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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】光ファイバ製造加工装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/12 20060101AFI20220524BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20220524BHJP
   C03C 25/143 20180101ALI20220524BHJP
   C03C 25/16 20060101ALI20220524BHJP
   C03C 25/6206 20180101ALI20220524BHJP
   C03C 25/104 20180101ALI20220524BHJP
【FI】
C03C25/12
G02B6/44 301B
C03C25/143
C03C25/16
C03C25/6206
C03C25/104
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018105242
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019210164
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】金 正高
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-205517(JP,A)
【文献】特開2005-200275(JP,A)
【文献】特開昭63-040745(JP,A)
【文献】特開2003-300755(JP,A)
【文献】特開平10-310456(JP,A)
【文献】特開2018-036340(JP,A)
【文献】特開昭59-088342(JP,A)
【文献】特開2000-351654(JP,A)
【文献】特開平06-186449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0062637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
C03B 37/00-37/16
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバのコアの外側を覆うように設けられた被覆層を形成するために用いられる光ファイバ製造加工装置であって、
前記コアを含むファイバ材を長さ方向に搬送するファイバ材搬送手段と、
前記ファイバ材搬送手段で搬送される前記ファイバ材の表面に液状の未硬化材料を付着させる未硬化材料付着手段と、
前記未硬化材料付着手段によって付着した前記ファイバ材搬送手段で搬送される前記ファイバ材の表面の前記未硬化材料にエネルギーを供給して硬化させる材料硬化手段と、
前記ファイバ材を軸回転させる機構と、
を備え、
前記未硬化材料付着手段は、前記未硬化材料の液面に前記ファイバ材の側面を接触させることにより、前記ファイバ材に前記未硬化材料を付着させ、
前記軸回転させる機構は、前記ファイバ材における前記未硬化材料が付着した部分が気相に露出されるように、前記ファイバ材を軸回転させ、
前記材料硬化手段は、前記ファイバ材の表面に付着して気相に露出した前記未硬化材料にエネルギーを供給し、
前記ファイバ材搬送手段で搬送される前記ファイバ材の表面に、部分的に、前記被覆層に含まれることとなる前記未硬化材料が硬化した硬化被膜を形成できるように構成された光ファイバ製造加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバ製造加工装置において、
前記未硬化材料付着手段は、前記ファイバ材に付着させる前記未硬化材料を貯留する液槽で構成されている光ファイバ製造加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ製造加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
裸光ファイバを液状の紫外線硬化性樹脂に通して引き上げた後、その外側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させることによりジャケットを形成する光ファイバの製造方法が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-039684号公報
【文献】特開2018-036340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、光ファイバのコアの外側を覆うように設けられた被覆層の材質を部分的に変えることができる光ファイバ製造加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光ファイバのコアの外側を覆うように設けられた被覆層を形成するために用いられる光ファイバ製造加工装置であって、前記コアを含むファイバ材を長さ方向に搬送するファイバ材搬送手段と、前記ファイバ材搬送手段で搬送される前記ファイバ材の表面に液状の未硬化材料を付着させる未硬化材料付着手段と、前記未硬化材料付着手段によって付着した前記ファイバ材搬送手段で搬送される前記ファイバ材の表面の前記未硬化材料にエネルギーを供給して硬化させる材料硬化手段と、前記ファイバ材を軸回転させる機構とを備え、前記未硬化材料付着手段は、前記未硬化材料の液面に前記ファイバ材の側面を接触させることにより、前記ファイバ材に前記未硬化材料を付着させ、前記軸回転させる機構は、前記ファイバ材における前記未硬化材料が付着した部分が気相に露出されるように、前記ファイバ材を軸回転させ、前記材料硬化手段は、前記ファイバ材の表面に付着して気相に露出した前記未硬化材料にエネルギーを供給し、前記ファイバ材搬送手段で搬送される前記ファイバ材の表面に、部分的に、前記被覆層に含まれることとなる前記未硬化材料が硬化した硬化被膜を形成できるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ファイバ材搬送手段で搬送されるファイバ材の表面に、部分的に、光ファイバのコアの外側を覆うように設けられた被覆層に含まれることとなる未硬化材料が硬化した硬化被膜を形成できるように構成されているので、その硬化被膜及びそれとは材質の異なるその他の部分を含んだ被覆層を形成することにより、被覆層の材質を部分的に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置の構成を示すブロック図である。
図2A】実施形態1の被覆加工部のON状態の構成を示す図である。
図2B】実施形態1の被覆加工部のOFF状態の構成を示す図である。
図3A】第1例の光ファイバの内部構造を示した斜視図である。
図3B】第2例の光ファイバの内部構造を示した斜視図である。
図4A】第3例の光ファイバの斜視図である。
図4B】第4例の光ファイバの斜視図である。
図5】実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置の変形例の被覆加工部の構成を示す図である。
図6】実施形態2の被覆加工部の構成を示す図である。
図7】実施形態3の被覆加工部の構成を示す図である。
図8】実施形態4の被覆加工部の構成を示す図である。
図9】実施形態4に係る光ファイバ製造加工装置を用いた被覆層の形成方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置10を示す。
【0011】
実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置10は、上流端及び下流端にそれぞれ設けられたファイバ材送り出し部11及びファイバ材巻き取り部12と、それらの間に上流側から下流側に順に設けられた表面前処理部13、被覆加工部14、及び表面洗浄部15とを備える。
【0012】
ファイバ材送り出し部11は、ボビンに巻かれた加工前のファイバ材20を長さ方向に沿って送り出す。ファイバ材巻き取り部12は、加工後のファイバ材20をファイバ材巻き取り部12でボビンに巻き取って回収する。したがって、これらのファイバ材送り出し部11及びファイバ材巻き取り部12が、ファイバ材20を長さ方向に搬送するファイバ材搬送手段を構成する。
【0013】
ここで、ファイバ材20は、コアを含む長尺の線材であって、ガラス材料又はポリマー材料のコアのみで構成されていてもよく、ガラス材料のコアをガラス材料のクラッドで被覆した裸光ファイバで構成されていてもよく、ガラス材料又はポリマー材料のコアをポリマー材料のクラッドで被覆した光ファイバ素線で構成されていてもよい。また、ファイバ材20は、裸光ファイバ又は光ファイバ素線が樹脂の一次被覆層で被覆されたものであってもよい。
【0014】
コアを形成するガラス材料としては、例えば、純粋石英、多成分ガラス、ゲルマニウムのような屈折率を高めるドーパントがドープされた石英等が挙げられる。コアを形成するポリマー材料としては、例えばアクリル系樹脂等が挙げられる。コアは、典型的には、断面形状が円形であり、その直径は例えば10μm以上2000μm以下である。なお、コアの断面形状は、三角形や矩形等の多角形であってもよい。
【0015】
クラッドを形成するガラス材料としては、例えば、多成分ガラス、フッ素のような屈折率を低くするドーパントがドープされた石英等が挙げられる。クラッドを形成するポリマー材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。クラッドの断面外郭形状は、典型的には円形であり、その直径は、例えば100μm以上10000μm以下である。なお、クラッドの断面外郭形状は、三角形や矩形等の多角形であってもよい。
【0016】
表面前処理部13は、例えば、ファイバ材20の表面に凹凸形状を形成したり、ファイバ材20の表面の分子結合状態を変えるものであり、エッチング装置、紫外線照射装置、プラズマ照射装置等で構成されている。表面前処理部13は、ファイバ材送り出し部11から搬送されてきたファイバ材20の表面に、後段の被覆加工を容易化するための濡れ性を向上させ、また光の散乱効果を向上させるための処理を施す。また、ファイバ材20の表面処理は、ファイバ材20全長に行なってもよく、或いは、必要な部分に選択的に行なってもよい。選択的に行なう場合には、例えば、エッチング装置であれば、処理しない部分に耐エッチングマスクを設ければよく、紫外線照射装置であれば、処理する部分のみに光を集光すればよく、プラズマ照射装置であれば、処理する部分にプラズマ照射すればよい。
【0017】
図2A及びBは、被覆加工部14を示す。この被覆加工部14は、材料貯留槽141と材料硬化エネルギー供給源142とを備える。
【0018】
材料貯留槽141は、ファイバ材導入部(不図示)及びファイバ材排出部141aが形成された液槽で構成されている。材料貯留槽141には、液状の未硬化材料30が貯留される。表面前処理部13から搬送されてきたファイバ材20は、ファイバ材導入部から材料貯留槽141内に導入されて未硬化材料30に浸漬される。未硬化材料30に浸漬されたファイバ材20には、所定時間の未硬化材料30への接触により、その粘性、表面張力、親和性等の作用から、表面全体に未硬化材料30が付着する。表面全体に未硬化材料30が付着したファイバ材20は、ファイバ材排出部141aから上方に引き出されて排出される。したがって、この材料貯留槽141が、搬送されるファイバ材20の表面に液状の未硬化材料30を付着させる未硬化材料付着手段を構成する。材料貯留槽141には、ファイバ材20の表面への未硬化材料30の付着状態を調整するための未硬化材料30の温度制御機構及び圧力制御機構が設けられていてもよい。
【0019】
ここで、未硬化材料30としては、例えば、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性材料や熱硬化性樹脂などの熱硬化性材料等を主成分とするものが挙げられる。未硬化材料30は、光散乱物質、発光物質、蓄光物質、光電変換物質、センサー物質等の機能性物質を含有していてもよい。
【0020】
材料硬化エネルギー供給源142は、材料貯留槽141の斜め上方に設けられている。材料硬化エネルギー供給源142は、材料貯留槽141のファイバ材排出部141aから上方に引き出されて鉛直方向に搬送され且つ表面に未硬化材料30が膜状に付着したファイバ材20に対し、局部的にエネルギーEを供給して未硬化材料30を硬化させる。したがって、この材料硬化エネルギー供給源142が、ファイバ材20の表面の未硬化材料30にエネルギーEを供給して硬化させる材料硬化手段を構成する。ここで、エネルギーEとしては、光エネルギーや熱エネルギーが挙げられる。ファイバ材20の搬送速度は、ファイバ材送り出し部11及びファイバ材巻き取り部12により制御されるが、例えば0.001m/秒以上0.1m/秒以下である。
【0021】
材料硬化エネルギー供給源142は、ファイバ材20の搬送を継続しながら、図2Aに示すように、エネルギーEを供給するON状態と、図2Bに示すように、エネルギーEの供給を停止するOFF状態との切り替えが可能に構成されている。そして、ON状態では、ファイバ材20は、表面の未硬化材料30が硬化し、表面上に硬化被膜41が形成される。一方、OFF状態では、ファイバ材20は、表面の未硬化材料30が液状のまま搬送される。したがって、この光ファイバ製造加工装置10では、搬送されるファイバ材20の表面に、部分的に、未硬化材料30が硬化した硬化被膜41を形成できるように構成されている。
【0022】
材料硬化エネルギー供給源142は、酸素の影響による未硬化材料30の硬化阻害を回避する観点から、材料貯留槽141に貯留された未硬化材料30に浸漬されるのに続いて、ファイバ材排出部141aから上方に引き出されて気相に接触した直後のファイバ材20の表面に付着した膜状の未硬化材料30にエネルギーEを供給して硬化させる、つまり、ファイバ材20の表面に膜状の未硬化材料30を付着させると同時にエネルギーEを供給して硬化させるように設けられていることが好ましい。なお、酸素の影響による未硬化材料30の硬化阻害を回避する観点からは、材料硬化エネルギー供給源142によるファイバ材20の表面の未硬化材料30へのエネルギー供給雰囲気が、窒素等の不活性ガス雰囲気となるように構成されていてもよい。
【0023】
材料硬化エネルギー供給源142は、材料貯留槽141のファイバ材排出部141aから上方に引き出されたファイバ材20を囲うように複数設けられていてもよい。このようにすれば、ファイバ材20には、複数の方向からエネルギーEを供給することができ、そして、複数の方向から同時にエネルギーEを供給することで、ファイバ材20の全周を被覆するように硬化被膜41を形成させることができる。この場合、それらの複数の材料硬化エネルギー供給源142は、形成する硬化被膜41の形態の自由度を高める観点から、相互に独立してON状態とOFF状態との切り替えが可能に構成されていることが好ましい。なお、材料硬化エネルギー供給源142は、ファイバ材20に沿う方向に複数設けられていてもよく、また、未硬化材料30へのエネルギーEの照射パターンは、円形、長方形、その他任意の形であってもよい。
【0024】
また、材料硬化エネルギー供給源142は、形成する硬化被膜41の形態の自由度を高める観点から、材料貯留槽141のファイバ材排出部141aから上方に引き出されたファイバ材20に対して可動に設けられていてもよい。例えば、材料硬化エネルギー供給源142は、ファイバ材20に対して、その長さ方向に沿って可動に設けられていてもよい。また、材料硬化エネルギー供給源142は、ファイバ材20に対して、その周方向に沿って可動に設けられていてもよい。さらに、材料硬化エネルギー供給源142は、水平軸を中心とする上下傾動及び/又は上下軸を中心とする左右傾動が可能に構成されていてもよい。なお、同様に、形成する硬化被膜41の形態の自由度を高める観点からは、被覆加工部14は、ファイバ材20を軸回転させる機構及び/又は水平移動させる機構が設けられていてもよい。
【0025】
材料硬化エネルギー供給源142は、未硬化材料30の硬化に好適なものが適宜用いられる。例えば、未硬化材料30が光硬化性材料の紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂の場合、材料硬化エネルギー供給源142には、レーザやLEDの紫外線光源や可視光源からの光をレンズ、光ファイバ、光導波路を介して照射する光造形用の光照射ユニット等が好適に用いられる。未硬化材料30が熱硬化性材料の場合、材料硬化エネルギー供給源142には、炭酸ガスレーザからのレーザ光を照射するレーザ光照射ユニットや赤外線ランプからの赤外線を放物面鏡等で集光して照射する赤外線照射ユニット等が好適に用いられる。なお、赤外線照射ユニットを用いる場合には、未硬化材料30の熱硬化性材料の硬化促進を図る観点から、未硬化材料30の熱硬化性材料に、赤外線吸収物質を含有させることが好ましい。また、材料硬化エネルギー供給源142として、光エネルギー供給手段と熱エネルギー供給手段とを併用してもよい。
【0026】
表面洗浄部15は、例えば、機械的拭き取り除去機構、気体や液体を用いる洗浄機構等で構成されている。表面洗浄部15は、被覆加工部14から搬送されてきた表面に部分的に硬化被膜41が形成されたファイバ材20から、未硬化又は不完全硬化の材料を除去して洗浄する。
【0027】
実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置10を用いた光ファイバの製造方法は、ファイバ材送り出し部11及びファイバ材巻き取り部12により、コアを含むファイバ材20を長さ方向に搬送し、材料貯留槽141により、その搬送されるファイバ材20の表面に液状の未硬化材料30を付着させ、材料硬化エネルギー供給源142により、搬送されるファイバ材20の表面の未硬化材料30にエネルギーEを供給して硬化させ、このとき、搬送されるファイバ材20の表面に、部分的に未硬化材料30を硬化させて硬化被膜41を形成し、その表面に部分的に硬化被膜41が形成されたファイバ材20をファイバ材巻き取り部12に巻き取って回収するステップを含む。
【0028】
そして、この表面に部分的に硬化被膜41が形成されたファイバ材20を用い、硬化被膜41が形成されていないその他の部分に、硬化被膜41とは材質の異なる別の硬化被膜を形成することにより、全体として硬化被膜41を含んだ被覆層を形成する。つまり、光ファイバの製造方法は、硬化被膜41及びそれとは材質の異なるその他の部分を含んだ被覆層を形成するステップを含む。硬化被膜41が形成されていないその他の部分への別の硬化被膜の形成は、別の液状の未硬化材料を用いて実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置10により同様に加工を行ってもよく、また、ファイバ材20を別の液状の未硬化材料に浸漬し、ダイス等を通して余分な材料を除去した後、加熱或いは光を照射して材料を硬化させる加工を行ってもよい。
【0029】
具体的には、例えば、図3Aに示すように、ファイバ材20がコア21のみで構成されている場合、長さ方向に間隔をおいて配設された硬化被膜41を含む被覆層40のクラッドCを形成して裸光ファイバ又は光ファイバ素線を得ることができる。また、図3Bに示すように、周方向の一部分に設けられた硬化被膜41を含む被覆層40のクラッドCを形成して裸光ファイバ又は光ファイバ素線を得ることができる。なお、裸光ファイバ又は光ファイバ素線からは、これを液状のジャケット材料に浸漬し、ダイス等を通して余分な材料を除去した後、加熱或いは光の照射により材料を硬化させてジャケットJを形成して光ファイバFを得ることができる。
【0030】
例えば、図4Aに示すように、ファイバ材20がコア21及びクラッド22を有する裸光ファイバ又は光ファイバ素線で構成されている場合、長さ方向に間隔をおいて配設された硬化被膜41を含む被覆層40のジャケットJを形成した光ファイバFを得ることができる。また、図4Bに示すように、周方向の一部分に設けられた硬化被膜41を含む被覆層40のジャケットJを形成した光ファイバFを得ることができる。
【0031】
以上のことから、実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置10によれば、ファイバ材送り出し部11及びファイバ材巻き取り部12で搬送されるファイバ材20の表面に、被覆加工部14において、部分的に、光ファイバのコアの外側を覆うように設けられた被覆層に含まれることとなる未硬化材料30が硬化した硬化被膜41を形成できるように構成されているので、その硬化被膜41及びそれとは材質の異なるその他の部分を含んだ被覆層を形成することにより、被覆層の材質を部分的に変えることができる。また、材料硬化エネルギー供給源142からのエネルギーE、未硬化材料30の粘度、材料貯留槽141内の未硬化材料30の温度、ファイバ材20の搬送速度などを調整することにより、硬化被膜41の厚さを制御することができる。
【0032】
加えて、実施形態1に係る光ファイバ製造加工装置10の変形例として、被覆加工部14は、図5に示すように、材料貯留槽141及び材料硬化エネルギー供給源142のユニットが、ファイバ材20の搬送経路に沿って直列に2段設けられていてもよい。この場合、例えば、上流側のユニットで部分的に硬化被膜41を形成し、下流側のユニットでその他の部分に材質の異なる別の硬化被膜41を形成すれば、ワンパスで被覆層を形成することができる。また、上流側のユニットで部分的に一次被膜を形成し、下流側のユニットでその一次被膜に重ねて材質の異なる別の二次被膜を形成すれば、材質の異なる一次被膜及び二次被膜が積層された硬化被膜41を形成することができる。
【0033】
材料貯留槽141及び材料硬化エネルギー供給源142のユニットは、ファイバ材20の搬送経路に沿って直列に3段以上の複数設けられていてもよく、それによってより複雑な加工を行うことができる。例えば、コアのみで構成されたファイバ材20を用い、複数の材質の部分で構成されたクラッドを形成するのに続いて、複数の材質の部分で構成されたジャケットを形成すれば、ワンパスで光ファイバを製造することができる。また、同じ加工内容のユニットを複数設けることで、ファイバ材20の異なる場所で同時加工ができるため、実質的な加工速度が上がり、量産性を向上させることができる。
【0034】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る光ファイバ製造加工装置10の被覆加工部14を示す。なお、実施形態1と同一構成及び名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0035】
実施形態2に係る光ファイバ製造加工装置10の被覆加工部14では、材料貯留槽141の側面にエネルギー透過窓141bが設けられている。材料硬化エネルギー供給源142は、そのエネルギー透過窓141bの外側に設けられている。つまり、材料硬化エネルギー供給源142は、材料貯留槽141内の未硬化材料30の液中に浸漬されて接触しながら搬送されるファイバ材20の表面に付着する周辺の未硬化材料30に、エネルギー透過窓141bを介してエネルギーEを供給するように設けられ、それによってファイバ材20の表面に付着する周辺の未硬化材料30を硬化させて硬化被膜41を形成するように構成されている。この実施形態2に係る光ファイバ製造加工装置10によれば、材料貯留槽141内の未硬化材料30の液中において、その硬化が行われるので、それによって酸素の影響による未硬化材料30の硬化阻害を回避することができる。なお、ファイバ材20の表面には、付着する周辺の未硬化材料30のみが硬化するエネルギー密度になるようにエネルギーEを供給すればよい。また、エネルギー透過窓141bの形成材料には、未硬化材料30が付着しにくく、硬化反応を遅らせる素材が適しており、例えば、液体との接触角が大きく、酸素透過性に優れるシリコーン樹脂等が好ましい。
【0036】
なお、これに加え、材料硬化手段として、実施形態1と同様の構成の材料硬化エネルギー供給源142が設けられていてもよい。
【0037】
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同一である。
【0038】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係る光ファイバ製造加工装置10の被覆加工部14を示す。なお、実施形態1及び2と同一構成及び名称の部分は、実施形態1及び2と同一符号で示す。
【0039】
実施形態3に係る光ファイバ製造加工装置10の被覆加工部14では、材料貯留槽141が上方に開口している。被覆加工部14は、その材料貯留槽141の開口に露出した未硬化材料30の液面に、ファイバ材20の下側部分が接触するように、ファイバ材20を水平方向に搬送するように構成されている。材料貯留槽141の底面には、エネルギー透過窓141bが設けられている。材料硬化エネルギー供給源142は、そのエネルギー透過窓141bの下側に設けられている。つまり、材料硬化エネルギー供給源142は、材料貯留槽141内の未硬化材料30の液面に接触して搬送されるファイバ材20の表面に付着する周辺の未硬化材料30に、エネルギー透過窓141bを介してエネルギーEを供給するように設けられ、それによってファイバ材20の表面に付着する周辺の未硬化材料30を硬化させて硬化被膜41を形成するように構成されている。この実施形態3に係る光ファイバ製造加工装置10によれば、材料貯留槽141内の未硬化材料30の液中において、その硬化が行われるので、それによって酸素の影響による未硬化材料30の硬化阻害を回避することができる。
【0040】
なお、被覆加工部14は、ファイバ材20を軸回転させる機構が設けられていてもよく、その場合、未硬化材料30の液面に側面が接触したファイバ材20が軸回転すると、ファイバ材20の未硬化材料30が付着した部分が気相に露出されることとなることから、図7に仮想線で示すように、材料硬化エネルギー供給源142が材料貯留槽141の上方に配置され、そこからのエネルギーEを、搬送されるファイバ材20の表面の気相に露出された未硬化材料30に対して供給する構成であってもよい。
【0041】
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同一である。
【0042】
(実施形態4)
図8は、実施形態4に係る光ファイバ製造加工装置10の被覆加工部14を示す。なお、実施形態1と同一構成及び名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0043】
実施形態4に係る光ファイバ製造加工装置10の被覆加工部14は、材料吹付部143と材料硬化エネルギー供給源142とを備える。
【0044】
材料吹付部143は、ファイバ材導入部144a及びファイバ材排出部144bが形成されたケーシング144の内部に、未硬化材料30を貯留した液槽(不図示)から延びる材料供給管145が導入され、その先端にノズル146が取り付けられて構成されている。表面前処理部13から搬送されてきたファイバ材20は、ファイバ材導入部144aからケーシング144内に導入され、ノズル146から未硬化材料30が吹き付けられる。未硬化材料30が吹き付けられたファイバ材20には、表面全体に未硬化材料30が付着する。表面全体に未硬化材料30が付着したファイバ材20は、ファイバ材排出部144bから上方に引き出されて排出される。したがって、このノズル146が、搬送されるファイバ材20の表面に液状の未硬化材料30を付着させる未硬化材料付着手段を構成する。なお、未硬化材料30をファイバ材20の表面全体に付着させる観点からは、未硬化材料30を吹き付けるノズル146は、ファイバ材20を囲うように複数設けられていてもよく、また、ファイバ材20の周方向に沿って可動に設けられていてもよい。更に、ファイバ材20を軸回転させる機構が設けられていてもよい。実施形態4に係る光ファイバ製造加工装置10によれば、ノズル146からの未硬化材料30の吹き付け量を調整することにより、硬化被膜41の厚さを制御することができる。
【0045】
また、実施形態4に係る光ファイバ製造加工装置10は、図9に示すように、材料吹付部143において、ケーシング144内を搬送されるファイバ材20の表面に、ノズル146から連続的又は断続的に未硬化材料30を吹き付けることにより、部分的に未硬化材料30を付着させ、そして、それをケーシング144のファイバ材排出部144bから上方に引き出し、材料硬化エネルギー供給源142から、表面に部分的に未硬化材料30が膜状に付着したファイバ材20に対し、局部的にエネルギーEを供給して未硬化材料30を硬化させることで硬化被膜41を形成させるように構成されていてもよい。このようにすれば、硬化被膜41の形成に利用されない未硬化材料30のロスを抑制することができる。なお、この場合、材料硬化エネルギー供給源142は、ファイバ材20の未硬化材料30が付着した部分が通過するときのみにON状態としてエネルギーEを供給し、その他のときにはOFF状態としてエネルギーEの供給を停止するように制御されていてもよく、また、ON状態を持続してエネルギーEを連続供給するように制御されていてもよい。
【0046】
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同一である。
【0047】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、ファイバ材20を未硬化材料30に浸漬することにより表面に未硬化材料30を付着させる構成、実施形態3では、ファイバ材20を未硬化材料30の液面に接触させることにより表面に未硬化材料30を付着させる構成、及び実施形態4では、ファイバ材20に未硬化材料30を吹き付けて表面に未硬化材料30を付着させる構成としたが、特にこれらに限定されるものではなく、ファイバ材20に未硬化材料30を刷毛塗りすることにより表面に未硬化材料30を付着させる構成やファイバ材20に未硬化材料30の液滴を滴下することにより表面に未硬化材料30を付着させる構成等であってもよい。
【0048】
上記実施形態1~4では、材料硬化エネルギー供給源142からエネルギーEを直接供給又はエネルギー透過窓141bを介して間接供給する構成としたが、特にこれらに限定されるものではなく、材料硬化エネルギー供給源142は、ファイバ材20に光を伝搬させ、ファイバ材20と未硬化材料30が接する部分で光を漏洩させて、未硬化材料30にエネルギーEを供給するように設けられていてもよい。この場合、硬化させる部分に正確に光を当てる必要性が無いため加工が容易であり、また、未硬化材料30とファイバ材20表面との間には空気層が無いので、酸素の影響による硬化阻害を回避することができる。また、エネルギーEを直接供給又はエネルギー透過窓141bを介して間接供給する構成とファイバ材20を伝搬させる構成の両方を併用してもよい。
【0049】
上記実施形態1、2、及び4では、被覆加工部14において、ファイバ材20を鉛直上方向に搬送する構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、ファイバ材20を鉛直下方向や水平方向に搬送する構成や傾斜方向に搬送する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、光ファイバ製造加工装置の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 光ファイバ製造加工装置
11 ファイバ材送り出し部(ファイバ材搬送手段)
12 ファイバ材巻き取り部(ファイバ材搬送手段)
13 表面前処理部
14 被覆加工部
141 材料貯留槽(未硬化材料付着手段)
141a ファイバ材排出部
141b エネルギー透過窓
142 材料硬化エネルギー供給源(材料硬化手段)
143 材料吹付部
144 ケーシング
144a ファイバ材導入部
144b ファイバ材排出部
145 材料供給管
146 ノズル(未硬化材料付着手段)
15 表面洗浄部
20 ファイバ材
21 コア
22,C クラッド
30 未硬化材料
40 被覆層
41 硬化被膜
E エネルギー
F 光ファイバ
J ジャケット
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9