IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スパゴ イメージング アクチエボラグの特許一覧

特許7078274ナノ構造体をコーティングするための化学化合物
<>
  • 特許-ナノ構造体をコーティングするための化学化合物 図1
  • 特許-ナノ構造体をコーティングするための化学化合物 図2
  • 特許-ナノ構造体をコーティングするための化学化合物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ナノ構造体をコーティングするための化学化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20220524BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 49/06 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 49/12 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220524BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20220524BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220524BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20220524BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220524BHJP
   A61K 103/34 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C07F7/18 G CSP
A61K31/695
A61K49/06
A61K49/12
A61K51/04 200
B82Y5/00
B82Y40/00
C08G65/336
C07B61/00 300
A61K103:34
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019537162
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018050975
(87)【国際公開番号】W WO2018130713
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】17151653.7
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512245791
【氏名又は名称】スパゴ ナノメディカル アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Spago Nanomedical AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アクセルソン,オスカー
(72)【発明者】
【氏名】サンツォーネ,アンジェロ
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534277(JP,A)
【文献】国際公開第2015/144891(WO,A1)
【文献】Anton D. Chavez et al.,Chemistry of Materials,2016年,Vol.28, No.14,p.4884-4888,Suppoting Information S-1-S-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00- 7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族コア、又は炭素環式非芳香族コアを含む化学化合物であって、前記芳香族コアは、ベンゼン環又はビフェニルであり、前記炭素環式非芳香族コアは、5~7員環であり;前記コアは、それに共有結合している:
-活性化シラン基を各々が含む少なくとも2つのアンカー基であって、前記アンカー基は、以下の一般式-A-(CHSiY 式中、Aは、共有結合又はOであり、「n」は、1~3の整数であり、Yは、独立して、メトキシ基又はエトキシ基である)を有する、少なくとも2つのアンカー基;並びに
-前記コアから延びた少なくとも1つの親水性基であって、前記親水性基は、分子組成[a(O)+b(N)]/[c(C)+d(S)+e(Si)+f(P)]>0.3(式中、a(O)、b(N)、c(C)、d(S)、e(Si)、及びf(P)は、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである)を有する1又は複数の親水性ポリマー残基を含み;前記親水性ポリマー残基は、-(O-CH-CH-OX(式中、Xは、CH 又はHであり、「m」は、6~25の整数である)から選択され、2つ以上の親水性基が存在する場合は互いに独立して選択される、少なくとも1つの親水性
を有し、
-前記コアから延びた親水性基の数は、1から前記コアにある環構造の数までである、化学化合物。
【請求項2】
前記芳香族コアが、ベンゼン環であり、一般式1を有し、

式中、
-A及びAは、独立して、共有結合又はOから成る群より選択され;
-「n」は、1~3の整数であり;
-「n」は、1~3の整数であり;
-R~Rは、独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択され;
-「m」は、6~25の整数であり;並びに
-Xは、メチルである、
請求項1に記載の化学化合物。
【請求項3】
及びAがOであり、「n」が3であり、「n」が3であり、R~Rがエトキシであり、Xがメチルである、請求項2に記載の化学化合物。
【請求項4】
前記芳香族コアが、ベンゼン環であり、一般式1を有し、

式中、
-A及びAは、Oであり;
-「n」は、3であり;
-「n」は、3であり;
-R~Rは、独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択され;
-「m」は、12~20の整数であり;並びに
-Xは、メチルである、
請求項1又は2に記載の化学化合物。
【請求項5】
前記芳香族コアが、ベンゼン環であり、一般式1を有し、

式中、
-A及びAは、共有結合であり;
-「n」は、2であり;
-「n」は、2であり;
-R~Rは、独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択され;
-「m」は、12~20の整数であり;並びに
-Xは、メチルである、
請求項1又は2に記載の化学化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の化学化合物及びキャリアを含む組成物。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の化学化合物の残基、又は芳香族コア、若しくは炭素環式非芳香族コアを含む化学化合物の残基を含むコーティングされたナノ構造体であって;前記コアは、それに共有結合している:
-活性化シラン基を各々が含む少なくとも2つのアンカー基;並びに
-前記コアから延びた少なくとも1つの親水性基であって、前記親水性基は、分子組成[a(O)+b(N)]/[c(C)+d(S)+e(Si)+f(P)]>0.3(式中、a(O)、b(N)、c(C)、d(S)、e(Si)、及びf(P)は、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである)を有する1又は複数の親水性ポリマー残基を含む、少なくとも1つの親水性
を有し;
前記コアから延びた親水性基の数は、1から前記コアにある環構造の数までであり;
前記化学化合物の各々にある前記活性化シランの一方又は両方は、前記ナノ構造体コアの表面に共有結合している、コーティングされたナノ構造体。
【請求項8】
前記ナノ構造体が、R11及びR12が独立して負電荷、H、アルキル基、及びアリール基から選択される一般式-P=O(OR11)(OR12)を有する少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むか、又はそれらで修飾されたポリマー骨格を含み、前記ポリマー骨格はさらに、ジェミナルビスホスホネート基及び2つの有機オキシシラン基を有するモノマー残基も含む、請求項7に記載のコーティングされたナノ構造体。
【請求項9】
前記コーティングされたナノ構造体が、4~8nmの流体力学径を有する、請求項7又は8に記載のコーティングされたナノ構造体。
【請求項10】
マンガン(II)イオン又はガドリニウム(III)イオンをさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のコーティングされたナノ構造体。
【請求項11】
画像化及び/又は放射線療法のための放射性核種をさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のコーティングされたナノ構造体。
【請求項12】
MRI造影剤として用いるための、請求項10に記載のコーティングされたナノ構造体。
【請求項13】
MRI造影剤として用いるための組成物であって、請求項10に記載のコーティングされたナノ構造体を含む組成物。
【請求項14】
PET及び/若しくはSPECT画像化に用いるための、又は放射線療法に用いるための、請求項11に記載のコーティングされたナノ構造体。
【請求項15】
PET及び/若しくはSPECT画像化に用いるための、又は放射線療法に用いるための組成物であって、請求項11に記載のコーティングされたナノ構造体を含む組成物。
【請求項16】
請求項7から11のいずれか一項に記載のナノ構造体及びキャリアを含む組成物。
【請求項17】
請求項7から11のいずれか一項に記載のコーティングされたナノ構造体を得るための方法であって、
-ジェミナルビスホスホネート基を含むポリマー骨格のナノ構造体コアを提供する工程;及び
-前記ナノ構造体コアを、溶媒、好ましくは水性溶媒中、請求項1から6のいずれか一項に記載の化学化合物のうちの少なくとも1つと接触させる工程、
を含む、方法。
【請求項18】
前記方法が、0.1~1Mの濃度の尿素の存在下で行われる、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料のポリマーコーティングに関し、詳細には、常磁性マンガン(II)イオンを組み込んだキレートポリマーナノ構造体、さらには前記ナノ材料を作製するための方法、さらには生物学的物質を可視化又は画像化するためのナノ材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野においてナノ材料のいくつかの医療用途が知られている。酸化鉄に基づくそのうちのいくつかは、肝臓用の造影剤としての使用であったが、売上高が低いためにもはや市販されていない。これらの材料の実験的使用に関する膨大な文献が入手可能である(例:Bulte,J.W.M.and Modo,M.M.J.Eds.“Nanoparticles in Biomedical Imaging”Springer,2008)。ナノ材料を生体適合性とするための一般的な手法は、可撓性親水性ポリマーでそれらをコーティングすることである。ポリエチレングリコール(PEG)は、免疫系及びタンパク質との相互作用を最小限に抑えるのに特に有効である(“Poly(ethylene glycol),Chemistry and Biological Applications”,Eds.Harris and Zalipsky,1997,ACSを参照)。それは、これまで生体内でのナノ材料からのコーティング残基のある程度の解離を含めて許容可能であると見なされてきたが、欧州医薬品庁からのリフレクションドキュメント(EMA CHMP/SWP/620008/2012)に基づいて、本発明者らは、将来的にこのことが当てはまらなくなるものと予測している。
【0003】
実験(例14、エントリーA)は、国際公開第2013041623(A1)号に記載のポリマーナノ構造体に結合したm-PEG-シランが、中性から塩基性条件下で、ゆっくりとした加水分解を起こす傾向にあることを示した。このことは、医療製品でのこれらの材料の使用を考えた場合、大きな欠点であり、その理由は、それが製品の保存寿命に負の影響を与えることになるからである。
【0004】
本発明の目的は、これらの問題を克服することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第一の態様によると、本発明の上記の及び他の目的は、請求項1に記載の化学化合物によって、完全に又は少なくとも部分的に実現される。この請求項によると、上記の目的は、芳香族コア、又は炭素環式非芳香族コアを含む化学化合物によって実現され、芳香族コアは、ベンゼン環又はビフェニルであり、炭素環式非芳香族コアは、5~7員環であり、コアは、それに共有結合している、活性化シラン基を各々が含む少なくとも2つのアンカー基であって、アンカー基は、以下の一般式-A-(CHSiYを有し、式中、Aは、共有結合又はOであり、「n」は、1~3の整数であり、Yは、独立して、メトキシ基又はエトキシ基である、少なくとも2つのアンカー基;並びに1又は複数の親水性ポリマー残基を含む、コアから延びた少なくとも1つの親水性基、を有する。活性化シラン基は、ナノ材料の表面に共有結合することができる。親水性ポリマーの残基は、a、b、c、d、e、及びfが、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである分子組成(aO+bN)/(cC+dS+eSi+fP)>0.3を有し、親水性ポリマー残基は、2つ以上の親水性基が存在する場合は互いに独立して、XがCH又はHであり、「m」が6~25の整数である-(O-CH-CH-OXから選択される。そのような組成を有するポリマーは、親水性と見なされる。コアから延びた親水性ポリマー残基の数は、1からコアにある環構造の数までである。これよりも多い数の親水性ポリマー残基がコアから延びている場合、化学化合物は、ナノ材料のコーティングに有用ではなく、その理由は、そのような化合物がゲルを形成する傾向にあり、そのことは、本出願において有用ではないからである。コアが2つ以上の環及び2つ以上の親水性ポリマー残基を含む場合、親水性残基は、異なる環に結合していてよい。
【0006】
本発明者らは、ナノ構造体をコーティングするために用いられる化学化合物に、親水性ポリマーをナノ材料の表面に固着させる能力を有する少なくとも2つのシラン基が組み込まれている場合、製品が、中性条件下で安定となることを発見した。シラン基のうちの一方がナノ材料から脱離した場合であっても、ポリマー残基は、依然として他方のシラン基を介して表面に結合されている。増加された安定性は、製品の市場価値にとって大きな利点であり、規制当局による承認プロセスを容易にするものでもある。
【0007】
本発明に従う化学構造の先行技術と比較した1つの利点は、ヒドロキシルで修飾されたナノ材料上に強固なコーティングを形成する能力であり、それは、2つの別個の官能基を結合の目的で機能させることによって、製品に商業的に許容される保存寿命(>6ヶ月)を可能とし、同時に依然として、周囲に向かって親水性及び生体不活性であるポリマーを提示する。これは、医療目的で用いられる場合に、ナノ構造体が生物、例えばヒトの中に導入される場合、特に重要である。
【0008】
化学化合物は、芳香族コアを含んでいてよく、この場合、芳香族コアは、ベンゼン環又はビフェニルであり、アンカー基は、以下の一般式-A-(CHSiYを有し、式中、Aは、共有結合又はOであり、「n」は、1~3の整数であり、Yは、メトキシ基又はエトキシ基であり、少なくとも2つのアンカー基は、同じであっても又は異なっていてもよく、並びに親水性ポリマー残基は、2つ以上の親水性基が存在する場合は互いに独立して、XがCH又はHであり、「m」が6~25の整数である-(O-CH-CH-OXから選択される。そのような化合物は、ナノ材料又はナノ構造体の加水分解安定性コーティングを形成するのに適している。加えて、そのような化合物は、容易に合成で入手可能であるという利点も有する。
【0009】
アンカー基は、同じであっても又は異なっていてもよい。アンカー基は、「A」、整数「n」、及び/又は「Y」に関して異なっていてよい。各アンカー基にある3つの「Y」基は、同じであっても又は異なっていてもよい。
【0010】
別の実施形態によると、芳香族コアがベンゼン環である化学化合物は、一般式1を有し、
式中、A及びAは、独立して、共有結合又はOから成る群より選択され、「n」は、1~3の整数であり、「n」は、1~3の整数であり、R~Rは、独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択され、「m」は、6~25の整数であり、Xは、メチルである。したがって、この実施形態では、アンカー基のうちの1つにある3つのY基は、R、R、及びRで示され、第二のアンカー基にある3つのY基は、R、R、及びRで示される。
【0011】
なお別の実施形態によると、A及びAは、Oであり、「n」は、3であり、「n」は、3であり、R~Rは、エトキシであり、Xは、メチルである。
【0012】
別の実施形態によると、芳香族コアがベンゼン環である化学化合物は、一般式1を有し、
式中、A及びAは、Oであり、「n」は、3であり、「n」は、3であり、R~Rは、独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択され、「m」は、12~20の整数であり、Xは、メチルである。
【0013】
別の実施形態によると、芳香族コアがベンゼン環である化学化合物は、一般式1を有し、
式中、A及びAは、共有結合であり、「n」は、2であり、「n」は、2であり、R~Rは、独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択され、「m」は、12~20の整数であり、Xは、メチルである。
【0014】
化学化合物は、炭素環式非芳香族コアを含んでいてよく、この場合、炭素環式非芳香族コアは、5~7員環であり、活性化シラン基は、独立して、-A-(CHSiYであり、Aは、共有結合又はOであり、「n」は、1~3の整数であり、Yは、メトキシ基又はエトキシ基であり、並びに親水性ポリマー残基は(独立して)、XがCH又はHであり、「m」が6~25の整数である-(O-CH-CH-OXである。そのような化合物は、ナノ材料又はナノ構造体の非常に安定なコーティングをもたらし、市販の出発物質から入手可能である。
【0015】
本発明の第二の態様によると、本発明に従う化学化合物及びキャリアを含む組成物が提供される。キャリアは、溶媒であってよく、ジオキサン、又はエチレングリコールなどのアルコールなどである。
【0016】
1つの実施形態によると、組成物は、本発明に従う少なくとも2つの異なる化学化合物を含む。異なる化学化合物は、組成物中のある特定の化合物が芳香族コアを有し、他の化合物が炭素環式非芳香族コアを有するように、コアに関して変動していてよい。異なる化学化合物はさらに、又は別の選択肢として、ポリマー鎖の長さに関して変動していてもよく、すなわち、整数「m」が変動していてもよい。変動し得る他の特徴は、A、X、Y、及びR、さらには整数「n」及び「n」である。化学化合物の混合物を含む組成物は、製造がより安価であるという利点を有し得る。
【0017】
別の実施形態によると、組成物は、A及びAがOであり、「n」が3であり、「n」が3であり、R~Rがエトキシであり、Xがメチルである化合物を含む。
【0018】
本発明の第三の態様によると、本発明に従う化学化合物の残基又は芳香族コア若しくは炭素環式非芳香族コアを含む化学化合物の残基を含むコーティングされたナノ構造体が提供され、コアは、それに共有結合している、活性化シラン基を各々が含む少なくとも2つのアンカー基、並びにコアから延びた少なくとも1つの親水性基であって、親水性基は、a、b、c、d、e、及びfが、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである分子組成(aO+bN)/(cC+dS+eSi+fP)>0.3を有する1又は複数の親水性ポリマー残基を含む、少なくとも1つの親水性基、を有し、コアから延びた親水性基の数は、1からコアにある環構造の数までであり、化学化合物の各々にある活性化シランの一方又は両方は、ナノ構造体コアの表面に共有結合している。そのようなナノ構造体は、マンガン(II)又はガドリニウム(III)などの磁性イオンで充填された場合、高い緩和度及び低い毒性という特性を有し、このことは、それが腫瘍選択的MRI造影剤に適合する特性を有することから、特に有利である。
【0019】
したがって、本発明に従う化学化合物の残基を含むコーティングされたナノ構造体が提供され、化学化合物の各々にある活性化シランの一方又は両方は、ナノ構造体コアの表面に共有結合している。そのようなナノ構造体は、マンガン(II)又はガドリニウム(III)などの磁性イオンで充填された場合、高い緩和度及び低い毒性という特性を有し、このことは、それが腫瘍選択的MRI造影剤に適合する特性を有することから、特に有利である。
【0020】
したがって、芳香族コア又は炭素環式非芳香族コアを含む化学化合物の残基を含むコーティングされたナノ構造体が提供され、コアは、それに共有結合している、活性化シラン基を各々が含む少なくとも2つのアンカー基、並びにコアから延びた少なくとも1つの親水性基であって、親水性基は、a、b、c、d、e、及びfが、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである分子組成(aO+bN)/(cC+dS+eSi+fP)>0.3を有する1又は複数の親水性ポリマー残基を含む、少なくとも1つの親水性基、を有し、コアから延びた親水性基の数は、1からコアにある環構造の数までであり、化学化合物の各々にある活性化シランの一方又は両方は、ナノ構造体コアの表面に共有結合している。そのようなナノ構造体は、マンガン(II)又はガドリニウム(III)などの磁性イオンで充填された場合、高い緩和度及び低い毒性という特性を有し、このことは、それが腫瘍選択的MRI造影剤に適合する特性を有することから、特に有利である。
【0021】
ナノ構造体のコーティングは、生物環境中における例えばタンパク質及び/又はカルシウムイオンとのその相互作用を、さらにはその互いの相互作用を低減する目的で行われる。したがって、コーティングの量は重要である。より長い親水性ポリマー残基を有する化合物がナノ構造体のコーティングに用いられる場合、上述の相互作用を低減するために必要とされる本発明に従う化学化合物量は少なくなる。したがって、全体としての(O-CH-CH)の密度が重要である。
【0022】
1つの実施形態によると、コーティングされたナノ構造体は、R11及びR12が独立して負電荷、H、アルキル基、及びアリール基から選択される一般式-P=O(OR11)(OR12)を有する少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むか、又はそれらで修飾されたポリマー骨格を含み、ポリマー骨格はさらに、ジェミナルビスホスホネート基及び2つの有機オキシシラン基を有するモノマー残基も含む。そのようなナノ構造体は、二価又は三価カチオンと強くキレート化することができるという利点を有しており、したがって、造影剤又は画像化剤のベースを形成する可能性を有する。
【0023】
別の実施形態によると、コーティングされたナノ構造体は、4~8nmの流体力学径を有する。流体力学径は、DLSによって特定される。そのようなコーティングされたナノ構造体の1つの利点は、ナノ構造体を、腎臓を介して生物の身体から排出することができることである。
【0024】
先行技術と比較した本発明に従うコーティングされたナノ構造体の重要な利点は、腫瘍組織中に選択的に蓄積されるのに適するサイズ及び良好な生物許容性と組み合わせて、良好な製品安定性と、現在市販されている材料よりも非常に高い緩和度とを合わせ持つことである。このことにより、本発明のナノ構造体は、例えばMRI(磁気共鳴画像法)、PET(陽電子放射断層撮影)、及び/又はSPECT(単一光子放射断層撮影)のための、特に、腫瘍画像化のための造影剤としての使用に適している。造影剤として機能する場合、ナノ構造体は、ポリマー骨格とキレート化した常磁性イオン(MRIによる画像化のために)、又は放射性同位体(PET及び/又はSPECTによる画像化のために)を含む。本発明に従うコーティングされたナノ構造体の特定の利点は、コーティングが、ナノ構造体のポリマー骨格が二価又は三価カチオンとキレート化する際に、カルシウムイオンに誘導される凝集を防止することができることである(例14、コーティング前駆体6(例1の))。本発明に従うコーティングされたナノ構造体の別の利点は、最適なキレート能を実現するために必要である比較的激しいプロセス条件に対する耐性を有することである(例14、コーティング前駆体6(例1の)は、良好な結果を示し、例18は、本発明の範囲外の化合物からの不良な結果を示す)。
【0025】
なお別の実施形態によると、コーティングされたナノ構造体はさらに、常磁性イオンを含む。常磁性イオンは、マンガン又はガドリニウムであってよい。そのようなコーティングされたナノ構造体は、MRI造影剤として用いることができる。
【0026】
なお別の実施形態によると、コーティングされたナノ構造体はさらに、マンガン(II)イオン又はガドリニウム(III)イオンを含む。そのようなコーティングされたナノ構造体は、MRI造影剤として用いることができる。従来の造影剤と比較して、これらのコーティングされたナノ構造体をMRI造影剤として用いることの利点は、それらの非常に高い緩和度及び低い毒性である。
【0027】
さらに、常磁性成分としてガドリニウムの代わりにマンガンを用いることによって、毒性の問題(Thomsen,H.S.,Morcos,S.K.,Almen,T.et al.Eur Radiol(2013)23:307.doi:10.1007/s00330-012-2597-9“Nephrogenic systemic fibrosis and gadolinium-based contrast media:updated ESUR Contrast Medium Safety Comittee guidelines”)、及びガドリニウムに関連する現時点での懸念(Kanda,T.et al.Radiology 2014;270:834-841“High Signal Intensity in the Dentate Nucleus and Globus Pallidus on Unenhanced T1-weighted MR Images: Relationship with Increasing Cumulative Dose of a Gadolinium based Contrast Material”)が回避される。常磁性マグネシウムイオンを含むコーティングされたナノ構造体は、そのようなナノ構造体が、ガドリニウムイオンを含むナノ構造体よりも低い毒性を有することから、好ましくは、ヒトに用いられる。しかし、常磁性ガドリニウムイオンを含むコーティングされたナノ構造体が、より高いシグナル強度を有し、したがってより高い解像度の画像を与えることから、そのようなナノ構造体は、研究目的又は獣医学的目的のために用いられ得る。
【0028】
比較的希少であるガドリニウムの代わりに豊富なマンガンを用いることは、材料の製造におけるコスト上の利点も有する。
【0029】
コーティングされたナノ構造体がビスホスホネート基を含む場合、常磁性イオンは、ホスホネート基とキレート化するものと推定される。
【0030】
1つの実施形態によると、コーティングされたナノ構造体は、さらに、画像化及び/又は放射線療法のために放射性核種を含む。そのようなコーティングされたナノ構造体は、PET及び/又はSPECT造影剤として用いることができる。従来の造影剤と比較して、これらのコーティングされたナノ構造体をPET及び/又はSPECT造影剤として用いることの利点は、それらが、促進された透過滞留機構(Enhanced-Permeation-Retention mechanism)を介して腫瘍の場所に位置することである。
【0031】
本発明の第四の態様によると、MRI造影剤として用いるための、常磁性マンガンイオン若しくは常磁性ガドリニウムイオンをさらに含むコーティングされたナノ構造体、又はマンガン(II)イオン若しくはガドリニウム(III)イオンをさらに含むコーティングされたナノ構造体を含む組成物が提供される。
【0032】
本発明の別の態様によると、PET及び/若しくはSPECT画像化又は放射線療法に用いるための、画像化及び/若しくは放射線療法のための放射性核種をさらに含むコーティングされたナノ構造体、又は画像化のための放射性核種をさらに含むコーティングされたナノ構造体を含む組成物が提供される。
【0033】
本発明の1つの態様によると、本発明に従うコーティングされたナノ構造体及びキャリアを含む組成物が提供される。キャリアは、極性溶媒などの溶媒であってよい。特に、溶媒は、水であってよい。組成物は、静脈内又は動脈内などの非経口経路によって投与されてよい。ある特定の例では、組成物は、経口投与される。
【0034】
本発明の別の態様によると、本発明に従う化学化合物を得るための方法が提供される。方法は、最終化学工程として、2つの末端二重結合のヒドロシリル化を含む。これは、最も感受性の高い基が最終工程で導入されるという利点を有する。
【0035】
本発明の別の態様によると、本発明に従うコーティングされたナノ構造体を得るための方法が提供される。方法は、ジェミナルビスホスホネート基を含むポリマー骨格のナノ構造体コアを提供する工程、及び前記ナノ構造体コアを、溶媒、好ましくは水性溶媒中、本発明に従う化学化合物のうちの少なくとも1つと接触させる工程、を含む。
【0036】
1つの実施形態によると、方法は、0.1~1Mの濃度の尿素の存在下で行われる。これは、コーティングされたナノ構造体の収率が大きく高まるという利点を有する。
【0037】
本発明の別の態様によると、本発明に従う方法によって得ることができるナノ構造体が提供される。
【0038】
用語の定義
「活性化シラン」の用語は、本明細書で用いられる場合、以下の種類RSi(Y)のシランを意味し、Yは、独立して、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、ジアルキルアミノ基、窒素含有ヘテロ環、又はアシルオキシ基である。
【0039】
「親水性ポリマー残基」の用語は、本明細書で用いられる場合、水性溶媒中の溶解度を高める有機残基を意味し、本発明において、それらが生体不活性であり、ポリペプチド及び複雑な炭水化物が除外されることは黙示である。適切な親水性有機残基の例は、a、b、c、d、e、及びfが、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである分子組成(aO+bN)/(cC+dS+eSi+fP)>0.3を有する炭素を含有するいずれかの基である。言及される親水性ポリマー残基は、多くの場合、ナノ材料に結合した親水性ポリマーの残基である。
【0040】
「残基」の用語は、より大きい分子の中の、前駆体分子に由来する、すなわち、前駆体分子の残基である一部分を表すために用いられ、タンパク質がアミノ酸残基から構成されると考えられ、その理由が、それらの間の共有結合によってアミノ官能基と酸官能基とがアミドに変換されるからであるということと同じ意味である。典型的には、ポリマー鎖は、モノマー残基から構成されると考えられ、表面と共有結合によって連結されているポリマーは、ポリマー残基であると考えられる。
【0041】
「親水性ポリマー」の用語は、本明細書で用いられる場合、ナノ構造体と結合した場合に水性溶媒中の溶解度を高めることになる非結合ポリマーを意味し、本発明において、そのようなポリマーが生体不活性であり、ポリペプチド及び複雑な炭水化物が除外されることは黙示である。適切な親水性ポリマーの例は、炭素原子を含有するいずれかの基から構成され、a、b、c、d、e、及びfが、それぞれ、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びリン(P)のモルパーセントである分子組成(aO+bN)/(cC+dS+eSi+fP)>0.3を有するポリマーである。
【0042】
「ナノ材料」の用語は、本明細書で用いられる場合、100nmよりも小さい少なくとも1つの寸法を有する要素に関し、例えば、粒子、スフィア、シェル、フレーク、ロッド、ストリング、チューブ、及びリボンである。
【0043】
「ナノ構造体」の用語は、本明細書で用いられる場合、本質的に球形状である1~100nmの全体寸法を有する要素に関し、すなわち、シェル、フレーク、ロッド、ストリング、チューブ、及びリボンは除外される。
【0044】
「球状」の用語は、本明細書で用いられる場合、短軸が長軸の半分以上である形状を有するナノ構造体を表すことを意図しており、すなわち、構造体の中心(重量の中心点)を通る最も長い軸が、同じ点を通る最も短い軸の長さの2倍以下である。
【0045】
「ポリマー骨格」の用語は、本明細書で用いられる場合、共有結合して多分岐鎖状の樹状構造又は複数の架橋によるネットワーク構造のいずれかを形成する原子の群に関する。これは、ナノ構造体の骨組み又は足場を構成する。当業者であれば、重合プロセスのランダムな性質によって、材料が、多くの類似するが同一ではない分岐パターン、架橋位置、及び分子量の混合物とされることは認識される。
【0046】
「m-PEG」は、構造CH-(OCHCH-OHを意味し、nは、状況に応じて異なる。mPEGx-yの用語は、異なる鎖長の混合物を含有する材料を意味し、混合物の主成分は、n=x~yを有し、x及びyは、整数であり、及びy>xである。本発明における典型的な値は、n=6~9又はn=12~20である。多分散m-PEG置換基を持つ化合物の化学名が本文中で与えられる場合、本発明者らは、前記置換基に対してω-メチル-(エチレンオキシ)x-yの名称を用いることを選択し、ωは、メチル基が構造の末端に位置することを示し、x及びyは、上記の通りである。
【0047】
「ジェミナルビスホスホネート基」の用語は、1つの炭素原子によって分離された2つのホスホネート基を意味し、すなわち、ホスホネート基が、同じ炭素に結合している。そのようなジェミナルビスホスホネート基を含む化合物は、多くの場合、1,1-ビスホスホネート(又は1,1-ジホスホネート)と称される。ジェミナルビスホスホネート基のホスホネート基は、置換されていてもよい。ある実施形態では、ホスホネート基は、各々、式-P=O(OR)(OR)を有し、式中、R及びRは、独立して、負電荷、H、アルキル、及びアリールから成る群より選択される。
【0048】
「生体不活性」の用語は、本明細書で用いられる場合、生体適合性である、すなわち、生物に対して無害であり、同時に、生体内での分解に対して本質的に安定である材料を意味する。
【0049】
「DLS」の用語は、本明細書で用いられる場合、粒子サイズ測定方法である動的光散乱の略語であり、光子相関分光法又は準弾性光散乱と称される場合もある。本文中及び請求項中に記載される場合の与えられたDLSサイズは、特に断りのない限り、150mM NaClに相当するイオン強度の中性水溶液中25℃で測定されたサンプルにおける、体積平均ピークの最大値の位置を意味する。流体力学径は、ストークス-アインシュタインの式に従って拡散係数から算出された剛体相当球(equivalent hard sphere)の直径である。そして拡散係数は、DLS技術によって得られた時間に依存する光散乱データから算出される。数平均、体積平均、又は散乱強度平均のいずれが用いられるかに応じて、値はある程度異なり得る。体積平均は、材料全体がどの粒子サイズを有しているかを示すものであることから、一般的には最も有用である。本文中で言及される平均径は、体積平均を意味する。
【0050】
「炭化水素」及び「炭化水素鎖」の用語は、水素及び炭素から成る有機残基を示すために用いられる。炭化水素は、完全飽和であってよく、又はそれは、1又は複数の不飽和を含んでいてもよい。炭化水素は、1~50個のいかなる数の炭素原子を含有していてもよい。
【0051】
「アルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、直鎖状又は分岐鎖状の完全飽和炭化水素鎖を意味する(二重結合も三重結合もなし)。本発明の本文中において、アルキル基は、1~15個の炭素原子を有してよい。化合物のアルキル基は、「C1-15アルキル」又は類似の呼称で示され得る。典型的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0052】
「低級アルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、1~8個の炭素原子を有するアルキルを意味する。
【0053】
本明細書で用いられるいかなる場合においても、特に断りのない限り、「1から8」又は「1~8」などの数値範囲は、与えられた範囲内の各整数を意味し、例えば、「1から8個の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから8個を含む8個までの炭素原子より成り得ることを意味する。しかし、当業者にとっては明らかであるいくつかの例外が存在する。特に、本明細書において、ナノ構造体のP/Nモル比若しくはSi/Pモル比などのモル比、直径若しくはサイズ、pH、継続時間、濃度、オスモル濃度、又は温度に対して範囲が与えられるいかなる場合においても、その範囲は、範囲内に含まれるすべての小数値も含む。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシ」の用語は、式-ORを意味し、式中、Rは、C1-8アルキルであり、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、アミルオキシ、イソ-アミルオキシなどである。アルコキシは、所望に応じて置換されていてもよい。
【0055】
本明細書で用いられる場合、「アリールオキシ」の用語は、RがアリールであるRO-を意味し、「アリール」は、完全に非局在化したパイ電子系を有する炭素環式(全炭素)環又は2つ以上の縮合環(2個の隣接する炭素原子を共有する環)を意味する。アリール環は、4~20員環であってよい。アリール基の例としては、限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、及びアズレンが挙げられる。アリール基は、所望に応じて置換されていてよく、例えば、フェノキシ、ナフタレニルオキシ、アズレニルオキシ、アントラセニルオキシ、ナフタレニルチオ、フェニルチオなどである。アリールオキシは、所望に応じて置換されていてもよい。
【0056】
本明細書で用いられる場合、「アシル」の用語は、アルキル又はアリール基に結合したカルボニル基を意味し、すなわち、Rがアルキル又はアリールである-C(=O)-Rである。
【0057】
本明細書で用いられる場合、「アシルオキシ」の用語は、アシル基を介して結合された酸素原子を意味し、すなわち、Rが上記で定める通りであるRC(=O)-O-である。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「ヘテロ環」の用語は、炭素原子、並びに窒素、酸素、及び硫黄から成る群より選択される1から5個のヘテロ原子から成る安定な3~18員環構造を意味する。ヘテロ環は、単環式、二環式、又は三環式であってよい。
【0059】
「強塩基」の用語は、本明細書で用いられる場合、本発明のコンテクストにおいて、水酸化物よりも強く、水性環境と相溶性ではない塩基を意味する。
【0060】
「流体力学径」の用語は、本明細書で用いられる場合、粒子と同じ速度で拡散する仮想の剛体球の直径を意味する。この球の挙動には、水和及び形状が含まれている。この用語は、「ストークス径」又は「ストークス-アインシュタイン径」としても知られる。
【0061】
「抱合体」の用語は、本明細書で用いられる場合、蛍光マーカー、色素、スピン標識、放射性マーカー、生物学的受容体に対するリガンド、キレート、ペプチド、酵素阻害剤、酵素基質、抗体又は抗体関連構造体である分子要素を意味する。この分野に関する背景については、例えば、“Bioconjugate Techniques”,Greg T.Hermanson second edition,Elsevier 2008,ISBN 978-0-12-370501-3を参照されたい。
【0062】
「抱合のためのハンドル」及び「結合点」の用語は、いずれも、ポリマーネットワークに結合するか又は組み込まれることが可能であるが、上記で定める通りの抱合体と連結することができる1つの反応性基が残される二官能性分子を意味する。限定されないが、典型的な例は、(EtO)SiCHCHCHNHである。
【0063】
「コーティング」の用語は、ナノ材料若しくはナノ構造体の表面又は外側層に共有結合した分子の層を表すために用いられる。このコンテクストにおいて、物理吸着した、又は非共有結合によって結合したポリマーは除外される。
【0064】
「コーティングされたナノ材料」又は「コーティングされたナノ構造体」の用語は、上記で定める通りのコーティングを有するナノ材料を表す。コーティングされたナノ材料又はコーティングされたナノ構造体のうちのコーティングの一部ではない部分を表すために、本発明者らは、ナノ材料コア又はナノ構造体コアの用語を用いる。これらの後者の用語は、コーティングを有しないナノ材料又はナノ構造体を表すためにも用いられる。
【0065】
「コーティング密度」の用語は、ナノ材料又はナノ構造体の表面上に、コーティング分子がいかに密に充填されているかを表すために用いられる。本明細書における好ましい単位は、分子/nmであるが、文献においては、μmol/mの単位も一般的である。この数値には、分子/nmの値に1.6を乗ずることによって変換することができる。
【0066】
ナノ構造体の「表面」の用語は、巨視的な物体ほど明らかではなく、本コンテクストにおいて、ポリマーによる化学修飾が可能であるナノ材料又はナノ構造体の外側部分を表すために用いられる。
【0067】
「Ms」の略語は、メシレートを意味する。
【0068】
「放射性核種」の用語は、放射性崩壊し、その結果としてα、β、及び/又はγ放射線を放射する化学元素の不安定な形態を意味する。
【0069】
本明細書で用いられる場合、「画像化及び/又は放射線療法のための放射性核種」の表現は、アクチニウム-225(225Ac);銅-62(62Cu);銅-64(64Cu);銅-67(67Cu);ガリウム-67(67Ga);ガリウム-68(68Ga);ホルミウム-166(166Ho);インジウム-111(111In);鉛-212(212Pb);ルテチウム-177(177Lu);ラジウム-223(223Ra);レニウム-186(186Re);レニウム-188(188Re);ルビジウム-82(82Rb);サマリウム-153(153Sm);ストロンチウム-89(89Sr);テクネチウム-99m(99mTc3+);タリウム-201(201Tl);トリウム-227(227Th);イットリウム-86(86Y);イットリウム-90(90Y);及びジルコニウム-89(89Zr)を意味する。「画像化及び/又は放射線療法のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「画像化のための放射性核種」の表現は、銅-62(62Cu);銅-67(67Cu);ガリウム-67(67Ga);ガリウム-68(68Ga);インジウム-111(111In);ルテチウム-177(177Lu);レニウム-186(186Re);ルビジウム-82(82Rb);テクネチウム-99m(99mTc3+);タリウム-201(201Tl);イットリウム-86(86Y)、及びジルコニウム-89(89Zr)を意味する。「画像化のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0071】
本明細書で用いられる場合、「PET画像化のための放射性核種」の表現は、銅-62(62Cu);ガリウム-68(68Ga);ルビジウム-82(82Rb);イットリウム-86(86Y)、及びジルコニウム-89(89Zr)を意味する。「PET画像化のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0072】
本明細書で用いられる場合、「SPECT画像化のための放射性核種」の表現は、ガリウム-67(67Ga);インジウム-111(111In);テクネチウム-99m(99mTc3+)、及びタリウム-201(201Tl)を意味する。「SPECT画像化のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0073】
本明細書で用いられる場合、「放射線療法のための放射性核種」の表現は、アクチニウム-225(225Ac);銅-64(64Cu);銅-67(67Cu);ホルミウム-166(166Ho);鉛-212(212Pb);ルテチウム-177(177Lu);ラジウム-223(223Ra);レニウム-186(186Re);レニウム-188(188Re);サマリウム-153(153Sm);ストロンチウム-89(89Sr);トリウム-227(227Th)、及びイットリウム-90(90Y)を意味する。「放射線療法のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0074】
本明細書で用いられる場合、「PET画像化及び放射線療法のための放射性核種」の表現は、アクチニウム-225(225Ac);銅-62(62Cu);銅-64(64Cu);銅-67(67Cu);ガリウム-68(68Ga);ホルミウム-166(166Ho);鉛-212(212Pb);ルテチウム-177(177Lu);ラジウム-223(223Ra);レニウム-186(186Re);レニウム-188(188Re);ルビジウム-82(82Rb);サマリウム-153(153Sm);ストロンチウム-89(89Sr);トリウム-227(227Th);イットリウム-90(90Y);及びジルコニウム-89(89Zr)を意味する。「PET画像化及び放射線療法のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0075】
本明細書で用いられる場合、「SPECT画像化及び放射線療法のための放射性核種」の表現は、アクチニウム-225(225Ac);銅-64(64Cu);銅-67(67Cu);ガリウム-67(67Ga);ホルミウム-166(166Ho);インジウム-111(111In);鉛-212(212Pb);ルテチウム-177(177Lu);ラジウム-223(223Ra);レニウム-186(186Re);レニウム-188(188Re);サマリウム-153(153Sm);ストロンチウム-89(89Sr);テクネチウム-99m(99mTc3+);タリウム-201(201Tl);トリウム-227(227Th)、及びイットリウム-90(90Y)を意味する。「SPECT画像化及び放射線療法のための放射性核種」の表現はまた、上述した放射性核種のうちの2つ以上の組み合わせも包含する。
【0076】
ICP-OESは、元素分析法であるイオン結合プラズマ光学発光分光法を意味する。
【0077】
本コンテクストにおいて、ICPは、ICP-OESを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1図1は、本発明に従う化学化合物の模式図であり、1は、コアを表し、2は、親水性ポリマー残基を表し、3は、活性化シランを表す。
図2図2は、本発明に従う化学化合物が結合したナノ材料の一部の模式図である。
図3図3は、2つのアリコートのゲルろ過クロマトグラフィ(GFC)の結果を示し、A及びBは、N,N-ビス(3-トリメトキシシリルプロパ-1-イル)-2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]アセタミドでコーティングされたナノ構造体のマンガン充填時に取得した(以下の例18)。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示は、少なくとも3つの置換基を持ち、そのうちの2つが、活性化シラン基(3)を有し、1又は複数が、親水性ポリマー残基(2)を有するコア構造を含む化学化合物に関する(図1参照)。親水性ポリマー残基(2)は、多くの場合、異なる鎖長の混合であり、したがって、通常は、化学化合物の混合物中に、そのコア部分及び活性化シラン部分は同一であるが、ポリマー部分を構成するモノマー残基の数が異なる特定の化学化合物が見出される。この混合物を用いることは、ポリマー部分を構成するモノマー残基が特定の数である材料よりも著しく安価であるという利点を有する。
【0080】
例14に示され、コーティング前駆体41を参照されたいが、表面に化合物を固定するために3つ以上の活性化シラン基(3)を有することも当然考えられるが、これは、コーティングされたナノ構造体の溶解性が乏しいことから、それほど魅力的ではないことが示された。図1の親水性ポリマー残基(2)のいくつかの限定されない例は、ポリエチレングリコール(PEG、ポリエチレンオキシド(PEO)、又は(ポリオキシエチレン(POE)とも称される)、m-PEG(メトキシポリエチレングリコール)、ポリビニルピロリジニオン(polyvinyl pyrrolidinione)、様々な極性サッカリドとのアクリレート及びメタクリレート、ポリ(グリシジルメチルエーテル)、又はポリ(グリシジルアルコール)である。
【0081】
図1のコア(1)のいくつかの限定されない例は、ベンゼン、若しくはナフタレン、若しくはビフェニルなどの芳香族炭化水素;又はジフェニルエーテル、若しくはジフェニルメタンなどの連結された芳香族炭化水素;又はアントラキノンなどの縮合環系;又はピリジン、若しくはピリダジン、若しくはピリミジン、若しくはピラジン、若しくはピロール、若しくはイミダゾール、若しくはベンズイミダゾール、ピペリジン、ピロリジンなどのヘテロ環式化合物、又はシクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタンなどの炭素環式化合物である。それらは、様々な方法で導入されてよく、それらのうちのいくつかは、スキーム1aに示される。連結された環構造のビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、又はアントラキノンなどのいくつかでは、2つなどの2つ以上のポリマー残基を導入することが可能である。当業者であれば、より大きい脂肪族環、多環式脂肪族環系、又は大きい多環式芳香族若しくは複雑なヘテロ環系などのいくつかのさらなるコア構造を想定することができる。
【0082】
ある実施形態では、コアは、炭素環式非芳香族5~7員環であり;及び/又は親水性ポリマー残基は(独立して)、XがCH若しくはHであり、「m」が6~25の整数である-(O-CH-CH)m-OXであり;及び/又は活性化シランは、Aが酸素若しくは共有結合であり、「n」が1~3の整数であり、Yがメチル若しくはエチルである-A-(CHSi(OY)である。
【0083】
本発明者らは、コアが2つの活性化シラン及び2つの親水性ポリマーを有する1つの環である化合物が、ナノ材料のコーティングに有用ではなく、むしろゲルを形成することを見出した。したがって、コアの1つの環構造あたり2つ以上のポリマー鎖を有する構造体は、本発明から除外される(例14、コーティング前駆体20参照)。コアから延びた親水性ポリマー残基の数は、好ましくは、1からコアにある環構造の数までであるべきである。例14では、コーティング前駆体14が、コアに2つの環を有し、及び2つの親水性ポリマー残基を有する例として示されている。
【0084】
ある実施形態では、コアは、ベンゼン環若しくはビフェニルなどの芳香族であり;及び/又は親水性ポリマー残基は(独立して)、XがCH若しくはHであり、m=6~25である-(O-CH-CH)m-OXであり;及び/又は活性化シランは、Aが酸素若しくは共有結合であり、nが1~3の整数であり、Yがメチル若しくはエチルである-A-(CHSi(OY)である。
【0085】

【0086】
親水性ポリマー残基とコアとの結合は、当業者にとって明らかであるいくつかの方法であってよいが、コーティング前駆体54(例11b及び18参照)でコーティングされたナノ構造体とコーティング前駆体6(例14、コーティング前駆体6参照)でコーティングされたナノ構造体との安定性の相違によって示されるように、加水分解に対する、特に酸触媒加水分解に対する耐性を有する結合が有利である。本発明の範囲外である前者は、コーティング条件下で著しく分解されるが、一方、本発明の範囲内である後者は、強固である。加水分解に対する耐性を有するそのような結合のいくつかの限定されない例は、スキーム1cに概略的に示されるように、エーテル結合、又は炭素-炭素結合であり、この場合のベンゼン環は、一般的コアとして解釈されるべきである。
【0087】
【0088】
本発明の化学構造は、市販の化合物から合成することができる。以下では、スキーム2~15の化合物のうちのいくつかを入手するのに適する合成戦略のいくつかの限定されない例が概略的に示される。当業者であれば認識されるように、同じターゲット化合物に到達するための多くの別の選択肢としての経路が存在する。したがって、これらの方法は、単に考えられる方法のサンプルとして見なされるべきである。
【0089】
【0090】
スキーム2及び例1に示されるように、3,5-ジヒドロキシ安息香酸の三重アリル化、及び続いてのLAH(水素化リチウムアルミニウム)還元を、文献(Almen et. al.米国特許第6310243号の例78)から適合させ、臭素化は、得られたアルコールとPBrとの反応によって実現した。臭素をm-PEG12-20-OHのアニオンで置換し、続いてKarstedt触媒によって触媒されるHSi(OEt)を用いたヒドロシリル化を行った。
【0091】
【0092】
スキーム3に示されるように、化合物3dは、スティレカップリングなどのクロスカップリング反応を介する3,4-ジブロモピロール(3a)のビニル化、及び続いてのNaHなどの強塩基を用いた窒素の脱プロトン化によって合成することができ、得られたアニオンを、m-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとカップリングすることができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0093】
【0094】
化合物4dは、スティレカップリングなどのクロスカップリング反応を介する4,5-ジブロモイミダゾール(4a)のビニル化、及び続いてのNaHなどの強塩基を用いた窒素の脱プロトン化によって合成することができ、得られたアニオンを、m-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとカップリングすることができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0095】
【0096】
化合物5eは、スティレカップリングなどのクロスカップリング反応を介するメチル2,6-ジブロモイソニコチネート(5a)のビニル化、及び続いての適切なヒドリド源を用いたエステルの選択的還元によって合成することができる。得られたアルコールを、NaHなどの強塩基を用いて脱プロトン化することができ、得られたアニオンを、m-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとカップリングすることができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0097】
【0098】
化合物6fは、メチル2,6-ジブロモイソニコチネート(6a)と3-ビニルフェニルボロン酸(6b)との間の鈴木カップリングなどのクロスカップリング反応を介し、及び続いての適切なヒドリド源によるエステルの選択的還元によって合成することができる。得られたアルコールを、NaHなどの強塩基を用いて脱プロトン化することができ、次に、m-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとカップリングすることができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0099】
【0100】
化合物7cは、スティレカップリングを例とするクロスカップリング反応を介する2-アミノ-4,6-ジブロモピリミジン(7a)のビニル化、及び続いてのm-PEG12-20-OMs(56)などの一方の末端に適切な脱離基を持つm-PEGを用いたPEG化によって合成することができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0101】
【0102】
化合物8bは、エチル2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-5-カルボキシレート(8a)から、POCl又はPOBrなどのハロゲン化試薬を用いたハロゲン化、及び続いてのジアリルアミンを用いたハロゲンの求核置換によって合成することができる。このエステルを、適切なヒドリド源によって選択的に還元することができ、得られたアルコール8dは、PBrなどを例とするハロゲン化試薬などの適切な試薬を用いてハロゲンなどの脱離基に変換される。m-PEG12-20-OHなど、一方の末端にアルコールなどの適切な官能基を有する親水性ポリマーを、NaHなどの強塩基によって脱プロトン化することができ、次に、ベンジル位における求核置換に供することができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0103】
【0104】
化合物9bは、4,5-ジブロモ-1,2-ジアミノベンゼン(9a)から、イミダゾール環をまず形成し、続いてHBr及びBrなどのハロゲン化試薬を用いたC2位でのハロゲン化によって合成することができる。そのようにして取り付けられたハロゲンを、アミンなどの、特には一級アミンなどの適切な官能基を持つ親水性ポリマーによって置換することができる。そのような化合物の例は、m-PEG12-20-NH(2-(ω-メチル-エチレンオキシ12-20)エタ-1-イルアミン)である。残りの2つの芳香族ブロミドは、スティレ反応などのクロスカップリング反応を介するビニル化を受けてジビニル化合物9cを得ることができ、それは、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0105】
【0106】
化合物10bは、スティレカップリングを例とするクロスカップリング反応を介するメチル3-クロロヨードベンゼンのアリル化によって開始して合成することができる。10bのクロリドは、Mgを例とする金属で交換することができ、次にこの有機金属種をギ酸エチルと反応させてベンジルアルコール10cを得ることができ、これを、NaHを例とする強塩基によって脱プロトン化し、次にm-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとカップリングすることができる。最後に、10dの2つの二重結合を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することが可能である。
【0107】
【0108】
化合物11hは、スティレカップリングなどのクロスカップリング反応を介する3,5-ジブロモベンゾニトリル(11a)のアリル化によって開始して合成することができる。シアノ基を、適切なヒドリド源によって選択的に還元することができる。得られたアミン11cを、バックワルドクロスカップリングなどの銅触媒反応又はパラジウム系反応などの金属触媒クロスカップリングなどのクロスカップリング反応によって、メチル3-ブロモベンゾエートとカップリングし、続いて、適切なヒドリド源によってこのエステルを還元することができる。得られたアルコール11eを、次に、PBrなどの臭素化試薬などを例とするハロゲン化試薬などの適切な試薬を用いて、ブロミドなどのハロゲンなどを例とする脱離基に変換することができる。m-PEG12-20-OHなど、一方の末端にアルコールなどの適切な官能基を有する親水性ポリマーを、NaHなどの強塩基によって脱プロトン化することができ、次に、ベンジル位における求核置換に供して11gを形成することができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化することができる。
【0109】
【0110】
化合物12dは、スティレ反応又は鈴木反応を例とするクロスカップリング反応を介する4,5-ジクロロ-9H-フルオレン-9-アミン(12a)のビニル化によって開始し、続いてm-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとのカップリングによって合成することができる。最後に、2つの二重結合を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化して、12dを得ることができる。
【0111】
【0112】
化合物13dは、スティレ反応を例とするクロスカップリング反応を介する4,6-ジクロロフェノキサジン(13a)のアリル化によって開始し、続いてのm-PEG12-20-OMs(56)などの一方の末端に適切な脱離基を持つm-PEGを用いたPEG化によって合成することができる。最後に、13cの2つのビニル基を、例えば(EtO)SiH及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化して、13dを得ることができる。
【0113】
【0114】
化合物14bは、スティレカップリングなどのクロスカップリング反応を介する3,5-ジブロモベンゾニトリル(14a)のアリル化によって合成することができる。シアノ基を、適切なヒドリド源によって選択的に還元することができる。得られたアミン14cを、2当量のメチル3-メトキシカルボニルベンジルブロミド(14d)を用いてアルキル化し、続いてLAHを例とする適切なヒドリド源によってこのエステルを還元することができる。得られたアルコール14fを、PBrを例とするハロゲン化試薬などの適切な試薬を用いて、ハロゲン、ブロミドなどの脱離基に変換することができる。m-PEG12-20-OHなど、一方の末端にアルコールなどの適切な官能基を有する親水性ポリマーを、NaHなどの強塩基によって脱プロトン化することができ、次に、ベンジル位における求核置換に供して14hを得ることができる。最後に、2つのビニル基を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化して、シラン14iを得ることができる。
【0115】
【0116】
化合物15bは、臭化アリルなどのアルキル化試薬の求核置換を介する4,4’-ジヒドロキシベンゾ-フェノン(15a)のアリル化によって合成することができる。カルボニル基を、ヒドリドドナーによって還元し、続いてPBrなどのハロゲン化試薬を用いてハロゲン化することができる。テトラヒドロピラニル基(THP)などの“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,5th Edition,P.G.M.Wuts,Wiley,2014に見出される群より選択される塩基安定性保護基(PG)によってアルコール官能基が保護された15e、及び例えばPhPなどのリン試薬と15dとの反応によって得られるホスホニウムイリドを用いたカップリング、及び続いてのNaHを例とする強塩基を用いた処理から、15fを得ることができる。アルコール上の両保護基を除去するための脱保護に続いて、m-PEG12-20-OMs(56)などの適切な脱離基を持つ親水性ポリマーとカップリングすることができる。最後に、15hの2つの二重結合を、(EtO)SiHなどのシラン及びKarstedt触媒などの白金化合物などの触媒を用いてヒドロシリル化して、15iを得ることが可能である。
【0117】
ある実施形態では、化学構造(式1)は、スキーム16に示される通りであり、Xは、メチル又は低級アルキル、すなわち、C1-8であり、R~Rは、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、ジアルキルアミノ、窒素含有ヘテロ環、又はアシルオキシ基から成る群より選択され、A及びAは、独立して、CH、O、又はSから成る群より選択され、mは、6~25の整数であり、nは、1~3の整数であり、nは、1~3の整数である。
【0118】
【0119】
ある実施形態では、化学構造は、スキーム16に示される通りであり、Xは、メチルであり、R~Rは、メトキシ又はエトキシであり、mは、12~20の整数であり、n及びnは、いずいれも3であり、A及びAは、Oである。
【0120】
ある実施形態では、化学構造は、スキーム16に示される通りであり、Xは、メチルであり、R~Rは、メトキシ又はエトキシであり、mは、12~20の整数であり、n及びnは、いずいれも1であり、A及びAは、CHである。
【0121】
さらに、本開示は、スキーム1~16の前記化学化合物の親水性ポリマー残基を含むコーティングされたナノ材料に関し、活性化シランのうちの一方又は両方が、図2に示されるように1、2、又は3つ以上の結合など、未コーティングのナノ材料の表面とある程度共有結合を形成しており、図中、Xは、OH、O、又は表面に結合した酸素との共有結合である。
【0122】
本発明に従う化学化合物は、ナノ材料の生体不活性コーティングを形成し得る。ナノ材料は、その表面上に適切な反応性基を持ち得る。そのような反応性基の例は、ヒドロキシル基である。限定するものではないが、Si-OH基が特に適切であり、Fe-OH、Hf-OH、Zr-OH、Ta-OH、及びTi-OHも適切である。
【0123】
本発明のある実施形態では、前記ナノ材料は、ナノ構造体である。
【0124】
多くの場合、表面上に高いコーティング密度を有することが有利であり、本発明で実現されたように(例12)、0.1コーティング残基/nm超、又は0.2コーティング残基/nm超、又は0.5コーティング残基/nm超、又は1コーティング残基/nm超などである。特に、タンパク質相互作用に対する耐性は、前記高コーティング密度を実現することに依存する。
【0125】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、ケイ素原子を含む。
【0126】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、リン原子を含む。
【0127】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、ケイ素及びリン原子を含む。
【0128】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、鉄、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、ガドリニウム、テルビウム、ユウロピウム、又はチタン原子を含む。
【0129】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、キレート基を含んでいるポリマー骨格又は足場を含むナノ構造体である。
【0130】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、R及びRが、独立して、負電荷、H、アルキル、及びアリールから選択される少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基-P=O(OR)(OR)を含むか又はそれらで修飾されたポリマー骨格又は足場を含むナノ構造体である。
【0131】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、キレート基を含んでいるポリマー骨格又は足場をベースとするナノ構造体中に組み込まれた常磁性マンガンイオンを含むナノ構造体である。
【0132】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、R及びRが、独立して、負電荷、H、アルキル、及びアリールから選択される少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基-P=O(OR)(OR)を含むか又はそれらで修飾されたポリマー骨格又は足場をベースとするナノ構造体中に組み込まれた常磁性マンガンイオンを含むナノ構造体である。
【0133】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、R及びRが、独立して、負電荷、H、アルキル、及びアリールから選択される少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基-P=O(OR)(OR)を含むか又はそれらで修飾されたポリマー骨格又は足場をベースとするナノ構造体中に組み込まれた常磁性マンガンイオンを含むナノ構造体であり、コーティングは、共有結合によって連結されているスキーム16の化学構造を含み、Xは、メチルであり、R~Rの1又は複数及び/又はR~Rの1又は複数は、ナノ構造体の表面酸素との共有結合であり、残りのR~R及びR~Rは、メトキシ、エトキシ、OH、又はOであり、mは、6~25の整数であり、n及びnは、3であり、A及びAは、Oである。
【0134】
ある実施形態では、図2のナノ材料は、R11及びR12が、独立して、負電荷、H、アルキル、及びアリールから選択される少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基-P=O(OR11)(OR12)を含むか又はそれらで修飾されたポリマー骨格又は足場をベースとするナノ構造体中に組み込まれた常磁性マンガンイオンを含むナノ構造体であり、コーティングは、共有結合によって連結されているスキーム16の化学構造を含み、Xは、メチルであり、R~Rの1又は複数及び/又はR~Rの1又は複数は、ナノ構造体の表面酸素との共有結合であり、残りのR~R及びR~Rは、メトキシ、エトキシ、OH、又はOであり、mは、12~20の整数であり、n及びnは、3であり、A及びAは、Oである。
【0135】
ある実施形態では、コーティングされたナノ材料又はナノ構造体は、1又は複数の抱合のためのハンドルを含む。
【0136】
ある実施形態では、コーティングされたナノ材料又はナノ構造体は、1又は複数の抱合体を含む。
【0137】
ある実施形態では、コーティングされたナノ材料又はナノ構造体は、1又は複数のペプチドを抱合体として含む。
【0138】
本開示はまた、本発明に従う複数のコーティングされたナノ構造体を含む、医薬組成物などの組成物にも関し、さらには、コーティングされたナノ構造体のそのような組成物の臨床的に有用である造影剤又は画像化剤としての使用、特に、MRIのための造影剤としての使用にも関する。
【0139】
本発明に従うコーティングされたナノ構造体は、そのマンガン又はガドリニウムが充填された形態において、マウスでの耐用量が400μmol/kgである低毒性の特性、及びヒトなどの哺乳類などの生物(又は生物の一部)のMRI検査のための造影剤としてそれらを有用なものとする高い緩和度(25/mM/秒)を有する。
【0140】
DLSによって測定された場合の流体力学径が3nm超又は4nm超又は5nm超である本発明の実施形態において、高い緩和度及び適切なサイズという特性の組み合わせにより、本発明のコーティングされたナノ構造体を含む組成物は、MRIによる腫瘍の画像化、特に固形腫瘍の画像化に適するものとなる。また、本発明において提供される高い緩和度及び良好なコントラストにより、心臓の微細な冠動脈、頸動脈、腎動脈、又は大動脈の血管造影を例とする一般的な解剖学的画像化のための造影剤として前記コーティングされたナノ構造体を使用することも可能となる。
【0141】
本発明のある実施形態では、コーティングされたナノ構造体の医薬的に許容される製剤などの溶液は、ヒトなどの対象に、静脈内などの非経口経路によって投与され、対象は、MRI検査に掛けられる。
【0142】
頭部、肝臓、膵臓、及び腸などの内臓、又は四肢における構造の画像化も、目的とする対象である。結腸の画像化も、静脈内投与によって実現することができる。胃、肝臓、及び上部消化管の画像化の場合は、造影剤を経口投与することが考えられる。
【0143】
本発明のコーティングされたナノ構造体が、高い緩和度及び低い毒性という特性を有することから、この材料を細胞標識に用いることが考えられる。この場合、幹細胞又はマクロファージを例とする細胞は、ヒトの身体を例とする哺乳類の身体の外で、コーティングされたナノ構造体によって充填され、その後前記哺乳類に挿入され、MRIスキャニングによって画像が生成される。そして、細胞を、それらが生物体内を輸送されるに従って追跡することができる。
【0144】
本発明のコーティングされたナノ構造体の生体内での使用では、当業者に公知であるベストプラクティスに従う薬理学的に許容される方法でそれらを製剤する必要がある。好ましい投与モードは、非経口であり、特に、静脈内経路が有利である。しかし、高い局所的コントラストが所望される場合などのある特定の状況下では、動脈内投与が有利であり得る。非経口投与は、液体製剤を必要とすることが多い。本発明のコーティングされたナノ構造体を溶液とするための好ましい溶媒は、水であるが、溶液の安定性を高めるために、1若しくは複数の共溶媒又は添加剤が0.1~10%(体積/体積)で添加されてもよい。許容される共溶媒は、エタノール又はグリセロールなどのアルコール;ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールなどの生体適合性ポリマー;ジメチルスルホキシド;又はN-メチルピロリジノンである。塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、又は他の糖若しくは糖アルコールなどの1又は複数の浸透圧調節剤を添加することも有利であり得る。製剤は、体液に対して等張性又はある程度高浸透圧性であることが望ましい。好ましくは、静脈内用途のための溶液は、270~2000mOsm、又は280~1000mOsm、又は280~500mOsmのオスモル濃度を有する。前記添加剤の多くは、凍結乾燥後の再構築の効率を高める凍結保護物質の機能も満たし得る。また、注射された溶液の生理学的影響を下げるために、電解質を添加することも有利であり得る。好ましい電解質は、ナトリウム、カルシウム、及び/又はマグネシウムの無毒性塩の組み合わせである。注射溶液のpHを制御することが好ましく、注射に適するいずれの緩衝剤も考えられ得る。好ましい緩衝剤は、トリス-HClである。組成物の保存寿命を改善するために、サルファイト、ジチオナイト、及び/又はチオサルフェートなどであるがこれらに限定されない酸化防止剤も添加されてよい。
【0145】
ナノ構造体の濃度は、多くの異なる方法で記載され得るが、最も妥当な2つの方法は、g/l溶液として与えられる質量濃度、及びmmolでのマンガン/l溶液の濃度である。造影剤としての投与に適する製剤中のマンガンの濃度範囲は、1~500mM、又は10~300mM、又は10~200mM、又は10~100mM、又は20~80mMの範囲である。質量濃度として与えられる場合、及びリンのマンガンに対する比が約10であると仮定する場合、造影剤製剤に適する質量濃度は、0.5~300g/l、又は25~300g/l、又は50~300g/l、又は100~300g/lの範囲である。
【0146】
本発明の1つの実施形態は、10~100mMのマンガン濃度及び7~20のリン対マンガンモル比を有する、静脈内投与のための本発明に従う複数のナノ構造体の医薬的に許容される製剤を構成する。
【0147】
本発明の1つの実施形態は、40~80mMのマンガン濃度及び7~15のリン対マンガンモル比を有する、静脈内投与のための本発明に従う複数のナノ構造体の医薬的に許容される製剤を構成する。
【0148】
本発明のある実施形態は、本発明に従う複数のコーティングされたナノ構造体を含む組成物を構成する。
【0149】
本発明のある実施形態では、コーティングされたナノ材料又はコーティングされたナノ構造体は、99TcなどのSPECT画像化に適するガンマ線放射性同位体又は68GaなどのPET画像化に適する陽電子放射性同位体など、診断的に有用である放射性同位体を含む。
【0150】
本発明は、さらに、本発明に従う前記コーティング化学化合物を作製するための方法にも関する。当業者であれば、前記化学構造の作製において多くの選択肢が考えられるが、活性化シランの感受性の高い性質に起因して、それらは、最終工程などのプロセスの後期に導入されるべきである。
【0151】
本発明に従う化学構造は、最終化学工程としてヒドロシリル化を含む方法によって得られ得る。
【0152】
本発明の1つの実施形態によると、本発明に従う化学化合物を得るための方法は、最後から2番目の化学工程における抽出分離工程を含む。
【0153】
別の実施形態によると、この方法は、炭化水素を用いた抽出、無機塩の添加、及び酢酸エチルなどの極性水不混和性溶媒を用いた抽出を含む一連の操作を、最後から2番目の化学工程に含み得る。
【0154】
さらに、本開示は、本発明に従うコーティングされたナノ材料又はナノ構造体を作製するための方法に関する。一般的に、これは、未コーティングのナノ材料又はナノ構造体を、懸濁液又は溶液として、水若しくはエチレングリコールなどのアルコールを含む溶媒などの極性溶媒、又はジメチルホルムアミド若しくはジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などの適切な溶媒中に提供することを含む。第二の工程において、本発明に従う化学化合物(コーティング前駆体)が、所望に応じて添加剤の存在下で、又は中性から離れるようにpHを調節して、前記溶液又は懸濁液と接触され、続いて、得られた混合物は、指定された時間にわたって加熱される。MRI造影剤を作製することが目的である場合、マンガン源、例えばマンガン(II)塩、例えば塩化マンガン(II)を添加する工程が導入される。例19を参照されたいが、本発明者らは、尿素、炭酸アンモニウム、又はアンモニアがコーティングプロセスの過程で添加剤として用いられた場合、コーティングされたナノ構造体の非常により良好な収率が得られ得ることを見出した。最も高い収率は、尿素の存在下で得られる。改善は、20倍の高さであり得る。本発明者らはまた、コーティング前駆体が、5~20時間などの数時間にわたるなど、ゆっくり添加された場合に、コーティングされたナノ構造体の収率が改善されることも見出した。本発明者らは、最終のコーティングされたナノ構造体の最良のマンガンキレート能を得るために、反応混合物は、24~168時間、又は48~120時間、又は80~110時間などの長時間にわたって、80~120℃又は90~100℃の温度で加熱されるべきであることを見出した。
【0155】
ナノ構造体をコーティングする方法は、添加剤としての尿素と共に行われてよい。
【0156】
ナノ構造体をコーティングする方法は、0.1~1Mの濃度の添加剤としての尿素と共に行われてよい。
【0157】
ナノ構造体をコーティングする方法は、0.4~0.6Mの濃度の添加剤としての尿素と共に行われてよい。
【0158】
ナノ構造体をコーティングする方法は、0.1~1Mの濃度の添加剤としての炭酸アンモニウム又はアンモニアと共に行われてよい。
【0159】
ナノ構造体をコーティングする方法は、溶媒としての水及びエチレングリコールの混合物と共に行われてよい。
【0160】
ナノ構造体をコーティングする方法は、コーティング前駆体が数時間にわたって添加されるように行われてよい。
【0161】
ナノ構造体をコーティングする方法は、コーティング前駆体が5~20時間にわたって添加されるように行われてよい。
【0162】
ナノ構造体をコーティングする方法は、コーティング前駆体が8~12時間にわたって添加されるように行われてよい。
【0163】
ナノ構造体をコーティングする方法は、コーティング前駆体が80~100℃の温度で添加されるように行われてよい。
【0164】
ナノ構造体をコーティングする方法は、コーティング前駆体が添加された後、温度が、90~110℃で80~120時間にわたって維持されるように行われてよい。
【0165】
ナノ構造体は、タンジェンシャルフローろ過などのろ過によって精製されてよい。
【0166】
ナノ構造体は、タンジェンシャルフローろ過によって精製されてよく、まず、大孔径のフィルターを通して望ましくない大きい不純物を除去し、続いて小孔径フィルター上に濃縮溶液として回収され、そこで、溶媒残渣及び小分子不純物が除去される。
【0167】
ナノ構造体は、タンジェンシャルフローろ過によって精製されてよく、まず、公称分画値50~100kDaのフィルターを通して望ましくない大きい不純物を除去し、続いて公称分画値10kDa又はそれ以下のフィルター上に濃縮溶液として回収され、そこで、溶媒残渣及び小分子不純物が除去される。
【0168】
具体的実施形態
1.コア、少なくとも1つの親水性ポリマー残基、及び活性化シラン基を各々が含む少なくとも2つのアンカー基を含む化学化合物。
【0169】
2.コアが、芳香族コアである、実施形態1に記載の化学化合物。
【0170】
3.コアが、炭素環式非芳香族コアである、実施形態1に記載の化学化合物。
【0171】
4.コアが、ヘテロ環である、実施形態3に記載の化学化合物。
【0172】
5.アンカー基が、以下の一般式-A-(CHSiYを有し、式中、Aは、共有結合、CH、又はOであり、「n」は、1~3の整数であり、Yは、独立して、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、ジアルキルアミノ基、窒素含有ヘテロ環、及びアシルオキシ基から成る群より選択され、少なくとも2つのアンカー基は、同じであっても又は異なっていてもよい、実施形態1から4のいずれか1つに記載の化学化合物。
【0173】
6.親水性ポリマー残基が、PEG(ポリエチレングリコール)である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の化学化合物。
【0174】
7.親水性ポリマー残基が、mPEG(メチル末端ポリエチレングリコール)である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の化学化合物。
【0175】
8.親水性ポリマー残基が、10~500のエチレングリコール残基の鎖長を有する、実施形態6又は7に記載の化学化合物。
【0176】
9.親水性ポリマー残基が、10~50のエチレングリコール残基の鎖長を有する、実施形態6又は7に記載の化学化合物。
【0177】
10.親水性ポリマー残基の鎖長が、16が最も多い6~25のエチレングリコール残基である、実施形態6又は7に記載の化学化合物の混合物。
【0178】
11.化学化合物の各々にある活性化シランの一方又は両方が、ナノ構造体コアの表面に共有結合している、実施形態1から9のいずれか1つに記載の化学化合物の残基を含むコーティングされたナノ構造体。
【0179】
12.化学化合物の各々にある活性化シランの一方又は両方が、ナノ構造体コアの表面に共有結合している、実施形態10に記載の混合物を含むコーティングされたナノ構造体。
【0180】
13.ナノ構造体が、ジェミナルビスホスホネート基及び2つの有機オキシシラン基を有するモノマー残基を含むか、又はそれらで修飾されたポリマー骨格を含む、実施形態11又は12に記載のコーティングされたナノ構造体。
【0181】
14.ナノ構造体が、R11及びR12が独立して負電荷、H、アルキル基、及びアリール基から選択される一般式-P=O(OR11)(OR12)を有する少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むか、又はそれらで修飾されたポリマー骨格を含み、ポリマー骨格はさらに、ジェミナルビスホスホネート基及び2つの有機オキシシラン基を有するモノマー残基も含む、実施形態11又は12に記載のコーティングされたナノ構造体。
【0182】
15.コーティングされたナノ構造体の流体力学径が、2~50nmである、実施形態11から14のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0183】
16.コーティングされたナノ構造体の流体力学径が、3~10nmである、実施形態11から14のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0184】
17.コーティングされたナノ構造体の流体力学径が、3~7nmである、実施形態11から14のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0185】
18.コーティングされたナノ構造体の流体力学径が、10~50nmである、実施形態11から14のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0186】
19.コーティングされたナノ構造体の流体力学径が、10~20nmである、実施形態11から14のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0187】
20.マンガン(II)イオン又はガドリニウム(III)イオンをさらにを含む、実施形態11から19のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0188】
21.P/Mnモル比が、5~20である、実施形態20に記載のコーティングされたナノ構造体。
【0189】
22.Si/Mnモル比が、4~20である、実施形態20又は21に記載のコーティングされたナノ構造体。
【0190】
23.ナノ構造体が、ジェミナルビスホスホネート基を有するモノマー残基を含むか、又はそれらで修飾されたポリマー骨格を含み、マンガンイオンが、ホスホネート基に配位している、実施形態20から22のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0191】
24.画像化及び/又は放射線療法のための放射性核種をさらに含む、実施形態11から19のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体。
【0192】
25.実施形態11から19のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体を得るための方法であって、
- ナノ構造体を提供する工程;及び
- 前記ナノ構造体を、実施形態1から9のいずれか1つに記載の化学化合物のうちの少なくとも1つと、又は実施形態10に記載の混合物と接触させる工程、
を含む、方法。
【0193】
26.実施形態20から23のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体を得るための方法であって、
- ジェミナルビスホスホネート基を有するモノマー残基を含むか、又はそれらで修飾されたポリマー骨格を含むナノ構造体を提供する工程;
- 前記ナノ構造体を、実施形態1から9のいずれか1つに記載の化学化合物のうちの少なくとも1つと、又は実施形態10に記載の混合物と接触させる工程;及び
- 前記ナノ構造体を、マンガンイオン又はガドリニウムイオンと接触させる工程、
を含む、方法。
【0194】
27.ナノ構造体が、限外ろ過によって精製される工程をさらに含む、実施形態25又は26に記載の方法。
【0195】
29.実施形態24に記載のコーティングされたナノ構造体を得るための方法であって、
- ジェミナルビスホスホネート基を含むナノ構造体を提供する工程;
- 前記ナノ構造体を、実施形態1から9のいずれか1つに記載の化学化合物のうちの少なくとも1つと、又は実施形態10に記載の混合物と接触させる工程;及び
- 前記ナノ構造体を、画像化及び/又は放射線療法のための放射性核種と接触させる工程、
を含む、方法。
【0196】
30.ナノ構造体が、限外ろ過によって精製される工程をさらに含む、実施形態29に記載の方法。
【0197】
31.実施形態11から19のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体を含む組成物。
【0198】
32.実施形態20から23のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体を含む組成物。
【0199】
33.実施形態24に記載のコーティングされたナノ構造体を含む組成物。
【0200】
34.実施形態20から23のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体の、又は実施形態32に記載の組成物の、MRI造影剤としての使用。
【0201】
35.実施形態24に記載のコーティングされたナノ構造体の、又は実施形態33に記載の組成物の、PET及び/又はSPECT画像化剤としての使用。
【0202】
36.実施形態24に記載のコーティングされたナノ構造体の、又は実施形態33に記載の組成物の、放射線療法における使用。
【0203】
37.MRI造影剤として用いるための、実施形態20から23のいずれか1つに記載のコーティングされたナノ構造体、又は実施形態32に記載の組成物。
【0204】
38.PET及び/又はSPECT画像化に用いるための、実施形態24に記載のコーティングされたナノ構造体、又は実施形態33に記載の組成物。
【0205】
39.放射線療法に用いるための、実施形態24に記載のコーティングされたナノ構造体、又は実施形態33に記載の組成物。
【実施例
【0206】
全般的実験詳細事項
SIR-200は、Resintech、米国(resintech.com)から購入し、NaSによって活性化し、注意深く洗浄し、使用前に乾燥した。
【0207】
略語:ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、酢酸エチル(EtOAc)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、酢酸カリウム(KOAc)、アセトニトリル(MeCN)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)。
【0208】
例1:化合物6、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼンの合成
【0209】
例1a:化合物2、3,5-ジアリルオキシアリルベンゾエート. 3,5-ジヒドロキシ安息香酸(1)(100g、0.65mol)を、窒素下、4枚羽根ステンレス鋼撹拌器で撹拌する2L反応器中でDMF(500ml)に溶解した。炭酸カリウム(345g、2.5mol、Fw=138.2g/mol)を、ケーキングを回避しながら、さじで添加した。温度が22から34℃に上昇し、混合物は粘性となった。反応器にスパイラル冷却管を取り付け、ジャケット温度を50℃に設定した。臭化アリル(344g、246ml、2.85mol、d=1.40g/ml、Mw=121g/mol)を、250mlの等圧滴下漏斗に充填し、反応器に取り付けた。内部温度が47℃に到達した時点で、最初の150mlについては25mlずつで添加を開始し、続いて50mlずつ添加した。内部温度をピークに到達させ(50から57℃、ある程度又は55℃に戻した後に次の添加を行った。合計添加時間は、2時間15分であった。反応混合物を、ジャケット温度50℃で翌日まで撹拌した。スラリーを底バルブから取り出し(60mlのDMFで洗い流した)、1L瓶に回収し、ブフナー漏斗上のガラス繊維フィルターに通した。ケーキを、3×60mlのDMFで洗浄した。反応器を水で洗浄し、DMF溶液を再度導入した。反応器に、高効率縦型スパイラル冷却管を備えた蒸留ヘッドを取り付けた。反応器内を減圧し(セントラル真空、約20mbar)、ジャケット温度を70から85℃に、液体温度を53~75℃に、蒸気温度を50~53℃に次第に上昇させて、早いペースでDMFを留去した。DMFが除去されるに従って、副生物の炭酸アリルカリウムがオイルとして沈澱する。まだ温かい間に底バルブから残渣を排出し、500mlのRBフラスコに回収した。炭酸アリルは、冷蔵庫に一晩放置すると、固化して塊となる。このオイル/固体を、4×50mlの遠心分離管に移し、遠心分離した。上澄の生成物をデカントした。収率 142g、518mmol、80%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.23(s,2H),6.70(s,2H),6.05(m,3H),5.42(m,3H),5.30(m,3H),4.81(d,J=5.58Hz,2H),4.55(d,J=5.20Hz,4H)。
【0210】
例1b:化合物3、3,5-ジアリルオキシベンジルアルコール. 2lのジャケット付き反応器に、高効率冷却管及びPTFEコーティングした2枚羽根撹拌器を取り付けた。冷却管の冷却スパイラルを、独立したシリコンオイル温度コントローラに接続した。このシステムを、ジャケット温度を130℃に設定して、真空下で数時間乾燥し、次にシステムを、窒素充填し、冷却させた。乾燥メチルt-ブチルエーテル(MTBE、1.5l)を、シリコーンセプタムを通してカニューレで反応器に投入した。水素化リチウムアルミニウムのペレット(20g、0.158mol、Fw=37.95)を添加したが、まず1つ目はシステム内に微量の水分しか存在しないことをチェックしながら、その後に残りを添加した。温度が約1度上昇した。ペレットは溶解しない。例1aのエステル(210g、0.766mol)を、滴下漏斗中、窒素下で乾燥MTBE(500ml)に溶解した。滴下漏斗を反応器に取り付けた。ジャケット温度を28℃に設定し、冷却管温度を5℃に設定した。内部温度が25℃に到達した時点で、出発物質を、滴下漏斗を通して少量ずつ添加した。反応は、高発熱性であり、各添加の後、温度は直ちに上昇する。温度がピークに到達した時点ですぐに、次の少量を添加してよい。添加は2時間かかり、最高温度は34℃であった。1時間の撹拌後、ジャケット温度を0℃に設定し、内部温度が5℃に到達した時点で、水(20ml)を非常に注意しながら添加した(3×0.1、0.2、0.2、0.3、0.3、0.4、0.4、0.5、0.5、4×0.6、3×1、1.5、5、5ml)。最初の一滴による反応は、非常に激しい。各添加分の後に、温度を5℃まで低下させた。合計添加時間は、1時間10分であった。LiAlHペレットが視認できなくなった時点で次に進んだ。20mlの15%(重量/体積)NaOH水溶液を添加し、続いてさらなる60mlの水を添加した。この懸濁液を、15分間撹拌し、次に温度を20℃に設定し、混合物をさらに20分間撹拌した。白色の顆粒状沈殿物が形成された。無水MgSO(150g)を添加し、得られた混合物をさらに1時間撹拌した。スラリーを、底バルブから排出し、ガラス繊維フィルター(GF/A)でろ過した。ケーキを、300mlのMTBEで2回洗浄し、1つにまとめたろ液を、ロータリーエバポレータ上で蒸発させた。収率 161.7g、96%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.54(bs,2H),6.43(s,1H),6.05(m,2H),5.42(d,J=17.69Hz,2H),5.29(d,J=9.65Hz,2H),4.62(s,2H),4.52(d,J=5.15Hz,4H)。
【0211】
例1c:化合物4、3,5-ジアリルオキシベンジルブロミド. 温度コントローラを備えた2lのジャケット付き反応器に、セプタム及びPTFEコーティングした2枚羽根撹拌器を取り付けた。システムに窒素を充填し、DCM(500ml)中の例1bのジアリルオキシベンジルアルコール3(42.2g、0.192mol)を、反応器に導入した。温度コントローラを0℃に設定し、内部温度が2℃に到達した時点で、PBr(22.3ml、64.3g、0.238mol、1.24当量、Mw=270.69)を、シリンジを用いてセプタムを通して少量ずつ添加した。反応は、中程度の発熱性であるが、温度は5℃を超えるべきではない。合計添加時間は、30分であった。5分後、固体NaHCO(36g、0.43mol、Fw:84.01)を添加することによって反応停止した。ゆっくりと温度上昇が開始し、1から12℃となった。30分後、22gの無水MgSOを添加し、次に90gのシリカを添加した。混合物をサイフォン式に取り出し(底バルブを用いた場合は、シリカによって損傷する)、ガラス繊維フィルターを通してろ過した。フィルターケーキを2×100mlのDCMで洗浄し、浴温度20℃で蒸発させた。生成物は、温度感受性であり、冷蔵庫又は冷凍庫に保存する。生成物は、褐色オイルとして得た(50g、0.177mol、収率92%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.56(d,J=2.29Hz,2H),6.44(t,J=2.05Hz,1H),6.05(m,2H),5.42(dq,J=17.10,0.95Hz,2H),5.30(dq,J=10.13,1.90Hz,2H),4.52(dt,J=5.13,1.71Hz,4H),4.41(s,2H)。
【0212】
例1d:化合物5、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス[(プロパ-2-エン-1-イル)オキシ]ベンゼン. 準備として、m-PEG12-20-OH(多分散)を、丸底フラスコ中、真空下で一晩40℃に加熱することによって乾燥させた。反応器を、ジャケット温度を130℃に設定して、真空下で1時間乾燥し、次にシステムを、窒素充填し、冷却させた。NaH(10.1g、0.25mol、鉱油中60%、1.1当量)を、続いてTHF(230ml、無水)を反応器に投入したが、これは、sure-sealボトルから両頭針を介して反応器に移した。温度コントローラを0℃に設定した。内部温度が2℃未満となった時点で、THF(115ml、無水)中のm-PEG12-20-OH(173.9g、0.23mol、1.0当量)を、15分間かけて滴下し、温度が7℃まで上昇した。撹拌をさらに1時間継続し、次に温度コントローラを10℃に設定した。THF(45ml、無水)中の例1cのジアリルオキシベンジルブロミド(65g、0.23mol)の溶液を、滴下漏斗に充填した。滴下漏斗を反応器に取り付け、溶液を15分間かけて添加した。内部温度は、17℃に上昇した。温度コントローラを18℃に設定し、撹拌をさらに2時間継続した。その後、反応混合物を5℃まで冷却し、0.1M HCl溶液(230ml)を滴下してpHを5.5に到達させることによって反応停止した。混合物を室温まで戻し、続いて有機溶媒を蒸発させた。粗生成物を、800mlの体積まで水で希釈した。固体のNaCl(32.5g)を添加し、続いてヘプタン(200ml)及びトルエン(30ml)を添加し、得られた混合物を、15分間撹拌した。有機相を除去し、抽出手順をさらに3回繰り返した。次に、水相をEtOAc(200ml×3)で抽出した。1つにまとめたEtOAc相を、MgSOで乾燥し、ろ過し、蒸発させて、化合物5(170g、収率78%)を黄色がかったゲルとして得た。1H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.52(d,J=1.98Hz,2H),6.42(s,1H),5.41(d,J=17.13Hz,2H),5.28(d,J=10.28Hz,2H),4.51(m,6H),3.71-3.58(m,54H),3.55(m,2H),3.38(s,3H)。
【0213】
例1e:化合物6、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼン. 温度コントローラを備えた2lのジャケット付き反応器に、セプタム及びPTFEコーティングした2枚羽根撹拌器を取り付けた。このシステムに窒素を充填し、例1dの3,5-ジアリルオキシベンジルオキシPEG 5(170.0g、178.3mmol)及び乾燥トルエン(700ml、針移送)及びトリエトキシシラン(136.9ml、121.9g、0.713mol、4.0当量)を投入した。浴温度を40℃に設定した。Karstedt触媒(5ml、キシレン中2%)。温度は、59℃でピークとなった。温度が40℃に戻って来た時点で、さらに触媒溶液(1.0ml)を添加したが、温度変化は見られなかった。室温で一晩放置した。粗生成物のH NMRは、オレフィンプロトンの消滅、及び分子中におけるトリエトキシシリル基の出現を示した。次に、溶媒を蒸発させ、過剰のシランを、無水トルエン(60ml)を用いた蒸発によって排出した。生成物を、真空/窒素の3サイクルで脱気したトルエン(400ml)に溶解し、活性化されたSIR-200(180g)と共に4日間撹拌した。ろ過及び蒸発によって、190.0g(148.7mmol、収率83%)の6が淡色オイル(収率99%)として得られ、これをコーティング実験に直接用いた。
【0214】
例2:化合物14、5,5’-ビス[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,3’-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]-1,1’-ビフェニルの合成
【0215】
例2a:化合物8、3-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル. EtOH(9ml)中の7(1.00g、4.38mmol)の溶液へ、SOCl(1.08g、0.80ml、8.76mmol、2.0当量)を0℃で滴下した。添加完了後、反応混合物を室温まで戻し、一晩撹拌した。次に、溶媒を減圧除去し、黄色残渣を、シリカのショートパッドに通し(ヘプタン:EtOAc=20:1)、所望される生成物8を白色結晶として得た(1.06g、4.32mmol、収率99%)。H及び13C NMRは、文献値と一致していた[Tetrahedron 2016, 72, 3567-3578]。
【0216】
例2b:化合物9、3-ヒドロキシ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)安息香酸エチルエステル. 火炎乾燥したシュレンク管に、8(1.68g、6.88mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.94g、7.57mmol、1.1当量)、PdCl(dppf)・DCM(281.1mg、0.34mmol、0.05当量)、及びKOAc(2.05g、20.65mmol、3.0当量)を、窒素雰囲気下で投入し、続いて、乾燥脱気済みジオキサン(35ml)を投入した。得られた混合物を、80℃まで20時間加熱した。RTまで冷却後、EtOAcで補助しながらセライトのパッドを通してろ過し、得られた残渣を、ショートフラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc=4:1)によって精製して、所望される生成物9を黄色がかった固体として定量的収率で得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.04(s,2H),7.63(s,2H),7.46(s,1H),4.38(q,J=7.07Hz,2H),1.40(t,J=7.07Hz,3H),1.36(s,12H)。
【0217】
例2c:化合物10、3,3’-ジエトキシカルボニル-5,5’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル. 火炎乾燥したシュレンク管中、9(2.01g、6.88mmol)を、無水THF(30ml)に溶解し、8(1.83g、7.48mmol、1.1当量)をこの溶液に添加した。そこへ、Pd(PPh(0.803g、0.69mmol、0.1当量)及び脱気した2M KCO水溶液(13.8ml、27.5mmol)を順に添加し、この混合物を、48時間還流した。DCM(15ml)を添加し、水層をDCMで2回抽出した。MgSOで乾燥後、生成物を、フラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc=3:2)によって精製して、白色固体として10を得た(1.92g、5.81mmol、収率84%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ=10.05(s,2H),7.58(s,2H),7.38(s,2H),7.25(s,2H),4.33(q,J=7.25Hz,4H),1.33(t,J=7.07Hz,6H)。
【0218】
例2d:化合物11、3,3’-ジアリルオキシ-5,5’-ジエトキシカルボニル-1,1’-ビフェニル. 乾燥MeCN(7ml)中のジオール10(630.0mg、1.91mmol)及びKCO(1.33g、9.54mmol、5.0当量)の懸濁液に、臭化アリル(0.67ml、7.63mmol、4.0当量)を添加し、得られた溶液を、20時間還流し、次にセライトを通してろ過し、EtOAcで洗浄した。溶媒を蒸発後、残渣をショートシリカパッドに通し(ヘプタン:EtOAc=3:2)、無色オイルとして12を得た(767.0mg、1.87mmol、収率98%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.89(s,2H),7.60(s,2H),7.36(s,2H),6.15-6.05(m,2H),5.48(d,J=17.15Hz,2H),5.35(d,J=10.61Hz,2H),4.66(d,J=5.30Hz,4H),4.42(q,J=7.07Hz,4H),1.43(t,J=7.25Hz,6H)。
【0219】
例2e:化合物12、3,3’-ジアリルオキシ-5,5’-ジヒドロキシメチル-1,1’-ビフェニル. トルエン(15ml)中の11(500.0mg、1.22mmol)の溶液へ、Red-Al(1.59ml、4.87mmol、4.0当量)を、窒素雰囲気下、0℃で添加した。1時間撹拌後、Fieserのワークアップ(J. Org. Chem. 1953, 18, 1190)に従って反応を停止した。回収したろ液を、ショートシリカパッド(ヘプタン:EtOAc=1:1→1:4)に通して、白色固体として12を得た(332.0mg、1.02mmol、収率83%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.18(s,2H),7.07(s,2H),6.95(s,2H),6.14-6.05(m,2H),5.45(d,J=17.2Hz,2H),5.32(d,J=10.6Hz,2H)(q,J=7.07Hz,2H),4.74(s,4H),4.61(d,J=4.5Hz,4H)。
【0220】
例2f:化合物13、5,5’-ビス[ω-メチル(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,3’-[(プロパ-2-エン-1-イル)オキシ]-1,1’-ビフェニル. THF(1.0ml)中の12(70.0mg、0.214mmol)の溶液へ、NaH(21.4mg、0.536mmol、2.5当量)を0℃で添加し、得られた懸濁液を、30分間撹拌し、その後、THF(1.0ml)中の例16の56(340.8mg、0.407mmol、1.9当量)を同じ温度で添加した。次に、この反応混合物を、室温まで戻し、一晩撹拌した。次に、この懸濁液を、HO(0.1ml)で反応停止し、溶媒を蒸発させた。得られたオイルを、フラッシュクロマトグラフィ(DCM→DCM:MeOH=95:5)によって精製して、橙色オイルとして13を得た(222.3mg、収率58%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.13(s,2H),7.05(s,2H),6.93(s,2H),6.09(m,2H),5.45(d,J=18.81Hz,2H),5.30(d,J=10.45Hz,2H),4.59(m,8H),3.78-3.59(m,65H),3.55(m,2H),3.39(s,3H)。
【0221】
例2g:化合物14、5,5’-ビス[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,3’-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]-1,1’-ビフェニル. トルエン(1.5ml)中の13(222.3mg、0.124mmol)及びトリエトキシシラン(84.8mg、95.3μL、0.497mmol、4.0当量)の溶液へ、Karstedt触媒(16.6μl、キシレン中2.1-2.3mol%)を添加し、得られた溶液を、40℃まで一晩加熱した。反応をH NMRによってモニタリングし、オレフィンプロトンの消滅、及び分子中におけるトリエトキシシリル基の出現を追跡した。得られた橙色溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留した微量の未反応トリエトキシシランを除去するために、トルエン(3.0ml×3)を添加し、再度減圧下で蒸発させて、橙色オイル(収率99%)として14(262.6mg)が得られ、これをコーティング実験に直接用いた。
【0222】
例3:化合物20、1,3-ビス[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-4,6-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼンの合成
【0223】
例3a:化合物16、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸ジメチルエステル. MeOH(18ml)中の15(700.0mg、3.36mmol)の溶液へ、SOCl(1.63g、1.22ml、13.43mmol、4.0当量)を0℃で滴下した。添加完了後、反応混合物を一晩還流した。得られた懸濁液を、0℃まで冷却し、次にろ過し、冷メタノールで洗浄して、白色結晶として16を得た(506.2mg、2.24mmol、収率67%)。H及び13C NMRは、文献値と一致していた[Eur.J.Org.Chem.2013,36,8135-8144]。
【0224】
例3b:化合物17、4,6-ジアリルオキシイソフタル酸ジメチルエステル. 11の合成の場合と同じ手順を、化合物17の合成に適用した。収率=79%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.49(s,1H),6.49(s,1H),6.12-6.02(m,2H),5.56(d,J=17.33Hz,2H),5.36(d,J=10.61Hz,2H),4.68(d,J=4.77Hz,4H),3.88(s,6H)。
【0225】
例3c:化合物18、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,6-ジアリルオキシベンゼン. 12の合成の場合と同じ手順を、化合物18の合成に適用した。収率=99%。H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.20(s,1H),6.47(s,1H),6.11-6.01(m,2H),5.42(d,J=17.15Hz,2H),5.31(d,J=10.61Hz,2H),4.64(s,4H),4.58(d,J=5.13Hz,4H)。
【0226】
例3d:化合物19、1,3-ビス[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-4,6-[(プロパ-2-エン-1-イル)オキシ]ベンゼン. DCM(3.0ml)中のジオール18(50.0mg、0.20mmol)の溶液へ、PBr(0.499ml、1M DCM中、0.50mmol、2.5当量)を0℃で添加した。20分後、飽和NaHCO溶液を添加し、有機層を分離した。水相をDCM(3×3ml)で抽出し、1つにまとめた有機相を、MgSO上で乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、黄色固体として二臭素化中間体を得た。別のシュレンク管に、ジオキサン(0.5ml)中のm-PEG12-20-OH(327.1mg、0.43mmol)の溶液を投入し、NaH(21.6mg、0.54mmol、鉱油中の60%分散体)を12℃で添加し、得られた懸濁液を30分間撹拌し、その後、ジオキサン(0.5ml)中の上記で調製した臭素化中間体の溶液を同じ温度で添加した。次に、反応混合物を室温まで戻し、40時間撹拌した。次に、この懸濁液を、HO(0.1ml)で反応停止し、溶媒を蒸発させた。得られたオイルを、フラッシュクロマトグラフィ(DCM→DCM:MeOH=96:4)によって精製して、黄色がかったオイルとして19を得た(301.1mg、0.176mmol、収率89%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.32(s,1H),6.42(s,1H),6.04(m,2H),5.41(d,J=16.71Hz,2H),5.27(d,J=10.59Hz,2H),4.54(m,6H),3.75-3.58(m,60H),3.55(m,2H),3.38(s,3H)。
【0227】
例3e:化合物20、1,3-ビス[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-4,6-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼン. 14の合成の場合と同じ手順を、化合物20の合成に適用し(収率=99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0228】
例4:化合物26、1-(ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル)-3,5-ビス[(ブタ-4-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼンの合成
【0229】
例4a:化合物22、3,5-ビス[(ブタ-3-エン-1-イル)オキシ]安息香酸メチルエステル.11の合成の場合と同じ手順を、化合物21の合成に適用した。収率=78%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.18(d,J=2.48Hz,2H)6.66(t,J=2.30Hz,1H),5.96-5.85(m,2H),5.18(dq,J=17.15,1.59Hz,2H),5.12(dq,J=10.26,1.24Hz,2H),4.04(t,J=6.72Hz,4H),3.91(s,3H),2.55(tq,J=6.72,1.41Hz,4H)。
【0230】
例4b:化合物23、3,5-ビス[(ブタ-3-エン-1-イル)オキシ]ベンジルアルコール.THF(4ml)中の22(250.0mg、0.91mmol)の溶液へ、LAH(72.3mg、1.81mmol、2.0当量)を、窒素雰囲気下、0℃で添加した。反応を、22から23への変換が完了するまでTLCによってモニタリングし、次に、それをさらに1時間撹拌し、Fieserのワークアップ(J. Org. Chem. 1953, 18, 1190)に従って反応を停止した。回収したろ液を、ショートシリカパッド(ヘプタン:EtOAc=2:1、R=0.35)に通して、無色オイルとして23が得られ(208.0mg、0.84mmol、収率93%)、これを次の工程で用いた。
【0231】
例4c:化合物24、3,5-ビス[(ブタ-3-エン-1-イル)オキシ]ベンジルブロミド.DCM(3.0ml)中の23(208.0mg、0.20mmol)の溶液へ、PBr(0.499ml、1M DCM中、0.50mmol、2.5当量)を0℃で添加した。20分後、飽和NaHCO溶液を添加し、有機層を分離した。水相をDCM(3×3ml)で抽出し、回収した有機相を、MgSO上で乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた橙色オイルをショートシリカパッドに通し(ヘプタン:EtOAc=2:1)、無色オイルとして24を得た(120.7mg、0.39mmol、収率46%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.54(d,J=2.12Hz,2H),6.40(t,J=2.30Hz,1H),5.96-5.84(m,2H),5.18(dd,J=17.15,1.41Hz,2H),5.12(dd,J=10.26,1.24Hz,2H),4.41(s,2H),4.00(t,J=6.72Hz,4H),2.54(q,J=6.54Hz,4H)。
【0232】
例4c:化合物25、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス[(ブタ-3-エン-1-イル)オキシ]ベンゼン.シュレンク管中、ジオキサン(0.5ml)中のm-PEG12-20-OH(364.0mg、0.43mmol)の溶液へ、NaH(21.6mg、0.54mmol)を0℃で添加し、得られた懸濁液を30分間撹拌し、その後、ジオキサン(0.5ml)中の上記で調製した臭素化中間体24の溶液を同じ温度で添加した。次に、この反応混合物を室温まで戻し、40時間撹拌した。次に、この懸濁液を、HO(0.1ml)で反応停止し、溶媒を蒸発させた。得られたオイルを、フラッシュクロマトグラフィ(DCM→DCM:MeOH=96:4)によって精製して、黄色がかったオイルとして25を得た(301.1mg、0.176mmol、収率89%)。H NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.50(s,2H),6.38(s,1H),5.90(m,2H),5.17(d,J=17.15Hz,2H),5.10(d,J=10.33Hz,2H),4.49(s,2H),3.99(t,J=5.94Hz,4H),3.72-3.59(m,53H),3.55(m,2H),3.38(s,3H),2.53(q,J=7.03Hz,4H)。
【0233】
例4d:化合物26、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス[(ブタ-4-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物26の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0234】
例5:化合物33、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス(エタ-2-トリエトキシシリル-1-イル)ベンゼンの合成
【0235】
例5a:化合物28、3,5-ジブロモ安息香酸エチルエステル.8の合成の場合と同じ手順を、化合物28の合成に適用した。収率=90%。H及び13C NMRは、文献値と一致していた[Eur.J.Org.Chem.2009,78,2953-2955]。
【0236】
例5b:化合物29、3,5-ジビニル安息香酸エチルエステル.火炎乾燥したシュレンク管中、トルエン(15ml)中の28(1.50g、4.87mmol)及び(PhP)Pd(142.1mg、0.12mmol、0.03当量)の溶液へ、トリブチル-ビニルスズ(3.90g、3.60ml、11.69mmol、2.4当量)を、窒素雰囲気下、室温で添加した。得られた反応混合物を、80℃まで一晩加熱した。次に、反応混合物を、鹹水で洗浄し、続いて、10%のNaF溶液と共に2時間撹拌した。相を分離し、水相をEtO(3×25ml)で抽出した。得られた黄色オイルを、フラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc=50:1)によって精製して、無色オイルとして29を得た(985.1g、3.79mmol、収率78%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.98(d,J=1.77Hz,2H),7.61(t,J=1.77Hz,1H),6.76(dd,J=17.50,10.96Hz,2H),5.85(dd,J=17.68,0.53Hz,2H),5.35(d,J=10.96Hz,2H),4.41(q,J=7.25Hz,2H),1.42(t,J=7.25Hz,3H)。
【0237】
例5c:化合物30、3,5-ジビニルベンジルアルコール.23の合成の場合と同じ手順を、化合物30の合成に適用した。収率=93%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.37(s,1H),7.33(s,2H),6.73(dd,J=17.51,10.79Hz,2H),5.80(d,J=17.50Hz,2H),6.29(d,J=10.96Hz,2H),4.71(s,2H)。
【0238】
例5d:化合物31、3,5-ジビニルベンジルブロミド.24の合成の場合と同じ手順を、化合物31の合成に適用した。収率=42%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.37(s,1H),7.34(s,2H),6.71(dd,J=17.68,10.96Hz,2H),5.80(d,J=17.50Hz,2H),6.32(d,J=10.79Hz,2H),4.50(s,2H)。
【0239】
例5e:化合物32、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ジビニルベンゼン.25の合成の場合と同じ手順を、化合物32の合成に適用した。収率=68%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.35(s,1H),7.30(s,2H),6.72(dd,J=18.48,11.55Hz,2H),5.78(d,J=17.51Hz,2H),5.27(d,J=10.91Hz,2H),4.57(s,2H),3.72-3.61(m,59H),3.56(m,2H),3.39(s,3H)。
【0240】
例5f:化合物33、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス(エタ-2-トリエトキシシリル-1-イル)ベンゼン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物33の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0241】
例6:化合物38、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)ベンゼンの合成
【0242】
例6a:化合物34、3,5-ジアリル安息香酸エチルエステル.29の合成の場合と同じ手順を、化合物34の合成に適用したが、トリブチル-ビニルスズの代わりにアリルトリブチルスズを用いた。収率=73%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.73(s,2H),7.21(s,1H),6.02-5.92(m,2H),5.10(d,J=13.44Hz,4H),4.38(q,J=7.07Hz,2H),3.42(d,J=6.72Hz,4H),1.40(t,J=7.07Hz,3H)。
【0243】
例6b:化合物35、3,5-ジアリルベンジルアルコール.23の合成の場合と同じ手順を、化合物35の合成に適用し(収率98%)、これを次の工程で直接用いた。
【0244】
例6c:化合物36、3,5-ジアリルベンジルブロミド.24の合成の場合と同じ手順を、化合物36の合成に適用した。収率=58%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.08(s,2H),6.97(s,1H),6.02-5.92(m,2H),5.11(m,4H),4.47(s,2H),3.38(d,J=6.72Hz,4H)。
【0245】
例6d:化合物37、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ジアリルベンゼン.25の合成の場合と同じ手順を、化合物37の合成に適用した。収率=68%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.00(s,2H),6.92(s,2H),5.94(m,2H),5.06(m,4H),4.50(s,2H),3.75-3.57(m,50H),3.54(m,2H),3.36(m,5H)。
【0246】
例6e:化合物38、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)ベンゼン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物38の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0247】
例7:化合物41、1,7-ビス(トリエトキシシリル)-4-(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)-4-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]ヘプタンの合成
【0248】
例7a:化合物40、4-アリル-4-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]ヘプタ-1,6-ジエン.13の合成の場合と同じ手順を、化合物40の合成に適用し、1.9当量の代わりに0.6当量の56、及び溶媒としてDMFを用いた。収率=30%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=5.81(m,3H),5.06(m,6H),3.72-3.52(m,66H),3.38(s,3H),2.25(d,J=7.24Hz,6H)。
【0249】
例7b:化合物41、1,7-ビス(トリエトキシシリル)-4-(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)-4-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]ヘプタン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物41の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0250】
例8:化合物44、1,7-ビス(トリエトキシシリル)-4-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]ヘプタンの合成
【0251】
例8a:化合物43、4-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]ヘプタ-1,6-ジエン.40の合成の場合と同じ手順を、化合物43の合成に適用した。収率=45%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=5.82(m,2H),5.05(m,4H),3.75-3.57(m,64H),3.55(m,2H),3.38(s,3H),2.26(t,J=5.53Hz,4H)。
【0252】
例8b:化合物44、1,7-ビス(トリエトキシシリル)-4-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]ヘプタン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物44の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0253】
例9、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-2,4-ビス(エタ-2-トリエトキシシリル-1-イル)シクロペンタンの合成
【0254】
例9a:化合物46、2,4-ジビニルシクロペンタンカルボン酸メチルエステル.火炎乾燥したシュレンク管中、脱気したDCM(150ml)中のメチル5-ノルボルネン-2-カルボキシレート(45)(1.06g、1.00ml、6.69mmol)の溶液へ、脱気したDCM(3ml)中のベンジリデン-ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(170.0mg、0.20mmol、0.03当量)の溶液を添加した。次に、管を脱気し、エチレンを充填し(3回)、得られた溶液を、室温で一晩撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させ、粗暗色オイルを、フラッシュクロマトグラフィ(ヘプタン:EtOAc=9:1)によって精製して、ジアステレオ異性体の混合物として、暗色オイルとして46を得た(840.2mg、4.66mmol、70%)。H NMR(ジアステレオ異性体の混合物)(400MHz,CDCl):δ=5.79(m,3.5H),5.12-4.88(m,6.5H),3.69(s,3H),3.63(s,2H),3.07-2.46(m,5H),2.18-1.91(m,4H),1.91-1.70(m,2H),1.52(m,1H),1.32(m,1H)。
【0255】
例9b:化合物47、1-ヒドロキシメチル-2,4-ジビニルシクロペンタン.23の合成の場合と同じ手順を、化合物47の合成に適用した。反応を、46(R=0.88、ヘプタン:EtOAc=2:1)から47(R=0.49、ヘプタン:EtOAc=2:1)への変換が完了するまでTLCによってモニタリングした。収率=89%。
【0256】
例9c:化合物48、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-2,4-ジビニルシクロペンタン.40の合成の場合と同じ手順を、化合物48の合成に適用した。反応を、47から48(R=0.29~0.59、DCM:MeOH=96:4)への変換が完了するまでTLCによってモニタリングした。収率=88%。
【0257】
例9d:化合物49、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-2,4-ビス(エタ-2-トリエトキシシリル-1-イル)シクロペンタン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物49の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0258】
例10:化合物51、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)9-12メチル]-3,5-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼンの合成
【0259】
例10a:化合物50、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)9-12メチル]-3,5-ビス[(プロパ-2-エン-1-イル)オキシ]ベンゼン.29の合成の場合と同じ手順を、化合物50の合成に適用した。収率=88%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.52(s,2H),6.42(s,1H),6.05(m,2H),5.41(d,J=17.17Hz,2H),5.28(d,J=10.81Hz,2H),4.51(m,6H),3.75-3.59(m,40H),3.55(m,2H),3.39(s,3H)。
【0260】
例10b:化合物51、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)9-12メチル]-3,5-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼン.14の合成の場合と同じ手順を、化合物51の合成に適用し(収率99%)、これをコーティング実験に直接用いた。
【0261】
例11:化合物54、N,N-ビス(プロパ-3-トリメトキシシリル-1-イル)-2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]アセタミドの合成
【0262】
例11a:化合物53、2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]酢酸. 化合物52(5g、10mmol)を、1M NaOH水溶液に溶解した。過マンガン酸カリウムの溶液(110mlのHO中に3.48g)を滴下した。添加完了後、反応混合物を、一晩撹拌した。酸化マンガンをろ取し、透明溶液のpHを、1M HCl水溶液を添加することによって4に調節した。水を蒸発させ、少量のトルエンを2回添加し、蒸発させて水分を排出した。生成物を、DCM(100ml)に溶解/懸濁し、ろ過し、蒸発乾固した。収率3.8g、75%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=4.19(s,2H),3.67(m,33H),3.39(s,3H)。
【0263】
例11b:化合物54、N,N-ビス(プロパ-3-トリメトキシシリル-1-イル)-2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]アセタミド.THF(50ml)中の化合物53(3.8g、7.5mmol)及びカルボニルジイミダゾール(1.22g、7.5mmol)の溶液を、2時間還流した。この反応混合物を冷却し、次に、ビス(3-トリメトキシシリルプロパ-1-イル)アミン(2.27ml、2.36g、7mmol)を添加し、次にそれを一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、NMRは、所望される生成物54及び予測された遊離イミダゾールを示した。この混合物を、例12bと同様に、ナノ構造体のコーティングに直接用いた。
【0264】
例12:a)1,1-ビス(プロパ-3-トリメトキシシリル-1-イル)-1,1-ビス(ジメチルホスホナート)メタンの重合による未コーティングのナノ構造体の合成. PTFEコーティングした撹拌器を備えた5lの反応器に、真空/窒素の3サイクルによって窒素を充填し、ジャケット温度を130℃に設定することによって2時間滅菌した。ジャケット温度を25度に設定し、エチレングリコール(4l)及び1,1-ビス(3-トリエトキシシリルプロパ-1-イル)-1,1-ビス(ジメチルホスホナート)メタン(165g、257mmol、Mw=640.8g/mol)を添加した。次に、撹拌しながら水(1.0l)を添加した。この反応混合物を、真空/窒素の3サイクルによって脱気した。温度を2時間かけて137℃まで昇温し、137℃で6時間維持し、次に、再度2時間かけて25℃まで降温した。この反応混合物を、123℃の内部温度で還流した。ペリスタルティックポンプを用いて、反応溶液をインラインフィルター(0.2μm分画)を通して3時間循環させ、反応混合物を透明とした。未コーティングのナノ構造体を同定するために、サンプルを取り出し、10kDaのスピンフィルター上での希釈-ろ過サイクルを繰り返すことによって洗浄し、残留溶媒を除去した。
【0265】
b)1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20メチル]-3,5-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼンを用いたコーティング.例12aの反応混合物へ、尿素(155g)を添加し、ジャケット温度を92℃に設定した。例1の化合物6(98g、76mmol、Mw=1283g/mol)を、シリンジポンプによって10時間にわたって滴下した。50mlのフラスコ中、MnCl・4HO(7.84g、39.6mmol、Fw=197.84)を水(25ml)に溶解した。この溶液を、反応器へ一度に添加した。ジャケット温度を105℃に上昇させ、その温度で96時間維持した。
【0266】
c)ろ過. 例12bのコーティングされたナノ構造体を、まず、インラインフィルター(0.2μm分画)に通して、透明な溶液を調製した。次に、この予備ろ過溶液を、0.9% NaCl(水溶液)又はMilli-Q水のいずれかを用いて20×に希釈した。続いて、50kDa又は100kDaの分画のタンジェンシャルフローフィルター(Pall Centramate T-Seriesカセット又はSartorius Vivaflow 200)を用いた限外ろ過を行い、10kDaカセット(Pall Centramate T-seriesカセット又はSartorius Vivaflow 200)に回収した。10kDaフィルターを用いたダイアフィルトレーションは、Milli-Q水(コーティングされたナノ構造体の溶液の体積の10×)を添加してナノ構造体溶液の溶媒を水と交換することを含んでいた。
【0267】
d)特性決定.精製したナノ構造体溶液の以下の物理的及び化学的特性を分析した:(i)ICP-OESを用いた化学組成;典型的な組成は、P/Mn=7.6及びSi/P=1.4である。(ii)GPC及びDLSを用いたサイズ分布;典型的な値は、5nmである。(iii)EDTAに対する安定性-ナノ構造体中に存在するMnの量に対して当量のEDTAを添加し、続いて10kDaろ過に掛け、回収し、ろ液の組成をICP-OESによって分析することによる。典型的な安定性値は、EDTAの20%である。(iv)1.5T及び37℃でのBruker minispecを用いた水中のナノ構造体の緩和度(r)。典型的な値は、13.5/秒/mM Mnである。
【0268】
coatがナノ構造体に結合されたコーティング分子のモル数であり、Acoreが未コーティングナノ構造体の面積であるコーティング密度Ncoat/Acoreは、以下の式に従って算出され:

式中、dcoreは、DLSによって測定した場合の例12aの未コーティングナノ構造体の流体力学径であり、ρcoreは、コアの測定された密度(1.7g/ml=1.7×10g/m)であり、Aは、コアナノ構造体の測定された(ICP-OESによる)Si/P比であり、Bは、コーティングされたナノ構造体の測定された(ICP-OESによる)Si/P比であり、Mmonomerは、重合及び部分加水分解後のモノマーの分子量である。コアの乾燥サンプルの元素分析から、モノマー残基の分子量が378g/molであるC20Siの組成が示唆される。本発明の例において、Aは1.0として、Bは1.67として測定されたため、コーティング密度は、(1.67-1.0)×5×10-9m×1.7×10g/m/(6×378g/mol)=2.5×10-6mol/m又は1.6コーティング分子/nmとして算出される。
【0269】
例13:a)1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)9-12メチル]-3,5-ビス(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼン、b)N,N-ビス(プロパ-3-トリメトキシシリル-1-イル)-2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]アセタミドでコーティングされたナノ構造体の合成
a)例11と同様の方法であるが、化合物6を化合物51に変更して、1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)9-12メチル]-3,5-ビス[(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)オキシ]ベンゼンでコーティングされたナノ構造体を合成した。
b)例11と同様の方法であるが、化合物6を化合物54に変更して、N,N-ビス(プロパ-3-トリメトキシシリル-1-イル)-2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]アセタミドでコーティングされたナノ構造体を合成した。
【0270】
例14:一連のシランでコーティングされたナノ構造体の合成及び特性決定.例12aに類似する少量の未コーティングナノ構造体を、1.15gの1,1-ビス(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)-1,1-ビス(ジメチルホスホナート)メタン、エチレングリコール(25.5ml)、水(8ml)、及びMnCl・4HOの溶液(2.9mlのエチレングリコール中の890mgのMnCl・4HOの溶液2.77ml)をバイアル中で混合することによって調製した。バイアルをシールし、92℃に24時間加熱した。
【0271】
一連の4mlバイアルに、表1のコーティング前駆体を0.1mmolずつ添加し、エチレングリコールの0.8ml及び未コーティングナノ構造体の上記溶液の2mlに溶解した。バイアルを窒素でフラッシングし、シールし、ヒーター/シェイカーで20時間加熱した。
【0272】
表1.一連のコーティングされたナノ材料の結果のまとめ。A=1-[ω-メチル-(エチレンオキシ)12-20]-3-(プロパ-3-トリエトキシシリル-1-イル)-。「コーティング喪失」は例17の方法による。「Ca耐性」は例15の方法による。nt=試験せず。
【0273】
例15:コーティングされたナノ構造体のカルシウム誘導凝集.マイクロ遠心チューブ中の0、0.5、1、2、4、及び8mMのCaClを含有する10mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.4のアリコート1mlに、リンの最終濃度が0.5mMとなるような量のナノ構造体を添加した。サンプルをボルテックス撹拌し、室温で1時間インキュベートし、12000×gで10分間遠心分離した。上澄(700μl)を取り出し、リン濃度についてICPによって分析した。リン濃度を、CaClを含まない対応するサンプルの濃度に対して標準化し、反応混合物中のCaClの濃度に対して「溶液中残留%」としてプロットした。90%以上が溶液中に残留する場合、その材料は、カルシウム誘導凝集に対して強固であると見なされる。
【0274】
例16:化合物56、m-PEG12-20-OMsの合成
【0275】
三口フラスコ中、DCM(65mL)中のm-PEG12-20-OH(55)(5.0g、6.47mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.71mL、1.27g、9.70mmol、1.5当量)の溶液へ、塩化メシル(0.61mL、0.91g、7.76mmol、1.2当量)を0℃で滴下した。この混合物を、室温まで戻し、一晩撹拌した。次に、ジエチルエーテル(50mL)を添加し、沈澱をろ取した。ろ液を蒸発させて、黄色オイルが得られ、これを、フラッシュクロマトグラフィ(DCM:MeOH=15:1)によって精製して、無色オイルとして56を得た(4.51g、5.45mmol、収率84%)。
【0276】
例17:熱処理.サンプルを20mLのフラスコに移し、3回のN-真空サイクルによって脱気し、次にN下に維持した。サンプルを、シリコンオイル浴中、80℃で30分間加熱し、次に周囲室温まで冷却した。参照アリコートを取り出した(A)。残りのサンプルを、10kDa Vivaspin6遠心フィルター(Sartorious)上で、milliQ水を用いて4回洗浄した。参照アリコート(B)を、濃縮液から取り出した。参照アリコートA及びBを、ICP-OESを用いて分析した。安定なサンプルは、アリコートBにおいて、アリコートAと比較して変化しないSi/P比を示し、コーティングを喪失したサンプルは、より低いSi/P比を示すことになる。
【0277】
例18:N,N-ビス(3-トリメトキシシリルプロパ-1-イル)-2-[ω-メチル-(エチレンオキシ)8-11]アセタミドでコーティングされたナノ構造体のマンガン充填.例13bのコーティングされたナノ構造体の粗溶液の200mlを、2.56mlのエチレングリコールに溶解した0.256gのMnCl.4HOの溶液に添加した。pHを、1M NaOHを用いて4.07に調節した。マンガン溶液を、反応に添加した。アリコートAを取り出した。反応を、25時間30分にわたって100℃で加熱し、その後、温度を周囲室温まで低下させた。アリコートBを取り出した。アリコートA及びBをGFCを用いて分析したところ(図3参照)、コーティングされたナノ構造体をマンガンで充填した結果(アリコートB)、凝集に起因するナノ材料のサイズ増加に対応して保持時間が劇的に減少する結果となったことが示された。
【0278】
例19 コーティングプロセスにおける一連の添加剤の試験.ナノ構造体コアを、例14の最初の部分に記載の通りに合成した。この溶液の4mlのアリコートを、一連の6つのバイアルに添加した。これらを窒素でフラッシングし、90℃のヒーターシェイカーに置いた。各バイアルに、表2に記載の添加剤を添加し、次に26mgの化合物6を、2時間ごとに3回、合計78mgずつ添加した。12時間後、エチレングリコール:水 80:20中のMnClの26.7mM溶液の1mL。バイアルを、100℃に5日間加熱した。サンプルを、50kDaのスピンフィルターを通してろ過し、次に10kDaのスピンフィルターに回収し、5回分の水で洗浄し、収率を、ICP分析によって、及びMn安定性を、増加する量のEDTAの存在下で緩和度を測定することによって特定した。
【0279】
表2.ナノ構造体のコーティングに対する異なる添加剤の影響のまとめ
図1
図2
図3