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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】縦型水耕植物生産器械
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220524BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017192783
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2018061507
(43)【公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】15/289,576
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508206955
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワイオミング
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル アール. ストウレイ
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0227722(US,A1)
【文献】特開2003-269748(JP,A)
【文献】実開昭51-092450(JP,U)
【文献】特開平05-176641(JP,A)
【文献】実開昭51-115142(JP,U)
【文献】国際公開第2016/081234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型水耕植物生産器械であって、
中空の生育管と、
前記生育管の中に挿入可能な培地材と
を備え、
前記生育管が、傾斜した多角度式の作物生産、及び多段式のコンベアスタイル作物生産を可能にする、平置き型位置、縦型位置、または前記平置き型位置と前記縦型位置との間の任意の位置のいずれかに位置決め可能であ
前記生育管が、前面を有しておらず、背面、右側面、及び左側面を有し、前記右側面及び前記左側面の内壁に沿って延びて、前記生育管内の前記培地材を定位置に維持する添え木を更に有する、縦型水耕植物生産器械。
【請求項2】
前記添え木が、前記生育管内の前記培地材に対する支持及び圧力をもたらす、請求項1に記載の縦型水耕植物生産器械。
【請求項3】
前記生育管が、開いた第1の端部及び開いた第2の端部を有する、請求項1又は2に記載の縦型水耕植物生産器械。
【請求項4】
前記添え木が、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記生育管の全長に沿って形成される、請求項3に記載の縦型水耕植物生産器械。
【請求項5】
前記培地材が、繊維状の、不織基盤培地材、発泡スチロール、ポリウレタンフォーム、プラスチックメッシュ、ロックウール、ココナツ繊維、バーミキュライト、及び鉢植え用土などの有機土から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の縦型水耕植物生産器械。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の縦型水耕植物生産器械において植物を生育する方法であって、
中空の生育管を用意するステップと、
前記生育管の中に挿入可能な培地材を用意するステップと
を含み、
前記生育管が、傾斜した多角度式の作物生産、及び多段式のコンベアスタイル作物生産を可能にする、平置き型位置、縦型位置、または前記平置き型位置と前記縦型位置との間の任意の位置のいずれかに位置決め可能であり、
前記方法が、
1つまたは複数の植物を前記培地材の中に挿入し、前記1つまたは複数の植物を前記培地材の中で生育するステップと、
前記1つまたは複数の植物を前記培地材から収穫するステップと
をさらに含む、植物を生育する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月14日出願の係属中の米国特許出願第15/098,744号、2012年11月2日出願の米国特許第9,380,751号、2011年6月10日出願の米国特許出願第13/134,614号に対する一部継続出願であり、優先権を主張するものであり、それらはともに、「Vertical Hydroponic Plant Production Apparatus」と題された2009年8月3日に出願の特許仮出願第61/273,317号の優先権の便益を主張する「Vertical Hydroponic Plant Production Apparatus」と題された2012年12月11日に発行の米国特許第8,327,582号(2010年8月2日に出願の米国特許出願第12/804,931号)の一部継続出願であり、これらの参照文献すべての内容全体が、参照することによって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
従来の水耕は、主に、平置き型の生産技法に焦点を当てており、大きなスペース制約を受けてきた。縦型水耕の適用例は、実用的でないか、運転費がかさむか、または効率的でないかのいずれかであった。多くの場合、これらの適用例では、飽和状態のときには重くて、植物の根でいっぱいになった際に目詰まりを引き起こし、及び/またはかなりの維持管理を必要とする何らかのタイプの成長培地が利用される。加えて、従来の技術は、生きている生育野菜の店内陳列を可能にすることを困難にし、顧客にとって、「自分で摘む(you-pick)」野菜及びハーブ販売への意欲をかき立てるものではない。拡大縮小性が高い縦型植物陳列を可能にする技術はほとんど存在しない。
【0003】
関連技術の前述の例、及びそれに関連する限定事項は、例示的であり、排他的でないことを意図するものである。関連技術の他の限定事項は、本明細書を読むと当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明が、種々の相異なるバージョンまたは実施形態を含んでおり、この「発明の概要」が、限定または包括的であることを意味するものではないことを理解されたい。この「発明の概要」は、実施形態のうちの一部のいくつかの概括的な説明を提供するものであるが、他の実施形態のいくつかのより具体的な説明も含む場合がある。
【0005】
本発明の一実施形態は、縦型水耕植物生産器械を含み、この器械は、中空の生育管と、生育管の中に挿入可能な培地材とを備え、ここで、生育管は、傾斜した多角度式の作物生産、及び多段式のコンベアスタイル作物生産を可能にする、平置き型位置、縦型位置、または平置き型位置と縦型位置との間の任意の位置のいずれかに位置決め可能である。
【0006】
本発明の一実施形態は、縦型水耕植物生産器械において植物を生育する方法を含み、この方法は、中空の生育管を用意するステップと、生育管の中に挿入可能な培地材を用意するステップとを含み、生育管は、傾斜した多角度式の作物生産、及び多段式のコンベアスタイル作物生産を可能にする、平置き型位置、縦型位置、または平置き型位置と縦型位置との間の任意の位置のいずれかに位置決め可能であり、この方法は、1つまたは複数の植物を培地材の中に挿入し、1つまたは複数の植物を培地材の中で生育するステップと、1つまたは複数の植物を培地材から収穫するステップとをさらに含む。
【0007】
本発明の追加の利点は、具体的には、添付の図面とともに解釈されると、次の論考から容易に明らかになるであろう。
【0008】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付の図は、いくつかの例示的な実施形態及び/または特徴を示しているが、唯一のものでも、または排他的なものでもない。本明細書に開示される実施形態及び図は、限定ではなく例示と見なすべきであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明により構築される縦型水耕植物生産器械の生育管を示す前面斜視図である。
図2】本発明により構築される図1の縦型水耕植物生産器械の生育管を示す後面斜視図である。
図3】本発明により構築される縦型水耕植物生産器械の生育管の別の実施形態を示す前面斜視図である。
図4】本発明により構築される図3の縦型水耕植物生産器械の生育管を示す後面斜視図である。
図5】本発明により構築される縦型水耕植物生産器械の培地カラムを示す前面斜視図である。
図6】本発明により構築される図5の縦型水耕植物生産器械の培地カラムを示す後面斜視図である。
図7】本発明により構築される縦型水耕植物生産器械のZ型ブラケットを示す斜視図である。
図8】本発明により構築される縦型水耕植物生産器械の抜取り用フックを示す斜視図である。
図9】スロットが生育管の第1の端部より下の点に形成される、本発明により構築される縦型水耕植物生産器械を示す斜視図である。
図10】培地材が中央で分割されている2つの半部材から成る、縦型水耕植物生産器械の培地材を示す斜視図である。
図11】ボルトが培地材の中に示されている、縦型水耕植物生産器械の培地材を示す拡大図である。
図12】ボルトが2つの半部の幅にわたる、縦型水耕植物生産器械の培地材を示す図である。
図13】培地材が、生育管の内幅/直径の実質的に半分の厚さを有し、したがって、培地材が、中央で折り畳まれ、それにより両方の半部が合わさった厚さは、生育管の内寸とほぼ等しくなる、本発明により構築された縦型水耕植物生産器械を示す斜視図である。
図14】蓋、及び蓋を貫通する細管を備えた、本発明により構築された縦型水耕植物生産器械を示す斜視図である。
図15】栄養溶液容器を備えた、本発明により構築された縦型水耕植物生産器械を示す斜視図である。
図16】ポンプを備えた、本発明により構築された縦型水耕植物生産器械を示す斜視図である。
図17】本発明により構築された縦型水耕植物生産器械の円形の生育管を示す斜視図である。
図18a】本発明により構築された、前面がない縦型水耕植物生産器械の水耕生育管を示す前面斜視図である。
図18b】本発明により構築された、前面に沿って小さいまたは狭いスロット20を含む縦型水耕植物生産器械の水耕生育管を示す前面斜視図である。
図18c】本発明により構築された、前面上の小さい縁部17が、前面に沿って大きいスロットを生み出す、縦型水耕植物生産器械の水耕生育管を示す前面斜視図である。
図18d】本発明により構築された、前面がない、ただし添え木19が側壁の長さに延びる縦型水耕植物生産器械の水耕生育管を示す前面斜視図である。
図19a】本発明により構築された、前面または裏側がない縦型水耕植物生産器械の水耕生育管を示す前面斜視図である。
図19b】本発明により構築された、前面または裏側がなく、培地材を内部に含む、縦型水耕植物生産器械の水耕生育管を示す前面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の諸実施形態は、様々な形態の植物及びキノコを含むが、これに限定されるものではない有機体を水耕タワーの中で栽培し、輸送するための様々な器械、システム、及び方法を含む。本明細書に記載の器械及びシステムは、有機体の生活環及び健康に基づく異なる環境における水耕タワーの中で生育する植物などの有機体を可能にし、ならびに有機体をマーケットに輸送することも可能にする。器械及びシステムは、植物またはキノコなどの有機体を、温室、倉庫、納屋を含むが、これに限定されるものではない種々の構造物との間で移動させること、ならびに農地に置くことを可能にする。本明細書に記載のシステムは、植物及びキノコを生産からマーケットまで、直接、移動させることを可能にし、配送及び出荷の問題が解消される。
【0011】
図1図19bに示されているように、本開示は、従来の植物生産技法に必要なスペースの何分の一かにおける縦型水耕温室作物生産を可能にする、図1に概略的に示され、全体的に10で指示されている縦型水耕植物生産器械であり、縦型の表面を利用して、植物生産を可能にする。
【0012】
図1図4に示されているように、本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10は、平置き型位置、縦型位置、または平置き型位置と縦型位置との間の任意の位置において使用可能な生育管またはタワー12を含む。生育管またはタワー12は、可搬性が高く、軽量であり、移植、生育、及び収穫に向けた生育管またはタワー12の場所を転々と移すことを容易にする。生育管またはタワー12は、傾斜した多角度式の作物生産及び多段式のコンベアスタイル作物生産をさらに可能にする。本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10の生育管またはタワー12はまた、植物ベースの高効率の消耗栄養素除去のための水産養殖の生物ろ過/栄養素ストリッピング装置として、及び大きい表面積/容積を有し、それによって、一過式水産養殖のコストを抑え、再循環式水産養殖の効率性を向上させる硝化処理のサイトとしても機能する。
【0013】
本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10の生育管またはタワー12はまた、マーケット場所における自分で摘む野菜販売のための新鮮で、生きている農産物の陳列を可能にする、及び従来式で収穫された野菜製品よりも新鮮である農産物の販売を可能にする、店内またはマーケットでの陳列装置としても機能する。建物の壁面及び/または屋根に簡単に固定するように設計されている生育管またはタワー12は、遮光及び植物蒸発散により冷暖房コストを抑え、装飾的な機能を果たす。そのような形で使用される生育管またはタワー12はまた、施工及び配管システムに応じて、屋上及び舗装表面の水流出を抑えることもできる。
【0014】
さらには、本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10は、種々の目的として、室内での装飾的な景観設計ならびに縦型植物生産陳列を可能にする。生育管またはタワー12には、オフィス及び作業空間におけるアロマセラピータイプの対話型の廊下、ロビー陳列、キッチン、及びカフェテリア陳列、ならびに一般の産業用植物陳列に使用され得るハーブの芳香及び装飾種を入れておくことができる。
【0015】
図1図4に示されているように、本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10の生育管またはタワー12は、第1の端部14及び第2の端部16を有する。生育管またはタワー12は、正方形(図1図4に示されている)、長方形、円形(図17に示している)、楕円形、八角形、五角形、三角形、または角形の細管を含むが、これに限定されるものではない種々の形状で提供され得、不織基盤培地18(図5図6図10図11図13に示されている)を含んでおり、この不織基盤培地18は、任意の数のプラスチック材料から成り、天井から垂直に吊され、フレームワークによって支持され、及び/または支持ポールもしくはフレームを使用して床の上に直立している。例として、生育管12は、チタン、スチール、ステンレススチール、アルミニウム、及び航空機用アルミニウムを含む金属、ナイロンなどの合成ポリマー、高密度ポリエチレン(high-density polyethylene)『HDPE』などのプラスチック、または炭素繊維強化ポリマー、炭素繊維強化プラスチック、及び炭素繊維強化熱可塑性プラスチックなどの複合材料を含むが、これに限定されない種々の材料から構成され得、側壁は、幅が約4インチ~6インチであるが、異なる幅及び長さを有する、アルミニウム、またはスチールなどの金属ならびにガラス繊維、プラスチック、もしくは木材などの異なる材料から生育管を構成することは、本発明の範囲内にある。
【0016】
図1図4に示されているように、本開示の一実施形態においては、本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10の生育管またはタワー12は、生育管12を通る縦方向に形成されるスロット20を有する。スロット20は、第1の端部14から第2の端部16まで生育管12の面全体に沿って形成され(図1図4に示されている)、または、スロット20は、生育管12の第1の端部14から約4インチ~約6インチの点に形成され得る(図9に示されている)。スロット20が生育管12の面全体に沿って形成される場合においては、スロット20は、生育管12の第1の端部14において、培地の挿入及び取外しを容易にすることができる角度付きの部分22を有することができ、これに関しては、さらに後述する。スロット20は、生育管の前面を、培地材の挿入中に外側へ広げ、一旦、培地材が挿入されると、培地材に対抗する内側への付勢を可能にする。スロット20には、生育管の面の幅の1/32から(図18bに示されている)31/32まで(図18cに示されている)変わる種々の幅、または4インチの幅面に対する約1/2インチから約3.9インチまでが与えられ得るが、異なる幅のスロット20を構成することは、本発明の範囲内にある。
【0017】
図18aにおいては、本開示の別の実施形態が提供される。図18aに示されているように、生育管またはタワー12は、前面がなく、ただし、右側面、平行な左側面、及び対応する背面付きで用意される。この実施形態においては、培地材18は、タワー12に挿入され、タワーまたは管12の右及び左側面ならびに裏側によって支持される。培地材18についての追加の支持が、ボルト21(図12に示されている)によって与えられ得、このボルト21は、培地インサート18の幅にわたり、2つの半部をつなぎ、及び/または培地インサートに対する構造上の完全性を支援する。論じることになるように、リベット(金属またはプラスチック)、及び金属棒もまた、タワー内で培地材についての追加的支持を与えるのに使用され得る。
【0018】
図18dにおいては、本開示の別の実施形態が提供される。図18dに示されているように、生育管またはタワー12は、前面がなく、ただし、右側面、平行な左側面、及び対応する背面付きで用意される。この実施形態においては、生育管12の右側面及び左側面の内壁長に延びる添え木19が、設置される。各添え木は、壁面の長さに延び、培地材に対抗する支持及び圧力を与え、培地材を合わせて定位置に維持するのを助ける。図18dに示されている例においては、2本の添え木が、右側面内壁の全長に延びるように示されているが、一旦、当業者が本開示の範囲を理解すると、彼らによって理解されるように、生育管の大きさ及び形状、培地の種類、ならびに培地の中で生育する植物またはキノコの種類に応じて、任意の数の添え木が、この例においては使用可能である。
【0019】
図19aにおいては、本開示の別の実施形態が提供される。図19aに示されているように、生育管またはタワー12は、前面または背面なしで用意される。この実施形態においては、基部23が、右側面及び左側面を動作可能に結び付け、それらに支持を与えるように設置される。図19bに示されているように、培地材18は、タワー12に挿入され、タワーまたは管12の右及び左側面によって支持される。培地材18についての追加の支持が、ボルト21(図12に示されている)を使用することによって与えられ得、このボルト21は、培地インサート18の幅にわたり、2つの半部をつなぎ、及び/または培地インサートに対する構造上の完全性を支援する。論じることになるように、リベット(金属またはプラスチック)、及び金属棒もまた、タワー内で培地材についての追加的支持を与えるのに使用され得る。
【0020】
種々の培地材が、本開示のシステムとともに使用され得る。本開示のシステムにおいて使用され得る培地の例には、繊維状の、不織基盤培地材、埋め木(plug)または鉢植え用植物の周りのより小さい培地、発泡スチロール、ポリウレタンフォーム、プラスチックメッシュ、ロックウール、ココナツ繊維、バーミキュライト、ならびに鉢植え用土などの有機土が含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0021】
上述のように、本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10は、培地材18(図5図6、及び図11図13に示されている)を有することができ、この培地18は、生育管の内幅/直径に切られた、約2インチ厚のポリエステル基盤材で構成され、中央で折り畳まれ、それにより両方の半部を合わせて、生育管またはタワー12の内寸とほぼ等しくなる(図13に示されている)。培地材18はまた、生育管の内幅/直径に切られた、もしくは例として、約2インチ厚の培地の2つの半部、または培地材の上部の約4インチから約6インチの範囲内まで中央で分割された4インチ厚の培地の一片で構成することができ、ここで、ボルト21がその幅にわたる。
【0022】
本開示の別の実施形態においては、上に論じ、図10図11、及び図12に示したボルト21が、2つの培地片を合わせて保持するのに使用され得る。図12に示されているように、このボルト21は、培地インサート18の幅にわたり、2つの半部をつなぎ、及び/または培地インサートに対する構造上の完全性を支援する。この例においては、1つのボルト21が設けられているが、一旦、当業者が本開示を理解すると、彼らによって理解されるように、リベット(金属またはプラスチック)、及び金属棒を含むが、これに限定されるものではない、培地材を合わせて定位置に保持するための任意の数の他の手段が使用され得る。
【0023】
培地材を合わせて保持するための追加の手段は、収縮ラップ(shrink-wrap)の使用を含むことができる、この例においては、収縮ラップ、またはプラスチックフィルムを、生育管またはタワー12の外部全体の周りに置くことができる。次いで、たとえば、ヒートガンからの熱が、プラスチックフィルムに加えられ、フィルムを収縮させる、または培地材の外部に適合させる。次いで、プラスチックの中に穴が開けられて、収縮ラップを通して植物を培地材の中に置くことを可能にすることができる。本開示のこの実施形態は、生育管がある場合もまたは生育管がない場合も使用可能である。
【0024】
別の実施形態においては、ボルトは、培地内にアンカーをもたらし、このアンカーは、培地インサート18を挿入し、生育管12から取り外すという目的のために、ハンドル(図8に示されている)が、ボルトを把持することを可能にする、または同じ目的のために、フォーク状もしくはかぎ状のハンドルを受け器の中に挿入することを可能にする。
【0025】
培地材18が半分に折り畳まれる本開示の縦型水耕植物生産器械10の実施形態においては、ハンドル28(図8に示されている)に平坦フック26が取り付けられている抜取り用フック24により、培地インサート18を生育管12の中に及び生育管12から外に抜き取ることが可能になり、抜取り用フックハンドル28は、生育管12の中のスロット20から延出している。フック24は、幅広の平坦な「L」形状のフックを形成するために曲げられた、ほぼ折り畳まれた培地18の幅の円形棒金属片から成り、ハンドル28が、端部に固定されている。フック26はまた、培地インサート18の自動化「抜取り」を可能にする空気圧または油圧装置に取り付けられてもよい。
【0026】
植付けの場合、苗または菌糸組織が、上側部分を外に出しながら、培地18の2つの半部間に置かれ、または培地18の外側に、本開示の縦型水耕植物生産器械10を背にして置かれ、植物の上側部分を生育管筐体12の中の間隙から突き出していながら、生育管12の中に「ジップ」される。
【0027】
一実施形態においては、生育管12の上部14は、中心に開けられた大小様々の穴を有する取外し可能な蓋により覆われていても(図14に示されている)、またはまったく覆われていなくてもよい。覆われている場合、噴霧器または注水細管が、蓋穴の中の穴を通して挿入される(図14に示されている)。生育管12の底部は、栄養溶液に浸されているか、栄養溶液を再循環させるためのドレインもしくはトラフの中にあるか、または(図16に示されている)下側パイプの中に嵌合するかのいずれかである。ポンプが、栄養溶液を栄養溶液容器(図16に示されている)から生育管12の上部における噴霧器または注水パイプに移し、ここで、栄養溶液は、放出され、培地18及び植物の根を通して滴り落ちることが可能になる。栄養溶液の一部は、生育管12の壁面を伝わり落ち、パイプ壁面と接触している根によって取り込まれる。過剰な栄養溶液は、生育管12の底部に滴り、ここで、この栄養溶液は、栄養溶液容器へと戻るように排出される。栄養溶液が定常的に伝わり落ち/噴霧されることにより、生育管内には、高湿度が維持される。植物生育管12の高さは、温室の高さに応じて変えることができ、植物の間隔は、植物の種類、及び所望の間隔に応じて変えることができる。生育管12の下部を連結キャップに嵌合することによって、生育管12を互いの上部に積み重ねて高さを変えて、コンベア生産技法を利用することが可能である。
【0028】
一実施形態においては、図16に示されている容器は、水耕タワーを通過する余剰な水または溶液を保管し、取り込むために設置され得る。容器は、図16の中の細管として示されている注水手段に動作可能に連結される。注水手段は、タワー12の上部に連結されているメインの注水システムまたは注水システム手段に対して、迅速に着脱されるように設計されている。注水手段は、パイプ、ホース、または他の導管に動作可能に連結され、かつ水及び栄養溶液(これに限定されるものではないが、窒素、リン、カリウム、鉄、マグネシウム、及び亜鉛を含んでいる溶液など)を水耕タワーに送達することができる、ポンプ(図16に示されていない)を含むことができる。注水手段は、水または栄養溶液を容器からタワーの上部まで運ぶことを可能にする。水または栄養溶液は、ドリップエミッタ、スプリンクラー、及びマイクロスプレーエミッタを含む種々のエミッタによって、注水手段から放出され得る。
【0029】
一実施形態においては、ポンプは、水及び/または栄養溶液を容器から水耕タワー12の第1の端部14に注水手段を通して移し、栄養溶液を、生育管またはタワー12に挿入される培地材に分配する。栄養溶液は、培地を通して滴り落ちることが可能になり、植物の根または菌糸材料が、培地の中で生育する。栄養溶液の一部は、水耕タワー12の壁面を伝わって落ち、タワー12の壁面に接触している根によって取り込まれる。余剰な栄養溶液は、中空の生育管12の下部に滴り落ち、ここで、その栄養溶液は、容器の中へと排出される。
【0030】
本開示の縦型水耕植物生産器械10の生育管12は、支持梁またはブラケットにループ掛けし、生育管12の第1の端部に開けられた穴30を通して生育管またはタワー12に緊締するハンガ、ロープ、あるいはストラップ、および金属フックを使用して定位置に固定され得る。穴30は、適用例に応じて、大きさ及び配置を可変とすることができるが、最も一般的な実施形態においては、4つの穴30が存在し、1つの対は、筐体上側の両側の中心に置かれ、1つの対は、この中心に置かれた対の前方にあり(生育管12の正面に向かって)、傾斜した生育が望ましい場合、吊り下げられた生育管12をわずかに傾斜させることを可能にする。生育管12はまた、一連の穴、または生育管12の中に切り込まれた間隙を使用して、定位置に固定され得、それにより、生育管を、それに取り付けられているシステムを吊り下げているブラケット、または圧力もしくはばね作用を有するポールに固定することが可能になる。生育管12はまた、傾斜した生産を目的として、前記ポールまたは吊り下げられたシステムに対して傾斜され得る。
【0031】
本開示の縦型水耕植物生産器械10の生育管12はまた、金属ブラケットのシステムを利用して、支持ポールに緊締され得るが、一方のブラケットタイプは、雌型であり、「H」ブラケット32(図2に示されている)として指定され、他方のブラケットタイプは、雄型であり、「Z」ブラケット34(図7に示されている)として指定される。雌型「H」ブラケット32は、受け部分、及びタワー12の背面または側面にボルト留めするためのアンカー部分を有する。雄型「Z」ブラケット34は、雌型ブラケット32の受け部分の中に嵌合する垂直上向きの舌部分から成り、支持ポールにわたって嵌合するブラケット34の中央の角度付きの部分を通る穴36を有する。ブラケット34の後方下向きの垂直部分は、ブラケット34の底部を横切って中ほどに開けられた穴38を有し、ボルトを受けるようにねじ込まれる。ブラケット付けされたタワーの配置により、重みがブラケット34の舌部分に加えられると、下方のトルクが「Z」ブラケット34にわたって加えられて、支持ポールにブラケットをしっかりと取り付けるクラッチ作用が生じる。この「Z」ブラケット34のトルク取付けは、支持ポールに対抗してブラケット34の後方にねじ込まれたボルトを締め付けることによって強められ、さらにより大きい圧力が加えられて、ブラケットを取り付けることができる。
【0032】
別の実施形態においては、「Z」ブラケット34または「H」ブラケットのいずれかが、垂直棒に置き換えられ得る。この例においては、生育管12は、Hブラケットを用いて垂直棒に据え付けられる。この作用様式は、Hブラケットが生育管に取り付けられることにより達成し得、管が、必要に応じて、垂直棒またはポールを上下に摺動することが可能になる。別の例においては、Hブラケット(またはHブラケットの基本形における変形形態)は、生育管の背面に取り付けられ得、据え付けられることになる垂直棒上に管が摺動することを可能にする。
【0033】
別の実施形態においては、本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10の培地インサートまたは培地材18は、多様な範囲の機能を果たすために、いくつかのやり方で変更され得る。培地18は、締められていない、または折り畳まれていない端部から、締められている、または折り畳まれている端部までテーパーに切断され得、インサートの後方にテーパー付きのスペースを確保して、堆肥、代替の植物培地、施肥物質、または何らかのタイプの土壌改良もしくは添加剤を、テーパー付きの培地インサートと、タワー筐体12の後方及び側壁との間のスペースに保持することを可能にする。この代替案により、定期的な注水を使用する、堆肥に基づく水耕植物生産が可能になり、植物栄養素は、堆肥または他の添加剤によって供給される。
【0034】
本開示の別の実施形態においては、培地材または培地インサート18の上部、側面、及び隅部はまた、バイオソリッド蓄積、藻類増殖を抑えるために、または適用例に応じて培地18を介した水分配を高めるために、切断されても、丸められても、またはある角度で切断されてもよい。
【0035】
本開示の別の実施形態においては、複数の培地インサートまたは培地材18が、生育管またはタワー12において使用され得、複数の年代または成長段階の植物を各生育管またはタワー12の中に組み込むことが可能になる。
【0036】
別の実施形態においては、ミミズもまた、生育管またはタワー12の中に取り入れることができる。本開示の培地材は、的確なメッシュまたは孔の大きさが、培地材18を通るミミズの移動に対応することができるように設計され得る。一旦、当業者が本発明を理解すると、彼らによって理解されるように、より小さいまたはより大きいメッシュもしくは孔の大きさの培地材18もまた、適用例に応じて使用可能である。
【0037】
本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10は、比較的、軽量であり、安価で製造することができ(一般的なPVC押出技法及び既存のポリエチレン基盤材製造に基づいている)、栄養溶液により目詰まりすることなく、運転にそれほど多くの作業を必要としない。本開示はまた、必要ならば、より従来式の平置き型生産技法にも転換可能であり、商業向け生産者の生産技法の変更に特有のリスクが解消される。
【0038】
加えて、水産養殖における従来式の窒素及びリンの除去技法は、ファイトレメディエーション(phytoremediation)のための植物摂取を用いる除去と比較して非常に貧弱である。植物は、現在使用されているいずれの機械的/化学的/微生物的技法よりも一桁低いレベルまでN及びPを除去することができる。本開示は、水をファイトレメディエーションし、長期にわたる水の使用/再循環及び水の保全を可能にする。
【0039】
本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10は、生産システムが、販売システムから物理的に取り除かれ、配送及び出荷が、いずれも財政的に大きな割合の生産者損失を招き、農作物の破棄または消費期限切れをもたらす従来式の収穫及び販売モデルに関する改良形態である。生きている植物またはキノコを販売することによって、本開示のシステムおよび器械は、腐敗を防止し、配送及び出荷は、生産者がタワーをマーケット場所まで移動させることによって部分的に行われるが、主には、新鮮な農産物、ならびに自分自身が使用するための野菜、ハーブ、及び葉野菜を摘み、収穫する経験に関心がある消費者によって行われる。生育管及びタワーは、容易に輸送され、棚の上に積み重ね、持ち上げ、滑らせることが容易である。生育管及びタワーは、本質的に、包装システムならびに植物生産システムとして働く。さらには、個々のタワーを利用することによって、景観デザイナ及びホームユーザは、自分の仕様書に対して正確に自分の陳列または生産システムを拡大縮小することができる。
【0040】
本開示の縦型水耕植物生産器械及び縦型水耕植物生産システム10は、必要な生育スペースを大幅に縮小する。縦型空中栽培技法を利用する生育スペースの典型的な縮小は、従来の生育方法と比較して60%から85%の間で変化した。温室生育スペースは、非常に高価であり、したがって、温室スペースを増やさずに作物の大きさを増やす能力は、非常に利益が高いことを示す可能性があり得る。本開示はまた、既存のPVCパイプ生産インフラストラクチャの上に構築し、製造が非常に手頃である。本開示の実施はまた、現在の水耕生産技術の上に構築し、単純になる。
【0041】
本開示の縦型水耕植物生産器械10により達成される水再循環時間の増加は、高コストのうちの1つを解消し、水産養殖の負の環境効果を低減することができ、結果的には、水産養殖生産者の利益増加と、より良い産業イメージとをもたらす。本開示を使用すると、水産養殖生産者が、自分の製品ベースを多様化し、及び/または(水生生物の食餌ニーズに応じて)補助飼料製品を生育させることも可能にすることができる。
【0042】
本開示の縦型水耕植物生産器械10は、野菜生産者、小売業者、及び消費者に対して、生産、輸送、配送、出荷、及び陳列のまったく新しいシステムを切り開く可能性を有する。これにより、結果的に、より新鮮な農産物、より楽しい顧客の買い物経験、破棄の低減、出荷及び包装コストの低減、フードマイルの減少、プラスチック及び包装材消費量の削減、ならびに購入した農産物のより長い保存期間がもたらされる可能性がある。
【0043】
本開示の縦型水耕植物生産器械10は、廃棄物質を取り除き、廃水を浄化して排出するための流れ落ちるタワー、植物一体型フィルタを使用して、廃水のファイトレメディエーションに向けた工業施設によって使用され得る。
【0044】
本開示の前述の例示的な説明及び例示的な実施形態は、図面において説明され、詳細に記載され、様々な修正形態及び代替の実施形態が教示された。本開示をそのように示し、説明し、例示してきたが、形態および詳細における均等な変更が、本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その中において行われ得ること、ならびに本開示の範囲が、従来技術によって除外されている場合を除いて、特許請求の範囲にのみ限定すべきであることを当業者は理解すべきである。その上、本明細書において開示される本開示は、本明細書において開示される特定の要素がなくても、適切に実施され得る。
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