(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
C08J9/12 CEZ
(21)【出願番号】P 2017237249
(22)【出願日】2017-12-11
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2016239937
(32)【優先日】2016-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】寺西 健
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-092809(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ35mm以上120mm以下のフェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の
両面に設けられた面材とが備えられ、
前記面材は、目付が15g/m
2
以上60g/m
2
以下で、熱圧着固定部分を有する合成繊維不織布であり、
前記面材における前記熱圧着固定部分の密度は、5個/cm
2
以上150個/cm
2
以下であり、
MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとは、下記(1)式を満た
し、
EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の際ΔDTとは、下記(2)式を満たし、
前記発泡層に形成された気泡は、MD方向の長さRMと、TD方向の長さRTとが下記(3)式の関係を満たす、フェノール樹脂発泡板。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
【請求項2】
厚さ35mm以上120mm以下のフェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の両面に面材が設けられ、MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとは、下記(1)式を満たし、EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の際ΔDTとは、下記(2)式を満たし、前記発泡層に形成された気泡は、MD方向の長さRMと、TD方向の長さRTとが下記(3)式の関係を満たすフェノール樹脂発泡板の製造方法であって、
任意の速度で走行する
一方の前記面材上に、フェノール樹脂と発泡剤と架橋剤とを含有する発泡性樹脂組成物を
TD方向に並ぶ2以上のノズルから吐出
し、吐出した前記発泡性樹脂組成物の上に他方の前記面材を載置する第一の工程と、
前記面材
同士の間の前記発泡性樹脂組成物を加熱して、発泡し硬化する第二の工程と、
を有し、
前記面材は、目付が15g/m
2
以上60g/m
2
以下で、熱圧着固定部分を有する合成繊維不織布であり、
前記面材における前記熱圧着固定部分の密度は5個/cm
2
以上150個/cm
2
以下であり、
前記第一の工程は、前記ノズルの軸線と前記面材とが前記ノズルに対して前記面材の走行方向後方になす角度を65°以上90°未満とし、前記ノズルから前記発泡性樹脂組成物を前記面材上に吐出する、フェノール樹脂発泡板の製造方法。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂発泡板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等の断熱材として、断熱パネルが汎用される。断熱パネルとしては、フェノール樹脂の発泡層と、この発泡層の片面又は両面に設けられた面材とを備えるフェノール樹脂発泡板が知られている。
フェノール樹脂の発泡層は、物理的衝撃に対して、比較的脆い。このため、フェノール樹脂の発泡層の片面又は両面に面材を設けることで、フェノール樹脂の発泡層の保護を図っている。
【0003】
従来、面材を剥離しにくくするために様々な提案がなされている。
例えば、特定の密度であり、特定の独立気泡率であり、かつ特定の平均気泡径であるフェノール樹脂の発泡層と、その両面に配された面材とを備え、面材は紙を含有し、面材剥離強度が特定の範囲であるフェノール樹脂発泡板が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、例えば、フェノール樹脂の発泡層の両面あるいは片面に、特定の繊維径かつ特定の目付の合成繊維不織布が貼り付けられたフェノール樹脂発泡板が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-47613号公報
【文献】国際公開第1999/34975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般的に断熱材は、平面視矩形であるため、搬送中や施工中に矩形の四隅の角部に何かが接触した際に、角部から面材がめくれ上がり、対角線方向に面材の剥離が始まる。
しかしながら、従来の技術は、長手方向の面材の剥離強度のみを改善したものであり、面材の剥離を十分に防止できるとは言えなかった。また、従来の技術では、面材の種類が著しく制限される。
そこで、本発明は、面材がより剥離しにくいフェノール樹脂発泡板を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発者らの検討によれば、例えば、平面視矩形のフェノール樹脂発泡板においては、多くの場合、面材に対して、フェノール樹脂発泡層から離れる方向の力が矩形の四隅の角部から対角線方向に掛けられると、面材が剥離しやすいとの知見を得た。
本発明者は、かかる知見に基づき鋭意検討した結果、MD方向における面材の剥離強度と、TD方向における面材の剥離強度との差を小さくすることで、面材が剥離しにくくなることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]フェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の少なくとも一方の面に設けられた面材とが備えられ、MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとは、下記(1)式を満たす、フェノール樹脂発泡板。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
[2]EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の際ΔDTとは、下記(2)式を満たす、[1]に記載のフェノール樹脂発泡板。
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
[3]前記発泡層に形成された気泡は、MD方向の長さRMと、TD方向の長さRTとが下記(3)式の関係を満たす、[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡板。
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
[4][1]~[3]のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡板の製造方法であって、
任意の速度で走行する前記面材上に、フェノール樹脂と発泡剤と架橋剤とを含有する発泡性樹脂組成物を吐出する第一の工程と、
前記面材上に吐出された前記発泡性樹脂組成物を加熱して、発泡し硬化する第二の工程と、
を有する、フェノール樹脂発泡板の製造方法。
[5]前記第一の工程は、TD方向に並ぶ2以上のノズルから前記発泡性樹脂組成物を前記面材上に吐出し、
前記ノズルの軸線と、前記面材とのなす角度は、60℃以上90°未満である、[4]に記載のフェノール樹脂発泡板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフェノール樹脂発泡板によれば、面材がより剥離しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフェノール樹脂発泡板の斜視図である。
【
図3】フェノール樹脂発泡板の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図6】面材の剥離強度測定装置の一例を示す模式図である。
【
図7】面材の起毛度の測定方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフェノール樹脂発泡板は、フェノール樹脂の発泡層(以下、単に発泡層ということがある)と、発泡層の少なくとも一方の面に設けられた面材とを備える。
以下、図面を参照して、フェノール樹脂発泡板について説明する。
【0011】
図1のフェノール樹脂発泡板1は、平板状の発泡層10と第一の面材12と第二の面材14とを備える。第一の面材12は、発泡層10の一方の面に設けられている。第二の面材14は、発泡層10の他方の面に設けられている。第一の面材12及び第二の面材14は、フェノール樹脂自身の接着性によって発泡層10と接合している。即ち、第一の面材12及び第二の面材14は、いずれも接着剤層を介さずに発泡層10と接合されている。
フェノール樹脂発泡板1は、X方向を長手、Y方向を短手とする、平面視矩形である。
実施形態において、X方向はMD(Machine Direction)方向、Y方向はTD(Transverse Direction)方向である。この場合、MD方向から見た断面には、MD方向と平行に伸び、かつ厚さ方向にわたるウェルドラインが視認される。ウェルドラインは、後述する製造方法において、各ノズルから吐出された発泡性樹脂組成物同士が合流した痕跡である。ウェルドラインは、第一の面材12及び第二の面材14に対して概ね垂直に伸び、その周囲に比べて密度が高く、平均気泡径が小さく、色調が濃い。
なお、他の実施形態として、X方向(長手)がTD方向、Y方向(短手)がMD方向となるように、フェノール樹脂発泡板1が製造されてもよい。この場合、ウェルドラインはY方向(短手方向)に延びて形成されている。
【0012】
発泡層10は、発泡性樹脂組成物を発泡し硬化してなる発泡体である。発泡性樹脂組成物は、フェノール樹脂と発泡剤とを含む。
図2に示すように、発泡層10には、2以上の気泡20が形成されている。気泡20の内、少なくとも一部は独立気泡である。なお、
図2は、
図1のフェノール樹脂発泡板1を仮想線Qで厚さ方向に二等分し、その断面を平面視で観察した際の部分断面図である。
【0013】
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。
ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。フェノール樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合されて用いられてもよい。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1~1:3であり、より好ましくは1:1.3~1:2.5である。
【0014】
フェノール樹脂の重量平均分子量Mwは、400以上3000以下が好ましく、700以上2000以上がより好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であれば、独立気泡率が高まり、圧縮強度のさらなる向上及び熱伝導率のさらなる向上を図りやすい。また、ボイドの形成を防止しやすい。重量平均分子量Mwが上記上限値以下であれば発泡性樹脂組成物の粘度が高まりすぎず、所望する発泡倍率を得やすい。
【0015】
発泡剤は、特に限定されないが、ハロゲン化飽和炭化水素、ハロゲン化不飽和炭化水素等のハロゲン化炭化水素、炭化水素が好ましい。発泡層10の難燃性をより高め、断熱性を高める観点から、発泡剤としては、ハロゲン化炭化水素が好ましく、ハロゲン化不飽和炭化水素がより好ましい。
【0016】
炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、沸点が-20℃以上100℃以下のものが好適に用いられる。
炭化水素としては、炭素数が4以上6以下の環状分子構造又は炭素数4以上6以下の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。
これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの炭化水素は、低温域(例えば、-80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
【0017】
ハロゲン化炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができる。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩素化飽和炭化水素、フッ素化飽和炭化水素等のハロゲン化飽和炭化水素;塩素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素、臭素化フッ素化不飽和炭化水素、ヨウ素化フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素は、水素の全てがハロゲンで置換されたものでもよいし、水素の一部がハロゲンで置換されたものでもよい。
これらのハロゲン化炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
塩素化飽和炭化水素としては、炭素数が2以上5以下であるものが好ましく、例えばジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド(2-クロロプロパン)、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等が挙げられる。中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライドが好ましい。
【0019】
塩素化フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に塩素原子とフッ素原子と二重結合を含むものが挙げられ、例えば、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエテン(E及びZ異性体)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)(E及びZ異性体)(例えば、HoneyWell社製、商品名:SOLSTICE LBA)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)(E及びZ異性体)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)(E及びZ異性体)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)(E及びZ異性体)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)(例えば、SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300-7-09)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)(E及びZ異性体)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1223xd)(E及びZ異性体)、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E及びZ異性体)、及び2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(E及びZ異体)等が挙げられる。
【0020】
フッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
【0021】
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内にフッ素原子と二重結合を含むものが挙げられ、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)(E及びZ異性体)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)(E及びZ異性体)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300-3-Z6)等の特表2009-513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
【0022】
ハロゲン化炭化水素としては、オゾン破壊係数(ODP)及び地球温暖化係数(GWP)が小さく、環境に与える影響が小さい点で、ハロゲン化不飽和炭化水素が好ましく、塩素化フッ素化不飽和炭化水素またはフッ素化不飽和炭化水素がより好ましい。
【0023】
なお、本発明のフェノール樹脂発泡体は他の発泡剤を含有してもよく、例えば、窒素、アルゴン、炭酸ガス、空気等の低沸点ガス;ジメチルエーテル等のエーテル類;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤;多孔質固体材料等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0024】
発泡性樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部に対し、1質量部以上25質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上11質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
発泡性樹脂組成物は、酸触媒を含有してもよい。酸触媒は、フェノール樹脂を硬化させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
発泡性樹脂組成物中の酸触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部当たり、5質量部以上30質量部以下が好ましく、8質量部以上25質量部以下がより好ましく、10質量部以上20質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
発泡性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物及びシリコーン系界面活性剤のいずれか一方または両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0028】
発泡性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当たり、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上5質量部以下がより好ましい。界面活性剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、気泡径が均一に小さくなりやすく、上限値以下であれば、発泡層10の吸水量が少なく、また、製造コストも抑えられる。
【0029】
発泡性樹脂組成物は、従来公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、尿素、可塑剤、充填剤(充填材)、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
充填剤としては、無機フィラーが好ましい。無機フィラーを用いることで、発泡樹脂積層体の熱伝導率を低減し、かつ難燃性のさらなる向上を図れる。
【0030】
発泡性樹脂組成物中の充填剤の含有量は、抽出pHが3以上となる量が好ましい。例えば、充填剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当たり、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、3質量部以上15質量部以下がさらに好ましく、5質量部以上10質量部以下が特に好ましい。充填剤の含有量が上記下限値未満では、発泡層10の抽出pHが低くなる。抽出pHが低くなると、酸性度が増す為、フェノール樹脂発泡体と接触する資材が、腐食を生じるおそれがある。充填剤の含有量が上記上限値超では、酸触媒による硬化反応が著しく阻害され、生産性が悪化するおそれがある。
【0031】
抽出pHは、以下の方法で測定される。発泡層10を乳鉢で250μm(60メッシュ)以下に粉砕して試料とする。試料0.5gを200mLの共栓付き三角フラスコに量り取る。共栓付き三角フラスコに純水100mLを加え、密栓する。マグネチックスターラーを用いて、共栓付き三角フラスコ内を23℃±5℃で7日間撹拌して、試料液とする。得られた試料液のpHをpHメータで測定し、その値を抽出pHとする。
【0032】
発泡層10の厚さt1は、フェノール樹脂発泡板1に求める断熱性等を勘案して決定され、例えば、10mm以上200mm以下が好ましく、20mm以上150mm以下がより好ましく、35mm以上120mm以下がさらに好ましく、45mm以上100mm以下が最も好ましい。上記下限値以上であれば、断熱性をより高められる。厚さt1が上記上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡板1の厚さが厚くなりすぎず、取り扱いが容易である。
【0033】
発泡層10の密度は、10kg/m3以上100kg/m3以下が好ましく、20kg/m3以上60kg/m3以下がより好ましく、25kg/m3以上50kg/m3以下がさらに好ましい。密度が上記下限値以上であれば強度をより高められ、上記上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡板1の断熱性をより高められる。
発泡層10の密度は、JIS A 9511:2009に準じて測定される値である。
【0034】
発泡層10における平均気泡径は、50μm以上200μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下がより好ましく、50μm以上100μm以下がさらに好ましい。平均気泡径が上記範囲内であれば、フェノール樹脂発泡板1の断熱性をより高められる。
平均気泡径は、例えば、以下の測定方法により測定される。
まず、発泡層10の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出す。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影する。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引く。この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引く。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400-1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求める。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とする。
発泡層10の平均気泡径は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
【0035】
発泡層10における独立気泡率は、例えば、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、実質的に100%が最も好ましい。独立気泡率が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡板1の断熱性をより高められる。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定される。
発泡層10の独立気泡率は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
【0036】
気泡20は、MD方向の長さRMとTD方向のRTとが、下記(3)式の関係を満たすことが好ましい。
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
RM/RTは、0.8以上1.2以下がより好ましく、0.9以上1.1以下がさらに好ましい。RM/RTが上記範囲内であれば、発泡層10と第一の面材12又は第二の面材14との剥離強度のさらなる向上が図れる。
【0037】
ハロゲン化炭化水素を発泡剤として用いた場合、ハロゲン化炭化水素は極性が高く、フェノール樹脂との相溶性が高い。ハロゲン化炭化水素を含む発泡性樹脂組成物は、後述する製造方法において、各ノズルから吐出された後にはTD方向に広がりやすいものの、硬化反応の速度が遅く、樹脂の伸長粘度が上がるタイミングが従来よりも遅くなる。そうすると、TD方向に長い気泡が形成されやすい。このため、ハロゲン化炭化水素を発泡剤として用いた場合には、後述するようにノズルから吐出された後、直ちにTD方向に広げることが特に好ましい。
【0038】
RM/RT(気泡アスペクト比)が1に近い(即ち、気泡20が真円に近い)程、MD方向で隣り合う気泡20同士の距離DMと、TD方向で隣り合う気泡20同士の距離DTとが近似する。即ち、MD方向とTD方向とで、気泡20の壁の厚みが近似する。MD方向とTD方向とで、気泡20の壁の厚みが近似すると、発泡層10と各面材との接触面積が、MD方向及びTD方向において、近似する。このため、MD方向における発泡層10と面材との剥離強度PMと、TD方向における発泡層10と面材との剥離強度PTとの差をより小さくでき、面材が発泡層10から剥離するのをより確実に抑制できる。
【0039】
発泡層10の酸素指数(Limited Oxygen Index;以下「LOI」ともいう。)は、28容量%以上が好ましく、29容量%以上がより好ましく、32容量%以上がさらに好ましく、34容量%以上が特に好ましく、35容量%以上が最も好ましい。LOIが上記下限値以上であれば、発泡層10の難燃性のさらなる向上を図れる。
LOIは、JIS K 7201-2:2007に準じて測定される値である。
発泡層10のLOIは、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、難燃剤の種類又は組成とその量等の組み合わせにより調節される。例えば、発泡剤中の可燃性の発泡剤の含有量が少ない(ハロゲン化炭化水素の含有量が多い)ほど、LOIが高い。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が-OHであるポリエーテル鎖を有するものであれば、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、LOIが高い傾向がある。さらに、リン系難燃剤等を添加することでLOIを高くすることができる。
【0040】
第一の面材12は、発泡層10の一方の面を覆っている。発泡層10の一方の面の面積(100%)に対して、第一の面材12の覆う面積の割合は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましく、100%が特に好ましい。
【0041】
第一の面材12の種類としては、ガラス繊維混抄紙、水酸化アルミニウム紙、ケイ酸カルシウム紙、ケイ酸マグネシウム紙等の無機材料を含有する紙やクラフト紙等の紙類;織布;ガラス繊維不織布、ポリエステル繊維不織布、ポリプロピレン繊維不織布、ナイロン繊維不織布、アルミニウム箔張不織布等の不織布;合板;珪酸カルシウム板;石膏ボード;木質系セメント板;アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼箔等の金属箔;等が挙げられる。第一の面材12としては、上述の中でも、紙類、合成繊維不織布が好ましく、ガラス繊維混抄紙、ポリエステル繊維不織布、ガラス繊維不織布がより好ましい。
なお、紙を含む面材は、紙のセルロース繊維とフェノール樹脂とが接合しやすいため、面材と発泡層10との接着強度を高められる。ただし、本実施形態のフェノール樹脂発泡板1は、面材として合成繊維不織布やガラス繊維不織布等、セルロース繊維を含まないものであっても、発泡層10と面材との剥離強度を十分に高められる。
【0042】
第一の面材12の厚さは、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維不織布等の合成繊維不織布の場合には0.1mm以上0.25mm以下が好ましい。ガラス繊維混抄紙等の紙類の場合には0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。ガラス繊維不織布の場合には0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。
第一の面材12の目付は、特に限定されないが、合成繊維不織布を用いる場合には、は15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上150g/m2以下であることがより好ましく、15g/m2以上100g/m2以下であることがさらに好ましく、15g/m2以上80g/m2以下であることが特に好ましく、15g/m2以上60g/m2以下であることが最も好ましい。
ガラス繊維混抄紙を用いる場合には、目付は30g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以上250g/m2以下であることがより好ましく、60g/m2以上200g/m2以下であることがさらに好ましく、70g/m2以上150g/m2以下であることが特に好ましい。
ガラス繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上200g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上150g/m2以下であることがさらに好ましい。
目付が上記下限値以上であれば、発泡性樹脂組成物が第一の面材12の表面に染み出しにくい。目付が上記上限値以下であれば、発泡層10と第一の面材12との接着性を高められる。これにより、第一の面材12が発泡層10から剥がれにくくなり表面をより美麗にできる。加えて、後述する製造方法において、コンベア等の搬送機器の表面の凹凸に追従させやすくなり、フェノール樹脂発泡板1の生産性を高めやすい。
【0043】
面材がガラス繊維混抄紙である場合には、面材の目付に対するガラス繊維の含有量は10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。ガラス繊維の含有量が上記下限値以上であると、フェノール樹脂発泡板1の難燃性のさらなる向上を図れる。ガラス繊維の含有量が上記上限値以下であると、発泡層10と面材との剥離強度を十分に高められる。
なお、ガラス繊維混抄紙の残りの主成分はセルロース繊維であり、その他に結合剤、無機充填剤、着色剤等を含んでいてもよい。
【0044】
面材が合成繊維不織布である場合には、凹凸形状のいわゆるエンボス(熱圧着固定部分)が形成されていることが好ましい。エンボスが形成された面材を用いることで、面材と発泡層10との接着性がより高められる。
エンボスのパターン(柄)としては、特に限定されないが、例えば、マイナス柄、ポイント柄、織り目柄等が挙げられる。エンボスによる凹凸形状が大きく、発泡層10との接着性をより高められる点から織り目柄又はマイナス柄が好ましい。
合成繊維不織布にエンボス加工を施すには、例えば、公知のスパンボンド法で、紡口直下の冷却条件により発現させた捲縮長繊維ウェブを熱エンボスロールで部分熱圧着させる方法が挙げられる。また、例えば、潜在捲縮長繊維ウェブを熱処理により捲縮させて熱エンボスロールで部分熱圧着させる方法が挙げられる。
【0045】
エンボス加工の際に形成された熱圧着固定部分において、熱圧着固定部分1箇所当たりの面積は0.05mm2以上5.0mm2以下が好ましく、0.07mm2以上3.0mm2以下がより好ましい。この範囲内の面材を用いることで、熱圧着固定部分により発泡性樹脂組成物の滲み出しを抑えつつ、発泡層10と面材との接着性を向上させることができる。上記面積が0.05mm2未満である場合、繊維同士の結合が少なく、摩擦強度等の物理強度が低く発泡性樹脂組成物が滲み出しやすい傾向がある。上記面積が5.0mm2を超える場合、熱圧着固定部分の面積が多く、風合いが硬く、発泡層10と面材の繊維との接着性が低下するおそれがある。さらに、通気度が低くなり、養生時間が長くなったり、独立気泡率が低下するおそれがある。
なお、熱圧着固定部分は一般的に目視又は光学顕微鏡等により簡単に見つけることができる。個々の熱圧着固定部分の面積は、以下の方法により測定することができる。
【0046】
<繊維固定部分の面積の総和の割合>
不織布の表面を光学顕微鏡で10倍に拡大した画像を得る。画像処理ソフトウェア(商品名「Photoshop(登録商標)」、アドビシステムズインコーポレーテッド社製)を用いて、不織布表面の縦100mm、横100mmの正方形(単位面積)に含まれる、熱圧着固定部分の合計面積を測定する。
【0047】
熱圧着固定部分同士の最小間隔は0.05mm以上5mm以下が好ましく、0.08mm以上2mm以下がより好ましい。この範囲内の面材を用いることで、フェノール樹脂の滲み出しを抑えつつ、発泡層10と面材との接着性を向上させることができる。上記最小間隔が0.05mm未満である場合、熱圧着固定部分が多く、風合いが硬く、発泡層10と面材の繊維との接着性が悪い傾向がある。5mmを超える場合、繊維同士の結合が少なく、摩擦強度等の物理強度が低く、発泡性樹脂組成物が滲み出しやすい。また熱圧着固定部分は、不織布表面の全面に均等に分布させることが好ましい。
【0048】
熱圧着固定部分密度は5個/cm2以上150個/cm2以下であり、5個/cm2以上50個/cm2以下がより好ましく、5個/cm2以上30個/cm2以下がさらに好ましい。熱圧着固定部分密度は単位面積当たりの熱圧着固定部分の個数を意味しており、次式(s)で表される。
熱圧着固定部分密度(個/cm2)=[熱圧着固定部分の数(個)]/」[面材の表面積(cm2)]・・・(s)
熱圧着固定部分密度が上記下限値以上であれば、発泡性樹脂組成物の滲み出しを良好に抑制できる。熱圧着固定部分密度が上記上限値以下であれば、発泡層10と面材との接着性をより向上させることができ、吸水量を低くすることができる。また、熱圧着固定部分密度が上記上限値以下であれば、通気度を高くでき、養生時間を短縮できる。また、より長期にわたって低い熱伝導率を維持できる。
【0049】
熱圧着固定部分を有する合成繊維不織布は、その一方の端部のみが熱圧着固定部分で固定され、他方の端部が熱圧着固定部分で固定されていない起毛繊維を有していることが好ましい。通常、起毛繊維の量(起毛度)は合成繊維不織布の表裏面で差は無いが、一方の面にのみ起毛加工をすることにより起毛繊維の量に差をつけることができる。
起毛度は以下の方法により測定することができる。
【0050】
<起毛度の測定方法>
起毛度は、第一の面材12における発泡層10と接していない面で、かつ、印刷による模様が形成されていない箇所について測定する。
まず、縦200mm×200mmのフェノール樹脂発泡板1から第一の面材12を剥がし、200mm×200mmの測定片とする。
図7(a)に示すように、測定片の起毛した面において、複数個の熱融着部を通る方向に延びる折り返し線Bにて山折りして測定サンプル204を形成する。次に、この測定サンプル204を、A4サイズの黒い台紙211aの上に載せる。
図7(b)に示すように、測定サンプル204の上に、縦1cm×横1cmの穴207をあけたA4サイズの黒い台紙211bを載せる。このとき、
図7(b)に示すように、測定サンプル204の折り目205が、上側の黒い台紙211bの穴207から見えるように、黒い台紙211bを配置する。両台紙には、例えば、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いる。その後、上側の台紙211bの穴207の両側それぞれから、折り目205に沿って外方に5cm離れた位置に、50gのおもり212をそれぞれ載せ、測定サンプル204を折りたたまれた状態とする。次に、
図7(c)に示すように、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX-900)を用いて、30倍の倍率で、黒い台紙211bの穴207内を観察する。測定サンプル204の折り目205から0.2mm上方に平行移動した位置に形成される仮想線208よりも上方に突出した繊維の数を計測し、これを1cm当たりの起毛した繊維の本数とする。9箇所計測し、平均値(少数第二位を四捨五入)を起毛している繊維の量を起毛度とする。
【0051】
また、起毛している繊維の数を数える際には、例えば、
図7(c)に示す繊維206のように、折り目205から0.2mm上方にある仮想線208を2回横切る繊維がある場合、その繊維は2本と数える。具体的には、
図7(c)に示す例では、仮想線208を1回横切る繊維が4本、仮想線208を2回横切る繊維206が1本存在するが、2回横切る繊維206を2本と数え、起毛度は6本/cmとなる。
【0052】
第一の面材12の起毛度は、1本/cm以上60本/cm以下が好ましく、3本/cm以上40本/cm以下がより好ましい。起毛度が上記範囲内であれば、起毛繊維が発泡層10に埋設され、発泡層10と第一の面材12との接着性を向上させ、面材を剥離しにくくできる。
起毛度が1本/cm未満である場合、熱圧着固定部分密度が高すぎるか、熱圧着固定部分の面積が大きすぎることを意味し、第一の面材12と発泡層10との接着性が低下し、面材が剥離しやすくなる。
一方、起毛度が60本/cmを超える場合、熱圧着固定部分密度が著しく低いか、隣接する熱圧着固定部分同士を連結する繊維が少ないことを意味し、面材自体の引張強度等の機械的強度が低下する。また、面材を剥離した後に発泡層10の表面に残留する起毛繊維量が増大するため、発泡層10を粉砕し発泡性樹脂組成物と混合してリサイクルする際、混入した起毛繊維によって粘度を調整しにくくなる。このため、粉砕したフェノール樹脂発泡体粉を含む発泡層10の独立気泡率が低下するおそれがある。
【0053】
面材を剥離した後の発泡層10の単位面積当たりの表面に残留する起毛繊維量としては、0本/cm2以上50本/cm2以下が好ましく、1本/cm2以上30本/cm2以下がより好ましく、1本/cm2以上10本/cm2以下が最も好ましい。起毛繊維量が上記範囲内であれば、リサイクル性に優れる。
発泡層10の表面に残留する起毛繊維量は、例えば50mm×50mmの範囲で面材を剥離した発泡層10表面を顕微鏡で観察する方法等で測定できる。
【0054】
第一の面材12を設ける方法としては、後述する製造システムの下部コンベア上に第一の面材12を配置し、該面材上に直接に発泡性樹脂組成物を吐出し、その上に第二の面材14を載置した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、シート状の発泡層10の両面に面材が設けられる。
また、第一の面材12は、発泡成形された発泡層10に接着剤で貼着されてもよい。
【0055】
MD方向における第一の面材12と発泡層10との剥離強度PMは、300g/50mm以上が好ましく、400g/50mm以上がより好ましく、500g/50mm以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、第一の面材12が発泡層10から剥離するのをより確実に抑制できる。剥離強度PMの上限値は、特に限定されないが、1000g/50mm以下が好ましい。上記上限値超の場合、第一の面材12の目付が小さくなり、発泡性樹脂組成物が第一の面材12の表面に染み出しやすい。
TD方向における第一の面材12と発泡層10との剥離強度PTは、剥離強度PMと同様である。
【0056】
剥離強度PMと、剥離強度PTとは、下記(1)式を満たす。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
PM/PT(剥離強度比)は、0.7以上1.2以下がより好ましく、0.8以上1.1以下がさらに好ましい。PM/PTが上記範囲内であれば、第一の面材12が発泡層10から剥離しにくくなる。PM/PTが1に近づくほど(即ち、剥離強度PMと剥離強度PTとが近似するほど)、第一の面材12を発泡層10から引き離そうとする力の掛かり具合が、MD方向とTD方向とで同等となる。このため、第一の面材12を発泡層10から引き離そうとする力が分散されて、第一の面材12は、発泡層10から剥離しにくくなる。
PM/PTが上記下限値未満又は上限値を超える場合、面材の剥離強度に差があるため、搬送中や施工中において、矩形状のフェノール樹脂発泡板1の角部から対角線に向かい、面材が剥離したときに、剥離強度の低い長手方向又は短手方向への剥離が進行して剥がれ幅が増える。このため、剥離強度の高い方向も剥離しやすくなってしまい、その結果として使用に耐えない。
【0057】
第二の面材14の種類は、第一の面材12の種類と同様である。第二の面材14の種類と、第二の面材14の種類とは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、第一の面材12と第二の面材14との種類が異なると、両面材の伸縮量の差によってフェノール樹脂発泡体1が反りやすくなる。このため、第一の面材12と第二の面材14との種類は同じであることが好ましい。
第二の面材14の厚さは、第一の面材12の厚さと同様である。第二の面材14の厚さと第一の面材12の厚さとは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、第一の面材12と第二の面材14との厚さが異なると、両面材の伸縮量の差によってフェノール樹脂発泡体1が反りやすくなる。このため、第一の面材12と第二の面材14との厚さは同じであることが好ましい。
第二の面材14の目付は、第一の面材12の目付と同様である。第二の面材14の目付と第一の面材12の目付とは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、第一の面材12と第二の面材14との目付が異なると、両面材の伸縮量の差によってフェノール樹脂発泡体1が反りやすくなる。このため、第一の面材12と第二の面材14との目付は同じであることが好ましい。
第二の面材14と発泡層10との剥離強度は、第一の面材12と発泡層10との剥離強度と同様である。第二の面材14と発泡層10との剥離強度と、第一の面材12と発泡層10との剥離強度とは、同じでもよいし、異なってもよい。
第二の面材14におけるPM/PTは、第一の面材12におけるPM/PTと同様である。第二の面材14におけるPM/PTと、第一の面材12におけるPM/PTとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
フェノール樹脂発泡板1において、EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の差ΔDTとは、下記(2)式を満たすことが好ましい。
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
ΔDM/ΔDT(寸法変化比)は、0.7以上1.2以下がより好ましく、0.8以上1.1以下がさらに好ましい。ΔDM/ΔDTが範囲内であれば、MD方向とTD方向との寸法変化の差が小さくなり、均一に収縮するため、面材が発泡層10からより剥離しにくくなる。ΔDM/ΔDTが上記下限値未満、又は上限値を超える場合、収縮時にTD方向とMD方向の収縮量に差があるため、第一の面材12と発泡層10との接合部、又は第二の面材14と発泡層10との接合部に不均一に力が掛かり、TD方向とMD方向の剥離強度に差が生じやすい。
【0059】
フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率は、0.0190W/m・K以下が好ましく、0.0185W/m・K以下がより好ましく、0.0175W/m・K以下がさらに好ましい。熱伝導率が上記上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡板1の断熱性のさらなる向上を図れる。
フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率は、発泡層10における平均気泡径、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類等の組み合わせにより調節される。例えば、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率が低い傾向となる。界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が-OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
熱伝導率は、JIS A 1412-2に準拠して測定される値である。
【0060】
本実施形態のフェノール樹脂発泡板1は、従来公知のフェノール樹脂発泡板の製造方法に準じて製造される。
例えば、フェノール樹脂発泡板1の製造方法は、発泡性樹脂組成物を発泡し、硬化する工程を有する。
以下、吐出装置と、吐出装置の下流に位置する発泡成形装置とを備える製造システムを用いた、フェノール樹脂発泡の製造方法を例に挙げて説明する。
【0061】
図3に示す製造システム40は、吐出装置60と、発泡成形装置70とを備える。
吐出装置60は、フェノール樹脂等の原料を混合する混合部62と、混合された原料(発泡性樹脂組成物)を吐出するための複数のノズル64とを備える。2以上のノズル64は、発泡性樹脂組成物80の流れ方向と直交する方向に並んでいる。なお、スリットダイのような単一の吐出口であって、TD方向に幅広のノズルは、ノズル内で均一な流速又は圧力とならず、中央部と端部で吐出量が異なるため好ましくない。
【0062】
発泡成形装置70は、フレーム部71及び加熱手段(不図示)を備える。フレーム部71は、フェノール樹脂発泡板1の断面形状に対応した空間が形成されるように、上下左右に配置されたコンベア(下部コンベア72、上部コンベア74、左側コンベア(不図示)、右側コンベア(不図示))を備える。
【0063】
下部コンベア72は、W1方向に走行する無端ベルトを有するコンベアである。上部コンベア74は、W2方向に走行する無端ベルトを有するコンベアである。
加熱手段としては、例えば、フレーム部71を囲む加熱炉や、下部コンベア72又は上部コンベア74の無端ベルトに接して設けられたヒータ等が挙げられる。
なお、発泡成形装置70としては、無端ベルトを有するコンベアに代えて、特開2000-218635号公報に記載のスラットコンベアを有する装置でもよい。
【0064】
ノズル64は、円筒状又は角筒状である。ノズル64の軸線Oと、第一の面材12の面方向で、かつ下部コンベア72の進行方向であるW1方向に延びる仮想線Qとのなす角度(ノズル角度)θは、60°以上90°未満が好ましく、60°以上85°未満がより好ましい。なお、角度θは軸線Oと仮想線Qとのなす角度であって、下部コンベア72の進行方向に対し、ノズル64の後方に形成される角度である。ノズル角度θが上記下限値以上であれば、発泡層10に形成される気泡20の気泡アスペクト比(R
M/R
T)を所望の範囲としやすくなり、剥離強度比(P
M/P
T)を0.6以上1.3以下に制御しやすい。このため、面材は発泡層10から剥離しにくくなる。
ノズル角度を上記範囲にすると、面材が発泡層10から剥離しにくくなる理由について、
図4を参照して説明する。
図4は、製造システム40の一部を模式的に表した部分平面図である。
図4は、ノズル64から発泡性樹脂組成物が吐出された状態を模式的に示す。なお、説明の便宜上、混合部62等の図示を省略した。
図4に示す通り、隣り合うノズル64同士は、任意の間隔を空けて並べられている。ノズル角度θを60°未満にする(ノズル64を面材に対して寝かせる)と、走行する第一の面材12の速度に合わせて発泡性樹脂組成物80が吐出される。第一の面材12上に吐出された発泡性樹脂組成物80は、W1方向に進行するに従い、第一の面材12の幅方向(即ち、発泡層10のTD方向)に広がりつつ、発泡剤が徐々に発泡する。この際、発泡性樹脂組成物80中の発泡剤が発泡して生じた気泡20aは、TD方向に長くなりつつ膨らむ。特に、ハロゲン化炭化水素を発泡剤として用いた場合には、発泡性樹脂組成物80の粘度が低くなり、吐出された発泡性樹脂組成物80がTD方向に広がりやすい。
また、ノズル角度θを90°以上にする(ノズル64を面材に対して立たせる)と、第一の面材12の搬送方向と反対外にも樹脂が吐出され、ノズルの吐出口周囲に硬化した樹脂が堆積してノズルが詰まりやすい。
これに対し、ノズル角度θを60°以上90°未満とすると、第一の面材12上に吐出された発泡性樹脂組成物80は、ノズル64からの吐出圧力によって第一の面材12に押し付けられて、MD方向及びTD方向に広がる。このため、吐出された発泡性樹脂組成物80で生じた気泡20aは、MD方向及びTD方向に延びる。
このため、形成される気泡20の気泡アスペクト比(R
M/R
T)が1に近づき、剥離強度比(P
M/P
T)がより1に近づきやすくなる。
なお、ノズル64の吐出口と、樹脂が吐出される第一の面材12とは接近しているほど、発泡性樹脂組成物をTD方向に広げやすいものの、吐出口が詰まりやすくなる。吐出口と第一の面材12とが離れすぎていると、発泡性樹脂組成物をTD方向に広げにくくなるものの、第一の面材12の走行速度や樹脂の粘度によって調整可能である。
また、下部コンベア72及び上部コンベア74自体を走行方向に向かって登るように傾けてもよい。コンベアの傾斜角度と、ノズル角度θとを組み合わせることで、発泡性樹脂組成物を広げやすくなる。
【0065】
ノズル64同士の間隔は、特に限定されないが、できるだけ狭い方が好ましい。ノズル64同士の間隔が狭ければ、各ノズル64から吐出された発泡性樹脂組成物80は、ただちに互いに接触する。このため、発泡性樹脂組成物80がTD方向に広がりにくくなり、気泡アスペクト比を1に近づけやすい。
【0066】
次に、この製造システム40を用いたフェノール樹脂発泡板1の製造方法の一例について説明する。まず下部コンベア72上に第一の面材12を繰り出す。混合部62で原料を混合して発泡性樹脂組成物を調製する。発泡性樹脂組成物を2以上のノズル64から第一の面材12上に吐出する(第一の工程)。吐出された発泡性樹脂組成物80の上に第二の面材14を載せ、これらをフレーム部71に導入し、任意の温度で加熱する(第二の工程)。この加熱温度は、例えば30℃以上95℃以下とされる。加熱時間は、例えば、1分間以上15分間以下とされる。これにより、第一の面材12と第二の面材14との間で発泡性樹脂組成物が発泡し、硬化して、発泡層10と第一の面材12と第二の面材14とを備えるフェノール樹脂発泡板1を得る。
次いで、フェノール樹脂発泡板1を切断装置で任意の長さに切断する。
フェノール樹脂発泡板1の形状は、特に限定されないが、例えば、MD方向を長手とし、TD方向を短手とする平面視矩形の板が挙げられる。
また、フェノール樹脂発泡板1の大きさは、特に限定されないが、長さ500mm以上2000mm以下×幅500mm以上1000mm以下×厚さ5mm以上200mm以下のものが挙げられる。
【0067】
上述の通り、本実施形態のフェノール発泡樹脂板によれば、面材の剥離強度比PM/PTが特定の範囲であるため、面材が発泡層から剥離しにくい。
【0068】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
上述の実施形態では、発泡層と第一の面材と第二の面材との3層構造とされているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、第一の面材上に、さらに他の層を備えてもよい。他の層としては、化粧層、防水フィルム層、石膏ボード、アルミニウム箔等が挙げられる。これらの層は、第一の面材と接着層を介して接合される。本発明は、第一の面材と発泡層とが強固に接合しているため、上記の他の層は、第一の面材を介して発泡層と強固に接合できる。
また、例えば、第二の面材上に、さらに他の層を備えてもよい。第二の面材上の他の層は、第一の面材上の他の層と同様である。
【0069】
本発明のフェノール樹脂発泡板は、家屋の壁、床、屋根の断熱材として好適である。
【実施例】
【0070】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0071】
(実施例1~1
2、比較例1~2)
表1に記載の組成に従い、液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF-339)、界面活性剤(ひまし油エチレンオキサイド付加物(付加モル数30))、ホルムアルデヒドキャッチャー剤(尿素)を加え、混合し、20℃で8時間放置した。この混合物に、発泡剤と、酸触媒(パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物)とを加え、攪拌し、混合して発泡性樹脂組成物を調製した。
図3に示す製造システム40と同様の製造システムを用い、発泡層の両面に面材を備えるフェノール樹脂発泡板を得た。フェノール樹脂発泡板は、長さ(MD方向)1820mm×幅TD方向(910mm)×厚さ45mmの平面視矩形の板体であった。
このフェノール樹脂発泡板の製造に用いた製造システムは、18本のノズルがTD方向に等間隔で配置された吐出装置を備える。各例のフェノール樹脂発泡板を製造した際のノズル角度θは、表1記載の通りである。
18本のノズルから発泡性樹脂組成物を表1記載の面材上に吐出し、吐出された発泡性樹脂組成物の上に新たに面材を載せた。上下の面材の距離を45mmとし、70℃で300秒間加熱して、フェノール樹脂発砲板を得た。
得られたフェノール樹脂発泡板を幅910mm、長さ1820mmに切断した。次いで、切断されたフェノール樹脂発泡板を85℃で5時間放置して、各例のフェノール発泡板とした。
各例のフェノール樹脂発泡板について、発泡層の密度、平均気泡径、独立気泡率、熱伝導率、気泡のアスペクト比、面材の剥離強度、寸法変化の差を測定し、その結果を表中に示す。
【0072】
(発泡剤の組成)
表中の発泡剤の組成は、以下の通りである。
・発泡剤A・・・・HCFO-1233zd:シクロペンタン=80:20(質量比)の混合物。
・発泡剤B・・・・HCFO-1233zd:イソプロピルクロライド=80:20(質量比)の混合物。
・発泡剤C・・・・HFO-1336mzz:シクロペンタン=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤D・・・・HFO-1336mzz:イソプロピルクロライド=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤E・・・・HCFO-1233zd:シクロペンタン=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤F・・・・HCFO-1233zd:イソペンタン=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤G・・・・HCFO-1233zd:シクロペンタン=40:60(質量比)の混合物。
・発泡剤H・・・・HCFO-1233zd:イソプロピルクロライド=40:60(質量比)の混合物。
・発泡剤I・・・・シクロペンタン。
【0073】
(面材の種類)
表中の面材の組成は、以下の通りである。
・面材I・・・・ガラス繊維不織布(目付:70g/m2、ガラス繊維含有量:50質量%)。
・面材II・・・ポリエステル不織布(目付:20g/m2、熱圧着固定部分密度:8個/cm2、起毛度:30本/cm)。
・面材III・・・ポリエステル不織布(目付:30g/m2、熱圧着固定部分密度:100個/cm2、起毛度:5本/cm)。
【0074】
(測定方法)
<気泡アスペクト比>
各例のフェノール樹脂発泡板について、厚み方向に二等分し、その断面を電子顕微鏡で50倍に拡大した写真を撮影した。撮影された画像に、発泡層のMD方向に2本の直線(長さ1800μm相当)を描き、発泡層のTD方向に2本の直線(長さ1800μm相当)を描いた。MD方向の直線が横切った気泡の直線上の径を測定し、その結果から平均値を算出してMD方向における気泡径(RM)とした。また、TD方向の直線が横切った気泡の直線上の径を測定し、その結果から平均値を算出してTD方向における気泡径(RT)とした。
求めたRM及びRTから、気泡アスペクト比を算出した。
【0075】
<面材剥離強度>
図5~6を参照して、面材剥離強度の測定方法を説明する。
図5に示すように、各例のフェノール樹脂発泡板のY方向(TD方向)中央部から、X方向(MD方向)に50mm、Y方向に120mmの矩形に切り出し、一方の面材を剥離して、切片S
Tを得た。この切片S
Tを厚さ方向に切断して、片面に面材を備え、幅50mm、長さ120mm、厚さ25mmの評価用試料Tとした。
次に、厚さ25mmの評価用試料Tの長さ方向の一端から20mmの位置で、面材を有さない面から厚み方向に深さ20mmの切り込みを入れた。その切込み位置にて、発泡層を厚み方向に分割した(
図6中の符号100)。この際、面材が発泡層から剥がれないようにした。
評価用試料Tにおける発泡層の長さが長い部位102をクランプ107で保持した。この際、部位102が水平方向に対し45°の角度になるように保持した。発泡層の長さが短い部位103をクランプ104で保持した。クランプ104の下方に、金属ワイヤ105で容器106を吊り下げた。
その後、ポンプ(図示せず)を用いて、100g/分の投入速度で、容器106内に水を連続的に投入した。面材101が、評価用試料Tの長さ方向に切り込み位置から50mm剥離した時点で、容器106への水の投入を停止した。容器106内の水の質量を測定した。同様の操作を2回行い、クランプ104、金属ワイヤ105、容器106及び容器106内の水の質量の合計の平均値をTD方向の面材剥離強度P
Tとした。
【0076】
続いて、評価用試料Tを採取したフェノール樹脂発泡板のY方向(TD方向)中央部から、Y方向50mm、X方向120mmの矩形に切り出し、評価用試料Tと同じ面材を剥離して切片S
Mとした(
図1)。この切片S
Mを厚さ方向に二分して、厚さ25mmの評価用試料Mとした。評価用試料Mについて、評価用試料Tと同様にしてMD方向の面材剥離強度P
Mを求めた。
求めたP
M及びP
Tから、剥離強度比を算出した。
【0077】
<寸法変化の差>
各例のフェノール樹脂発泡板におけるTD方向の中央部から、MD方向200mm、TD方向200mmの平面視矩形の切片を切り出し、これを評価用試料とした。この評価用試料について、EN1604の試験方法に準じ、以下の手順でMD方向の寸法変化の差ΔDM(mm)及びTD方向の寸法変化の差ΔDT(mm)を求めた。
まず、200mm×200mmに切り出し、これをEN1604に従い養生して、評価用試料とした。評価用試料のMD方向の長さDM0(mm)と、TD方向の長さDT0を測定した。
次に、評価用試料を70℃で、48時間放置した直後に、評価用試料におけるMD方向の長さDM(mm)及びTD方向の長さDT(mm)を測定した。下記式により、MD方向の寸法変化の差ΔDM及びTD方向の寸法変化の差ΔDTを算出した。
ΔDM=長さDM0-長さDM
ΔDT=長さDT0-長さDT
求めたΔDM及びΔDTから、寸法変化比を算出した。
【0078】
<連続生産性の評価>
フェノール樹脂発泡板を連続して生産した際にノズルの吐出口周囲を観察し、ノズルの吐出口の清掃頻度を評価した。
≪評価基準≫
○:フェノール樹脂発泡板を連続して5時間製造した時に、ノズル吐出口周囲に樹脂の付着はほとんど見られなかった(ノズル清掃頻度低)。
△:フェノール樹脂発泡板を連続して5時間製造した時に、ノズル吐出口周囲に少量の樹脂が付着した(ノズル清掃頻度中)。
×:フェノール樹脂発泡板を連続して5時間製造した時に、ノズル吐出口周囲に多量の樹脂が付着した(ノズル清掃頻度大)。又はノズル吐出口に詰まりが発生して生産を中止した。
【0079】
<面材の剥離評価>
各例のフェノール樹脂発泡板5枚について、TD方向に切断し、切断面の両端部にある角部を観察して以下の基準で評価した。
≪評価基準≫
○:面材はいずれの角部からも全く剥離していない。
△:面材が角部から0.5cm以上剥離したものが1枚あった。
×:面材が角部から0.5cm以上剥離したものが2枚以上あった。
【0080】
【0081】
表1に示すように、本願発明を適用した実施例1~12は、十分な剥離強度を有していた。また、実施例1~12は、連続生産性の評価が「○」又は「△」であった。
【符号の説明】
【0082】
1 フェノール樹脂発泡板;10 発泡層;12 第一の面材;14 第二の面材;64 ノズル;80 発泡性樹脂組成物