の境目のラインPと、後方の耕耘際123との交点を示している。第3基準点133は、後ろ側の耕耘終了エリア126と左横隣の未耕耘エリア128との境目のラインQと、前方の畦202(圃場の際)との交点を示している。第4基準点134は、後ろ側の耕耘終了エリア126と左横隣の未耕耘エリア128との境目のラインQと、後方の耕耘際123との交点を示している。なお、第1基準点131は、ラインPと前方の畦202(圃場の際)との交点でもよい。また、第2基準点132は、ラインPと後方の畦203(圃場の際)との交点でもよい。また、第4基準点134は、ラインQと後方の畦203(圃場の際)との交点でもよい。
【0087】
ロータリー100のカメラユニット115は、撮影範囲の左右の中心が、耕耘幅の端部に設置されている。このため、正確な位置での耕耘作業の場合は、カメラユニット115の撮影範囲の左右の中心が隣の耕耘終了エリア125と前方の未耕耘エリア127との境目のラインPと一致するようになる。図9では、右側のカメラユニット115の前方カメラ116は、前方の第1基準点131へ向けて撮影しており、正確な位置での耕耘作業の場合は、左右の中心に第1基準点131が位置するようになる。右側のカメラユニット115の後方カメラ117は、後方の第2基準点132へ向けて撮影しており、正確な位置での耕耘作業の場合は、左右の中心に第2基準点132が位置するようになる。左側のカメラユニット115の前方カメラ116は、前方の第3基準点133へ向けて撮影しており、正確な位置での耕耘作業の場合は、左右の中心に第3基準点133が位置するようになる。左側のカメラユニット115の後方カメラ117は、後方の第4基準点134へ向けて撮影しており、正確な位置での耕耘作業の場合は、左右の中心に第4基準点134が位置するようになる。
【0088】
図10は、本発明の農作業機用作業支援システムの第2の実施形態における表示の例を示す図であり、(a)は基準点が基準線からずれた状態を示し、(b)は基準点が基準線と一致している状態を示す。
【0089】
ここでの表示は、タブレット60による例を示している。タブレット60の表示画面61には、長手方向を上下方向とした場合、上下方向の中心より上側に前方カメラ画面141、下側に後方カメラ画面142が表示されている。これらを区別する分割線144は、上下方向の中心で左右方向に延びている。ここで示される前方カメラ画面141には、右側の前方カメラ116により撮影された映像が表示される。また、後方カメラ画面142には、右側の後方カメラ117により撮影された映像が上下逆転して表示される。ここでは、右側の前方カメラ116により、ロータリー100による耕耘前の未耕耘エリア127と右隣ですでに耕耘された耕耘終了エリア125の映像が表示されることになる。さらに、右側の後方カメラ117により、ロータリー100により耕耘された右側の耕耘終了エリア125と後ろ側の耕耘終了エリア126の映像が表示されることになる。このとき、前方カメラ画面141及び後方カメラ画面142には、ロータリー100の機体の一部が表示させる。このことで、距離感や位置をつかみやすくなる。具体的には、前方カメラ画面141には耕耘部カバー108の一部及び前側印118が映り込み、後方カメラ画面142には均平板109の一部及び後ろ側印119が映り込んでいる。
【0090】
また、表示画面61の左右の中心、すなわち、前方カメラ画面141及び後方カメラ画面142の中心には、上下に延びる基準線145が表示されている。基準線145は、画面(撮影範囲)に対して常に同じ位置になり、前方カメラ116及び後方カメラ117の撮影範囲の左右の中心を示すことになる。ここで、基準線145は、ロータリー100の耕耘幅の端部の位置で前後方向に延びるラインとなり、作業の基準線となる。なお、前側印118及び後ろ側印119は、基準線145上に位置している。さらに、表示画面61上に基準点を設定することができる。前方カメラ画面141には第1基準点131が設定され、後方カメラ画面142には第2基準点132が設定される。設定の方法については後述する。ここで、第1基準点131及び第2基準点132は図9で説明した圃場120内の特定の位置に設定される基準点であり、第1基準点131と第2基準点132を結ぶラインは目標とする耕耘幅の端部のラインとなる。
【0091】
図10(a)の状態は、基準線145と、第1基準点131及び第2基準点132の位置がずれた状態を示している。この状態は、図9とは異なり、ロータリー100における耕耘部の端部(基準線145)が隣りの耕耘終了エリア125と前方の未耕耘エリア127の間のラインPと一致していない状態を示している。ロータリー100は、隣りの耕耘終了エリア125から基準よりも離れているため、正確な位置で耕耘作業ができておらず、耕耘されない部分が生じてしまう。
【0092】
図10(b)の状態は、基準線145と、第1基準点131及び第2基準点132の位置が一致している状態を示している。この状態は、図9と同様に、ロータリー100における耕耘部の端部(基準線145)が隣りの耕耘終了エリア125と前方の未耕耘エリア127の間のラインPと一致している。このため、この状態では、正確な位置で耕耘作業がされていることを示している。
【0093】
次に、図8~10に示した第2の実施形態に基づき、実際の作業について説明する。
【0094】
作業者はトラクタ1にロータリー100を装着させて、圃場120内で耕耘作業を行う。図9のように、ロータリー100が圃場120内で耕耘作業を行っている場合、カメラユニット115は、前方カメラ116でロータリー100の前方を撮影し、後方カメラ117でロータリー100の後方を撮影する。撮影した画像は、リアルタイムで、タブレット60へ送られる。タブレット60では、撮影した現在の画像が、図10で示したように表示される。このときの処理は、図1で示した、演算部11、制御部12を介して行われる。ただし、カメラユニット115は両側に配置されているので、操作ボックス70’の表示切換スイッチ72cで左右の表示を切り替えるようにすることができる。
【0095】
図9の状態において、第1基準点131及び第2基準点132が設定される。この設定は、右側(すでに耕耘作業を行った側)のカメラユニット115で撮影した画像に基づき、演算部11が画像処理により右側横隣の耕耘終了エリア125と前側の未耕耘エリア127の境目を判別する。そして、その境目のラインPと前方の耕耘際122との交点を第1基準点131とする。このときの判別は、例えば、画素毎の輝度や色域判定等の画像処理により特定することができる。また、後方カメラ117の画像に対する処理では、前方カメラ116により判別した境目のラインPの情報を取得して、その延長上のラインPを算出して、そのラインPの後方の耕耘際123との交点を第2基準点132と判別する。作業者はこの位置でよければ、操作ボックス70’の決定スイッチ72bを押して、各基準点を確定させる。また、作業者が各基準点の位置を修正したいときは、操作ボックス70’の設定スイッチ部72の上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hで位置を修正して、決定スイッチ72bで決定することで修正が可能である。
【0096】
一方、演算部11による画像処理で、第1基準点131及び第2基準点132を判別できない場合は、そのことの表示を表示画面61に表示させて、作業者が手動により設定するようにする。作業者は、判別できていない基準点の位置を、操作ボックス70’の上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hで位置を決めて、決定スイッチ72bで決定することにより手動で設定可能となる。
【0097】
また、別の方法として、予め第3基準点133及び第4基準点134を判別しておく方法がある。例えば、図9において、左側(この後に耕耘作業を行う側)のカメラユニット115で撮影した画像に基づき、演算部11が左側横隣の未耕耘エリア128と後ろ側の耕耘終了エリア126の境目を認識して設定することができる。このとき、後方カメラ117による画像に対する画像処理で、左側横隣の未耕耘エリア128と後ろ側の耕耘終了エリア126の境目を判別して、その境目のラインQと後方の耕耘際123との交点を第4基準点134とする。このときの判別は、例えば、画素毎の輝度や色域判定等の画像処理により特定することができる。また、前方カメラ116の画像に対する処理では、後方カメラ117により判別した境目のラインQの情報を取得して、その延長上のラインQを算出して、そのラインQの前方の畦202(圃場の際)との交点を第3基準点133と判別する。そして、ロータリー100が畦202の手前でターンした場合、ロータリー100に対する前後の基準点の位置が入れ代わる。ここで、すでに判別した第4基準点134の情報を用いて左側の前方カメラ116による画像内で前方の基準点として改めて判別する。また、すでに判定した第3基準点133の情報を用いて後方カメラ117による画像内で後方の基準点として改めて判別する。このことで、より早く次の工程による基準点を判別することが可能となる。
【0098】
ロータリー100の耕耘作業中においては、トラクタ1を前進させていくと、前方カメラ116及び後方カメラ117でとらえた、前方カメラ画面141及び後方カメラ画面142の現在の画像は変化していく。しかし、演算部11は画像処理により、画像内で対応する第1基準点131及び第2基準点132は、圃場120における常に対応する同じ位置となるように算出される。また、ロータリー100をターンさせると、左右が入れ替わるため、対応するカメラユニット115も左右が入れ替わる。すなわち、図9の状態で、右側のカメラユニット115であれば、180度ターンした場合は、今度は左側のカメラユニット115による画像が、表示画面61に表示されて、これに基づき画像処理が行われる。
【0099】
図9で示したロータリー100が、右側の耕耘終了エリア125から左側に離れていくと、図10(a)の状態になる。この状態では、第1基準点131及び第2基準点132は、基準線145に対して左側にずれていることを示している。演算部11では、このことを認識して、タブレット60の表示画面61に、トラクタ1の走行の案内を出すことができる。ここでは、左側にずれているので、右側に寄るように案内をする。例えば、「右側に移動して下さい」などである。作業者はそれにより、トラクタ1を操作して修正をさせる。そして正しい位置になったら図10(b)の状態になり、作業者は正しく修正されていることを認識することができる。なお、ロータリー100の進行方向がずれると、向きが斜めになるため、表示画面61に表示される第1基準点131に対する第2基準点132の左右方向の位置がずれることになる。この場合、演算部11で第1基準点131に対する第2基準点132の左右方向の位置のずれを検知して、この左右のずれを直す方向となるようにロータリー100(トラクタ1)の向きを修正する走行案内をだしてもよい。
【0100】
また、トラクタ1が自動走行可能な場合は、演算部11からトラクタ1側へ情報を提供することができる。すなわち、第1基準点131及び第2基準点132と、基準線145のずれの度合いを算出して、これらが一致するためにトラクタ1にどの程度移動させればよいかの情報を提供することで、トラクタ1が走行を補正し、正確な耕耘作業が可能となる。
【0101】
なお、耕耘を始める最初の位置においては、一方の側面は畦側になるため、表示画面61にはその画像が映し出されることになる。このとき基準点は、演算部11により画像処理で、畦側の際を判別して枕地の幅を考慮することで算出することができる。また、判別できない場合は、操作ボックス70’の設定スイッチ部72の操作により手動で基準点を操作すればよい。
【0102】
なお、前方カメラ116や後方カメラ47で撮影した画像や第1基準点131、第2基準点132、第3基準点133、第4基準点134、基準線145のそれぞれの位置や相互の位置関係等の情報は、記憶部13や外部記憶媒体15に記録させることができる。外部記憶媒体15であれば作業者が取り出して確認することが可能となる。
【0103】
このような作業支援システムの構成をともない、ロータリー100が耕耘作業を続けることで、目標の前後の2つの基準点間(第1基準点131及び第2基準点132)に対して、正確な位置での耕耘作業をすることができる。また、後方カメラ画面142では、後方カメラ117により耕耘後の状態が映し出されるため、耕耘作業が適切であるかを知ることができる。
【0104】
なお、第2の実施形態において、カメラユニット115は、垂直軸を回転軸として回動させて角度を変えられる構成としてもよい。ロータリー100は、傾斜地等では斜めに進むこともある。このため、カメラユニット115の角度を変えられることで、より正確な作業支援が可能となる。この場合、演算部11で第1基準点131に対する第2基準点132の左右方向の位置のずれを検知して、カメラユニット115を回動させるアクチュエータ等を用いて自動で角度を変えられるようにすることもできる。
【0105】
以上の様に、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態が含まれる。例えば、上記した実施形態に設けられた全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を削除したり、他の実施形態の構成に置き換えたり、あるいはまた、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0106】
例えば、第1の実施形態では畦塗り機について、第2の実施形態ではロータリーに適用する場合について示してきたが、これ以外のトラクタに装着する農作業機にも適用することができる。例えば代掻き作業機などである。
【0107】
また、表示画面61は、前方カメラ画面62及び後方カメラ画面63の左右の中心に基準線65で示すことで、基準線の位置が分かり易い構成となっているが、これに限らず、前方カメラ画面62、141及び後方カメラ画面63、142(前方カメラ46、116及び後方カメラ47、117の撮影範囲)に対する位置が一定であれば、中心から左右方向にずれて構成してもよい。
【0108】
また、カメラユニット45、115は、前方カメラ46、116、後方カメラ47、117等による構成を示したが、これ以外に360°撮影可能なカメラ(全球型カメラ等)を適用することもできる。この場合、表示画面61には、画像処理により図4や7に示したような前方の撮影画面と後方の撮影画面に分割して表示させてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 トラクタ
10 制御システム部
11 演算部
12 制御部
13 記憶部
14 情報入出力部
15 外部記憶媒体
16 カメラユニット
17 設定入力部
18 表示部
19 出力部
20 アクチュエータ
21 状態検知部
30 畦塗り機
35 作業部
37 耕耘部
38 ディスク部
40、110 制御ボックス
41 第1シリンダ
42 第2シリンダ
45、115 カメラユニット
46、116 前方カメラ
47、117 後方カメラ
48、118 前側印
49、119 後ろ側印
60 タブレット
61 表示画面
62、81、141 前方カメラ画面
63、83、142 後方カメラ画面
65、145 基準線
66、131 第1基準点
67、132 第2基準点
133 第3基準点
134 第4基準点
70、70’ 操作ボックス
71 操作スイッチ部
72 設定スイッチ部
82 側方カメラ画面
86 作業機表示
100 ロータリー
108 耕耘部カバー
125、126 耕耘終了エリア
127、128 未耕耘エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10