(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】連続焼付装置
(51)【国際特許分類】
B05C 9/14 20060101AFI20220524BHJP
F27B 9/04 20060101ALI20220524BHJP
F27B 9/36 20060101ALI20220524BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20220524BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20220524BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20220524BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20220524BHJP
B05C 13/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B05C9/14
F27B9/04
F27B9/36
F27D7/02 A
F27D7/06 B
F27D17/00 101A
F24F9/00 A
F24F9/00 E
B05C13/00
(21)【出願番号】P 2021150974
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2020209157
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520498413
【氏名又は名称】株式会社エス.ケーガス
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 享司
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3231650(JP,U)
【文献】特公昭46-015989(JP,B1)
【文献】実用新案登録第2590966(JP,Y2)
【文献】特開2020-017203(JP,A)
【文献】特開平10-318582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 9/00 - 9/14
B05C 13/00 - 13/02
F27B 9/00 - 9/40
F27D 7/00 - 7/06
F27D 17/00
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、
前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、
前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から前方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを前方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、
前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする連続焼付装置。
【請求項2】
搬入口側の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる天井側に、該吸引器から吐き出されるガスを上方で吸い込み、その吸い込んだガスを前方斜め下方へ再び膜状に吐き出す第2の吸引器を配し、該第2の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる床側に、該第2の吸引器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを上方へ再び吐き出す第3の吸引器を配したことを特徴とする請求項1に記載の連続焼付装置。
【請求項3】
搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、
前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、
前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器より前方箇所にて略鉛直上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、
前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする連続焼付装置。
【請求項4】
搬入口側の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる天井側に、該吸引器から吐き出されるガスを上方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吸引器より前方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐き出す第2の吸引器を配し、該第2の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる床側に、該第2の吸引器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該第2の吸引器より前方箇所にて上方へ再び吐き出す第3の吸引器を配したことを特徴とする請求項3に記載の連続焼付装置。
【請求項5】
搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、
前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、
前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器より前方箇所にて上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、
前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする連続焼付装置。
【請求項6】
搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、
前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、
前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、該吸引器から吐き出されるガスが突き当たる天井側に、該吸引器から吐き出されるガスを上方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め下方へ再び膜状に吐き出す第2の吸引器を配し、該第2の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる床側に、該第2の吸引器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器より前方箇所にて上方へ再び吐き出す第3の吸引器を配し、
前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする連続焼付装置。
【請求項7】
ガス導出部に、排ガス中の溶剤を熱分解可能な温度に加熱する高温電気ヒータを備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の連続焼付装置。
【請求項8】
ガス導出部に、排ガス中の溶剤を濾過又は分解して処理する排ガス処理器を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の連続焼付装置。
【請求項9】
熱交換器と排ガスを大気中に排出する排出口との間に、排ガス中の溶剤を濾過して除去する排ガス濾過器を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の連続焼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装した物品を搬送しつつ連続して焼付する連続焼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の事務機器や自動車の部品等の焼付用塗料を塗った物品(以下ワークと呼ぶ)が、焼付温度に加熱する熱源を備えた焼付装置により焼付加工されている。
その熱源が化石燃料の装置では、バーナー等で燃焼されて煤が発生するので清掃等の維持管理が容易ではなく、これに対して、熱源が電気ヒータの装置では、煤は発生しないのでメンテナンスが容易となり、更に、発熱体の電気ヒータはバーナー等の燃焼機構に比べると簡単な構造なので、対象とするワークの大きさや種類に応じて装置の小型化等の多様化が容易となる。
【0003】
このような電気ヒータを用いた焼付装置については、例えば、下記特許文献1の
図3に示された実用例には、焼付して発生する汚染ガスは外部に排出し、熱交換器によってその汚染ガスの熱で外気を加熱して炉内へ供給し、そのガスを更に加熱室内に設けた電気ヒータで焼付可能な温度に高めてワークの焼付をする加熱装置が示されている。この装置では、加熱室の側壁に設けられた電気ヒータによってワークが直接加熱されるが、そのワークの裏側は直接加熱することはできないので表裏に温度差が生じて均質な焼付ができないという問題がある。
又、例えば、下記特許文献2に示された塗装物の乾燥・焼付炉では、乾燥・焼付部に設けた複数の開閉量調整板の開閉によって空気の流れを均一化することで均等な乾燥・焼付が行えるとしている。しかしこの装置では、開閉量調整板から離れた場所の空気の流れまでは調節できないので乾燥・焼付部内の温度の均一化は難しく、又複数ある開閉量調整板の開閉制御は複雑で面倒である。
なお、上記特許文献1、2の装置では、いずれも扉の開閉によってワークを出し入れするものなので、出し入れ時に焼付作業を停止するため大量高速の連続焼付には適さず、又扉を開閉する毎に高温ガスが扉外に流出して高い熱効率を得るのが困難となる。
【0004】
一方、焼付用の電源は電気ではないが、下記特許文献3には、出入口に炉内の熱の流出を防ぐエアーカーテンを設けた乾燥焼付装置が示されている。この装置では、ワークは気体であるエアーカーテンを連続的に潜り抜けて炉内へ搬送されるが、潜り抜ける際にワークが外気を引き込んでカーテンの気流を乱し、ワークの搬送速度が大きいほどその乱れが大きくなってエアーカーテンの遮蔽機能が損なわれることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平3-6295号公報
【文献】特開2013-79782号公報
【文献】特開昭47-18931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、膜状のガスの流れで確実に遮蔽された出入口を潜って、焼付室内に塗装したワークを連続的に搬送させつつ、不活性ガスが均質に分散された焼付室内で高品質の焼付塗装製品が得られる熱効率の優れた連続焼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、前記搬入口の内側には天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から前方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、前記搬出口の内側には、天井側に前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記搬入口側の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる天井側に、該吸引器から吐き出されるガスを上方で吸い込み、その吸い込んだガスを前方斜め下方へ再び膜状に吐き出す第2の吸引器を配し、該第2の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる床側に、該第2の吸引器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを上方へ再び吐き出す第3の吸引器を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器より前方箇所にて略鉛直上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記発明において、搬入口側の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる天井側に、該吸引器から吐き出されるガスを上方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吸引器より前方箇所にて略鉛直下方へ再び膜状に吐き出す第2の吸引器を配し、該第2の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる床側に、該第2の吸引器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該第2の吸引器より前方箇所にて上方へ再び吐き出す第3の吸引器を配したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器より前方箇所にて上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、搬入口から搬出口へワークを搬送する搬送手段を備えた焼付室と、該焼付室へ不活性ガスを供給するガス供給源と、前記焼付室から排出される排ガスと前記ガス供給源から供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器を経て前記焼付室へ供給されるガスを焼付温度に加熱する電気ヒータを備えたガス導入部と、ワークの焼付に供した排ガスを前記焼付室から排出するガス導出部と、を備えた連続焼付装置であって、前記焼付室には、前記電気ヒータで加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口を備えた送風管を配し、前記搬入口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配し、該吸引器から吐き出されるガスが突き当たる天井側に、該吸引器から吐き出されるガスを上方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め下方へ再び膜状に吐き出す第2の吸引器を配し、該第2の吸引器から吐き出されるガスが突き当たる床側に、該第2の吸引器から吐き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器より前方箇所にて上方へ再び吐き出す第3の吸引器を配し、前記搬出口の内側には、天井側に、前記ガス供給源から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器を配し、床側に、該吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め上方へ再び膜状に吐き出す吸引器を配したことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、上記発明において、前記ガス導出部に、排ガス中の溶剤を熱分解可能な温度に加熱する高温電気ヒータを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、上記発明において、前記ガス導出部に、排ガス中の溶剤を濾過又は分解して処理する排ガス処理室を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、上記発明において、前記熱交換器と排ガスを大気中に排出する排出口との間に、排ガス中の溶剤を濾過して除去する排ガス濾過器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の連続焼付装置は、上記構成としたことで以下の効果を奏する。
焼付に供されて溶剤を含んだ排ガスは焼付室からガス導出部を経て焼付室外へ排出され、ガス供給源から供給される清浄な不活性ガスがガス導入部の電気ヒータで焼付温度に加熱されて焼付室へ導入されるので、焼付室内の高温ガスに含まれる溶剤の濃度を常に低く保つことが可能となる。
これに加えて、熱交換器で排ガスの熱により加熱されてからガス導入部の電気ヒータで焼付温度に加熱された高温の不活性ガスが、焼付室内に敷設され送風管の複数の噴出口から分散されて噴出し、焼付室内に均一な温度で溶剤の濃度が低い均質な高温ガスで満たされた焼付領域が得られ、この焼付領域の中において、ワーク表面を塗装した塗料が均質に焼付されて均一な色艶となった高品質のワークを得ることが可能となる。
【0017】
又、焼付室の搬入口と搬出口の内側では、天井側の吹出器と床側の吸引器とによって、底側で折り返された膜状のガスの上側に厚みのある不活性ガスの遮蔽層が形成され、搬入口と搬出口を搬送手段によって運ばれたワークが連続して通過する際にワークが発生させる乱れたガスの流れを該遮蔽層が抱き込むように制し、焼付室の内部と外部を確実に遮断することが可能となる。
そして、同時に床側から吸引器で外向きに吐き出されたガスが外気を外側へ押し出す方向に働いて外気の室内へ侵入を確実に防止することが可能となる。
この結果、搬入口及び搬出口にワークを連続して高速に通過させても、焼付室内の焼付領域のガスは高い一定の焼付温度に維持可能となる。
【0018】
請求項2,4,6に記載の発明は、床側の吸引器によって上方へ膜状に吐き出しされたガスと、天井側の第2の吸引器によって、下方へ膜状に吐き出しされたガスとの間に、新たに第2の遮蔽層が形成され、更に、床側の第3の吸引器によって、ガスが床側から上方へ吐き出しされて外側にもう一つのガス層が形成され、これらのガス層は容積が極めて大きく且つ搬入口からの奥行きも極めて長いので、ワークが高速で連続して通過しても、そのワークの移動に連動して発生する乱れたガスの流れを制し、焼付室内の焼付領域のガスを高い一定の焼付温度に維持可能となる。
【0019】
更に、第2の遮蔽層の外側の不活性ガスの充満したガス層は、ワークを搬入口から搬入する際に、ワーク全体を不活性ガスの中に晒し、そのワークの内部空間や隙間に入っている塗料の焼付に悪影響のある酸素を含んだ空気を不活性ガスに入れ替えることができる。
このため、ワークに付随して焼付室内に持ち込む酸素の量を減少させて焼付室内をより無酸素状態に近い環境とすることができ、塗料が酸素の影響を受けない高品質の焼付製品を得ることが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記ガス導出部の高温電気ヒータの加熱によって、排ガスが熱交換器に流入する前に、含まれた溶剤を無害な物質に熱分解させて無害化させてから排出させることが可能となる。
その際、排ガス中の溶剤の熱分解を行うだけではなく、その加熱された高温ガスはガス供給源から供給される常温の清浄な不活性ガスを熱交換器で焼付温度以上の温度に高めることが可能となる。
又、排ガスが熱交換器に入る前に排ガス中の溶剤は熱分解されるので、溶剤の熱交換器の内部の流路への付着及びその蓄積が防止され、熱交換器のメンテナンスの手間を減らし、使用寿命を延ばすのに役立つこととなる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記ガス導出部の排ガス処理機によって焼付室から排出された排ガス中の溶剤を濾過又は分解して処理することができる。
又、該排ガス処理器は排ガスが熱交換器に入る前に溶剤を処理するので、上記高温電気ヒータと同様に、熱交換器内部の流路への溶剤の付着及びその蓄積が防止され、熱交換器のメンテナンスの手間を減らし、使用寿命を延ばすのに貢献する。
【0022】
請求項9に記載の発明は、排ガス濾過器によって、ガス導出部からの排気の途中で処理しきれなかった排ガス中の溶剤を大気中に排出する直前で最終的に濾過して除去することができ、無害化した排ガスを安心して大気中へ排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】別の形態を示す搬入口側を省略した模式面である。
【
図3】また別の形態を示す搬出口側を省略した模式面である。
【
図4】さらに別の形態を示す搬出口側を省略した模式面である。
【
図5】さらに別の形態を示す搬出口側を省略した模式面である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明を実施するための形態を、以下図を参考して説明する。
本発明の連続焼付装置は、
図1に示すように、ワークWの焼付を行う焼付室1の前後に開口した搬入口2と搬出口3とを除いて、周囲をステンレス等の耐火材で被膜し、該搬入口2の外側から搬出口3の外側へと焼付室1内を通って対象の物品を運ぶ搬送手段4を設置する。
本発明で焼付対象とするワークWは、例えば、焼付用の塗料が塗られた金属製の事務機器や自動車の部品、飲料缶等である。
焼付室1は、焼付するワークWに適する大きさの焼付領域を備える。そして、該焼付領域内において、焼付対象の種類により焼付温度は異なるが、通常、約250~350℃の高温ガスの中でワークWが焼付される。
前記搬送手段4は、個々の塗装したワークWを並べて連続的に搬送する装置であり、その装置は、ワークWの運搬に適したベルトコンベアや吊下げ式の移動機等が使用可能である。
これらの搬送手段4は周知のものであり、
図1では一点鎖線で模式的に示している。なお、
図2及び
図3では搬送手段4は省略して示した。
【0025】
焼付用塗料で塗装された多数の個々のワークWは、前記搬送手段4によって搬入口2と搬出口3の開口を遮るように流れる膜状のガスを潜って前記焼付室1内に連続して搬送され、その移動中に室内の高温ガスでワークWが焼付される。
以下、ワークWが搬入される搬入口2側を前側とし、搬出される搬出口3側を後側として説明する。
【0026】
本発明では、前記焼付室1内の焼付領域がワークWの材質や塗料の種類に応じた焼付温度となるように温度調節された高温ガスを、焼付室1の外部からその内部へ送り込むものであり、焼付室1の内部に設けた電気ヒータによって直接ワークを加熱するものではない。
焼付する高温ガスは、使用される焼付塗料が酸化による変色等を起すことない不活性ガスを使用する。
例えば、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスが使用可能であるが、窒素ガスを使用する場合には窒素ガス製造機で製造し、これをガス供給源5とすることができる。
そして、その不活性ガスは、
図1で示すように、ガス供給源5からガス導入管11を通って電気ヒータ16を備えたガス導入部7で焼付温度に加熱してから前記焼付室1内へ導入する。
その際、例えば、該ガス導入管11にガス圧調整器14を設けることでガス圧を調整しつつガスを前記焼付室1へ設定圧で導入することができる。つまり、前記焼付室1内のガス圧は、該ガス圧調整器14によって最適な値に決めることができる。
なお、ガス圧を安定させるためガス圧を調節する複数のブロアを該ガス導入管11の適宜位置に設けても良い。
【0027】
不活性ガスは前記ガス供給源5からガス導入管11に導かれて前記焼付室1へ導入されるが、前記焼付室1の手前にガス導入部7が設けられ、そのガスは該ガス導入部7を通って前記焼付室1に導入される。
該ガス導入部7は前記焼付室1外部に隣接させるか焼付室1の近い位置に設けることができる。
そして、前記ガス導入管11中を通過するガスをガス導入部7の電気ヒータ16で焼付温度である約250~350℃に加熱してからその高音ガスを前記焼付室1へ導入する。
該電気ヒータ16にはシーズー線等の電気による発熱体を使用することができる。
そして、前記焼付室1内の焼付領域には温度センサー(図中省略)を設けて、その温度センサーで検知された温度により電気ヒータ16の強弱及びオン・オフを制御し、焼付領域内のガスが一定の焼付温度に維持されるよう最適な温度に制御することができる。
この温度の制御によって、例えば、焼付室1内の温度センサーが感知した温度が低い場合には、電気ヒータ16で加熱する温度を高く調節して、焼付領域を焼付に最適な温度に保つことができるようになる。
【0028】
使用される焼付用塗料には有機溶剤が含まれており、前記焼付室1内でワークWを連続して焼付することでガス中にはワークW表面の塗料から発生した溶剤及び溶剤が高温の焼付高温で変化した溶剤由来物質(以下まとめて溶剤と呼ぶ)の混入量が増加する。
この溶剤の混入量が増加するとワークW塗装面の色艶に悪影響が生じることがある。
このため、例えば、不活性ガス中の溶剤の濃度がワークWの焼付が終了する室内後部でより大きくなる場合にはその高い濃度に汚れたガスを優先的に排出できるように焼付室1の後部側室内にガス導出管12を接続する。
そして、該ガス導出管12内の排ガスは該ガス導出管12に設けた排気ブロア10で強制的に外部に排出する。
なお、ガス圧を安定させるためガス圧を調節する複数の排気ブロアを該ガス導出管12の適宜位置に設けても良い。
【0029】
又、前記ガス導出管12の焼付室1に近い位置か又は隣接させて焼付室1内のガスを焼付室1外へ導出させるガス導出部8を設けることができる。
そして、ガス導出部8には、ガス中の溶剤を無害化するために排ガス処理器17を設けることができる。
前記ガス導出管12は、前記焼付室1から大気中へ排出させる排気口までの前記焼付室1内のガスを外部へ排出する流路となる管体を指し、排気ガスはガス導入管11の中を通って最終的に排気ブロア10で外部の大気中へ排出される。
前記排ガス処理器17は、溶剤をフィルタで濾過して除去するか、又は溶剤を触媒で分解することができる構造を有するガスの処理器である。
前記フィルタ及び触媒は、既存のものが使用でき、焼付室1では250~350℃の高温のままガス導出部8に入るので、例えばフィルタは、その高温に耐える金属焼結フィルタの使用が可能である。又、触媒もその高温に耐えるものを使用することができる。
【0030】
又、前記ガス導出管12の前記排ガス処理器17より下流となる部位と、前記ガス導入管11の電気ヒータ16より上流となる部位とを交差させ、その交差部分に熱交換器6を設ける。
該熱交換器6は、前記焼付室1から排出される溶剤を含む高温の排ガスと前記焼付室1へガス供給源5から送られる清浄で常温のガスとの熱を交換し、焼付室1から導出させる高温の排ガスで焼付室1へ導入させる常温の清浄な不活性ガスの温度を高めるものである。
該熱交換器6では清浄な不活性ガスの温度を上げることができるが、別に加熱する手段を有していない場合には前記熱交換器6だけでは焼付する温度にまでは加熱することができないので、更に前記電気ヒータ16でガスを焼付に必要な温度に、例えば350℃程度にまで高めてからその高温ガスを焼付室1へ送る。
なお、前記排ガス処理器17により排気ガス中の溶剤を除去すれば、熱交換器6内の流路に溶剤由来の汚れ物質がヤニ状に付着蓄積するのが防止され、熱交換器6のメンテナンスの手間を減らし、使用寿命を延ばすことが可能となる。
【0031】
一方、熱交換器6の熱交換で、高温の排ガスは常温で供給される清浄な不活性ガスの温度を高め、常温の不活性ガスは高温の排ガスで温度を低下させるが、その熱交換器6を通過したときには清浄な不活性ガスは温度を50~70℃程度に低下させてから、排気ブロア10で排気口から大気中に排出することができる。
その際、熱交換器6と排気ブロア10との間に、排ガス濾過器19を設けることで、排ガスの移動途中で処理しきれなかった溶剤などを含めて大気中への排出の直前で最終的に溶剤由来の化学物質等の大気汚染の原因物質を吸着・除去してから無害化して排出させることができる。
又、該排ガス濾過器19を通過する排ガスは熱交換器6の性能により温度が50~70℃程度以下にまで低下させることもできるので、該排ガス濾過器19に使用するフィルタ等の濾過部材は、高温仕様ではないものが使用でき、例えば紙製や樹脂製のものでも使用することが可能となり、又吸着力の大きい活性炭を使用することも可能となる。
【0032】
又、大気汚染源となる溶剤は600℃以上の高温では熱分解されて、無臭化及び無害化することができるが、本発明では、
図1に示すように、前記ガス導出部8のガス導出管12の排ガス処理器17と該熱交換器6との間に600℃以上の高温に加熱可能な高温電気ヒータ18を設けることで、排ガスが熱交換器6の流入される前に該高温電気ヒータ18で排ガスを600℃以上の高温に加熱してその中の溶剤を無害な物質に熱分解させることが可能となる。
なお、
図1には高温電気ヒータ18を前記排ガス処理器17の下流側に設けた態様を示しているが、前記ガス導出部8に排ガス処理器17は設けずに、高温電気ヒータ18のみを設けることもできる。
前記熱交換器は、高温電気ヒータ18によりガスは600℃以上の高温のままで熱交換器6へ送り込まれるので、その高温に耐える耐熱性能を有するものが使用可能となる。
そして、該熱交換器と高温電気ヒータ18によって、焼付室1に導入する不活性ガスの加熱も、溶剤の熱分解も一緒に行えるようになる。
この場合、高温電気ヒータ18で高温となった不活性ガスを熱交換器6により350℃程度の温度に低下させる調整をすれば、ガス導入部7の電気ヒータ16による不活性ガスを焼付温度にする加熱は極めて少なくて済むこととなる。
【0033】
又、導入された清浄な不活性ガスは、前記電気ヒータ16で加熱されて焼付に必要な温度に調整されるが、そのまま直接焼付室1内へは入れない。
前記焼付室1内に送風管9を敷設し、該送風管9の基端部を前記ガス導入管11に接続し、前記電気ヒータ16で加熱された高温ガスは前記ガス導入管11から該送風管9内へ圧送される。
該送風管9には高温ガスを室内に分散状態に噴出させる多数の噴出口9aを長い送風管9に分散させて備える。
その噴出口9aから室内に分散状態にガスを噴出させることによって室内の温度を均一化することが可能となる。
これに対して、例えば、噴出口9aが2、3個程度の少ない数で且つ室内に分散されていない場合には、高温ガスを室内に入れたとき、その少ない噴出口9aから離れて温度が低くなってしまう領域が増えて、焼付領域全体を均一な温度にすることが困難となるので好ましくない。
【0034】
前記送風管9は、例えば、
図1に示すように、分岐させた焼付室1の搬入口2寄り部位から搬出口3寄り部位にまで届くような長い送風管9を焼付室1内の天井1aの左右両側と床1b側の左右両側に平行に敷設し、該送風管9に噴出口9aを多数分散させて設けることができる。
この場合、各噴出口9aは室内の形状に応じて大小異なる口径とすることができ、又各噴出口9aの噴出させる方向を、一方では搬入口2側の噴出口9aは搬入口2に向けず、他方では搬出口3側の噴出口9aは搬出口3に向けず、全ての噴出口9aから噴出されたガスの流れが室内に調和して分散できるよう各噴出口9aの向きを決める。
該噴出口9aによって、焼付室1内の空間全域に渡ってほぼ同じ温度のガスが行き渡り、室内の焼付領域を均一な温度とすることができる。
そして、このように送風管9により温度の偏りが解消されて均一な焼付温度となる。
又、溶剤で汚れたガスは排出されると同時にガス供給源5から供給された清浄な不活性ガスが導入されて溶剤の濃度が低く保たれる。
この結果、焼付温度が均一で溶剤の濃度が低い均質なガスで満たされた焼付領域の中で、塗料の色艶が良好で均質な焼付塗装された高品質の製品が得られることとなる。
【0035】
焼付室1での焼付を、ワークを連続的に移動させて行おうとする場合、毎回扉を開閉する方法では対応できないが、膜状のガスはワークを連続して自由に通過させることができる。
このため本発明では、前記焼付室1の前後に開口した搬入口2と搬出口3にはその内側に深い奥行きのある開口領域を設け、該開口領域で前記焼付室1の内側と外側とを仕切るようにガスを膜状に流して、前記焼付室1の内側の高温ガスと外側の常温の空気との流通を遮断する構造を有する。
単に上下に吹き出すガスの膜では、搬送されるワークWの移動に伴ってガスの膜が乱れ易く、焼付室に外気が侵入するのを防ぐことは困難である。
外気の侵入を確実に避けるための、本発明のガスの膜の構造は各種形態が可能であり、その形態について下記説明する。
尚、この膜状に流すガスとして、エアガス(空気)を使用することも可能であるが、焼付室1への空気の流入を遮断するという機能・作用の確実性に鑑みると、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを使用する態様がより好適であり、以下において不活性ガスを採用した場合のみ説明する。
【0036】
その基本となる形態は、
図1に示すように、前記搬入口2と前記搬出口3の内側の両側の開口領域の天井2a、3a側に、前記ガス供給源5から供給されるガスを上方から外側の斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器20、30を配設し、床2b、3b側に、前記吹出器20、30から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを外側の斜め上方へ再び膜状に吐き出して該吹出器20、30から吹き出されたガスとの間にV字状の遮断層A、Bを形成する吸引器21、31を配設するものである。
【0037】
図1に示すように、搬入口2側と搬出口3側とは前後対称の構造とするので、以下搬入口2側の方を詳述し、搬出口3側は簡略に説明する。
該搬入口2側の構造は、吹出器20は、ガスをモータの回転で送風するファン20aと、該ファン20aの稼働でガスを膜状に吹き出す吹出口20bとを備える。
そして、該吹出口20bは、細長い開口部の両側の長さが前記搬入口2の開口領域の天井2aに繋がる左右の側壁間の長さと同等の長さとし、その細長い開口部からガスが一枚の膜状となって流れ出るように形成する。
該吹出口20bからの吹き出し方向は、真下にではなく、前方斜め下向きとなるよう固定する。
この結果、吹出器20は、前記吹出口20bから噴出して膜状となったガスの前傾斜下降流F1を発生させることが可能となる。
【0038】
又、前記吸引器21は、前記吹出器20の吹出口20bから吹き出された前傾斜下降流F1のガスを下方で吸い込める広い間口の吸引口21cと、該吸引口21cから吸引したガスをモータの回転で送風するファン21aと、そのファン21aの稼働でガスを膜状に吐き出す吐出口21bとを備える。
そして、該吹出口21bは、細長い開口部の両側の長さが前記搬入口2の開口領域の天井2aに繋がる左右の側壁間の長さと同等の長さとし、その細長い開口部からガスが一枚の膜状となって流れ出るように形成する。
又、該吐出口21bからのガスの吐出方向は、真上にではなく、前方斜め上向きとなるよう設ける。
この結果、該吐出口21bから吐出して膜状となったガスの前傾斜上昇流F2を発生させることが可能となる。
そして、
図1に示すように、前記前傾斜下降流F1と前記前傾斜上昇流F2の間に床2b側でV字形に折り返されたガス膜の上に天井2a面とで囲われた三角柱状の厚い遮断層Aが形成されることとなる。
【0039】
一方前記搬出口3側の構造も、
図1に示すように、上記の如く搬入口2側と前後対称となる同じ構造とすることができる。
このため、前記天井3a側の吹出器30は、ファン30aと、該ファン30aの稼働でガスを膜状に噴き出す吹出口30bとを備える。
そして、該吹出口30bは、その細長く開口することでガスが一枚の膜状となって後方斜め下向きに吹き出すように固定し、該吹出口30bからガスが吹き出して後傾斜下降流F3を発生させる。
【0040】
又、床3b側の吸引器31は、前記吹出口30からの前傾斜下降流F3のガスを下方で吸い込む吸引口31cと、そのガスを送風するファン31aと、ガスを膜状に吐き出す吐出口31bとを備え、該吹出口31bは、細長い開口部からガスが一枚の膜状となって前方斜め上向きに流れ前傾斜上昇流F4を発生させる。
そして搬出口3側でも、
図1に示すように、搬入口2側と同様に、前記前傾斜下降流F3と前記前傾斜上昇流F4との間に床3b側でV字状に折り返されたガス膜の上に天井3a面とで囲われた三角柱状となる厚い遮断層Bが形成されることとなる。
【0041】
本発明では、
図1に示すように、搬入口2と搬出口3の両方側で、上記の如く、天井2a、3a側の吹出器20、30と床2b、3b側の吸引器21、31とによって、外側へ向かいつつ途中でV字状に折り返されるガスの流れの上に不活性ガスが滞留する遮蔽層A、Bが形成され、搬入口2と搬出口3の開口領域が確実に遮断され、焼付室1内の高温のガスは前後両側から漏出されず、且つ冷たい外気は焼付室1内へ侵入されないようにブロックされる。
又、前記搬入口2と搬出口3の両方で、不活性ガスの一つの流れを折り返すことで、両方に別々に不活性ガスを使用するよりも、約半分のガス使用量で二重の流れが得られるので大幅な不活性ガスの節約となる。
【0042】
なお、焼付室1のガス圧は、焼付室1内のガスをガス導出管12を介してモータの回転で強制的に排出させる排気ブロア10によって減圧されるが、焼付室1内へガスをガス導入管11を介して圧送するガス圧調整器9によって、焼付室1内のガス圧が調整され、搬入口2及び搬出口3から焼付室1内へ温度低下の原因となる外気の流入が起こらないように、焼付室1内のガス圧の値は外気圧よりも若干高い値とすることが好ましい。
これに加えて、前記吹出器20、30の吹出口20b、30bから吹き出されるガスは搬入口2及び搬出口3へ向かって外向きに流れるので、搬入口2及び搬出口3から侵入しようとする外気は搬入口2及び搬出口3の外側へと押し出され、焼付室1への侵入はできなくなる。
【0043】
次に、前記搬入口2にガスを膜状に流して開口領域を遮断する上記形態とは別の形態が可能であり、その2つの態様を
図2及び
図3に基づき説明する。
そのうち一つの態様は、
図2に示すように、前記遮断層Aの外側に、逆V字状の第2の遮断層Dを発生させ、更に該第2の遮断層Dの外側に、V字状の第3の遮蔽層Cを発生させるものである。
以下この態様について説明する。
この態様は、
図2に示すように、前記搬入口2の内側の開口領域に、上記吸引器21のファン21aで吐出口21bから吐き出されたガスが突き当たる天井2a側に、床2b側の前記吸引器21から吹き出されたガスを上方で間口の広い吸引口22cから吸い込み、その吸い込んだガスを前方斜め下方へ再びファン22aの送風で吐出口22bから膜状に吐き出して前傾斜下降流F5を発生させる第2の吸引器22を配設する。
この結果、該前傾斜下降流F5と前記吸引器21からの前記前傾斜上昇流F2との間にV字状の厚みのある第2の遮蔽層Dが形成される。
【0044】
そして、
図2及び3に示すように、前記前傾斜上昇流F2と前記前傾斜下降流F5との間に天井2a側で逆V字形に折り返されるガス膜の下に床2b面とで囲われた三角柱状となる厚い遮断層Dが形成されることとなる。
【0045】
更に、該第2の吸引器22から吐き出されたガスを下方で広い間口の吸引口23cで吸い込み、その吸い込んだガスをファン23aで吐出口23bから前方斜め上方へ再び膜状に吐き出して前傾斜上昇流F6を発生させる第3の吸引器23を配設する。
この結果、該前傾斜上昇流F6と前記吐出口22bを有する第2の吸引器22から吹き出された前記前傾斜下降流F5の間に新たなV字状に厚みのある遮蔽層Cが形成される。
【0046】
この形態では、上記前側の遮蔽層Aと共に、逆V字状の遮蔽層D、V字状の遮蔽層CがW字状に連続して形成される。この3連の遮蔽層A、D、Cの合計容積は極めて大きく、又搬入口2からの奥行きも極めて長い層となるので、多数のワークWが高速で通過するとき連動して起こる乱れたガスの流れを制して室内と室外とを確実に遮蔽することが可能となる。
従って、この形態は多数のワークWを大量に高速焼付するのに適し、焼付作業効率をより高めることが可能となる。
【0047】
又、もう一つの態様は、
図3に示すように、前記遮蔽層Aの外側に、逆V字状の第2の遮蔽層Dを発生させ、更に該第2の遮蔽層Dの外側に、ガスが床から吹き上がるガス上昇層Eを発生させるものである。
以下この態様について説明する。
図2及び
図3に示すように、前記搬入口2の内側の吸引器21は前傾斜下降流F5を発生させる第2の吸引器22を配設し、該前傾斜下降流F5と前記吸引器21からの前記前傾斜上昇流F2との間に逆V字状の厚みのある第2の遮蔽層Dが形成される点は上記態様と同様である。
しかし以下の構造は、
図2に示す上記態様とは異なるものである。
【0048】
その構造は、
図3に示すように、前記第2の吸引器22から吐き出されたガスをその下方の床2b側で広い間口の吸引口24cで吸い込み、その吸い込んだガスをファン24aで吹上口24bへ送風し、該吹上口24bから搬送中のワークWへ向けて幅広く上方へ吹き上げて吹上流F7を発生させる第3の吸引器24を床2bに配設する。
この結果、該吹上流F7と前記第2の吸引器22から吐き出した前傾斜下降流F5との間にガス上昇層Eが形成される。
そして、前記遮蔽層Aと、逆V字状の第2の遮蔽層Dと、ガス上昇層Eとが連続して極めて厚いガスの層A、D、Eとなり、搬入口2をより確実に遮蔽することが可能となる。
【0049】
多くのワークWには空洞部分があり、その空洞に溜まった空気に含まれた酸素が、ワークWの搬入に伴って焼付室1内に入ると、その酸素により塗料の酸化反応が引き起こされ、製品表面の変色の原因となることがある。
これに対して、この態様では、ワークWを焼付室1へ搬入させる際にワークWに向けて床2bから不活性ガスが吹き上げられ、ワークWが内部の空洞や隙間などに抱き込んでいる空気を不活性ガスと入れ替えられる。このため焼付室1への酸素の持ち込みを少なくすることができる。
特に器状のワークWは、そのままでは焼付室1内に大量の空気を持ち込んでしまうので、焼付室1内に入れる前に不活性ガス中で持ち込まれる空気を減少させることによって、ワークWの焼付品質をより向上させることが可能となる。
なお、前記吹上口24bを備えた第3の吸引器24は、ワークWを焼付室1に入れる前に事前に不活性ガスでワークWの空洞や隙間などに溜まった空気を処理するものなので、前記搬出口3側に設ける必要はない。
【0050】
又、吹出器20、30へ送る不活性ガスの供給源5は、窒素ガス等の不活性ガス製造機とすることができるが、このガスは焼付に供されるものではないので、不活性ガス製造機からの清浄なガスではなく、焼付に供されて熱交換器を通過した排ガスとすることができる。
その排ガスとした場合には、例えば、
図3に示すように、前記熱交換器6と前記排気口側の排気ブロア10とを繋ぐガス導出管12の途中を分岐部15aで分岐させて接続した排ガス供給管15で前記吹出器20、30へ排ガスを送れるようにすることができる。
この場合、前記排気ブロア10の稼働を停止させて吹出器20、30のファン20a、30aを稼働させることによって、ガス導出管12から排ガスが前記吹出器20、30へ流れることとなる。
この場合には、本来捨て去られてしまう排ガスを、搬入口2と搬出口3の両方の開口部を遮蔽するために再利用することが可能となる。
【0051】
なお、不活性ガスの供給源5として不活性ガス製造機と排ガスの両方を使用する場合には、焼付室1に近い吹出器20、30の方には不活性ガス製造機からの清浄な不活性ガスを供給するガス供給管13を接続し、焼付室1から遠い吸引器の方には排ガスを供給する排ガス供給管15を接続し、清浄なガスと汚れたガスとを使い分けることができる。
【0052】
排ガスを使用する場合、使用する排ガスは排ガス処理器17、高温電気ヒータ18、排ガス濾過器19のいずれかで処理されている溶剤の混入量は極めて少なくなったガスを使用することで、たとえその排ガスが開口領域を遮蔽するガスが焼付室1内に流入したとしても殆どワークWの品質低下を引き起こすことはなくなる。
【0053】
なお、温度計、圧力計、風速計、流量計、ガス濃度計等を適宜場所に設けて、焼付室1の温度を最適な数値に制御するなど、装置全体の各部を数値で監視しつつその計測した数値に基づいて制御し、熱効率や安全性を高めるようコントロールすることができる。
【実施例2】
【0054】
他の実施例について、
図4を用いて説明する。実施例1と同様の部分は省略する。
実施例1では、搬入口2側の構造として、天井2a側に、ガス供給源5から供給されるガスを上方から前方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器20を配設し、床2b側に、該吹出器20から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを前方斜め上方へ再び膜状に吐き出して該吹出器20から吹き出されたガスとの間にV字状の遮断層Aを形成する吸引器21を配設する態様について説明した。
しかしながら、吹出器20から吹き出されるガスの向きがワークWの流れる方向と逆行しているため、ガスが該ワークWに当接した際に乱流が発生することが想定され、その結果、吹き出されたガスの全てが上手く吸引器21に吸引されることなく、しかも乱流化したガスが外気を連れて焼付室1内に侵入してしまうことも想定される。
そこで、本実施例では、吹出器20から吹き出されるガスの向き並びに吸引器21から吐き出されるガスの向きについて、実施例1とは異なる構成態様を採用するものである。
【0055】
その基本となる形態は、
図4(a)に示すように、搬入口2の内側の開口領域の天井2a側に、ガス供給源5から供給されるガスを上方から略鉛直下方に向けて膜状に吹き出す吹出器20を配設し、床2b側に、前記吹出器20から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器20より前方箇所にて略鉛直上方へ再び膜状に吐き出して、該吹出器20から吹き出されたガスとの間に矩形状の遮断層Aを形成する吸引器21を配設するものである。
【0056】
前記吹出器20は、ガスをモータの回転で送風するファン20aと、該ファン20aの稼働でガスを膜状に吹き出す吹出口20bとを備え、該吹出口20bからの吹き出し方向は、前方斜め下向きではなく、略鉛直下方となるよう固定する。
この結果、吹出器20は、前記吹出口20bから噴出して膜状となったガスの略鉛直下降流F11を発生させることが可能となる。
【0057】
又、前記吸引器21は、前記吹出器20の吹出口20bから吹き出された略鉛直下降流F11のガスを下方で吸い込める広い間口の吸引口21cと、該吸引口21cから吸引したガスをモータの回転で送風するファン21aと、そのファン21aの稼働でガスを吹出器20より前方箇所にて膜状に吐き出す吐出口21bとを備え、該吐出口21bからのガスの吐出方向は、前方斜め上向きではなく、略鉛直上方となるよう設ける。
この結果、該吐出口21bから吐出して膜状となったガスの略鉛直上昇流F12を発生させることが可能となる。
そして、
図4(a)に示すように、前記略鉛直下降流F11と前記略鉛直上昇流F12の間における略鉛直状に折り返されたガス膜の中間に天井2a面と床2b面で囲われた四角柱状の厚い遮断層Aが形成されることとなる。
【0058】
上記の如く、天井2a側の吹出器20と床2b側の吸引器21とによって、略鉛直状に折り返されるガスの流れの中間に不活性ガスが滞留する遮蔽層Aが形成され、搬入口2の開口領域が確実に遮断され、焼付室1内の高温ガスの漏出を抑制し得ると共に、ガス吹き出し方向を略鉛直方向とすることで、ガスがワークWに当接した際の乱流化を抑制し、冷たい外気の焼付室1内への侵入をより効果的にブロックすることが可能である。
【0059】
次に、本実施例において、前記搬入口2にガスを膜状に流して開口領域を遮断する上記形態とは別の形態が可能である。
図4(b)に示すように、前記遮断層Aの外側に、矩形状の第2の遮断層Dを発生させ、更に該第2の遮断層Dの外側に、第3の遮蔽層Cを発生させるものである。
以下、この態様について説明する。
【0060】
この態様は、
図4(b)に示すように、前記搬入口2の内側の開口領域であって、上記吸引器21のファン21aで吐出口21bから吐き出されたガスが突き当たる天井2a側に、床2b側の前記吸引器21から吹き出されたガスを上方で間口の広い吸引口22cから吸い込み、その吸い込んだガスを該吸引器21より前方箇所にて略鉛直下方へ再びファン22aの送風で吐出口22bから膜状に吐き出して略鉛直下降流F15を発生させる第2の吸引器22を配設する。
この結果、該略鉛直下降流F15と前記吸引器21からの前記略鉛直上昇流F12との間に矩形状(四角柱状)の厚みのある第2の遮蔽層Dが形成される。
【0061】
更に、該第2の吸引器22から吐き出されたガスを下方で広い間口の吸引口23cで吸い込み、その吸い込んだガスを該第2の吸引器22より前方箇所にてファン23aで吐出口23bから上方へ再び膜状に吐き出して上昇流F16を発生させる第3の吸引器23を配設する。
このとき、該吐出口23bからのガスの吐出方向は、略鉛直上方あるいは図示の様な前方斜め上向きのいずれであってもよい。
この結果、該上昇流F16と前記第2の吸引器22からの前記略鉛直下降流F15との間に新たな厚みのある第3の遮蔽層Cが形成される。
【0062】
この形態では、矩形状の遮蔽層Aと共に、矩形状の遮蔽層D及び遮蔽層Cが連続して形成される。この3連の遮蔽層(A+D+C)の合計容積は極めて大きく、又搬入口2からの奥行きも極めて長い層となるので、多数のワークWが高速で通過するとき連動して起こる乱れたガスの流れを制して室内と室外とを確実に遮蔽することが可能となる。
従って、この形態は多数のワークWを大量に高速焼付するのに適し、焼付作業効率をより高めることが可能となる。
【0063】
尚、第3の吸引器23の構成において、吸い込んだガスを搬送中のワークWへ向けて幅広く上方へ吹き上げることで、上昇流F16に代えて吹上流を発生させる態様とし得ることは、上記実施例1と同様である。
かかる構成態様を採用した場合、該吹上流と前記第2の吸引器22からの略鉛直下降流F15との間にガス上昇層が形成され、前記遮蔽層Aと第2の遮蔽層Dとガス上昇層とが連続し、極めて厚いガスの層(A+D+ガス上昇層)となって、搬入口2をより確実に遮蔽することが可能となる。
【実施例3】
【0064】
他の実施例について、
図5を用いて説明する。実施例1、2と同様の部分は省略する。
本実施例は、上記実施例2と同様、吹出器20から吹き出されるガスの向き並びに吸引器21から吐き出されるガスの向きについて、既述構成とは異なる構成態様を採用するものである。
【0065】
その基本となる形態は、
図5(a)に示すように、搬入口2の内側の開口領域の天井2a側に、ガス供給源5から供給されるガスを上方から後方斜め下方に向けて膜状に吹き出す吹出器20を配設し、床2b側に、前記吹出器20から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを該吹出器20より前方箇所にて上方へ再び膜状に吐き出して、該吹出器20から吹き出されたガスとの間に遮断層Aを形成する吸引器21を配設するものである。
【0066】
前記吹出器20は、ガスをモータの回転で送風するファン20aと、該ファン20aの稼働でガスを膜状に吹き出す吹出口20bとを備え、該吹出口20bからの吹き出し方向は、前方斜め下向きや略鉛直下方ではなく、後方斜め下向きとなるよう固定する。
この結果、吹出器20は、前記吹出口20bから噴出して膜状となったガスの後傾斜下降流F21を発生させることが可能となる。
【0067】
又、前記吸引器21は、前記吹出器20の吹出口20bから吹き出された後傾斜下降流F21のガスを下方で吸い込める広い間口の吸引口21cと、該吸引口21cから吸引したガスをモータの回転で送風するファン21aと、そのファン21aの稼働でガスを吹出器20より前方箇所にて膜状に吐き出す吐出口21bとを備え、該吐出口21bからのガスの吐出方向は、略鉛直上方あるいは図示の様に前方斜め上向きのいずれであってもよい。
この結果、該吐出口21bから吐出して膜状となったガスの上昇流F22aを発生させることが可能となる。
そして、
図5(a)に示すとおり、前記後傾斜下降流F21と前記上昇流F22の間における折り返されたガス膜の中間に天井2a面と床2b面で囲われた厚い遮断層Aが形成されることとなる。
【0068】
上記の如く、天井2a側の吹出器20と床2b側の吸引器21とによって、折り返されるガスの流れの中間に不活性ガスが滞留する遮蔽層Aが形成され、搬入口2の開口領域が確実に遮断され、焼付室1内の高温ガスの漏出を抑制し得ると共に、ガス吹き出し方向を後方斜め方向とすることで、ガスがワークWに当接した際の乱流化がより抑制され、冷たい外気の焼付室1内への侵入をより効果的にブロックすることが可能である。
【0069】
次に、本実施例において、前記搬入口2にガスを膜状に流して開口領域を遮断する上記形態とは別の形態が可能である。
図5(b)に示すように、前記吸引器21によるガスの吐出方向について、後方斜め上方とすることで後傾斜上昇流F22bを発生させ、これにより前記吹出器20からの前記後傾斜下降流F21と該後傾斜上昇流F22bの間に床2b側でV字形に折り返されたガス膜の上に天井2a面とで囲われた三角柱状の厚い遮断層Aを形成し、前記遮断層Aの内側に、三角柱状の第2の遮断層Dを発生させ、更に遮断層Aの外側に、第3の遮蔽層Cを発生させるものである。
以下、この態様について説明する。
【0070】
この態様は、
図5(b)に示すように、前記吸引器21における吐出口21bの向きが後方斜め上方とされており、これにより該吐出口21bからのガスの吐出方向は、前記吹出器20より前方箇所における上方ではなく、後方斜め上方とに吐き出されるようになっている。
この結果、該吐出口21bから吐出して膜状となったガスの後傾斜上昇流F22bを発生させることが可能となる。
【0071】
又、前記搬入口2の内側の開口領域であって、上記吸引器21のファン21aで吐出口21bから後方斜め上方に吐き出されたガスが突き当たる天井2a側に、床2b側の前記吸引器21から吹き出されたガスを上方で間口の広い吸引口22cから吸い込み、その吸い込んだガスを後方斜め下方へ再びファン22aの送風で吐出口22bから膜状に吐き出して後傾斜下降流F25を発生させる第2の吸引器22を配設する。
この結果、該後傾斜下降流F25と前記吸引器21からの前記後傾斜上昇流F22bとの間に三角柱状の厚みのある第2の遮蔽層Dが形成される。
【0072】
更に、前記第2の吸引器22のファン22aで吐出口22bから吐き出されたガスが突き当たる床2b側に、その吐き出されたガスを下方で間口の広い吸引口23cから吸い込み、その吸い込んだガスを前記吹出器20より前方箇所にて上方へ再びファン23aの送風で吐出口23bから膜状に吐き出して、上昇流F26を発生させる第3の吸引器22を配設する。
このとき、該吐出口23bからのガスの吐出方向は、略鉛直上方あるいは図示の様に前方斜め上向きのいずれであってもよい。
この結果、該上昇流F26と前記吹出器20からの前記後傾斜下降流F21との間におけるガス膜の中間に天井2a面及び床2b面とで囲われた厚みのある第3の遮蔽層Cが形成される。
【0073】
上記の如く、天井2a側の吹出器20及び第2の吸引器22と床2b側の吸引器21及び第3の吸引器22とによって、V字状に折り返されるガスの流れの中間に不活性ガスが滞留する遮蔽層A、D、Cが形成され、搬入口2の開口領域が確実に遮断され、焼付室1内の高温ガスの漏出を抑制し得ると共に、ガス吹き出し方向を後方斜め方向とすることで、ガスがワークWに当接した際の乱流化がより抑制され、冷たい外気の焼付室1内への侵入をより効果的にブロックすることが可能である。
【0074】
この形態では、V字状の遮蔽層Aと共に、逆V字状の遮蔽層D及び略矩形状の遮蔽層Cが連続して形成される。この3連の遮蔽層(A+D+C)の合計容積は極めて大きく、又搬入口2からの奥行きも極めて長い層となるので、多数のワークWが高速で通過するとき連動して起こる乱れたガスの流れを制して室内と室外とを確実に遮蔽することが可能となる。
従って、この形態は多数のワークWを大量に高速焼付するのに適し、焼付作業効率をより高めることが可能となる。
【0075】
尚、第3の吸引器23の構成において、吸い込んだガスを搬送中のワークWへ向けて幅広く上方へ吹き上げることで、上昇流F26に代えて吹上流を発生させる態様とし得ることは、上記実施例1、2と同様である。
かかる構成態様を採用した場合、該吹上流と前記吹出器20からの後傾斜下降流F21との間にガス上昇層が形成され、前記遮蔽層Aと第2の遮蔽層Dとガス上昇層とが連続し、極めて厚いガスの層(A+D+ガス上昇層)となって、搬入口2をより確実に遮蔽することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明で焼付対象となるワークWは、塗装された金属に限定するものではなく、ワークWの塗料及び材質に適した温度とすることで、プラスチック、セラミック等の各種素材の製品の焼付にも利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 焼付室
1a 天井
1b 床
2 搬入口
2a 天井
2b 床
20 吹出器
21 吸引器
22 第2の吸引器
23,24 第3の吸引器
3 搬出口
3a 天井
3b 床
30 吹出器
31 吸引器
4 搬送手段
5 ガス供給源
6 熱交換器
7 ガス導入部
8 ガス導出部
9 送風管
9a 噴出口
10 排気ブロア
11 ガス導入管
12 ガス導出管
13 ガス供給管
14 ガス圧調整器
15 排ガス供給管
15a 分岐部
16 電気ヒータ
17 排ガス処理器
18 高温電気ヒータ
19 排ガス濾過器
A 遮蔽層
B 遮蔽層
C 第3の遮蔽層
D 第2の遮蔽層
E ガス上昇層
W ワーク
【要約】 (修正有)
【課題】塗装の色艶が均質に得られ、高温の熱を効率良く利用することができる焼付装置を提供する。
【解決手段】搬入口2から搬出口3へワークWを搬送する搬送手段4を備えた焼付室1と、焼付室1へ不活性ガスを供給するガス供給源5と、排出されるガスと供給されるガスとの熱交換を行う熱交換器6と、焼付室1へ供給されるガスを加熱する電気ヒータ16を備えたガス導入部7とを備えた連続焼付装置であって、焼付室1には加熱された高温ガスを分散させて室内の温度を均質化する噴出口9aを備えた送風管9を配し、搬入口2と搬出口3の内側には天井側に、供給されるガスを上方から下方に向けて膜状に吹き出す吹出器20、30を配し、床側に、吹出器から吹き出されるガスを下方で吸い込み、その吸い込んだガスを上方へ再び膜状に吐き出す吸引器21、31を配する。
【選択図】
図1