(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】インク及びマーカーを穏やかに除去するための洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 1/83 20060101AFI20220524BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20220524BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20220524BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20220524BHJP
C11D 3/60 20060101ALI20220524BHJP
C23G 1/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C11D1/83
C11D1/72
C11D3/20
C11D3/43
C11D3/60
C23G1/00
(21)【出願番号】P 2016573890
(86)(22)【出願日】2015-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2015063418
(87)【国際公開番号】W WO2015193280
(87)【国際公開日】2015-12-23
【審査請求日】2018-06-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】102014211584.1
(32)【優先日】2014-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500399116
【氏名又は名称】ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D-60487 Frankfurt am Main,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ボンス
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー ライン
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ヴェアナー
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム コルネリ
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】木村 敏康
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表平5-500675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮液又は洗浄浴溶液の形態でインク及びマーカーを金属表面から穏やかに除去するための洗浄剤において、少なくとも1種の非水混和性溶剤を4~200g/Lの量で、少なくとも1種のアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を8~300g/Lの量で、少なくとも1種の錯化剤を1~100g/Lの量で、少なくとも1種のバッファ剤を1~100g/Lの量で、及び少なくとも1種の水混和性溶剤を4~200g/Lの量で水の中に含有し、
ここで、前記非水混和性溶剤は、C
2~C
8アルコールの乳酸エステルから成る群から選択される非水混和性溶剤を少なくとも1種含有し、
前記アニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤は、6~14の範囲にあるHLB値を有する、水中油型で乳化する界面活性剤を少なくとも1種含有し、
前記バッファ剤は、グリシン及び/又はモノエタノールアミンであり、
前記水混和性溶剤は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび/またはネオペンチルグリコールのみから成る、
ことを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄剤において、HLB<13である値を有する界面活性剤を少なくとも1種含有することを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗浄剤において、腐食防止剤を含有し、かつ/又は殺生物剤、消泡剤、及び/又は酸洗い抑制剤から成る群から選択されるさらなる添加剤を少なくとも1種含有することを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の洗浄剤において、洗浄浴液における全作用物質の合計含分が10~200g/Lの範囲にあることを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の洗浄剤において、洗浄浴液として水により1:1~1:20の比に希釈されることを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の洗浄剤において、金属基材の損失が0.1μm/h未満であることを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の洗浄剤において、洗浄浴液が、油により、油脂、石鹸、粒子状の汚れ、及び/又はアニオン性有機化合物から成る群からのさらなる無極性有機化合物により汚染されていてよいことを特徴とする前記洗浄剤。
【請求項8】
浸漬洗浄法、噴霧洗浄法、及び/又はブラシ洗浄法において使用可能である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の洗浄剤。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の洗浄剤であって、鉄、鋼、特殊鋼、亜鉛メッキ鋼、金属で被覆した鋼、アルミニウム、マグネシウム、チタン、及び/又はそれらの合金からの金属表面を有する基材を洗浄するための前記洗浄剤。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の洗浄剤であって、板金の形態、部材の形態、及び/又は様々な基材からの複合部材の形態にある基材を洗浄するための前記洗浄剤。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の洗浄剤の使用であって、リン酸塩処理前に、及び/又は陽極酸化処理前に、シラン/シロキサン/ポリシロキサン、チタン化合物/ジルコニウム化合物、酸化鉄/酸化コバルト、クロム酸塩、シュウ酸塩、ホスホン酸塩/リン酸塩、及び/又は有機ポリマー/有機コポリマーをベースとする処理組成物若しくは前処理組成物により被覆する前に、及び/又は実質的に有機性のポリマー組成物をベースとする少なくとも1種の組成物により、溶接プライマーにより、ガルバニック被覆により、エナメル被覆により、CVD被覆により、PVD被覆により、及び/又は一時的な防食被覆により被覆する前に、洗浄された基材を作製するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク(例えば、これは圧延機において目印を付けるために使用される)、並びにマーカー(例えば、これは製造時に一時的な目印を付けるために使用される)を穏やかに除去するための洗浄剤に関する。
【0002】
インク及びマーカーはしばしば、高揮発性溶剤を用いて手で洗浄することによって、本来の自動式水洗浄前に表面から除去される。このプロセス工程の欠点は、発火性が高い物質の放出によるリスクの増加と適用時の人的被害の危険である。それに加え、これらの溶剤を使用することで、いわゆる「VOC」(volatile organic compound[s]よりVOC及び/又はVOCs)による環境負荷が起こる。さらに、従来的に使用されている洗浄剤においては、インク及びマーカーを除去する際に金属基材の大幅な損失が生じる。
【0003】
本発明の課題は、インク及びマーカーを金属表面から穏やかに除去することを可能にする洗浄剤を提供することである。本発明の意味において、「穏やかな除去」とは金属表面を有する基材を「損失なく」処理することと理解され、ここで金属基材の損失は0.1μm/h未満である。
【0004】
洗浄剤はさらに、洗浄浴液として使用される際に、別個の/手による前洗浄の機能を担うことが望まれる。
【0005】
本発明による洗浄剤はさらに、場合によっては無極性有機汚染物(例えば油)、又は/及び主に若しくは完全に有機性のその他汚染物(例えば、油脂、石鹸)、又は/及びさらなる金属加工助剤(例えば、アニオン性有機化合物及び粒子状の汚れを含む絞り加工助剤(Ziehhilfsmittel))により汚染された金属表面の洗浄に適していることが望まれる。
【0006】
本発明によると、上記課題は、濃縮液又は洗浄浴溶液の形態でインク及びマーカーを金属表面から穏やかに除去することを可能にする洗浄剤により解決され、この洗浄剤は、少なくとも1種の非水混和性溶剤を4~200g/Lの量で、少なくとも1種のアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を8~300g/Lの量で、少なくとも1種の錯化剤を1~100g/Lの量で、少なくとも1種のバッファ剤を1~100g/Lの量で、及び少なくとも1種の水混和性溶剤を4~200g/Lの量で水の中に含有している。非水溶性溶剤成分によって、水によるプロセスが一体化され、安定化される。使用される溶剤成分は高沸点であるため、適用温度において気化することはない。洗浄剤を適用する際に、金属基材における損失速度が0.1μm/h未満であると判明した。
【0007】
好適には、洗浄剤は、エステル化合物及び/又はエーテル化合物の群からの非水混和性溶剤を少なくとも1種含有するものである。これらは、ヒドロキシカルボン酸エステル及びグリコールモノエーテルから成る群から選択されている。極めて特に好ましいのは、乳酸エステル(C2~C8アルコールでエステル化されたもの)である。
【0008】
好適には、洗浄剤はさらに、非イオン性界面活性剤からの、及び/又はアニオン性界面活性剤からの、水中油型で乳化する界面活性剤を少なくとも1種含有するものである。この界面活性剤は、好適には5~16の範囲にあるHLB値、極めて特に好ましくは6~14のHLB値を有し、殊にHLB<13である値を含む。HLB値(hydrophilic-lipophilic balance:親水親油バランス)とは、W.C.Griffinによる、主に非イオン性である界面活性剤の親水性割合と親油性割合との比率と理解される。
【0009】
pH値安定化のための成分を少なくとも1種含有する洗浄剤が特に好ましい。本発明による洗浄剤はホウ酸塩(ケイ酸塩)不含であり、ここでそれは、本発明の意味において、ホウ酸塩(ケイ酸塩)は含分<100ppmであると理解される。
【0010】
好適には、洗浄剤は、腐食防止剤を含有し、かつ/又は殺生物剤、消泡剤、及び/又は酸洗い抑制剤から成る群から選択されるさらなる添加剤を少なくとも1種含有する。
【0011】
洗浄剤を含む洗浄浴液における全作用物質の合計含分は、好適には10~200g/Lの範囲にある。
【0012】
洗浄剤は好適には、洗浄浴液として水により1:1~1:20の比に希釈される。
【0013】
この洗浄剤は、油により、油脂、石鹸、粒子状の汚れ、及び/又はアニオン性有機化合物から成る群からのさらなる無極性有機化合物により汚染されている洗浄浴液において使用することができる。
【0014】
この洗浄剤は、浸漬洗浄法、噴霧洗浄法、及び/又はブラシ洗浄法において使用可能である。洗浄剤は好適には、基材を洗浄するために、つまり鉄、鋼、特殊鋼、亜鉛メッキ鋼、金属で被覆した鋼、アルミニウム、マグネシウム、チタン、及び/又はそれらの合金からの金属表面を洗浄するために使用される。洗浄剤は特に好ましくは、板金の形態、部材の形態、及び/又は様々な基材からの複合部材の形態にある基材を洗浄するために使用される。
【0015】
本発明によると、洗浄剤は、リン酸塩処理前に、及び/又は陽極酸化処理前に、シラン/シロキサン/ポリシロキサン、チタン化合物/ジルコニウム化合物、酸化鉄/酸化コバルト、クロム酸塩、シュウ酸塩、ホスホン酸塩/リン酸塩、及び/又は有機ポリマー/有機コポリマーをベースとする処理組成物若しくは前処理組成物により被覆する前に、及び/又は実質的に有機性のポリマー組成物をベースとする少なくとも1種の組成物により、溶接プライマーにより、ガルバニック被覆により、エナメル被覆により、CVD被覆により、PVD被覆により、及び/又は一時的な防食被覆により被覆する前に、洗浄された基材を作製するために使用される。この洗浄剤は殊に、a)陽極酸化処理前に、及び/又は化学的表面処理前に、b)基材の金属表面にいわゆる前処理をする前に(例えば、例示的にはCr(III)のような前処理組成物(化成処理)などでコーティングする前に)、c)工業的洗浄施設を利用する前に、又は/及びd)中間洗浄として(例えば、部品組立前に)使用され得る。
【0016】
以下では、浴液、浴溶液、及び洗浄浴液を区別しないため、たいていは「浴液」を用いる。ここで例示的には、この用語は、例えば噴霧により施与される溶液も含む。
【0017】
洗浄のために使用される溶剤/界面活性剤を含有する水性浴液は、好適にはpH4~10の範囲にある、殊にpH5~9の範囲にある、極めて特にはpH6~8の範囲にあるpH値を有する。
【0018】
今日では、実際に使用するインク及びマーカーは、例えば、溶剤、水性混合物のような担体媒体の構成要素だけでなく、多数の様々な物質を有する非常に複雑に組成された混合物である。
【0019】
場合によっては浴液の汚染の一因となる油として、しばしばナフテン系又は/及び脂肪族の油が挙げられる。これらの油は、最も身近な所では加工油と呼ばれている。それらは場合によっては、焼入油、熱処理油、ホーニング油、防食油、冷却潤滑剤エマルジョン、冷却潤滑剤油、切削油、及び/又は改質油とも称される。
【0020】
驚くべきことに、溶剤/界面活性剤の混合物を添加することによって、インク及び/又はマーカーに対する洗浄力を維持できることが判明した。
【0021】
洗浄浴液における不揮発性溶剤の含分は、好適には1~50g/Lの範囲、特に好ましくは2~40g/Lの範囲、極めて特に好ましくは3~30g/Lの範囲にある。
【0022】
本発明による方法において、少なくとも1種の溶剤、好適には、非水溶性溶剤の群からの少なくとも1種の溶剤、殊にエステル化合物及び/又はエーテル化合物をベースとする少なくとも1種の溶剤が選択されている/選択される。その溶剤はさらに、非イオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤の群からの界面活性剤を含有する。
【0023】
実施形態の変法の多くでは、洗浄浴液がさらに少なくとも1種の洗浄助剤、つまり少なくとも1種の助剤物質を含有する場合、又は/かつこの助剤物質が浴液に添加される場合に有利である。洗浄助剤は、pH値の変化を防止するために有効であり得る。好適には、洗浄助剤は、有機バッファ成分(例えばグリシン)をベースとする少なくとも1種の助剤物質、例えばアルカノールアミン(例えば、モノアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノアルカノールアミン、又は/及びトリアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン)をベースとするもの)をベースとする少なくとも1種のアルカリ性媒体、又は/及び少なくとも1種の錯化剤(例えばカルボン酸塩(例えば、グルコン酸塩、又は/及びヘプトン酸塩、ニトリロトリ酢酸(NTA)のナトリウム塩)又は/及びホスホン酸塩(例えば1-ヒドロキシエタン(1,1-ジホスホン酸)(HEDP)をベースとするもの)を含有する。助剤物質の含分は、殊に0.1~290g/L、好適には0.2~120g/Lの範囲、特に好ましくは0.5、若しくは1~100g/Lの範囲、及び極めて特に好ましくは1.5~48g/Lの範囲にある。ここで助剤物質の含分は、射出法においては1~50g/Lの範囲で、浸漬法においては2~100g/Lの範囲で使用され、連続的方法であるか、又は非連続的な方法であるかには、通常は依存しない。
【0024】
さらにまた、少なくとも1種の添加剤(例えば、少なくとも1種の殺生物剤又は/及び少なくとも1種の消泡剤)が浴液中に含有されていてよく、かつ/又は浴液に添加されてよく、それらは殊にそれぞれ0.01~0.5g/Lの範囲にある。この浴液はさらに、少なくとも1種の酸洗い抑制剤を含有することができ、かつ/又は酸洗い抑制剤に添加することができる。酸洗い抑制剤は、殊にアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、又は/及びそれらの合金の表面における洗浄浴液の攻撃を低減又は阻止するのに有効である。酸洗い抑制剤はしばしば、保護する金属表面の種類に応じて非常に選択的に作用するため、特定の混合物において部分的に使用される。その際、酸洗い抑制剤の浴液含分は、好適には0.01~10g/Lの範囲、特に好ましくは0.1~8g/Lの範囲にある。酸洗い抑制剤としては、特にホスホン酸塩及びホスホン酸エステルが使用され得る。
【0025】
浴液における全作用物質の合計含分は、1~300g/Lの範囲、好適には2~250g/Lの範囲、特に好ましくは3~200g/Lの範囲にある。合計含分は、殊に陽極酸化処理前の構成部材、板金、及び/又は部材の洗浄のためには、射出法において殊に3~150g/Lの範囲、浸漬法において殊に3~200g/Lの範囲にあることが可能である。
【0026】
殊にこのようにしてその他の洗浄域に汚染物により強く負荷が掛からない場合、設備次第では、1つの洗浄域(浴液)、又は様々な洗浄域(洗浄浴液)の一部だけを使用するだけで十分であり得る。
【0027】
ここで浴溶液は、少なくとも1つの洗浄域において、例えば噴霧によって、及び/又は噴霧とブラシにより施与することもできる。浸漬の場合、少なくとも1つの基材を任意で電気分解により処理することができる(つまり、電気分解洗浄)。
【0028】
これらの洗浄法において、循環法(例えば注入式フラッディング法)における圧力(場合によっては約50bar)を除外した場合、適用圧力は実質的に気圧の何倍にもなり、一方で、射出法は、しばしば0.1~5barの範囲にある射出圧力で実施される。洗浄方法において、温度は、部分的に化学組成に依存するものの、好適には5~90℃の範囲、特に好ましくは10~80℃の範囲にあり、ここで射出法は、しばしば30~70℃の範囲、浸漬法はしばしば30~90℃の範囲において適用される。
【0029】
典型的には、非イオン性界面活性剤は、5~16の範囲、しばしば6~15の範囲にあるHLB値(hydrophilic-lipophilic balance:親水親油バランス)を有する。界面活性剤は、好適にはHLB値<14、殊にHLB値<13において非水溶性溶剤に対して作用する。
【0030】
本発明による方法において、好適には板金、部品、又は/及び複合部材の形態にある基材を洗浄する。一般に、本発明により洗浄する基材は、好適には鉄、鋼、特殊鋼、亜鉛メッキ鋼、金属で被覆した鋼、アルミニウム、マグネシウム、チタン、又は/及びそれらの合金からの金属表面を有する。
【0031】
驚くべきことに、本発明による洗浄剤を洗浄法において使用する際に、延いては、金属基材からインク及びマーカーを損失なしに少なくとも40%除去することが問題なく、かつ容易に保証できたことさえ分かった。本発明の意味において、「損失なし」とは、金属基材の損失が0.1μm/h未満であると理解される。
【0032】
ここで洗浄は殊に、陽極酸化処理前の基材の金属表面を前処理する前の、金属表面(例えば、部品及び構成部材)を処理若しくは不動態化処理する前の、又は工業的洗浄施設において洗浄する前の前段階として、又は部品組立前の中間洗浄段階として役立つことができる。
【0033】
本発明による方法によって洗浄した基材は、陽極酸化処理するため、殊にクロムIVなしで陽極酸化処理するため、塩基性リン酸塩皮膜処理するため(例えば、リン酸鉄皮膜処理するため、リン酸マンガン皮膜処理するため、又はリン酸亜鉛皮膜処理するため)、又は/及びシラン/シロキサン/ポリシロキサン、チタン化合物/ジルコニウム化合物、酸化鉄/酸化コバルト、シュウ酸塩、ホスホン酸塩/リン酸塩、又は/及び有機ポリマー/有機コポリマーをベースとする処理組成物若しくは前処理組成物少なくとも1種による被覆のため、又は/及び実質的に有機ポリマーである組成物をベースとする組成物少なくとも1種により、溶接プライマーにより、ガルバニック被覆により、エナメル被覆により、CVD被覆により、PVD被覆により、又は/及び一時的な腐食防止被覆により被覆するために、使用することができる。
【0034】
以下に、水性濃縮物及びそれより製造される浴液の製造及び組成、並びに塗布条件を記載する実施例が列挙されているが、それらは本発明をより良好に説明するためのものであって、本発明がこれらの具体的実施例に制限されることはない。
【0035】
実施例1
磁気撹拌子を有するビーカーに脱塩水70.8部を予め装入し、75%のo-リン酸0.9部を添加する。そしてドデシルベンゼンスルホン酸4部を加え、穏やかな攪拌により均質化する。混合物を、50%の水酸化ナトリウム水溶液1.9部を添加することにより中和する。持続的に攪拌しながら、トリポリリン酸ペンタナトリウム0.3部、モノエタノールアミン0.1部、Ethomeen(登録商標)C/15 5部(メーカー:Akzo Nobel、ヤシ油アルキルアミンエトキシレート)、及びSoftanol(登録商標)70 3部(メーカー:Ineos Oxide、脂肪アルコールエトキシレート)をこの順序で加える。最後に、Dissolvine(登録商標)GL38 1部(メーカー:Akzo Nobel、グルタミン酸二酢酸)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル8部、及び2-フェノキシエタノール5部を溶液に混ぜ入れる。後に攪拌すると、透明な洗浄剤濃縮液が獲得される。
【0036】
獲得された洗浄剤濃縮液は、適用のため浸漬法において1:4の割合で水により希釈し、そして洗浄過程の加速のために55℃に加熱する。インク印字(種類 Rea-Jet(登録商標)TKO-SW 010)及び油性マーカー印(種類 Edding(登録商標))を除去するために、それらを有する鋼板を15分、洗浄剤浴液の軽い攪拌において完全に浸漬する。その後、付着している洗浄剤溶液を除去するために板金を水に数回浸漬する。
【0037】
記載した洗浄プロセスの間に、インク印字は完全に(100%)、油性マーカー印はほぼ完全に(70%)剥離する。
【0038】
表1には、洗浄剤調製物について、さらなる実施例B2~B9、並びに比較例VB1及びVB2が挙げられており、これらは本発明の対象を説明するものである。洗浄剤濃縮液の製造は実施例1と同様に行った。
【0039】
表2は目視による比較で等級付けした洗浄力を示す。洗浄力の評価は、インク印字及び油性マーカー印の除去をもとにして行った。そのために、同様に用意した試験用板金にインク及び油性マーカーで印刷及び/又は印付けをした。印刷及び/又は印付けにおいて施与された模様によって洗浄力の定量化が可能となった。
【0040】
【0041】