(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】アクロレインシアノヒドリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 253/00 20060101AFI20220524BHJP
C07C 255/16 20060101ALI20220524BHJP
C07F 9/32 20060101ALI20220524BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C07C253/00
C07C255/16
C07F9/32
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018081566
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリアンネ オーマイス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-005917(JP,A)
【文献】特公昭46-018733(JP,B1)
【文献】特開昭53-073518(JP,A)
【文献】特開昭49-133325(JP,A)
【文献】特公昭36-011965(JP,B1)
【文献】特公昭44-027011(JP,B1)
【文献】特公昭48-003824(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/173146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 253/00
C07C 255/16
C07F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル、ベンジルから選択される]の化合物を製造するための方法であって、以下、
a) 式(II)
【化2】
の少なくとも1種の化合物と、シアン化水素酸及び少なくとも1種の塩基Bとを反応させ、それにより化合物(I)及びシアン化水素酸を含む粗生成物CPを得る工程、
b) 粗生成物CPをストリッピングすることにより粗生成物CPからシアン化水素酸を少なくとも部分的に除去し、それにより化合物(I)を含む純粋な生成物を得る工程、ここで、純粋な生成物は粗生成物CPと比較してシアン化水素酸の低減された含有量を有するものとする、
を含み、ストリッピングが、
10~200mbarの圧力で実施され、任意に不活性ストリッピングガスが向流で使用されることを特徴とする、式(I)の化合物を製造するための方法。
【請求項2】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素、炭素原子1~6個を有するアルキル基、フェニル、ベンジルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1及びR
2が、それぞれ水素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
塩基Bが、アンモニア、トリアルキルアミン、アンモニウム塩からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)を-50℃~80℃の温度で実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、シアン化水素酸を、工程a)において使用される式(II)の全ての化合物の量に基づいて、1モル当量より多い量で使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)における塩基B)の量が、工程a)において使用されるシアン化水素酸と工程a)において使用される式(II)の全ての化合物との合計質量に基づいて、0.01~5質量%である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
粗生成物CPを工程b)の前に少なくとも1種の酸と混合し、酸と混合した後にpHが6.9未満となる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の酸が1以下のpKaを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸が、鉱酸、アルキルカルボン酸、芳香族スルホン酸から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
85℃以下の温度を、工程b)におけるストリッピング中に維持する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)におけるストリッピング中に、粗生成物CPが、少なくとも部分的に、充填物要素の層の上を又は構造化された充填物の上を通過する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式(III)
【化3】
[式中、R
1及びR
2は上記で定義したものであり、
R
3、R
4は、それぞれ独立して、(ハロ)アルキル、(ハロ)アリール、(ハロ)アラルキル、(ハロ)シクロアルキルから選択され、
Xは酸素又は硫黄であり、
n=0又は1である]の化合物を製造するための方法であって、
請求項1から12までのいずれか1項に記載の工程a)及びb)を含み、かつさらに、工程b)において得られる式(I)の化合物を含む純粋な生成物を、式(IV)
【化4】
の化合物と反応させる工程c)を含み、ここで純粋な生成物が、粗生成物CPと比較して低減されたシアン化水素酸含有量を有する、前記方法。
【請求項14】
工程c)における反応を、50℃~105℃の温度で実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
R
3、R
4が、それぞれ独立して、炭素原子1~12個を有する(ハロ)アルキル、炭素原子6~10個を有する(ハロ)アリール、炭素原子7~10個を有する(ハロ)アラルキル、炭素原子4~10個を有する(ハロ)シクロアルキルから選択される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種のラジカル形成物質を工程c)において使用する、請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ラジカル形成物質が、式(V)
【化5】
[式中、R
5は、メチル、エチル、2,2-ジメチルプロピル、フェニルから選択され、
R
6、R
7は、それぞれ独立して、炭素原子1~10個を有するアルキル基であり、
R
8は、水素又は炭素原子1~10個を有するアルキル基である]のラジカル形成体である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化水素酸及び対応するアクロレインからアクロレインシアノヒドリンを製造するための改良された方法に関する。前記方法は、得られたアクロレインシアノヒドリンが、非常に低いシアン化水素酸含有量を有するか、又はシアン化水素酸を有さず、かつしたがって、グルホシネートの合成のための中間体として特に適していることを特徴としている。
【背景技術】
【0002】
アクロレインシアノヒドリンは、工業的に重要な原材料である。
【0003】
これらの化合物の重要な適用は、ホスフィノスリシン(2-アミノ-4-[ヒドロキシ(メチル))ホスフィノイル]酪酸、一般的に「グルホシネート」又はグルホシネート塩の合成である(欧州特許出願公開第0 546 566号明細書(EP 0 546 566 A1))。
【0004】
米国特許出願公開第4,521,348号明細書(US 4,521,348)、米国特許出願公開第4,599,207号明細書(US 4,599,207)、米国特許第6,359,162号明細書(US 6,359,162 B1)、中国特許出願公開第102372739号明細書(CN 102372739 A)、中国特許出願公開第102399240号明細書(CN 102399240 A)、中国特許出願公開第101830926号明細書(CN 101830926 A)は、グルホシネート及び類似の化合物の製造方法を記載している。独国特許出願公開第23 02 523号明細書(DE 23 02 523 A1)は、エタン-1,2-ジホスフィン酸ジエステルを亜リン酸エステルとアセチレンとから得る類似の方法を挙げている。S. R. Piettre, Tetrahedron Letters, 37 (13), 2233 - 2236は、ホスホニル基を含む類似の化合物及びそれらの製造を記載している。
【0005】
グルホシネートは、主に除草剤として使用されている(欧州特許出願公開第0 377 870号明細書(EP 0 377 870 A1)、米国特許出願公開第4,168,963号明細書(US 4,168,963))。さらに、欧州特許出願公開第0 029 168号明細書(EP 0 029 168 A1)は、写真の分野においてコポリマーを製造するための類似のリン化合物の使用を挙げている。
【0006】
グルホシネートの合成における必須の工程は、ホスフィン酸エステルをアクロレインシアノヒドリン(以下「AcCH」)又はアクロレインシアノヒドリンアセテート(「ACA」)の二重結合に付加することである。従来技術の多くの方法におけるこの反応において、欧州特許出願公開第0 019 227号明細書(EP 0 019 227 A1)にしたがった方法によって、例えば欧州特許出願公開第0 011 245号明細書(EP 0 011 245 A1)、欧州特許出願公開第0 127 877号明細書(EP 0 127 877 A2)において得られるアセテート基により保護されているACAが使用される。保護された誘導体を使用する反応は、所望でない副反応を妨げる。一方で、次の従来技術において記載されるようなさらなる欠点が導かれる:国際公開第2015/173146号明細書(WO 2015/173146 A1)は、シアノヒドリンのOH官能基のアセチル化に関連する副産物又はそれらの除外を議論している(国際公開第2015/173146号明細書、4頁、8~24行目)。
【0007】
さらに、OH基上で保護されていないAcCHがこの反応において使用されてもよいことが、独国特許出願公開第30 47 024号明細書(DE 30 47 024 A1)において既に認識されている。特に、ACAの代わりにこの保護されていないAcCHを反応物として使用する場合に、最も高い可能な純度が非常に重要となる。
【0008】
AcCHは、典型的に、アクロレインとシアン化水素酸との反応によって得られる(米国特許出願公開第3,850,976号明細書(US 3,850,976))。ここで生じる問題は、得られたAcCHにおいてシアン化水素酸反応物のある一定の残留物が常に見出されることである。これは、アクロレインに基づいて、過剰なシアン化水素酸を使用する場合に、可能な限り完全なアクロレインの変換が所望されるため慣習的である。
【0009】
しかしながらこのシアン化水素酸の残留含分は、いくつかの問題を生じる:例えば、続く合成順序における所望でない副反応をもたらす。これは、グルホシネートの合成において特に問題であり、従来技術において既に言及されている(国際公開第2015/173146号明細書:2頁、15行目)。さらに、シアン化水素酸は、毒性があり、特に酸素の放出を導く次の工程において過酸化物が存在するため、爆発的に反応しうる。したがって、操作上の安全の観点から、遊離シアン化水素酸がAcCHにおいて存在することも、望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第0 546 566号明細書
【文献】米国特許出願公開第4,521,348号明細書
【文献】米国特許出願公開第4,599,207号明細書
【文献】米国特許第6,359,162号明細書
【文献】中国特許出願公開第102372739号明細書
【文献】中国特許出願公開第102399240号明細書
【文献】中国特許出願公開第101830926号明細書
【文献】独国特許出願公開第23 02 523号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 377 870号明細書
【文献】米国特許出願公開第4,168,963号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 029 168号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 019 227号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 011 245号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 127 877号明細書
【文献】国際公開第2015/173146号明細書
【文献】独国特許出願公開第30 47 024号明細書
【文献】米国特許出願公開第3,850,976号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 019 750号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】S. R. Piettre, Tetrahedron Letters, 37 (13), 2233 - 2236
【文献】M. Kriebel:「Absorption, 2. Design of Systems and Equipment」, Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Electronic Release, chap. 3, Wiley VCH, Weinheim October 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術は、シアン化水素酸を除去するためのいくつかの方法を記載しているが、しかしながら、それらは、極めて扱いにくく、又はさらなる問題を引き起こす。この理由は、AcCHの処理は問題があり、かつAcCHがその不安定性により慣習的な精製方法に簡単に供されないことである。
【0013】
シアン化水素酸を含まないAcCHの以前の提供は、従来の方法にしたがって以下の工程を必要とする:
a)シアン化水素酸で汚染された粗製AcCHのACAへのアセチル化及び精製(例えば欧州特許出願公開第0 019 750号明細書(EP 0 019 750 A1)において記載される);
b)イオン交換によるACAの脱アセチル化(国際公開第2015/173146号明細書、第17頁、第12~22行の実施例1において記載される)。
【0014】
これは、これまでシアン化水素酸を含まないAcCHの提供がアセチル化を回避できなかったことを意味する。アセチル化と脱アセチル化の双方において放出される酢酸は、それ自体、脱アセチル化後に得られるAcCH中でさらなる不純物を導く。これらの不純物は、合成の続く工程における副反応を再度導きうる。
【0015】
前記されたシアン化水素酸の除去のさらなる欠点は、高価なイオン交換体の使用により非常に費用がかかることである。
【0016】
特に、グルホシネートの合成において、(中間体)生成物AcCHのアセチル化を省略し、可能な限りシアン化水素酸を含まないものとして使用できるようにする必要がある。
【0017】
したがって、本発明の目的は、従来技術と比較して、アクロレインシアノヒドリン及び類似化合物を製造するための改良された合成経路を提供することであった。この合成は、特に、より少ない不純物を有する生成物、特に可能な限り低いシアン化水素酸の画分をもたらし、同時に従来技術の方法の欠点を避けるべきである。
【0018】
本発明は、この目的を達成し、かつ驚くべきことに、これらの副生成物を除去し、純粋なAcCHをより容易に得る効率的な代替方法を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
したがって、本発明は、式(I)
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル、ベンジルから選択される]の化合物を製造するための方法であって、
a) 式(II)
【化2】
の少なくとも1種の化合物と、シアン化水素酸及び少なくとも1種の塩基Bとを反応させ、それにより化合物(I)及びシアン化水素酸を含む粗生成物CPを得る工程、
b) 粗生成物CPをストリッピングすることにより粗生成物CPからシアン化水素酸を少なくとも部分的に除去し、それにより化合物(I)を含む純粋な生成物を得る工程、ここで、純粋な生成物は粗生成物CPと比較してシアン化水素酸の低減された含有量を有するものとする、
を含み、ストリッピングが、1bar未満の圧力で実施され、任意に不活性ストリッピングガスが向流で使用されることを特徴とする、式(I)の化合物を製造するための方法に関する。
【0020】
R1及びR2は、特に、それぞれ独立して、水素、炭素原子1~6個を有するアルキル基、フェニル、ベンジルから選択される。R1及びR2は、好ましくは、それぞれ独立して、水素、炭素原子1~6個を有するアルキル基から選択される。より好ましくは、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルから選択される。最も好ましくは、R1=R2=水素であり、そして、式(II)の化合物はアクロレインであり、かつ式(I)の化合物はアクロレインシアノヒドリンである。
【0021】
本発明による方法の工程a)において、式(II)
【化3】
の化合物を、シアン化水素酸及び塩基Bと反応させ、それにより化合物(I)及びシアン化水素酸を含む粗生成物CPが得られる。
【0022】
この目的のための反応条件は、当業者に公知であり、例えば米国特許出願公開第3,850,976号明細書において見出される。
【0023】
シアン化水素酸は、液体として又は気体の形で、好ましくは液体として使用されうる。
【0024】
式(II)の化合物の反応は、循環システムを有する反応器中で実施されてよい。循環システムは、危険な反応物の徹底的な混合を確実にする。
【0025】
塩基Bは特に限定されないが、塩基Bを、アンモニア、トリアルキルアミン、アンモニウム塩からなる群から選択すること、より好ましくは、アンモニア、トリアルキルアミンからなる群から選択すること、さらにより好ましくは、アンモニア、トリエチルアミンからなる群から選択すること、最も好ましくはトリエチルアミンから選択することが好ましい。アンモニアは、米国特許出願公開第3,850,976号明細書において記載されるようにCO2との混合物で使用されてよい。
【0026】
好ましいトリアルキルアミンはトリエチルアミンである。
【0027】
好ましいアンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムであり、特に好ましくは、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムである。
【0028】
工程a)は、特に、この場合に、-50℃~80℃の温度で実施され、好ましくは-40℃~60℃の温度で実施され、より好ましくは-30℃~30℃の温度で実施され、さらにより好ましくは-10℃~10℃の温度で実施され、さらに好ましくは-5℃~5℃の温度で実施される。
【0029】
本発明による方法の工程a)において使用されるシアン化水素酸の量は、原則として限定されない。しかしながら、化合物(II)の可能な限り完全な変換を確実にするために、及び本発明が特に粗生成物CP中で過剰なシアン化水素酸を容易に除去できる理由から、本発明による方法の工程a)におけるシアン化水素酸は、特に、それぞれの場合に工程a)において使用される式(II)の全ての化合物の量に基づいて、1モル当量より多い量で、好ましくは1モル当量より多く10モル当量までの量で、より好ましくは1.01モル当量~7.5モル当量の量で、さらにより好ましくは1.03モル当量~5モル当量の量で、さらにより好ましくは1.3モル当量~2モル当量の量で使用される。
【0030】
工程a)における塩基B)の量は特に制限されない。工程a)における塩基B)の量は、工程a)において使用されるシアン化水素酸と工程a)において使用される式(II)の全ての化合物との合計質量に基づいて、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~1質量%である。
【0031】
より好ましくは、工程a)における反応混合物が、6.9以下、より好ましくは7.0~7.5、好ましくは7.3のpH(25℃で)を有するのに十分な塩基Bが、工程a)において使用される。
【0032】
工程a)における反応混合物のpHは、当業者によって適した電極を用いた通常の手法で測定されてよく、塩基Bの必要とされる量がそれから決定されうる。可能なpH電極は、例えば「Flushtrode pH electrode A238060」(製造業者:Hamilton)である。
【0033】
反応時間は特に限定されない。工程a)における反応は、生成物(I)を得るためにシアン化水素酸での式(II)の化合物の所望の変換が達せられるまで実施される。特に、反応時間は、20秒~3時間、好ましくは1~85分である。
【0034】
本発明による方法の工程a)は、溶剤を使用して又は使用せずに、好ましくは溶剤を使用せずに実施する。溶剤を使用する場合に、溶剤は、好ましくはアルコール、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ジアルキルホルムアミド又はジアルキルスルホキシドから選択される少なくとも1種、より好ましくは、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、塩化メチレンから選択される少なくとも1種である。
【0035】
工程a)の終わりで、標的化合物(I)を含み、さらにシアン化水素酸も含む粗生成物CPが得られる。シアン化水素酸の割合は、本発明による方法の工程a)において使用された過剰なシアン化水素に依存し、工程a)における変換にも依存する。特に、粗生成物CPにおけるシアン化水素酸の割合は、粗生成物CPにおける式(I)の化合物の量に基づいて、10質量%まで、好ましくは3~4質量%の範囲である。
【0036】
この粗生成物CPは、工程b)すなわち本発明によるストリッピングに供給されうる。
【0037】
しかしながら、工程b)を実施する前に粗生成物CPが安定化されることが有利である。本発明による安定化は、酸と混合した後に、粗生成物CPが、6.9未満のpH、好ましくは5.0未満、より好ましくは4.0未満、さらにより好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.0未満、特に好ましくは1.0未満のpH(25℃で)を有するように、粗生成物CPを少なくとも1種の酸と混合することを示す。
【0038】
そのように安定化された混合物のpHは、当業者によって適した電極を用いた通常の手法で測定されてよく、酸の必要とされる量がそれから決定されうる。可能なpH電極は、例えば「Flushtrode pH electrode A238060」(製造業者:Hamilton)である。
【0039】
安定化のために粗生成物CPと混合される酸の量は、粗生成物CPにおける式(I)の全ての化合物の量に基づいて、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以下である。
【0040】
この目的のために使用される必要とされる酸は、好ましくは、鉱酸、アルキルカルボン酸、芳香族スルホン酸、又は芳香族スルホン酸とアルキルカルボン酸との混合物からなる群から選択される。
【0041】
好ましいアルキルカルボン酸は、酢酸である。
【0042】
好ましい鉱酸は、リン酸である。
【0043】
「芳香族スルホン酸」は、このスルホン酸において芳香族基を有していてよく、又はアルキル置換基を有していなくてもよいことを示す。好ましい芳香族スルホン酸は、ベンゼンスルホン酸及びアルキル置換ベンゼンスルホン酸から選択され、ここでアルキル置換基は好ましくは1~20個の炭素原子を有し、フェニル環は1つのみのパラアルキル置換基を有し、例えばパラトルエンスルホン酸である。
【0044】
芳香族スルホン酸とアルキルカルボン酸との混合物を、粗生成物CPを安定化するために使用する場合に、これらの混合物中の全ての芳香族スルホン酸及び全てのカルボン酸は、特に以下の質量での割合で存在する:
全ての芳香族スルホン酸と全てのアルキルカルボン酸との質量が、9:1~1:9、好ましくは8:2~2:8、より好ましくは7:3~3:7、さらにより好ましくは6:4~4:6、最も好ましくは1:1。
【0045】
工程a)の後に得られた、安定化されている又は特に安定化されていない、好ましくは安定化されている粗生成物CPは、その後工程b)に供される。
【0046】
工程b)において、粗生成物CPをストリッピングすることにより粗生成物CPからのシアン化水素酸の少なくとも部分的な除去を実施し、それにより、化合物(I)を含む純粋な生成物が得られ、その際、純粋な生成物は、粗生成物CPと比較してシアン化水素酸の低減された含有量を有する。
【0047】
シアン化水素酸と組み合わせたアクロレインシアノヒドリン及び類似の化合物は、次の工程で予期されるように酸素の存在下で爆発性が高いため、これは驚くべきことであった(Gestis Substance Database of the Institute for Occupational Safety)。専門家の専門知識にしたがって、これらの混合物は、酸性安定化が常に保証されなければならず、さらに生成物の熱安定性が工業的に利用可能な真空条件下で蒸発を実施するために十分ではないため、原則として蒸留による精製には適していない。
【0048】
本発明による方法において、工程a)からの(安定化されている又は安定化されていない、好ましくは安定化されている)粗生成物CPは、その後工程b)においてストリッピングされる。驚くべきことに、この方法で、シアン化水素酸の特に穏やかな除去が可能であることが証明されている。
【0049】
「ストリッピング」は、液体を精製するための従来技術における多くの分野において使用されている当業者に公知の物理的な分離プロセスである(例えば、M. Kriebel:「Absorption, 2. Design of Systems and Equipment」, Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Electronic Release, chap. 3, Wiley VCH, Weinheim October 2008において記載されている)。この場合、ガス相は、精製されるべき相と向流で接触され、又は精製されるべき相が、向流で又は向流ではなく1bar未満の減圧下で接触される。本発明にしたがって、この接触は、特に塔中で行われる。
【0050】
本発明において、ストリッピングは、1bar未満の減圧下で実施される。任意に、不活性ストリッピングガスは向流で使用されてよく、これは、ストリッピングを補助するために、かかる不活性ストリッピングガスが、塔中に向流で粗生成物CPに導入されてよいことを意味するが、但し圧力は1bar未満のままである。
【0051】
したがって、「任意に不活性ストリッピングガスが向流で使用される」は、ストリッピングを補助するために、かかる不活性ストリッピングガスが、塔中に向流で、塔中に導入されたシアン化水素酸と式(I)の化合物とを含む粗生成物CPに導入され、ここでの圧力が1bar未満のままであり、又はかかる不活性ストリッピングガスが導入されないことさえあることを示す。
【0052】
不活性ストリッピングガスを使用しない手法が好ましい。
【0053】
ストリッピングの温度は、当業者による通常の方法で塔中で適した負の圧力を設定することによって調整されうる。
【0054】
本発明による工程b)における圧力は、1bar未満であり、特に1~500mbarの範囲であり、より好ましくは10~200mbarの範囲である。
【0055】
この場合、85℃以下の温度がストリッピング中に維持されることが好ましく、それというのも、驚くべきことに、AcCHの特定の穏やかで有利な精製が85℃以下の温度で可能であることが立証されているからである。好ましくは、前記温度は、72.5℃以下、より好ましくは-10~70℃の範囲で、より好ましくは-5℃~30℃の範囲である。
【0056】
粗生成物CPの精製は、同様のものの表面積を増加することにより改良されうる。好ましくは、この目的のために、本発明による方法の工程b)において粗生成物CPは、少なくとも部分的に、充填物要素の層の上を又は構造化充填物の上を通過する。この目的のための適しているものは、蒸留及び吸収プロセスのための先行技術から当業者に公知の全ての充填物要素及び構造化充填物である。代わりに、ストリッピングを、流下膜式蒸発器又は薄膜蒸発器中で実施してよい。これらの装置は、先行技術から当業者に公知である。
【0057】
好ましい不活性ストリッピングガスは窒素である。
【0058】
不活性ストリッピングガスを使用する場合に、その含水量は、低くあるべきであり、好ましくは1体積%未満であり、より好ましくは0.1体積%未満であるべきである。
【0059】
その後純粋な生成物が本発明による工程b)において得られ、これは、粗生成物CPと比較して、低減されたシアン化水素酸含有量を有する。この純粋な生成物は、典型的に、純粋な生成物中の式(I)の化合物に基づいて、0.1質量%未満のシアン化水素酸含有量を含む。
【0060】
好ましくは、その後さらに工程c)が、本発明による方法の工程b)に続く。したがって、本発明は、前記した工程a)及びb)と共に、式(III)
【化4】
[式中、R
1及びR
2は上記で定義したものであり、
R
3、R
4は、それぞれ独立して、(ハロ)アルキル、(ハロ)アリール、(ハロ)アラルキル、(ハロ)シクロアルキルから選択され、
Xは酸素又は硫黄であり、
n=0又は1である]の化合物を製造するため方法であって、
式(I)の化合物を製造するための本発明による方法にしたがった工程a)及びb)を含み、かつさらに工程b)において得られる式(I)の化合物を含む純粋な生成物を、式(IV)
【化5】
の化合物と反応させる工程c)を含む前記方法に関し、ここで純粋な生成物は、粗生成物CPと比較して低減されたシアン化水素酸含有量を有する。
【0061】
この反応は、当業者に公知の方法(国際公開第2015/173146号明細書において記載される)により実施されうる。工程b)において得られる化合物(I)を含む純粋な生成物を使用すること、及び低減されたシアン化水素酸含有量によって、より少ない副反応が工程c)においてもたらされる。工程c)においてシアン化水素酸及びラジカル形成物質によって存在する爆発の危険性が、同様に低減される。
【0062】
工程c)における反応中の温度は、好ましくは50℃~105℃、より好ましくは60℃~95℃、さらにより好ましくは65℃~90℃である。
【0063】
R3、R4は、好ましくは、それぞれ独立して、炭素原子1~12個を有する(ハロ)アルキル、炭素原子6~10個を有する(ハロ)アリール、炭素原子7~10個を有する(ハロ)アラルキル、炭素原子4~10個を有する(ハロ)シクロアルキルから選択される。
【0064】
本発明による(ハロ)アルキルは、アルキル又はハロアルキルを意味する。
【0065】
本発明による(ハロ)アリールは、アリール又はハロアリールを意味する。
【0066】
本発明による(ハロ)アラルキルは、アラルキル又はハロアラルキルを意味する。
【0067】
本発明による(ハロ)シクロアルキルは、シクロアルキル又はハロシクロアルキルを意味する。
【0068】
R3は、好ましくは、炭素原子1~4個を有するアルキル、炭素原子1~4個を有するハロアルキルから選択され、より好ましくはメチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである。
【0069】
R4は、好ましくは炭素原子1~6個を有するアルキル、炭素原子1~6個を有するハロアルキルから選択され、より好ましくは炭素原子3~6個を有するアルキルから選択され、より好ましくは炭素原子4個又は5個を有するアルキルから選択され、最も好ましくはn-ブチル又はn-ペンチルである。
【0070】
さらに工程c)において、ラジカル形成物質が好ましくは使用される。これは、好ましくは、式(IV)
【化6】
[式中、R
5は、メチル、エチル、2,2-ジメチルプロピル又はフェニルであり、
R
6、R
7は、それぞれ独立して、炭素原子1~10個、好ましくは炭素原子2~6個、より好ましくは炭素原子1~4個を有するアルキル基であり、
R
8は、水素又は炭素原子1~10個を有するアルキル基、好ましくは水素又は炭素原子1~6個を有するアルキル基、より好ましくは水素又は炭素原子1~4個を有するアルキル基である]のラジカル形成体である。
【0071】
式(V)のラジカル形成体は、それ自体公知であり、場合により市販されている。
【0072】
式(V)のラジカル形成体は、好ましくは、本明細書では、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、クミルペルオキシピバレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0073】
式(V)のラジカル形成体は、好ましくは、本明細書では、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート及び/又はtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートである。
【0074】
特に、好ましいと特定されたラジカル形成体は、穏やかな反応条件下で、特に好ましいと特定された温度範囲で非常に良好な反応型を可能にし、それによって式(III)の所望の化合物が、高収率及び高純度で得られうる。
【0075】
本発明による方法の工程c)において、純粋な生成物中に存在し、本発明による方法の工程c)において使用される式(I)の全ての化合物の合計量に基づいて、合計で0.1~10mol%、好ましくは0.25~7mol%、さらに好ましくは0.5~7mol%、特に好ましくは0.5~5mol%の式(V)のラジカル形成体が使用される。
【0076】
工程c)における反応のさらに好ましい条件は、当業者に公知であり、例えば国際公開第2015/173146号明細書において見出されてよい。
【0077】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しているが、本発明をそれらに限定するものではない。
【実施例】
【0078】
1. 粗AcCHの生成(工程a)
1.1 液体としてアクロレイン50gを、撹拌しながら混合し、そして二重ジャケット式反応器中で、-5℃で、シアン化水素酸1.3mol当量と、及び混合物のpHが7.3となるのに十分なトリエチルアミンと反応させる。その反応物及び触媒を、発熱を制限するために2時間にわたって絶えず計量供給する。2時間の反応時間の後に、パラ-トルエンスルホン酸と酢酸との混合物(質量で1:1の割合)を、pHがpH3未満になるまで、その反応混合物に添加する。この粗生成物は、アクロレインシアノヒドリンに基づいて、シアン化水素酸~30mol%を含む。
【0079】
1.2 比較のために、米国特許出願公開第3,850,976号明細書の実施例1において記載される方法によって、粗AcCHを得ることを試みる。しかしながら、この方法は、減圧(65℃、3mm)下でのAcCHの蒸留工程を含む。この工程は、研究室条件下では処理できるが、大規模なバッチでは実施できない。したがって、この方法は、工業規模のバッチから除外され、小規模なバッチでさえも安全性に関する危険性を示す。
【0080】
2. 1からの粗生成物の生成(工程b)
工程1.1により得られたAcCH粗生成物を、Telabポンプ及び外部サーモスタットにより30~72.5℃の温度まで予熱し、そして10~50g/hの量で、長さ30cmの加熱可能なストリッピング塔の頂部に供給する。10~200mbarの減圧を塔に適用する。
【0081】
塔は、先行技術による金属メッシュを含み、それは、生成において使用される調節された充填を十分にシミュレートする。
【0082】
実験にしたがって、10cmのこの金属メッシュは、5つの理論段に対応する。
塔を加熱するが、これは単に、熱損失を補償し、規定の温度で塔を維持するためである。
【0083】
戻り流(return stream)とオフテイクの割合を調整しうる還流分配器を塔上に配置する。蒸気を凝縮する凝縮器も組み込む。蒸気は、この場合、大部分が凝縮したシアン化水素酸からなる。蒸留物の受け容器は、凝縮したシアン化水素酸の十分な安定化を確実にするために、リン酸を含有してよい。
【0084】
研修室での方法において、シアン化水素酸を、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、そして廃棄処理を制御する。
【0085】
より最近の生成方法では、これは焼却又は再利用されうる。
【0086】
シアン化水素酸を含まないアクロレインシアノヒドリンを、塔への供給物と単位時間当たり同量でポンプを用いて排出する。この方法において、液相レベルは一定のままであり、材料に対する熱応力は時間制限される。
【0087】
蒸留を、二重ジャケット型ボイラーにより加熱する。
【0088】
底部におけるシアン化水素酸を含まないアクロレインシアノヒドリンを、硝酸銀溶液を用いた銀滴定によって残留物のシアン化物の痕跡に関して分析する。
【0089】
これは、精製した純粋な生成物中のアクロレインシアノヒドリンに基づいて、0.1質量%未満の非常に少量のシアン化水素酸を示す。
【0090】
1bar以上まで圧力を増加することに対して、工業的規模でのAcCHの精製は、制御されていない熱分解をもたらすために、実施できないことが立証されている。これは、10~200mbarの圧力範囲で容易に制御可能である。
【0091】
本発明の好ましい態様は以下のとおりである:
1. 式(I)
【化7】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル、ベンジルから選択される]の化合物を製造するための方法であって、
a) 式(II)
【化8】
の少なくとも1種の化合物と、シアン化水素酸及び少なくとも1種の塩基Bとを反応させ、それにより化合物(I)及びシアン化水素酸を含む粗生成物CPを得る工程、
b) 粗生成物CPをストリッピングすることにより粗生成物CPからシアン化水素酸を少なくとも部分的に除去し、それにより化合物(I)を含む純粋な生成物を得る工程、ここで、純粋な生成物は粗生成物CPと比較してシアン化水素酸の低減された含有量を有するものとする、
を含み、ストリッピングが、1bar未満の圧力で実施され、任意に活性ストリッピングガスが向流で使用されることを特徴とする、式(I)の化合物を製造するための方法。
2. R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素、炭素原子1~6個を有するアルキル基、フェニル、ベンジルから選択される、態様1に記載の方法。
3. R
1及びR
2が、それぞれ水素である、態様2に記載の方法。
4. 塩基Bが、アンモニア、トリアルキルアミン、アンモニウム塩からなる群から選択される、態様1から態様3までのいずれかに記載の方法。
5. 工程a)を-50℃~80℃の温度で実施する、態様1から態様4までのいずれかに記載の方法。
6. 工程a)において、シアン化水素酸を、工程a)において使用される式(II)の全ての化合物の量に基づいて、1モル当量より多い量で使用する、態様1から態様5までのいずれかに記載の方法。
7. 工程a)における塩基B)の量が、工程a)において使用されるシアン化水素酸と工程a)において使用される式(II)の全ての化合物との合計質量に基づいて、0.01~5質量%である、態様1から態様6までのいずれかに記載の方法。
8. 粗生成物CPを工程b)の前に少なくとも1種の酸と混合し、酸と混合した後にpHが6.9未満となる、態様1から態様7までのいずれかに記載の方法。
9. 少なくとも1種の酸が1以下のpKaを有する、態様8に記載の方法。
10. 酸が、鉱酸、アルキルカルボン酸、芳香族スルホン酸から選択される、態様8又は態様9に記載の方法。
11. 85℃以下の温度を、工程b)におけるストリッピング中に維持する、態様1から態様10までのいずれかに記載の方法。
12. 工程b)におけるストリッピング中に、粗生成物CPが、少なくとも部分的に、充填物要素の層の上を又は構造化された充填物の上を通過する、態様1から態様11までのいずれかに記載の方法。
13. 式(III)
【化9】
[式中、R
1及びR
2は上記で定義したものであり、
R
3、R
4は、それぞれ独立して、(ハロ)アルキル、(ハロ)アリール、(ハロ)アラルキル、(ハロ)シクロアルキルから選択され、
Xは酸素又は硫黄であり、
n=0又は1である]の化合物を製造するための方法であって、
態様1から態様12までのいずれかに記載の工程a)及びb)を含み、かつさらに、工程b)において得られる式(I)の化合物を含む純粋な生成物を、式(IV)
【化10】
の化合物と反応させる工程c)を含み、ここで純粋な生成物が、粗生成物CPと比較して低減されたシアン化水素酸含有量を有する、前記方法。
14. 工程c)における反応を、50℃~105℃の温度で実施する、態様13に記載の方法。
15. R
3、R
4が、それぞれ独立して、炭素原子1~12個を有する(ハロ)アルキル、炭素原子6~10個を有する(ハロ)アリール、炭素原子7~10個を有する(ハロ)アラルキル、炭素原子4~10個を有する(ハロ)シクロアルキルから選択される、態様13又は態様14に記載の方法。
16. 少なくとも1種のラジカル形成物質を工程c)において使用する、態様13から態様15までのいずれかに記載の方法。
17. ラジカル形成物質が、式(V)
【化11】
[式中、R
5は、メチル、エチル、2,2-ジメチルプロピル、フェニルから選択され、
R
6、R
7は、それぞれ独立して、炭素原子1~10個を有するアルキル基であり、
R
8は、水素又は炭素原子1~10個を有するアルキル基である]のラジカル形成体である、態様16に記載の方法。