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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】頭髪速乾用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220524BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017147860
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019026596
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宅 哲史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一真
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286137(JP,A)
【文献】特開2006-143602(JP,A)
【文献】特開2010-189303(JP,A)
【文献】特開2016-113620(JP,A)
【文献】特開2015-101545(JP,A)
【文献】特開2015-229666(JP,A)
【文献】特表2010-528973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性粉体とアルコールとを含む原液と、液化ガスとからなり、
前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含み、
前記液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、20~60容量%であり、
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、エアゾール組成物中、15~60容量%であり、
前記アルコールの含有量は、原液中、70質量%以上である、頭髪速乾用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記多孔性粉体は、比表面積が300~1500(m2/g)である、請求項記載の頭髪速乾用エアゾール組成物。
【請求項3】
前記多孔性粉体は、ゼオライトである、請求項1または2記載の頭髪速乾用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪速乾用エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、濡れた頭髪の水分を吸着することにより、素早く頭髪を乾燥させることのできる頭髪速乾用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭髪を乾燥させるための組成物が知られている。特許文献1には、揮発性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、エチルアルコールを含有する頭髪乾燥用組成物が開示されている。また、特許文献2には、低級アルコールおよび球状粉末粒子を含有する毛髪速乾用化粧料が開示されている。特許文献2に記載の毛髪速乾用化粧料は、球状粉末粒子によって毛髪をほぐすとともに、低級アルコールと水との共沸現象により水分の蒸発速度を速めることにより、毛髪を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-168608号公報
【文献】特開2003-286137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の頭髪乾燥用組成物および特許文献2に記載の毛髪速乾用化粧料は、いずれも頭髪の乾燥に多くの時間を要する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、濡れた頭髪の水分を吸着することにより、素早く頭髪を乾燥させることのできる頭髪速乾用エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、より素早く頭髪を乾燥させるための組成物について鋭意研究した結果、液化ガスを配合することにより、その気化熱によって多孔性粉体を冷却し、冷却された多孔質粉体によって濡れた頭髪の水分を吸着することにより、従来よりも素早く頭髪を乾燥し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)多孔性粉体を含む原液と、液化ガスとからなる、頭髪速乾用エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、噴射された多孔性粉体は、液化ガスの気化熱により冷却される。冷却された多孔性粉体は、頭髪の水分を吸着しやすい。その結果、頭髪速乾用エアゾール組成物は、濡れた頭髪の乾燥時間を短くすることができる。
【0009】
(2)前記液化ガスは、エアゾール組成物中、20~60容量%含まれる、(1)記載の頭髪速乾用エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、噴射されたエアゾール組成物は、適度に微細化されやすい。そのため、噴射されたエアゾール組成物に含まれる多孔性粉体は、頭髪に均等に付着しやすくなる。その結果、頭髪速乾用エアゾール組成物は、濡れた頭髪の乾燥時間をより短くすることができる。
【0011】
(3)前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンである、(1)または(2)記載の頭髪速乾用エアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、多孔性粉体は、エアゾール組成物中で分散されやすい。そのため、噴射されたエアゾール組成物に含まれる多孔性粉体は、頭髪に均等に付着しやすくなる。その結果、頭髪速乾用エアゾール組成物は、濡れた頭髪の乾燥時間をより短くすることができる。
【0013】
(4)前記多孔性粉体は、比表面積が300~1500(m2/g)である、(1)~(3)のいずれかに記載の頭髪速乾用エアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、エアゾール容器内では多孔性粉体の細孔に液化ガスが多く吸着されている。そのため、噴射された多孔性粉体は、液化ガスの気化熱によって、より冷却されやすい。そのため、冷却された多孔性粉体は、頭髪の水分をより素早く吸着しやすい。その結果、頭髪速乾用エアゾール組成物は、濡れた頭髪の乾燥時間をより短くすることができる。
【0015】
(5)前記多孔性粉体は、ゼオライトである、(1)~(4)のいずれかに記載の頭髪速乾用エアゾール組成物。
【0016】
このような構成によれば、多孔性粉体は、水の吸着熱により温かくなり、水分の乾燥を促進し、乾燥時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、濡れた頭髪の水分を吸着することにより、素早く頭髪を乾燥させることのできる頭髪速乾用エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<頭髪速乾用エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の頭髪速乾用エアゾール組成物(以下、「エアゾール組成物」ともいう)について詳細に説明する。本実施形態のエアゾール組成物は、多孔性粉体を含む原液と、液化ガスとからなる。
【0019】
(原液)
原液は、エアゾール組成物の液体成分であり、多孔性粉体を含む。
【0020】
・多孔性粉体
多孔性粉体は、頭髪の水分を吸着して乾燥時間を短くするために配合される。多孔性粉体は、水分を吸着し得る孔が多数設けられていればよく、特に限定されない。たとえば、多孔性粉体は、シリカ、ゼオライト等である。多孔性粉体は、併用されてもよい。なお、多孔性粉体がゼオライトである場合、多孔性粉体は、水分を吸着した際の吸着熱により温かくなり、水分の乾燥を促進させ、乾燥時間を短くすることができる。
【0021】
多孔性粉体の比表面積は、300(m2/g)以上であることが好ましく、350(m2/g)以上であることがより好ましい。また、多孔性粉体の比表面積は、1500(m2/g)以下であることが好ましく、1300(m2/g)以下であることがより好ましい。比表面積が上記範囲内であることにより、多孔性粉体は、水分を吸着しやすい。
【0022】
本実施形態において、多孔性粉体は、エアゾール容器内では細孔に液化ガスが吸着されており、液化ガスと共に噴射されることにより、液化ガスの気化熱により冷却される。冷却された多孔性粉体は、より素早く水分を吸着することができる。これにより、エアゾール組成物は、短い噴射時間であって、効率的に頭髪の水分を吸着し、乾燥させることができる。
【0023】
多孔性粉体の含有量は特に限定されない。たとえば、多孔性粉体の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、多孔性粉体の含有量は、原液中、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。多孔性粉体の含有量が0.01質量%未満である場合、エアゾール組成物は、充分に水分を吸着できず、乾燥時間を短くする効果が得られにくい傾向がある。一方、多孔性粉体の含有量が3質量%を超える場合、乾燥後の頭髪は、多孔性粉体によって白く見えやすい。なお、多孔性粉体の含有量は、吸着すべき水分の量を考慮し、上記した比表面積とともに適宜増減されてもよい。
【0024】
原液は、多孔性粉体以外に、アルコール、分散剤、油分を好適に含む。
【0025】
・アルコール
アルコールは、共沸現象により頭髪の水分を気化しやすくするための乾燥補助剤として、また、エアゾール組成物の充填される容器内において多孔性粉体を分散させる溶媒として好適に配合される。アルコールは特に限定されない。アルコールは、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2~5個の1価アルコール等である。アルコールは、併用されてもよい。
【0026】
アルコールの含有量は特に限定されない。たとえば、アルコールの含有量は、原液中、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が70質量%未満である場合、エアゾール組成物は、頭髪の乾燥時間を短くする効果が得られにくい。一方、アルコールの含有量が97質量%を超える場合、頭髪は、脱脂されやすく、乾燥後にパサつきやすい。
【0027】
・分散剤
分散剤は、製品を長時間静置したときに多孔性粉体が容器底部で固く凝集しないため、また、使用前に製品を振ることで多孔性粉体をエアゾール組成物中に分散させやすくするため等の目的で、好適に配合される。分散剤は特に限定されない。たとえば、分散剤は、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコールなどの多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤等である。分散剤は、併用されてもよい。
【0028】
分散剤が配合される場合、分散剤の含有量は特に限定されない。たとえば、分散剤の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、分散剤の含有量は、原液中、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が0.01質量%未満である場合、エアゾール組成物は、多孔性粉体を分散させる効果が充分に得られない可能性がある。一方、分散剤の含有量が3質量%を超える場合、分散剤は、頭髪に残りやすくなる。
【0029】
・油分
油分は、乾燥後の頭髪に艶を与えたり、櫛どおりを良くする等の目的で好適に配合される。油分は特に限定されない。たとえば、油分は、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、シクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソオクタン酸セチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-エチルへキサン酸トリメチロールプロパン、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステル油、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油などの油脂、流動パラフィン、イソパラフィン、スクワレン、スクワランなどの炭化水素油、セチルアルコール、ミリスチルアルコールなどの高級アルコール等である。これらの中でも、油分は、頭髪の乾燥時間を短くすることができる点から、揮発性を有するシリコーンオイルや炭化水素油を含むことが好ましい。油分は、併用されてもよい。
【0030】
油分が配合される場合、油分の含有量は特に限定されない。たとえば、油分の含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、油分の含有量は、原液中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。油分の含有量が1質量%未満である場合、エアゾール組成物は、油分を配合することによる効果が充分に得られない傾向がある。一方、油分の含有量が25質量%を超える場合、油分は、頭髪の乾燥に要する時間が長くなりやすい。
【0031】
・有効成分
原液は、保湿剤、コンディショニング剤、香料等の有効成分が含まれてもよい。有効成分は、併用されてもよい。
【0032】
保湿剤は、たとえば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ヒアルロン酸等である。
【0033】
コンディショニング剤は、たとえば、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー等である。カチオン性界面活性剤は、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩;アルキルベンジルアンモニウム塩;ステアリルアミンアセテート;ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミンなどのポリオキシエチレンアルキルアミン等である。カチオン性ポリマーは、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル四級アンモニウム塩のホモポリマー、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体等である。
【0034】
香料は、たとえば、合成香料、天然植物性香料等である。合成香料は、炭化水素系香料、アルコール系香料、エステル系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料、エーテル系香料、フェノール系香料等の単体香料およびこれらを用いて調合した調合香料等である。炭化水素系香料は、リモネン、ピネン、テルピネン等である。アルコール系香料は、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、ベンジルアルコール、2-メチル-1-ヘキサノール、3-メチル-1-ヘキサノール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、L-メントール、メチル-n-ブチルカルビノール、メチルエチルイソプロピルカルビノール、メチルヘキシルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチルフェニルカルビノール、メチルベンジルカルビノール、フェニルエチルアルコール、テレピネオール、ジヒドロミルセノール等である。エステル系香料は、イソブチルアセテート、n-アミルアセテート、イソアミルアセテート、n-ヘキシルアセテート、n-オクチルアセテート、n-デシルアセテート、ベンジルアセテート、β-フェニルエチルアセテート、ゲラニルアセテート、l-メンチルアセテート、リナリルアセテート、n-アミルプロピネート、イソアミルプロピネート、リナリルプロピネート、ベンジルプロピネート、エチルブチレート、イソプロピルブチレート、ヘキシルブチレート、ベンジルブチレート、エチルイソブチレート、イソプロピルイソブチレート、n-ブチルイソブチレート、イソアミルイソブチレート、ベンジルイソブチレート、エチルバレレート、プロピルバレレート、ブチルバレレート、イソアミルバレレート、ヘプチルバレレート、ベンジルバレレート、エチルベンゾエート、イソブチルフェニルアセテート、メチルサリシレート等である。アルデヒド系香料は、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、シトロネラール、シトラール、フェニルアセトアルデヒド等である。エーテル系香料は、エチルイソアミルケトン、メチルヘプテノン、アセトフェノン、ベンザルアセトン、o-アミノアセトフェノンなどのケトン系香料、ゲラニルメチルエーテル、シネオール、エチルベンジルエーテル、エストラゴール等である。フェノール系香料は、アネトール、オイゲノール等が例示される。天然植物性香料としては、オレンジ油、グレープフルーツ油、アニス油、ペパーミント油、スペアミント油、ローズ油、ラベンダー油、レモン油、レモンユーカリ、カユプテ、クラリセージ、コリアンダー等である。
【0035】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。たとえば、有効成分の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が0.01質量%未満である場合、エアゾール組成物は、有効成分を配合することによる効果が充分に得られない可能性がある。一方、有効成分の含有量が20質量%を超える場合、エアゾール組成物は、有効成分の含有量に応じた効果が得られにくくなる傾向がある。
【0036】
原液は、上記した多孔性粉体以外に、櫛どおりを良くするなどの目的で、比表面積が300m2/gよりも小さい粉体が含まれてもよい。このような粉体は、たとえば、タルク、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、セラミックパウダー、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、シリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等である。このような粉体は、併用されてもよい。
【0037】
比表面積が小さい粉体が含まれる場合、このような粉体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、粉体の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、原液中、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が0.01質量%未満である場合、粉体を配合することによる効果が得られにくい。一方、粉体の含有量が3質量%を超える場合、エアゾール組成物は、充填されるエアゾール装置において、詰まりを生じやすくなる可能性がある。
【0038】
原液の含有量は特に限定されない。たとえば、原液は、エアゾール組成物中、40容量%以上であることが好ましく、50容量%以上であることがより好ましい。また、原液は、エアゾール組成物中、80容量%以下であることが好ましく、75容量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が40質量%未満である場合、噴射されたエアゾール組成物の粒子が細かくなり過ぎて、頭髪に付着しにくくなる傾向がある。一方、原液の含有量が80容量%を超える場合、噴射されたエアゾール組成物の粒子が粗くなり過ぎて、多孔性粉体が頭髪に均一に付着しにくくなったり、多孔性粉体を冷却する作用が不充分になり、頭髪の乾燥に要する時間を短くする効果が得られにくくなる傾向がある。
【0039】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来周知の方法により調製することができる。たとえば、原液に多孔性粉体、アルコール、分散剤、油分、有効成分が含まれている場合、原液は、分散剤、油分、有効成分をアルコールに溶解し、次いで、多孔性粉体を分散させることにより調製することができる。
【0040】
(液化ガス)
液化ガスは、噴射時に原液を微細化して多孔性粉体を頭髪に均一に付着させるとともに、多孔性粉体を気化熱により冷却する等の目的で配合される。冷却された多孔性粉体は、水分を素早く、かつ、多く吸着することができ、頭髪の乾燥時間を短くすることができる。
【0041】
液化ガスは特に限定されない。たとえば、液化ガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物等である。これらの中でも、液化ガスは、多孔性粉体を分散させやすく、頭髪に均一に付着させやすくする、液化ガス自身が気化することにより水分を蒸発させやすいといった点から、ハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。
【0042】
液化ガスの含有量は特に限定されない。たとえば、液化ガスは、エアゾール組成物中、20容量%以上であることが好ましく、25容量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスは、エアゾール組成物中、60容量%以下であることが好ましく、50容量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が20容量%未満である場合、噴射されたエアゾール組成物の粒子が粗くなり過ぎて、多孔性粉体が頭髪に均一に付着しにくくなったり、多孔性粉体を冷却する作用が不充分になり、頭髪の乾燥に要する時間を短くする効果が得られにくくなる傾向がある。一方、液化ガスの含有量が60容量%を超える場合、噴射されたエアゾール組成物の粒子が細かくなり過ぎて、頭髪に付着しにくくなる傾向がある。
【0043】
以上、本実施形態のエアゾール組成物は、噴射されたアルコールによって、頭髪に付着した水分を気化させやすい。また、噴射された多孔性粉体は、液化ガスの気化熱により冷却される。冷却された多孔性粉体は、頭髪の水分を吸着しやすい。その結果、エアゾール組成物は、濡れた頭髪の乾燥時間を短くすることができる。
【0044】
<エアゾール製品>
上記エアゾール組成物を充填したエアゾール製品について説明する。本実施形態のエアゾール製品は、上記エアゾール組成物を充填する容器本体と、容器本体に取り付けられるエアゾールバルブと、エアゾール組成物を噴射する噴射孔が形成された噴射ノズルを有する噴射ボタンとを備える。以下、それぞれの構成について説明する。なお、エアゾール製品の構成は、本実施形態に限定されず、上記エアゾール組成物を充填でき、適切に噴射できる構成であればよい。そのため、以下に示されるエアゾール製品の構成は例示であり、適宜設計変更を行うことができる。
【0045】
(容器本体)
容器本体は、エアゾール組成物を加圧状態で充填するための耐圧容器である。容器本体は、汎用の形状であってよい。たとえば、耐圧容器は、上部に開口を有する有底筒状である。開口は、原液を充填するための充填口である。容器本体は、開口に後述するエアゾールバルブを取り付けて閉止することによりエアゾール容器となる。
【0046】
容器本体の材質は特に限定されない。容器本体は、エアゾール組成物を加圧状態で充填できる程度の耐圧性を有していればよい。このような材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0047】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、容器本体の開口部に取り付けられるマウンティングカップと、マウンティングカップの中央内部に支持される弁機構を有する。弁機構は、開口部の外周部分がマウンティングカップの中央内部に支持される有底筒状のハウジングを有する。ハウジング内部には、容器本体の内外を連通するステム孔を有するステムと、ステム孔の周囲に取り付けられるステムラバー、およびステムとステムラバーとを上方方向へ付勢するスプリングとが設けられている。ステムとステムラバーとは、常時はスプリングにより上方へ付勢されており、ステムラバーによってステム孔がシールされている。そして、ステムに嵌合して噴射ボタンが設けられている。
【0048】
なお、エアゾールバルブの構造は特に限定されない。たとえば、エアゾールバルブは、容器本体の内部のエアゾール組成物をハウジング内部に導入するための液相導入孔を有するハウジングを備え、液相導入孔以外に、さらにベーパータップ孔を有するものであってもよい。ベーパータップ孔は、容器本体内部の気相部にある液化ガスの気体部分をハウジング内部に導入するための孔であり、ハウジング内部に導入される液化ガスの液体部分を少なくし、噴射物の粒径を調整することができる。また、ベーパータップ孔は、充填されるエアゾール組成物が可燃性成分を多く含む場合であっても、その火炎長を短くするなどの効果がある。
【0049】
容器本体にエアゾール組成物を充填する方法は特に限定されない。たとえば、エアゾール組成物は、容器本体の開口から原液を充填し、エアゾールバルブにより開口を閉止し、エアゾールバルブの弁機構から液化ガスを充填して原液と均一に溶解させる方法が採用され得る。ほかにも、エアゾール組成物は、エアゾールバルブを固着する前に液化ガスを充填するアンダーカップ充填によって充填されてもよい。
【0050】
エアゾール組成物が充填されることにより、容器本体の内圧は、25℃において0.2~0.6MPa程度に調整され得る。
【0051】
(噴射ボタン)
噴射ボタンは、エアゾールバルブを経て取り込まれたエアゾール組成物を噴射するための部材であり、噴射孔が形成された噴射ノズルを有する。噴射ボタンは、内部にエアゾール組成物が通過する噴射通路を備える。噴射通路の一端はステム内の通路と連通しており、他端はエアゾール組成物を噴射するための噴射孔が形成されている。
【0052】
噴射孔の断面積(直径)は特に限定されない。噴射孔の断面積は、噴射物(スプレー)の拡がりや勢いなど、目的とする噴射状態を得るために適宜調整される。たとえば、対象物が頭髪である場合、噴射距離は、約5~20cmとなり得る。そのため、噴射孔の断面積は、0.07~1.0mm2程度に調整され得る。この場合、噴射ボタンは、メカニカルブレークアップ機構を有してもよい。
【実施例
【0053】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0054】
(実施例1)
以下の処方に従って原液1を調製し、ポリエチレンテレフタレート製の容器本体に70容量%充填した。次いで液化ガス1(トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン:HFO-1234ze)を30容量%充填し、容器本体の口部にエアゾールバルブを取り付けて密封した。容器内で原液と液化ガスを混合することにより頭髪速乾用エアゾール組成物を充填したエアゾール製品を作製した。
【0055】
<原液1>
エタノール 85.4
グリセリン 5.0
シクロペンタシロキサン(*1) 5.0
トリシロキサン(*2) 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
ジカプリン酸プロピレングリコール(*3) 0.5
多孔質シリカ(*4) 0.1
合計 100.0(質量%)
*1:SH245 FLUID(商品名)、東レ・ダウコーニング(株)製
*2:SH200 FLUID 1cs(商品名)、東レ・ダウコーニング(株)製
*3:NIKKOL PDD(商品名)、日光ケミカルズ(株)製
*4:TMPS-4R(商品名)、太陽化学(株)製、比表面積920(m2/g)
【0056】
(実施例2)
以下の処方に従って調製した原液2を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0057】
<原液2>
エタノール 85.0
グリセリン 5.0
シクロペンタシロキサン(*1) 5.0
トリシロキサン(*2) 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
ジカプリン酸プロピレングリコール(*3) 0.5
多孔質シリカ(*5) 0.5
合計 100.0(質量%)
*5:サイリシア740(商品名)、富士シリシア化学(株)製、比表面積(700m2/g)
【0058】
(実施例3)
以下の処方に従って調製した原液3を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0059】
<原液3>
エタノール 84.5
グリセリン 5.0
シクロペンタシロキサン(*1) 5.0
トリシロキサン(*2) 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
ジカプリン酸プロピレングリコール(*3) 0.5
ゼオライト(*6) 1.0
合計 100.0(質量%)
*6:アセンサDS901(商品名)、ハネウェル社製、比表面積(350m2/g)
【0060】
(実施例4)
原液1を50容量%となるよう容器本体に充填し、液化ガス1を50容量%充填した以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0061】
(実施例5)
原液3を40容量%となるよう容器本体に充填し、液化ガス1を60容量%充填した以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0062】
(実施例6)
液化ガス2(液化石油ガス(25℃での蒸気圧が0.45MPa))を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0063】
(実施例7)
液化ガス3(ジメチルエーテル)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0064】
(実施例8)
液化ガス4(トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンと液化石油ガス(25℃での蒸気圧が0.20MPa)とを容量比50/50にした混合物)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0065】
(比較例1)
液化ガスを用いずに、原液1のみをポンプ式ディスペンサに充填して噴射製品を作製した。
【0066】
(比較例2)
以下の処方に従って調製した原液4を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0067】
<原液4>
エタノール 85.5
グリセリン 5.0
シクロペンタシロキサン(*1) 5.0
トリシロキサン(*2) 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
ジカプリン酸プロピレングリコール(*3) 0.5
合計 100.0(質量%)
【0068】
(比較例3)
以下の処方に従って調製した原液5を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製し、これを充填したエアゾール製品を作製した。
【0069】
<原液5>
エタノール 85.0
グリセリン 5.0
シクロペンタシロキサン(*1) 5.0
トリシロキサン(*2) 2.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
ジカプリン酸プロピレングリコール(*3) 0.5
タルク 0.5
合計 100.0(質量%)
【0070】
実施例1~8および比較例1~3において得られたエアゾール製品等に関して、以下の評価方法により、原液中の粉体の再分散性および頭髪の速乾効果を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<1.再分散性>
上記製品を25℃の恒温室内で1週間静置して粉体を容器本体の底部に沈降させ、その後上下に振ったときの粉体の再分散性を、以下の評価基準に沿って評価した。
(評価基準)
◎:粉体は、1~2回振ると均一に分散した。
○:粉体は、3~4回振ると均一に分散した。
△:粉体は、5~9回振ると均一に分散した。
×:粉体は、10回以上振っても均一に分散しなかった。
-:粉体を含有していないため、評価できなかった。
【0072】
<2.頭髪の速乾効果>
毛束(長さ30cm)を洗髪して全体を水で濡らし、その後軽くタオルで拭き取ってある程度水分を除去した。次いで25℃の恒温水槽に1時間浸漬しておいた上記製品を用いて、毛束全体に内容物を噴射し(総噴射量:0.5g)、なじませた。毛束をまとめ、毛束の上端を保持して吊るした状態で25℃の恒温室内で乾燥させた。所定の時間毎に毛束の乾燥状態を、以下の評価基準に沿って評価した。
(評価基準)
◎:毛束は、全体が乾燥しており、全体が拡がっていた。
○:毛束は、表面が乾燥しており、表面の毛が拡がっていた。
△:毛束は、表面がやや乾燥しており、表面の毛が広がり始めていた。
×:毛束は、ほとんど乾いておらず、水分でまとまったままの状態であった。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示されるように、実施例1~8のエアゾール製品は、少ない振とう回数で容易に再分散させることができ、かつ、優れた頭髪の速乾効果が得られた。一方、液化ガスを用いなかった比較例1の噴射製品は、再分散させるために5回以上の振とうを要し、かつ、頭髪の速乾効果が劣った。粉体を用いなかった比較例2のエアゾール製品は、頭髪の速乾効果が劣った。多孔性でない粉体を用いた比較例3のエアゾール製品は、頭髪の速乾効果が劣った。