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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】サーバ、プログラム、及び機器システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20220524BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
F25D23/00 301G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018066604
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179300
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 崇
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-162149(JP,A)
【文献】特開2015-028760(JP,A)
【文献】特開2010-064654(JP,A)
【文献】特開2002-342185(JP,A)
【文献】特開2019-040431(JP,A)
【文献】特開2016-143104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部を有するサーバと、機器と、ネットワークと、機器のユーザの出力部と、前記ネットワークを介して情報を取得する通信部を介して機器の動作履歴を取得して教師データとして記憶する記憶部と、を含む機器システムであって、
前記演算部は、前記動作履歴を含む近時データを利用して前記機器を診断して、前記機器の故障の兆候及び/又は擬故障を検知した場合、検知した故障の兆候/又は擬故障の異常種別の出力、及び、その異常種別が実際に生じていたか否かの入力をユーザに求める出力を含めて前記機器のユーザの出力部に通知し、
前記入力を求める出力に応じて返信された機器のユーザからのフィードバックを、前記記憶部内の前記教師データに反映させることを特徴とする機器システム
【請求項2】
前記フィードバックとして前記機器の診断結果が真又は偽である旨が入力された場合、前記近時データを異常動作を示す異常教師データ又は正常動作を示す正常教師データとして反映することを特徴とする請求項1に記載の機器システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記機器の故障の兆候の有無を診断し、
該診断は、ユーザの要求以外をきっかけとして開始されることを特徴とする請求項1又は2に記載の機器システム
【請求項4】
前記演算部は、
前記機器と同一又は類似する種別の機器の異常種別と、該異常種別を生じた又はその兆候を生じた時間帯を含む動作履歴としての教師データを含む異常教師データを学習または参照可能であり、
前記学習または参照の結果を利用して前記機器を診断するときに利用される前記動作履歴を含む近時データである被診断データが前記機器の故障の兆候及び/又は擬故障の有無を分類することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の機器システム
【請求項5】
前記機器の故障の兆候を検知した場合、点検依頼のお願い出力を前記出力部に出力させ、
該点検依頼のお願い出力は、
前記機器が故障する虞があることを表示する故障兆候出力、及び/又は、
前記機器が故障した場合の影響を表示する故障時影響出力、を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の機器システム
【請求項6】
前記点検依頼のお願い出力は、コールセンタへの点検依頼を補助する及び/又は促す点検依頼補助出力を含むことを特徴とする請求項5に記載の機器システム
【請求項7】
ユーザからの要求以外をきっかけとした前記診断の開始が可能で、
前記機器の擬故障を検知した場合、確認のお願い出力を前記出力部に出力させ、
該確認のお願い出力は、
当該サーバが検知した擬故障の種類に応じて決定され、前記ユーザに具体的な作為を求める指示出力を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の機器システム
【請求項8】
前記確認のお願い出力は、
ールセンタへの連絡を補助する異常残存時指示、又は、
該確認お願い出力を削除するお願い削除出力を含むことを特徴とする請求項7に記載の機器システム
【請求項9】
複数の前記機器と通信し、
前記演算部は、前記機器の型番ごとにあらかじめ設定された類似群コード及び/又は前記機器のロット番号を利用して、前記診断に利用する基準を使い分け、又は基準を分けて学習し、
前記機器ごとに固有の識別番号を利用して前記機器を区別することを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の機器システム
【請求項10】
前記サーバとしてのコンピュータを、請求項1乃至9の何れか一項に記載の機器システムのコンピュータとして機能させるためのプログラム。
【請求項11】
演算部を有するサーバであって、
ネットワークを介して情報を取得する通信部を介して機器の動作履歴を取得して教師データとして記憶部に記憶させ、
前記演算部は、前記動作履歴を含む近時データを利用して前記機器を診断して、前記機器の故障の兆候及び/又は擬故障を検知した場合、検知した故障の兆候/又は擬故障の異常種別の出力、及び、その異常種別が実際に生じていたか否かの入力をユーザに求める出力を含めて前記機器のユーザの出力部に通知し、
前記入力を求める出力に応じて返信された機器のユーザからのフィードバックを、前記記憶部内の前記教師データに反映させることを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ、プログラム、及び機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、家電機器10に格納された稼動情報13aを通信端末1が読み取り、通信端末1がこの稼動情報3aや不良状況3c,23aを利用して不良内容を推測して、故障診断を可能とする方法を開示している(0012,0015,0020,0025、図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-95601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、故障診断をその目的としていることから、実際に家電製品10に故障が生じた場合にこの診断を行うものとして構成されており、故障前に何らかの診断を行うものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑みてなされた本発明のサーバは、
演算部を有するサーバであって、
ネットワークを介して情報を取得する通信部を介して機器の動作履歴を取得して教師データとして記憶部に記憶させ、
前記演算部は、前記動作履歴を含む近時データを利用して前記機器を診断して、前記機器の故障の兆候及び/又は擬故障を検知した場合、検知した故障の兆候/又は擬故障の異常種別の出力、及び、その異常種別が実際に生じていたか否かの入力をユーザに求める出力を含めて前記機器のユーザの出力部に通知し、
前記入力を求める出力に応じて返信された機器のユーザからのフィードバックを、前記記憶部内の前記教師データに反映させることを特徴とする。
【0008】
また、上記事情に鑑みてなされた本発明の機器システムは、
演算部を有するサーバと、機器と、ネットワークと、機器のユーザの出力部と、前記ネットワークを介して情報を取得する通信部を介して機器の動作履歴を取得して教師データとして記憶する記憶部と、を含む機器システムであって、
前記演算部は、前記動作履歴を含む近時データを利用して前記機器を診断して、前記機器の故障の兆候及び/又は擬故障を検知した場合、検知した故障の兆候/又は擬故障の異常種別の出力、及び、その異常種別が実際に生じていたか否かの入力をユーザに求める出力を含めて前記機器のユーザの出力部に通知し、
前記入力を求める出力に応じて返信された機器のユーザからのフィードバックを、前記記憶部内の前記教師データに反映させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の機器システムの一例としての冷蔵庫システムを示す図
図2】実施形態の冷蔵庫の側面断面図
図3】実施形態の冷蔵庫のサーバへの動作履歴の送信の流れを示すフローチャート
図4】(a)は実施形態のサーバが記憶している機器の被診断データを示す図。(b)は実施形態のサーバが蓄積している故障の兆候又は擬故障を含む、過去の機器の動作履歴(教師データ)を含む異常教師データを示す図
図5】実施形態の記憶部に格納された、異常種別「ドア開継続」に係る教師データ(動作履歴)を示す図
図6】実施形態の記憶部に格納された、異常種別「冷媒漏れ」に係る教師データ(動作履歴)を示す図
図7】実施形態のサーバの診断処理の流れを示すフローチャート
図8】実施形態の冷蔵庫に擬故障が検知された場合に通知される確認のお願い出力を示す図
図9】実施形態の冷蔵庫に故障の予兆が検知された場合に通知される点検依頼のお願い出力を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照しつつ説明する。
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素の一部と別の構成要素の一部とが重複すること、等を許容する。例えば、サーバ3が記憶部31を有しても良いしサーバ3と通信可能に配された別機器として存在しても良い。
【0011】
また、各実施形態の構成要素は必ずしもその全てが本発明に必須ではなく、技術的に支障のない限り、各実施形態の構成要素の一部を選択して構成でき、また、異なる実施形態の構成を付加、削除または異なる実施形態の構成と転換または置換することができる。
【0012】
ところで、機器が比較的近い将来に故障するであろうという兆候を認識する予兆診断をしようとする場合、その診断には機器に設けたセンサの検知状態、冷凍サイクルやファン等の電気品の動作状態等の一部又は全部から成る動作履歴を或る程度の期間に亘って取得し、これを利用して診断することが考えられる。
【0013】
機器が入力や外乱を受けずに作動している場合の予兆診断は、正に機器の故障の兆候の有無を判断することで行うことができると期待される。しかし、ユーザによる機器の実使用環境下では、ユーザによる入力若しくは外乱又は操作ミス(例えば、機器が冷蔵庫である場合、その扉が開き続けている状態。)に起因した不具合(以下、擬故障と呼ぶ。)が生じ得る。このような不具合は機器の故障ではないものの、少なくとも時間経過とともに機器の機能に悪影響を与え得るため、この有無も診断することが好ましい。
【0014】
実施形態では、故障の兆候、好ましくはさらに擬故障の有無を診断することで、将来的なトラブルの虞を先立ってユーザに通知することができるから、ユーザは故障が実際に生じる前や、操作ミス等による影響の増大を抑制可能な時期に何らかの対応をする機会を得ることができる。
【0015】
[冷蔵庫システム4]
図1は、本実施形態における機器システムの一例としての冷蔵庫システム4を示す図である。冷蔵庫システム4は、ユーザ宅6(Aさん宅6a、Bさん宅6b、・・・)に配された機器の一例としての冷蔵庫1(Aさん宅の冷蔵庫1a、Bさん宅の冷蔵庫1b・・・)合計1つ以上(好ましくは複数)と、それらのユーザが使用し得る端末5(Aさん宅の端末5a、Bさん宅の端末5b、・・・)と、インターネット等の広域ネットワーク2と、サーバ3と、サービスパーソンが勤務するコールセンタ7とを含んでいる。
【0016】
<端末5>
端末5は、ユーザに知覚可能な情報を出力する出力部(例えば文字や画像を表示する表示部、音声を出力する発音部)と、ユーザからの入力を受付ける入力部を有する。
【0017】
端末5は、冷蔵庫1についてサーバ3が分析した内容をユーザが知覚可能な態様で出力部から出力したり、この出力に対するユーザの命令等を入力部を介して受付けることができる。このような機能を果たせるのであれば、端末5に代えて、冷蔵庫1に出力部や入力部を配していても良い。端末5であればユーザに可搬の点で好ましく、本実施形態は主に端末5を用いて説明する。
【0018】
<サーバ3>
サーバ3は、記憶部31、演算部32、通信部33を有する。
記憶部31は、冷蔵庫1のうち、過去に故障、又は後述する擬故障と判定されたものの或る程度の時間に亘る動作履歴(教師データ)を含む異常教師データを格納することができる。その詳細は後述する。
演算部32は、記憶部31に格納されている異常教師データを利用して、現在稼働している冷蔵庫1の概ね現在から或る程度過去に亘る時間の動作履歴(近時データ)を含む被診断データを分析し、現在稼働している冷蔵庫1が将来故障する兆候を見せているかどうかや、擬故障を見せているかどうかを判定する。演算部32としては、例えば、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、その他公知の人工知能を利用して、近時データの提供元である冷蔵庫1が或る種類の故障の兆候又は擬故障を見せているか否かを分類することができる。
通信部33は、広域ネットワーク2を介してサーバ3と冷蔵庫1、端末5、コールセンタ7それぞれとの間で情報のやり取りを可能にする。
【0019】
<コールセンタ7>
コールセンタ7は、異常教師データを記憶部31に入力する作業を行うことができる。異常教師データの作成は、通信部33やコールセンタ所属のサービスパーソン等が収集した機器の動作履歴等を利用して行うことができる。なお、異常教師データは必ずしも記憶部31に格納されている必要はなく、演算部32が学習または参照可能な態様で格納されていればよい。
【0020】
コールセンタ7は、サーバ3又はユーザ(端末5や機器1の入力部)からの要求に応じてサービスパーソンを機器1の下に派遣することができる。
【0021】
<機器>
機器は例えばユーザ宅6に設置され、その種類としては、例えば照明、洗濯機、空気調和機、AV機器又は冷蔵庫1といった家電機器を含むものにすることができる。本実施形態のように、機器システム4に属する機器は、生じ得る故障や擬故障の種類の少なくとも一部が互いに共通することから同一種別のもの(本実施形態では、冷蔵庫)で構成される又は少なくとも機器同士の種別が同一か否かを区別できるように構成される。
【0022】
(冷蔵庫1)
図2は本実施形態の機器の一例としての冷蔵庫1の側面断面図である。冷蔵庫1は、後述する各センサ検知値を受信したり、冷凍サイクルやファン等への電気品への制御信号を出力したり、入力部101を通じたユーザの入力信号を検知したり、広域ネットワーク2を介した通信を行ったりする制御基板10を有し、これにより自律的な制御が行われている。入力部101の配される場所は特に制限されないが、例えば本実施形態のように冷蔵室扉111に設けても良いし何れかの貯蔵室内に配しても良い。また、入力部101は、ユーザが知覚可能な態様で情報を出力する出力部を備えることができる。
【0023】
(貯蔵室)
冷蔵庫1は、貯蔵室として、冷蔵温度帯の温度を維持するように制御される冷蔵室11、冷凍温度帯の温度を維持するように制御される冷凍室12及び製氷室13、冷蔵温度帯のうち比較的高温に維持するように制御される野菜室14、チルド温度帯の温度を維持しかつ大気圧未満の圧力に減圧可能な減圧室15を有する。減圧室15は冷蔵室11内に設置されている。
【0024】
(貯蔵室扉)
冷蔵室11、冷凍室12、製氷室13、野菜室14、減圧室15には、それぞれの貯蔵室の開口を開閉可能な扉として、冷蔵室扉111、冷凍室扉121、製氷室扉131、野菜室扉141、減圧室扉151が設けられている。
【0025】
各扉のうち、各貯蔵室の開口に接する側の縁には、扉が閉塞された時に開口との密着性を向上させるべくパッキンが付されている。
【0026】
(冷気の供給)
冷蔵庫1は、冷気を生成する冷凍サイクルを構成するものとして、冷媒を圧縮する圧縮機161、圧縮された冷媒を外気に向けて放熱させる放熱器(不図示)、冷媒を減圧させる減圧器(不図示)、冷媒を蒸発させる蒸発器としての第1蒸発器162及び第2蒸発器163、を配管で環状で接続して有している。
【0027】
蒸発器162,163で生成される冷気はそれぞれ、第1ファン164、第2ファン165によって昇圧されて何れかの貯蔵室に送風される。本実施形態では、第1ファン164により昇圧される冷気は冷蔵室11に送られるとともに、冷蔵室11と野菜室14とを連通する風路(不図示)を通って野菜室14に送られる。野菜室14の冷気は第1蒸発器162に連通する第1戻り風路(不図示)を通って循環する。
また、第2ファン165により昇圧される冷気は冷凍室12及び製氷室13に送られて、第2蒸発器163に連通する第2戻り風路(不図示)を通って循環する。
【0028】
(熱の供給)
例えば貯蔵室や蒸発器162,163は、何らかの原因又は物理的に不可避に冷えすぎたり着霜したりすることがある。このような場合、その冷え過ぎの領域や着霜した領域を熱して冷え過ぎや着霜を解消することが望まれる。本実施形態では、貯蔵室のうち減圧室15の下方、蒸発器162,163近傍それぞれに、電気品の一例としての減圧室ヒータ153、第1蒸発器ヒータ166、第2蒸発器ヒータ167を配している。これらヒータは、通電して発熱する通電型でもよいし、冷凍サイクルの流路を切替えることで冷媒が流れ、この冷媒が放熱するものでもよいが、通電量の調整を通じて細やかな制御がし易い点で通電型の方が好ましい。また、その他の貯蔵室にヒータを配しても良い。冷え過ぎや着霜は、後述するセンサや貯蔵室の目標温度設定の参照を利用して区別又は推定することができる。
【0029】
蒸発器162,163近傍には、蒸発器162,163それぞれの温度を検知する蒸発器温度センサ(不図示)が配されている。
【0030】
(センサ)
冷蔵庫1は、種々のセンサを利用して庫外及び庫内の情報、並びに冷凍サイクルや電気品の駆動状態を検知することができる。
冷蔵庫1は、冷蔵室11に設けた冷蔵室温度センサ114、冷凍室12に設けた冷凍室温度センサ114、製氷室13に設けた製氷室温度センサ134、野菜室14に設けた野菜室温度センサ144を有する。これら温度センサに加えて、湿度を検知する湿度センサを配しても良い。
【0031】
冷蔵庫1は、庫外の温度及び湿度をそれぞれ検知する庫外温度センサ171と庫外湿度センサ172を有する。
【0032】
各扉には、その開閉を検知可能な扉センサ(不図示)として、冷蔵室扉センサ、冷凍室扉センサ、製氷室扉センサ、野菜室扉センサが設けられている。減圧室扉151の開閉を検知する減圧室扉センサが設けられていても良い。各扉センサとしては種々公知のものを採用できる。
扉センサは、例えば各貯蔵室の開口縁側と各扉との一方に設けられた磁石と、磁束を検知するセンサとを有することができる。例えばこのように構成された扉センサは、両者が接近しているか(扉閉)否か(扉開)かを判断できる。このような扉センサについては、パッキンがとの密着が不十分で完全な扉閉に比して冷気が漏れやすい状態(半ドア)を扉閉と同一状態に認識してしまう虞がある。
【0033】
冷蔵庫1は、圧縮機161のモータ回転数を検知する圧縮機センサ(不図示)、蒸発器162,163それぞれの温度を検知する第1蒸発器温度センサ(不図示)と第2蒸発器温度センサ(不図示)、第1ファンの回転数を検知する第1ファンセンサ(不図示)、第2ファンの回転数を検知する第2ファンセンサ(不図示)を有する。
【0034】
[動作履歴の送信]
図3は、実施形態の冷蔵庫1のサーバ3への動作履歴の送信の流れを示すフローチャートである。冷蔵庫1は、サーバ3に向けて、種々のセンサ検知値、電気品や冷凍サイクルの情報を送信する。
冷蔵庫1は、電源の供給を受けると、本明細書に掲げる各種のセンサ値が検知する温度、湿度、扉の開閉、若しくは圧力、冷凍サイクル等の電気品の構成要素の通電量、モータ回転数といった各種の状態を動作履歴としてメモリ(不図示)に記憶する(ステップS101)。冷蔵庫1は経過時間のカウントが可能であり、例えば所定時間(常に一定である必要はない。)が経過すると(ステップS110,Yes)記憶した情報をサーバ3へ送信する(ステップS120)。
【0035】
また、冷蔵庫1は、冷蔵庫1の型番や個体ごとに付された固有の識別番号等を併せて送信することができる。
【0036】
各冷蔵庫1による動作履歴のサーバ3への送信は、所定の時間単位(一定でなくともよい。)ごとに送信される。例えば、5,10,30,60分ごとに動作履歴を逐次送信してサーバ3の記憶部31に記憶させたり、メモリに記憶させた動作履歴複数回分をまとめてサーバ3に送信することができる。
【0037】
冷蔵庫1の動作履歴は、少なくともある程度の期間に亘るもの(近時データ)が記憶部31に記憶され、これを利用して演算部32は故障の兆候と擬故障の診断を行う。近時データとしては、冷蔵庫1の現在または現在に近い時点から或る程度過去に亘る時間として得ることが好ましい。これにより、診断を実行した場合、ユーザに鮮度の高い情報を提供することができる。現在からみて或る程度(例えば24時間以上又は48時間以上)古くなった動作履歴は、記憶部31から削除しても良い。これにより、近時データの格納に要する記憶容量が過大になることを抑制できる。
【0038】
サーバ3による診断のタイミングは、冷蔵庫1から新たな動作履歴を受信したタイミングでも良いし、サービス提供者が定めたアルゴリズムに従うタイミングやサービス提供者が指定するタイミングでもよい。本実施形態のサーバ3は、ユーザ自身では気付くのが通常不可能な故障の兆候を診断するものであるから、このように、ユーザの要求以外をきっかけとして診断を開始するのが好ましい。例えば、各冷蔵庫1から受信した動作履歴のデータ個数が前回の診断から所定個数以上になったタイミングにしたり、サーバ3への負荷が過大にならないよう冷蔵庫1の識別番号ごとに分散して割り当てたタイミングにしてもよい。
【0039】
[被診断データ]
図4(a)は本実施形態のサーバ3が記憶している機器の被診断データを示す図である。サーバ3は、通信部33を通じて冷蔵庫1それぞれから動作履歴を含む情報を取得して記憶部31に格納させている。
【0040】
記憶部31は、冷蔵庫システム4に属する機器それぞれについて、その機器種別(本実施形態では冷蔵庫)、類似群コード、ロット番号、識別番号、前回の診断からの経過時間、及び近時データを格納している。便宜上、これらをまとめて被診断データと呼ぶ。被診断データとしては、例えば、識別番号と近時データとを少なくとも含むことができる。被診断機器を特定して診断結果を通知することが可能であれば、識別番号は含まれなくても良い。
【0041】
類似群コードは、或る機器種別(本実施形態では冷蔵庫)のうち、冷蔵庫システム4のサービスを提供する者が予め定義することができるものである。本実施形態では、サービス提供者が冷蔵庫の型番で予めグループ分けしたときのグループ番号である。例えば、同じ型番(同型)の冷蔵庫は互いに同じグループに属するようにグループ分けされている。また、互いに異なる型番(異型)の冷蔵庫であっても、制御ソフトウエアや冷凍サイクル構成、圧縮機型番が同一または類似の冷蔵庫があり得る。これらが同一でなくとも類似していれば、生じ得る故障やその兆候の発見方法が類似することが期待される。このため、サービス提供者は、予め互いに類似すると判断した冷蔵庫の型番に同じ類似群コードを付与しておくことができる。これにより、異型の冷蔵庫に対しても或る程度ひとまとめにした分析を行うことができるため、各グループのサンプル数が増大し、精度向上を見込むことができる。
【0042】
ロット番号は、或る機器が、例えばどの工場でいつ製造されたかによって割り当てられる番号である。同一ロット又は類似ロットの冷蔵庫同士は、故障率や、生じる故障の種類に一定の兆候が生じ得るため、これを記憶部31に格納させておくことで、故障兆候を判定する際の参考にすることができる。
【0043】
識別番号は、冷蔵庫1つごとに固有の番号である。これにより、冷蔵庫それぞれを互いに区別することができる。なお、識別番号に機器種別、類似群コード、ロット番号を紐付ることができるので、十分な演算及び通信速度が確保できるのであれば、別機器にこれらを格納し、識別番号を用いてこれらを適宜呼び出すようにしても良い。
【0044】
前回の診断からの経過時間は、対応する識別番号の機器(冷蔵庫1)が、前回診断を実行されたときからの経過時間を示すものである。この情報を利用して、例えば12時間又は24時間ごとに診断を実行するようにしても良い。
【0045】
近時データアドレスは、対応する識別番号の機器から受信した動作履歴を少なくとも或る程度の期間に亘って格納させているアドレスを示すものである。
近時データを含む被診断データを用いて、演算部32は故障の兆候や擬故障の有無を判定する診断を実行する。
【0046】
[異常教師データ]
図4(b)は本実施形態のサーバ3が蓄積している故障の兆候又は擬故障を含む、過去の機器の動作履歴(教師データ)を含む異常教師データを示す図である。本実施形態のようにサーバ3に異常教師データを記憶させても良いが、別機器に記憶させておき、適宜演算部32がこれを読み込んで学習または参照するように構成しても良い。演算部32は、異常教師データを学習または参照した結果、被診断データと類似してきたと判断した場合は、故障の予兆を検知したとか擬故障を検知したとか判断することができる。すなわち、異常教師データを利用して、被診断データを分類することができる。
【0047】
異常教師データとしては、類似群コード、ロット番号、識別番号に加え、異常種別と教師データアドレスが含まれている。異常教師データは、例えばサービスパーソンが収集および作成することができる。
【0048】
異常種別は、過去、冷蔵庫1の故障の兆候又は擬故障を診断した際に、その診断を担当したサービスパーソン(コールセンタ7)又はサーバ3等が下した、機器の故障や擬故障(異常)の種別である。
【0049】
例えば、本実施形態のような冷蔵庫であれば、或る貯蔵室の扉が閉めきられていないために冷気が通常より多く漏れる「ドア開継続」(擬故障)、冷凍サイクルに封入された冷媒ガスが何らかの原因で漏れる「冷媒漏れ」(故障)、冷凍サイクルの冷媒流のループを切替える弁の動作が異常をきたす「弁異常」(故障)、ユーザ等によって貯蔵室に熱い食品等が投入されることで貯蔵室温度が低下しにくくなる「熱負荷大」(擬故障)等が挙げられる。
【0050】
教師データアドレスは、故障又は擬故障と判断された冷蔵庫(機器)の具体的な動作履歴(教師データ)に係る情報が格納された記憶部31のアドレスを示すものである。
【0051】
演算部31は、機器種別、異常種別、及び教師データを少なくとも含み、好ましくはさらに類似群コード、ロット番号、識別番号を含むものを異常教師データとして学習することができる。その際、類似群コード毎に学習を区別し、或る類似群コードに係る学習が異なる類似群コードの学習に影響しないよう、基準を使い分けるように設定しても良い。
【0052】
なお、故障とは、通常、機器のユーザが自力で修理することが不可能又は困難なものをいい、例えば、機器として冷蔵庫1を挙げる場合、圧縮機161、減圧器、蒸発器162,163、ファン164,165、ヒータ153,166,167、その他センサの故障、配管の破損、回路等の導線の断線等である。本実施形態では、その兆候が生じているか否かをサーバ3が自律的に診断し、兆候が生じていると検知した場合、ユーザにその旨を通知することで、ユーザに早期の対応を促すことができる。
【0053】
一方、擬故障とは、機器のユーザの操作ミスや過大な入力をしたことに起因して現在または将来に悪影響を及ぼし得るものをいい、例えば、機器として冷蔵庫1を挙げる場合、貯蔵室への高温飲食物の投入、貯蔵室の扉の長時間開放する又はいわゆる半ドアにする等である。本実施形態では、擬故障の有無をサーバ3が自律的に診断し、生じていると検知した場合、ユーザにその旨を通知することで、ユーザに不具合を気付かせて対応を促すことができる。
【0054】
(教師データの例)
(教師データアドレス「TAA1001」に格納された、異常種別「ドア開継続」の教師データ)
図5は本実施形態の記憶部31に格納された、異常種別「ドア開継続」に係る教師データ(動作履歴)を示す図である。本教師データとしては、冷蔵室温度40、冷却器温度43、冷蔵室扉の扉開時間46が含まれて描かれている。横軸は、離散時間として表されており、扉開時間46は、例えば1時間毎の開時間小計を示している。
【0055】
本教師データは、異常種別「ドア開継続」又はその兆候を含む部分を少なくとも含み、併せて「正常」な時間帯の動作履歴を含んでも良い。本教師データでは、時刻t1より前は、「ドア開継続」に至っていない正常な状態の動作履歴である。この間、冷蔵室温度は10℃未満、冷却器温度43は概ね-10℃以下、扉開時間46は短めとなっている。時刻t1を境に扉開時間46が長めをキープしており、特にこの教師データでは、離散時間1時間中、1時間略全体に亘って扉開を検知している。また、時刻t1以降、冷蔵室温度40が上昇傾向の一方、冷却器温度43は下降傾向にある。
【0056】
実際、冷蔵室扉111が「ドア開継続」になると冷蔵室扉センサは開を検知し続けるとともに、冷蔵室11内の冷気が漏れるため冷蔵室温度40が上昇していく。一方、本異常教師データを与える類似群コード「001」の冷蔵庫では少なくとも、冷蔵室温度40を下降させるべく冷気を生成しようとして冷却器温度43は下降していく兆候を示す。
【0057】
このような特徴は、例えばコールセンタ7のサービスパーソン等によって見出されてサーバ3にこの動作履歴とともに記憶させておいたり、人工知能に特徴量として教え込むことができる。或いは、特に教え込むことなく人工知能に異常教師データをそのまま多数学習させて実際の動作履歴の分類をさせてもよい。特徴量を教え込む場合は、例えば、本教師データを例にとって説明すると、ドア開の検知が継続されていることに加え、冷蔵室温度40の上昇傾向を近似した近似直線41,42や冷却器温度43の下降傾向を近似した近似直線44,45をサービスパーソンが描き、これを異常教師データに追加しておくことができる。また、時刻t1までは正常であるという情報とともに学習させても良い。なお、ドア開の検知が継続されているにも拘らず冷蔵室温度40が維持されている場合は、冷蔵室扉センサの故障又はその兆候を示す可能性もある。
【0058】
(教師データアドレス「TAA1002」に格納された、異常種別「冷媒漏れ」の教師データ)
図6は本実施形態の記憶部31に格納された、異常種別「冷媒漏れ」に係る教師データ(動作履歴)を示す図である。本教師データとしては、冷蔵室温度50、冷却器温度53、冷蔵室扉の扉開時間56が含まれて描かれている。横軸は、離散時間として表されており、扉開時間56は、例えば1時間毎の開時間小計を示している。
【0059】
本教師データにおける時刻tn-2より前は、「冷媒漏れ」の兆候が生じていない正常な状態の動作履歴である。この間、冷蔵室温度50は10℃未満、冷却器温度53は-20℃程度である。扉開時間56は短めである。
【0060】
しかし、時刻tn-2直後からtn-1の短時間で、冷蔵室温度50と扉開時間56の変化に比して大きく、冷却器温度53が急上昇した。この急上昇はその後解消されたが、続いて時刻t1直後からt2までの短時間で再び、冷却器温度53が急上昇した。やはり冷却器温度53の急上昇および扉開時間56が短いのにも拘らず、冷蔵室温度50の変動は小さい。
【0061】
実際、冷凍サイクルからの冷媒漏れが生じかけると、低温冷媒がサイクル外に漏出し始めることで冷却器温度53が上昇する。通常であれば低温冷媒によって冷蔵室が冷却されることから、冷却器温度53が上昇するならば冷蔵室温度50は下降傾向を示し得るところ、この関係がなく、また、冷蔵室温度50の上昇要因となる扉開も検知されていない。そのような冷却器温度53の急上昇が1回、好ましくは複数回見受けられることが冷媒漏れを示唆することになる。
【0062】
本教師データには、好ましくは、サービスパーソンによって描かれた、冷却器温度53の急上昇の近似直線54,55が特徴量として入力されていても良い。また、時刻tn-2までは正常であるという情報とともに学習させても良い。
【0063】
演算部32は、その他種々の異常種別について、1以上の異常教師データを用いて学習済である。
【0064】
[故障の兆候又は擬故障の診断結果の通知]
図7は本実施形態のサーバ3の診断処理の流れを示すフローチャートである。サーバ3は、例えばコールセンタ7が準備した異常教師データのうち未学習のものがある場合(ステップS100,Yes)、それを演算部32の例えば人工知能に学習させる(ステップS110)。本実施形態では、未学習の異常教師データがなくなってからそれ以後の処理を行うように表現しているが、必ずしもこれに限られず、或る程度の学習を終えているのであれば、残りの学習とそれ以後の処理(診断処理)とを並行して実行したり交互に実行したりして良い。また、サーバ3が異常教師データを学習するのではなく各異常教師データを参照して被診断データとの類似度を演算する場合は、ステップS100,S110は必要ない。
【0065】
サーバ3は、冷蔵庫1から送信される動作履歴を逐次受信する間(ステップS120)、冷蔵庫1の診断時期が到来したと判断すると(ステップS200,Yes)、記憶部31に蓄積した被診断データを利用して、診断対象の冷蔵庫1の擬故障や故障の予兆の有無を診断する(ステップS210)。この診断は、学習済の演算部32によって被診断データを分類するものでも良いし、演算部32が被診断データとそれぞれの異常教師データとを比較して類似度を算出し、類似度が高い異常教師データがあれば、その異常種別が生じていると判断しても良い。類似度の算出としては、種々公知の方法を採用できる。
【0066】
擬故障を検知すると(ステップS300,Yes)、後述の図8に示すような確認のお願いを診断対象の冷蔵庫1のユーザに通知する。(ステップS310)。
【0067】
また、故障の予兆を検知すると(ステップS400,Yes)、後述の図9に示すような点検依頼のお願いを診断対象の冷蔵庫1のユーザに通知する(ステップS410)。また、この場合はコールセンタ7に故障予兆を示した冷蔵庫1の識別番号を通知する(ステップS420)。なお、識別番号に紐付けてユーザの連絡先(端末5のメールアドレスや冷蔵庫1のIPアドレスなど)を参照可能にすることで、ユーザに連絡することができることは当業者に明らかである。
【0068】
[擬故障の確認のお願い出力70]
図8は本実施形態の冷蔵庫1に擬故障が検知された場合に通知される確認のお願い出力70を示す図である。サーバ3は、擬故障を検知すると、診断対象の冷蔵庫1のユーザの端末5や入力部101の出力部に通知する。
【0069】
出力部はその内容をユーザが知覚可能に出力すればよく、画像や動画の表示に限らず音声の発音でもよい。また、出力部を通じてユーザに知覚可能に情報を送信することを「ユーザに通知する」という。
【0070】
確認のお願い出力70には、確認依頼事項出力71、指示出力72、異常残存時指示73、お願い削除出力74が含まれている。
【0071】
確認依頼事項出力71は、検知した擬故障の種類に応じてユーザに擬故障の種類やその場所を表示するものである。本実施形態のように、識別番号XXXXの冷蔵室が「扉開継続」であると判断された場合は、例えば、「識別番号XXXX冷蔵庫の冷蔵室の扉が開きっぱなしではありませんか?」という質問文が表示される。
【0072】
指示出力72は、検知した擬故障の種類に応じて、ユーザに具体的な作為を求めるものである。本実施形態では、冷蔵室の扉が閉められているか確認してほしい旨を表示する。指示出力72は、機器の確認対象部分をビジュアル表示する画像や動画を含ませても良い。本実施形態では、冷蔵庫1の冷蔵室扉を強調表示した画像を出力している。
【0073】
異常残存時指示73は、指示出力72で求められた作為によっても擬故障が解消しないとか、ユーザがどうすればよいかわからないとかの場合にコールセンタ7に連絡することを補助するものである。本実施形態では、異常残存時指示73を通じた操作をすることで、コールセンタ7への連絡画面(不図示)に遷移することができる。
【0074】
お願い削除出力74は、確認のお願い出力70を削除することができるものである。擬故障が解消した場合、その後サーバ3に本冷蔵庫1の近時データが送信されていき、改めて診断処理を実行すれば擬故障の解消をサーバ3は検知できるため、それを以て確認のお願い出力70を削除するように処理できる。しかしこの場合、或る程度長期にわたってユーザ側にこの通知が残存してしまうため、ユーザはお願い削除出力74を通じた操作をすることで、お願い出力70を削除することができる。
【0075】
その他、お願い出力70には、擬故障真偽判定出力(不図示)を含めることができる。擬故障真偽判定出力は、サーバ3によって通知した擬故障の種別が診断対象の冷蔵庫1に実際に生じていたかの入力を求める出力である。本出力によればユーザから診断結果のフィードバックを受けることができる。これで「真」又は「偽」である旨を入力された場合、サーバ3は、診断対象の冷蔵庫1の近時データを新たな異常教師データ(または正常動作を示す正常教師データ)として扱うことができる。なお、演算部32に対して、正常教師データを併せて学習させておくことが好ましい。
【0076】
[点検依頼のお願い出力80]
図9は本実施形態の冷蔵庫1に故障の予兆が検知された場合に通知される点検依頼のお願い出力80を示す図である。サーバ3は、故障予兆を検知すると、診断対象の冷蔵庫1のユーザの表示部に通知する。
【0077】
点検依頼のお願い出力80には、故障兆候出力81、故障時影響出力82、点検依頼補助出力83が含まれている。点検依頼のお願い出力80には、具体的な故障種別(例えば、冷媒漏れ)を表示しても表示しなくても良い。表示する場合は、より詳細な情報をユーザに提供できる点で好ましい。表示しない場合は、故障の修理は通常ユーザ自力では不可能なため、その種類をユーザに報知すると要らぬ心配をさせたり、自力で何とかしようと思わせてしまう虞を低減できる点で好ましい。
【0078】
故障兆候出力81は、冷蔵庫1が将来的に故障する兆候を検知した旨を出力するものである。
【0079】
故障時影響出力82は、予兆された故障が生じた場合に冷蔵庫1に及ぶ影響を出力するものである。本実施形態のように冷媒漏れが予兆された場合は、その影響である「貯蔵室すべての冷却停止」の旨を出力する。故障時影響出力82には、影響が及ぶ範囲をビジュアルで表現するようにしても良い。本実施形態では、全貯蔵室を強調表示した冷蔵庫1の画面を表示している。
【0080】
点検依頼補助出力83は、コールセンタ7への連絡を補助又は促進するものである。本実施形態では、点検依頼補助出力83を通じた操作をすることで、コールセンタ7への点検依頼画面に遷移することができる(例えば、コールセンタ7への発呼処理や、点検予約フォームへの遷移)が、単にコールセンタ7の電話番号やメールアドレス等を表示するものでも良い。
【0081】
なお、本実施形態においてユーザに通知する情報は、コールセンタ7に通知しても良い。
【0082】
このように本実施形態によれば、動作履歴を含む近時データを利用して機器を診断し、機器の故障の兆候又は擬故障を検知したらユーザやコールセンタに通知することができる。
【0083】
[関連する技術との対比]
特開2015-28760号公報は、パーソナルコンピュータ1が表示するキー28~30がユーザによって操作された場合に、パーソナルコンピュータ1は、冷蔵庫7の制御通信回路23に対して、冷蔵庫7の現在の状態に応じた情報に相当する「第1運転情報」を判断し、サーバ5を経由してパーソナルコンピュータ1に送信するよう要求する(0025)。例えば、ユーザによってキー28「冷えない・冷えが悪い」が操作されると、通信制御回路23は、冷蔵庫7の現在の「電源情報(電源供給の有無を示すもの)」を判断し、その結果としての「第1運転情報」をパーソナルコンピュータ1に送信する(0024,0025)。
その他の第1運転情報としては、電源供給開始からの時間経過有無を示す「時間情報」、また、「弱運転情報」、「節電情報」、「強運転情報」などの、冷蔵庫7の現在の状態に応じた情報が挙げられている(0021)。上記「電源情報」が第1運転情報とされなかった場合、これらを順々に判断していく(0026-0028)。
また、選択されたキー28-30及び第1運転情報に応じて決定される「独自アドバイス」がパーソナルコンピュータ1に表示されることが開示されている(0031,0033、図6)。
【0084】
このように特開2015-28760号公報は、ユーザの操作に起因してアドバイスが作成される。また、ユーザがキー28~30を選択したとき(現在)の冷蔵庫7の設定を利用してアドバイスを作成するものであり、現在も「冷えない」などの原因が確認できる場合でなければアドバイスを作成できない。このため、特開2015-28760号公報は、ユーザが異常に気付かなければアドバイスを作成できない。また、特開2015-28760号公報は、冷蔵庫7が正常ではあるものの、過去の動作等に応じて一時的に状態が乱れていて現在回復に向かっている場合、その乱れた状態を感得したユーザが「故障ではないか?」と疑義を抱いても、何らアドバイスをすることができない。
【0085】
また、冷蔵庫7の現在その瞬間の状態のみからでは原因の推定が難しい事象、例えば、或る程度の期間に亘る近時データを利用した故障の予兆や擬故障の判定についても記載も示唆もされていない。
【符号の説明】
【0086】
1 機器(入力部と出力部とを含むことができる)(例えば冷蔵庫)
2 広域ネットワーク
3 サーバ
31 記憶部
32 演算部(人工知能)
33 通信部
4 機器システム(冷蔵庫システム)
5 端末(入力部と出力部とを含む)
7 コールセンタ(サービスパーソン)
70 確認のお願い出力
71 確認依頼事項出力
72 指示出力
73 異常残存時指示
74 お願い削除出力
80 点検依頼のお願い出力
81 故障兆候出力
82 故障時影響出力
83 点検依頼補助出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9