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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】農作業機用作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20220524BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A01B35/00 B
A01B63/10 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018167637
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020039268
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 健一
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108653(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017367(WO,A1)
【文献】特開2017-158532(JP,A)
【文献】特開2012-105557(JP,A)
【文献】特開2004-254522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して圃場内で農作業を行う農作業機に適用する農作業機用作業支援システムにおいて、
前記農作業機に装着するカメラと、演算部とを備え、
前記カメラは、上部から前記農作業機及び前記農作業機の前後の所定範囲を撮影可能であり、
前記演算部は、前記カメラで撮影された画像に対して、圃場内又は圃場の周辺の特定の位置に設定される目標である前記農作業機よりも前方の基準点及び前記農作業機よりも後方の基準点を結ぶ基準線を設定し、さらに、前記農作業機上の特定の位置に移動点を定め、前記移動点が前記基準線上にあるか否かと、前記移動点の移動による進行方向が前記基準線と平行であるか否かを算出することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記カメラは画角が180°以上であることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記カメラの撮影範囲の中心が前記移動点であることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
表示部を備え、前記表示部は、前記カメラで撮影した画像と、前記基準線と、前記移動点と、前記進行方向を表示することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記移動点は、特定の印で表示し、前記移動点が前記基準線に対して予め定めた距離以上離れた場合、前記特定の印の表示方法を変更することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記進行方向は、矢印で表示し、前記進行方向が前記基準線に対して予め定めた角度以上ずれた場合、前記矢印の表示方法を変更することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記演算部は、画像処理により判別して前記基準点を圃場内又は圃場の周辺の特定の位置に設定することを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
設定入力部を備え、前記基準点は前記設定入力部の操作により設定可能であることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【請求項9】
請求項4から6のいずれか一項を引用する請求項8に記載の農作業機用作業支援システムにおいて、
前記表示部と前記設定入力部は、表示画面上の表示を触れることで信号が入力されるタッチパネルにより一体に構成されることを特徴とする農作業機用作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機用作業支援システムに関し、特に、トラクタに装着する農作業機に対してより正確な農作業を可能とする農作業機用作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに装着する農作業機では、作業者が農作業機の作業位置および方向を目視で確認しながら、トラクタ及び農作業機の操作を行って調整をしていた。このとき、農作業機の大きさが大きい場合や、農作業を行う作業部の位置によっては、死角となるため、作業者から目視確認しにくい場合があった。さらに、農作業機の操作を適切に行うことができずに高精度な作業が困難な場合や、運転技術の正確さが不足しているため作業効率が低下する場合もあった。
【0003】
このため、特許文献1では、前処理体の前側に、位置方位センサを設けて、この位置方位センサにより、元畦の位置を検出し、元畦に対して所望の新畦が形成されるように畦塗り機の位置及び方位を自動制御する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、カメラで撮影された画像において予め定めた目標点と最新の画像における目標点に対応する位置のズレを検出して、このズレを修正するようにオフセットアクチュエータを作動させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-254522号公報
【文献】特開2017-108653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、元畦に沿った制御となるため、元畦が曲がっている場合には、新畦も曲がる可能性があり、直線的に作業することが困難であった。
【0007】
さらに、特許文献2では、目標点を基準に行うことで正確な農作業が可能であるが、後方の基準点や進行方向に対して傾いて作業する場合は考慮してなかった。ここで、後方の基準点や進行方向を考慮すれば、さらに正確な農作業を行える余地がある。
【0008】
この他に測位衛星の信号を利用した測位システムを搭載して、トラクタの走行位置をガイドする方法も考えられるが、現状では、正確な農作業に対しては測位精度が不十分であり、精度の向上が求められる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタに装着する農作業機に対してより正確な農作業を可能とするための農作業機用作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、トラクタに装着して圃場内で農作業を行う農作業機に適用する農作業機用作業支援システムにおいて、前記農作業機に装着するカメラと、演算部とを備え、前記カメラは、上部から前記農作業機及び前記農作業機の前後の所定範囲を撮影可能であり、前記演算部は、前記カメラで撮影された画像に対して、圃場内又は圃場の周辺の特定の位置に設定される目標である前記農作業機よりも前方の基準点及び前記農作業機よりも後方の基準点を結ぶ基準線を設定し、さらに、前記農作業機上の特定の位置に移動点を定め、前記移動点が前記基準線上にあるか否かと、前記移動点の移動による進行方向が前記基準線と平行であるか否かを算出することを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記カメラは画角が180°以上であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記カメラの撮影範囲の中心が前記移動点であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、表示部を備え、前記表示部は、前記カメラで撮影した画像と、前記基準線と、前記移動点と、前記進行方向を表示することを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記移動点は、特定の印で表示し、前記移動点が前記基準線に対して予め定めた距離以上離れた場合、前記特定の印の表示方法を変更することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記進行方向は、矢印で表示し、前記進行方向が前記基準線に対して予め定めた角度以上ずれた場合、前記矢印の表示方法を変更することを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記演算部は、画像処理により判別して前記基準点を圃場内又は圃場の周辺の特定の位置に設定することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、設定入力部を備え、前記基準点は前記設定入力部の操作により設定可能であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機用作業支援システムの一つは、前記表示部と前記設定入力部は、表示画面上の表示を触れることで信号が入力されるタッチパネルにより一体に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、農作業機用作業支援システムにおいて、トラクタに装着する農作業機に対してより正確な農作業を可能とすることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の農作業機用作業支援システムにおけるブロック図の例を示す。
図2】本発明の農作業機用作業支援システムの一実施形態の平面図を示す。
図3】本発明の農作業機用作業支援システムの一実施形態の側面図を示す。
図4】本発明の農作業機用作業支援システムを適用する農作業機が前進作業状態である場合の例を示す図である。
図5】本発明の農作業機用作業支援システムにおけるカメラで撮影された画像の例を示すイメージ図である。
図6】本発明の農作業機用作業支援システムにおける第1の状態の表示例を示す図である。
図7】本発明の農作業機用作業支援システムにおける第2の状態の表示例を示す図である。
図8】本発明の農作業機用作業支援システムにおける操作部の例を示す図である。
図9】本発明の農作業機用作業支援システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の農作業機用作業支援システムにおける第1の状態の表示例の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の農作業機用作業支援システムにおけるブロック図の例を示す。本発明の農作業機用作業支援システムは、トラクタに本体を装着して農作業を行う農作業機に適用するものである。農作業機用作業支援システムは、演算部11、制御部12、記憶部13、カメラユニット16、設定入力部17、表示部18を備えている。さらに、記憶部13に加えて、あるいは、記憶部13に代えて、情報入出力部14と外部記憶媒体15を備えていてもよい。また、アクチュエータを制御する場合は、出力部19、アクチュエータ20を備えている。このとき、状態検知部21を必要に応じて設けることができる。これらの配置場所は、後述するようにその目的に応じてふさわしい場所に設置される。そして、演算部11、制御部12は、制御システム部10として一体に構成されている。なお、演算部11と制御部12は別々に構成してもよい。
【0018】
演算部11は、カメラユニット16からの情報、設定入力部17で入力された情報、状態検知部21を設ける場合は状態検知部21からの情報、記憶部13又は外部記憶媒体15からの情報等に基づき作業支援システムに必要な演算処理を行う。特に、基準線、基準点のそれぞれの位置、これらの相互の位置関係等の状態を算出するとともに、農作業機の進行方向も算出することができる。この演算に基づき表示部18に結果を表示させる。また、アクチュエータ20を備える場合はこれを制御するための演算を行う。また、記憶部13又は外部記憶媒体15に必要な情報を記録させる。演算部11での具体的な演算内容は後述する。また、演算部11は、カメラユニット16で撮影した映像を表示部18に表示させるための処理も行う。
【0019】
制御部12は、表示部18に表示させるための指令や記憶部13又は外部記憶媒体15に情報を記録させるための指令もだす。また、演算部11での演算結果に基づき出力部19へ動作指令をだしてアクチュエータ20を制御する。
【0020】
記憶部13は、演算部11の演算処理に必要な情報を記録しておき、さらに、演算部11の演算処理による結果を記録しておく記憶装置である。例えば、HDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)等を適用できる。記憶部13は、演算部11や制御部12(制御システム部10)と一体に構成してもよい。
【0021】
情報入出力部14は、演算部11で処理した情報を外部記憶媒体15に記録させるための手段である。また、外部記憶媒体15から情報をとり出し、演算部11に情報を送信することもできる。なお、情報は無線通信で入出力してもよい。
【0022】
外部記憶媒体15は、演算部11の演算処理による結果を記録しておく記憶媒体であり、情報入出力部14に対して着脱可能であり、作業者が単体で持ち運ぶことができる。外部記憶媒体15は、例えば、SDメモリーカードやUSBメモリ(USBフラッシュメモリ)等を適用できる。また、演算部11の演算処理に必要な情報を記録しておくこともできる。
【0023】
カメラユニット16は、例えば、半天球カメラ、全天球カメラ、超広角カメラ、魚眼レンズによるカメラ等の広い範囲を撮影可能なカメラを備える構成として適用できる。このカメラは、後述するように、前側の基準点、後ろ側の基準点、農作業を行う作業部を含めた範囲を一度に撮影可能なカメラである。このカメラは下向きに設置され、画角は、例えば、画角が170°以上、もしくは180°以上の画角を備えていると広い範囲撮影可能となる。例えば、180°程度の画角を備えたカメラ等を適用できる。カメラユニット16は農作業機の本体に作業支援のための適切な位置に設置される。特に、農作業を行う作業部に設置して、撮影範囲の中心もしくは撮影範囲の特定の位置が農作業機側の作業の基準となる位置に設定されることが好ましい。カメラユニット16によるカメラは、一般的な受光タイプを適用でき、単位時間当たり所定のフレーム数をとらえて映像として撮影できるビデオカメラが適用できる。具体的には、例えば、レンズで集められた光を撮像素子(CCDやCMOS)上に結像させ、光を電気信号に変換して、その情報がデジタル情報として演算部11に送られる。なお、カメラユニット16によるカメラは、一般的な受光タイプの他、光源を備えているものでもよく、可視光のみでなく赤外線を感知できるものでもよい。
【0024】
設定入力部17は、必要な設定を行うための入力手段である。例えば、カメラユニット16からのカメラの画像に基づき演算部11での演算のために必要な情報を入力する。設定入力部17の構成は、例えば、表示画面上の表示に触れることで信号が入力されるタッチパネル、もしくは、押しボタンスイッチやトグルスイッチ等のスイッチ類等を適用できる。設定入力部17は、作業者が操作し易いように、トラクタの運転席近傍に配置できるようにするとよい。そして、設定入力部17から演算部11へ操作の信号が送信される。ここで、設定入力部17と演算部11とは有線による送受信のシステムであってもよく、無線による送受信のシステムでもよい。
【0025】
表示部18は、カメラユニット16からのカメラの画像や、演算部11の処理による情報を表示する手段である。表示部18は、液晶、有機EL、LED等の各種の表示手段により情報を表示させる。表示部18は、作業者が確認し易いように、トラクタの運転席近傍に配置できるようにするとよい。ここで、表示部18と演算部11とは有線による送受信のシステムであってもよく、無線による送受信のシステムでもよい。また、表示部18は設定入力部17と一体に形成することもできる。このとき、タッチパネルによる表示として、表示と設定操作を同じ画面上で行うようにしてもよい。表示の具体例については後述する。
【0026】
出力部19は、制御部12からの動作指令に基づきアクチュエータ20を作動させる。
【0027】
アクチュエータ20は、農作業機の本体の一部を必要に応じて可動させるためのアクチュエータである。アクチュエータ20としては、例えば、油圧シリンダや電動油圧シリンダ等のシリンダやモータ等である。特に、農作業機の本体の一部である農作業を行う作業部の位置を移動させるアクチュエータに対して制御をすることで後述するような作業支援が可能となる。
【0028】
状態検知部21は、アクチュエータ20又はアクチュエータ20により作動する農作業機の一部分の現在の状態を検知する手段である。例えば、ストロークセンサ、回転センサ等、各種センサを用いて状態を検知してもよい。また、アクチュエータ20の電流又は電圧値から現在の状態を検知してもよい。状態検知部21の情報はアクチュエータ20の正確な制御のために用いることもできる。
【0029】
ここで、演算部11及び制御部12(制御システム部10)は、トラクタに装着する農作業機の本体側に設置することができる。また、これらは、設定入力部17が有線接続の場合は、設定入力部17と一体又は設定入力部17の近傍に設置してもよい。記憶部13も同様である。演算部11及び制御部12は、CPU等の電子デバイス等を適用できる。また、情報入出力部14、外部記憶媒体15は、演算部11及び制御部12(制御システム部10)と一体に構成することも可能である。また、情報入出力部14、外部記憶媒体15を、設定入力部17や表示部18側に設けることも可能である。
【0030】
図2は、本発明の農作業機用作業支援システムの一実施形態の平面図を示す。図3は、本発明の農作業機用作業支援システムの一実施形態の側面図を示す。ここでの実施形態では、農作業機として畦塗り作業を行う畦塗り機30に適用する例を示す。なお、図2の上が前側(畦塗り作業の前進方向)、下が後ろ側を示し、図2の左右方向が横(左右)方向を示す。また、図3の左が前側、右が後ろ側である。なお、図2、3ともにトラクタ1は図示を簡略化している。
【0031】
畦塗り機30は、装着部32がトラクタ1の後部に装着される。中間フレーム33の一端側は装着部32に対して回動可能に接続されており、中間フレーム33の他端側は回動機構34をともない作業部35と接続されている。作業部35は、前側が耕耘部37でその後ろにディスク部38が設けられている。トラクタ1からのPTO動力は、図示を省略した伝動機構を介して作業部35へ送られる。作業部35は、耕耘部37の爪37a等の回転により、旧畦の土をディスク部38へ送り、そしてディスク部38の回転により新たな畦形状に整形する構成である。耕耘部37は、複数の爪37aの上部は耕耘部カバー37bで覆われている。また、ディスク部38では、畦の法面を固める円錐状の法面ディスク38bと、畦の上面を固める円筒状の上面ローラ38aとで構成され、左右方向を回転軸方向としてこれらが回転する。ここで、左右方向のトラクタ1の中心側におけるディスク部38の端部38c(ディスク部38の内側端部)は、畦の法面の下端部に位置する。
【0032】
制御ボックス40は、装着部32に取り付けられており、図1で示した演算部11、制御部12、記憶部13や、必要に応じて情報入出力部14、外部記憶媒体15などを格納することができる。
【0033】
カメラユニット45は、図1のカメラユニット16に相当し、カメラ46と取付部材47で構成されている。カメラ46は、前後方向ではディスク部38の回転軸の上部に位置し、横方向ではディスク部38の端部38cに位置して設置されている。そして、カメラ46は、ディスクカバー39上に取り付けられる取付部材47を介して所定高さを有して備えられている。カメラ46は、所定高さから下側を撮影可能なように設置されており、後述する横畦52の前方角部57及び後方角部58も撮影範囲に入るような画角が設定されている。また、このとき畦塗り機30も撮影範囲に入るようになる。ここで、画角の中心が真下になっており、ちょうど、ディスク部38の端部38cとディスク部38の回転軸の交点になるようにすることで、作業の分かり易い基準とすることができる。また、取付部材47を介してカメラ46を取り付ける高さは、上記の撮影範囲を満たす高さを採用できる。図3の例では、トラクタ1よりも高い高さに設定されている。取付部材47は、例えば、棒状部材や板状部材等の必要なフレームで構成される。取付部材47は、カメラ46の撮影範囲の妨げに極力ならないように、例えば、カメラ46の左右方向にフレームを設けて固定するなどして構成される。
【0034】
また、畦塗り機30は、第1シリンダ41及び第2シリンダ42が設けられている。第1シリンダ41の伸縮により、作業部35のオフセット量(トラクタ1に対する横方向の位置)を調整することができる。また、図2の前進作業状態から第1シリンダ41を十分に縮ませることにより作業部35を中央にオフセット移動することができ、格納状態とすることができる。さらに、格納状態から第2シリンダ42を伸ばすことにより作業部35を回動させてバック作業状態としてリターン作業を可能としている。このとき、作業部35は左右反対の左側へ突出して、作業部35の前後は逆転する。第1シリンダ41及び第2シリンダ42は、図1のアクチュエータ20に相当している。
【0035】
トラクタ1の運転席5近傍には、タブレット60と操作ボックス70を配置可能となっている。上記カメラユニット45によるカメラの画像はタブレット60により表示させることができる。上記第1シリンダ41及び第2シリンダ42の操作や、設定の操作は、操作ボックス70又はタブレット60により可能である。ここで、図1の表示部18は、タブレット60が相当して、図1の設定入力部17は、操作ボックス70又はタブレット60が相当する。
【0036】
図4は、本発明の農作業機用作業支援システムを適用する農作業機が前進作業状態である場合の例を示す図である。
【0037】
圃場50には、通常は4辺の畦51を有している。そして、畦51は、上側の面は地面に平行な上面51aと、上面51aから圃場50側に向けて下がる傾斜面により形成される法面51bとで形成される。法面51bの下端部51cは圃場50側に位置している。ここで、上面51aはディスク部38の上面ローラ38aで、法面51bはディスク部38の法面ディスク38bで形成されるようになっている。
【0038】
図4に示すように、トラクタ1に装着された畦塗り機30は、作業部35がトラクタ1の横幅よりも右側にはみ出しており、横側の辺の畦51に相当する横畦52の位置に一致するように配置される。そして、トラクタ1を前進させることで、旧畦に対して横畦52を新たに形成していくことができる。このとき、トラクタ1及び畦塗り機30は、横畦52と平行な方向に対して、角度θだけ横畦52側に傾いている。これは、作業部35で畦を形成するとき横畦52から反力を受けることによるもので、傾いたまま、横畦52と平行に前進して畦塗り作業を行っていくことになる。
【0039】
横畦52の前方では、前方の辺の畦51に相当する前畦53と交差する。このときの法面51bの下端部51c同士の交点は前方角部57となる。また、横畦52の後方では、後方の辺の畦51に相当する後ろ畦54と交差する。このときの法面51bの下端部51c同士交点は後方角部58となる。
【0040】
カメラユニット45は、下側を広く撮影可能であり、前方角部57、後方角部58、畦塗り機30を同時に撮影する。カメラユニット45は、撮影範囲の中心が、カメラユニット45の設置位置である、ディスク部38の回転軸とディスク部38の端部38cの交点に位置するようになっている。このため、正確な位置での畦塗り作業の場合は、カメラユニット45の撮影範囲の左右の中心が法面51bの下端部51cと一致している。
【0041】
図5は、本発明の農作業機用作業支援システムにおけるカメラで撮影された画像の例を示すイメージ図である。ここでの撮影はカメラ46が魚眼レンズで撮影された例を示す。魚眼レンズの射影方式としては、例えば、等距離射影方式、等立体角射影方式、正射影方式等が挙げられる。なお、図中のライン101、102、103、104、105はトラクタ1が進行するにしたがってポイントが移動する軌跡を表す仮想の線を示している。
【0042】
ここで、カメラ46の撮影の中心は、ポイント103bとなる。ポイント103bは、カメラ46が設置されている場所でもある。そして、図5では、進行方向の左右中心のライン103を左右方向の中心線となるようにして示している。ここで、中心より前側で横方向に並ぶポイント101a、102a、103a、104a、105aと、中心付近で横方向に並ぶポイント101b、102b、103b、104b、105bと、中心より後ろ側で横方向に並ぶポイント101c、102c、103c、104c、105cは、実際にはいずれも等間隔で、かつ等距離で並んでいるポイントを示している。しかし、撮影された画像はレンズのゆがみにより中心付近で横方向に並ぶポイント101b、102b、103b、104b、105bの間隔が開いていることが分かる。そして、ライン101、102、103、104、105は、実際にはいずれも前後に延びる平行な線の位置を示すラインである。しかし、撮影された画像は、中心のライン103より外側の両側のライン102、104、さらにその外側のライン101、105に行くに従い、外側に湾曲した円弧軌道を描くようになっている。このように、魚眼レンズで撮影した画像は、平面を撮影すれば、左右の中心付近のラインは直線なのに対して、中心から横側に離れるほど外側に円弧軌道を描くように撮影される。
【0043】
演算部11による処理では、これらの特性をふまえて、カメラ46で撮影された画像から、レンズのゆがみを除去して、畦塗り機30の位置やトラクタ1による畦塗り機30の進行方向が算出される。図5では、トラクタ1及び畦塗り機30が進行方向に対して傾きながら前進している例を示している。なお、魚眼レンズ以外でも、画角を広く設定するためにゆがみが生じるレンズに対しても同様の処理を行うことができる。
【0044】
図6は、本発明の農作業機用作業支援システムにおける第1の状態の表示例を示す図である。図7は、本発明の農作業機用作業支援システムにおける第2の状態の表示例を示す図である。
【0045】
ここでの表示は、タブレット60による例を示している。タブレット60の表示画面61には、カメラ46により撮影され画像処理された画像が表示される。表示画面61には、トラクタ1、畦塗り機30、横畦52、前畦53、後ろ畦54等が上から見下ろした画像として表示されている。ここで、図6、7では、表示画面61の前後左右の中心が、カメラ46の撮影の中心となるように表示される。すなわち、畦塗り機30のディスク部38が中心となって表示されており、トラクタ1及び畦塗り機30が前進すると、横畦52、前畦53、後ろ畦54等の周りの風景が後ろ側に移動していく。また、ここでの表示は、上述した図5の画像から画像処理が行われ、カメラ46のレンズのゆがみが取り除かれており、実際に対して一定の比率で縮尺になるように平面的に表示されている。なお、圃場50が長い場合は、第1基準点66と第2基準点67の両方が表示画面61上に表示できるよう画像内で縮尺を変化させてもよい。また第1基準点66と第2基準点67の両方が表示できるように畦塗り機30のディスク部38が表示画面61の中心からずれて表示させてもよい。
【0046】
表示画面61上に圃場又は圃場の周辺の特定の位置に基準点を設定し表示することができる。基準点は、畦塗り機30の前側と後ろ側で設定される。図6、7では、圃場50内において、図4で説明した前方角部57に相当する箇所に前方の第1基準点66が設定され、後方角部58に相当する箇所に後方の第2基準点67が設定される。設定の方法については後述する。そして、これらを結ぶ線は、基準線65となり、目標とする畦51(横畦52)の下端部51cのラインとなる。
【0047】
さらに、表示画面61上に移動点64を表示することができる。ここで移動点は、カメラ46の撮影範囲に対して常に一定の位置となる点である。畦塗り機30上の特定の位置に設定することができる。特に、畦塗り機30の作業部35上やディスク部38上等、農作業機側の作業の基準となる位置がよい。ここでは、カメラ46の撮影の中心を適用しており、表示画面61上でちょうどカメラ46の設置位置(畦塗り機30上のディスク部38の端部38cの位置)が移動点64となる。このため、移動点64は、圃場50に対しては畦塗り機30の移動とともに移動するが、表示画面61では一定の位置である中心に位置している。
【0048】
さらに、表示画面61上に現在の畦塗り機30の進行方向を矢印等でベクトル表示することができる。これは、畦塗り機30の基準線65に対する進行方向を画像処理により算出してその方向を表示させることができる。図6、7では、移動点64からの矢印で示される、ベクトル表示68とベクトル表示68’の表示例が示されている。なお、ベクトル表示68、68’は移動点64以外の表示画面61上の異なる場所に表示することも可能である。
【0049】
ここで、第1基準点66、第2基準点67、基準線65、移動点64、ベクトル表示68、ベクトル表示68’はカメラ46の撮影による実際の画像上にAR(Augmented Reality)として重ねて表示することができる。第1基準点66、第2基準点67、移動点64の表示は、丸などの特定の印を用いることができる。このとき、各印が区別されるように、色、形、大きさ等を異ならせ、少なくともこれらのいずれか1つが異なるものを採用すると分かり易い。特に、基準点66、67、基準線65と、移動点64の印を区別させると分かり易い表示となる。また、基準線65は特定の色や線で表すと分かりやすい表示となる。
【0050】
図6の状態では、畦塗り機30は、基準線65に沿って進んでいる状態を示している。ここで、ベクトル表示68は、移動点64から基準線65上に沿って前側に向けた矢印により表示されている。
【0051】
図7の状態では、畦塗り機30は、基準線65から圃場50側へ斜めにずれて進んでいる状態を示している。ここで、ベクトル表示68’は、移動点64から基準線65よりも圃場50側へ斜めにずれた前側に向けた矢印により表示されている。この矢印の方向は、算出される畦塗り機30の進行方向を示しているため、畦を塗る方向がずれていることを示している。
【0052】
図8は、本発明の農作業機用作業支援システムにおける操作部の例を示す図である。
【0053】
操作ボックス70は、遠隔で操作や入力が可能な操作部である。ここでは無線による例を示しており、畦塗り機30の制御ボックス40に設置された演算部11や制御部12(制御システム部10)と無線により情報の送受信が可能となっている。上部に畦塗り機30の基本的な操作の信号を入力する操作スイッチ部71を備え、下部に表示部18(表示画面61)を見ながら進行方向の算出に必要な設定を入力する設定スイッチ部72を備えている。これらのスイッチは例えば、押しボタンスイッチを適用できる。
【0054】
操作スイッチ部71は、電源スイッチ71a、入るスイッチ71b、出るスイッチ71c、浅スイッチ71d、深スイッチ71e、前作業スイッチ71f、格納スイッチ71g、後作業スイッチ71h、散水スイッチ71iを備えている。電源スイッチ71aは電源のON、OFFを行うスイッチである。入るスイッチ71bは、畦の作業部35の位置をトラクタ1側に移動して調節するためのスイッチである。出るスイッチ71cは、畦の作業部35の位置を畦51側に移動して調節するためのスイッチである。浅スイッチ71dは、耕耘部37の深さを浅くするためのスイッチである。深スイッチ71eは、耕耘部37の深さを深くするためのスイッチである。前作業スイッチ71fは、畦塗り機30を前進作業状態とするためのスイッチである。格納スイッチ71gは、畦塗り機30を格納状態とするためのスイッチである。後作業スイッチ71hは、畦塗り機30をバック作業状態とするためのスイッチである。散水スイッチ71iは、散水装置を備えている場合にこれをON、OFFするためのスイッチである。
【0055】
設定スイッチ部72は、設定スイッチ72a、決定スイッチ72b、表示切換スイッチ72c、戻るスイッチ72d、上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hを備えている。
【0056】
設定スイッチ72aは、タブレット60の表示画面61において設定画面にするためのスイッチである。例えば、これを押すと、図6、7で示した、第1基準点66及び第2基準点67を設定するモードになる等である。
【0057】
決定スイッチ72bは、表示画面61において設定画面で選択したものを決定するためのスイッチである。例えば、これを押すと、図6、7で示したような、第1基準点66及び第2基準点67の設定を決定するためのスイッチである。
【0058】
表示切換スイッチ72cは、表示画面61において異なる画面に切り替えるためのスイッチである。例えば、これを押すと、図6、7で示した画面から他の画面に切り替わる等である。他の画面の例としては、図5で示した画面や、耕耘部の深さの情報、作業部のオフセット量の情報、現在の作業速度の情報、姿勢の角度の情報等を示す画面である。
【0059】
戻るスイッチ72dは、表示画面61において前の画面に戻るためのスイッチである。
【0060】
上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hは、表示画面61において、目的の位置を、現在の位置からそれぞれ上下左右方向に移動させるためのスイッチである。例えば、これらを押している間は、図6、7で示したような、第1基準点66及び第2基準点67の位置を各方向に移動させることができる。
【0061】
図8に示したように操作ボックス70単体で図1の設定入力部17を構成することにより、防水性を高め農作業機の操作がやりやすい形状及び操作スイッチの配置とすることができる。一方、操作ボックス70の上述した各スイッチは、タブレット60に表示させるようにしてもよい。この場合、タブレット60は、タッチパネルで構成されることにより、図1で示した表示部18だけでなく設定入力部17の機能も一体に果たすことになる。このことで、設定入力部17を省略することができる。
【0062】
図9は、本発明の農作業機用作業支援システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。図9を用いて実際の作業に対する処理の流れについて説明する。ここでの処理は、特に記載しない場合は原則として図1で示した演算部11で行う。
【0063】
まず、作業者はトラクタ1に畦塗り機30を装着させて、圃場50内で、図8に示した操作ボックス70の電源スイッチ71aを押して電源をONにし、前作業スイッチ71fを押して前進作業状態とする。そして、図4で示した横畦52に沿って畦塗り機30を配置させる。
【0064】
処理がスタートすると(S101)、画像の取得を行う(S102)。ここでの取得はカメラユニット45のカメラ46から送られてくる画像を取得する。
【0065】
次に、基準点の設定を行う(S103)。基準点の設定は、S102で取得した画像に基づき、図6、7で示した第1基準点66及び第2基準点67を設定する。このときの設定は、取得した画像に対する画像処理で、例えば、画素毎の輝度や色域判定等の画像処理により自動で特定することで行う。これにより、前方角部57を第1基準点66とし、後方角部58を第2基準点67とする判別を行うことができる。そして、演算部11は、タブレット60の表示画面61に第1基準点66及び第2基準点67を実際の撮影画像上に重ねて表示させる。このとき、作業者はこの位置でよければ、操作ボックス70の決定スイッチ72bを押す等して、各基準点を確定させることができる。また、作業者が各基準点の位置を修正したいときは、操作ボックス70の上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hで位置を修正して、決定スイッチ72bで決定することで修正が可能である。
【0066】
一方、演算部11による画像処理で、前方角部57又は後方角部58を判別できない場合は、そのことの表示を表示画面61に表示させて、作業者が手動により、第1基準点66と第2基準点67を設定するようにする。作業者は、判別できていない基準点の位置を、操作ボックス70の上スイッチ72e、下スイッチ72f、左スイッチ72g、右スイッチ72hで位置を決めて、決定スイッチ72bで決定することにより手動で設定可能となる。
【0067】
次に、基準線65の設定を行う(S104)。基準線65の設定は、S103で設定した2つの基準点を結ぶ線として設定できる。具体的には、図6、7で示した第1基準点66と第2基準点67を結ぶ線として基準線65を自動で設定する。そして、演算部11は、タブレット60の表示画面61に基準線65を実際の撮影画像上に重ねて表示させる。
【0068】
次に、移動点64が基準線65上であるか否かを判定する(S105)。ここではS102で取得した画像に基づき判定を行う。基準線65はS104で設定されており、移動点は、撮影範囲の中心点等で畦塗り機30上の点として設定される。図6、7で、移動点64が基準線65上であると見なせる場合は、移動点64が基準線65上であると判定する。このとき、移動点64が基準線65から一定の距離の範囲内にあることで、移動点64が基準線65上であると見なせると判定することができる。この一定の距離は予め定めておくことができる。また、移動点64が基準線65よりも一定距離より離れた場合は、移動点64が基準線65上にないと判定することができる。
【0069】
S105で移動点64が基準線65上にないと判定された場合は、移動点64が基準線65上になるように指示する(S106)。このとき、例えば、演算部11により表示画面61に、移動点64が基準線65上になるように指示する表示を文字や図で行わせることで可能となる。ここでの指示は、基準線65(畦51)に対してどの方向にどの程度作業部35を移動すればいいかを表示することで指示できる。作業者はそれにともない作業部35を移動点64が基準線65上になるように移動させる。このときの移動は、例えば、作業者が、図8で示した操作ボックス70の入るスイッチ71bや出るスイッチ71cを操作して、作業部35の位置を調整することや、トラクタ1を操作して畦塗り機30自体の位置を変更することが考えられる。そして、S105で再度、上記の判定を行う。
【0070】
S105で移動点64が基準線65上にあると判定された場合は、作業を開始する(S107)。ここでは、例えば、演算部11により表示画面61に作業を開始していいことの表示を文字や図で行うことで、作業者はトラクタ1や畦塗り機30を操作して作業を開始することができる。なお、作業を開始したか否かは、連続して送られてくるカメラ46により撮影された画像を画像処理して、畦塗り機30が前進しているかで判定することができる。
【0071】
次に、画像の取得を行う(S108)。カメラ46により撮影された画像が送られてきて、単位時間当たり撮影される規定枚数の画像がそれぞれ演算部11で取得される。
【0072】
次に、移動点64が基準線65上であるか否かを判定する(S109)。ここではS108で取得した画像に基づき判定を行う。この判定方法はS105と同様である。
【0073】
S109で移動点64が基準線65上にないと判定された場合は、移動点64を点滅させて表示して(S110)、移動点64が基準線65上になるように指示する(S111)。図6、7で、表示画面61上の移動点64は特定の形状による印で表示されているので、これを点滅させると作業者はこのことに気づきやすくなる。また、移動点64が基準線65上になるように指示する方法は、S106と同様の方法が適用できる。作業者はそれにともない移動点64が基準線65上になるように作業部35を移動させる。そして、S109で再度、上記の判定を行う。
【0074】
S109で移動点64が基準線65上にあると判定された場合は、移動点64を点灯させて表示する(S112)。図6、7で、表示画面61上で、移動点64を点灯させたままとすることで、作業者は正常な範囲で作業していることを認識することができる。S110、S112のように、移動点64が基準線65上にあるか否かにより、移動点64の表示方法を変えることで、作業者は両者の違いに気づくことができる。この表示方法の変化は、点滅と点灯等の表示時間を変える方法以外、移動点64の印の色を変える方法や大きさを変える方法等も適用できる。
【0075】
次に、進行方向の判別を行う(S113)。ここでは、連続して送られてくるカメラ46により撮影された画像を画像処理して畦塗り機30の進行方向を判別することができる。ここでの進行方向は、画像処理により移動点64の所定時間内の圃場50に対する位置の移動を特定することにより進行方向を算出することができる。この場合、ある程度の時間の平均を用いて算出してもよい。表示方法としては、図6、7に示すように移動点64からの矢印によるベクトル表示68、68’で進行方向を表示画面61に表示させることができる。なお、進行方向は、移動点64以外の畦塗り機30上もしくは作業部35上の点を特定して算出してもよい。
【0076】
次に、進行方向は基準線65と平行か否かを判定する(S114)。ここでは、S113の進行方向と基準線65の方向を比較して平行か否かを判別する。ここでの判別は、例えば、所定時間内で算出される進行方向の平均値で比較してもよい。また、平行と判別するためのある程度の方向の範囲を決めておき、基準線65方向から進行方向が予め定めた角度以上ずれた場合に平行でないと判断することができる。
【0077】
S114で、進行方向は基準線65と平行でないと判定された場合は、ベクトルを赤にして表示して(S115)、進行方向が基準線65と平行になるよう指示をする(S116)。図7は、畦塗り機30の進行方向と基準線65とが平行でない場合を示すが、このとき、ベクトル表示68’の色を赤にして表示する。このことで、作業者は畦塗り機30の進行方向が基準線65の方向とずれていることを適確に気づくことができる。さらに、進行方向が基準線65と平行になるようにする指示は、例えば、演算部11により表示画面61に、進行方向が基準線65と平行になるよう指示する表示を文字や図で行わせることで可能となる。ここでの指示は、進行方向をどの方向にどの程度変えればいいかを表示することで指示できる。作業者はそれにともないトラクタ1を操作して、畦塗り機30の進行方向を変える。そして、S114で再度、上記の判定を行う。
【0078】
S114で、進行方向は基準線65と平行であると判定された場合は、ベクトルを緑にして表示する(S117)。図6は、畦塗り機30の進行方向と基準線65とが平行な場合を示しており、このとき、ベクトル表示68の色を緑にして表示する。このことで、作業者は畦塗り機30の進行方向が基準線65の方向と一致していることを認識することができる。S115、S117のように、進行方向が基準線65と平行か否かで、ベクトル表示68、68’の表示方法を変えることで、作業者は両者の違いに気づくことができる。この表示方法の変化は、色の違い以外、ベクトル表示68、68’の大きさを変える方法、点灯や点滅等の表示時間を変える方法等も適用できる。なお、この方法は、S110、S112で移動点64の表示方法を変えるときとは異なる方法を採用することで、両者を分かり易く区別してもよい。
【0079】
次に、作業を継続しているか否かを判定する(S118)。作業を継続している場合はS108へ戻り処理を繰り返し、継続しない場合は処理を終了する(S119)。
【0080】
このように、移動点64が基準線65上であるか否かを判定し、及び、進行方向が基準線65と平行か否かを判定して結果を表示画面61に表示することで、畦塗り機30の目標に対する位置及び進行方向のずれの状態を知ることができる。さらに、移動点64が基準線65上になるように指示される、及び、進行方向が基準線65と平行になるよう指示されることにより、作業者は適確に畦塗り機30の位置や進行方向を修正することができ、畦51をより正確に形成することができる。特に、図4で示されるようにトラクタ1や畦塗り機30の方向が実際の進行方向とずれている場合でも、正確な農作業を支援することができる。
【0081】
また、作業支援システムの構成は、カメラ46の1台のみで他にGPSやセンサを使用しなくてもよいのでシンプルであり、かつ設置精度も高精度を必要としない。さらに、カメラ46のみで、位置と方向を検知できるため、GPS(global positioning system)やセンサを使用しない構成で適用可能である。また、GPSや他のセンサを組み合わせて精度をさらに上げることもできる。
【0082】
また、S106、S111、S116の指示の代わりに自動で調整するシステムを適用してもよい。例えば、S106とS111の指示の代わりに、第1シリンダ41を自動で制御して、作業部35のオフセット量を調整して、移動点64が基準線65上になるように作業部35の位置を修正することができる。このときの制御量は図1の演算部11で算出して、制御部12により制御される。また、正確な制御のため状態検知部21を利用してもよい。
【0083】
また、トラクタ1が自動運転可能な場合は、トラクタ1と接続可能な端子を設ける等して、トラクタ1の自動運転と連携するようにできる。この場合、S106とS111の指示の代わりに、トラクタ1の自動操作により、移動点64が基準線65上になるように畦塗り機30の位置を修正することができる。また、S116の指示の代わりに、トラクタ1の自動操作により、進行方向が基準線65と平行になるよう畦塗り機30の進行方向を修正することができる。これらの位置や方向の修正量等の情報は、演算部11からトラクタ1へ送られる。
【0084】
また、上記の処理は図2で説明したリターン作業時も同様に行える。この場合、図8で示した操作ボックス70の後作業スイッチ71hを押して畦塗り機30をバック作業状態とする。このとき、トラクタ1はバックによる作業を行うが、進行方向(バック方向)を前側とすれば、上記と同様に、位置や進行方向の表示や修正を行うことができる。これにより、リターン作業時においても、正確な農作業を支援することができる。
【0085】
図10は、本発明の農作業機用作業支援システムにおける第1の状態の表示例の別例を示す図である。
【0086】
図10で示されるように、表示画面61にトラクタ1や畦塗り機30付近を拡大して表示させてもよい。このとき、第1基準点66(前方角部57)と第2基準点67(後方角部58)は表示されないが、畦塗り機30付近の横畦52の状態等をより詳しく確認することができる。範囲としては畦塗り機30から、5m~10mの範囲である。また、移動点64(カメラ46)の表示位置を表示画面61中央よりも少し下側にして固定することにより、畦塗り機30よりも前側の表示範囲が広くなり、前側の状態を早めに確認することができる。図10の画面は、図8で示した操作ボックス70の表示切換スイッチ72cを用いて、図6、7や図5で示した画面と切り替え可能としてもよい。このような構成とすることで、目視では見えない障害物を上方からの映像により発見することができる。
【0087】
以上の様に、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述した以外の様々な変形例も含まれる。例えば、上記した実施形態に設けられた全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を削除したり、他の構成に置き換えたりすることも可能である。
【0088】
例えば、実施形態では畦塗り機に適用する場合について示してきたが、これ以外のトラクタに装着する農作業機にも適用することができる。例えば、ロータリー、代掻き作業機などである。この場合、カメラユニット45を両側の耕耘作業幅の端部付近に設置する。そして、作業幅端部の上部から下向きにカメラ46で撮影し、カメラ46の位置を移動点とする。基準点は、未耕耘部と耕耘部の境を利用して画像処理で前側と後ろ側に設定でき、もしくは手動で設定できる。基準線はこれらの基準点を結んで設定される。ここで移動点と基準線の位置と進行方向を算出して、上記と同様の処理を行うことができる。
【0089】
また、GPSに接続できる端子を追加して、GPSと連携してもよい。これにより、特定の位置を避けて作業すること等が可能となる。例えば、畦際の給排水口を避けて作業できるように、表示画面61に、予め登録してある給排水口の位置を表示することや、排水口が近づいていることの注意喚起を表示することができる。
【0090】
なお、基準点は圃場内でなくても圃場の周辺の特定の点に設定して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 トラクタ
10 制御システム部
11 演算部
12 制御部
16 カメラユニット
17 設定入力部
18 表示部
20 アクチュエータ
30 畦塗り機
35 作業部
37 耕耘部
38 ディスク部
38c 端部
41 第1シリンダ
42 第2シリンダ
45 カメラユニット
46 カメラ
47 取付部材
60 タブレット
61 表示画面
64 移動点
65 基準線
66 第1基準点
67 第2基準点
68、68’ ベクトル表示
70 操作ボックス
71 操作スイッチ部
72 設定スイッチ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10