(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】リール脚固定装置
(51)【国際特許分類】
A01K 87/06 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
A01K87/06 B
(21)【出願番号】P 2018006644
(22)【出願日】2018-01-18
【審査請求日】2020-04-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】奥 徳隆
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-018088(JP,A)
【文献】実開平05-031567(JP,U)
【文献】実公昭26-001063(JP,Y1)
【文献】特開2001-025337(JP,A)
【文献】米国特許第06397511(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 - 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール脚を収容できる開口を形成するように膨出する膨出部を有する一対の筒状の移動フードを対応する操作ナットによりリールシート上で軸方向に移動させることによって前記リール脚の着脱を行なうリール脚固定装置であって、
前記リールシートの外周
は、側面視で前記リールシートの中心軸線をほぼ境界として、前記リール脚が載置される載置面
側に位置されるとともに前記一対の操作ナットが螺合するネジが前記リールシートのほぼ全長にわたってほぼ半周にわたり形成されるネジ存在領域と、前記載置面側とは反対側
に位置されて握持される
とともに前記リールシートのほぼ全長にわたってほぼ半周にわたり
前記ネジが存在しないネジ不存在領域とに区分され
、
前記ネジ存在領域の前記ネジのネジ山の端縁の全ては、前記ネジ不存在領域の外表面と面一になるようにテーパ状に形成されていることを特徴とするリール脚固定装置。
【請求項2】
前記移動フードの内面には、前記リールシートの外表面と接触してリール脚固定時の前記移動フードの回転方向のガタつきを防止する凸部が軸方向に沿って形成されることを特徴とする請求項
1に記載のリール脚固定装置。
【請求項3】
前記リールシートには、前記載置面の側に、前記操作ナットの回転操作に伴う前記移動フードの回転を規制するためのキー溝が軸方向に沿って形成されることを特徴とする請求項1
又は2に記載のリール脚固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
釣竿に装着され、各種の魚釣用リールを取り付け可能とするリール脚固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、軸長方向に離間する移動フードと固定フードとを備え、リール脚の一端を固定フードに差し込むとともにリール脚の他端を軸方向に移動する移動フードで押え付けることにより魚釣用リールを固定するタイプのリール脚固定装置が知られている。この場合、固定フード及び移動フードは、釣竿の元竿杆の外周に被着されるパイプ状のリールシートに配設されており、移動フードに隣接配置された操作ナットを回転することで移動フードを固定フードに対して接近/離反させ、これにより、魚釣用リールの着脱がなされる。
【0003】
また、前記固定フードも移動フードに取って代えられたリール脚固定装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、このリール脚固定装置は、互いに軸長方向に離間して軸方向に移動する一対の移動フードを備え、リール脚の一端を一方の移動フードに差し込むとともにリール脚の他端を他方の移動フードで押え付けることにより魚釣用リールを固定する。この場合、一対の移動フードは、釣竿の元竿杆の外周に被着されるパイプ状のリールシートに配設されており、各移動フードに隣接配置された操作ナットを回転することで一対の移動フードを互いに接近/離反させ、これにより、魚釣用リールの着脱がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-204261号公報
【文献】特開2014-18088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に開示されるように一対の移動フードを互いに接近/離反させることにより魚釣用リールの着脱を行なうリール脚固定装置では、操作ナットの雌ネジが螺合する雄ネジが、リール脚を載置する載置面を含むリールシートの領域にわたって全周面に設けられている。そのため、釣竿の元竿杆と共にリール脚固定装置を握って釣竿やリールを操作する際に、掌や指がリールシートの雄ネジに触れ、釣人が違和感や痛みを感じる場合がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、リール脚固定装置を握持した際にリールシートに形成されるネジによる違和感や痛みを伴わないリール脚固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明は、魚釣用リールのリール脚を収容できる開口を形成するように膨出する膨出部を有する一対の筒状の移動フードを対応する操作ナットによりリールシート上で軸方向に移動させることによって前記リール脚の着脱を行なうリール脚固定装置であって、前記リールシートの外周は、側面視で前記リールシートの中心軸線をほぼ境界として、前記リール脚が載置される載置面側に位置されるとともに前記一対の操作ナットが螺合するネジが前記リールシートのほぼ全長にわたってほぼ半周にわたり形成されるネジ存在領域と、前記載置面側とは反対側に位置されて握持されるとともに前記リールシートのほぼ全長にわたってほぼ半周にわたり前記ネジが存在しないネジ不存在領域とに区分され、前記ネジ存在領域の前記ネジのネジ山の端縁の全ては、前記ネジ不存在領域の外表面と面一になるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、操作ナットが螺合するネジが、少なくともリール脚が載置される載置面とは反対側の外周領域を避けるようにリールシートのほぼ半周にわたって形成されるため、言い換えると、釣人が握持し得るリールシートの外周部位にはネジが形成されていないため、リール脚固定装置を握持した際にリールシートに形成されるネジによって釣人が違和感や痛みを感じずに済み、握り心地が良い。
【0009】
この場合、リールシートのほぼ半周わたって形成されるネジのネジ山の端縁の全ては、ネジが形成されていないリールシートの外周領域の外表面と面一になるようにテーパ状に形成されることが好ましい。このようにすると、ネジが形成されているリールシートの外周面部位とネジが形成されていないリールシートの外周面部位との境界領域に位置されるネジ山の端縁に触れることによって違和感や痛みを感じるといった不具合も解消でき、握り心地が更に良くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リール脚固定装置を握持した際にリールシートに形成されるネジによる違和感や痛みを伴わないリール脚固定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】リール脚固定装置が装着された釣竿の一例を示す図である。
【
図2】本発明に係るリール脚固定装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図3】(a)は、リール脚固定装置をリール脚載置面側から見た概略平面図、(b)は、リール脚固定装置の概略側面図である。
【
図4】
図3の(b)のA-A線に沿う概略断面図である。
【
図5】ネジ山端縁の第1の変形例を示す
図4に対応する概略断面図である。
【
図6】ネジ山端縁の第2の変形例を示す
図4に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係るリール脚固定装置が装着される釣竿の一例を示す図である。
釣竿1は、複数の竿杆を継合することで構成されており、本実施形態では、元竿杆3、中竿杆5、及び、穂先竿杆7の3本の竿杆を並継式で継合している。中竿杆5については無い構成であっても良いし、4本以上継合する構成であってもよい。また、釣竿は、並継式以外にも、1本竿、振り出し竿、中通し式など、その構成については特に限定されることはない。
【0013】
元竿杆3には、魚釣用リール70が装着されるリール脚固定装置10が設けられ、各竿杆には、所定間隔をおいて、魚釣用リール70から繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド8(穂先竿杆7の先端はトップガイド8a)が装着されている。釣糸ガイド8については、竿杆に対して固定される固定ガイドとして構成されていてもよいし、竿杆に沿って摺動可能な遊動ガイドとして構成されていてもよい。
【0014】
元竿杆3、中竿杆5、及び、穂先竿杆7は、強化繊維(例えば炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材で構成されており、管状体、或いは、中実体として構成されている。
【0015】
元竿杆3に設けられるリール脚固定装置10は、魚釣用リール70のリール脚71を収容できる開口を形成するように膨出する膨出部を有する一対の筒状の移動フードを操作ナットによりリールシート上で軸方向に移動させることによってリール脚の着脱を行なうようになっている。
【0016】
以下、
図2~
図4を参照して、本実施形態のリール脚固定装置10の構成について具体的に説明する。
リール脚固定装置10は、元竿杆3に対して外嵌される筒状に形成されたリールシート11を備えている。リールシート11は、例えば、合成樹脂によって一体形成されており、魚釣用リール70のリール脚71が載置される載置面12と、載置面12の穂先側に配設される第1の移動フード13と、載置面12の基端側に配設される第2の移動フード15とを備えている。
【0017】
第1の移動フード13は、軸方向に沿って移動可能に構成され、リールシート11と別体として形成されたフード部13Aを備えている。このフード部13Aは、リール脚71の先端側脚部71aを収容できるように膨出した膨出部13aと、膨出部13aの基端側に一体形成された円筒部13bとを備えている。すなわち、膨出部13aは、円筒部13bの外周の所定範囲の円弧領域が穂先側に移行するに連れて次第に上昇する形状となっており、リール脚71の先端側脚部71aは、そのような膨出部13aの開口13cを介して挿入される。
【0018】
第2の移動フード15も第1の移動フード13と同様に形成されている。すなわち、この第2の移動フード15は、軸方向に沿って移動可能に構成され、リールシート11と別体として形成されたフード部15Aを備えている。フード部15Aは、リール脚71の基端側脚部71bを収容できるように膨出した膨出部15aと、膨出部15aの基端側に一体形成された円筒部15bとを備えている。すなわち、膨出部15aは、円筒部15bの外周の所定範囲の円弧領域が穂先側に移行するに連れて次第に上昇する形状となっており、リール脚71の基端側脚部71bは、そのような膨出部15aの開口15cを介して挿入される。
【0019】
リールシート11の外周面には、リール脚71を載置する載置面12を含むリールシート11のほぼ全長にわたって雄ネジ11aが一体形成されており、この雄ネジ11aには、回転操作することで軸方向に沿って移動する操作ナット18(の内周面に形成される雌ネジ)が螺合されている。操作ナット18は、各移動フード13,15に隣接して位置されており、移動フード13,15の円筒部13b,15bに共回りしないように公知の手段により接続されている。したがって、移動フード13,15は、操作ナット18と共に軸方向に移動できるが、操作ナット18と共に回転しない。
【0020】
また、操作ナット18を締め付ける方向に回転操作した際に移動フード13,15を回転させることなく互いに接近させ、かつ、操作ナット18を緩める方向に回転操作した際に移動フード13,15を回転させることなく互いに離反させる方向に安定して並進移動(軸方向移動)させることができるように、本実施形態のリール脚固定装置10には、操作ナット18の回転操作に伴う移動フード13,15の回転を規制する規制手段が設けられる。この規制手段は、本実施形態では、移動フード13,15の例えば円筒部13b,15bの基端の内面に設けられて径方向内方に突出する係止突起(図示せず)と、リールシート11の載置面12の側の外周面部位に軸方向に沿って形成されて前記係止突起が移動可能に係合するキー溝40(
図3の(a)参照)とによって形成される。
【0021】
このような構成によれば、各操作ナット18を締め付ける方向に回転操作すると、操作ナット18が螺進するとともに、移動フード13,15が回転することなく互いに接近するように軸方向に移動され、したがって、載置面12に載置されたリール脚71は、移動フード13,15間で締め付け固定される。一方、各操作ナット18を緩める方向に回転操作すると、操作ナット18が螺進するとともに、移動フード13,15が回転することなく互いに離反するように軸方向に移動され、したがって、載置面12に載置されたリール脚71を移動フード13,15から取り外すことが可能となる。
【0022】
本実施形態において、操作ナット18が螺合するリールシート11の外周の雄ネジ11aは、前述したようにリール脚71を載置する載置面12を含むリールシート11のほぼ全長にわたって形成されるが、
図3に示されるように、少なくともリール脚71が載置される載置面12とは反対側のリールシート11の外周領域11Aを避けるようにリールシート11のほぼ半周(ほぼ180°)にわたって形成されている。
【0023】
特に、本実施形態において、雄ネジ11aは、
図3の(b)に示されるように、側面視でリールシート11の中心軸線Oを境界として載置面12側に位置されるリールシート11の外周領域(外周面部位)11Bにほぼ半周(ほぼ180°)にわたって設けられている。したがって、中心軸線Oを境界として載置面12とは反対側に位置されるリールシート11の外周領域(外周面部位)11Aには雄ネジ11aがほぼ半周(ほぼ180°)にわたって設けられていない。
【0024】
なお、本実施形態では、雄ネジ11aの存在領域と不存在領域との境界が側面視でリールシート11の中心軸線Oであるが、雄ネジ11aの半周にわたる形成形態は、これに限らない。例えば、右利き用又は左利き用に合わせて、雄ネジ11aのネジ山30の端縁が左側(又は右側)で中心軸線Oを越えて上方(載置面12と反対側)で終端し且つ右側(又は左側)で中心軸線Oよりも下方(載置面12側)で終端するように雄ネジ11aがほぼ半周(ほぼ180°)にわたって形成されてもよい。
【0025】
また、本実施形態において、リールシート11のほぼ半周わたって形成される雄ネジ11aのネジ山30の端縁30aの全ては、
図4に明確に示されるように、雄ネジ11aが形成されていないリールシート11の外周領域11Aの外表面と面一になるようにテーパ状に形成されている(ネジ山30がその端縁部でリールシート11の外表面から突出しないように削られている)。具体的には、本実施形態では、
図4の上方から見てネジ山30の端縁30aがリールシート11の最大幅(直径寸法)Lで切り落とされており(最大幅Lを越えて径方向外方に突出しないように切り落とされており)、リールシート11を握った際にネジ山30が手指に当たらないようになっている。なお、ネジ山30の端縁30aの形態は、これに限定されず、例えば
図5に示されるように、ネジ山30の端縁30bをリールシート11の最大幅Lで切り落とすことなくリールシート11の最大幅Lを越えた径方向外方位置から徐々にリールシート11の外径に近づいて面一になるようなテーパ形状にしてもよく、或いは、
図6に示されるように、
図4に示される切り落とし状態から更にネジ山30の端縁30cをリールシート11の最大幅L以下までテーパ状に切り落としてもよい。また、このようなテーパ形状(端縁30a,30b,30c)を直線状ではなく円弧状にしても構わない。なお、
図4~
図6はいずれも、リールシート11に元竿杆3が通された中実状態で断面ハッチングが付されている。
【0026】
また、本実施形態において、各移動フード13,15の内面には、
図4に明確に示されるように、リールシート11の外表面と接触してリール脚固定時の移動フード13,15の回転方向のガタつきを防止する凸部60が軸方向に沿って形成される。特に本実施形態において、凸部60は、雄ネジ11aのネジ山30の高さと同一の高さを有しており、載置面12側に位置される膨出部13aとは反対側の移動フード13,15の部位の内面に設けられる。なお、凸部60は、
図4では1つしか設けられていないが、周方向に沿って複数設けられても構わない。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、操作ナット18が螺合する雄ネジ11aが、少なくともリール脚71が載置される載置面12とは反対側の外周領域11Aを避けるようにリールシート11のほぼ半周にわたって形成されるため、言い換えると、釣人が握持し得るリールシート11の外周領域11Aにはネジが形成されていないため、リール脚固定装置10を握持した際にリールシート11に形成される雄ネジ11aによって釣人が違和感や痛みを感じずに済み、握り心地が良い。
【0028】
また、本実施形態において、リールシート11のほぼ半周わたって形成される雄ネジ11aのネジ山30の端縁30aの全ては、雄ネジ11aが形成されていないリールシート11の外周領域11Aの外表面と面一になるようにテーパ状に形成されているため、雄ネジ11aが形成されているリールシート11の外周面部位と雄ネジ11aが形成されていないリールシート11の外周面部位との境界領域に位置されるネジ山30の端縁に触れることによって違和感や痛みを感じるといった不具合も解消でき、握り心地が更に良くなる。
【0029】
また、本実施形態では、リールシート11の外表面と接触する凸部60が各移動フード13,15の内面に設けられ、この凸部60によってリール脚固定時の移動フード13,15の回転方向のガタつきを防止できるため、リール脚71をガタつきなく安定して保持固定できる。
【0030】
以上、添付図面に関連して本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、移動フードの形態、リールシートの形状、凸部の数及び配置形態、雄ネジの形成形態、ネジ山の端縁の形状等は、前述した実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0031】
10 リール脚固定装置
11 リールシート
11A,11B 外周領域
11a 雄ネジ(ネジ)
12 載置面
13,15 移動フード
13a,15a 膨出部
13c,15c 開口
18 操作ナット
30 ネジ山
30a 端縁
40 キー溝
60 凸部
70 魚釣用リール
71 リール脚