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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/28 20060101AFI20220524BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20220524BHJP
   C09D 153/02 20060101ALI20220524BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220524BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220524BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220524BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C09D123/28
C09D123/00
C09D153/02
C09D163/00
C09D175/04
C09D5/00 D
B05D7/24 302G
B05D7/24 302J
B05D7/24 302U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018053644
(22)【出願日】2018-03-21
(65)【公開番号】P2019167390
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直之
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-051474(JP,A)
【文献】特開平10-292148(JP,A)
【文献】特開昭63-051477(JP,A)
【文献】特開平03-269067(JP,A)
【文献】特開平06-063502(JP,A)
【文献】特開平04-248845(JP,A)
【文献】特開2016-000770(JP,A)
【文献】特開2005-002260(JP,A)
【文献】特開平07-196981(JP,A)
【文献】特開2000-034438(JP,A)
【文献】特開平04-175308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 123/28
C09D 123/00
C09D 153/02
C09D 163/00
C09D 175/04
C09D 5/00
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に、塩素化および/または非塩素化ポリオレフィン(A)、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、エポキシ樹脂(C)、ブロックポリイソシアネート化合物(D)、及び顔料(E)を含む塗料組成物を塗装し、その未硬化の塗面上にベースコート塗料を塗装し、さらにその未硬化の塗面上にクリヤコート塗料を塗装し硬化させることを含む、塗装方法
【請求項2】
前記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、アクリル部分とスチレン系熱可塑性エラストマー部分とを含み、
前記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の前記アクリル部分のガラス転移温度が20~100℃であり、前記アクリル部分と前記スチレン系熱可塑性エラストマー部分との固形分質量比が1:9~9:1である、請求項1に記載の塗装方法
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(C)が、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)である、請求項1又は2に記載の塗装方法
【請求項4】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(D)が活性メチレン系ブロックポリイソシアネート化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗装方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性を有する塗膜を形成することができる塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車車体は、ボディを形成する金属材料とバンパーなどを形成するプラスチック材料とを有している。金属材料とプラスチック材料とでは極性が全く異なるため、金属材料向けの塗料はプラスチック材料に付着しにくく、自動車車体は、通常、金属材料とプラスチック材料とでは別々の下塗り塗料(プライマー塗料ともいう)が塗装されている。
【0003】
しかし、金属材料とプラスチック材料とを同じ下塗り塗料で塗装できれば、自動車車体の製造において低コスト化が期待できる。
【0004】
金属材料及びプラスチック材料への付着性を向上させる手法として、例えば特許文献1には、(A)スチレン・イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物に、モノオレフィンジカルボン酸及びその無水物、並びにモノオレフィンジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種の変性単量体を0.05~20重量%含むようにグラフト共重合させてなる変性共重合体、(B)ポリエステル樹脂、及び(C)有機溶媒、を含有することを特徴とするプライマー組成物が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1で開示されているプライマー組成物は、耐ガソリン性や、自動車車体外板の塗装面に小石が衝突することで塗膜が剥離するチッピング現象に対する耐性、すなわち耐チッピング性については考慮されていなかった。
【0006】
また、特許文献2には、スチレン・イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物に、モノオレフィンジカルボン酸及びその無水物、並びにモノオレフィンジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種の変性単量体をグラフト共重合させてなるグラフト共重合体(a)にモノエポキシ化合物(b)を付加した、変性グラフト共重合体(A)及び有機溶剤(B)を主成分として含有することを特徴とする塗料組成物が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献2で開示されている塗料組成物は耐ガソリン性については考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-57202号公報
【文献】特開平6-57201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれらの点を考慮してなされたものであり、金属材料及びプラスチック材料に対して優れた耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性を有する塗膜を形成できる塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、塩素化および/または非塩素化ポリオレフィン(A)、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、エポキシ樹脂(C)、ブロックポリイソシアネート化合物(D)、及び顔料(E)を含む塗料組成物を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の塗料組成物を提供するものである。
項1.
塩素化および/または非塩素化ポリオレフィン(A)、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、エポキシ樹脂(C)、ブロックポリイソシアネート化合物(D)、及び顔料(E)を含む塗料組成物。
項2.
前記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、アクリル部分とスチレン系熱可塑性エラストマー部分とを含み、
前記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の前記アクリル部分のガラス転移温度が20~100℃であり、前記アクリル部分と前記スチレン系熱可塑性エラストマー部分との固形分質量比が5:5~9:1である、項1に記載の塗料組成物。
項3.
前記エポキシ樹脂(C)が、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)である、項1又は2に記載の塗料組成物。
項4.
前記ブロックポリイソシアネート化合物(D)が活性メチレン系ブロックポリイソシアネート化合物である、項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
項5.
被塗物に、項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装し、ついでその塗面に上塗り塗料を塗装することを含む、塗装方法。
項6.
被塗物に、項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装し、その未硬化の塗面上にベースコート塗料を塗装し、さらにその未硬化の塗面上にクリヤコート塗料を塗装し硬化させることを含む、塗装方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料組成物によれば、専用のプライマーを使用せずとも金属材料に対してもプラスチック材料に対しても優れた耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性を有する塗膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の塗料組成物は、塩素化および/または非塩素化ポリオレフィン(A)、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、エポキシ樹脂(C)、ブロックポリイソシアネート化合物(D)、及び顔料(E)を含むものである。
【0015】
塩素化および/または非塩素化ポリオレフィン(A)
本発明において塩素化および/または非塩素化ポリオレフィン(A)としては、塩素化ポリオレフィン(A1)、非塩素化ポリオレフィン(A2)、アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)及びアクリル変性非塩素化ポリオレフィン(A4)が包含され、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
塩素化ポリオレフィン樹脂(A1)は、ポリオレフィンの塩素化物であって、基体となるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルブテン、イソプレン等から選ばれる少なくとも1種のオレフィン類のラジカル単独重合体又は共重合体、及び該オレフィン類と酢酸ビニル、ブタジエンなどとのラジカル共重合体が挙げられる。塩素化ポリオレフィンは、一般に、30,000~200,000程度、特に50,000~150,000程度の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0017】
また、塩素化ポリオレフィン樹脂(A1)の塩素含有率は10~40重量%程度の範囲内である。塩素含有率がこの範囲内であれば、溶剤への溶解性が低下しないのでスプレー塗装時の微粒化が十分であり、又塗膜の耐溶剤性が低下することもない。塩素含有率は、好ましくは、12~35重量%程度の範囲内である。
【0018】
塩素化ポリオレフィン樹脂(A1)としては、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体などが好ましい。
【0019】
塩素化ポリオレフィン樹脂(A1)は、酸変性されていてもよい。酸変性塩素化ポリオレフィンとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸(好ましくは不飽和モノ-もしくはジ-カルボン酸)又はこれらの不飽和カルボン酸の無水物を用いて、それ自体既知の方法に従ってグラフト重合することにより得られるものが使用でき、特に無水マレイン酸によって変性されたものが好適である。
【0020】
本発明の塗料組成物において、上記塩素化ポリオレフィン(A1)を使用する場合、その含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として5~50質量%、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは12~25質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から好適である。
【0021】
非塩素化ポリオレフィン樹脂(A2)としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテン、デセンなどの炭素数が2~10、特に2~4のオレフィン類から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合せしめることにより得られるポリオレフィン、また該ポリオレフィンをマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸(好ましくは不飽和モノ-もしくはジ-カルボン酸)又はこれらの不飽和カルボン酸の無水物を用いて、それ自体既知の方法に従ってグラフト重合することにより得られるものが使用でき、特に無水マレイン酸によって変性されたものが好適である。さらに該不飽和カルボン酸又は酸無水物変性されたポリオレフィンをアミン変性したりアルコール変性しても良い。アミンやアルコールは、それぞれ公知のものを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明のプライマー塗料組成物において、上記非塩素化ポリオレフィン樹脂(A2)を使用する場合、その含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として5~50質量%、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは12~25質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から好適である。
【0023】
アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)は、塩素化ポリオレフィンがアクリル樹脂で変性されたものであって、アクリル部分と塩素化ポリオレフィン部分とを含んでいる。
【0024】
アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)を得る方法としては、例えば、ポリオレフィンにα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリオレフィン(a1)を得た後、該酸変性ポリオレフィン(a1)を塩素化して酸変性塩素化ポリオレフィン(a2)とし、次いで、重合開始剤の存在下で、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してアクリル変性する方法や、該酸変性塩素化ポリオレフィン(a2)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、酸変性塩素化ポリオレフィン(a2)に二重結合を導入して二重結合導入塩素化ポリオレフィンを得た後、該二重結合導入塩素化ポリオレフィンに重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル変性する方法等がある。
【0025】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0026】
前記ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテン、デセンなどの炭素数が2~10、特に2~4のオレフィン類から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合せしめることにより得られる樹脂が挙げられる。
【0027】
前記α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸又はこれら不飽和カルボン酸の無水物が挙げられ、なかでも特にマレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、なかでも特に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
前記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマー;さらにスチレンなどが挙げられ、なかでも特に、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記グラフト共重合及びエステル化反応は、それ自体既知の方法で行うことができる。
【0031】
前記重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドのような過酸化物系開始剤やアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系開始剤を好ましく使用することができる。
【0032】
本発明においてアクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、アクリル部分のガラス転移温度が20~100℃、好ましくは25~90℃、さらに好ましくは30~85℃であり、アクリル部分と塩素化ポリオレフィン部分との固形分質量比が8:2~2:8、好ましくは6.5:3.5~2.5:7.5、さらに好ましくは6:4~3:7であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0033】
アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)及びアクリル変性非塩素化ポリオレフィン(A4)において、アクリル部分のガラス転移温度は前記重合性不飽和モノマーの組成によって調整することができる。
【0034】
なお、本明細書において、ガラス転移温度Tgは、下記式により算出される値である。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)-273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMERHANDBOOKFourthEdition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
【0035】
本発明の塗料組成物において、上記アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)の含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として5~50質量%、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは12~25質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0036】
アクリル変性非塩素化ポリオレフィン(A4)は、非塩素化ポリオレフィンがアクリル樹脂で変性されたものであって、アクリル部分と非塩素化ポリオレフィン部分とを含んでいる。
【0037】
アクリル変性非塩素化ポリオレフィン(A4)を得る方法としては、例えば、ポリオレフィンにα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物をグラフト共重合して酸変性ポリオレフィン(a1)を得た後、重合開始剤の存在下で、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してアクリル変性する方法や、該酸変性ポリオレフィン(a1)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、酸変性ポリオレフィン(a1)に二重結合を導入して二重結合導入ポリオレフィンを得た後、該二重結合導入ポリオレフィンに重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル変性する方法等がある。
【0038】
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル及び前記重合性不飽和モノマーとしては、前記アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)の項目で挙げたものを使用することができる。
【0039】
前記グラフト共重合及びエステル化反応は、前記アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)の項目で記した方法で行うことができる。
【0040】
本発明においてアクリル変性非素化ポリオレフィン(A4)は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、アクリル部分のガラス転移温度が20~100℃、好ましくは25~90℃、さらに好ましくは30~85℃であり、アクリル部分と非塩素化ポリオレフィン部分との固形分質量比が7:3~2:8、好ましくは6.5:3.5~2.5:7.5、さらに好ましくは6:4~3:7であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0041】
本発明の塗料組成物において、上記アクリル変性非素化ポリオレフィン(A4)の含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として5~50質量%、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは12~25質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0042】
アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)
本発明においてアクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)としては、既知のものを制限なく使用できるが、
アクリル部分とスチレン系熱可塑性エラストマー部分とを含み、
前記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の前記アクリル部分のガラス転移温度が20~100℃、好ましくは25~90℃、さらに好ましくは30~80℃であり、前記アクリル部分と前記スチレン系熱可塑性エラストマー部分との固形分質量比が1:9~9:1、好ましくは5:5~8.7:1.3、さらに好ましくは7:3~8.5:1.5であることが好適である。
【0043】
アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を得る方法としては例えば、
[I]スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)から水素引き抜き反応によりアクリル変性する方法;
[II]スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)にα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(b2)をグラフト共重合して酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)を得た後、重合開始剤の存在下で、重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル変性する方法;
[III]該酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化し、酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)に二重結合を導入して二重結合導入スチレン系熱可塑性エラストマー(b4)を得た後、該二重結合導入スチレン系熱可塑性エラストマー(b4)に重合性不飽和モノマーをグラフト共重合してアクリル変性する方法;
等がある。
【0044】
上記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)としては、スチレンとオレフィン及び/又は共役ジエンとのブロック及びランダム共重合体:たとえばスチレン-オレフィン及び/又は共役ジエンブロック共重合体(スチレン-オレフィン及び/又は共役ジエンのジブロック共重合体、トリブロック共重合体など;スチレン-オレフィン及び/又は共役ジエン-スチレンのトリブロック共重合体、テトラブロック共重合体など)、スチレン-共役ジエンランダム共重合体、及びこれらの水素添加物、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0046】
上記共重合体を構成するオレフィンとしては、炭素数2~12又はそれ以上のもの、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等のC4~C20のα-オレフィンの単独又は2種以上の併用系、また、共役ジエンとしては、C4~C20のもの、例えばブタジエン、イソプレン、及びこれらの併用系が挙げられる。
【0047】
スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)の具体例としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などのスチレンとオレフィンとのブロック及びランダム共重合体;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエンのランダム共重合体などのスチレンと共役ジエンとのブロック及びランダム共重合体;及びこれらの共重合体の水素添加物〔例えば水添SEBS、水添SBS、水添SIS〕;並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。上記スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)は部分的に水素添加されていても完全に水素添加されていてもよい。
【0048】
なかでも特に、本発明では、スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)としては、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、特に、水添SEBSが好ましい。
【0049】
スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)の水素添加物を調製する方法は、特に制限されず、公知の方法から適宜選択することができるが、例えば、いわゆる水添触媒の存在下、水素ガスを導入する方法などが挙げられる。
【0050】
スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)としては、共重合体の質量に基づいて、そのスチレンの含有量が10~50質量%、特に15~45質量%のものが好ましい。
【0051】
また、その重量平均分子量〔ゲルパミエーションクロマトグラフィーによる、ポリスチレン換算値〕(以下、Mwと略記)が5,000~700,000の範囲が好ましく、さらには5,000~300,000、とくに10,000~200,000が好ましい。
【0052】
α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物(b2)は、通常、グラフト重合によりスチレン系熱可塑性エラストマー(b1)に付加される。α,β-不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物、α,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステル化物、などが挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステル化物としては、具体的には例えば、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル等のマレイン酸ジアルキルエステル;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル等のマレイン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物(b2)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
なかでも特に、本発明では、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物(b2)としては、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0054】
上記グラフト重合に用いるα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物(b2)の量は、スチレン系熱可塑性エラストマー(b1)の質量に基づいて0.5~20質量%、特に1~15質量%であることが好ましい。
【0055】
酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、酸価が1~20mgCHONa/g、好ましくは3~18mgCHONa/g、さらに好ましくは5~15mgCH3ONa/gであることが好適である。
【0056】
酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、酸基を有するスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体であることが好ましい。
【0057】
酸基を有するスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体のスチレン/(エチレン+ブチレン)比は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、5/95~50/50、好ましくは7/93~45/55、さらに好ましくは10/90~40/60であることが好適である。
【0058】
上記酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)に反応させる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルや重合性不飽和モノマーは、前記アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A3)の項目で挙げたものを使用することができる。
【0059】
本発明の塗料組成物において、上記アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として3~50質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは7~20質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0060】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)以外のスチレン系熱可塑性エラストマーを併用することができる。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとしては例えば、前記酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)等が挙げられる。
【0061】
酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)の市販品としては、例えば、旭化成社製の商品名「タフテックM1943」、「タフテックM1913」、「タフテック、M1911」、クレイトンポリマージャパン社製の商品名「KRATON FG1901G」、「KRATON FG1924G」等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明の塗料組成物において、上記酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b3)を使用する場合の成分(b3)の含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として15~60質量%、好ましくは20~55質量%、さらに好ましくは25~50質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0063】
エポキシ樹脂(C)
本発明において、エポキシ樹脂(C)としては、既知のものを制限なく用いることができる。
【0064】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等の脂肪族型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1);等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
また、上記エポキシ樹脂(C)は、形成される塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、エポキシ当量が110~500、好ましくは130~350、さらに好ましくは150~250の範囲内であることが好適である。
【0066】
また、該エポキシ樹脂(C)は、形成される塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、分子量が170~2,800、好ましくは200~800の範囲内であることが好適である。また、該エポキシ樹脂は、形成される塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、水酸基を有することが好ましい。
【0067】
なかでも特に得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点からポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)を使用することが好ましい。
【0068】
ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)は、分子主鎖中に、ビスフェノール骨格を含む有機基とポリサルファイド骨格(-R-S-S-)とを有するビスフェノール型エポキシ樹脂である。
【0069】
上記ビスフェノール骨格を含む有機基としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールF型エポキシ樹脂等を挙げることができる。なかでも特に得られる塗膜の耐ガソリン性及び接着性の点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適である。
【0070】
ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)は、数平均分子量が110~4,500、好ましくは900~3,500の範囲内であって、エポキシ当量が110~500g/当量、好ましくは130~400g/当量、さらに好ましくは150~350g/当量の範囲内であることが得られる塗膜の耐ガソリン性及び接着性の点から好ましい。
【0071】
ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)としては、25℃における粘度が3000ポイズ以下、好ましくは100~300ポイズのものが、取り扱いのし易さの点から好ましい。
【0072】
ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)の市販品としては、「FLEP-10」「FLEP-50」「FLEP-60」「FLEP-65」「FLEP-80」「FLEP-120X」「「FLEP-125X」「FLEP-410C」「FVD-103X」「FVD-105X」「FVD-423C」(いずれも商品名、東レファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0073】
上記ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)以外のエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER827」、「jER828」、「jER828EL」、「jER828XA」、「jER834」(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、「EPICLON840」、「EPICLON840-S」、「EPICLON850」、「EPICLON850-S」、「EPICLON850-CRP」、「EPICLON850-LC」(以上、DIC社製)、「エポトートYD-127」、「エポトートYD-128」(以上、東都化成社製)、「リカレジンBPO-20E」、「リカレジンBEO-60E」(以上、新日本理化社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;「jER806」、「jER807」(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、「EPICLON830」、「EPICLON830-S」、「EPICLON835」(以上、DIC社製)、「エポトートYDF-170」(東都化成社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;「jER152」(ジャパンエポキシレジン社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;「jERYX8000」、「jERYX8034」(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、「エポトートST-3000」(東都化成社製)、「リカレジンHBE-100」(新日本理化社製)「デナコールEX-252」(以上、ナガセケムテックス社製)、「SR-HBA」(阪元薬品工業社製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;「YED205」、「YED216M」、「YED216D」(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、「エポトートYH-300」、「エポトートYH-301」、「エポトートYH-315」、「エポトートYH-324」、「エポトートYH-325」(以上、東都化成社製)、「デナコールEX-211」、「デナコールEX-212」、「デナコールEX-212L」、「デナコールEX-214L」、「デナコールEX-216L」、「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」、「デナコールEX-321」、「デナコールEX-321L」、「デナコールEX-411」、「デナコールEX-421」、「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」、「デナコールEX-611」、「デナコールEX-612」、「デナコールEX-614」、「デナコールEX-614B」、「デナコールEX-622」、「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」、「デナコールEX-850」、「デナコールEX-850L」、「デナコールEX-851」、「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」「デナコールEX-911」、「デナコールEX-941」、「デナコールEX-920」、「デナコールEX-931」(以上、ナガセケムテックス社製)、「SR-NPG」、「SR-16H」、「SR-16HL」、「SR-TMP」、「SR-PG」、「SR-TPG」、「SR-4PG」、「SR-2EG」、「SR-8EG」、「SR-8EGS」、「SR-GLG」、「SR-DGE」、「SR-DGE」、「SR-4GL」、「SR-4GLS」、「SR-SEP」(以上、阪元薬品工業社製)等の脂肪族型エポキシ樹脂、等が挙げられる。
【0074】
本発明の塗料組成物において、上記エポキシ樹脂(C)の含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として1~30質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは7~22質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0075】
本発明の塗料組成物において、上記ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(C1)を使用する場合、その含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として1~30質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは7~22質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0076】
ブロックポリイソシアネート化合物(D)
本発明において、ブロックポリイソシアネート化合物(D)としては既知のものを制限なく使用することができる。
【0077】
ブロックポリイソシアネート化合物(D)は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたポリイソシアネート化合物である。
【0078】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート並びにこれらのポリイソシアネートの誘導体等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0079】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート及び2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート、並びに、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン及び2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネート、などを挙げることができる。
【0080】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-若しくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)又はその混合物、メチレンビス(1,4-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)及びノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、並びに、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン及び6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネート、などを挙げることができる。
【0081】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(1,4-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン及び1,3-若しくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート並びに1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0082】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-若しくは2,6-トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン及び2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、並びに、4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネート、などを挙げることができる。
【0083】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、前記ポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDIなどを挙げることができる。
【0084】
上記ポリイソシアネート化合物としては、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、脂環族ジイソシアネート及び該脂環族ジイソシアネートの誘導体が好ましく、脂環族ジイソシアネートがより好ましい。
【0085】
ブロックポリイソシアネート化合物(D)は、例えば上記のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加させることによって得ることができる。そしてブロックポリイソシアネート化合物は、常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約90~約200℃)に加熱した際には、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル系;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル系;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニルなどのマロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸エステル、アセチルアセトンなどの、活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどのアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5-ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系、等のブロック剤が挙げられる。低温硬化性や得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及びガソリン性などの観点から、これらのうち、特に、活性メチレン系のブロック剤でブロックされたポリイソシアネートが好適である。
【0086】
本発明の塗料組成物において、上記ブロックポリイソシアネート化合物(D)の含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分質量を基準として1~20質量%、好ましくは5~15質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0087】
顔料(E)
本発明において、顔料(E)としては、既知のものを制限なく使用することができるが、例えば、着色顔料、体質顔料、導電性顔料等を使用することができる。
【0088】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄、ハンザエロー、ピグメントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、アンバー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ピグメントグリーン、ナフトールグリーン、アルミペーストなどが挙げられ、これらの着色顔料の中でも酸化チタン、カーボンブラックが特に好ましい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0089】
本発明の塗料組成物において、上記酸化チタンの含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分質量を基準として100~150質量%、好ましくは110~140質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0090】
体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0091】
導電性顔料としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状のいずれの形状のものでも使用することができる。具体的には、例えば、導電性カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイルなどの導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウムなどの金属粉が挙げられる。さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド;カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫などを被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫やアンチモンドープ酸化錫などの導電性金属酸化物を被覆した顔料;表面に酸化錫及びリンを含む酸化チタン粒子からなる導電性顔料、などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。これらのうち特に導電性カーボンを好適に使用することができる。
【0092】
本発明の塗料組成物において、上記導電性カーボンの含有量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分質量を基準として1~10質量%、好ましくは2~7質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0093】
その他の成分
本発明の塗料組成物は、前記塩素化及び/又は非塩素化ポリオレフィン(A)、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、エポキシ樹脂(C)、ブロックポリイソシアネート化合物(D)、及び顔料(E)を必須成分とするものであり、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂及びポリカーボネート樹脂等の樹脂成分を含有することができる。
【0094】
得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の観点から、上記ポリエステル樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂であることが好適であり、上記アクリル樹脂は水酸基含有アクリル樹脂であることが好適である。
【0095】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとをそれ自体既知の方法で、水酸基過剰でエステル化反応せしめることによって得ることができる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ピロメリット酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ハイミック酸、コハク酸、ヘット酸、及びこれらの無水物などが挙げられる。多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。水酸基の導入は、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを併用することによって行なうことができる。また、ポリエステル樹脂として、大豆油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸などの脂肪酸などで変性された脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用できる。また、ポリエステル樹脂は、必要に応じて、ブチルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどのエポキシ化合物で変性されていてもよい。
【0096】
水酸基含有ポリエテル樹脂は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から、水酸基価が10~150mgKOH/g、特に50~85mgKOH/gの範囲内、酸価が50mgKOH/g以下、特に1~30mgKOH/gの範囲内、及び数平均分子量が1,500~100,000、特に2,000~30,000の範囲内のものであることが適当である。
【0097】
本発明の塗料組成物において、水酸基含有ポリエステル樹脂を使用する場合のその使用量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として5~15質量%、好ましくは7~20質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0098】
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー、及び必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーを、既知の重合方法、例えば溶液重合法等により重合して得ることができる。
【0099】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、水酸基及び重合性不飽和基を有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸と炭素数2~10のジオールとのモノエステル化物、並びに、これら水酸基と(メタ)アクリロイル基と重合性不飽和基とを有する化合物のε-カプロラクトン変性体等を挙げることができる。
【0100】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メチ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メチ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸ステアリル等の、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のモノアルコールとのモノエステル化物等を挙げることができる。
【0101】
その他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー以外の、重合性不飽和基を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。
【0102】
水酸基含有アクリル樹脂は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から、水酸基価が10~100mgKOH/g、特に50~90mgKOH/gの範囲内、酸価が0~50mgKOH/g、特に2~30mgKOH/gの範囲内、重量平均分子量が2,000~100,000、特に3,000~50,000の範囲内のものであることが適当である。
【0103】
本発明の塗料組成物において、水酸基含有アクリル樹脂を使用する場合のその使用量は、塗料組成物中の合計樹脂固形分量を基準として5~20質量%、好ましくは7~15質量%であることが、得られる塗膜の得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性の点から好適である。
【0104】
フェノール樹脂及びポリカーボネート樹脂としては、公知のものを使用することができる。
【0105】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、ブロックポリイソシアネート化合物(D)以外の硬化剤を含有することができる。このような硬化剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0106】
ポリイソシアネート化合物としては、前記ブロックポリイソシアネート化合物(D)の欄で列挙したポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0107】
ポリイソシアネート化合物の代表的な市販品の例としては「バーノックD-750、-800、DN-950、-970もしくは15-455」(以上DIC株式会社製、商品名、BURNOCK\バ-ノツク又はバーノックは登録商標)、「デスモジュールL、N、HL、もしくはN3390」(バイエルアクチエンゲゼルシヤフト社製、商品名、デスモジュールは登録商標)、「スミジュールN3300、N3390EA」(住友化学社製、商品名、SUMIDUR\スミジュ-ルは登録商標)「タケネートD-102、-202、-110もしくは-123N」(三井化学社製、商品名、タケネ-ト\TAKENATEは登録商標)、「コロネートEH、L、HLもしくは203」(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名、コロネ-トは登録商標)又は「デュラネート24A-90CX」(旭化成株式会社製、商品名、デュラネ-ト\DURANATEは登録商標)などが挙げられる。
【0108】
メラミン樹脂としては、特に、メチル、エチル、n-ブチル、イソブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシルなどのアルキル基でエーテル化されたアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。これらのメラミン樹脂はさらにメチロール基、イミノ基などを有していてもよい。メラミン樹脂は、通常、500~5,000、特に800~3,000の範囲内の数平均分子量を有することが望ましい。
【0109】
上記メラミン樹脂の市販品としては、例えばブチル化メラミン樹脂(三井東圧社製、ユーバン20SE-60、ユーバン225、大日本インキ製スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821など)、メチル化メラミン樹脂(三井サイアナミド株式会社製サイメル303、住友化学製スミマールM-100、スミマールM-40Sなど)、メチルエーテル化メラミン樹脂(三井サイアナミド株式会社製サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、三和ケミカル製ニカラックMS17、ニカラックMS15、サイモント社製レジミン741、住友化学製スミマールM55など)、メチル化、ブチル化混合エーテル化メラミン樹脂(三井サイアナミド株式会社製サイメル253、サイメル202、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130、住友化学製スミマールM66Bなど)、メチル化、イソブチル化混合エーテル化メラミン樹脂(三井サイアナミド株式会社製サイメルXV805、三和ケミカル製ニカラックMS95など)などのメラミン樹脂を用いることができる。
【0110】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、有機溶剤、シランカップリング剤、硬化触媒、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、造膜助剤などの塗料用添加剤などを含有することができる。
【0111】
有機溶剤としては、例えば、前述の樹脂成分を混合して溶解乃至分散できるものであれば特に制限されず、例えば脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の溶剤が挙げられる。
【0112】
シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリアルコキシシランなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0113】
硬化触媒としては、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライド等の4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類等を挙げることができる。
【0114】
被塗物
本発明の塗料組成物を適用し得る被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができるが、金属材料及びプラスチック材料のどちらにも優れた付着性を有する本発明の塗料組成物の特性を生かす点から、金属材料及びプラスチック材料を含有する被塗物であることが好ましい。
【0115】
金属材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、及び亜鉛合金(例えば、Zn-Al、Zn-Ni及びZn-Fe等)メッキ鋼等が挙げられる。
【0116】
上記金属材料はその表面に、リン酸塩処理、クロメート処理及び複合酸化物処理等の表面処理を施したものであってもよく、さらにその上に下塗り塗料による下塗り塗膜を形成したものであってもよい。下塗り塗料としては例えば電着塗料が挙げられ、そのなかでもカチオン性電着塗料が好ましい。
【0117】
プラスチック材料としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2~10のオレフィン類の1種もしくは2種以上を(共)重合せしめてなるポリオレフィンが特に好適であるが、それ以外に、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドなども挙げられる。これらプラスチック材料による成型品としては、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外板部;家庭電化製品の外板部などが挙げられる。これらのプラスチック成型品には、本発明の塗料組成物の塗装に先立ち、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行なっておくことができる。また、本発明の塗料組成物は、これらのプラスチック材料を含む成形加工用フィルムや成形加工用シートなどの成形加工材料に対しても、好適に使用することができる。
【0118】
本発明の塗料組成物の塗装は、前記被塗物に、乾燥膜厚で通常1~20μm、好ましくは3~15μmの範囲内となるように、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬塗装、刷毛などを用いて行なうことが好適である。該組成物の塗装後、得られる塗膜面を、必要に応じて、室温で30秒~60分間程度セッティングすることができ、あるいは約60~約140℃、好ましくは約70~約120℃の温度で20~40分間程度加熱して硬化させることができる。
【0119】
本発明では、本発明の塗料組成物による塗膜面に上塗り塗料を塗装することができる。上塗り塗料としては、着色塗料やクリヤー塗料をそれぞれ単独で用いて塗装してもよいし、該着色塗料をベースコート塗料として用いて、ベースコート塗料及びクリヤー塗料を順次塗装することもできる。上記ベースコート塗料によるベースコート塗膜は1層でも2層以上でもよい。ベースコート塗膜が2層以上である場合、同種のベースコート塗料を2回以上塗装してもよいし、異なるベースコート塗料を塗り重ねてもよい。また、上記本発明の塗料組成物による塗膜上に、着色ベースコート塗膜層として、例えば、白色ベース塗料と干渉パール色ベース塗料とを順次塗装して複層膜を形成してもよい。
【0120】
上記着色塗料としては、それ自体既知のものを使用することができ、通常、有機溶剤及び/又は水を主たる溶媒とし、着色顔料、光輝顔料、染料などの着色成分と、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分を含有するものを用いることができる。
【0121】
上記着色塗料に使用される基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような反応性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの樹脂を挙げることができる。また、架橋剤としては、上記官能基と反応しうる反応性官能基をもつ、メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸などを挙げることができる。
【0122】
上記着色塗料は、必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス、防腐剤などの塗料用添加剤を含有することができる。
【0123】
上記着色塗料は、前記の未硬化の又は硬化された本発明塗料組成物による塗膜上に、乾燥膜厚で、通常5~50μm、好ましくは5~30μm、さらに好ましくは10~20μmの範囲内となるように塗装し、得られる塗膜面を、必要に応じて室温で1~60分間程度セッティングし、又は約40~約80℃の温度で1~60分間程度予備加熱することができ、あるいは約60~約140℃、好ましくは約80~約120℃の温度で20~40分間程度加熱して硬化させることができる。本発明では、特に、着色ベース塗料を塗装後に硬化させることなく、次いでクリヤー塗装を行なうことが好適である。
【0124】
上記クリヤー塗料としては、例えば、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分と、有機溶剤や水などを含有し、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤を配合してなる有機溶剤系或いは水系の熱硬化性塗料であって、形成されるクリヤー塗膜を通して下層塗膜を視認することができる程度の透明性を有するものを用いることができる。
【0125】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの少なくとも1種の反応性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などの樹脂が挙げられ、特に、水酸基含有アクリル樹脂が好適である。上記架橋剤としては、これらの官能基と反応しうる反応性官能基を有する、メラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物などが挙げられ、特に、ポリイソシアネート化合物が好適である。
【0126】
上記クリヤー塗料の塗装は、未硬化の又は硬化された着色ベース塗膜上に、乾燥膜厚で、通常10~65μm、好ましくは20~60μmの範囲内となるように塗装し、得られる塗膜面を、必要に応じて、室温で1~60分間程度セッティングし、又は約40~約80℃の温度で1~60分間程度予備加熱した後、約60~約140℃、好ましくは約70~約120℃の温度で20~40分間程度加熱して硬化させることにより行うことができる。
【0127】
本発明の塗料組成物によれば、金属材料及びプラスチック材料に対して、優れた耐チッピング性、付着性、及び耐ガソリン性を有する塗膜を形成できる。このような優れた塗膜を形成できる理由としては、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、金属材料への付着に寄与する成分とプラスチック材料への付着に寄与する成分との相溶性を向上させる成分として寄与することが考えられる。また、アクリル変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B)がゴム弾性を有するため、得られる塗膜が耐チッピング性に優れるものと推察される。
【0128】
本発明の塗料組成物は、上記のごとく金属材料及びプラスチック材料に対して優れた付着性を有するため、耐チッピング性、及び耐ガソリン性に優れる塗膜が得られるものと推察される。
【実施例
【0129】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0130】
塗料組成物の作製
実施例1
アクリル変性塩素化ポリオレフィン(A-1)(塩素含有率17%で分子量11万のマレイン酸変性塩素化ポリプロピレンにメタクリル酸メチルなどをグラフトさせて得られたアクリル変性塩素化ポリプロピレンのトルエン溶液、アクリル部分のTg:75℃、アクリル部分/ポリオレフィン部分の比:50/50)30部(固形分)、「LGC-010」(商品名、東レファインケミカル社製、アクリル変性SEBS、アクリル部分のTg:40℃、アクリル部分/SEBS部分の比:80/20、SEBS部分のスチレン/(エチレン+ブチレン)重量比=20/80)50部(固形分)、「FLEP-50」(商品名、東レファインケミカル社製、ポリサルファイド変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:320、粘度:260Pa・s)10部(固形分)、「デュラネートMF-K60X」(商品名、旭化成社製、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物)10部(固形分)、「ケッチェンブラックEC300J」(商品名、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、導電性カーボンブラック顔料)5部(固形分)、及び「タイピュアR-902+」(商品名、Chemours社製、酸化チタン)130部(固形分)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.5部の混合物をキシレン/トルエン=1/1の混合溶剤に混合し、20℃においてフォードカップ#4を用いて測定した粘度が13秒となる塗料組成物(X-1)を得た。
【0131】
実施例2~16及び比較例1~6
実施例1において、配合組成を表1に示すとおりとする以外は実施例1と同様に操作して、各塗料組成物(X-2)~(X-22)を得た。
【0132】
尚、表1の配合は固形分表示であり、表1中の各成分は下記のとおりである。
【0133】
「NP-3003」商品名、東洋紡社製、アクリル変性非塩素化ポリオレフィン、アクリル部分のTg:85℃、アクリル部分/ポリオレフィン部分の比:70/30、固形分20%、
「スーパークロン851L」商品名、日本製紙社製、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン、塩素化率19%、固形分20%、
「ユニストールP-902」(商品名、三井化学社製、水酸基含有非塩素化ポリオレフィン、Mn5000以上、水酸基価50mgKOH/g、固形分22%、
「KRATON FG1924G」商品名、クレイトン社製、酸変性SEBS、酸価5mgCH3ONa/g、スチレン/(エチレン+ブチレン)重量比=13/87、
「タフテックM1943」商品名、旭化成社製、酸変性SEBS、酸価10mgCH3ONa/g、スチレン/(エチレン+ブチレン)重量比=20/80、
「タフテックMP10」商品名、旭化成社製、アミン変性SEBS、スチレン/(エチレン+ブチレン)重量比=30/70、
「タフテックH1052」商品名、旭化成社製、水添SEBS、スチレン/(エチレン+ブチレン)=20/80、
「アサプレンT-437」商品名、旭化成社製、SBS、スチレン/ブタジエン重量比=30/70、
「デナコールEX-252」商品名、ナガセケムテックス社製、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
「バイヒジュールBL5235」商品名、住化コベストロウレタン社製、オキシムブロックポリイソシアネート化合物。
【0134】
試験塗板の作製
試験板1
プラスチック材料として、「TSOP-1(TC-6)」(商品名、日本ポリケム社製、350mm×10mm×2mm)を用意した。そして、プラスチック材料の表面を、イソプロピルアルコールを含ませたガーゼで拭いて脱脂処理した。
【0135】
上記試験板に、上記で作製した塗料組成物(X-1)~(X-22)を乾燥膜厚10μmになるようにスプレー塗装し、室温で3分間セッティングしてから、着色ベース塗料として、「ソフレックス420」(商品名、関西ペイント社製、溶剤系上塗ベースコート塗料、シルバー塗色)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。次に、クリヤ塗料として「ソフレックス#500クリヤ」(関西ペイント(株)製、商品名、アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤ塗料)を乾燥膜厚30μmになるように静電塗装し、室温で5分間放置してから、80℃のオーブンで30分間加熱して複層塗膜が形成された試験塗板を得た。その複層塗膜にて、以下に記す各種塗膜性能試験を行った。
【0136】
試験板2
プラスチック材料として、「TSOP-1(TC-6)」(商品名、日本ポリケム社製、350mm×10mm×2mm)を用意した。そして、プラスチック材料の表面を、イソプロピルアルコールを含ませたガーゼで拭いて脱脂処理した。
【0137】
上記試験板に、上記で作製した塗料組成物(X-1)~(X-22)を乾燥膜厚10μmになるようにスプレー塗装し、室温で3分間セッティングしてから、「ZU-10」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂・メラミン樹脂系有機溶剤型中塗り塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。
【0138】
室温で3分間セッティングしてから、次いで着色ベース塗料として、「ソフレックス420」(商品名、関西ペイント社製、溶剤系上塗ベースコート塗料、シルバー塗色)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。
【0139】
次に、クリヤ塗料として「ソフレックス#500クリヤ」(関西ペイント(株)製、商品名、アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤ塗料)を乾燥膜厚30μmになるように静電塗装し、室温で5分間放置してから、80℃のオーブンで30分間加熱して複層塗膜が形成された試験塗板を得た。その複層塗膜にて、以下に記す各種塗膜性能試験を行った。
【0140】
試験板3
金属材料として、リン酸亜鉛処理された冷延鋼板(450mm×300mm×0.8mm)を用意し、これに熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT-10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。
【0141】
上記試験板に、上記で作製した塗料組成物(X-1)~(X-22)を乾燥膜厚10μmになるようにスプレー塗装し、室温で3分間セッティングしてから、「ZU-10」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂・メラミン樹脂系有機溶剤型中塗り塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。次いで「ソフレックス420」(商品名、関西ペイント社製、溶剤系上塗ベースコート塗料、シルバー塗色)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。次に、クリヤ塗料として「ソフレックス#500クリヤ」(関西ペイント(株)製、商品名、アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤ塗料)を乾燥膜厚30μmになるように静電塗装し、室温で5分間放置してから、80℃のオーブンで30分間加熱して複層
塗膜が形成された試験塗板を得た。その複層塗膜にて、以下に記す各種塗膜性能試験を行った。
【0142】
塗膜性能試験
耐チッピング性:飛石試験機(商品名「Q-G-Rグラベロメーター」(Qパネル社製)の試片保持台に試験塗板を設置し、-20℃において、試験板から30cm離れた所から480~520kPaの圧縮空気により、粒度6号の花崗岩砕石100gを90度の角度で試験板に衝突させた。その後、得られた試験板を水洗して乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン株式会社製)を貼着した。そして、上記テープを剥離し、電着面及び素地の部材が露出している面積(剥離面積と略記する)をもとに評価した。
A:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が3%未満
B:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が3~6%未満
C:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が6~10%未満
D:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が10%以上。
【0143】
耐水付着性:試験塗板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験塗板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
B:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
C:ゴバン目塗膜の残存数が99~90個である。
D:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0144】
耐湿付着性:試験塗板を室温50℃、相対湿度95%の恒温室に240時間静置し、次いで、20℃で12時間静置した後、試験塗板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐湿付着性を評価した。
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
B:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
C:ゴバン目塗膜の残存数が99~90個である。
D:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0145】
耐ガソリン性: 試験板を日石シルバーガソリンに20℃で1時間浸漬した後の塗膜外観を次の基準で評価した。
A:全く異常がない、
B:直径1mm未満のふくれ、又は剥がれが生じている、
C:直径1mm以上2mm未満のふくれ、又は剥がれが生じている
D:直径2mm以上のふくれ、剥がれが生じている。
【0146】
塗料安定性:上記で作成した塗料組成物を100mLのガラス容器に入れ、35℃にて35日間容器中に密閉して貯蔵した。その後の状態を以下の基準で判断した。
A:貯蔵前と変化なく良好である
B:やや層分離がみられるが、撹拌すればもとの状態に戻る
C:完全に層分離がみられるが攪拌すればもとの状態に戻る。
D:完全に層分離がみられ、塗料として使用できない。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】