(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】判定システム、検知システム及び検知方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20220524BHJP
G08B 13/24 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G08B13/24
(21)【出願番号】P 2018043616
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509162414
【氏名又は名称】株式会社ネクステック
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新関 智明
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】田邉 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲且
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/078811(WO,A2)
【文献】特開2010-243231(JP,A)
【文献】特開2006-024162(JP,A)
【文献】特開2016-186456(JP,A)
【文献】特開2014-029663(JP,A)
【文献】特開2014-137295(JP,A)
【文献】特開2003-185735(JP,A)
【文献】特開2009-140320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0067593(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0366938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 -99/00 、
G08B13/00 -15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内に設置された複数の無線通信機器において受信される無線信号の受信強度を示す情報と、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域内の動体に関する情報と、に基づいて学習処理を行うことによって得られる学習結果を用いて、前記複数の無線通信機器における前記受信強度を示す情報に基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する判定部、を備え、
前記学習処理では、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域又はその周辺における環境の状態を示す情報である環境情報がさらに用いられ、
前記判定部は、前記受信強度を示す情報が得られた際の環境情報にさらに基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定し、
前記環境情報は、少なくと
も時刻、季節、暦、周囲の騒音レベルのいずれかを示す情報である、判定システム。
【請求項2】
所定の領域内に設置された複数の無線通信機器と、
前記無線通信機器において受信される無線信号の受信強度を示す情報と、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域内の動体に関する情報と、に基づいて学習処理を行う学習部と、
前記学習部によって得られる学習結果を用いて、前記複数の無線通信機器における前記受信強度を示す情報に基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する判定部と、を備え、
前記学習処理では、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域又はその周辺における環境の状態を示す情報である環境情報がさらに用いられ、
前記判定部は、前記受信強度を示す情報が得られた際の環境情報にさらに基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定し、
前記環境情報は、少なくと
も時刻、季節、暦、周囲の騒音レベルのいずれかを示す情報である、検知システム。
【請求項3】
所定の領域内に設置された複数の無線通信機器が、他の無線通信機器から送信された無線信号を受信するステップと、
前記無線通信機器において受信される無線信号の受信強度を示す情報と、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域内の動体に関する情報と、に基づいて学習処理を行う学習ステップと、
前記学習ステップにおいて得られる学習結果を用いて、前記複数の無線通信機器における前記受信強度を示す情報に基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する判定ステップと、
を有し、
前記学習処理では、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域又はその周辺における環境の状態を示す情報である環境情報がさらに用いられ、
前記判定ステップにおいて、前記受信強度を示す情報が得られた際の環境情報にさらに基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定し、
前記環境情報は、少なくと
も時刻、季節、暦、周囲の騒音レベルのいずれかを示す情報である、検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の領域における動体の存在を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イノシシや鹿等の野生動物による農作物への被害が増加する傾向にある。特に、北海道におけるエゾシカによる被害は突出しており、北海道庁内にエゾシカ対策専門部署が設置されるほどである。
【0003】
一般的に動物の位置を検知する技術として、対象となる動物に対してタグを予め取り付けておくことによって位置を検知する技術がある(例えば特許文献1参照)。しかしながら、野生動物に対しては予めタグを付与することが難しい。
【0004】
野生動物による農作物への被害の防止策として提案されているものに、電気柵方式がある。この方式では、侵入を防止することが望まれる所定の領域(以下「対象領域」という。)を囲うように電気柵が設置される。電気柵には電流が流されており、電気柵に触れた動物は感電することで痛みやショックを受ける。このような経験をした動物は、電気柵を警戒し対象領域内への侵入をためらうようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気柵方式では、対象領域の全体を覆うように電気柵を設置する必要がある。そのため、設置に労力及びコストを要してしまう。このような問題は野生の動物の侵入に限られた問題では無く、特定の対象領域において動くもの(以下「動体」という。)を検知することを目的とした装置全般において共通する問題である。
上記事情に鑑み、本発明は、対象領域内の動体を、対象領域の周囲全てを柵で覆うこと無く検知することが可能となる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第一無線通信機器から送信された無線信号が第二無線通信機器において受信されたときの受信強度を示す情報に基づいて、前記第一無線通信機器と前記第二無線通信機器との間における動体の存在を判定する判定部、を備え、前記無線信号は、前記第一無線通信機器と前記第二無線通信機器との間で行われる所定の通信プロトコルに従って生成された無線信号である、判定システムである。
【0008】
本発明の一態様は、所定の領域内に設置された複数の無線通信機器において受信される無線信号の受信強度を示す情報と、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域内の動体に関する情報と、に基づいて学習処理を行うことによって得られる学習結果を用いて、前記複数の無線通信機器における前記受信強度を示す情報に基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する判定部、を備える判定システムである。
【0009】
本発明の一態様は、上記の判定システムであって、前記学習処理では、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域又はその周辺における環境の状態を示す情報である環境情報がさらに用いられ、前記判定部は、前記受信強度を示す情報が得られた際の環境情報にさらに基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する。
【0010】
本発明の一態様は、所定の領域内に設置された複数の無線通信機器と、前記無線通信機器において受信される無線信号の受信強度を示す情報と、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域内の動体に関する情報と、に基づいて学習処理を行う学習部と、前記学習部によって得られる学習結果を用いて、前記複数の無線通信機器における前記受信強度を示す情報に基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する判定部と、を備える検知システムである。
【0011】
本発明の一態様は、第一無線通信機器から送信された無線信号が第二無線通信機器において受信されたときの受信強度を示す情報に基づいて、前記第一無線通信機器と前記第二無線通信機器との間における動体の存在を判定する判定ステップ、を有し、前記無線信号は、前記第一無線通信機器と前記第二無線通信機器との間で行われる所定の通信プロトコルに従って生成された無線信号である、判定方法である。
【0012】
本発明の一態様は、所定の領域内に設置された複数の無線通信機器が、他の無線通信機器から送信された無線信号を受信するステップと、前記無線通信機器において受信される無線信号の受信強度を示す情報と、前記無線信号が受信された際の前記所定の領域内の動体に関する情報と、に基づいて学習処理を行う学習ステップと、前記学習ステップにおいて得られる学習結果を用いて、前記複数の無線通信機器における前記受信強度を示す情報に基づいて前記所定の領域内の動体に関する情報を判定する判定ステップと、を有する検知方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、対象領域内の動体を、対象領域の周囲全てを柵で覆うこと無く検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の検知システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】判定装置40が行う動体検知の原理を示す図である。
【
図3】判定装置40の機能構成例を示す概略ブロック図である。
【
図4】ログ記憶部42が記憶する情報の具体例を示す図である。
【
図5】検知システム100の判定処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の検知システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。検知システム100は、複数の無線通信機器10(10-1~10-4)、ゲートウェイ30、判定装置40を備える。
【0016】
複数の無線通信機器10は、特定の対象領域20に設置される。対象領域20は適宜設定される。例えば、エゾシカ等の野生動物の侵入を検知することが望まれる農地の領域が対象領域20として設定されてもよい。各無線通信機器10は、対象領域20の境界付近に設置されてもよいし、対象領域20の境界よりも内側に設置されてもよい。各無線通信機器10は、対象領域20の境界よりも外側に設置されてもよいが、対象領域20内における動体の検知の精度が低下するおそれがあるので好ましくはない。無線通信機器10は、互いに離れて配置される。各無線通信機器10の間の距離は、無線通信機器10の組み合わせに応じて異なる値であってもよい。無線通信機器10の間の距離は、使用されるプロトコルや電波強度に応じて決定されてもよい。例えば、920MHz帯の無線通信が行われる場合には、1km~3km程度の距離をもつように各無線通信機器10が配置されてもよい。例えば、2.4GHz帯の無線通信が行われる場合には、50m~100m程度の距離をもつように各無線通信機器10が配置されてもよい。
【0017】
無線通信機器10のアンテナは、例えば地面から1メートル~2メートル程度の高さに設置されてもよい。無線通信機器10のアンテナが設置される高さは、例えば検知の対象となる動体の種別に応じて決定されてもよい。なお、検知システム100によって検知する対象となる動体はどのようなものであってもよい。例えばエゾシカ等の動物であってもよいし、不審者などの人間であってもよいし、自動車やロボットやドローン等の移動体であってもよいし、雨粒や雪の粒であってもよい。
【0018】
各無線通信機器10は他の無線通信機器10との間で無線通信を行う。無線通信機器10が行う無線通信はどのようなプロトコルであってもよい。例えば、無線通信機器10は、単に意味を有さない無線信号を発信するのではなく、所定の無線通信プロトコルに準じた態様で無線信号を生成して送信してもよい。例えば、無線通信機器10は、920MHz帯の無線通信を行ってもよい。例えば、無線通信機器10は、LPWA(Low Power Wide Area)技術を用いて無線通信を行ってもよいし、IEEE802.11で定義された技術を用いて無線通信を行ってもよい。無線通信機器10は、所定の出力レベルで無線信号を送信する。無線信号には、送信元の無線通信機器10を示す識別情報(以下「機器ID」という。)が含まれる。無線信号には、どのような態様で機器IDが含まれてもよい。
【0019】
1又は複数の無線通信機器10は、ゲートウェイ30に接続されている。
図1の例では、無線通信機器10-3がゲートウェイ30に接続されている。ゲートウェイ30に接続されている無線通信機器10-3は、他の無線通信機器10から受信した無線信号に関する情報(以下「個別受信情報」という。)を生成し、無線通信機器10-3を経由してゲートウェイ30に送信する。個別受信情報には、無線通信機器10において受信された無線信号の受信強度と、各無線信号の送信元である無線通信機器10の機器IDと、を対応づけた情報が含まれる。例えば、無線通信機器10-1が3つの無線信号を受信した場合には、個別受信情報には、無線信号の受信強度と、各無線信号の送信元の機器IDと、を対応づけた情報が3組含まれる。なお、ゲートウェイ30と直接通信可能な無線通信機器10は、無線通信機器10-3を介すること無く、直接ゲートウェイ30に個別受信情報を送信してもよい。
【0020】
ゲートウェイ30は、ネットワーク50を介して判定装置40と通信する。ゲートウェイ30は、例えばSIMカードを備えることによって携帯通信網を経由してネットワーク50に接続してもよい。ゲートウェイ30は、例えば無線LAN(Local Area Network)の通信を行うことによってネットワーク50に接続されてもよい。ゲートウェイ30がネットワーク50に接続する手段は限定される必要は無い。ゲートウェイ30は、各無線通信機器10の個別受信情報を受信すると、受信情報を生成する。受信情報には、複数の無線通信機器10の個別受信情報が含まれる。受信情報は、全ての無線通信機器10の個別受信情報を含んでもよい。ゲートウェイ30は、生成された受信情報を判定装置40に送信する。
【0021】
判定装置40は、情報処理装置を用いて構成される。判定装置40は、受信情報に基づいて、対象領域20における動体を検知する。
図2は、判定装置40が行う動体検知の原理を示す図である。
図2(A)では、無線通信機器10-1と無線通信機器10-2との間に動体が存在していない。この場合、無線通信機器10-1から送信された無線信号は、空気中で減衰はするものの、伝搬路中に存在する動体による減衰はせずに無線通信機器10-2に到達する。一方、
図2(B)では、無線通信機器10-1と無線通信機器10-2との間に動体90が存在する。そのため、無線通信機器10-1から送信された無線信号は、空気中での減衰に加えてさらに、伝搬路中に存在する動体90によって減衰して無線通信機器10-2に到達する。このように、無線通信機器10間に動体が存在する場合と存在しない場合とで、無線信号の減衰の程度が変化する。そのため、無線通信機器10において受信される無線信号の受信強度の変化によって、受信側の無線通信機器10(
図2における無線通信機器10-2)と送信側の無線通信機器10(
図2における無線通信機器10-1)との間における動体の有無を判定できる。このような原理により、判定装置40は、各無線通信機器10の個別受信情報に基づいて対象領域20内の動体の有無を判定する。
【0022】
図3は、判定装置40の機能構成例を示す概略ブロック図である。判定装置40は、通信部41、ログ記憶部42、学習用情報記憶部43、学習結果記憶部44及び制御部45を備える。
【0023】
通信部41は、通信インターフェースを用いて構成される。通信部41は、ネットワーク50を介して他の機器とデータ通信する。例えば、通信部41は、ゲートウェイ30から受信情報のデータを受信する。例えば、通信部41は、ゲートウェイ30に対し判定結果を示すデータを送信する。
【0024】
ログ記憶部42は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。ログ記憶部42は、個別受信情報のログを記憶する。
図4は、ログ記憶部42が記憶する情報の具体例を示す図である。ログ記憶部42は、ログテーブル420を記憶する。ログテーブル420は、日時情報及び個別受信情報を対応づけたレコードを記憶する。日時情報は、個別受信情報に関する日時を示す。日時情報は、例えば個別受信情報が無線通信機器10において生成されたタイミングの日時を示してもよいし、無線通信機器10から個別受信情報が送信されたタイミングの日時を示してもよいし、個別受信情報が判定装置40によって受信されたタイミングの日時を示してもよい。
【0025】
個別受信情報は、受信元である無線通信機器10の機器ID(受信ID)と、送信側の無線通信機器10の機器ID(送信ID)と、その無線通信機器10から送信された無線信号が受信元である無線通信機器10によって受信された際の受信強度と、を示す情報が含まれる。個別受信情報は、受信元である無線通信機器10によって生成される。個別受信情報には、送信ID及び受信強度の組み合わせが複数含まれる。例えば、
図4に示される具体例では、機器IDが“10”である無線通信機器10が2月22日22時22分22秒に、機器ID“1”の無線通信機器10から受信した無線信号の受信強度は“A11”であったことがわかる。同様に、機器IDが“10”である無線通信機器10が2月22日22時22分22秒に、機器ID“2”の無線通信機器10から受信した無線信号の受信強度は“A12”であったことが
図4からわかる。このように、ログテーブル420には、複数の無線通信機器10において生成された個別受信情報が日時情報と対応づけて記録される。
【0026】
図3の説明に戻る。学習用情報記憶部43は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。学習用情報記憶部43は、学習用情報を記憶する。学習用情報とは、制御部45の学習部452が学習処理を行う際に用いられるデータである。学習用情報は、例えば動体が対象領域20内の様々な場所に存在する状態で、それぞれの状態における各無線通信機器10の個別受信情報を取得し、取得された個別受信情報のセットと動体が存在していた位置や、動体の種別とを対応づけることによって得られてもよい。学習用情報には、個別受信情報が取得された時点における環境情報がさらに対応づけられてもよい。環境情報とは、対象領域20内又はその周辺における環境の状態を示す情報である。環境情報は、天候、気温、湿度、気圧、時刻、季節、暦、周囲の騒音レベルなどを示す情報である。
【0027】
学習用情報記憶部43に記憶される学習用情報は、予め所定の手段で判定装置40に対して与えられる。例えば、USBメモリやCDROM等の記憶媒体に記録されている学習用情報が学習用情報記憶部43に記録されることによって学習用情報が与えられてもよい。例えば、他の情報処理装置から学習用情報が判定装置40に対して送信されることによって、判定装置40の学習用情報記憶部43に学習用情報が与えられてもよい。例えば、ログ記憶部42に記憶されているログ情報に対して、ユーザーが動体の位置や環境情報を付与することによって学習用情報が生成され、学習用情報記憶部43に与えられてもよい。
【0028】
学習結果記憶部44は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。学習結果記憶部44は、制御部45の学習部452の学習処理によって得られた学習結果を示す情報を記憶する。学習結果記憶部44によって記憶される学習結果は、判定部453によって使用される。
【0029】
制御部45は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを用いて構成される。制御部45は、プロセッサがプログラムを実行することによって、ログ制御部451、学習部452及び判定部453として機能する。
【0030】
なお、プロセッサがプログラムを実行することによって実現されるログ制御部451、学習部452及び判定部453の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されても良い。
【0031】
ログ制御部451は、ゲートウェイ30から各無線通信機器10における個別受信情報を受信する。ログ制御部451は、受信された個別受信情報をログとしてログ記憶部42に記録する。
【0032】
学習部452は、学習用情報記憶部43に記憶されている学習用情報を用いて機械学習を行う。学習部452は、学習用情報に含まれる複数の値(例えば個別受信情報、動体の有無を示す情報、環境情報)のうち、動体の位置情報の値を得るための学習結果が取得される。すなわち、少なくとも各無線通信機器10における個別受信情報を含む情報に基づいて、少なくとも動体の有無を示す情報を取得することを可能とする学習結果が得られる。学習部452には、例えば教師付き学習によって識別器を生成又は更新するための機械学習技術が適用される。機械学習技術の具体例として、SVM(Support Vector Machine)やDL(Deep Learning)がある。
【0033】
判定部453は、ゲートウェイ30から各無線通信機器10における個別受信情報を受信する。判定部453は、各無線通信機器10における個別受信情報と、学習結果記憶部44に記憶される学習結果と、に基づいて、少なくとも対象領域20における動体の有無を判定する。判定部453は、さらに、動体の位置について判定してもよい。この場合、動体の位置について判定結果が得られるように学習処理が行われる必要がある。判定部453は、各無線通信機器10における個別受信情報に加えてさらに環境情報を判定処理に用いてもよい。この場合、環境情報に基づいて判定処理を行うように学習処理が行われる必要がある。
【0034】
図5は、検知システム100の判定処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。各無線通信機器10は、所定のタイミングで無線信号を送信する。各無線通信機器10は、他の無線通信機器10から送信された無線信号を受信すると、無線信号毎に受信強度を計測する。各無線通信機器10は、送信元の無線通信機器10毎に、その識別情報(送信ID)と受信強度とを対応づける。各無線通信機器10は、送信ID及び受信強度の複数の組に対し自装置の識別情報(受信ID)を対応づけて個別受信情報を生成する。各無線通信機器10は、生成された個別受信情報をゲートウェイ30に送信する(ステップS101)。
【0035】
ゲートウェイ30は、各無線通信機器10から個別受信情報を受信すると、受信された複数の個別受信情報を判定装置40に送信する(ステップS102)。
【0036】
判定装置40のログ制御部451は、ゲートウェイ30から複数の個別受信情報を受信する。ログ制御部451は、受信された複数の個別受信情報をログとしてログ記憶部42に記録する(ステップS103)。判定部453は、受信された複数の個別受信情報と、学習用情報記憶部43に記憶される学習結果と、に基づいて、受信された各個別受信情報が取得された時点で対象領域20内に動体が存在したか否かについて判定する(ステップS104)。
【0037】
このように構成された検知システム100によれば、複数の無線通信機器10における無線信号の受信強度に関する情報に基づいて対象領域20内の動体が検知される。無線通信機器10を用いた上記検知方法であれば、電気柵のように連続した物体を設置することなく、飛び飛びの位置に無線通信機器10を設置することによって広範囲にわたって動体を検知することができる。そのため、対象領域20内の動体を、対象領域20の周囲全てを柵で覆うこと無く検知することが可能となる。その結果、検知システム100の構築におけるコストの削減や、作業量の低減を図ることができる。また、無線通信機器10として可搬性の通信装置を用いることによって、冬期などの検知が不要な所定の期間に検知システム100を撤去することが可能となる。また、このように構成された検知システム100では、アンテナの高さに関して精密な高低調整が求められない。そのため、検知システム100の構築における作業量の低減を図ることができる。
【0038】
また、環境情報を含む学習用情報を用いて学習処理が行われ、判定処理において環境情報が用いられることによって、環境の変化による判定精度の低下を軽減することが可能となる。すなわち以下の通りである。例えば、雪が降っている場合には降雪によって無線信号が減衰するために受信強度が低下してしまう。しかしながら、受信強度の低下により動体が存在すると誤って判定されてしまう可能性を低減させることが可能となる。
【0039】
また、動体の位置情報を含む学習用情報を用いて学習処理が行われることによって、判定部453は、対象領域20における動体の有無のみではなく、動体の位置まで判定することが可能となる。
【0040】
また、動体の種別情報を含む学習用情報を用いて学習処理が行われることによって、判定部453は、対象領域20における動体の有無のみではなく、動体の種別まで判定することが可能となる。動体の種別情報は、例えば動体の動物としての種別(例えば鹿、豚、人間、など)を示す情報であってもよいし、動体が動物か植物か天候によって生じた雪や雨粒などの物体であるか、を示す情報であってもよい。
【0041】
(変形例)
各無線通信機器10から判定装置40へ個別受信情報を到達させる手段には、どのような手段が採用されてもよい。上述した説明では、各無線通信機器10からゲートウェイ30を経由して判定装置40へ個別受信情報が送信されているが、例えばゲートウェイ30を介すること無く各無線通信機器10から判定装置40へ送信されてもよい。また、例えば無線通信機器10のうちいずれか1台又は複数台が他の無線通信機器10から個別受信情報を収集し、1又は複数の個別受信情報をまとめてゲートウェイ30又は判定装置40に送信してもよい。
【0042】
判定装置40は必ずしも1台の装置として構成される必要は無い。例えば、判定装置40が複数台の情報処理装置を用いて構成されてもよい。判定装置40を構成する複数台の情報処理装置は、ネットワーク50等の通信路を介して通信可能に接続され、クラスタマシンやクラウドなどのシステムとして構成されてもよい。
【0043】
判定装置40は、学習部452を備えない装置又はシステムとして構成されてもよい。この場合、上述した学習部452が行う処理は、学習装置として別の装置又はシステムによって実行されてもよい。この場合、判定部453を備える判定装置は、学習装置から学習結果のデータを取得し判定処理を行う。
【0044】
無線通信機器10には、蓄電池又は充電器が接続されてもよい。このように構成されることによって、無線通信機器10の設置場所の制限を減らすことが可能となる。例えば、電気が通っていない場所にも無線通信機器10を設置することが可能となる。また、無線通信機器10には、自然エネルギーによって発電を行う装置が接続されてもよい。例えば、ソーラーパネルや、風力発電機等の発電機が接続されてもよい。このような発電を行う装置によって生成された電力に基づいて無線通信機器10が動作してもよい。
【0045】
環境情報として、風の強さを示す情報が与えられてもよい。このように構成されることによって、風によって揺れる木々や落ち葉や草の影響を低減することが可能となる。
【0046】
検知対象の動体が雪又は雨である場合、学習用情報として、対象領域内における降雪量又は降雨量を示す情報が与えられてもよい。この場合、判定部453は、個別受信情報に基づいて降雪量又は降雨量を判定してもよい。
【0047】
上述した実施形態では、無線通信機器10は無線信号の送信と無線信号の受信とを行う装置であった。しかしながら、無線通信機器10に代えて、無線信号の送信のみを行う装置や、無線信号の受信のみを行う装置が用いられてもよい。
対象領域20には、野生動物や不正な侵入者を追い払うための忌避装置が設置されてもよい。この場合、判定装置40又はゲートウェイ30は、動体が存在すると判定された場合に、忌避装置に対して忌避動作を行うように指示信号を送信してもよい。また、判定装置40が動体の位置を判定する場合であって忌避装置が複数設置されている場合には、判定された動体の位置に近い忌避装置に対してのみ忌避動作を行うように指示信号が送信されてもよい。
判定部453及び学習結果記憶部44は、ゲートウェイ30に備えられてもよいし、各無線通信機器10に備えられてもよい。このように構成されることによって、より迅速に動体の存在を判定することが可能となる。
【0048】
判定装置40は、各無線通信機器10が設置された位置を示す位置情報を記憶してもよい。また、各無線通信機器10は、GPS等の位置取得装置を備えてもよい。無線通信機器10は、所定のタイミングで、自装置の位置情報を取得し、位置情報を判定装置40へ送信する。判定装置40は、記憶している位置情報と、受信された位置情報とを比較し、予め定められた距離以上離れている場合には、管理者に対してアラームを通知する。アラームは、ゲートウェイ30を介して無線通信機器10に対して送信されてもよい。アラームが送信されたことに応じて、忌避装置が動作してもよい。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100…検知システム, 10…無線通信機器, 20…対象領域, 30…ゲートウェイ, 40…判定装置, 41…通信部, 42…ログ記憶部, 43…学習用情報記憶部, 44…学習結果記憶部, 45…制御部, 451…ログ制御部, 452…学習部, 453…判定部