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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】蛍光寿命分析のための光源
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20220524BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20220524BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H01S5/042 630
H01S5/062
G01N21/64 B
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2017560257
(86)(22)【出願日】2016-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 US2016033585
(87)【国際公開番号】W WO2016187566
(87)【国際公開日】2016-11-24
【審査請求日】2019-05-17
(31)【優先権主張番号】62/310,398
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/164,485
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/296,546
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/821,656
(32)【優先日】2015-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/164,464
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/164,506
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シックラー、ジェイソン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト、ローレンス シー.
(72)【発明者】
【氏名】アフマド、ファイサル
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポール イー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、ジョナサン シー.
(72)【発明者】
【氏名】カマラ、ホセ
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-142035(JP,A)
【文献】特開2010-074198(JP,A)
【文献】特開2003-168840(JP,A)
【文献】特開2010-204006(JP,A)
【文献】特開2000-155052(JP,A)
【文献】特開昭63-017581(JP,A)
【文献】特表2005-512086(JP,A)
【文献】特開2006-048885(JP,A)
【文献】特開2012-098299(JP,A)
【文献】特開2014-150210(JP,A)
【文献】特表2015-501415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0081040(US,A1)
【文献】Wilfried Uhring et al.,A low cost high repetition rate picosecond laser diode pulse generator.,Proceedings of SPIE,米国,SPIE,2004年09月01日,Vol.5452,pp.583-590
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 31/00-31/18
H01L 33/00-33/64
G01J 11/00
G01N 21/64
G02F 1/00-1/39
H05B 45/00
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発するように構成されている半導体ダイオードと、
前記半導体ダイオードの端子に結合され、かつユニポーラ・パルスを受信する、1つのみのトランジスタを含んでなる駆動回路であって、前記ユニポーラ・パルスの受信に応答して前記半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加する、前記駆動回路と、
前記駆動回路に結合されたパルス発生器であって、2つの差動クロック信号から前記ユニポーラ・パルスを形成する第1の論理ゲートを備え、及び、前記ユニポーラ・パルスを前記駆動回路に出力する、前記パルス発生器とを備え、
前記バイポーラ電気パルスの印加に応じて前記半導体ダイオードから50ps~500psの半値全幅持続時間を有する光パルスが発生する、パルス光源。
【請求項2】
前記バイポーラ電気パルスは、第1の大きさ及び第1の極性を有する第1のパルスと、後続する、前記第1の大きさとは異なる第2の大きさを有する、反対の極性の第2のパルスとを含む、請求項1に記載のパルス光源。
【請求項3】
前記第2の大きさは前記第1の大きさの25%~90%である、請求項2に記載のパルス光源。
【請求項4】
前記ユニポーラ・パルスのパルス長は、50ps~500psである、請求項1に記載のパルス光源。
【請求項5】
前記パルス発生器は、単一のクロック信号を受信し、4つのクロック信号を前記第1の論理ゲートに出力するように構成されているファン・アウト・ゲートをさらに備える、請求項1に記載のパルス光源。
【請求項6】
前記パルス発生器は、前記ユニポーラ・パルスのパルス長を、1ps~5psの増分で変化させるように構成されている調整可能遅延要素をさらに備える請求項1に記載のパルス光源。
【請求項7】
前記トランジスタは、前記半導体ダイオードのカソードと、基準電位との間に接続されている通電端子を有し、前記第1の論理ゲートに結合されているゲート端子を有する請求項1に記載のパルス光源。
【請求項8】
前記トランジスタは高電子移動度電界効果トランジスタを含む、請求項7に記載のパルス光源。
【請求項9】
前記トランジスタは、50ps~2nsの持続時間にわたって、前記半導体ダイオードを通じて4アンペアまでを切り換える、請求項7に記載のパルス光源。
【請求項10】
前記第1の論理ゲートと並列に接続されており、前記2つの差動クロック信号から第2のユニポーラ・パルスを形成するように構成されている第2の論理ゲートをさらに備え、前記第2の論理ゲートからの出力は前記トランジスタの前記ゲート端子に結合される請求項7に記載のパルス光源。
【請求項11】
前記トランジスタのドレイン端子は、前記半導体ダイオードのカソードに直に接続する請求項7に記載のパルス光源。
【請求項12】
前記ドレイン端子に並列に接続されている第1のキャパシタ及び抵抗器をさらに備える請求項11に記載のパルス光源。
【請求項13】
前記半導体ダイオードのアノードと、前記トランジスタのソース端子との間に接続されている第2のキャパシタをさらに備える請求項11に記載のパルス光源。
【請求項14】
前記パルス光源から発せられた光パルスは、270nm、280nm、325nm、340nm、370nm、380nm、400nm、405nm、410nm、450nm、465nm、470nm、490nm、515nm、640nm、665nm、808nm、及び980nmの群から選択される固有波長を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパルス光源。
【請求項15】
前記半導体ダイオードから光パルスを受信する可飽和吸収体をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパルス光源。
【請求項16】
前記駆動回路はU字形状に形成されている伝送線路を有した伝送線路パルス発生器を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパルス光源。
【請求項17】
単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別するように各々が構成されている複数の画素を有する光検出器アレイと、
前記パルス光源によって照射される対象の画像を前記光検出器アレイ上に形成するように構成されている光学系とをさらに備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパルス光源。
【請求項18】
パルス発生器がシステム・クロックから少なくとも1つのクロック信号を受信する工程と、
ユニポーラ・パルスを形成するために、トランジスタのゲート端子に結合されている論理ゲートを用いて2つの差動クロック信号を処理することによって、前記パルス発生器が前記少なくとも1つのクロック信号から前記ユニポーラ・パルスを生成する工程と、
前記ユニポーラ・パルスの形態でパルスを受け取る、1つのみの前記トランジスタの前記ゲート端子を駆動する工程であって、前記トランジスタの通電端子は、光を発するように構成されている半導体ダイオードに接続されている、前記トランジスタの前記ゲート端子を駆動する工程と、
前記ユニポーラ・パルスによる前記トランジスタの活性化に応答して光パルスを生成するために、前記半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加する工程とを含み、前記光パルスは50ps~500psの半値全幅持続時間を有する、光パルスを生成する方法。
【請求項19】
前記光パルスの振幅を制御するために、前記ユニポーラ・パルスのパルス振幅ではなく、パルス持続時間を調整する工程をさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
30Hz~200MHzの繰り返し数にある一連の光パルスを生成するために、前記受信する工程、前記生成する工程、前記駆動する工程、及び前記印加する工程を繰り返す工程をさらに含む請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記バイポーラ電気パルスは、第1の振幅を有する第1のパルスと、反対の極性の、前記第1のパルスとは異なる大きさの第2の振幅を有し、前記第1のパルスの後にある第2のパルスとを含む請求項18又は19に記載の方法。
【請求項22】
前記光パルスの一部分を、可飽和吸収体を用いて差動的に減衰させる工程をさらに備える、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項23】
前記2つの差動クロック信号の間の位相遅延によって、前記ユニポーラ・パルスの長さを設定する工程をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記半導体ダイオードからの前記光パルスを用いて試料を照射する工程と、
前記試料から蛍光寿命を検出する工程と、
2つの異なる蛍光分子又は前記分子が位置する環境と関連付けられる異なる減衰率を有する少なくとも2つの異なる蛍光寿命を区別する工程であって、前記光パルスは単一の固有波長にある、区別する工程とをさらに備える、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項25】
前記試料のある領域の電子画像を生成する工程と、
前記電子画像内で蛍光寿命に基づく前記試料の少なくとも1つの特性を示す工程とをさらに備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記半導体ダイオードからの光パルスを用いて試料を照射する工程と、
単一の光検出器の単一の電荷蓄積間隔の間に、前記単一の光検出器を用いて、前記試料から後方散乱される光子の到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別する工程とをさらに備える、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、蛍光寿命及び飛行時間用途を含む時間領域用途のために、短パルス及び超短光パルスを生成するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時間領域分析を含む様々な研究開発の分野及び商業用途において、超短光パルス(すなわち、約100ピコ秒未満の光パルス)が有用である。例えば、超短光パルスは、時間領域分光法、光学式測距、時間領域イメージング(TDI)、及び光コヒーレンス・トモグラフィ(OCT)のための寿命分解蛍光検出に有用であり得る。超短パルスはまた、光通信システム、医療用途、及び光電子デバイスならびに材料の試験を含む商業用途にも有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のモード・ロック・レーザは、超短光パルスを生成するように開発されており、様々なそのようなレーザが現在市販されている。例えば、いくつかの固体レーザ及びファイバ・レーザは、200フェムト秒を十分に下回る持続時間を有するパルスを送達するように開発されている。しかしながら、いくつかの用途について、これらのパルス持続時間は、有用な結果を得るために必要とされるよりも短い場合があり、これらのレージング・システムの費用は法外に高い場合がある。加えて、これらのレージング・システムは、相当に大きいフットプリント(例えば、0.0929m(1ft)程度以上)及び相当の重量を有し、容易に携帯可能ではない場合がある独立型システムであり得る。そのようなレージング・システム及びそれらの駆動電子装置は、交換可能モジュールとして機器に組み込むのが困難である場合があり、又はさらには、手持ち式デバイスに組み込まれることが不可能である場合がある。結果として、超短パルス・レーザは、そこから出力ビームが特定の用途のための別の機器に結合され得る別個の独立型機器として製造されることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において説明されている技術は、レーザダイオード(LD)又は発光ダイオード(LED)を用いて短パルス及び超短光パルスを生成するための装置及び方法に関する。短パルスは、約100ピコ秒と約10ナノ秒との間の半値全幅(FWHM)時間プロファイルを有するパルスである。超短パルスは、約100ピコ秒未満のFWHM時間プロファイルを有するパルスである。いくつかの実施形態においては約2ナノ秒未満であり、場合によっては約100ピコ秒未満の持続時間を有するパルスを生成するために、コンパクトで低コストのレーザ・システムに実装することができる利得切換技法及び関連回路が説明される。本発明者らは、コンパクトで低コストのパルス・レーザ・システムを、機器(例えば、蛍光寿命イメージング・デバイス、寿命分解蛍光検出を利用する生物分析機器、飛行時間機器、光コヒーレンス・トモグラフィ機器)であって、そのような機器を容易に携帯可能になり、従来の超短パルス・レーザ・システムを使用するそのようなシステムの場合に可能であるよりもかなり低いコストで製造されることを可能にすることができる、機器に組み込むことができることを認識し、諒解するに至った。高い可搬性は、そのような機器を、研究、開発、臨床、商用、及び家庭内の用途により有用なものにすることができる。
【0005】
いくつかの実施形態は、光を発するように構成されている半導体ダイオードと、半導体ダイオードの端子に結合されているトランジスタを含む駆動回路とを備えるパルス光源に関し、駆動回路は、ユニポーラ・パルスを受信し、ユニポーラ・パルスの受信に応答して半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態は、光パルスを生成する方法に関する。方法は、少なくとも1つのクロック信号を受信する工程と、少なくとも1つのクロック信号から電気パルスを生成する工程と、電気パルスによってトランジスタのゲート端子を駆動する工程であって、トランジスタの通電端子は、光を発するように構成されている半導体ダイオードに接続されている、駆動する工程と、電気パルスによるトランジスタの活性化に応答して光パルスを生成するために、半導体ダイオードにバイポーラ電流パルスを印加する工程とを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態は、光を発するように構成されている半導体ダイオードと、光パルスを生成するために半導体ダイオードにバイポーラ電流パルスを印加するように構成されている駆動回路と、光パルスを試料に送達するように構成されている光学系と、光検出器であって、光検出器の単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンへと弁別するように構成されている光検出器とを備える、蛍光寿命分析システムに関する。
【0008】
いくつかの実施形態は、光を発するように構成されている半導体ダイオードと、第1の論理ゲートであって、第1の論理ゲートの出力において第1のパルスを形成するように構成されている、第1の論理ゲートと、第1の論理ゲートに結合されている駆動回路とを備えるパルス光源に関し、駆動回路は、第1のパルスを受信し、第1のパルスの受信に応答して光パルスを生成するために、半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態は、光を発するように構成されている半導体ダイオードと、半導体ダイオードの端子に結合されているトランジスタを含む駆動回路とを備えるパルス光源に関し、駆動回路は、ユニポーラ・パルスを受信し、ユニポーラ・パルスの受信に応答して半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されており、トランジスタは、電流源と基準電位との間で半導体ダイオードと並列に接続されている。
【0010】
いくつかの実施形態は、光を発するように構成されている半導体ダイオードと、半導体ダイオードの第1の端子に接続されている複数の第1の回路分岐とを備えるパルス光源に関し、各回路分岐は、その通電端子が、基準電位と半導体ダイオードの第1の端子との間に接続されているトランジスタを備える。
【0011】
いくつかの実施形態は、信号及び反転信号を提供する無線周波数増幅器と、信号及び位相シフト反転信号を受信し、パルス及び反転パルスを出力するように構成されている論理ゲートと、パルス及び反転パルスを共通の出力上に結合するように構成されている結合器と、共通の出力に結合されており、パルス及び反転パルスの受信に応答して光パルスを生成するように構成されている半導体ダイオードとを備えるパルス光源に関する。
【0012】
いくつかの実施形態は、第1の信号及び第1の信号の反転バージョンを受信し、パルス及びパルスの反転バージョンを出力するように構成されている無線周波数論理ゲートと、無線周波数論理ゲートに接続されている半導体ダイオードであって、半導体ダイオードの第1の端子においてパルスを受信し、半導体ダイオードの第2の端子においてパルスの反転バージョンを受信し、光パルスを放出するように構成されている、半導体ダイオードとを備えるパルス光源に関する。
【0013】
本教示の上記の及び他の態様、実施態様、動作、機能、特徴及び実施形態は、添付の図面とともに以下の説明からより十分に理解することができる。
本明細書において記載されている図は、例示を目的としたものにすぎないことを、当業者は理解しよう。いくつかの事例において、本発明の様々な態様は、本発明の理解を容易にするために、誇張又は拡大されて示されている場合があることを理解されたい。図面において、同様の参照符号は、概して様々な図全体を通じて同様の特徴、機能的に類似する及び/又は構造的に類似する要素を参照する。図面は、必ずしも原寸に比例してはおらず、むしろ、本教示の原理を例示しているところが強調されている。図面は、決して本教示の範囲を限定するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】いくつかの実施形態による分析機器に組み込まれているパルス・レージング・システムを示す図。
図1-2】いくつかの実施形態による超短光パルスの列を示す図。
図2-1A】いくつかの実施形態による、利得切換のための光学ポンプ及び出力パルスを示す図。
図2-1B】いくつかの実施形態による、緩和振動を示す図である。
図2-1C】いくつかの実施形態による、テールを示している光出力パルスを示す図。
図2-2A】いくつかの実施形態によるパルス半導体レーザダイオードを示す図。
図2-2B】1実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードをパルス化するためのパルサ回路の概略図。
図2-2C】いくつかの実施形態による、レーザダイオードに送達される電流の改善を示す図。
図2-3】いくつかの実施形態による、レーザダイオードを利得切換するための電流駆動波形を示す図。
図2-4A】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードを駆動するためのパルサ回路を示す図。
図2-4B】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードを駆動するためのパルサ回路の概略図。
図2-4C】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードを駆動するためのパルサ回路の概略図。
図2-4D】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードをパルス化するためのRFドライバを示す図。
図2-4E】いくつかの実施形態による、図2-4Dの回路によって生成される駆動波形を示す図。
図2-4F】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードをパルス化するためのRFドライバを示す図。
図2-4G】いくつかの実施形態による、図2-4Fの回路によって生成される駆動波形を示す図。
図2-4H】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードを駆動するためのパルサ回路の概略図。
図2-4I】いくつかの実施形態による、レーザダイオードへのパワー結合の効率を示す図。
図2-4J】いくつかの実施形態による、レーザダイオード又は発光ダイオードからの光学的発光をパルス化するためのパルサ及びドライバ回路を示す図。
図2-4K】いくつかの実施形態による、パルスの列を生成するためのパルサ回路を示す図。
図2-4L】いくつかの実施形態による、パルサ回路内の論理ゲートへのデータ入力を示す図。
図2-4M】いくつかの実施形態による、電気パルスによってレーザダイオード又は発光ダイオードを駆動するためのドライバ回路を示す図。
図2-5A】いくつかの実施形態による、レーザダイオードを利得切換するためのパルサ回路を示す図。
図2-5B】いくつかの実施形態による、パルサ回路の駆動電圧を示す図。
図2-5C】いくつかの実施形態による、利得切換レーザダイオードから生成される超高速光パルスの例示的な測定値を示す図。
図2-5D】いくつかの実施形態による、利得切換レーザダイオードから生成される超高速光パルスの例示的な測定値を示す図。
図2-6A】いくつかの実施形態による、利得切換又はQ切換することができる、スラブ結合光導波路半導体レーザを示す図。
図2-6B】いくつかの実施形態による、スラブ結合光導波路レーザにおける光学モード・プロファイルを示す図。
図2-6C】いくつかの実施形態による、集積された利得切換半導体レーザ及び結合されている可飽和吸収体を示す図。
図3-1】いくつかの実施形態による、光パルスのタイミングを機器電子装置に同期させるためのシステムを示す図。
図3-2】いくつかの実施形態による、光パルスのタイミングを機器電子装置に同期させるためのシステムを示す図。
図3-3】いくつかの実施形態による、2つのパルス源からの光パルスのタイミングを機器電子装置に同期させるためのシステムを示す図。
図3-4A】いくつかの実施形態による、2つのパルス源からの光パルスのインターリーブされたタイミングを機器電子装置に同期させるためのシステムを示す図。
図3-4B】いくつかの実施形態による、2つのパルス光源からのインターリーブ及び同期されたパルス列を示す図。
図4-1】いくつかの実施形態による試料の蛍光寿命を分析するための機器を示す図。
図4-2】異なる発光寿命を有する蛍光分子の発光確率を示す図。
図4-3】蛍光分子からの蛍光発光の時間ビニング検出を示す図。
図4-4】いくつかの実施形態による時間ビニング光検出器を示す図。
図4-5A】いくつかの実施形態による複数の励起パルス、ならびに、その後の蛍光発光及び対応するビニングされた信号を示す図。
図4-5B】いくつかの実施形態による、特定の蛍光色素分子についてのビニングされた信号から生成されるヒストグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴及び利点は、図面とともに取り上げられるときに下記に記載される詳細な説明からより明らかとなろう。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向に関する参照(「上(above)」、「下(below)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」など)が使用される場合がある。そのような参照は、読者が図面を通常の向きで見るのを補助するものとしてのみ意図されている。これらの方向に関する参照は、具現化されるデバイスの好ましい又は唯一の向きを説明するようには意図されていない。デバイスは、他の向きで具現化されてもよい。
I.導入
本発明者らは、1GHzを下回るパルス繰り返し数を有する従来の超短パルス光源は、一般的に大きく、高価で、多くのモバイル用途には適していないことを認識し、諒解するに至った。例えば、従来の超短パルス・レーザは、コンパクトなポータブル機器に組み込むことができない。本発明者らは、小さい短パルス又は超短パルス光源が、広範囲の時間領域用途のための新規で有用なデバイスを可能にすることができることを認識し、諒解するに至った。そのような用途は、限定ではないが、飛行時間イメージング、測距、蛍光及び蛍光寿命分析、生物又は化学分析、光コヒーレンス・トモグラフィ(OCT)、及び医療ポイント・オブ・ケア(POC)計装を含む。いくつかの事例において、POC計装は、生体試料からの蛍光発光を検出し、生体試料の特性を決定するために蛍光発光を分析するための装置を含むことができる。パルス光源を使用して、そのような計装において蛍光発光を励起することができる。本発明者らは、いくつかの実施形態による、コンパクトな短パルス及び超短パルス光源、及び、約2ナノ秒を下回り、さらには100ピコ秒未満のパルス持続時間を有する様々な波長にある光パルスを生成することができるシステムを着想した。
【0016】
概観すると、図1-1は、蛍光発光を励起及び検出するPOCもしくはOCT機器又は飛行時間イメージング機器のような、分析機器1-100に組み込むことができるパルス光源1-110を示している。機器は、光学系1-140及び分析システム1-160を含むことができる。光学系1-140は、1つ又は複数の光学構成要素(例えば、レンズ、ミラー、光ファイバ、光学フィルタ、減衰器)を含むことができ、光源1-110からの光パルスに対して動作し、及び/又は、この光パルスを分析システム1-160に送達するように構成することができる。分析システムは、分析されるべき試料1-170から光信号(例えば、蛍光発光、後方散乱放射)を受信し、受信光信号を表す電気信号を生成するように構成されている1つ又は複数の構成要素(例えば、レンズ、ミラー、光学フィルタ、減衰器、光検出器)を含むことができる。いくつかの実施形態において、分析システム1-160は、電気信号を処理するように構成されている電子装置をさらに含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、パルス光源1-110は、利得切り換えされる少なくとも1つのレーザダイオード(LD)を含むことができる。いくつかの実施形態において、パルス光源1-110は、短電流パルスによって駆動される少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含んでもよい。ナノ秒スケールの、又は、より短い電流パルスを発生させるパルサ回路1-112を、光源1-110を駆動するために、分析機器1-100に含むことができる。
【0018】
レーザダイオードとして構成されるとき、パルス光源1-110は、利得媒体1-105(例えば、複数の量子井戸を含んでもよく、又は、含まなくてもよい任意の適切な半導体接合)と、光学レーザ・キャビティの端部を規定する少なくとも2つのキャビティ・ミラー1-102、1-104(又はレーザダイオードの反射ファセット)とを備えることができる。いくつかの実施形態において、ビーム成形、偏光制御、波長選択、及び/又はパルス形成のための1つ又は複数の追加の光学素子がレーザ・キャビティ内にあってもよい。集光光学素子がレーザダイオードに含まれてもよく、レーザダイオードからの発光をビームに集束するように構成されてもよい。レーザダイオードからのビームは、集光光学素子によってコリメートされてもよく、又は、されなくてもよい。レーザが利得切換モードにおいて動作するとき、レーザのダイオード接合を通じた電流パルスの印加に応答して、キャビティの端部ミラー1-102、1-104の間でレーザ・キャビティ内に光パルスを増大させることができる。キャビティ・ミラーの1つ1-104(しばしば出力カプラと称される)は、パルスの1部分を部分的に透過することができ、それによって、光パルス1-122がパルス・レーザ1-110から放出される。電流駆動パルスがレーザダイオードに繰り返し印加されるとき、レーザ・キャビティからパルス1-122(1つのみが示されている)の列を、高速に連続して放出することができる。このパルスの列は、ビーム・ウェストwによって特性化することができるレーザ・ビームと称される場合がある。レーザ・ビームは、コリメートされてもよく(平行な破線によって示されている)、部分的にコリメートされてもよく、又はコリメートされなくてもよい。ビーム・ウェストは、放出されるレーザ・ビームの横方向寸法(例えば、ガウス・ビームの横方向強度プロファイルの±1/e値、又は、他の横方向強度ビーム/プロファイルの半値全幅(FWHM)値)を表し、出力カプラからの距離によって値が変化し得る。ビームのコリメーション及びウェストは、レーザのキャビティの幾何形状及び光学特性、及び、任意の光学素子(例えば、コリメート・レンズ)がレーザ・キャビティに含まれるか否かに依存し得る。
【0019】
発光ダイオードとして構成されるとき、パルス光源1-110は、非コヒーレント又は部分的にコヒーレントな光を発するように構成されている任意の適切な半導体接合を備えることができる。集光光学素子がLEDに含まれてもよく、LEDからの発光を出力ビームに集束するように構成されてもよい。LEDからのビームは、集光光学素子によってコリメートされてもよく、又は、されなくてもよい。動作時、LEDは、LED接合にわたる電流パルスの印加に応答して主に自然に放出される光子の光パルスを発生させるが、いくらかの誘導放出が、増幅された自然放出として出力中に存在し得る。一般的に、LDから放出されるスペクトル帯域幅が2ナノメートル未満であり得る一方で、LEDから放出されるスペクトル帯域は、数十ナノメートル程度である。
【0020】
LD又はLEDから放出される固有波長は、半導体材料及び/又は半導体材料に添加される不純物の選択によって選択することができる。スペクトルの赤色及び赤外線領域におけるより長い波長には、リン化インジウム・ベースの半導体及びその合金が使用され得る。スペクトルの黄色領域に対するより短い波長には、ガリウムヒ素リン・ベースの半導体及びその合金が使用され得る。スペクトルの緑色及び青色領域には、アルミニウム・ガリウム・リン又は窒化ガリウム及びそれらの合金が使用され得る。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、固有波長270nm、280nm、325nm、340nm、370nm、380nm、400nm、405nm、410nm、450nm、465nm、470nm、490nm、515nm、640nm、665nm、808nm、及び980nmのうちの1つ又は複数を有するパルスを生成するために、蛍光発光を励起及び検出する機器(例えば、POC蛍光寿命イメージング機器)のパルス光源1-110に対して、特定の半導体材料を選択することができる。いくつかの実施態様において、約270nm~約370nm、約340nm~約400nm、約380nm~約490nm、及び約410nm~約470nmの波長の範囲うちの1つに該当する波長の範囲又はスペクトル分布を有するパルスを生成するための機器のパルス光源1-110に対して、半導体を選択することができる。
【0022】
参考までに、「固有波長」又は「波長」という語句は、制限された放射帯域幅内の中心波長又は主波長を指し得る。いくつかの事例において、これは、放射帯域幅内のピーク波長を指す場合がある。「固有エネルギー」又は「エネルギー」という語句は、固有波長と関連付けられるエネルギーを指し得る。「光学的(optical)」という用語は、紫外線、可視光、近赤外線、及び短波長赤外線のスペクトル帯域を指し得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、光学系1-140は、パルス光源1-110から放出されるパルス1-122のビームに対して動作することができる。例えば、光学系は、ビームを再成形し、及び/又は、ビームの発散を変化させるための1つ又は複数のレンズを含んでもよい。ビームの再成形は、ビーム・ウェストの値を増大もしくは低減すること、及び/又は、ビームの断面形状を変化させること(例えば、楕円形から円形に、円形から楕円形に、など)を含んでもよい。ビームの発散を変化させることは、ビームの発散を増大又は低減することを含んでもよい。いくつかの実施態様において、光学系1-140は、ビーム・エネルギーの量を変化させるための減衰器又は光学増幅器を含むことができる。いくつかの事例において、光学系は、波長フィルタリング要素を含むことができる。いくつかの実施態様において、光学系は、パルス成形要素、例えば、パルス・ストレッチャ及び/又はパルス圧縮器を含むことができる。いくつかの実施形態において、光学系は、パルス長を低減するための可飽和吸収体、又は、パルス波長を周波数2倍化を介してより短い波長へ、又は、パラメトリック増幅を介してより長い波長へ変換するための非線形結晶のような、1つ又は複数の非線形光学素子を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、光学系1-140は、光源1-110からのパルスの偏光を変更、選択、及び/又は制御する1つ又は複数の要素を含むことができる。
【0024】
パルス光源1-110及び光学系1-140は、図1-1においては分析システム1-160とは別個の要素として示されているが、パルス光源及び光学系は、いくつかの実施形態によれば、分析システム1-160内に収容することができる、コンパクトな交換可能モジュールとして製造されてもよい。いくつかの実施形態において、パルサ回路1-112及びパルス光源1-110は、同じボード(例えば、同じプリント回路ボード)又は同じ基板(例えば、同じ半導体基板)上に集積されてもよい。
【0025】
様々な実施形態において、パルス光源から放出されるパルス1-122は、図1-2に示すような時間強度プロファイルを有し得る。いくつかの実施形態において、放出されるパルスのピーク強度値は、ほぼ等しくなり得、プロファイルはガウス時間プロファイルを有してもよいが、sechプロファイルのような他のプロファイルが可能であり得る。いくつかの事例において、パルスは、対称時間プロファイルを有しなくてもよく、他の時間的形状を有してもよい。いくつかの実施形態において、光源1-110内の利得及び/又は損失動態は、図2-1Cに関連して下記に説明するように、非対称プロファイルを有するパルスをもたらし得る。各パルスの持続時間は、図1-2に示すような、半値全幅(FWHM)値によって特性化することができる。超短光パルスは、100ピコ秒未満のFWHM値を有することができる。短光パルスは、約10ナノ秒未満のFWHM値を有することができる。
【0026】
光源1-110から放出されるパルスは、パルス分離間隔と称されることがある周期的な間隔Tだけ、時間的に離間することができる。いくつかの実施形態において、Tは、レーザにおける能動的利得及び/又は損失変調速度によって決定することができる。例えば、レーザダイオードが利得切り換えされる繰り返し数、又は、発光ダイオードの接合に印加される電流が、パルス分離間隔Tを決定することができる。いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは、約1nsと約100nsとの間であってもよい。いくつかの実施態様において、パルス分離間隔Tは、例えば、イメージング・デバイスのフレーム・レートにおいて繰り返すために、長くすることができる。いくつかの事例において、パルス分離間隔Tは、約100nsと約50msとの間であってもよい。
【0027】
パルス1-122の横方向空間プロファイルは、いくつかの実施形態では単一モードガウスであってもよいが、本発明はそのようなプロファイルには限定されない。いくつかの実施態様において、パルス1-122の横方向空間プロファイルは、例えば、複数の明確に異なる強度ピークを有する、マルチ・モードであってもよい。マルチ・モード・ソースについて、光学系1-140は、パルスの横方向強度プロファイルを均質化する拡散光学素子を含むことができる。マルチ・モード・ソースを使用することを可能にすることによって、レーザダイオードからより高いパルス・エネルギーを得ることができる。例えば、レーザダイオードの活性領域を、レーザの光軸を横断する方向において拡大して、その光出力を増大することができる。
【0028】
蛍光発光を励起するために使用されるとき、パルス光源からのパルス1-122は、「励起パルス」と称される場合がある。
「蛍光分子」という用語は、蛍光タグ、分子プローブに付着され得る蛍光マーカ、蛍光色素分子、及び自己蛍光分子を指すために使用され得る。「蛍光発光」という用語は、蛍光タグ、分子プローブに付着され得る蛍光マーカ、蛍光色素分子、及び自己蛍光分子から発する光を指すために使用され得る。
【0029】
II.パルス光源
本発明者らは、レーザダイオード及び発光ダイオードから短パルス及び超短光パルスを生成するためのパルサ回路及び技法を着想した。パルス化回路及び技法は、いくつかの実施態様においては、半導体レーザを利得切換し、最大100MHzの繰り返し数(10ナノ秒程度と短いT)において約1Wのピーク・パワーを有する、約85ピコ秒(ps)パルスの列(FWHM)を生成するために利用されている。いくつかの実施形態において、ユニポーラ又はバイポーラ電流波形を、パルサ回路によって生成することができ、光パルスを励起し、パルスのテールにおける発光を抑制するように、レーザダイオードの利得媒体を駆動するために使用することができる。いくつかの実施形態において、ユニポーラ又はバイポーラ電流波形を、パルサ回路によって生成することができ、短パルス又は超短光パルスを出力するように1つ又は複数の発光ダイオードを駆動するために使用することができる。
【0030】
レーザダイオードにおける利得切換を説明する目的で、利得切換と関連付けられるレーザ動態を示すために、図2-1Aから図2-1Cが含まれている。図2-1Aは、いくつかの実施形態によれば、利得切換レーザの利得媒体に印加されるポンプ・パワーを表すポンプ・パワー曲線2-110を示す。図示されているように、ポンプ・パワーは、レーザ・キャビティ内の利得媒体に、短い持続時間(約0.6マイクロ秒として示されている)にわたって印加することができる。半導体レーザダイオードについて、ポンプ・パワーの印加は、レーザダイオードのp-n接合又は多重量子井戸(MQW)にわたってバイアス電流を印加することを含むことができる。ポンプ・パワー・パルスは、周期的に離間された時間間隔で、例えば、パルス分離間隔又はパルス繰り返し時間Tで、繰り返し印加することができる。
【0031】
ポンプ・パワー・パルスが印加されている間、レーザ・キャビティ内の光学利得は、利得がキャビティにおける光学損失を超え始めるまで増大する。この時点の後、レーザはレージング(すなわち、誘導放出の工程によって利得媒体を通過する光子を増幅)し始めることができる。増幅工程の結果として、レーザ光が急速に増大し、利得媒体内の励起状態が空乏して、少なくとも1つの出力パルス2-130が図示のように生成される。いくつかの実施形態において、ポンプ・パワー・パルス2-110は、出力パルスのピークが生じるのとほぼ同時にオフになるように、タイミングをとられる。ポンプ・パワー・パルスがオフになることによって、さらなるレージングが終了し、それによって、出力パルス2-130が消える。いくつかの実施形態において、出力パルス2-130は、図面に示すように、ポンプ・パルス2-110よりも短い持続時間を有し得る。例えば、利得切換によって生成される出力パルス2-130は、ポンプ・パルス2-110の持続時間の1/5よりも小さくてもよい。
【0032】
ポンプ・パワー・パルスがオフにされない場合、図2-1Bに示す動態が生じ得る。この事例において、階段関数として示されているポンプ・パワー曲線(ポンプ電流密度として示されている)2-140は、半導体レーザに印加される電流密度を表す。グラフは、利得媒体がポンピング電流密度によって励起され、それによって、レーザダイオードの利得領域におけるキャリア密度Nが生成されることを示している。レージング閾値電流密度Ithの約2倍のポンプ電流密度Iが時刻t=0において印加され、その後、そのままにされる。グラフは、レーザの光学利得がキャビティ内の損失を超えるまで、半導体利得領域のキャリア密度Nが増大することを示している。この時点の後、キャリア密度及び光学利得をキャビティ損失を下回る値まで空乏させる第1のパルス2-161が増大し、放出される。その後、第2のパルス2-162が増大し、キャリア密度Nを空乏させ、放出される。キャリア密度の増大及び空乏は、レーザが安定して連続波動作になる(例えば、この例では約7ナノ秒後)まで、数サイクルにわたって繰り返す。パルス(パルス2-161、パルス2-162、及び後続のパルス)のサイクルは、レーザの緩和振動と称される。
【0033】
本発明者らは、超短パルスを生成するためにレーザを利得切換するときの課題は、緩和振動が継続することの有害な影響を回避することであることを認識し、諒解するに至った。例えば、図2-1Cに示すように、ポンプ・パワー・パルス2-110が十分迅速に終端しない場合、少なくとも第2の光パルス2-162(緩和振動に起因する)がレーザ・キャビティ内で増大し始め、利得切換出力パルス2-170にテール2-172を付加する場合がある。本発明者らは、そのようなテールは、蛍光寿命に基づいて蛍光分子を区別することを目標とする用途のようないくつかの用途にとっては望ましくない可能性があることを認識し、諒解するに至った。励起パルスのテールが十分迅速に低減されない場合、波長フィルタリングが利用されない限り、励起放射は、検出器を圧倒する場合がある。代替的に又は付加的に、励起パルス上のテールは、蛍光分子を励起し続ける場合があり、蛍光寿命の検出を複雑にする場合がある。
【0034】
励起パルスのテールが十分迅速に低減される場合、蛍光発光中に存在する励起放射は、無視できるものであり得る。そのような実施態様において、蛍光発光の検出中に励起放射をフィルタリングすることは、蛍光発光を検出し、蛍光分子寿命を区別するためには必要ない場合がある。いくつかの事例において、励起フィルタリングをなくすことによって、分析システム1-160を大幅に単純化し、その費用を低減することができ、システムの構成をよりコンパクトにすることを可能にすることができる。例えば、蛍光発光中の励起波長を抑制するためにフィルタが必要ない場合、励起源及び蛍光検出器は密に近接して(例えば、同じ回路基板又は集積デバイス上に、またさらには互いの数マイクロメートル(数ミクロン)以内に)位置することができる。
【0035】
本発明者らはまた、いくつかの事例において、励起パルス上のテールは許容することができることも認識し、諒解するに至った。例えば、分析システム1-160は、波長フィルタを検出光路に組み込むことを容易に可能にする光学的構成を有することができる。波長フィルタは、検出器が生物学的試料から定量化可能な蛍光を受信するように、励起波長を拒絶するように選択することができる。結果として、パルス光源からの励起放射は、検出される蛍光を圧倒しない。
【0036】
いくつかの実施形態において、蛍光分子の発光寿命τは、いくつかの実施形態によれば、1/e強度値によって特性化することができるが、いくつかの実施形態では、他の測定基準が使用されてもよい(例えば1/e、発光半減期など)。蛍光分子の寿命を決定する正確度は、蛍光分子を励起するために使用される励起パルスが、蛍光分子の寿命よりも短い持続時間を有する場合に改善される。好ましくは、励起パルスは、蛍光分子の発光寿命よりも少なくとも3倍だけ短いFWHM持続時間を有する。より長い持続時間を有する励起パルス、又は、相当のエネルギーを有するテール2-172は、減衰する発光が評価されている間に蛍光分子を励起し続け、蛍光分子寿命の分析を複雑にする場合がある。そのような事例における蛍光寿命決定を改善するために、デコンボリューション技法を使用して、検出されている蛍光から、励起パルス・プロファイルの畳み込みを解くことができる。
【0037】
いくつかの事例において、蛍光分子又は試料の消光を低減するために、超短パルスを使用して蛍光分子を励起することが好ましい場合がある。蛍光分子のポンピングが延長することによって、蛍光分子が経時的に白化及び/又は損傷する場合があり、一方で、より短い持続時間にわたって強度をより高くすることは、(たとえ分子にかかる全エネルギー量が同じであったとしても)より低い強度での長時間の曝露ほどには、蛍光分子を損傷しない場合があることが分かっている。曝露時間を低減することによって、蛍光分子に対する、光によって誘発される損傷を回避又は低減し、蛍光分子が分析システム1-160内でそのために使用される測定の時間又は回数を増大することができる。
【0038】
いくつかの用途において、本発明者らは、励起パルスが、パルスのピーク・パワー・レベルを少なくとも約40dB下回るパワー・レベルまで、迅速に(例えば、パルスのピークから約250ps以内に)終端することが望ましいことを見出した。いくつかの実施形態は、より少量のパワー低減、例えば、約250ps以内で約20dBと約40dBとの間のパワー低減を許容することができる。いくつかの実施形態は、250ps以内で、例えばいくつかの実施形態において約40dBと約80dbとの間、又は、いくつかの実施形態において約80dBと約120dbとの間の、同様の又はより大量のパワー低減を必要とする場合がある。いくつかの実施形態において、これらのパワー低減レベルは、ポンピング・パルスのピークから約100ps以内に必要とされ得る。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔T(図1-2参照)もまた、パルス・レーザ・システムの重要な態様になり得る。例えば、蛍光分子の発光寿命を評価及び/又は区別するためにパルス・レーザを使用するとき、励起パルスの間の時間は好ましくは、発光寿命を十分に正確に決定することを可能にするために、試験されている蛍光種の任意の発光寿命よりも長い。例えば、後続のパルスは、先行するパルスから励起される蛍光分子又は励起される蛍光分子の集合が、蛍光を発するために妥当な時間を得る前に到来するべきではない。いくつかの実施形態において、間隔Tは、蛍光分子を励起する励起パルスと、励起パルスの終端後で、かつ次の励起パルスの前に、蛍光分子によって放出される後続の光子との間の時間を決定するのに十分に長い必要がある。
【0040】
励起パルス間の間隔Tは、蛍光種の減衰特性を決定するのに十分に長くなるべきであるが、パルス分離間隔Tが、短期間に多くの測定が行われることを可能にするのに十分に短いことも望ましい。限定ではなく例として、いくつかの用途において使用される蛍光分子の発光寿命(1/e値)は、約100ピコ秒~約10ナノ秒の範囲内であり得る。それゆえ、使用される蛍光分子に応じて、約200ps程度と短いパルス分離間隔を使用することができ、一方で、より寿命の長い蛍光分子については、約20ナノ秒よりも長いパルス分離間隔Tを使用することができる。したがって、蛍光寿命分析のために蛍光発光を励起するために使用される励起パルスは、いくつかの実施形態によれば、約25ピコ秒と約2ナノ秒との間のFWHM持続時間を有することができる。
【0041】
蛍光発光を検出し、寿命分析に関するデータ及び視覚表示を提供するために積分時間領域イメージング・アレイが使用されるいくつかの用途において、パルス分離間隔Tは、イメージング・システムのフレーム・レートよりも短くなる必要はない場合がある。例えば、単一の励起パルス後に十分な蛍光信号がある場合、イメージング・フレームの複数の励起パルスにわたる信号累積は必要ない場合がある。いくつかの実施形態において、パルス光源1-110のパルス繰り返し数Rは、イメージング・システムのフレーム・レートRに同期することができ、それによって、パルス繰り返し数は、約30Hz程度に遅くすることができる。他の実施形態において、パルス繰り返し数は、フレーム・レートよりも相当に高くなり得、画像内の各画素の蛍光遅延信号は、複数の励起パルス後の積分値であり得る。
【0042】
パルス光源2-200の例が、図2-2Aに示されている。いくつかの実施形態によれば、パルス光源2-200は、基板2-208上に形成されている市販の又はカスタム半導体レーザダイオード2-201(又は1つもしくは複数のLED)を備えることができる。レーザダイオード又はLEDは、電気コネクタ2-224を含むハウジング2-212内にパッケージすることができる。レーザ又はLEDからの出力ビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させるためにパッケージに含まれる、1つ又は複数の光学素子2-205(例えば、1つ又は複数のレンズ)があり得る。レーザダイオード2-201(又は1つもしくは複数のLED)は、接続ケーブル2-226及び少なくとも1本のワイヤ2-220を介してダイオード2-201へと1連の電流パルスを提供することができるパルサ回路2-210によって駆動することができる。パルサ回路2-210からの駆動電流は、レーザダイオード又はLEDから放出される光パルス2-222の列を生成することができる。
【0043】
LEDを使用することの1つの利点は、それらの費用がレーザダイオードと比較してより低いことである。加えて、LEDは、イメージング用途により良好に適し得る、より広い、一般的にインコヒーレントなスペクトル出力を提供する(例えば、LEDは、より少ない光学干渉アーチファクトを生成し得る)。レーザダイオードについて、収集される画像内のスペックルを回避するための方策がとられない限り、コヒーレント放射は、スペックルを導入し得る。また、LEDは、励起波長を紫外線(例えば、約240nmまで下げる)へと拡張することができ、生物試料における自己蛍光を励起するために使用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、レーザダイオード2-201は、第1の導電型(例えば、p型)を有する第1の層2-202と、反対の導電型を有する第2の層2-206とを備える半導体接合を含むことができる。第1の層と第2の層との間には、1つ又は複数の中間層2-204が形成されてもよい。例えば、中間層は、第1の層及び第2の層から注入されるキャリアが再結合して光子を生成する多重量子井戸(MQW)層を含んでもよい。いくつかの実施形態において、中間層は、電子及び/又は正孔ブロック層を含んでもよい。レーザダイオードは、いくつかの実施態様において、無機材料及び/又は有機半導体材料を含んでもよい。材料は、所望の発光波長が得られるように選択することができる。例えば、無機半導体について、III族窒化物組成が約500nm未満の波長において発光するレーザに使用されてもよく、III族ヒ化物組成又はIII族リン化物組成が、約500nmを超える波長において発光するレーザに使用されてもよい。限定ではないが、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、端面発光レーザダイオード、又は、スラブ結合光導波路レーザ(SCOWL)を含む、任意の適切なタイプのレーザダイオード2-201が使用されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数のLEDが、レーザダイオードの代わりに使用されてもよい。LEDは、LDよりも低い強度を有し得るため、複数のLEDが使用されてもよい。LEDは緩和振動又はレージング動作に関連付けられる動態を受けないため、その出力パルスは、レーザについて生じるよりも持続時間が長く、スペクトル帯域幅がより広くなり得る。例えば、出力パルスは、約50psと約2nsとの間であってもよく、スペクトル帯域幅は、約20nm以上であってもよい。いくつかの実施態様において、LEDからの出力パルスは、約100psと約500psとの間であってもよい。より長い減衰時間を有する蛍光分子のために、より長い励起パルスが許容可能であり得る。加えて、LEDは、非偏光又は部分偏光出力ビームを生成することができる。パルス光源のいくつかの実施態様において、後述するパルサ回路の実施形態を使用して、1つ又は複数のLEDを駆動することができる。
【0046】
本発明者らは、いくつかの従来のレーザダイオード・システムが、図2-2Bに示すようにモデル化することができる電流ドライバ回路を備えることを認識するに至った。例えば、電流ドライバ2-210は、レーザダイオードに電流パルスを送達するように構成されているパルス電圧源2-230を備えることができる。レーザダイオードへの接続は、一般的に、ケーブル2-226、アダプタ又はコネクタ2-224、及び、レーザダイオード2-210上のコンタクト・パッドに接合されている単一のワイヤ2-220を通じて行われる。アダプタ2-224とレーザダイオードとの間の接続は、直列インダクタンスL1及び直列抵抗R1を含むことができる。接続はまた、コンタクト及び/又はダイオード接合と関連付けられる小さい接合静電容量(図示せず)をも含むことができる。
【0047】
本発明者らは、ワイヤ・ボンド(例えばコネクタ2-224とレーザダイオード2-201との間)の数を増大することによって、レーザダイオード2-201への接続のインダクタンス及び/又は抵抗を低減することができることを認識し、諒解するに至った。そのようなインダクタンス及び/又は抵抗の低減は、レーザダイオードの電流変調をより高速にし、出力パルスをより短くすることを可能にすることができる。いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードの速度を向上させるために、単一のワイヤ・ボンド2-220が、複数の並列ワイヤ・ボンドに置き換えられてもよい。例えば、ワイヤ・ボンドの数は、3本以上に増大することができる。いくつかの実施態様において、レーザダイオードに対する最大50本のワイヤ・ボンドがあってもよい。
【0048】
本発明者らは、市販のレーザダイオードに対する、ワイヤ・ボンド2-220の数の増大の影響を調査した。考慮された1例の市販のレーザは、現在ウシオ(Ushio)[米国カリフォルニア州サイプレス(Cypress)所在]から入手可能なオクラロ(Oclaro)レーザダイオード、モデルHL63133DGであった。ワイヤ・ボンドの数を増大させる数値シミュレーションの結果が、図2-2Cに示されている。シミュレーションは、ワイヤ・ボンドの数を、市販のデバイスの単一のボンド(曲線2-250)から、3本のワイヤ・ボンド(曲線2-252)及び36本のワイヤ・ボンド(曲線2-254)へと増大させた。固定18Vパルスについてレーザダイオードへと送達される平均駆動電流が、3つの異なる事例について、一定範囲の周波数にわたって決定された。結果は、ワイヤ・ボンドの数が多くなるほど、より多くの電流がより高い周波数においてレーザダイオードに送達されることが可能になることを示している。例えば、1GHzにおいて、3本だけのワイヤ・ボンドを使用することによって(曲線2-252)、単一のワイヤ・ボンドの場合よりも4倍を超える量の電流が、レーザダイオードに送達されることが可能になる。短パルス及び超短パルスは、より広い帯域幅(短パルスを形成するためのより高い周波数成分)を必要とするため、複数のワイヤ・ボンドを加えることによって、より高い周波数成分が、単一のワイヤ・ボンドよりも短いパルスにおいてレーザダイオードを駆動することを可能にする。いくつかの実施態様において、複数のワイヤ・ボンドは、レーザダイオード上の単一のコンタクト・パッド又は複数のコンタクト・パッドと、レーザダイオード・パッケージ上のアダプタ又はコネクタ2-224との間に延在することができる。コネクタは、外部標準ケーブルへ(例えば、50オームBNC又はSMAケーブルへ)接続するように構成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、ワイヤ・ボンドの数及びワイヤ・ボンド構成は、レーザダイオードに接続されているアダプタ及び/又はケーブルのインピーダンスに整合するように選択することができる。例えば、ワイヤ・ボンドのインピーダンスは、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードから電流ドライバへのパワー反射を低減するために、コネクタ2-224のインピーダンスに整合することができる。他の実施形態において、ワイヤ・ボンドのインピーダンスは、正の電流駆動パルスの間に負のパルスを発生させるために、選択的に不整合にすることができる。レーザダイオードのパッケージング方法を選択すること(例えば、アダプタからレーザダイオードへのワイヤ・ボンドの数を選択すること)によって、より高い周波数においてレーザダイオードに供給される電流変調を改善することができる。これは、高速利得切換信号に対するレーザダイオードの応答性を高めることができ、光パルスをより短くすること、パルス・ピーク後の光パワーの低減をより高速にすること、及び/又は、パルス繰り返し数を増大することを可能にすることができる。
【0050】
ここで、図2-3を参照して、本発明者らは、バイポーラ・パルス波形2-300をレーザダイオードに印加することによって、生成される光パルス上の望ましくない発光テール2-172(図2-1Cを参照)を抑制することができることをさらに認識し、諒解するに至った。バイポーラ・パルスはまた、LEDからの光パルスを短縮するために使用することもできる。バイポーラ・パルスは、第1の極性の第1のパルス2-310、及び、後続する、反対の極性の第2のパルス2-312を含むことができる。第2のパルス2-312の大きさは、第1のパルスの大きさとは異なってもよい。いくつかの実施形態において、第2のパルスは、第1のパルス2-310とほぼ等しい又はそれよりも小さい大きさを有してもよい。他の実施形態において、第2のパルス2-312は、第1のパルス2-310よりも大きい大きさを有してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、第2のパルスの大きさは、第1のパルスの大きさの約10%と、第1のパルスの大きさの約90%との間であってもよい。いくつかの実施態様において、第2のパルスの大きさは、第1のパルスの大きさの約25%と、第1のパルスの大きさの約90%との間であってもよい。いくつかの事例において、第2のパルスの大きさは、第1のパルスの大きさの約50%と、第1のパルスの大きさの約90%との間であってもよい。いくつかの実施形態において、第2のパルスのエネルギー量は、第1のパルスのエネルギー量の約25%と、第1のパルスのエネルギーの約90%との間であってもよい。いくつかの実施態様において、第2のパルスのエネルギー量は、第1のパルスのエネルギー量の約50%と、第1のパルスのエネルギーの約90%との間であってもよい。
【0052】
第1の駆動パルスは、レーザダイオード接合を順方向バイアスし、それによって、ダイオード活性領域内にキャリアを発生させることができ、キャリアは再結合して、光パルスを生成することができる。反対の極性にある第2の駆動パルス2-312は、ダイオード接合を逆方向バイアスし、活性領域からのキャリアの除去を加速して、光子発生を終了させることができる。第2の電気パルス2-312が、第2の緩和振動パルス(図2-1Bのパルス2-162を参照)とほぼ同時、又はその直前(例えば、約200ps以内)に生じるようにタイミングをとられる場合、そうでない場合に第2の光パルスを生成するキャリア濃度は、発光テール2-172が抑制されるように減少する。
【0053】
様々な回路構成を使用して、バイポーラ・パルス波形を生成することができる。図2-4Aは、バイポーラ・パルス波形を有するレーザダイオード又は1つもしくは複数のLEDを駆動するために使用することができる回路のほんの1例を示す。いくつかの実施形態において、伝送線路2-410(例えば、ストリップ・ライン又は同軸導体アセンブリ)をパルス回路2-400内に構成して、バイポーラ・パルスを半導体レーザダイオード2-420又は少なくとも1つのLEDに送達することができる。伝送線路2-410は、U字形構成に形成することができ、第1の導体上で、充電抵抗器RChを通じてDC電圧源VDDによってバイアスすることができる。伝送線路は、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードのインピーダンスにほぼ整合するインピーダンスを有することができる。いくつかの実施形態において、伝送線路のインピーダンスは、約50オームであってもよい。いくつかの実施態様において、伝送線路のインピーダンスは、約20オームと約100オームとの間であってもよい。いくつかの実施態様において、伝送線路のインピーダンスは、約1オームと約20オームとの間であってもよい。
【0054】
パルサ2-400は、伝送線路の1端にある伝送線路の第2の導体と、基準電位(例えば図示されている例では接地)との間に接続されている終端抵抗器Ztermをさらに含むことができる。伝送線路の第2の導体の他端は、レーザダイオード2-420に接続することができる。伝送線路の第1の導体の端部は、第1の導体の端部を基準電位(例えば、接地)に周期的に分路するように起動することができるスイッチM1(例えば、電界効果トランジスタ又はバイポーラ接合トランジスタ)に接続することができる。
【0055】
いくつかの事例において、終端インピーダンスZtermは、線路に戻る反射を低減するために、伝送線路2-410のインピーダンスにほぼ等しくすることができる。代替的に、終端インピーダンスZtermは、負のパルスを(スイッチM1による分路の後に)線路内及びレーザダイオード2-420に反射するために、線路のインピーダンスよりも小さくてもよい。いくつかの実施態様において、終端インピーダンスZtermは、反射される負のパルスの形状を制御するように選択される、容量性及び/又は誘導性構成要素を含んでもよい。図2-4Aに示すような伝送線路パルサを使用して、約30Hzから約200MHzまでの範囲内の繰り返し数を有する電気バイポーラ・パルスを生成することができる。いくつかの実施形態によれば、伝送線路パルサのための伝送線路2-410は、図2-5Aに示すように、プリント回路基板(PCB)上に形成されてもよい。
【0056】
図2-4Bは、別個の構成要素を使用して形成することができ、基板(チップ又はPCBなど)に集積することができる半導体光ダイオード2-423(例えば、レーザダイオード又は1つもしくは複数のLED)に接続されているドライバ回路2-401の実施形態を示す。いくつかの実施形態において、回路は、レーザダイオード又はLED2-423と同じ基板に集積されてもよい。レーザ・ドライバ回路2-401は、トランジスタM1のゲート又はベースに接続されている制御入力2-405を備えることができる。トランジスタは、CMOS FET、バイポーラ接合トランジスタ、又は高電子移動度トランジスタ(GaN pHEMTなど)であってもよいが、他の高速の、大電流を処理するトランジスタが使用されてもよい。トランジスタは、電流源2-430と、基準電位(例えば、接地電位、ただし、他の基準電位値が使用されてもよい)との間に接続することができる。トランジスタM1は、電流源2-430と基準電位との間で、レーザダイオード2-423(又は1つもしくは複数のLED)、及び、当該レーザダイオードと直列に接続されている抵抗器Rと並列に接続することができる。いくつかの実施形態によれば、ドライバ回路2-401は、レーザダイオードと基準電位との間で抵抗器Rと並列に接続されているキャパシタCをさらに含むことができる。トランジスタM1が記載されているが、ハイ伝導状態及びロー伝導状態を有する任意の適切な制御可能スイッチが使用されてもよい。
【0057】
動作時、ドライバ回路2-401は、トランジスタM1がオンである、すなわち、伝導状態にあるときに、レーザダイオード2-423をバイパスする電流をもたらすことができる。それゆえ、レーザダイオードからの光出力はない。トランジスタM1がオフになると、電流はトランジスタにおける抵抗経路の増大に起因して、レーザダイオードを通じて流れることができる。トランジスタが再びオンにされるまで、電流はレーザダイオードをオンにする。光パルスは、レーザダイオードに電流パルスを提供するためにトランジスタの制御ゲートをオン状態とオフ状態との間で変調することによって発生させることができる。この手法は、レーザを駆動するために必要とされる電源上の電圧及びトランジスタ上の電圧の量を、いくつかのパルス技法と比較して低減することができ、これは、そのような高速回路を実装するために重要な態様である。
【0058】
抵抗器R及び並列キャパシタCが存在することに起因して、ダイオードが順方向に伝導されているとき、キャパシタ上に電荷が蓄積する。これは、トランジスタM1が「オフ」状態、例えば、ロー又は非伝導状態にあるときに生じ得る。トランジスタがオンにされると、キャパシタにわたって貯蔵されている電圧がレーザダイオードを逆方向にバイアスする。逆方向バイアスは、実効的に、レーザダイオードにわたって負のパルスを生成し、これによって、そうでなく負のパルスがない場合に生じることになる発光テール2-172が低減し、又は、なくなり得る。抵抗器Rの値は、スイッチがその後開き、及び/又は、その後の光パルスがレーザダイオードによって発生する前に、キャパシタ上の実質的にすべての電荷が放電するように、選択することができる。例えば、時定数t=Rは、パルス繰り返し間隔Tの約2分の1又は3分の1よりも小さくなるように設計されてもよい。いくつかの実施態様において、時定数t=Rは、約0.2nsと約10nsとの間であってもよい。
【0059】
いくつかの実施態様において、トランジスタM1は、レーザダイオードからの出力光パルスの第1のピークの後に伝導状態に切り替わるように構成することができる。例えば、図2-1Bを参照すると、光検出及び論理回路は、第1のパルス2-161の減衰する強度を検知することができ、伝導状態に切り替わるようにトランジスタM1をトリガすることができる。いくつかの実施形態において、トランジスタM1は、安定したクロック信号に基づいて伝導状態に切り替わるようにトリガされてもよい(例えば、同期クロック・エッジを基準にしてトリガされる)。いくつかの実施態様において、トランジスタM1は、トランジスタM1が非伝導状態に切り替わる時点から測定される所定の遅延時間に従って、伝導状態に切り替わるようにトリガされてもよい。選択された時点においてトランジスタM1を伝導状態に切り替えることによって、ピーク光パルスの直後にレーザ・パワーを低減することができ、レーザ・パルスを短縮することができ、及び/又は、パルスのテール発光を低減することができる。
【0060】
図2-4Bに示す駆動回路は、レーザのアノード側に位置する電流源2-430を示しているが、いくつかの実施形態において、電流源は代替的に又は付加的に、レーザのカソード側に位置してもよい(例えば、トランジスタM1、抵抗器R、及び接地のような基準電位の間に接続されてもよい)。
【0061】
超短パルスを生成するための駆動回路の他の実施形態が可能である。例えば、レーザダイオード又はLEDの電流パルス駆動回路2-402は、図2-4Cに示すように、レーザダイオードのノードに接続されている複数の電流駆動分岐を備えてもよい。ドライバ回路2-402は、個別の又は集積構成要素を使用して形成することができ、基板(例えばASICチップ又はPCB)上に集積することができる。いくつかの実施形態において、ドライバ回路は、1つもしくは複数の半導体光ダイオード2-425(例えば、レーザダイオード又は1つもしくは複数の発光ダイオード)と同じ基板上に集積されてもよい。図面は、ドライバ回路を、レーザダイオード2-425のアノードに接続されているものとして示しているが、いくつかの実施形態において、同様の駆動回路が代替的に又は付加的に、レーザダイオードのカソードに接続されてもよい。レーザダイオードのカソード側に接続されている駆動回路は、レーザダイオードのアノード側で使用されるものとは反対の型のトランジスタ、及び、反対の極性の電圧源を利用することができる。
【0062】
いくつかの実施態様によれば、N個の順方向バイアス電流パルスをレーザダイオード2-425又はLEDに印加するように構成されているN個の回路分岐(例えば、回路分岐2-432、2-434、2-436)、及び、M個の逆方向バイアス電流パルスをレーザダイオードに印加するように構成されているM個の回路分岐(例えば回路分岐2-438)があってもよい。図2-4Cにおいては、N=3かつM=1であるが、他の値が使用されてもよい。各順方向バイアス電流分岐は、順方向バイアス電流をレーザダイオードに送達するように構成されている電圧源Vを備えることができる。各逆方向バイアス電流分岐は、逆方向バイアス電流をレーザダイオードに送達するように構成されている電圧源Vを備えることができる。各回路分岐は、スイッチ又はトランジスタM1と直列に接続されている抵抗器Rをさらに含むことができる。各回路分岐は、一方の側でトランジスタM1と抵抗器Rとの間のノードに接続されており、他方の側で固定基準電位に接続されているキャパシタCを含むことができる。いくつかの実施形態において、キャパシタCは、トランジスタM1と関連付けられる接合静電容量(例えばソース-ボディ静電容量)であってもよく、別個の個別的なキャパシタは設けられなくてもよい。いくつかの実施態様において、回路分岐から送達される総電流量を制限するために、少なくとも1つの追加の抵抗器がダイオード2-425と直列に含まれてもよい。
【0063】
動作時、合計され、レーザダイオード接合にわたって印加される、回路分岐の各々からの一連の電流パルスを発生させるために、タイミングをとられたパルス制御信号が、スイッチ又はトランジスタMiの制御入力Sに印加され得る。各分岐内の構成要素(V、V、R、C)ならびに制御入力Sに印加される制御パルスのタイミング及びパルス持続時間の値は、レーザダイオード2-425に印加される所望のバイポーラ電流パルス波形を生成するように、独立して選択することができる。ほんの1例として、V、V及びVの値は、異なる値を有するように選択することができる。R、R、及びRの値は同じであってもよく、C、C、及びCの値は同じであってもよい。この例において、パルス信号を制御入力Sに対してずらすことによって、パルス持続時間は同様であるが,パルス振幅は異なる、順方向バイアス回路分岐からのずれて重なり合う電流パルス系列を生成することができる。逆方向バイアス回路分岐からのタイミングをとられたパルスは、順方向バイアス・パルスを消滅させるか、又は、迅速にオフにすることができる反対の極性の電流パルスを生成することができ、レーザダイオードからのテール発光を抑制することができる逆方向バイアス・パルスをさらに生成することができる。逆方向バイアス・パルスは、順方向バイアス・パルスのうちの1つもしくは複数と時間的に少なくとも部分的に重なり合うように、慎重にタイミングをとることができる。したがって、図2-4Cに示す回路を使用して、図2-3に示すようにバイポーラ電流パルスを同期させることができる。
【0064】
図2-4Dは、無線周波数(RF)構成要素を使用して製造することができる、パルス・ドライバ2-403の別の実施形態を示す。RF構成要素は、いくつかの実施形態によれば、約50MHzと約1GHzとの間の周波数にある信号を処理するように設計することができる。いくつかの実施態様において、パルス・ドライバ2-403は、入力波形(例えば、方形波又は正弦波)をドライバにAC結合する入力DCブロック2-435を備えることができる。DCブロックに、増幅器2-440を後置することができ、増幅器2-440は、それぞれ別個の回路経路2-440a、2-440bに沿って進む非反転及び反転出力波形を生成する。第1の回路経路2-440aは、1つもしくは複数のアダプタ2-442を含むことができる。第1の経路内の信号に対して第2の経路内の信号を選択的に位相シフトするために、可変位相調整器2-445を、第2の回路経路2-440b内に含むことができる。
【0065】
第1の回路経路及び第2の回路経路は、RF論理ゲート2-450(例えば、ANDゲート又は他の論理ゲート)の非反転入力に接続することができる。論理ゲート2-450の反転入力は、ゲートにおけるスプリアス・パワー反射を回避するために、適切なインピーダンス整合ターミネータ2-446によって終端することができる。論理ゲート2-450の非反転出力及び反転出力は、2つの回路経路2-450a、2-450bに沿って結合器2-460に接続することができる。反転回路経路2-450bは、遅延要素2-454及び減衰器2-456を含むことができ、これらのいずれか又は両方は、調整可能であってもよい。遅延要素を使用して、反転信号を非反転信号に対して遅延させることができ、減衰器を使用して、反転信号の振幅を調整することができる。
【0066】
論理ゲートから結果もたらされる反転信号及び非反転信号はその後、結合器2-460において合計される。結合器2-460からの出力は、レーザダイオード又は1つもしくは複数のLEDを駆動するための出力バイポーラ・パルスを提供するRF増幅器2-470に接続することができる。出力バイポーラ・パルスは、図2-4Eに示すような波形を有することができる。
【0067】
動作時、入力方形波又は正弦波は、ドライバにAC結合することができ、非反転バージョン及び反転バージョンとして2つの回路経路2-440a、2-440bに分割することができる。第1の増幅器2-440は、いくつかの実施形態によれば、正弦波形を整える制限増幅器であってもよい。第2の回路経路2-440bにおいて、反転波形が、調整可能位相調整器2-445によって位相シフトされて、反転波形を非反転波形に対して時間的に遅延させることができる。第1の増幅器2-440から結果もたらされる波形はその後、RF論理ゲート2-450(例えば、ANDゲート)によって処理されて、論理ゲートの非反転出力及び反転出力において短RFパルスを生成することができる。短RFパルスの持続時間は、いくつかの実施形態によれば、位相調整器2-445を使用して調整することができる。例えば、位相調整器は、論理ANDゲート2-450に対する入力における非反転波形と反転波形の両方が同時に「オン」状態にある期間を調整することができ、これによって出力パルスの長さが決定される。
【0068】
図2-4Eを参照すると、論理ゲート2-450からの短反転パルス2-417は、非反転パルスと結合する前に、遅延要素2-454によって非反転パルス2-415に対して量δだけ遅延され、減衰器2-456によって所望の振幅まで減衰され得る。いくつかの実施形態において、負のパルス振幅|VP-|は、正のパルス振幅Vp+未満であり得る。パルス分離間隔Tは、パルス・ドライバ2-403への正弦波又は方形波入力の周波数によって決定することができる。出力パルス波形は、DCオフセットを含んでもよく、又は、含まなくてもよい。出力波形は方形波波形を有するものとして示されているが、RF構成要素及び/又はケーブルにおける静電容量及びインダクタンスは、むしろ図2-3に示す波形に近い、より丸みを帯びた波形を有する出力パルスを生成してもよい。
【0069】
図2-4C及び図2-4Bに関連して前述したように、レーザダイオード又はLEDに対する電流又は電圧の印加は、いくつかの実施形態において、アノードとカソードの両方に対するものであり得る。分割又は差動電圧又は電流パルスをカソードとアノードの両方に印加することができる無線周波数パルス・ドライバ回路2-404が図2-4Fに示されている。回路の前端は、いくつかの実施形態によれば、図2-4Dに示すパルス・ドライバ回路2-403の前端と同様であってもよい。しかしながら、パルス・ドライバ回路2-404においては、論理ゲート2-450からの非反転出力及び反転出力は結合されなくてもよく、代わりに、差動駆動として、レーザダイオードのアノード及びカソードに印加することができる。単純にするために、後続の負又は逆バイアス・パルスの生成に関連する回路は、図2-4Fには示されていない。
【0070】
差動パルス・ドライバ回路2-404によって生成される分割又は差動駆動の例が、図2-4Gに示されている。論理ゲート2-450からの第1の出力は、振幅+Vの正のパルス2-416を生成することができ、論理ゲート2-450からの第2の反転出力は、反対の振幅-Vの負のパルス2-418を生成することができる。パルス列は、いくつかの実施形態において、小さいDCオフセットを有してもよく、又は、有しなくてもよい。正のパルス2-416及び負のパルス2-418が存在することによって、実効的な振幅2Vを有する順方向バイアス・パルスが、レーザダイオードにわたって生成される。バイアスをレーザダイオードにわたって分割し、アノード及びカソードに部分バイアスを印加することによって、パルス・ドライバ2-404が処理する電圧パルスの振幅は、実効的に2分の1に低減することができる。したがって、パルス・ドライバ2-404は、そうでない場合により振幅の大きいパルスについて達成することが可能であり得るよりも高い周波数において動作することができ、より短いパルスを生成することができる。代替的に、パルス・ドライバ回路2-404は、バイアス・パルス+Vをレーザダイオードのアノードに提供するのみである駆動回路と比較して、レーザダイオードにわたって印加される駆動パルスの振幅を実効的に倍増することができる。そのような実施形態において、レーザダイオードからのパワー出力を増大することができる。
【0071】
レーザダイオードに印加されるパワー及び/又は駆動速度を増大することができる別の方法が、図2-4Hに示されている。いくつかの実施形態によれば、複数のパルス・ドライバ出力2-470は、レーザダイオード2-425又はLEDのアノードに接続することができる。この例においては、4つのパルス・ドライバがレーザダイオードのアノードに接続されている。差動パルス・ドライバ回路が使用されるいくつかの実施形態においては、レーザダイオードのカソードに接続されている複数のドライバもあってもよい。各ドライバ及びその関連するケーブルは、インピーダンスZを有することができ、レーザダイオード2-425は、インピーダンスZになっているものであり得る。それらが並列に接続しているために、ドライバの出力インピーダンスは、レーザダイオードに接続されているドライバの数で分割される。ダイオードへと送達されるパワーは、パルス・ドライバの結合インピーダンスがレーザダイオード2-425のインピーダンスにほぼ一致する、又は、逆が成り立つときに、増大することができる。
【0072】
図2-4Iのグラフは、4つの駆動ソースに関するレーザダイオード2-425に結合されるパワーの効率の増大を、レーザダイオード及びレーザダイオード回路のインピーダンスの関数として示す。この例において、4つのパルス・ドライバは各々、約50オームの線路インピーダンスを有し、約100mAの最大電流で5V振幅の出力パルスを送達するように構成されている。このプロットは、レーザダイオードのインピーダンスが約10オームであるときに、レーザダイオードに結合されるパワーが最大値に達することを示している。この値は、4つのパルス・ドライバ出力2-470の並列出力インピーダンスにほぼ等しい。したがって、レーザダイオード2-425及びその関連する回路のインピーダンスは、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードを駆動するのに使用される1つもしくは複数のパルス・ドライバの結合インピーダンスにほぼ一致するように設計することができる。
【0073】
他の回路ドライバ構成が、レーザダイオード又は発光ダイオードをパルシングするために使用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、発光ダイオードへの電流注入は、「高い繰り返し数及びピーク・パワーを有する単純なナノ秒未満紫外線光パルス発生器(A simple sub-nanosecond ultraviolet light pulse generator with high repetition rate and peak power)」,P.H.ビン(P.H.Binh)ら著,Rev. Sci.Instr. Vol. 84, 083102 (2013)、又は、「光検出器の試験のための発光ダイオードを使用した紫外線ナノ秒光パルス発生器(An ultraviolet nanosecond light pulse generator using a light emitting diode for test of photodetectors)」,荒木勉(T. Araki)ら著,Rev. Sci.Instr. Vol. 68, 1365 (1997)に記載されているパルサ回路を使用してナノ秒未満のパルスを生成するようにパルス化することができる。
【0074】
パルサ回路の別の例が、図2-4Jに示されている。いくつかの実施形態によれば、パルサ回路は、パルス発生器2-480を備えることができ、パルス発生器2-480は、例えば、システム・クロックからの1つもしくは複数のクロック信号を受信し、ドライバ回路2-490に電気パルスの列を出力することができ、ドライバ回路2-490は、パルス発生器から電気パルスが受信されるのに応答して、レーザダイオード又は発光ダイオードに電流パルスを注入する。したがって、出力光パルスは、システム・クロックに同期することができる。システム・クロックはまた、検出電子装置(例えば、イメージング・アレイ)を動作させるために使用することもできる。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、パルス発生器2-480は、受動電子構成要素とデジタル電子構成要素との組み合わせから形成することができ、第1の回路基板上に形成することができる。いくつかの事例において、パルス発生器は、アナログ回路構成要素を含んでもよい。他の実施形態では、パルス発生器の一部分が、ドライバ回路2-490と同じ基板上に形成されてもよく、パルス発生器の一部分が、ドライバ回路から遠隔した別個の基板上に形成されてもよい。ドライバ回路2-490は、受動、アナログ、及びデジタル電子構成要素から形成されてもよく、パルス発生器又はパルス発生器の一部分と同じ又は異なる回路基板上に形成されてもよい。光源(レーザダイオード又は発光ダイオード)は、ドライバ回路を有する回路基板上に含まれてもよく、又は、システム内に位置して、高速ケーブル(例えばSMAケーブル)によってドライバ回路2-490に接続されてもよい。いくつかの実施態様において、パルス発生器2-480及びドライバ回路2-490は、エミッタ結合論理要素を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、パルス発生器2-480、ドライバ回路2-490、及び半導体光ダイオード2-423は、同じプリント回路基板、ラミネート、又は集積回路に集積することができる。
【0076】
パルス発生器2-480の1例が、図2-4Kに示されている。いくつかの実施態様において、パルス発生器は、一方が他方に対して遅延されている、2つの差動クロック出力を生成する第1の段を含むことができる。第1の段は、クロック入力を受信することができ、ファン・アウト2-481と、遅延2-483とを含むことができる。ファン・アウトは、クロック信号の2つのコピー及びクロック信号の2つの反転コピーを生成するように構成されている論理ドライバ及び論理インバータを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、クロックは、対称デューティ・サイクルを有してもよいが、他の実施形態では、非対称デューティ・サイクルが使用されてもよい。1つのコピー及び1つの反転コピーが、差動クロック出力(CK1、
【0077】
【数1】
【0078】
)を形成することができ、遅延要素2-483によって、第2のコピー及び第2の反転コピー(CK2、
【0079】
【数2】
【0080】
)に対して遅延させることができる。遅延要素は、任意の適切な可変又は固定遅延要素を含んでもよい。遅延要素の例は、RF遅延線及び論理ゲート遅延を含む。いくつかの実施態様において、第1の対のクロック信号(CK1、
【0081】
【数3】
【0082】
)は、第2の対のクロック信号(CK2、
【0083】
【数4】
【0084】
)に対して1クロックサイクルのうちの少なくとも一部分だけ遅延される。遅延は、部分サイクルに加えて、1つもしくは複数の全サイクルを含んでもよい。各対のクロック信号の中で、反転信号は、クロックの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが基本的に同時に生じるように、その対応する一方に同期することができる。
【0085】
本発明者らは、パルス発生器2-480からの電流駆動パルスの長さを調整し、超短電流駆動パルスの振幅を調整するのではなく、固定振幅を維持することによって、レーザダイオード又はLEDの超短パルス化をより確実に制御することができることを見出した。電流駆動パルスの長さを調整することによって、パルスあたりにレーザダイオードに送達されるエネルギーの量が調整される。いくつかの実施形態において、高速回路は、(例えば、アナログ又はデジタル遅延要素2-483を用いて遅延又は位相を調整することによって)信号位相を高分解能に制御することを可能にし、これは、いくつかの実施態様によれば、パルス長の高分解能制御を達成するために使用することができる。
【0086】
いくつかの事例において、パルス発生器2-480の第1の段は、ファン・アウト2-481及び遅延2-483の代わりに、2重出力クロックを含んでもよい。2重出力クロックは、2つの差動クロック信号を発生させることができ、2つの差動クロック信号の間に調整可能な位相遅延をもたらすことができる。いくつかの実施態様において、調整可能な位相遅延は、3psものわずかな対応する時間分解能を有することができる。
【0087】
遅延クロック信号CK1、CK2及びそれらの反転信号がどのように生成されるかにかかわらず、信号は、高速伝送線路を介して高速論理ゲート2-485に伝送することができる。基板間のケーブルを介した信号伝送について、クロック・パルスはケーブルに起因して劣化する場合がある。例えば、伝送線路の制限された帯域幅が、クロック・パルスを別様に歪ませる場合があり、結果としてタイミングを不均等にする場合がある。いくつかの実施態様において、伝送歪みが4つのクロック信号に等しく影響を及ぼすように、同じタイプのケーブル又は伝送線路をすべてのクロック信号に使用することができる。例えば、信号歪み及びタイミング・オフセットが、4つのクロック信号について基本的に同じであるとき、結果として受信論理ゲート2-485によって生成される駆動パルスは、基本的に、クロック信号の伝送からの信号歪みがない場合と同じになる。したがって、数フィートの距離を介したクロック信号の伝送は、駆動パルス持続時間に影響を及ぼすことなく、許容することができる。これは、システム・クロックに同期され、精密に調整可能なパルス持続時間(例えば約3psの増分で調整可能)を有する超短駆動パルスを生成するのに有用であり得る。クロック信号がローカルに(例えば、ドライバ回路2-490と同じ基板上に)生成される場合、クロック信号の伝送に関連する信号歪みは、重大でない場合があり、伝送線路はある程度異なってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、クロック信号は、キャパシタCとAC結合することができ、高速論理ゲート2-485のデータ入力に提供することができる。キャパシタCは、約10nFと約1μFとの間の静電容量を有することができる。いくつかの実施形態によれば、論理ゲートは、エミッタ結合論理(ECL)2入力差動AND/NANDゲートを含んでもよい。論理ゲート2-485の例は、オン・セミコンダクタ(ON Semiconductor)[米国ロード・アイランド州イースト・グリニッジ(East Greenwich)所在]から入手可能なモデルMC100EP05を含む。論理ゲートへのデータ入力におけるAC結合信号は、図2-4Lに示す信号と同様に見え得、図面において、水平破線はゼロ電圧レベルを示す。図2-4Lの図示は、伝送線路によって導入される歪みを含まない。歪みは、信号プロファイルの形状を丸め、変化させ得るが、同じタイプ及び長さのケーブルが各クロック信号に使用されるときは、クロック信号の相対位相に影響を及ぼさないものであり得る。遅延要素2-483は、垂直破線によって示される遅延Δtを提供することができ、この遅延は、3psと小さい増分で調整可能であり得る。いくつかの実施態様において、遅延要素2-483は、1psと10psとの間の値を有する増分で調整可能な遅延を提供することができる。論理ゲート2-485は、受信クロック信号を処理し、遅延要素2-483によって導入される遅延に対応する出力ポートQにおいて出力信号を生成することができる。小さい遅延によって、出力は、短パルス又は超短パルス系列を含む。高速論理ゲート2-485を用いると、パルス持続時間は、いくつかの実施形態においては約50psと約2nsとの間(FWHM)であってもよく、いくつかの実施形態においては約50psと約0.5nsとの間であってもよく、いくつかの実施形態においては約50psと約200psとの間であってもよく、さらには、いくつかの実施形態においては約50psと約100psとの間であってもよい。ポートQからの駆動パルスは、ECL論理ゲート2-485の高速スルー・レートに起因して、実質的に方形のプロファイルを有することができる。バイアス回路2-487を、出力ポートに接続することができ、正のエミッタ結合論理に対して電圧Vが印加され得る。パルス発生器2-480の出力端子Poutから提供される出力パルスは、いくつかの実施形態によれば、DCオフセットを含み得る。
【0089】
いくつかの実施態様において、2つ以上の高速論理ゲート2-485を、キャパシタC及びバイアス回路2-487の間に並列に接続することができる。これらの論理ゲートは同じであってもよく、並列に動作して、パルス発生器の出力においてより大きい電流駆動機能を提供することができる。本発明者らは、論理ゲート2-485又はゲートが、高速切り換え(例えば、超短駆動パルスを生成するための速やかな立ち上がり及び立ち下がり時間)を可能にする必要があり、ドライバ回路2-490内の高電流トランジスタM1を駆動するのに十分な出力電流を提供する必要があることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施態様において、論理ゲート2-485を並列に接続することによって、パルス回路の性能を改善することができ、100ps未満の光パルスを生成することが可能になる。
【0090】
図2-4Mは、レーザダイオード又はLED2-423に接続することができる、ドライバ回路2-490の実施形態を示す。ドライバ回路は、高速トランジスタM1のゲートに接続されている、抵抗器Rと直列のキャパシタCを有するAC結合入力を含むことができる。Cの静電容量は、いくつかの実施形態によれば、約0.1μFと約10μFとの間であってもよく、Rは、約10オームと約100オームとの間の値を有してもよい。トランジスタM1は、いくつかの実施形態によれば、高電流(例えば、少なくとも1アンペア、場合によっては、最大4アンペア以上)を切り換えることが可能な高電子移動度電界効果トランジスタ(HEMT FET)を含んでもよい。トランジスタM1は、マルチ・ギガヘルツ速度においてそのような大電流を切り換えることが可能な高速トランジスタであってもよい。いくつかの実施形態によれば、トランジスタM1は、30Hzと約200MHzとの間の繰り返し数において、約50psと約2nsとの間の電気パルス持続時間にわたって、1アンペアを超える電流を切り換えることができる。トランジスタM1の例は、アバゴ・テクノロジー(Avago Technologies)[米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)所在]から入手可能なモデルATF-50189-BLKを含む。バイアス及びフィルタリング回路要素(例えば、抵抗器R、R、及びC)を、キャパシタCとトランジスタM1のゲートとの間に接続することができる。トランジスタM1のドレインは、レーザダイオード又は発光ダイオード2-423のカソードに直に接続することができ、トランジスタM1のソースは、基準電位(例えば、接地)に接続することができる。ダイオード2-423のアノードは、ダイオード電圧源VLDに接続することができる。抵抗器R及びキャパシタを、ダイオード2-423にわたって並列に接続することができる。いくつかの実施形態によれば、抵抗器Rは、約50オームと約200オームとの間の値を有してもよく、Cは、約5pFと約50pFとの間の静電容量を有してもよい。キャパシタC(約1μFと約5μFとの間の値を有する)もまた、ダイオード2-423及びトランジスタM1と並列に、ダイオード電圧源VLDと基準電位(例えば、接地)との間に接続することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、保護ダイオード(図示せず)が、レーザダイオード2-423のカソード及びアノードにわたって逆方向に接続されてもよい。保護ダイオードは、レーザダイオード接合を破壊し得る過剰な逆バイアス電位からレーザダイオードを保護することができる。
【0092】
動作時、パルス発生器2-480からのパルスがトランジスタM1を一時的にオンにし、レーザダイオード又は発光ダイオード2-423の活性領域に電流が注入されることを可能にする。いくつかの実施態様において、大量の順方向電流(例えば、最大4アンペア)が一時的にトランジスタM1を流れる。順方向電流は、レーザダイオード接合にキャリアを注入し、光放射の短パルス又は超短パルスを生成する。トランジスタM1がオフになると、寄生インダクタンスが発光ダイオード又はレーザダイオードにわたって電流を流し続け、レーザダイオードと並列に接続されているRCネットワークによって消散され得るまで、ダイオードのカソード側に電荷が蓄積される。カソードにおける電荷のこの一時的な蓄積は、レーザダイオードに逆方向バイアス・パルスをもたらし、活性領域からのキャリアの除去を加速する。これによって、光パルスの終端が加速される。
【0093】
本発明者らは、図2-4Mの実施形態について説明されている光パルス化技法は、レーザダイオードをオンにするために必要とされ得るより高く、より短い電流パルスをもたらすことができるため、方形波パルスの微分に基づくパルス化技法よりも優れていることを見出した。
【0094】
本発明者らは、様々なパルス駆動回路を組み立て、それらを使用して、レーザダイオードを駆動した。図2-5Aは、組み立てられたパルサ回路2-500の別の実施形態を示す。この実施形態は、図2-4Aに示すようなパルサ2-400を実装する。組み立てられた回路において、伝送線路2-410が、図に示すように、プリント回路基板上にU字形構成でパターン化された平行板ストリップ・ラインとして形成される。GaN pHEMTトランジスタがU字形伝送線路の2つの端部を短絡するための分路スイッチM1として使用された。パルサ回路2-500は、最大100MHzの繰り返し数において動作することができ、50オームの負荷を駆動するために使用することができる。いくつかの実施形態において、パルサ回路は、約10MHzと約1GHzとの間の繰り返し数において動作することができる。
【0095】
パルサ2-500からの測定波形が、図2-5Bに示されている。波形は、約19.5Vの振幅を有する正のパルス、及び、それに後続する、正のパルスに後続する、約-5Vの振幅に達する負のパルスを示す。正のパルスの持続時間は、約1.5ナノ秒である。再び図2-4Aを参照すると、パルサ2-500は、約50オームの終端抵抗器Ztermと、約200オームのプル・アップ又は充電抵抗器Rchを有するように構築された。Ztermの値は、終端抵抗から伝送線路に戻るパワー反射を低減するように選択された。伝送線路2-410に印加されるバイアスは、100Vであり、スイッチM1は、100MHzの繰り返し数において駆動された。0Vバイアスからの相対オフセットを調節するために、約-1.3VのDCバイアスがバイアス・ティーを介してダイオードに結合された。スイッチM1の駆動パルスは、約0Vと約2Vとの間で振動する方形波信号であった。
【0096】
市販のレーザダイオード(ウシオ・モデルHL63133DG)を駆動して100ps未満の光パルスを生成するために、市販のテスト・ベッド・ドライバが使用された。光パルス測定値が、図2-5C及び図2-5Dに示されている。図2-5Cに示すように、テール発光が低減したパルスが、100MHzの繰り返し数において生成された。レーザダイオードからの平均パワーは、約8.3ミリワットであるものとして測定された。図2-5Dに示すパルス持続時間が、約84ピコ秒であるものとして測定された。レーザダイオードからの光学的発光の強度は、パルスのピークの約250ps後に、約24.3dBだけ低減されることが分かった。レーザダイオードは単一のボンド・ワイヤを有していたにもかかわらず、100ps未満のパルスが生成された。複数のボンド・ワイヤ又はパルス回路に対するさらなる改善によって、より短いパルス(例えば、約25psと約75psとの間)が生成され得る。
【0097】
図2-6Aは、上述の利得切換装置及び技法のいずれかに従って、利得切換によって光パルスを生成するために使用することができる半導体レーザ2-600の例を示す。レーザ及びパルス駆動回路は、大量生産することができ、低コストで製造することができる。例えば、レーザは、平面集積回路技術を使用して端面発光デバイスとして微細加工することができる。そのようなレーザは、スラブ結合光導波路レーザ(SCOWL)と称される場合がある。図面は、レーザの立断面図を示す。レーザは、GaAs/AlGaAs材料系(例えば、光スペクトルの緑色、赤色、又は赤外線領域における放射を放出するため)から形成されてもよいが、他の実施態様においては(例えば、スペクトルの緑色、青色、又は紫外線領域における放射を放出するために)他の材料系(GaN/AlGaNなど)が使用されてもよい。レーザダイオードは、限定ではないが、InP、AlInGaP、InGaP、及びInGaNを含む他の半導体材料系から製造されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、SCOWLは、n型基板又はバッファ層2-627(例えば、Alを含むGaAs基板又はGaAs層)の上に形成されてもよい。例えば、バッファ層は、AlGa1-xAsを含んでもよく、xは約0.25と約0.30との間である。基板又はベース層の屈折率は、いくつかの実施形態によれば、約3.4と3.5との間である第1の値nを有してもよい。低ドープn型半導体材料の電子輸送層2-617を、基板2-627上に形成することができる。いくつかの実施形態において、電子輸送層2-617は、エピタキシャル成長によって、AlGa1-xAsを含むように形成することができ、xは約0.20と約0.25との間であり、約5×1016cm-3のn型ドーパント濃度を有する。電子輸送層の厚さhは、約1マイクロメートル(1ミクロン)と約2マイクロメートル(2ミクロン)との間であってもよい。輸送層2-617は、nよりも大きい第2の反射率値nを有することができる。その後、多重量子井戸領域2-620を、電子輸送層2-617上に形成することができる。多重量子井戸領域は、MQW領域内のエネルギーバンドギャップを変調する異なるドーピング濃度を有する材料が交互になった(例えば、AlGaAs/GaAsの層が交互になった)層を含むことができる。量子井戸領域2-620内の層(約20nmと約200nmとの間の厚さを有し得る)は、エピタキシ、原子層堆積、又は適切な蒸着工程によって堆積することができる。多重量子井戸領域は、nよりも大きい実効的な第3の反射率値nを有することができる。p型ドープ材料の正孔輸送層2-615が、量子井戸領域に隣接して形成され得、n未満の反射率値nを有し得る。いくつかの実施形態において、SCOWLの異なる複数の領域の反射率の値は、いくつかの実施形態に従って、図2-6Bに示されているようなものであり得る。いくつかの実施形態において、SCOWLは、GaN半導体及びその合金、又は、InP半導体及びその合金を含んでもよい。
【0099】
「隣接する」という用語は、2つの要素が互いに近接近して(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横方向寸法又は垂直方向寸法の約5分の1未満の距離内に)配置されることを指し得る。いくつかの事例において、隣接する要素の間には、介在する構造又は層があってもよい。いくつかの事例において、隣接する要素は、介在する構造又は要素なしに互いに直に隣接してもよい。
【0100】
レーザ・デバイスの層が堆積された後、トレンチ2-607を層内にエッチングして、約0.25マイクロメートル(0.25ミクロン)と約1.5マイクロメートル(1.5ミクロン)との間である幅wを有するレーザの活性領域を形成することができる。デバイスの第1の表面上にn-コンタクト2-630を形成することができ、p型輸送層2-615上に、活性領域に隣接してp-コンタクト2-610を形成することができる。半導体層の露出面は、いくつかの実施形態によれば、酸化物又は他の電気絶縁層によって不動態化することができる。
【0101】
活性領域に隣接するトレンチ2-607、及び、屈折率値n、n、n、及びnが、レーザの光学モードを、図面に示すように、量子井戸に隣接し、デバイス中央リブの下にあるレージング領域2-625に制限する。SCOWLは、そうでなければレージング領域2-625において形成及びレージングし得るより高次の横方向モードを、隣接する領域内の損失の多いより高次のスラブモードに結合するように設計することができる。適切に設計されると、レージング領域2-625からのすべてのより高次の横方向モードは、そのレージング領域内の基本モードと比較して相対的に損失が高く、レージングしなくなる。いくつかの実施態様において、SCOWL2-600の横方向光学モードは、単一横方向モードであってもよい。光学モードの幅は、約0.5マイクロメートル(0.5ミクロン)と約6マイクロメートル(6ミクロン)との間であってもよい。x方向にとられたモード・プロファイル2-622は、いくつかの実施形態によれば、図2-6Bに示すように成形することができる。他の実施態様において、SCOWLは、対象の領域を照射するために複数の光学横方向モードを生成することができる。いくつかの実施形態において、活性領域の長さ(紙面に入る寸法に沿った)は、約20マイクロメートル(20ミクロン)と約10mmとの間であってもよい。SCOWLの出力パワーは、より長い活性領域の長さを選択することによって増大することができる。いくつかの実施形態において、SCOWLは、300mWを超える平均出力パワーを送達することができる。
【0102】
半導体レーザ(例えば、SCOWL)及びパルサ回路は、結合させて、多くの用途に適した低コスト超高速パルス・レーザを作成することができるが、図2-5Dに示すターン・オフ・レートは、いくつかの蛍光寿命分析には適さない場合がある。いくつかの事例において、より迅速なターン・オフが必要とされる場合がある。例えば、本発明者らは、蛍光寿命に基づくいくつかの測定は、パルスのテールが、パルス・ピーク後の250ps以内に、パルス・ピークを約25dBと約40dBとの間で下回るレベルまで消滅することを必要とし得ることを見出した。いくつかの事例において、パルス・パワーは、パルス・ピーク後の100ps以内に、この値の範囲まで降下する必要があり得る。いくつかの実施態様において、パルス・テールは、パルス・ピーク後の250ps以内に、パルス・ピークを約40dBと約80dBとの間で下回るレベルまで降下する必要があり得る。いくつかの実施態様において、パルス・テールは、パルス・ピーク後の250ps以内に、パルス・ピークを約80dBと約120dBとの間で下回るレベルまで降下する必要があり得る。
【0103】
パルスの発光テールをさらに抑制するための1つの手法は、パルス・レーザ又は高輝度LEDシステムに、可飽和吸収体を含めることである。いくつかの実施形態によれば、半導体可飽和吸収体2-665を、図2-6Cに示すように、半導体レーザ2-600又は高輝度LEDと同じ基板上に組み込むことができる。半導体レーザは、いくつかの実施形態によれば、量子井戸領域2-620を含むSCOWL構造を備えることができる。SCOWLは、パルサ回路2-400又は上述した他のパルス化回路のような、パルス源2-670によって駆動することができる。
【0104】
SCOWLの1端に隣接して、可飽和吸収体2-665を形成することができる。可飽和吸収体2-665は、半導体レーザからの光子を吸収するように調整されているバンド・ギャップを有する領域を含むことができる。例えば、可飽和吸収体は、レーザの光学的発光の固有エネルギーにほぼ等しい少なくとも1つのエネルギーバンドギャップを有する単一の量子井戸又は複数の量子井戸を含むことができる。いくつかの実施形態において、可飽和吸収体は、ダイオード・レーザ・キャビティ内の領域を電気的に絶縁するように、ダイオード・レーザの領域にイオン注入することによって形成することができる。この領域に負のバイアスを印加して、同じレーザダイオード構造の利得よりもむしろ、吸収を促進することができる。レーザ2-600からの高いフルエンスにおいて、可飽和吸収体の価電子帯はキャリアが空乏し得、伝導帯が満たされ得、可飽和吸収体によるさらなる吸収が妨げられる。結果として、可飽和吸収体は白化し、レーザから吸収される放射の量が低減する。このように、レーザ・パルスのピークは、パルスのテール又はウィングよりも小さい強度の減衰で、可飽和吸収体を「突き抜ける」ことができる。したがって、パルスのピークに対して、パルスのテールがさらに抑制され得る。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、高反射器(図示せず)がデバイスの1端に形成され、又は位置することができる。例えば、高反射器は、可飽和吸収体からのレーザ放出を方向転換し、出力パワーを増大させるように、可飽和吸収体から最も遠い、レーザの1端に位置してもよい。いくつかの実施形態によれば、デバイスからの抽出を増大させるために、可飽和吸収体及び/又はSCOWLの1端に、反射防止コーティングを被着させることができる。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、可飽和吸収体は、バイアス供給源2-660を含むことができる。バイアス供給源は、各パルス後に活性領域からキャリアを掃引し、可飽和吸収体の応答を改善するために使用することができる。いくつかの実施形態において、バイアスは、可飽和回復時間を時間依存にするように(例えば、パルス繰り返し数において)変調することができる。この変調は、パルス特性をさらに改善することができる。例えば、可飽和吸収体は、可飽和吸収体の回復時間が十分である場合は、低い強度において別様により大きく吸収することによって、パルス・テールを抑制することができる。そのような差動吸収はまた、パルス長をも低減することができる。可飽和吸収体の回復時間は、可飽和吸収体に対する逆方向バイアスを印加又は増大することによって調整することができる。
【0107】
III.システム・タイミング及び同期
図1-1を再び参照すると、短パルス又は超短パルスを生成するために使用される方法及び装置にかかわらず、システム1-100は、分析システム1-160の少なくともいくつかの電子的動作(例えば、データ取得及び信号処理)を、光源からの光パルスの繰り返し数と同期させるように構成されている回路を含むことができる。パルス繰り返し数を分析システム1-160上の電子装置に同期させるための少なくとも2つの方法が存在する。第1の技法によれば、マスタ・クロックをタイミング・ソースとして使用して、パルス光源におけるパルスの発生と機器電子装置の両方をトリガすることができる。第2の技法において、パルス光源からタイミング信号を導出し、機器電子装置をトリガするために使用することができる。
【0108】
図3-1は、クロック3-110が同期周波数fsyncにおけるタイミング信号を、パルス光源1-110(例えば、利得切換パルス・レーザ又はパルスLED)と、各励起パルス1-120と生物学的物質、化学物質、又は他の物理的物質との間の相互作用からもたらされる信号を検出及び処理するように構成することができる分析システム1-160の両方に提供する。ほんの1例として、各励起パルスは、生物試料の特性(例えば、がん性又は非がん性、ウイルス又は細菌感染、血糖値)を分析するために使用される、生物試料の1つ又は複数の蛍光分子を励起することができる。例えば、非がん性細胞は、第1の値の固有蛍光寿命τを呈し得、一方で、がん性細胞は、第1の寿命値とは異なり、区別することができる第2の値の寿命τを呈し得る。別の例として、血液の試料から検出される蛍光寿命は、血糖値に依存する寿命値及び/又は強度値(別の安定したマーカに対する)を有することができる。各パルス又はいくつかのパルスから成る系列の後、分析システム1-160は、蛍光信号を検出及び処理して、試料の特性を決定することができる。いくつかの実施形態において、分析システムは、イメージングされるエリア内の領域の1つ又は複数の特性を示す、エリアの2次元又は3次元マップを含む、励起パルスによって調査されるエリアの画像を生成することができる。
【0109】
行われる分析のタイプにかかわらず、分析システム1-160上の検出及び処理電子装置は、各光励起パルスの到来と慎重に同期される必要があり得る。例えば、蛍光寿命を評価するとき、発光事象のタイミングを正確に記録することができるように、試料の励起の時間を正確に知ることが有益である。
【0110】
図3-1に示す同期構成は、光パルスが能動的方法(例えば、外部制御)によって生成されるシステムに適し得る。能動パルス・システムは、限定ではないが、利得切換レーザ及びパルスLEDを含むことができる。そのようなシステムにおいて、クロック3-110が、パルス光源1-110におけるパルス生成(例えば、利得切換又はLED接合への電流注入)をトリガするために使用されるデジタル・クロック信号を提供することができる。機器上での電子的動作が、機器におけるパルス到来時間に同期することができるように、同じクロックがまた、同じ又は同期したデジタル信号を分析システム1-160に提供することもできる。
【0111】
クロック3-110は、任意の適切なクロッキング・デバイスであってもよい。いくつかの実施形態において、クロックは、水晶発振器又はMEMSベースの発振器を含んでもよい。いくつかの実施態様において、クロックは、トランジスタ・リング発振器を含んでもよい。
【0112】
クロック3-110によって提供されるクロック信号の周波数fsyncは、パルス繰り返し数Rと同じ周波数である必要はない。パルス繰り返し数は、R=1/Tによって与えることができ、Tはパルス分離間隔である。図3-1において、光パルス1-120は、距離Dだけ空間的に分離されるものとして示されている。この分離距離は、関係T=D/c、cは光速、による分析システム1-160におけるパルスの到来の間の時間Tに対応する。実際には、パルス間の時間Tは、フォトダイオード及びオシロスコープによって決定することができる。いくつかの実施形態によれば、T=fsync/Nであり、Nは1以上の整数である。いくつかの実施態様において、T=Nfsyncであり、Nは1以上の整数である。
【0113】
図3-2は、タイマ3-220が分析システム1-160に同期信号を提供するシステムを示す。いくつかの実施形態において、タイマ3-220は、パルス光源1-110から同期信号を導出することができ、導出された信号は、分析システム1-160に同期信号を提供するために使用される。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、タイマ3-220は、パルス光源1-110から光パルスを検出するフォトダイオードからアナログ又はデジタル化信号を受信することができる。タイマ3-220は、受信したアナログ又はデジタル化信号から同期信号を形成又はトリガするための任意の適切な方法を使用することができる。例えば、タイマは、シュミット・トリガ又は比較器を使用して、検出された光パルスからデジタル・パルスの列を形成することができる。いくつかの実施態様において、タイマ3-220はさらに、遅延ロック・ループ又は位相ロック・ループを使用して、安定したクロック信号を、検出される光パルスから生成されるデジタル・パルスの列に同期させることができる。デジタル・パルスの列又はロックされている安定したクロック信号は、機器上の電子装置を光パルスと同期させるために、分析システム1-160に提供することができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、図3-3に示すように、2つ以上のパルス光源1-110a、1-110bが、2つ以上の異なる波長にある光パルスを分析システム1-160に供給するために必要とされ得る。そのような実施形態においては、光源のパルス繰り返し数及び分析システム1-160上の電子的動作を同期させる必要があり得る。いくつかの実施態様において、2つのパルス光源がパルスを生成する能動的方法を使用する場合、図3-1に関連して上述した技法を使用することができる。例えば、クロック3-110が、同期周波数fsyncにあるクロック又は同期信号を、両方のパルス光源1-110a、1-110b及び分析システム1-160に供給することができる。
【0116】
いくつかの実施態様において、図3-4A及び図3-4Bに示すように、2つのパルス光源からのパルスを時間的にインターリーブすることが有益であり得る。パルスがインターリーブされると、第1の供給源1-110aからのパルス3-120aが、第1の時刻tにおいて第1の固有波長λによって分析システム1-160にある1つ又は複数の試料を励起することができる。その後、1つ又は複数の試料との第1のパルスの相互作用を表すデータを、機器によって収集することができる。後の時刻tにおいて、第2の供給源1-110bからのパルス3-120bが、第2の固有波長λによって分析システム1-160にある1つ又は複数の試料を励起することができる。その後、1つ又は複数の試料との第2のパルスの相互作用を表すデータを、機器によって収集することができる。パルスをインターリーブすることによって、1つの波長におけるパルスと試料との相互作用の効果が、第2の波長におけるパルスと試料との相互作用の効果と混じり合わないようにすることができる。さらに、2つ以上の蛍光マーカと関連付けられる特性を検出することができる。
【0117】
パルスは、図3-4Aに示すように、タイミング及び同期回路によってインターリーブすることができる。図3-3に関連して説明した方法を使用して、2つのパルス光源1-110a、1-110bからのパルス列を同期させ、分析システム1-160上の電子装置及び動作を、パルスの到来と同期させることができる。パルスをインターリーブするために、1つのパルス光源のパルスを他方のパルス光源からのパルスと位相ロックするか、又は、位相がずれるようにトリガすることができる。例えば、第1のパルス光源1-110aのパルスは、第2のパルス光源1-110bからのパルスと(位相ロック・ループもしくは遅延ロック・ループを使用して)位相ロックするか、又は、180度位相がずれるようにトリガすることができるが、いくつかの実施形態において、他の位相又は角度関係が使用されてもよい。いくつかの実施態様において、パルス光源のうちの1つに提供されるトリガ信号に、タイミング遅延を加えることができる。タイミング遅延は、トリガ・エッジを、パルス分離間隔Tのほぼ2分の1だけ遅延させることができる。いくつかの実施形態によれば、周波数2倍化同期信号を、タイマ3-220によって発生させることができ、機器電子装置及び動作をパルス光源からのインターリーブされたパルスの到来と同期させるために、機器3-160に提供することができる。
【0118】
IV.パルス光源の時間領域用途
上述したパルス光源は、様々な時間領域用途にとって有用である。いくつかの実施形態において、パルス光源は、蛍光寿命、蛍光波長、蛍光強度、又はそれらの組み合わせに基づいて、生体試料の状態又は特性を検出及び/又は特性化するように構成されているシステムにおいて使用することができる。パルス光源はまた、飛行時間システムにおいても使用することができる。飛行時間システムは、短パルス又は超短光パルスによって標的を照射し、その後、標的からの後方散乱放射を検出して、標的の3次元画像を形成し、又は、標的までの距離を決定するイメージング・システム及び測距システムを含み得る。
【0119】
蛍光発光を利用する時間領域用途において、第1の固有波長において動作するパルス光源が、試料中の1つ又は複数の蛍光分子を励起することができ、分析システムが、パルス光源の波長とは異なる1つ又は複数の波長における試料からの蛍光発光を検出及び分析することができる。いくつかの実施形態によれば、試料中に存在する1つ又は複数の蛍光分子からの蛍光寿命の分析に基づいて、生体試料の1つ又は複数の特性を決定することができる。いくつかの実施態様において、生体試料の1つ又は複数の特性の決定をさらに補助するために、蛍光発光の追加の特性(例えば、波長、強度)が分析されてもよい。蛍光寿命に基づいて生体試料の特性を決定するシステムは、イメージング・システム又は非イメージング・システムであり得る。イメージング・システムとして構成されるとき、蛍光検出のために画素アレイを使用することができ、画素アレイ上に試料の少なくとも1部分の画像を形成するために、試料と画素アレイとの間にイメージング光学素子を設置することができる。いくつかの実施態様において、非イメージング・システムは、画素アレイを使用して、複数の試料からの蛍光発光を並行して検出することができる。
【0120】
いくつかの実施形態による、蛍光寿命分析に少なくとも部分的に基づき、パルス光源を使用して生体試料の特性を決定するための機器4-100が、図4-1に示されている。そのような機器は、1つ又は複数のパルス光源4-120と、時間ビニング光検出器4-150と、光学系4-130(1つ又は複数のレンズであってもよく、1つ又は複数の光学フィルタを含んでもよい)と、対象に対して圧迫することができ、その上に生体試料を設置することができる透明窓4-140とを備えることができる。1つ又は複数のパルス光源及び光学系は、1つ又は複数の光源からの光パルスが、窓4-140を通してある領域を照射するように構成することができる。光励起パルスによって励起される蛍光発光は、光学系4-130によって収集することができ、下記にさらに説明するように、1つ又は複数の蛍光分子の寿命を判別することができる時間ビニング光検出器4-150へと方向付けることができる。いくつかの実施態様において、光検出器4-150は、非イメージングであり得る。いくつかの実施態様において、光検出器4-150は、各々が時間ビニング機能を有する、試料の画像を形成するための画素のアレイを備えることができる。画像データは、空間分解蛍光寿命情報及び従来のイメージング情報を含むことができる。機器の構成要素は、機器を手持ち式デバイスとして操作することができるような小さいサイズにすることができるケーシング4-105内に取り付けることができる。光源(複数可)4-120及び光検出器4-150は、同じ回路ボード4-110上に取り付けられてもよく、又は、取り付けられなくてもよい。いくつかの実施形態において、機器4-100は、マイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラを含んでもよく、かつ/又は、処理のための外部デバイス(例えば、スマートフォン、ラップトップ、PC)及び/もしくはデータ記憶装置にデータを伝送することができるような、データ通信ハードウェアを含んでもよい。
【0121】
蛍光寿命に基づいて試料を分析するように構成されているシステムは、異なる蛍光分子の間の蛍光寿命の差、及び/又は、蛍光寿命に影響を及ぼす異なる環境における同じ蛍光分子の寿命の差を検出することができる。説明として、図4-2は、例えば、2つの異なる蛍光分子、又は、異なる環境内の同じ蛍光分子からの蛍光発光を表すことができる、2つの異なる蛍光発光確率曲線(A及びB)をプロットしている。曲線Aを参照すると、短パルス又は超短光パルスによって励起された後、第1の分子からの蛍光発光の確率p(t)は、示されているように、時間とともに減衰し得る。いくつかの事例において、経時的な光子が放出される確率の低減は、指数減衰関数
【0122】
【数5】
【0123】
によって表すことができ、式中、PA0は初期発光確率であり、τは、発光減衰確率を特性化する、第1の蛍光分子と関連付けられる時間パラメータである。τは、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」又は「寿命」と称されてもよい。いくつかの事例において、τの値は、蛍光分子のローカル環境によって変更されてもよい。他の蛍光分子は、曲線Aに示すものとは異なる発光特性を有し得る。例えば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する場合があり、その寿命は、半減期値又は何らかの他の測定基準によって特性化することができる。
【0124】
第2の蛍光分子は、図4-2の曲線Bについて示すように、指数関数的ではあるが、測定可能に異なる寿命τを有する減衰プロファイルを有し得る。いくつかの実施形態において、種々の蛍光分子は、約0.1ns~約20nsに及ぶ範囲の寿命又は半減期値を有し得る。図示されている例において、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命よりも短く、発光の確率は、第2の分子の励起直後では、曲線Aよりも高い。
【0125】
本発明者らは、蛍光発光寿命の差を使用して、異なる蛍光分子の存否を判別し、及び/又は、1つ又は複数の蛍光分子の寿命に影響を及ぼす試料中の異なる環境もしくは条件を判別することができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの事例において、寿命(例えば、発光波長ではなく)に基づいて蛍光分子を判別することによって、分析システム1-160のいくつかの態様を単純化することができる。1例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合、波長弁別光学素子(波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、及び/又は回折光学素子)の数を低減することができるか、又は、なくすことができる。いくつかの事例において、単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能に異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起することができる。同じ波長領域内で発光する異なる蛍光分子を励起及び判別するために、異なる波長における複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、動作及び保守管理の複雑さを低減することができ、よりコンパクトにすることができ、より低いコストで製造することができる。
【0126】
蛍光寿命分析に基づく分析システムは、一定の利点を有することができるが、追加の検出技法を可能にすることによって、分析システムによって得られる情報の量を増大することができる。例えば、いくつかの分析システム1-160は、蛍光波長及び/又は蛍光強度に基づいて試料の1つ又は複数の特性を判別するようにさらに構成されてもよい。
【0127】
再び図4-2を参照すると、いくつかの実施形態によれば、蛍光分子の励起後の蛍光発光事象を時間ビニングするように構成されている光検出器を用いて、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニングは、光検出器の単一の電荷蓄積サイクルの間に行われ得る。発光事象の時間ビニングによって蛍光寿命を決定するという概念は、図4-3にグラフで示されている。時刻t又はtの直前の時刻において、蛍光分子又は同じタイプ(例えば、図4-2の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子の集合が、短パルス又は超短光パルスによって励起される。分子の集合について、発光の強度は、図4-3に示すように、時間プロファイルを有し得る。
【0128】
一方、単一の分子又は少数の分子について、蛍光光子の放出は、図4-2の曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器4-150は、発光事象を、蛍光分子(複数可)の励起時間に関して測定されている個別の時間ビン(図4-3には3つが示されている)に蓄積することができる。多数の発光事象が合計される場合、結果もたらされる時間ビンは、図4-3に示す減衰強度曲線を近似することができ、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子又は蛍光分子が位置している異なる環境の間で区別することができる。
【0129】
時間ビニング光検出器の例は、本願明細書に援用する国際出願第PCT/US2015/044360号に記載されており、そのような光検出器の実施形態は、説明を目的として図4-4に示されている。単一の時間ビニング光検出器4-400は、すべて半導体基板上に形成される、光子吸収/キャリア発生領域4-402、キャリア移動領域4-406、及び複数のキャリア貯蔵ビン4-408a、4-408b、4-408cを備えることができる。キャリア移動領域は、キャリア輸送チャネル4-407によって複数のキャリア貯蔵ビンに接続することができる。3つのキャリア貯蔵ビンのみが図示されているが、より多くのビンがあってもよい。キャリア貯蔵ビンに接続されている読み出しチャネル4-410があり得る。光子吸収/キャリア発生領域4-402、キャリア移動領域4-406、キャリア貯蔵ビン4-408a、4-408b、4-408c、及び読み出しチャネル4-410は、半導体を局所的にドーピングすること、及び/又は、調整絶縁領域を形成して光検出機能をもたらし、キャリアを閉じ込めることによって形成することができる。時間ビニング光検出器4-400はまた、デバイスを通じてキャリアを輸送するための電場をデバイス内に発生させるように構成されている、基板上に形成されている複数の電極4-420、4-422、4-432、4-434、4-436、4-440をも含むことができる。
【0130】
動作時、蛍光光子が、異なる複数の時点において光子吸収/キャリア発生領域4-402において受け取られ、キャリアを発生させることができる。例えば、ほぼ時刻tにおいて、3つの蛍光光子が、光子吸収/キャリア発生領域4-402の空乏領域において3つのキャリア電子を発生させることができる。デバイス内の電場(電極4-420及び4-422及び任意選択的に又は代替的に4-432、4-434、4-436に対するドーピング及び/又は外部印加バイアスに起因する)が、キャリアをキャリア移動領域4-406に移動させることができる。キャリア移動領域において、移動距離が、蛍光分子の励起後の時間に変換される。後の時刻tにおいて、別の蛍光光子が、光子吸収/キャリア発生領域4-402において受け取られ、追加のキャリアを発生させることができる。この時点において、最初の3つのキャリアは、第2の貯蔵ビン4-408bに隣接するキャリア移動領域4-406内の位置に移動している。後の時刻tにおいて、電気的バイアスを電極4-432、4-434、4-436と電極4-440との間に印加して、キャリア移動領域4-406から貯蔵ビンへとキャリアを横方向に輸送することができる。最初の3つのキャリアはその後、第1のビン4-408aに輸送して保持することができ、後に発生したキャリアは、第3のビン4-408cに輸送して保持することができる。いくつかの実施態様において、各貯蔵ビンに対応する時間間隔は、ナノ秒未満の時間スケールにあるが、いくつかの実施形態(例えば、蛍光色素分子がより長い減衰時間を有する実施形態)では、より長い時間スケールが使用されてもよい。
【0131】
励起事象(例えば、パルス光源からの励起パルス)後にキャリアを発生及び時間ビニングする工程は、単一の励起パルスの後に1度行われてもよく、又は、光検出器4-400の単一の電荷蓄積サイクルの間に複数の励起パルス後に複数回繰り返されてもよい。電荷蓄積が完了した後、キャリアは、読み出しチャネル4-410を介して貯蔵ビンから読み出すことができる。例えば、適切なバイアス・シーケンスを少なくとも電極4-440及び下流の電極(図示せず)に印加して、貯蔵ビン4-408a、4-408b、4-408cからキャリアを除去することができる。
【0132】
信号取得の態様は、図4-5A及び図4-5Bにおいて、複数の励起パルスについてさらに詳細に示されている。図4-5Aにおいて複数の励起パルスが、時刻te1、te2、te3、...において試料に印加される。各励起パルス後、1つ又は複数の蛍光発光事象が時刻tfnにおいて生じ得、これによって、発光事象がいつ生じるかに応じて、キャリアが異なるキャリア貯蔵ビンに蓄積される。複数の励起事象の後、各キャリア貯蔵ビン内に蓄積された信号を読み出して、ヒストグラム4-510(図4-5Bに示す)として表すことができる信号系列をもたらすことができる。信号系列は、試料中の蛍光色素分子(複数可)の励起後の各ビニングされている時間間隔中に検出される光子の数を示すことができ、蛍光発光減衰率を表す。信号系列又はヒストグラムを使用して、異なる蛍光分子、又は、蛍光分子が存在する異なる環境を区別することができる。
【0133】
異なる蛍光分子の区別の例として、図4-3B及び図4-4に示すような、3つの時間ビンを有する光検出器が、図4-5Bのビン1~ビン3のヒストグラムによって表され、図4-2の曲線Bに対応する3つの信号値(35、9、3.5)を生成することができる。これらのビニングされた信号値は、ビニングされた値(18、12、8)を生成し得る、図4-2の曲線Aに対応するもののような、異なる蛍光分子から記録されるビニングされた信号値とは異なる相対値及び/又は絶対値を有し得る。ビニングされた値の信号系列を、較正基準と比較することによって、2つ以上の蛍光分子、又は、蛍光寿命に影響を及ぼす環境を区別することが可能である。単一の固有波長のみにおいて動作するパルス光源を使用して、寿命情報に基づいて、複数の異なる蛍光分子及び/又は環境を区別することができることは有益であり得る。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、励起パルスの信号レベルを記録する(例えば、励起パルスによって直に発生するキャリアを蓄積する)ために、少なくとも1つの時間ビニング光検出器内に、励起ビン(例えば、ビン0)が含まれ得る。記録される信号レベルを使用して、蛍光信号レベルを正規化することができ、これは、強度に基づいて蛍光分子を区別するのに有用であり得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、貯蔵ビン4-408からの信号値を使用して、発光減衰曲線(例えば、単一の指数関数的減衰)を当てはめ、検出される寿命を決定することができる。いくつかの実施形態において、ビニングされた信号値は、2重指数又は3重指数のような、複数の指数関数的減衰に当てはめられ得る。ラゲール分解プロセスを使用して、複数の指数関数的減衰を分析することができる。いくつかの実施態様において、信号値は、ベクトル又は位置として取り扱うことができ、M次元空間にマッピングすることができ、クラスタ分析を使用して、検出される寿命を決定することができる。寿命が決定されると、蛍光分子のタイプ、又は、蛍光分子が位置する環境の特性を識別することができる。
【0136】
図4-3及び図4-4に関連して説明されている例は、3つの時間ビンを示しているが、時間ビニング光検出器は、より少ない又はより多い時間ビンを有してもよい。例えば、時間ビンの数は、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上であってもよい。いくつかの事例において、16個、32個、64個又はそれ以上の時間ビンがあってもよい。いくつかの実施形態によれば、光検出器内の時間ビンの数は、再構成可能であってもよい。例えば、1つ又は複数の隣接するビンが、読み出し時に結合されてもよい。
【0137】
図4-3に関する論述は、1度に単一のタイプの蛍光分子からの発光を検出することに関するが、いくつかの事例において、試料は、異なる寿命を有する2つ以上の異なる蛍光分子を含んでもよい。複数の異なる蛍光分子が時間的発光プロファイルに寄与する場合、平均蛍光寿命を使用して、その集合を表すことができる。いくつかの実施形態において、分析システム1-160は、蛍光分子の組み合わせを判別するように構成することができる。例えば、蛍光分子の第1の組み合わせは、蛍光分子の第2の組み合わせとは異なる平均寿命を呈し得る。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、時間ビニング光検出器は、イメージング・アレイ内で使用されてもよく、イメージング光学素子が、時間ビニング光検出器アレイと試料との間に含まれてもよい。例えば、イメージング・アレイの各イメージング画素が、時間ビニング光検出器4-400を含んでもよい。イメージング光学素子は、光検出器アレイ上に試料のある領域の画像を形成することができる。光検出器アレイ内の各画素は、画素に対応するイメージングされている領域の部分の蛍光寿命を決定するために分析される時間ビニングされた信号値を記録することができる。したがって、そのようなイメージング・アレイは、異なる蛍光寿命特性を有する画像内の異なる領域を判別するための、空間分解蛍光寿命イメージング情報を提供することができる。いくつかの実施態様において、例えば、各画素のすべてのビンを合計すること、又は、励起パルスビン(ビン0)から画像を構築することによって、同じ時間ビニング光検出器を使用して、同じ領域の従来の画像を得ることができる。蛍光寿命の変動は、従来のグレイ・スケール又はカラー画像上に、重なり合う色分けされたマップとして表示することができる。いくつかの事例において、寿命マッピングによって、手術を実施する医師が、組織の異常な又は疾患のある領域(例えば、がん性又は前がん性)を識別することを可能にすることができる。
【0139】
本発明者らは、パルス光源、及び、蛍光寿命を検出するための時間ビニング光検出器を、臨床環境又は家庭内環境において用途を有し得る低コストの可搬性のポイント・オブ・ケア(POC)機器内に結合させることができることを認識し、諒解するに至った。そのような機器はイメージング又は非イメージングであってもよく、蛍光寿命分析を利用して、生体試料(例えば、ヒト組織)の1つ又は複数の特性を決定することができる。いくつかの事例において、生体試料の特性を決定するための機器4-100は、生物学的物質の分析(例えば、有害である可能性のある物質の分析)の分野において使用することができる。POC機器及び蛍光寿命を使用した試料分析のいくつかの態様を、下記に説明する。
【0140】
本発明者らは、いくつかの内因性生体分子が、患者の状態又は患者の組織もしくは器官の状態を決定するために分析することができる特徴的な寿命で蛍光発光することを認識し、諒解するに至った。したがって、いくつかの生来の生体分子は、患者のある領域の内因性蛍光分子としての役割を果たし、患者のその領域の標識のないレポ-タを提供することができる。内因性蛍光分子の例は、限定ではなく例として、ヘモグロビン、コラーゲン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)H)、レチノール、リボフラビン、コレカルシフェロール、葉酸、ピリドキシン、チロシン、ジチロシン、糖化付加物、イドラミン、リポフスチン、ポリフェノール、トリプトファン、フラビン、及びメラニンを含み得る。
【0141】
内因性蛍光分子は、それらが発する光の波長、及び、励起エネルギーに対するそれらの応答が異なり得る。いくつかの例示的な内因性蛍光分子の励起及び蛍光発光の波長が、表1に示される。追加の内因性蛍光分子及びそれらの固有蛍光波長は、レチノール-500nm、リボフラビン-550nm、コレカルシフェロール-380~460nm、及びピリドキシン-400nmを含む。
【0142】
【表1】
【0143】
内因性蛍光分子はまた、異なる蛍光寿命、及び/又は、周囲の環境の影響を受ける蛍光寿命をも有し得る。内因性蛍光分子の蛍光寿命に影響を及ぼし得る環境要因は、組織構造、形態、酸素化、pH、血管分布、細胞構造及び/又は細胞代謝状態の変化を含む。いくつかの実施形態において、健康な組織の蛍光寿命(又は結合寿命の平均)は、不健康な組織のものとは異なり得る。短パルス又は超短光パルスによって照射されている患者の組織から検出される蛍光寿命を分析することによって、臨床医が、患者の疾患の、他の評価技法よりも早期の段階を検出することが可能になり得る。例えば、何らかのタイプの皮膚がんを、がんが肉眼で見えるようになる前に、蛍光寿命分析を使用して早期の段階において検出することができる。
【0144】
いくつかの実施形態において、特定の生体分子の存在及び/又は相対濃度を検出して、患者の状態を決定することができる。いくつかの生体分子について、分子の酸素化状態が、患者の状態の指標を提供することができる。分子の蛍光寿命は、分子の酸素化状態に基づいて変化し得る。検出される蛍光寿命の分析を使用して、患者の組織中の生体分子の酸化状態及び還元状態の相対濃度を決定することができる。相対濃度は、患者の状態を示すことができる。いくつかの事例において、いくつかの生体分子(例えば、NADH)は、細胞中の他の分子(例えば、タンパク質)に結合することができ、非結合又は自由溶液状態を有することができる。結合状態及び非結合状態は、異なる蛍光寿命を有することができる。細胞又は組織の評価は、蛍光寿命に基づいて、自由形態対結合形態の分子の相対濃度を決定することを含むことができる。
【0145】
特定の生体分子は、がん(例えば、メラノーマ)、腫瘍、細菌感染、ウイルス感染、及び糖尿病を含む、様々な疾患及び状態の指標を提供することができる。例として、がん細胞及び組織は、特定の生体分子(例えば、NAD(P)H、リボフラビン、フラビン)から蛍光寿命を分析することによって、健康な細胞及び組織から区別することができる。がん組織は、これらの生体分子のうちの1つ又は複数の濃度が、健康な組織よりも高いものであり得る。別の例として、ヘキソキナーゼ及びグリコーゲン付加物のような、グルコース濃度を示す生体分子と関連付けられる蛍光寿命を検出することによって、個人の糖尿病を評価することができる。別の例として、老化に起因する全般的な変化を、蛍光寿命に基づいて、コラーゲン及びリポフスチンの濃度を検出することによって、評価することができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、外因性蛍光分子を、組織のある領域に組み込むことができ、内因性蛍光分子の代わりに、又は、それに加えて使用することができる。いくつかの事例において、外因性蛍光マーカは、プローブに含むことができ、又は、試料中の標的(例えば、特定の分子、細菌、又はウイルス)の存在を識別するためのマーカとして提供することができる。外因性蛍光分子の例は、蛍光染色液、有機色素、蛍光タンパク質、酵素、及び/又は量子ドットを含む。そのような外因性分子は、プローブ、又は、試料中に存在すると考えられる特定の標的又は成分に特異的に結合する官能基(例えば、分子、イオン、及び/又はリガンド)に接合することができる。外因性蛍光分子をプローブに付着させることによって、外因性蛍光分子を示す蛍光寿命を検出することによる標的の識別が可能になり得る。いくつかの実施形態において、外因性蛍光分子は、患者に容易に投与することができる(例えば、皮膚に対する局所使用、消化管イメージングのための摂取)、組成物(例えば、ゲル又は液体)内に含めることができる。
【0147】
諒解され得るように、コンパクトなPOCイメージング機器は、臨床医が、患者の状態を非侵襲的に評価及び/又は診断することを可能にすることができる。患者から生体試料を抽出するのではなく、イメージング・デバイスによって組織の許容可能な領域をイメージングすることによって、結果を得るために含まれる時間を低減し、手順の侵襲性を低減し、コストを低減し、かつ/又は、臨床医が、患者を遠隔試験位置へと動かすか、又は、患者の試料を試験施設に送ることなく、患者を処置する能力を促進するように、患者の評価を実施することができる。
【0148】
時間領域蛍光寿命イメージングの別の用途は、顕微鏡法の分野にある。短パルス又は超短光パルスによって、顕微鏡によって見られる試料を励起し、時間ビニング光検出器アレイによって試料から蛍光発光を検出することによって、蛍光寿命画像顕微法(FLIM)を実施することができる。検出される蛍光発光は、顕微鏡の視野内の対応するイメージングされている部分の寿命を決定するために、画素レベルで分析することができ、寿命データを、結果もたらされる試料の画像にマッピングすることができる。したがって、蛍光寿命に基づいて、試料特性を顕微鏡レベルで決定することができる。
【0149】
パルス光源及び時間ビニング光検出器アレイはまた、蛍光寿命分析を含まない時間領域用途に使用することもできる。1つのそのような用途は、飛行時間(TOF)イメージングを含む。TOFイメージングにおいて、光パルスを使用して、離れた対象を照射することができる。イメージング光学素子を使用して、パルスからの後方散乱放射を収集し、時間ビニング光検出器アレイ上に、離れた対象の画像を形成することができる。アレイ内の各画素において、光子の到来時刻を決定することができる(例えば、後方散乱パルスのピークがいつ生じるかを決定する)。到来時刻は、対象と光検出器アレイとの間の距離に比例するため、イメージングされる対象の表面トポグラフィを示す、対象の3次元マップを作成することができる。
【0150】
V.構成
装置及び方法の様々な構成及び実施形態を実装することができる。いくつかの例示的な構成をこの節で説明するが、本発明は、リストされている構成及び実施形態のみには限定されない。
【0151】
(1)光を発するように構成されている半導体ダイオードと、半導体ダイオードの端子に結合されているトランジスタを含む駆動回路とを備え、駆動回路は、ユニポーラ・パルスを受信し、ユニポーラ・パルスの受信に応答して半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されているパルス光源。
【0152】
(2)バイポーラ電気パルスは、第1の大きさ及び第1の極性を有する第1のパルスと、後続する、第1の大きさとは異なる第2の大きさを有する、反対の極性の第2のパルスとを含む構成(1)のパルス光源。
【0153】
(3)第2の大きさは第1の大きさの25%と90%との間である(2)のパルス光源。
(4)半導体ダイオードの端子に接続されている複数のワイヤ・ボンドをさらに備える(1)乃至(3)のいずれか1つのパルス光源。
【0154】
(5)駆動回路に結合されており、ユニポーラ・パルスを形成し、ユニポーラ・パルスを駆動回路に出力するように構成されているパルス発生器をさらに備える(1)乃至(4)のいずれか1つのパルス光源。
【0155】
(6)パルス発生器、駆動回路、及び半導体ダイオードは同じプリント回路ボード上に位置する(5)のパルス光源。
(7)パルス発生器、駆動回路、及び半導体ダイオードは同じ基板上に位置する(5)のパルス光源。
【0156】
(8)ユニポーラ・パルスのパルス長は、50psと500psとの間である(1)乃至(7)のいずれか1つのパルス光源。
(9)パルス発生器は、2つの差動クロック信号からユニポーラ・パルスを形成する第1の論理ゲートを備える(5)乃至(8)のいずれか1つのパルス光源。
【0157】
(10)第1の論理ゲートは、エミッタ結合論理ゲートを含む(9)のパルス光源。
(11)パルス発生器は、単一のクロック信号を受信し、4つのクロック信号を第1の論理ゲートに出力するように構成されているファン・アウト・ゲートをさらに備える(9)又は(10)のパルス光源。
【0158】
(12)パルス発生器は、ユニポーラ・パルスのパルス長を、1psと5psとの間の増分で変化させるように構成されている調整可能遅延要素をさらに備える(9)乃至(11)のいずれか1つのパルス光源。
【0159】
(13)トランジスタは、半導体ダイオードのカソードと、基準電位との間に接続されている通電端子を有し、第1の論理ゲートに結合されているゲート端子を有する(9)乃至(12)のいずれか1つのパルス光源。
【0160】
(14)トランジスタのゲート端子と、第1の論理ゲートからの出力との間に接続されているキャパシタをさらに備える(13)のパルス光源。
(15)トランジスタは高電子移動度電界効果トランジスタを含む(1)乃至(14)のいずれか1つのパルス光源。
【0161】
(16)トランジスタは、50psと2nsとの間の持続時間にわたって、半導体ダイオードを通じて4アンペアまでを切り換えるように構成されている(1)乃至(15)のいずれか1つのパルス光源。
【0162】
(17)第1の論理ゲートと並列に接続されており、2つの差動クロック信号から第2のユニポーラ・パルスを形成するように構成されている第2の論理ゲートをさらに備え、第2の論理ゲートからの出力はトランジスタのゲート端子に結合される(9)乃至(13)のいずれか1つのパルス光源。
【0163】
(18)トランジスタのドレイン端子は、半導体ダイオードのカソードに直に接続する(1)乃至(17)のいずれか1つのパルス光源。
(19)ドレイン端子に並列に接続されている第1のキャパシタ及び抵抗器をさらに備える(18)のパルス光源。
【0164】
(20)半導体ダイオードのアノードと、トランジスタのソース端子との間に接続されている第2のキャパシタをさらに備える(18)又は(19)のパルス光源。
(21)パルス発生器及び駆動回路は、約30Hzと約200MHzとの間の繰り返し数にあるバイポーラ電気パルスによって、半導体ダイオードを変調するように構成されている(5)乃至(20)のいずれか1つのパルス光源。
【0165】
(22)50psと500psとの間の半値全幅持続時間を有する光パルスが、バイポーラ電気パルスの印加に応答して半導体ダイオードから放出される(1)乃至(21)のいずれか1つのパルス光源。
【0166】
(23)光パルスは、270nm、280nm、325nm、340nm、370nm、380nm、400nm、405nm、410nm、450nm、465nm、470nm、490nm、515nm、640nm、665nm、808nm、及び980nmの群から選択される固有波長を有する(1)乃至(21)のいずれか1つのパルス光源。
【0167】
(24)光パルスのテールは、パルスのピークから250ps後に、パルスのピークを少なくとも20dB下回ったままである(1)乃至(23)のいずれか1つのパルス光源。
【0168】
(25)半導体ダイオードはレーザダイオードを含む(1)乃至(24)のいずれか1つのパルス光源。
(26)レーザダイオードは、複数の量子井戸を含む(25)のパルス光源。
【0169】
(27)半導体ダイオードは発光ダイオードである(1)乃至(26)のいずれか1つのパルス光源。
(28)半導体ダイオードはスラブ結合光導波路レーザダイオードである(1)乃至(27)のいずれか1つのパルス光源。
【0170】
(29)半導体ダイオードから光パルスを受信するように構成されている可飽和吸収体をさらに備える(1)乃至(28)のいずれか1つのパルス光源。
(30)可飽和吸収体は、半導体ダイオードと同じ基板内に形成されている(1)乃至(29)のいずれか1つのパルス光源。
【0171】
(31)駆動回路は伝送線路パルス発生器を備える(1)乃至(4)、(15)、(16)、(18)、及び(22)乃至(30)のいずれか1つのパルス光源。
(32)U字形状に形成されている伝送線路をさらに備える(31)のパルス光源。
【0172】
(33)半導体ダイオードは伝送線路の第1の端部に接続されており、伝送線路の第2の端部に接続されている終端インピーダンスをさらに備える請求項(31)又は(32)のパルス光源。
【0173】
(34)伝送線路の第1の端部及び第2の端部を基準電位に短絡するように構成されている短絡トランジスタをさらに備える請求項(33)のパルス光源。
(35)単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別するように各々が構成されている複数の画素を有する光検出器アレイと、パルス光源によって照射される対象の画像を光検出器アレイ上に形成するように構成されている光学系とをさらに備える(1)乃至(34)のいずれか1つのパルス光源。
【0174】
(36)光検出器アレイは、離れた対象に位置する少なくとも1つの蛍光分子の蛍光寿命を表す信号を生成するように構成されている(35)のパルス光源。
(37)光検出器アレイから蛍光寿命を表す信号を受信し、対象の電子画像のデジタル・データを発生させるように構成されている信号処理電子装置をさらに備え、電子画像は、蛍光寿命に基づいて対象の少なくとも1つの特性を示す(35)又は(36)のパルス光源。
【0175】
(38)少なくとも1つのクロック信号を受信する工程と、少なくとも1つのクロック信号から電気パルスを生成する工程と、電気パルスによってトランジスタのゲート端子を駆動する工程であって、トランジスタの通電端子は、光を発するように構成されている半導体ダイオードに接続されている、駆動する工程と、電気パルスによるトランジスタの活性化に応答して光パルスを生成するために、半導体ダイオードにバイポーラ電流パルスを印加する工程とを含む光パルスを生成する方法。
【0176】
(39)電気パルスはユニポーラ・パルスである実施形態(38)の方法。
(40)光パルスの振幅を制御するために、ユニポーラ・パルスのパルス振幅ではなく、パルス持続時間を調整する工程をさらに含む(38)又は(39)の方法。
【0177】
(41)光パルスは、50psと2nsとの間の半値全幅持続時間を有する(38)乃至(40)のいずれか1つの方法。
(42)光パルスは、50psと500psとの間の半値全幅持続時間を有する(38)乃至(40)のいずれか1つの方法。
【0178】
(43)光パルスは、270nm、280nm、325nm、340nm、370nm、380nm、400nm、405nm、410nm、450nm、465nm、470nm、490nm、515nm、640nm、665nm、808nm、及び980nmの群から選択される固有波長を有する(38)乃至(42)のいずれか1つの方法。
【0179】
(44)30Hzと200MHzとの間の繰り返し数にある一連の光パルスを生成するために、受信する工程、生成する工程、駆動する工程、及び印加する工程を繰り返す工程をさらに含む(38)乃至(43)のいずれか1つの方法。
【0180】
(45)バイポーラ電流パルスは、第1の振幅を有する第1のパルスと、反対の極性の、第1のパルスとは異なる大きさの第2の振幅を有する第2のパルスとを含む(38)乃至(44)のいずれか1つの方法。
【0181】
(46)半導体ダイオードはレーザダイオード又は発光ダイオードを含む(38)乃至(45)の方法。
(47)光パルスの一部分を、可飽和吸収体を用いて差動的に減衰させる工程をさらに含む(38)乃至(46)のいずれか1つの方法。
【0182】
(48)少なくとも1つのクロック信号を受信する工程は、トランジスタのゲート端子に結合されている論理ゲートにおいて2つの差動クロック信号を受信する工程を含む(38)乃至(47)のいずれか1つの方法。
【0183】
(49)少なくとも1つのクロック信号を受信する工程は、トランジスタのゲート端子と並列に結合されている2つの論理ゲートにおいて2つの差動クロック信号を受信する工程を含む(38)乃至(47)のいずれか1つの方法。
【0184】
(50)電気パルスを生成する工程は、電気パルスを形成するために、トランジスタのゲート端子に結合されている論理ゲートを用いて2つの差動クロック信号を処理する工程を含む(38)乃至(49)のいずれか1つの方法。
【0185】
(51)2つの差動クロック信号の間の位相遅延によって、電気パルスの長さを設定する工程をさらに含む(50)の方法。
(52)電気パルスを生成する工程は、電気パルスを形成するために、トランジスタのゲート端子に並列に結合されている2つの論理ゲートを用いて2つの差動クロック信号を処理する工程を含む(38)乃至(51)のいずれか1つの方法。
【0186】
(53)半導体ダイオードからの光パルスを用いて試料を照射する工程と、試料から蛍光寿命を検出する工程とをさらに含む(38)乃至(52)のいずれか1つの方法。
(54)2つの異なる蛍光分子又は分子が位置する環境と関連付けられる異なる減衰率を有する少なくとも2つの異なる蛍光寿命を区別する工程であって、光パルスは単一の固有波長にある、区別する工程をさらに含む(53)の方法。
【0187】
(55)検出されている蛍光寿命に基づいて、試料の少なくとも1つの特性を決定する工程をさらに含む(53)又は(54)の方法。
(56)試料のある領域の電子画像を生成する工程と、画像内で蛍光寿命に基づく少なくとも1つの特性を示す工程とをさらに含む(55)の方法。
【0188】
(57)半導体ダイオードからの光パルスを用いて試料を照射する工程と、単一の光検出器の単一の電荷蓄積間隔の間に、単一の光検出器を用いて、試料から後方散乱される光子の到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別する工程とをさらに含む(38)乃至(52)のいずれか1つの方法。
【0189】
(58)弁別されている到来時刻に基づいて、試料の電子3次元画像を生成する工程をさらに含む(57)の方法。
(59)光を発するように構成されている半導体ダイオードと、光パルスを生成するために半導体ダイオードにバイポーラ電流パルスを印加するように構成されている駆動回路と、光パルスを試料に送達するように構成されている光学系と、光検出器であって、光検出器の単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンへと弁別するように構成されている、光検出器とを備える蛍光寿命分析システム。
【0190】
(60)電流駆動回路に電気パルスを提供するように構成されているパルス発生器をさらに備え、電流駆動回路は、電気パルスの受信に応答して半導体ダイオードにバイポーラ・パルスを印加するように構成されている(59)のシステム。
【0191】
(61)電気パルスは、50psと2nsとの間の持続時間を有するユニポーラ・パルスである(60)のシステム。
(62)電流駆動回路は、パルス発生器からの出力に結合されているゲート端子を有し、半導体ダイオードの端子と基準電位との間に接続されている通電端子を有するトランジスタを備える(60)又は(61)のシステム。
【0192】
(63)半導体ダイオードのアノードとカソードとの間に並列に接続されている第1の抵抗器及び第1のキャパシタと、トランジスタのゲート端子と基準電位との間に並列に接続されている第2の抵抗器及び第2のキャパシタとをさらに備える(62)のシステム。
【0193】
(64)半導体ダイオードはレーザダイオード又は発光ダイオードを含む(59)乃至(63)のいずれか1つのシステム。
(65)半導体ダイオードの端子に接続されている複数のワイヤ・ボンドをさらに備える(59)乃至(63)のいずれか1つのシステム。
【0194】
(66)光パルスは、50psと500psとの間の半値全幅持続時間を有する(59)乃至(63)のいずれか1つのシステム。
(67)光パルスは、270nm、280nm、325nm、340nm、370nm、380nm、400nm、405nm、410nm、450nm、465nm、470nm、490nm、515nm、640nm、665nm、808nm、及び980nmの群から選択される固有波長を有する(59)乃至(63)のいずれか1つのシステム。
【0195】
(68)光検出器が配置されている光検出器のアレイをさらに備え、光検出器のアレイは、光パルスの単一の電荷蓄積間隔の間に試料からの蛍光を時間ビニングするように構成されている(59)乃至(63)のいずれか1つのシステム。
【0196】
(69)試料と光検出器アレイとの間に位置するイメージング光学素子をさらに備え、イメージング光学素子は、光検出器アレイにおいて、光パルスによって照射される試料の領域の画像を形成するように構成されている(68)のシステム。
【0197】
(70)光検出器アレイにおいて形成される画像は、試料の微細領域の画像である(69)のシステム。
(71)光を発するように構成されている半導体ダイオードと、第1の論理ゲートであって、第1の論理ゲートの出力において第1のパルスを形成するように構成されている、第1の論理ゲートと、第1の論理ゲートに結合されている駆動回路とを備え、駆動回路は、第1のパルスを受信し、第1のパルスの受信に応答して光パルスを生成するために、半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されているパルス光源。
【0198】
(72)第1のパルスはユニポーラ・パルスである(71)のパルス光源。
(73)第1の論理ゲートに結合されているファン・アウト・ゲート及び遅延要素をさらに備え、遅延要素は、ファン・アウト・ゲートからの少なくとも1つの出力を遅延させる(72)のパルス光源。
【0199】
(74)遅延要素は、ユニポーラ・パルスのパルス長を、1psと5psとの間の増分で変化させるように構成されている(73)のパルス光源。
(75)第1の論理ゲートは、2つの差動クロック信号から第1のパルスを形成するように構成されている(71)乃至(74)のいずれか1つのパルス光源。
【0200】
(76)バイポーラ電気パルスは、第1の大きさ及び第1の極性を有する第1のパルスと、後続する、第1の大きさとは異なる第2の大きさを有する、反対の極性の第2のパルスとを含む(71)乃至(75)のいずれか1つのパルス光源。
【0201】
(77)第2の大きさは第1の大きさの25%と90%との間である(76)のパルス光源。
(78)半導体ダイオードの端子に接続されている複数のワイヤ・ボンドをさらに備える(71)乃至(77)のいずれか1つのパルス光源。
【0202】
(79)2つの差動クロック信号から第2のパルスを形成するように構成されている第2の論理ゲートをさらに備え、第2の論理ゲートは、第1の論理ゲートと並列に接続されており、第2の論理ゲートの出力は駆動回路に結合されている(75)乃至(78)のいずれか1つのパルス光源。
【0203】
(80)半導体ダイオードと基準電位との間に接続されている通電端子を有する、駆動回路内のトランジスタをさらに備える(71)乃至(79)のいずれか1つのパルス光源。
【0204】
(81)光パルスは、50psと2nsとの間の持続時間を有する(80)のパルス光源。
(82)光を発するように構成されている半導体ダイオードと、半導体ダイオードの端子に結合されているトランジスタを含む駆動回路とを備え、駆動回路は、ユニポーラ・パルスを受信し、ユニポーラ・パルスの受信に応答して半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されており、トランジスタは、電流源と基準電位との間で半導体ダイオードと並列に接続されているパルス光源。
【0205】
(83)半導体ダイオードと基準電位との間に並列に接続されている抵抗器及びキャパシタをさらに備え、任意選択的に(2)乃至(4)、(15)、及び(22)乃至(30)のいずれか1つの特徴を有し、(1)の特徴を除外する(82)のパルス光源。
【0206】
(84)トランジスタは、通常伝導しており、ユニポーラ・パルスによってパルス・オフされるように構成されている(82)又は(83)のパルス光源。
(85)単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別するように各々が構成されている複数の画素を有する光検出器アレイと、パルス光源によって照射される対象の画像を光検出器アレイ上に形成するように構成されている光学系とをさらに備える(82)乃至(84)のいずれか1つのパルス光源。
【0207】
(86)光を発するように構成されている半導体ダイオードと、半導体ダイオードの第1の端子に接続されている複数の第1の回路分岐とからなり、各回路分岐は、その通電端子が、基準電位と半導体ダイオードの第1の端子との間に接続されているトランジスタを備えるパルス光源。
【0208】
(87)複数の第1の回路分岐のうちの第1の回路分岐内の第1の基準電位は、複数の第1の回路分岐のうちの第2の回路分岐内の第2の基準電位とは異なる値を有し、任意選択的に(4)、(15)、(16)及び(22)乃至(30)のいずれか1つの特徴を有し、(1)の特徴を除外する(86)のパルス光源。
【0209】
(88)複数の第1の回路分岐のうちの第1の回路分岐内の第1の基準電位は、正の値を有し、複数の第1の回路分岐のうちの第2の回路分岐内の第2の基準電位は、負の値を有する(86)又は(87)のパルス光源。
【0210】
(89)各回路分岐内に、トランジスタの通電端子と基準電位との間に接続されている抵抗器をさらに備える(86)乃至(88)のいずれか1つのパルス光源。
(90)各回路分岐内に、トランジスタの通電端子と接地電位との間に接続されているキャパシタをさらに備える(86)乃至(89)のいずれか1つのパルス光源。
【0211】
(91)単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別するように各々が構成されている複数の画素を有する光検出器アレイと、パルス光源によって照射される対象の画像を光検出器アレイ上に形成するように構成されている光学系とをさらに備える(86)乃至(90)のいずれか1つのパルス光源。
【0212】
(92)信号及び反転信号を提供する無線周波数増幅器と、信号及び位相シフト反転信号を受信し、パルス及び反転パルスを出力するように構成されている論理ゲートと、パルス及び反転パルスを共通の出力に結合するように構成されている結合器と、共通の出力に結合されており、パルス及び反転パルスの受信に応答して光パルスを生成するように構成されている半導体ダイオードとを備えるパルス光源。
【0213】
(93)パルス又は反転パルスを減衰させるように構成されている可変減衰器をさらに備え、任意選択的に(4)乃至(15)、(16)、及び(22)乃至(30)のいずれか1つの特徴を有し、(1)の特徴を除外する(92)のパルス光源。
【0214】
(94)パルス又は反転パルスを時間的に遅延させるように構成されている遅延要素をさらに備える(92)又は(93)のパルス光源。
(95)無線周波数増幅器の入力に接続するDCブロックをさらに備える(92)乃至(94)のいずれか1つのパルス光源。
【0215】
(96)単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別するように各々が構成されている複数の画素を有する光検出器アレイと、パルス光源によって照射される対象の画像を光検出器アレイ上に形成するように構成されている光学系とをさらに備える(92)乃至(95)のいずれか1つのパルス光源。
【0216】
(97)第1の信号及び第1の信号の反転バージョンを受信し、パルス及びパルスの反転バージョンを出力するように構成されている無線周波数論理ゲートと、無線周波数論理ゲートに接続されている半導体ダイオードであって、半導体ダイオードの第1の端子においてパルスを受信し、半導体ダイオードの第2の端子においてパルスの反転バージョンを受信し、光パルスを放出するように構成されている、半導体ダイオードとを備えるパルス光源。
【0217】
(98)周期信号を受信し、第1の信号及び第1の信号の反転バージョンを出力するように構成されている第1の増幅器と、第1の信号又は第1の信号の反転バージョンの位相を変化させるように構成されている位相調整器とをさらに備え、任意選択的に(4)、(15)、(16)及び(22)乃至(30)のいずれか1つの特徴を有し、(1)の特徴を除外する(97)のパルス光源。
【0218】
(99)単一の電荷蓄積間隔の間に光子到来時刻を少なくとも2つの時間ビンに弁別するように各々が構成されている複数の画素を有する光検出器アレイと、パルス光源によって照射される対象の画像を光検出器アレイ上に形成するように構成されている光学系とをさらに備える(97)又は(98)のパルス光源。
VI.結論
このように、パルス・レーザのいくつかの実施形態のいくつかの態様を説明したが、様々な変更、修正、及び改善が当業者には容易に想到されることが諒解されるべきである。そのような変更、修正、及び改善はこの開示の1部であるように意図されており、本発明の精神及び範囲内にあることが意図されている。本教示を様々な実施形態及び例に関連して説明したが、本教示がこのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者には諒解されるであろうような、様々な代替形態、修正、及び均等物を包含する。
【0219】
様々な発明の実施形態が説明及び図示されてきたが、当業者は、その機能を実施し、かつ/又は、それらの結果及び/又は説明されている利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変形及び/又は修正の各々は、説明されている本発明の実施形態の範囲内にあると考えられる。より一般的には、当業者は、説明されているすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例であるように意図されていること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の用途に応じて決まることを容易に諒解するであろう。当業者は、日常の実験のみを使用して、説明されている特定の発明の実施形態に対する多くの均等物を認識することになり、又は、それを究明することが可能になる。それゆえ、上記の実施形態は例としてのみ提示されていること、ならびに、添付の特許請求項及びその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求されているのとは他の様態で実践されてもよいことが理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、説明されている各個々の特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法を対象とし得る。加えて、そのような特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、及び/又は方法の任意の組み合わせが、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0220】
さらに、本発明のいくつかの利点が示され得るが、本発明のすべての実施形態がすべての説明されている利点を含むとは限らないことは諒解されるべきである。いくつかの実施形態は、有利であるとして説明されている任意の特徴を実装しなくてもよい。したがって、上記の説明及び図面は例示のみを目的としたものである。
【0221】
数値及び範囲は、本明細書及び特許請求の範囲において、近似する又は正確な値又は範囲として記載されている場合がある。例えば、いくつかの事例において、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、及び「実質的に(substantially)」という用語が、値を参照して使用されている場合がある。そのような参照は、参照されている値、ならびに、その値に妥当な変動が加わった値及び差し引かれた値を包含するように意図されている。例えば、「約10と約20との間」という語句は、いくつかの実施形態における「正確に10と正確に20との間」、及び、いくつかの実施形態における「10+δ1と20+δ2との間」を意味するように意図されている。値の変動δ1、δ2の量は、いくつかの実施形態においては値の5%未満であってもよく、いくつかの実施形態においては値の10%未満であってもよく、さらに、いくつかの実施形態においては値の20%未満であってもよい。例えば、2桁以上を含む範囲のような、値の大きい範囲が与えられている実施形態では、値の変動δ1、δ2の量は、50%程度と高くなり得る。例えば、動作可能範囲が2から200まで延在する場合、「約80」は、40と120との間の値を包含してもよく、範囲は、1と300との間と大きくなってもよい。正確な値が意図される場合、例えば、「正確に2と正確に200との間」のように、「正確に」という用語が使用される。
【0222】
限定ではないが、特許、特許出願、論説、著書、論文、及びウェブ・ページを含む、この出願において引用されているすべての文献及び同様の資料は、そのような文献及び同様の資料の形式にかかわらず、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。組み込まれている文献及び同様の資料のうちの1つ又は複数が、限定ではないが、定義されている用語、用語の用法、説明されている技法などを含め、この出願と異なるか、又は、相反する場合、この出願が優先する。
【0223】
使用されている節の見出しは、構成のみを目的としており、決して説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
また、説明されている技術は、そのうち少なくとも1つの例が提供されている方法として具現化され得る。方法の1部分として実施される動作は、任意の適切な様式で順序付けられてもよい。したがって、動作が示されているものとは異なる順序で実施され、たとえ例示的な実施形態においては順次の動作として示されていたとしても、いくつかの動作を同時に実施することを含んでもよい実施形態が構築されてもよい。
【0224】
定義及び使用されているものとしてのすべての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれている文書における定義、及び/又は、定義されている用語の通常の意味に優先するものとして理解されるべきである。
【0225】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、明確に逆に指示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するように理解されるべきである。
【0226】
「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、そのように結合されている要素、すなわち、いくつかの事例では結合して存在し、他の事例では分離して存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」を用いてリストされている複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合されている要素の「1つ又は複数」として解釈されるべきである。「及び/又は」条項によって具体的に識別されている要素以外の他の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定例として、「備える(comprising)」のような限定しない文言とともに使用されているとき、「A及び/又はB」に対する参照は、1実施形態においてはAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態においてはBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態においてはAとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指し得る、などであり得る。
【0227】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、「又は」は、上記で定義されているような「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、リスト内で項目を分離しているとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含的である、すなわち、複数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上をも含み、また任意選択的に追加のリストされていない項目も含むものとして解釈されるべきである。「~のうちの1つのみ」もしくは「~のうちの正確に1つ」、又は、特許請求の範囲において使用されるとき、「~からなる」のように、明確に逆に指示されている用語だけは、複数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、使用されているような「又は」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」又は「~のうちの正確に1つ」のような、排他性の用語が先行するときは、排他的な選択肢(すなわち「1方又は他方であり、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「基本的に~からなる」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるものとしての、その通常の意味を有するべきである。
【0228】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、1つ又は複数の要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的にリストされているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別されている要素以外の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、もしくは、同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1実施形態においては、Bが存在せず、2つ以上のAを任意選択的に含む少なくとも1つのAを指し(また、任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aが存在せず、2つ以上のBを任意選択的に含む少なくとも1つのBを指し(また、任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つのA、及び、任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つのBを指し得る(また、任意選択的に他の要素を含む)、などである。
【0229】
特許請求の範囲において、及び、上記の本明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「~から構成される」などのようなすべての移行句は、限定しないものである、すなわち、含むが、それに限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。「~からなる」及び「基本的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ限定的な又は半限定的な移行句であるべきである。
【0230】
特許請求の範囲は、その旨述べられていない限り、記載されている順序又は要素に限定されるものとして読み取られるべきではない。添付の特許請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって、形態及び詳細に様々な変更を行うことができることが理解されるべきである。以下の特許請求項の及びその均等物の精神及び範囲内に入るすべての実施形態が特許請求される。
図1-1】
図1-2】
図2-1A】
図2-1B】
図2-1C】
図2-2A】
図2-2B】
図2-2C】
図2-3】
図2-4A】
図2-4B】
図2-4C】
図2-4D】
図2-4E】
図2-4F】
図2-4G】
図2-4H】
図2-4I】
図2-4J】
図2-4K】
図2-4L】
図2-4M】
図2-5A】
図2-5B】
図2-5C】
図2-5D】
図2-6A】
図2-6B】
図2-6C】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4A】
図3-4B】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5A】
図4-5B】